【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼公開日 :平成30年5月8日 公開場所:株式会社関海事工業所 津名倉庫(兵庫県淡路市生穂新島5−7) ▲2▼公開日 :平成30年6月7日〜9月4日 実施場所:福岡県北九州市若松区白島北東沖合
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定解除機構は、前記フックが前記無人潜水機本体に対して取り付けられているとき、前記括り付け部材によって前記外れ止め部材とともに前記フック本体に括り付けられる第1部材を有し、
前記第1部材は、前記無人潜水機本体に接続されており、前記フックが前記無人潜水機本体から取り外されるとき、前記無人潜水機本体とともに移動することで、前記外れ止め部材が前記括り付け部材により前記フック本体に固定された状態を解除する、請求項2に記載の引き上げ補助装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の引き上げ補助装置では、回収用金具が無人潜水機本体から離脱するが、これとは異なり、無人潜水機本体ごと海底又は湖底に沈んだ沈没体を引き上げる引き上げ補助装置が知られている。しかし、このような引き上げ補助装置では、無人潜水機本体が故障しやすいという問題があった。
【0006】
一方、特許文献1の引き上げ補助装置は、回収用金具が無人潜水機本体から離脱したあとで、海底又は湖底に沈んだ沈没体を引き上げるため、上記のような問題は生じ得ない。しかし、特許文献1の引き上げ補助装置は、構造が複雑であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、無人潜水機本体の故障を抑制しつつ、海底又は湖底に沈んだ沈没体を簡単な構造で引き上げることができる、引き上げ補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る引き上げ補助装置は、海底又は湖底に沈んだ沈没体の少なくとも一部を引き上げるための引き上げ補助装置であって、海上又は湖上に配置される起重機に長尺状の接続部材を介して接続され、且つ、無人潜水機本体に対して着脱可能に取り付けられるフックを備え、前記フックは、鉤状のフック本体と、前記フック本体の開口を開閉するように前記フック本体に対して回動可能に設けられ、前記フック本体の開口を閉じることで前記フック本体内に侵入した前記沈没体又は前記沈没体に連結される連結物のいずれかの一部が前記フック本体から外れ出ることを防止するための外れ止め部材と、前記外れ止め部材が前記フック本体の開口を閉じる側に回動するように前記外れ止め部材を付勢する付勢機構と、を有し、前記沈没体又は前記連結物のいずれかの一部が前記フック本体内に侵入したあと、前記無人潜水機本体が前記沈没体又は前記連結物のいずれかの一部を前記フックで引っ張る側に移動することによって、前記フックが前記無人潜水機本体から取り外されるように前記フックを前記無人潜水機本体に対して着脱可能に取り付けるための取り付け機構と、前記フックが前記無人潜水機本体に対して取り付けられているとき、前記外れ止め部材が前記フック本体の開口を開く側に回動した状態を保つように、前記付勢機構による付勢に抗って前記外れ止め部材を前記フック本体に固定する固定機構と、前記沈没体又は前記連結物のいずれかの一部が前記フック本体内に侵入したあと、前記無人潜水機本体が前記沈没体又は前記連結物のいずれかの一部を前記フックで引っ張る側に移動することによって、前記外れ止め部材が前記固定機構により前記フック本体に固定された状態を解除する固定解除機構と、をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、沈没体又は当該沈没体に連結される連結物のいずれかの一部がフック本体内に侵入したあと、無人潜水機本体が前記沈没体又は前記連結物のいずれかの一部をフックで引っ張る側に移動することによって、フックが無人潜水機本体から取り外されるので、無人潜水機本体ごと前記沈没体を引き上げることがない。したがって、無人潜水機本体が故障してしまうことを抑制することができる。また、上記のように無人潜水機本体が移動することによって、外れ止め部材がフック本体に固定された状態を解除される。これにより、引き上げ補助装置を簡単な構造にすることができる。上記の通りであるため、本発明に係る引き上げ補助装置は、無人潜水機本体の故障を抑制しつつ、海底又は湖底に沈んだ沈没体を簡単な構造で引き上げることができる。
【0010】
前記取り付け機構は、前記フック本体又は前記無人潜水機本体のいずれか一方に固定される鞘部材と、前記フック本体又は前記無人潜水機本体のいずれか他方に固定され、前記鞘部材に対して抜き差し可能な被収納部材と、を有し、前記被収納部材が前記鞘部材に差し込まれることで、前記フックが前記無人潜水機本体に対して取り付けられ、前記被収納部材が前記鞘部材から抜き出されることで、前記フックが前記無人潜水機本体から取り外されてもよい。
【0011】
上記構成によれば、沈没体又は当該沈没体に連結される連結物のいずれかの一部がフック本体内に侵入したあと、無人潜水機本体が前記沈没体又は前記連結物のいずれかの一部をフックで引っ張る側に移動することによって、被収納部材が鞘部材から抜き出され、フックが無人潜水機本体から取り外される。これにより、簡単な構造の取付け機構によって、フックを無人潜水機本体に対して着脱可能に取り付けることが可能となる。
【0012】
前記固定機構は、前記付勢機構による付勢に抗って前記外れ止め部材を前記フック本体に括り付ける括り付け部材を有してもよい。
【0013】
上記構成によれば、簡単な構造の固定機構によって、付勢機構による付勢に抗って外れ止め部材をフック本体に固定することが可能となる。
【0014】
前記固定解除機構は、前記フックが前記無人潜水機本体に対して取り付けられているとき、前記括り付け部材によって前記外れ止め部材とともに前記フック本体に括り付けられる第1部材を有し、前記第1部材は、前記無人潜水機本体に接続されており、前記フックが前記無人潜水機本体から取り外されるとき、前記無人潜水機本体とともに移動することで、前記外れ止め部材が前記括り付け部材により前記フック本体に固定された状態を解除してもよい。
【0015】
上記構成によれば、沈没体又は当該沈没体に連結される連結物のいずれかの一部がフック本体内に侵入したあと、無人潜水機本体が前記沈没体又は前記連結物のいずれかの一部をフックで引っ張る側に移動することによって、第1部材が括り付け部材による括り付けを解除する。これにより、簡単な構造の固定解除機構によって、外れ止め部材がフック本体に固定された状態を解除することができる。
【0016】
前記括り付け部材は、可撓性を有する材料で輪状に形成され、前記第1部材は、棒状に形成され、前記括り付け部材を撓ませることで、前記括り付け部材の一方端の輪状の内側及び前記括り付け部材の他方端の輪状の内側に前記第1部材が挿通され、二重にされた前記括り付け部材で画定される他の輪状の内側に前記フック本体及び前記外れ止め部材が挿通されてもよい。
【0017】
上記構成によれば、沈没体又は当該沈没体に連結される連結物のいずれかの一部がフック本体内に侵入したあと、無人潜水機本体が前記沈没体又は前記連結物のいずれかの一部をフックで引っ張る側に移動するとき、第1部材が括り付け部材から抜け出ることで当該括り付け部材による括り付けを解除する。したがって、いっそう簡単な構造の固定解除機構によって、外れ止め部材がフック本体に固定された状態を解除することが可能となる。
【0018】
無人潜水機をさらに備え、前記無人潜水機は、前記無人潜水機本体と、海上若しくは湖上又は前記無人潜水機本体に設けられ、前記無人潜水機本体の動作を制御するための無人潜水機制御装置と、を有してもよい。
【0019】
上記構成によれば、沈没体又は当該沈没体に連結される連結物に対して容易にフックを係合させることが可能となる。
【0020】
前記無人潜水機は、海中又は湖中を撮像して画像情報を得るための撮像装置と、海上又は湖上に設けられ、前記無人潜水機本体を操作するための操作装置と、海上又は湖上に設けられ、前記撮像装置で得られた画像情報を表示するための出力装置と、をさらに有してもよい。
【0021】
上記構成によれば、撮像装置により得られた画像情報を出力装置に表示し、出力装置に表示された画像情報に基づき、操作装置によって無人潜水機本体を操作することができる。したがって、沈没体又は当該沈没体に連結される連結物に対していっそう容易にフックを係合させることが可能となる。
【0022】
前記課題を解決するために、本発明に係る引き上げ装置は、上記いずれかの引き上げ補助装置と、前記引き上げ補助装置に長尺状の接続部材を介して接続される起重機と、を備えることを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、上記いずれかの引き上げ補助装置を備えるので、無人潜水機本体の故障を抑制しつつ、海底又は湖底に沈んだ沈没体を簡単な構造で引き上げることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、無人潜水機本体の故障を抑制しつつ、海底又は湖底に沈んだ沈没体を簡単な構造で引き上げることができる、引き上げ補助装置及びそれを備える引き上げ装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る引き上げ補助装置及びそれを備える引き上げ装置について図面を参照して説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0027】
(引き上げ装置10)
図1は、本実施形態に係る引き上げ装置の使用態様を示す概略図であり、無人潜水機本体が係留チェーンの先端部に連結された浮標に近づいている様子を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る引き上げ装置10は、海底Fに沈んだ係留チェーンCの先端部(沈没体の一部)を引き上げるために用いられる。
【0028】
本実施形態において、係留チェーンCは、浮体式洋上風力発電で浮体式構造物(図示せず)を係留するために用いられる。係留チェーンCの先端部には比較的重たいロープR
1の一端が取り付けられ、当該ロープR
1の他端には当該ロープR
1と比較して軽いロープR
2の一端が取り付けられ、且つ、当該ロープR
2の他端には浮標B(沈没体に連結される連結物)が取り付けられる。浮標Bは、他の船の航行などの妨げにならないように、海底Fの近傍に配置される。
【0029】
図2は、本実施形態に係る引き上げ装置の全体構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係る引き上げ装置10は、引き上げ補助装置20と、船舶SH上(海上)に配置される起重機90と、を備える。
【0030】
(引き上げ補助装置20)
本実施形態に係る引き上げ補助装置20は、船舶SH上に配置される起重機90にロープ98を介して接続されるフック30と、無人潜水機60と、を備える。無人潜水機60は、フック30が着脱可能に取り付けられる無人潜水機本体61を有する。
【0031】
(フック30)
図3は、本実施形態に係る引き上げ補助装置のフック及びその周辺部分の初期状態を示す概略図であり、(A)が高さ方向に見たときの図、(B)がフック本体の開口側から第1紐部材による括り付けの状態を見たときの図である。
図3(A)に示すように、フック30は、鉤状のフック本体32と、フック本体32の開口34を開閉するようにフック本体32に対して回動可能に設けられ、フック本体32の開口34を閉じることでフック本体32内に侵入した浮標Bの一部がフック本体32から外れ出ることを防止するための外れ止め部材35と、を有する。
【0032】
外れ止め部材35の側面には、厚み方向に見て直線状に長さ方向に沿って延びる突部35aが形成される。当該突部35aの中央部に形成される窪み35bには、後述する第1紐部材52の一部がはめ込まれる。また、フック30は、外れ止め部材35がフック本体32の開口34を閉じる側に回動するように当該外れ止め部材35を付勢するコイル状のバネ部材36(付勢機構)をさらに有する。なお、フック本体32の基端部には、厚み方向に見て円形状の貫通孔38が穿設され、当該貫通孔38にロープ98の一端が接続される。
【0033】
(取り付け機構40)
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る引き上げ補助装置20は、フック30を無人潜水機本体61に対して着脱可能に取り付けるための取り付け機構40をさらに備える。
図3に示すように、本実施形態において、取り付け機構40は、無人潜水機本体61に固定される鞘部材42と、フック本体32に介在部材39を介して固定され、鞘部材42に対して抜き差し可能な被収納部材44と、を有する。被収納部材44が鞘部材42に差し込まれることで、フック30が無人潜水機本体61に対して取り付けられる。一方、被収納部材44が鞘部材42から抜き出されることで、フック30が無人潜水機本体61から取り外される。
【0034】
(固定機構50及び固定解除機構55)
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る引き上げ補助装置20は、バネ部材36による付勢に抗って外れ止め部材35をフック本体32に固定する固定機構50をさらに備える。
図3に示すように、本実施形態において、固定機構50は、フック30が無人潜水機本体61に対して取り付けられているとき、外れ止め部材35がフック本体32の開口34を開く側に回動した状態を保つように、バネ部材36による付勢に抗って外れ止め部材35をフック本体32に括り付ける第1紐部材52(括り付け部材)を有する。
【0035】
第1紐部材52は、可撓性を有する材料で輪状に形成される。第1紐部材52は、外れ止め部材35の側面に長さ方向に沿って形成される突部35aの窪み35bにはめ込まれることでその一部が位置決めされる。
【0036】
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る引き上げ補助装置20は、外れ止め部材35が固定機構50によりフック本体32に固定された状態を解除する固定解除機構55をさらに備える。
図3に示すように、本実施形態において、固定解除機構55は、フック30が無人潜水機本体61に対して取り付けられているとき、第1紐部材52によって外れ止め部材35とともにフック本体32に括り付けられる第1部材56を有する。
【0037】
第1部材56は、棒状に形成され、その基端部には第2紐部材57の一端が取り付けられる。当該第2紐部材57の他端は、無人潜水機本体61のシャフト62に取り付けられる。これにより、第1部材56は、第2紐部材57を介して無人潜水機本体61に接続される。なお、シャフト62は、無人潜水機本体61の前方側を幅方向に沿って延びるように配置される。
【0038】
図3(B)に示すように、第1紐部材52を撓ませることで、第1紐部材52の一方端の輪状の内側52a及び第1紐部材52の他方端の輪状の内側52bに第1部材56が挿通され、二重にされた第1紐部材52で画定される他の輪状の内側52cにフック本体32及び外れ止め部材35が挿通される。本実施形態では、上記のようにして、固定機構50及び固定解除機構55が構成される。
【0039】
(無人潜水機60)
再び
図2を参照して、無人潜水機60は、無人潜水機本体61と、当該無人潜水機本体61に設けられ、当該無人潜水機本体61の動作を制御するための無人潜水機制御装置64と、を有する。無人潜水機本体61は、複数のスラスター63を有する。そして、無人潜水機制御装置64は、前記複数のスラスター63それぞれが有するモータ(図示せず)の回転速度を制御することで、無人潜水機本体61の動作を制御する。
【0040】
図2に示すように、本実施形態において、無人潜水機60は、海中を撮像して画像情報を得るための撮像装置65と、船舶SH上に設けられ、無人潜水機本体61を操作するための操作装置66と、同じく船舶SH上に設けられ、撮像装置で得られた画像情報を表示するための出力装置67と、をさらに有する。操作装置66は、無人潜水機制御装置64と電気ケーブル68を介して電気的に接続される。
【0041】
(引き上げ装置10の使用態様)
以下において、本実施形態に係る引き上げ装置10の具体的な使用態様の一例について説明する。
【0042】
まず、
図1に示すように、本実施形態に係る引き上げ装置10を船舶SH上に載せて、引き上げ対象となる係留チェーンCの先端部に連結された浮標Bの付近まで航行し、そこで船舶SHを停留させる。
【0043】
次に、船舶SH上から無人潜水機本体61、並びに当該無人潜水機本体61に取り付けられたフック30、取り付け機構40、固定機構50及び固定解除機構55を潜水させる。さらに、撮像装置65により得られた画像情報を出力装置67に表示し、当該出力装置67に表示された画像情報に基づき、操作装置66によって船舶SH上から無人潜水機本体61を操作する。
【0044】
そして、フック30の開口34からフック本体32内に浮標Bの一部を侵入させる。
図4は、本実施形態に係る引き上げ補助装置のフック及びその周辺部分の浮標の一部がフック本体内に侵入した状態を示す概略図であり、(A)が高さ方向に見たときの図、(B)がフック本体の開口側から第1紐部材による括り付けの状態を見たときの図である。
【0045】
さらに、浮標Bの一部がフック本体32内に侵入したあと、無人潜水機本体61が浮標Bの一部をフック30で引っ張る側に移動する。
図5は、本実施形態に係る引き上げ補助装置のフック及びその周辺部分の浮標の一部がフック本体内に侵入したあと、無人潜水機が移動し始めた状態を示す概略図であり、(A)が高さ方向に見たときの図、(B)がフック本体の開口側から第1紐部材による括り付けの状態を見たときの図である。また、
図6は、同フック及びその周辺部分の浮標の一部がフック本体内に侵入したあと、無人潜水機が移動することで浮標の一部から取り外された状態を示す概略図である。
【0046】
具体的には、
図5及び
図6に示すように、浮標Bの一部がフック本体32内に侵入したあと、無人潜水機本体61が後退する。これにより、被収納部材44が鞘部材42から抜き出され、フック30が無人潜水機本体61から取り外される。また、第1部材56は、第2紐部材57を介して無人潜水機本体61に引っ張られ、無人潜水機本体61とともに移動し、
図5(B)に示すように第1紐部材52から抜け出る。これにより、第1部材56は、外れ止め部材35が第1紐部材52によりフック本体32に固定された状態を解除する。
【0047】
(効果)
本実施形態に係る引き上げ補助装置20は、係留チェーンCの先端部に連結された浮標Bの一部がフック本体32内に侵入したあと、無人潜水機本体61が浮標Bの一部をフック30で引っ張る側に移動することによって、フック30が無人潜水機本体61から取り外されるので、無人潜水機本体61ごと浮標Bを引き上げることがない。したがって、無人潜水機本体61が故障してしまうことを抑制することができる。また、上記のように無人潜水機本体61が移動することによって、外れ止め部材35がフック本体32に固定された状態を解除される。これにより、例えば、外れ止め部材35がフック本体32に固定された状態を解除されるために電気的な信号などを要しないため、引き上げ補助装置20を簡単な構造にすることができる。上記の通りであるため、本実施形態に係る引き上げ補助装置20は、無人潜水機本体61の故障を抑制しつつ、海底に沈んだ浮標B、ひいては係留チェーンCの先端部を簡単な構造で引き上げることができる。
【0048】
本実施形態に係る引き上げ補助装置20では、浮標Bの一部がフック本体32内に侵入したあと、無人潜水機本体61が浮標Bの一部をフック30で引っ張る側に移動することによって、被収納部材44が鞘部材42から抜き出され、フック30が無人潜水機本体61から取り外される。これにより、簡単な構造の取り付け機構40によって、フック30を無人潜水機本体61に対して着脱可能に取り付けることが可能となる。
【0049】
本実施形態に係る引き上げ補助装置20では、固定機構50がバネ部材36(付勢機構)による付勢に抗って外れ止め部材35をフック本体32に括り付ける第1紐部材52を有するので、簡単な構造の固定機構50によって、バネ部材36による付勢に抗って外れ止め部材35をフック本体32に固定することが可能となる。
【0050】
本実施形態に係る引き上げ補助装置20では、浮標Bの一部がフック本体32内に侵入したあと、無人潜水機本体61が前記浮標Bの一部をフックで引っ張る側に移動することによって、第1部材56が第1紐部材52による括り付けを解除する。これにより、簡単な構造の固定解除機構55によって、外れ止め部材35がフック本体32に固定された状態を解除することができる。
【0051】
本実施形態に係る引き上げ補助装置20では、浮標Bの一部がフック本体32内に侵入したあと、無人潜水機本体61が前記浮標Bの一部をフックで引っ張る側に移動するとき、第1部材56が第1紐部材52から抜け出ることで当該第1紐部材52による括り付けを解除する。したがって、いっそう簡単な構造の固定解除機構55によって、外れ止め部材35がフック本体32に固定された状態を解除することが可能となる。
【0052】
本実施形態に係る引き上げ補助装置20は、無人潜水機60を備えるので、浮標Bの一部に対して容易にフックを係合させることが可能となる。
【0053】
本実施形態では、撮像装置65により得られた画像情報を出力装置67に表示し、出力装置67に表示された画像情報に基づき、操作装置66によって無人潜水機本体61を操作することができる。したがって、浮標Bに対していっそう容易にフック30を係合させることが可能となる。
【0054】
本実施形態に係る引き上げ装置10は、上記引き上げ補助装置20を備えるので、無人潜水機本体61の故障を抑制しつつ、海底に沈んだ浮標B、ひいては係留チェーンCの先端部を簡単な構造で引き上げることができる。
【0055】
(変形例)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0056】
上記実施形態では、鞘部材42が無人潜水機本体61に固定され、当該鞘部材42に対して抜き差し可能な被収納部材44がフック本体32に固定される場合について説明したが、これに限定されない。すなわち、鞘部材42がフック本体32に固定され、被収納部材44が無人潜水機本体61に固定されてもよい。
【0057】
上記実施形態では、フック30を無人潜水機本体61に対して着脱可能に取り付けるための取り付け機構40が、鞘部材42及び被収納部材44を有する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、取り付け機構40は、フック本体32又は無人潜水機本体61のいずれか一方に配置される凹部と、フック本体32又は無人潜水機本体61のいずれか他方に配置され、前記凹部に対して嵌合可能な凸部と、を有してもよい。或いは、取り付け機構40は、その他の構造を有してもよい。
【0058】
上記実施形態では、第1紐部材52の一方端の輪状の内側52a及び第1紐部材52の他方端の輪状の内側52bに第1部材56が挿通され、二重にされた他の輪状の内側52cにフック本体32及び外れ止め部材35が挿通されることで、固定機構50及び固定解除機構55が構成される場合について説明したが、これに限定されない。例えば、第1紐部材52を撓ませず、当該第1紐部材52の輪状の内側に、第1部材56、フック本体32及び外れ止め部材35を一緒に挿通してもよい。このような場合、例えば、第1部材56に刃を設け、第1部材56が無人潜水機本体61とともに移動する際、当該刃で第1紐部材52を切断することで、外れ止め部材35がフック本体32に固定された状態を解除するように構成されてもよい。或いは、固定機構50及び固定解除機構55は、それぞれ、その他の構造を有してもよい。
【0059】
上記実施形態では、付勢機構がコイル状のバネ部材36で構成される場合を説明したが、これに限定されない。例えば、付勢機構は、棒状に形成した外れ止め部材35をU字状に撓ませてその一方端及び他方端をフック本体32に取り付け、当該外れ止め部材35の復元力を利用することで構成されてもよいし、或いは、その他の態様で構成されてもよい。
【0060】
上記実施形態では、無人潜水機制御装置64が無人潜水機本体61に設けられる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、無人潜水機制御装置64は、船舶SH上に設けられてもよい。
【0061】
上記実施形態では、操作装置66が無人潜水機制御装置64と電気ケーブル68を介して電気的に接続される場合について説明したが、これに限定されない。例えば、操作装置66は、無人潜水機制御装置64と無線で交信できるように構成されてもよい。
【0062】
上記実施形態では、引き上げ対象である係留チェーンCの先端部にロープR
1、R
2を介して連結される浮標Bの一部(連結物)にフック30を係合させる場合について説明したが、これに限定されない。すなわち、係留チェーンCの先端部にフック30を直接係合させてもよい。また、本実施形態に係る引き上げ装置10は、係留チェーンCの先端部を引き上げるだけでなく、係留チェーンCの全てを引き上げたり、又は、係留チェーンC以外の他の沈没体又は当該沈没体に連結される連結物を引き上げたりすることも可能である。
【0063】
上記実施形態では、引き上げ補助装置20が無人潜水機60を備える場合について説明したが、この場合に限定されない。すなわち、無人潜水機60を備えずに、フック30、取り付け機構40、固定機構50及び固定解除機構55のみで扱われてもよい。
【0064】
上記実施形態では、本実施形態に係る引き上げ補助装置20が、海底に沈んだ沈没体(すなわち、係留チェーンC)を引き上げる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、本実施形態に係る引き上げ補助装置20は、湖底に沈んだ沈没体を引き上げる場合にも用いることができる。