(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980300
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】多色グラビア輪転機
(51)【国際特許分類】
B41F 13/24 20060101AFI20211202BHJP
B41F 9/02 20060101ALI20211202BHJP
B41F 9/18 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
B41F13/24 138
B41F9/02
B41F9/18
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-538011(P2019-538011)
(86)(22)【出願日】2018年7月25日
(86)【国際出願番号】JP2018027803
(87)【国際公開番号】WO2019039176
(87)【国際公開日】20190228
【審査請求日】2020年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2017-158685(P2017-158685)
(32)【優先日】2017年8月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131625
【氏名又は名称】株式会社シンク・ラボラトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】重田 龍男
【審査官】
佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2017/0217156(US,A1)
【文献】
特開2000−071417(JP,A)
【文献】
特開平04−067039(JP,A)
【文献】
特開2017−030102(JP,A)
【文献】
特開2017−087307(JP,A)
【文献】
特開平04−284248(JP,A)
【文献】
実開平02−029725(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0072992(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01593499(EP,A1)
【文献】
特開2015−120311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 13/24
B41F 9/02
B41F 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の印刷ユニットを有し、各印刷ユニットに、グラビア印刷用のパターンが刻設されたグラビア印刷用版胴をセットして色を重ねて印刷することで多色印刷する多色グラビア輪転機であり、
前記複数の印刷ユニットと、
円状のハンドリングエリアを有し、アーム先端部の間隔を広狭させて前記グラビア印刷用版胴の長手方向の両端を把持しチャックしてハンドリングすることで前記印刷ユニットのグラビア印刷用版胴を交換可能とされてなる第一の非走行型産業ロボットと、
円状のハンドリングエリアを有し、アーム先端部の間隔を広狭させて前記グラビア印刷用版胴の長手方向の両端を把持しチャックしてハンドリングすることで前記印刷ユニットのグラビア印刷用版胴を交換可能とされてなる第二の非走行型産業ロボットと、
グラビア印刷用版胴をストックしておくためのターンテーブル式の版胴ストック装置と、給紙装置の役目を果たす自動紙継装置と、
巻取装置の役目を果たす自動紙切装置と、
を含み、
前記第一の非走行型産業ロボットのハンドリングエリアと、前記第二の非走行型産業ロボットのハンドリングエリアとが隣接又は一部重複してなり、
前記第一の非走行型産業ロボットのハンドリングエリア及び前記第二の非走行型産業ロボットのハンドリングエリアに、前記複数の印刷ユニットが設置されてなり、
前記印刷ユニットにセットされるグラビア印刷用版胴が前記第一の非走行型産業ロボット又は前記第二の非走行型産業ロボットによって交換されてなるようにされ、
前記第一の非走行型産業ロボット及び前記第二の非走行型産業ロボットが、固定式台座部と、前記固定式台座部に接続された旋回式アーム部と、を有し、
前記第一の非走行型産業ロボット及び前記第二の非走行型産業ロボットのハンドリングエリアの中心が同一軸線上に位置せしめられてなり、前記ハンドリングエリアの同一軸線に対して、前記版胴の回転軸が直交するように前記複数の印刷ユニットが並列して設置せしめられてなる、多色グラビア輪転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の印刷ユニットをもち、多色印刷を行うためのグラビア輪転印刷機である多色グラビア輪転機に関し、より詳しくは、版胴を自動的に交換可能とした多色グラビア輪転機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多色グラビア輪転機としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1では、記載された印刷機の印刷ユニットにおける印刷機器を取替える方法および装置として、キャリジに装着された、彫り込んであるシリンダなどの印刷要素を取替える方法と装置が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された印刷機の印刷ユニットにおける印刷機器を取替える方法および装置では、印刷機の複数の印刷ユニットに平行して多数の作業機器を設置する必要があるし、また版胴の交換作業に時間もかかるという問題があった。
【0004】
また、特許文献2では、印刷ラインを構成する印刷ユニットが多数であっても、また印刷ラインが複数列であっても、印刷ロールの交換に共通使用できる印刷ロール自動交換機能を有する走行形産業用ロボットを備えた印刷工場も提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載された印刷工場では、走行形のロボットを用いており、ロボットの走行ゾーンも必要なため、ロボットの走行ゾーンのスペースの確保のほか、版胴の交換作業に時間もかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−203056号公報
【特許文献2】特開2000−71417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたもので、複数の印刷ユニットにおける版胴の交換を自動的に且つ従来よりも迅速に行うことができるようにした多色グラビア輪転機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る多色グラビア輪転機は、複数の印刷ユニットを有し、各印刷ユニットに版胴をセットして色を重ねて印刷することで多色印刷する多色グラビア輪転機であり、前記複数の印刷ユニットと、円状のハンドリングエリアを有し、前記版胴をチャックしてハンドリングすることで前記印刷ユニットの版胴を交換可能とされてなる第一の非走行型産業ロボットと、円状のハンドリングエリアを有し、前記版胴をチャックしてハンドリングすることで前記印刷ユニットの版胴を交換可能とされてなる第二の非走行型産業ロボットと、を含み、前記第一の非走行型産業ロボットのハンドリングエリアと、前記第二の非走行型産業ロボットのハンドリングエリアとが隣接又は一部重複してなり、前記第一の非走行型産業ロボットのハンドリングエリア及び前記第二の非走行型産業ロボットのハンドリングエリアに、前記複数の印刷ユニットが設置されてなり、前記印刷ユニットにセットされる版胴が前記第一の非走行型産業ロボット又は前記第二の非走行型産業ロボットによって交換されてなるようにした、多色グラビア輪転機である。
【0009】
前記第一の非走行型産業ロボット及び前記第二の非走行型産業ロボットが、固定式台座部と、前記固定式台座部に接続された旋回式アーム部と、を有するのが好適である。
【0010】
前記第一の非走行型産業ロボット及び前記第二の非走行型産業ロボットのハンドリングエリアの中心が同一軸線上に位置せしめられてなり、前記ハンドリングエリアの同一軸線に対して、前記版胴の回転軸が直交するように前記複数の印刷ユニットが並列して設置せしめられてなるのが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の印刷ユニットにおける版胴の交換を自動的に且つ従来よりも迅速に行うことができるようにした多色グラビア輪転機を提供することができるという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る多色グラビア輪転機の一つの実施の形態を示す概略平面図である。
【
図2】本発明に係る多色グラビア輪転機の印刷機構部の一つの実施の形態を示す長手方向の概略側面図である。
【
図3】本発明に係る多色グラビア輪転機の一つの実施の形態を示す短手方向の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0014】
本発明に係る多色グラビア輪転機を添付図面を用いて説明する。図において、符号10は本発明に係る多色グラビア輪転機を示す。多色グラビア輪転機10は、複数の印刷ユニット12a〜12gを有し、各印刷ユニット12a〜12gに版胴14a〜14gをセットして色を重ねて印刷することで多色印刷する多色グラビア輪転機である。図示例では、多色印刷の例として、7色印刷(C,M,Y,K,R,G,Bなど)の例を示した。多色グラビア輪転機では、各印刷ユニット12a〜12gの数に対応して、版胴が必要となるため、図示例では版胴14a〜14gとして7本の版胴が必要となる。
【0015】
多色グラビア輪転機10は、前記複数の印刷ユニット12a〜12gを備えており、円状のハンドリングエリアPを有し、前記版胴14a〜14gをチャックしてハンドリングすることで前記印刷ユニット12a〜12gの版胴14a〜14gを交換可能とされてなる第一の非走行型産業ロボット16と、円状のハンドリングエリアQを有し、前記版胴14a〜14gをチャックしてハンドリングすることで前記印刷ユニット12a〜12gの版胴14a〜14gを交換可能とされてなる第二の非走行型産業ロボット18と、を含む構成とされている。
【0016】
第一の非走行型産業ロボット16と第二の非走行型産業ロボット18は、それぞれがアーム先端部20及びアーム先端部22を備えており、前記アーム先端部20,22の間隔を広狭させて版胴14a〜14gの両端を把持するようにして版胴14a〜14gをチャックする構成とされている(
図3参照)。また、第一の非走行型産業ロボット16と第二の非走行型産業ロボット18の固定式台座部24,26は、床面Fに固定されている。このように、第一の非走行型産業ロボット16と第二の非走行型産業ロボット18は、特許文献2に記載されたような、台座が移動する走行型の産業ロボットではなく、台座が床面に固定された固定型の産業ロボットであるため、産業ロボットが走行するための走行レーンが不要である。このため、従来よりもスペースの確保ができ、また、走行レーンを産業ロボットが行き来する必要もないため、版胴の交換作業の迅速化が図れる。本発明に係る多色グラビア輪転機10では、特許文献2に記載されたような構造の装置と比べて、版胴の交換作業において、およそ10倍もの時間の短縮が可能である。
【0017】
また、前記第一の非走行型産業ロボット16のハンドリングエリアPと、前記第二の非走行型産業ロボット18のハンドリングエリアQとが隣接又は一部重複してなるように構成されている。
図1の例では、前記第一の非走行型産業ロボット16のハンドリングエリアPと、前記第二の非走行型産業ロボット18のハンドリングエリアQとが一部重複している例を示したが、ハンドリングエリアPとハンドリングエリアQとは隣接していてもよい。非走行型産業ロボットのハンドリングエリアは非走行型産業ロボットのロボットアームの旋回範囲であり、非走行型産業ロボットの作業エリア(又は作業範囲)となる。
図3の符号46は、前記第一の非走行型産業ロボット16の固定式台座部24に接続された旋回式アーム部を示し、旋回式アーム部46の先端がアーム先端部20とされている。前記第二の非走行型産業ロボット18の固定式台座部26にも同様に旋回式アーム部48に接続されており、先端がアーム先端部22とされている。前記第一の非走行型産業ロボット16及び前記第二の非走行型産業ロボット18のロボットアームは旋回自在な多軸のロボットアームである。この前記第一の非走行型産業ロボット16及び前記第二の非走行型産業ロボット18は制御盤を操作することで制御される。
【0018】
そして、前記第一の非走行型産業ロボット16のハンドリングエリアP及び前記第二の非走行型産業ロボット18のハンドリングエリアQに、前記複数の印刷ユニット12a〜12gが設置されてなり、前記印刷ユニット12a〜12gにセットされる版胴14a〜14gが前記第一の非走行型産業ロボット16又は前記第二の非走行型産業ロボット18によって交換されるように構成されている。
【0019】
図示例では、前記複数の印刷ユニット12a〜12gは、印刷ユニット12a〜12cが前記第一の非走行型産業ロボット16の作業エリアであるハンドリングエリアP上に設置されており、印刷ユニット12d〜12gが前記第二の非走行型産業ロボット18の作業エリアであるハンドリングエリアQ上に設置されている。前記複数の印刷ユニット12a〜12gのいずれの印刷ユニットを前記第一の非走行型産業ロボット16及び前記第二の非走行型産業ロボット18のどちらのハンドリングエリアに設置するかは、適宜変更すればよい。
【0020】
また、
図1において、符号28はインクの付いた版胴を洗浄するための洗浄槽であり、洗浄槽28は、前記第一の非走行型産業ロボット16のハンドリングエリアPに設置されている。また、
図1において、符号30もインクの付いた版胴を洗浄するための洗浄槽であり、洗浄槽30は、前記第二の非走行型産業ロボット18のハンドリングエリアQに設置されている。
図1において、符号32は版胴14をストックしておくためのターンテーブル式の版胴ストック装置である。なお、
図1において、符号34は梯子を示す。
【0021】
また、前記複数の印刷ユニット12a〜12gにはそれぞれ制御盤36a〜36gが設けられている。符号38a,38bは自動紙継装置であり、それぞれ給紙装置の役目を果たす。符号40a,40bは自動紙切装置であり、それぞれ巻取装置の役目を果たす。
図1において、符号42a,42bはフレーム部材であり、前記複数の印刷ユニット12a〜12gと自動紙継装置38a,38bと自動紙切装置40a,40bとで印刷機構部44を構成している。多色グラビア輪転機10は、印刷機構部44の隣に第一の非走行型産業ロボット16と第二の非走行型産業ロボット18とが並置された構成となっている。なお、
図1及び
図2において、符号Oはオペレータを示す。
【0022】
さらに、
図1に示される如く、前記第一の非走行型産業ロボット16及び前記第二の非走行型産業ロボット18のハンドリングエリアP,Qの中心が同一軸線上に位置せしめられてなり、前記ハンドリングエリアP,Qの同一軸線に対して、前記版胴14a〜14gの回転軸が直交するように前記複数の印刷ユニット12a〜12gが並列して設置せしめられている。
【0023】
このように構成された多色グラビア輪転機10において、前記複数の印刷ユニット12a〜12gで印刷が行われて版胴14a〜14gの交換の必要が生じると、第一の非走行型産業ロボット16と第二の非走行型産業ロボット18は、それぞれのアーム先端部20及びアーム先端部22の間隔を広狭させて版胴14a〜14gの両端を把持して版胴14a〜14gをチャックする。そして、前記複数の印刷ユニット12a〜12gから版胴14a〜14gを外して、洗浄槽28,30で洗浄して版胴ストック装置32にストックする。
【0024】
そして、版胴ストック装置32にストックされていた別のパターンが刻設された版胴14が第一の非走行型産業ロボット16と第二の非走行型産業ロボット18によってチャックされて前記複数の印刷ユニット12a〜12gにセットされて次の印刷が行われる。印刷が終わって版胴14を交換する場合には、上記と同様となる。
【0025】
このようにして、多色グラビア輪転機10では、複数の印刷ユニット12a〜12gにおける版胴14a〜14gの交換を自動的に且つ従来よりも迅速に行うことができるように構成されている。
【符号の説明】
【0026】
10:本発明に係る多色グラビア輪転機、12a〜12g:印刷ユニット、14,14a〜14g:版胴、16:第一の非走行型産業ロボット、18:第二の非走行型産業ロボット、20:第一の非走行型産業ロボットのアーム先端部、22:第二の非走行型産業ロボットのアーム先端部、24:第一の非走行型産業ロボットの固定式台座部、26:第二の非走行型産業ロボットの固定式台座部、28,30:洗浄槽、32:ターンテーブル式の版胴ストック装置、34:梯子、36a〜36g:制御盤、38a,38b:自動紙継装置、40a,40b:自動紙切装置、42a,42b:フレーム部材、44:印刷機構部、46:第一の非走行型産業ロボットの旋回式アーム部、48:第二の非走行型産業ロボットの旋回式アーム部、F:床面、O:オペレータ、P:第一の非走行型産業ロボットのハンドリングエリア、Q:第二の非走行型産業ロボットのハンドリングエリア。