(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0018】
[1.第1の実施の形態]
[1−1.紫外線反射材の構成]
第1の実施の形態に係る紫外線反射材は、塗壁材料である漆喰と類似した成分を含有している。この紫外線反射材は、調合された段階において液状ないしゲル状であり、施工時に壁面等に塗布された後、乾燥により硬化する。
【0019】
本実施の形態による紫外線反射材は、具体的に消石灰(すなわち水酸化カルシウム:Ca(OH)
2)、炭酸カルシウム(CaCO
3)及び増粘剤等を含有している。このうち増粘剤等には、骨材、寸莎(すさ)及びのりが含まれる。骨材としては、例えば山砂、川砂や石灰製砂等を使用することができる。寸莎としては、例えば麻や藁等の繊維を使用することができる。のりとしては、例えば草木や海藻等、或いは合成樹脂等を使用することができ、接着や保水等の役割を果たす。
【0020】
因みに日本国では、JIS A 6919:2020「内装上塗り用既調合しっくい」において、漆喰(しっくい)に関し、消石灰又は生石灰の質量の比率が、全固形分質量の50[%]以上である旨が規定されている。一方、本実施の形態に係る紫外線反射材は、消石灰の質量(重量)の比率が50[%]未満となる場合もあるため、JISにおいて規定された漆喰に該当するもの、及び該当しないものの双方が含まれている。
【0021】
[1−2.材料の粒子径及び反射率の測定]
次に、本実施の形態による紫外線反射材に関し、消石灰及び炭酸カルシウムの比率(重量比)や、該炭酸カルシウムの粒径を変化させた試料を複数種類作成し、各試料を平面板にそれぞれ塗布して乾燥及び硬化させた後、紫外線の反射率を測定した。
【0022】
本実施の形態では、炭酸カルシウムの粒子径として、平均粒子径を用いるものとした。本実施の形態における「平均粒子径」は、原則として、レーザー回折式の粒度分布測定装置(島津製作所製 SALD−200V)により測定した粒度分布における積算値が50%となる粒径、いわゆるD50を意味する。また表記の都合上、以下の表や図面等においては、平均粒子径をMD(Mean Diameter)とも表す。
【0023】
また本実施の形態では、紫外線の反射率を測定する際に、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所製 UV−3600)及び積分球付属装置を使用した。具体的には、光源光を回折格子によって単色光に分光し、波長を240−780[nm]の範囲で変化させながら、試料を塗布した平面板の平面に照射し、当該平面において反射した反射光の強度を、拡散反射される光を含めて積分球により検出器に集めて測定した。また、光源光を所定の基準板に照射して得られる反射光の強度を検出器により測定してベースラインとし、各試料の反射光の強度を基準光の強度で除算して数値「100」を乗じることにより、百分率により表される反射率を算出するものとした。
【0024】
さらに本実施の形態では、紫外線(UV:ultraviolet)を波長領域ごとに区分し、波長が400−315[nm]の紫外線をUV−Aと呼び、波長が315−280[nm]の紫外線をUV−Bと呼び、波長が280−240[nm]の紫外線をUV−Cと呼ぶものとする。また紫外線は、全般的に殺菌効果を有しており、このうちUV−Cは、上述したように、特に強い殺菌作用があることが知られている。
【0025】
[1−3.実施例]
[実施例1]
実施例1では、表1に示すように、平均粒子径が1.0[μm]の炭酸カルシウムを用いながら、該炭酸カルシウム及び消石灰の比率を相違させた5種類の試料SC1−1、SC1−2、SC1−3、SC1−4及びSC1−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、
図1に示すグラフが得られた。
【0027】
[実施例2]
実施例2では、表2に示すように、平均粒子径が3.0[μm]の炭酸カルシウムを用いながら、該炭酸カルシウム及び消石灰の比率を相違させた5種類の試料SC2−1、SC2−2、SC2−3、SC2−4及びSC2−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、
図2に示すグラフが得られた。
【0029】
[実施例3]
実施例3では、表3に示すように、平均粒子径が6.0[μm]の炭酸カルシウムを用いながら、該炭酸カルシウム及び消石灰の比率を相違させた5種類の試料SC3−1、SC3−2、SC3−3、SC3−4及びSC3−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、
図3に示すグラフが得られた。
【0031】
[実施例4]
実施例4では、表4に示すように、平均粒子径が8.9[μm]の炭酸カルシウムを用いながら、該炭酸カルシウム及び消石灰の比率を相違させた5種類の試料SC4−1、SC4−2、SC4−3、SC4−4及びSC4−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。ただし、この実施例4において用いる炭酸カルシウムの平均粒子径は、上述したD50では無く、JIS M 8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算される値(SW径とも呼ばれる)である。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、
図4に示すグラフが得られた。
【0033】
[1−4.各種統計値の算出]
次に、実施例1〜実施例4において得られた反射率の測定結果を基に、各種の統計値を算出した。まず、炭酸カルシウムの平均粒子径が3.0[μm]である実施例2において得られた反射率の一部を基に、紫外線の各波長領域(UV−A、UV−B及びUV−C)における平均値(以下これを平均反射率と呼ぶ)をそれぞれ算出したところ、表5に示す各値が得られた。
【0035】
また、この表5に示した各値を基に、波長領域と平均反射率との関係をまとめたところ、
図5に示すグラフが得られた。この
図5では、炭酸カルシウムの比率を90%、80%、50%及び45%とした場合における、波長領域と平均反射率との関係を、曲線Q5−1、Q5−2、Q5−3及びQ5−4としてそれぞれ表している。
【0036】
さらに、表5に示した各値を基に、炭酸カルシウムの比率と平均反射率との関係をまとめたところ、
図6に示すグラフが得られた。この
図6では、波長領域UV−A、UV−B及びUV−Cにおける、炭酸カルシウムの比率と平均反射率との関係を、曲線Q6−A、Q6−B及びQ6−Cとしてそれぞれ表している。
【0037】
今度は、実施例1〜実施例4において炭酸カルシウムの比率を90[%]とした場合に着目し、試料SC1−1、SC2−1、SC3−1及びSC4−1を抽出して、それぞれの波長と反射率との関係を重ね合わせたところ、
図7に示すグラフが得られた。
【0038】
また、試料SC1−1、SC2−1、SC3−1及びSC4−1により得られた反射率を基に、紫外線の各波長領域(UV−A、UV−B及びUV−C)における平均値(すなわち平均反射率)をそれぞれ算出したところ、表6に示す各値が得られた。
【0040】
さらに、表6に示した各値を基に、炭酸カルシウムの平均粒子径と平均反射率との関係をまとめたところ、
図8に示すグラフが得られた。この
図8では、波長領域UV−A、UV−B及びUV−Cにおける、炭酸カルシウムの平均粒子径と平均反射率との関係を、曲線Q8−A、Q8−B及びQ8−Cとしてそれぞれ表している。
【0041】
[1−5.まとめ]
以上の構成において、第1の実施の形態では、紫外線反射材に関し、消石灰及び炭酸カルシウムの比率や、該炭酸カルシウムの平均粒子径を相違させた試料を複数種類作成し、各試料の反射率を測定し、また各種統計値を算出した。
【0042】
ここで、第1の実施の形態との比較用に、周知物品である4種類の比較試料SR1、SR2、SR3及びSR4を採用し、それぞれにおける波長と反射率との関係を計測したところ、
図9に示す特性曲線Q9−1、Q9−2、Q9−3及びQ9−4が得られた。
【0043】
比較試料SR1は、一般家庭用のアルミホイル(マイホイル、株式会社UACJ製箔製)であり、特性曲線Q9−1として示すように、紫外線(240−400[nm])に対する反射率が約45−55[%]であった。また比較試料SR1は、波長254[nm]における反射率が47.71[%]であった。
【0044】
比較試料SR2は、市販のアルミニウム板であり、特性曲線Q9−2として示すように、紫外線に対する反射率が約28−44[%]であった。また比較試料SR2は、波長254[nm]における反射率が31.14[%]であった。
【0045】
比較試料SR3は、市販のビニルクロス(白色)であり、特性曲線Q9−3として示すように、紫外線に対する反射率が約19−68[%]であった。また比較試料SR3は、波長254[nm]における反射率が22.5[%]であった。
【0046】
比較試料SR4は、市販のペンキ(白色)を塗布及び硬化させたものであり、特性曲線Q9−4として示すように、紫外線に対する反射率が約6−47[%]であった。また比較試料SR4は、波長254[nm]における反射率が6.9[%]であった。
【0047】
このように各比較試料は、紫外線の範囲内において最も波長が長い400[nm]付近において、反射率が最大でも68[%]であり、波長254[nm]においては反射率が最大でも約48[%]であった。
【0048】
一方、第1の実施の形態では、まず
図1から、実施例1における傾向として、同一の試料においては、波長が大きく(長く)なるに連れて反射率が概ね増加しており、また同一の波長においては、炭酸カルシウムの比率が大きくなるに連れて反射率が概ね高まっている。この傾向は、
図2〜
図4に示したように、実施例2〜実施例4においても同様であった。
【0049】
また、表5及び
図6から分かるように、炭酸カルシウムの平均粒子径が3.0[μm]である場合、各波長領域において、該炭酸カルシウムの比率が大きくなるに連れて、平均反射率が高まっている。このうち波長領域UV−Cにおける平均反射率の値及び曲線Q6−Cに着目すると、炭酸カルシウムの比率が比較的少ない45[%]のときに平均反射率が比較的高い60[%]以上となっており、炭酸カルシウムの比率が僅かに増加して50[%]になると平均反射率が一段と高まって65[%]以上となっている。さらに曲線Q6−Cでは、炭酸カルシウムの比率が比較的高い90[%]のときに、平均反射率が十分に高い70[%]以上となっている。
【0050】
このことから、第1の実施の形態による紫外線反射材では、炭酸カルシウムの比率を少なくとも50[%]以上とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を65[%]以上のように十分に高い値とすることができる。
【0051】
さらに、表6及び
図8から分かるように、炭酸カルシウムの比率を90[%]とした場合、各波長領域において、該炭酸カルシウムの平均粒子径が小さくなるに連れて、平均反射率が高まっている。このうち波長領域UV−Cの曲線Q8−Cに着目すると、炭酸カルシウムの平均粒子径が比較的大きい8.9[μm]の場合に、平均反射率が53.73[%]に過ぎないものの、平均粒子径がこれよりもやや小さい6.0[μm]の場合に、平均反射率が67.95[%]にまで大きく増加している。さらに曲線Q8−Cでは、炭酸カルシウムの平均粒子径が十分に小さい1.0[μm]の場合に、平均反射率が73.52[%]にまで高まっている。
【0052】
また
図8において、波長領域UV−Bの曲線Q8−Bは、平均反射率が曲線Q8−Cよりも全般的に高く、平均粒子径が1.0[μm]の場合に、平均反射率が77.15[%]にまで高まっている。さらに、波長領域UV−Aの曲線Q8−Aは、平均反射率が曲線Q8−Bよりも全般的に高く、平均粒子径が1.0[μm]の場合に、平均反射率が83.87[%]にまで高まっている。
【0053】
このような関係から、第1の実施の形態による紫外線反射材では、炭酸カルシウムの平均粒子径を少なくとも6.0[μm]以下とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を、67.95[%]以上のように十分に高い値とすることができる。またこの場合、波長領域UV−B(280−315[nm])における平均反射率を71.90[%]以上にでき、さらに波長領域UV−A(315−400[nm])における平均反射率を79.66[%]以上のように極めて高い値とすることができる。これらの平均反射率は、各比較試料における紫外線の反射率(
図9)と比較しても、十分に高い値となっている。
【0054】
ところで、波長領域UV−C(240−280[nm])における紫外線の反射率に関して、上述したように、波長254[nm]付近の紫外線に対するアルミニウム板の反射率が約80[%]となっている。しかしながら、仮にアルミニウム板を壁面等に設置する場合、壁面に合わせた形状への加工処理や、壁面に固定するための施工処理等が必要となり、技術やコスト等の面で施工が困難となる場合がある。また、上述したように表面にアルミニウムを蒸着させる場合には、加工処理が煩雑になり、コストも上昇してしまう。
【0055】
一方、表6から分かるように、第1の実施の形態による紫外線反射材のうち、平均粒子径が1.0[μm]の炭酸カルシウムを90[%]の比率とした試料SC1−1では、波長領域UV−Cにおける平均反射率が73.52[%]であり、アルミニウム板の約80[%]に対して十分に近い値となっている。また、この紫外線反射材は、一般的な漆喰と同様、壁面等に塗布した後、乾燥により硬化させることにより施工が完了する。
【0056】
このため第1の実施の形態による紫外線反射材は、例えば複雑な凹凸を有する面や曲面など、アルミニウム板の設置やアルミニウムの蒸着加工等が困難な壁面であっても容易に施工でき、波長領域UV−Cの紫外線を高い反射率で反射することができる。これによりこの紫外線反射材は、殺菌灯等の光源から照射される波長領域UV−Cの紫外線を良好に反射でき、当該光源から紫外線が直接到達し得ない箇所にも反射を利用して到達させ、幅広く殺菌させることができる。
【0057】
さらに第1の実施の形態による紫外線反射材は、例えば一般家庭の内壁面等に施工された場合、窓から入射する太陽光、特に当該太陽光に含まれる波長領域UV−Aから波長領域UV−Cに渡る広い範囲の紫外線を、当該壁面において反射させることができる。これによりこの紫外線反射材は、室内において太陽光が直接到達し得ないような箇所にまでその反射光を到達させることができ、室内の様々な箇所において、浮遊菌やドアノブの表面に付着した細菌等を殺菌すること、或いはウイルスの死滅効果を図ること等が期待できる。
【0058】
すなわち第1の実施の形態による紫外線反射材は、
図1〜
図9の各波形としても示したように、白色の壁紙や塗料のような一般的な内壁材料と比較して、紫外線の反射率が格段に高いため、当該紫外線反射材が内壁面等に施工された室内空間の様々な箇所において、極めて高い殺菌効果を得ることができる。
【0059】
以上の構成によれば、第1の実施の形態による紫外線反射材は、炭酸カルシウムの比率を少なくとも50[%]以上とし、且つ平均粒子径を6.0[μm]以下とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を十分に高い値とすることができる。
【0060】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による紫外線反射材は、第1の実施の形態による紫外線反射材の各成分、すなわち漆喰と類似した成分に対し、硫酸バリウム(BaSO
4)を加えるようにした。
【0061】
[2−1.材料の粒子径及び反射率の測定]
この第2の実施の形態による紫外線反射材に関し、消石灰、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムの比率や、該硫酸バリウムの平均粒子径を変化させた試料を複数種類作成し、各試料を平面板にそれぞれ塗布して乾燥及び硬化させた後、第1の実施の形態と同様の手法により、紫外線の反射率を測定した。
【0062】
本実施の形態では、硫酸バリウムの平均粒子径として、動的光散乱法による粒子径の測定装置(マルバーン・パナリティカル社製 ゼータサイザーナノ ZS)により得られた測定値を使用した。また本実施の形態では、第1の実施の形態における実施例2において使用した、平均粒子径が3.0[μm]の炭酸カルシウムを使用した。
【0063】
[2−2.実施例]
[実施例5]
実施例5では、表7に示すように、平均粒子径が0.3[μm]の硫酸バリウムを用いながら、該硫酸バリウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率を相違させた5種類の試料SB1−1、SB1−2、SB1−3、SB1−4及びSB1−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、
図10に示すグラフが得られた。
【0065】
[実施例6]
実施例6では、表8に示すように、平均粒子径が1.1[μm]の硫酸バリウムを用いながら、該硫酸バリウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率を相違させた5種類の試料SB2−1、SB2−2、SB2−3、SB2−4及びSB2−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、
図11に示すグラフが得られた。
【0067】
[実施例7]
実施例7では、表9に示すように、平均粒子径が1.7[μm]の硫酸バリウムを用いながら、該硫酸バリウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率を相違させた5種類の試料SB3−1、SB3−2、SB3−3、SB3−4及びSB3−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、
図12に示すグラフが得られた。
【0069】
[実施例8]
実施例8では、表10に示すように、平均粒子径が4.8[μm]の硫酸バリウムを用いながら、該硫酸バリウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率を相違させた5種類の試料SB4−1、SB4−2、SB4−3、SB4−4及びSB4−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、
図13に示すグラフが得られた。
【0071】
[2−3.各種統計値の算出]
次に、実施例5〜実施例8において得られた反射率の測定結果を基に、各種の統計値を算出した。まず、硫酸バリウムの平均粒子径が1.7[μm]である実施例7において得られた反射率の一部を基に、紫外線の各波長領域(UV−A、UV−B及びUV−C)における平均値(以下これを平均反射率と呼ぶ)をそれぞれ算出したところ、表11に示す各値が得られた。
【0073】
また、この表11に示した各値を基に、波長領域と平均反射率との関係をまとめたところ、
図14に示すグラフが得られた。この
図14では、硫酸バリウムの比率を90%、60%、25%、5%及び0%とした場合における、波長領域と平均反射率との関係を、曲線Q14−1、Q14−2、Q14−3、Q14−4及びQ14−5としてそれぞれ表している。
【0074】
さらに、表11に示した各値を基に、硫酸バリウムの比率と平均反射率との関係をまとめたところ、
図15に示すグラフが得られた。この
図15では、波長領域UV−A、UV−B及びUV−Cにおける、硫酸バリウムの比率と平均反射率との関係を、曲線Q15−A、Q15−B及びQ15−Cとしてそれぞれ表している。
【0075】
今度は、実施例5〜実施例8において硫酸バリウムの比率を90[%]とした場合に着目し、試料SB1−1、SB2−1、SB3−1及びSB4−1を抽出して、それぞれの波長と反射率との関係を重ね合わせたところ、
図16に示すグラフが得られた。
【0076】
また、試料SB1−1、SB2−1、SB3−1及びSB4−1により得られた反射率を基に、紫外線の各波長領域(UV−A、UV−B及びUV−C)における平均値(すなわち平均反射率)をそれぞれ算出したところ、表12に示す各値が得られた。
【0078】
さらに、表12に示した各値を基に、硫酸バリウムの平均粒子径と平均反射率との関係をまとめたところ、
図17に示すグラフが得られた。この
図17では、波長領域UV−A、UV−B及びUV−Cにおける、硫酸バリウムの平均粒子径と平均反射率との関係を、曲線Q17−A、Q17−B及びQ17−Cとしてそれぞれ表されている。
【0079】
[2−4.まとめ]
以上の構成において、第2の実施の形態では、紫外線反射材に関し、硫酸バリウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率や、該硫酸バリウムの平均粒子径を相違させた試料を複数種類作成し、各試料の反射率を測定し、また各種統計値を算出した。
【0080】
まず
図10から、実施例5における傾向として、同一の試料においては、波長が大きく(長く)なるに連れて反射率が概ね増加しており、また同一の波長においては、硫酸バリウムの比率が大きくなるに連れて反射率が概ね高まっている。この傾向は、
図11〜
図13に示したように、実施例6〜実施例8においても同様であった。
【0081】
また、表11及び
図15から分かるように、硫酸バリウムの平均粒子径が1.7[μm]である場合、各波長領域において、該硫酸バリウムの比率が大きくなるに連れて、平均反射率が高まっている。このうち波長領域UV−Cにおける平均反射率の値及び曲線Q15−Cに着目すると、硫酸バリウムが含まれていない0[%]のときに平均反射率が52.99[%]であったのに対し、僅かに含まれる5[%]のときに平均反射率が57.17[%]にまで高まっている。また、硫酸バリウムの比率が25[%]になると平均反射率が60[%]を超え、硫酸バリウムの比率が90[%]になると平均反射率が一段と高い65[%]以上となっている。
【0082】
このことから、第2の実施の形態による紫外線反射材では、硫酸バリウムの比率を少なくとも5[%]以上とし、一般に誤差と考え得る範囲を超えた比率とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を60[%]以上のように高い値とすることができる。
【0083】
さらに、表12及び
図17から分かるように、硫酸バリウムの比率を90[%]とした場合、各波長領域において、該硫酸バリウムの平均粒子径が小さくなるに連れて、平均反射率が高まっている。このうち波長領域UV−Cの曲線Q17−Cに着目すると、硫酸バリウムの平均粒子径が比較的大きい4.8[μm]の場合に、平均反射率が60.17[%]に過ぎないものの、平均粒子径がこれよりも小さい1.1[μm]の場合に、平均反射率が70[%]を超えるまでに増加している。さらに曲線Q17−Cでは、硫酸バリウムの平均粒子径が極めて小さい0.3[μm]の場合に、平均反射率が77.62[%]にまで高まっている。
【0084】
また
図17において、波長領域UV−Bの曲線Q17−Bは、平均反射率が曲線Q17−Cよりも全般的に高く、平均粒子径が0.3[μm]の場合に、平均反射率が80.30[%]にまで高まっている。さらに、波長領域UV−Aの曲線Q17−Aは、平均反射率が曲線Q17−Bよりも全般的に高く、平均粒子径が0.3[μm]の場合に、平均反射率が86.13[%]にまで高まっている。
【0085】
このような関係から、第2の実施の形態による紫外線反射材では、硫酸バリウムの平均粒子径を少なくとも4.8[μm]以下とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を、60.17[%]以上のように十分に高い値とすることができる。またこの場合、波長領域UV−B(280−315[nm])における平均反射率を62.98[%]以上にでき、さらに波長領域UV−A(315−400[nm])における平均反射率を68.65[%]以上のように極めて高い値とすることができる。
【0086】
これらをまとめると、第2の実施の形態による紫外線反射材では、消石灰、炭酸カルシウム及び増粘剤等を含有する塗壁材料、すなわち漆喰等に対し、硫酸バリウムを有意な比率で混合することにより紫外線の反射率を高めることができる。また第2の実施の形態による紫外線反射材では、硫酸バリウムの比率を高めること、及び該硫酸バリウムの平均粒子径を小さくすることにより、紫外線の反射率さらに高めることができる。
【0087】
また第2の実施の形態による紫外線反射材では、周知のアルミニウム板や一般的な内壁材料等と比較した場合に、第1の実施の形態による紫外線反射材と同様の作用効果を奏し得る。
【0088】
以上の構成によれば、第2の実施の形態による紫外線反射材は、硫酸バリウムの比率を少なくとも5[%]以上とし、且つ平均粒子径を4.8[μm]以下とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を十分に高い値とすることができる。
【0089】
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による紫外線反射材は、第1の実施の形態による紫外線反射材の各成分、すなわち漆喰と類似した成分に対し、炭酸マグネシウム(MgCO
3)を加えるようにした。
【0090】
この第3の実施の形態による紫外線反射材に関し、消石灰、炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウムの比率を変化させた試料を複数種類作成し、各試料を平面板にそれぞれ塗布して乾燥及び硬化させた後、第1の実施の形態と同様の手法により、紫外線の反射率を測定した。
【0091】
[実施例9]
実施例9では、表13に示すように、平均粒子径が3.0[μm]の炭酸マグネシウムを用いながら、該炭酸マグネシウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率を相違させた4種類の試料SM1−1、SM1−2、SM1−3及びSM1−4を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、
図18に示すグラフが得られた。
【0093】
次に、実施例9において得られた反射率の一部を基に、紫外線の各波長領域(UV−A、UV−B及びUV−C)における平均値(すなわち平均反射率)をそれぞれ算出したところ、表14に示す各値が得られた。
【0095】
また、この表14に示した各値を基に、炭酸マグネシウムの比率と平均反射率との関係をまとめたところ、
図19に示すグラフが得られた。この
図19では、波長領域UV−A、UV−B及びUV−Cにおける、炭酸マグネシウムの比率と平均反射率との関係を、曲線Q19−A、Q19−B及びQ19−Cとしてそれぞれ表している。
【0096】
以上の構成において、第3の実施の形態では、紫外線反射材に関し、炭酸マグネシウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率を相違させた試料を複数種類作成し、各試料の反射率を測定し、また波長領域ごとの統計値を算出した。
【0097】
まず
図18から、実施例9における傾向として、同一の試料においては、波長が大きく(長く)なるに連れて反射率が概ね増加しており、また同一の波長においては、炭酸マグネシウムの比率が大きくなるに連れて反射率が概ね高まっている。
【0098】
また、表14及び
図19から分かるように、各波長領域において、該炭酸マグネシウムの比率が大きくなるに連れて、平均反射率が高まっている。このうち波長領域UV−Cにおける平均反射率の値及び曲線Q19−Cに着目すると、炭酸マグネシウムが含まれていない0[%]のときに平均反射率が59.71[%]であったのに対し、僅かに含まれる5[%]のときに平均反射率が61.39[%]にまで高まっている。また、炭酸マグネシウムの比率が25[%]になると平均反射率が65[%]を超え、炭酸マグネシウムの比率が60[%]になると平均反射率がさらに高い67[%]以上となっている。
【0099】
また
図19において、波長領域UV−Bの曲線Q19−Bは、平均反射率が曲線Q19−Cよりも全般的に高く、炭酸マグネシウムの比率が60[%]の場合に平均反射率が76.51[%]にまで高まっている。さらに、波長領域UV−Aの曲線Q19−Aは、平均反射率が曲線Q19−Bよりも全般的に高く、炭酸マグネシウムの比率が60[%]の場合に平均反射率が81.97[%]にまで高まっている。
【0100】
このような関係から、第3の実施の形態による紫外線反射材では、炭酸マグネシウムの比率を5[%]以上60[%]以下とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を60[%]以上のように高い値とすることができる。
【0101】
また第3の実施の形態による紫外線反射材では、周知のアルミニウム板や一般的な内壁材料等と比較した場合に、第1の実施の形態による紫外線反射材と同様の作用効果を奏し得る。
【0102】
以上の構成によれば、第3の実施の形態による紫外線反射材は、炭酸マグネシウムの比率を5[%]以上60[%]以下とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を十分に高い値とすることができる。
【0103】
[4.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、炭酸カルシウムの比率を少なくとも50[%]以上とし、第2の実施の形態においては、硫酸バリウムの比率を5[%]以上とし、第3の実施の形態においては、炭酸マグネシウムの比率を5[%]以上とすることにより、紫外線の反射率を高める場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、これらを適宜組み合わせても良い。
【0104】
また上述した第1の実施の形態においては、紫外線反射材を診察室や病室の壁面に塗布する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば診察室の天井面や床面等、種々の面に塗布しても良い。或いは、例えば紫外線により食品等の殺菌処理を行う殺菌装置の内側面等、紫外線の照射により殺菌処理を行う対象物が存在する空間の内側面に塗布しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0105】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【解決手段】消石灰と、炭酸カルシウムと、増粘剤とを主要成分とする紫外線反射材において、炭酸カルシウムの比率を少なくとも50[%]以上とし、且つ炭酸カルシウムの平均粒子径を6.0[μm]以下とすることにより、殺菌効果が高いとされるUV−C(240−280[nm])を含む紫外線波長領域において、平均反射率を十分に高い値とすることができる。