特許第6980313号(P6980313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6980313
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】紫外線反射材
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/12 20060101AFI20211202BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20211202BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20211202BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20211202BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20211202BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20211202BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20211202BHJP
   C04B 7/34 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C04B28/12
   A61L9/20
   C04B14/28
   C04B22/14 A
   C04B22/10
   C04B20/00 B
   A61L2/10
   C04B7/34
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-174663(P2020-174663)
(22)【出願日】2020年10月16日
【審査請求日】2021年7月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304028988
【氏名又は名称】エコ・リバイバル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】望月 健史
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 朝則
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−123291(JP,A)
【文献】 特開2009−173723(JP,A)
【文献】 特開2010−024404(JP,A)
【文献】 特開2009−208367(JP,A)
【文献】 特開2019−052282(JP,A)
【文献】 特開昭53−003424(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/039354(WO,A1)
【文献】 特開2002−031704(JP,A)
【文献】 特開2006−225777(JP,A)
【文献】 特開2003−268261(JP,A)
【文献】 特開2020−083686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 − 32/02
C09D 1/00 − 1/12
A61L 9/20
A61L 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面等に塗布される紫外線反射材であって、
消石灰と、炭酸カルシウムと、増粘剤とを含有し、
前記炭酸カルシウムの平均粒子径が3.0[μm]以下であり、且つ該炭酸カルシウムが重量比において50[%]以上90[%]以下であり、
前記増粘剤が重量比において1[%]未満であり、
前記消石灰が重量比において9[%]以上49[%]以下であり、
波長が280−240[nm]のUV−C領域における反射率の平均値である平均反射率が65[%]以上である
ことを特徴とする紫外線反射材。
【請求項2】
壁面等に塗布される紫外線反射材であって、
消石灰と、炭酸カルシウムと、増粘剤とを含有し、
前記炭酸カルシウムの平均粒子径が6.0[μm]以下であり、且つ該炭酸カルシウムが重量比において90[%]であり
前記増粘剤が重量比において1[%]未満であり、
前記消石灰が重量比において9[%]であり、
波長が280−240[nm]のUV−C領域における反射率の平均値である平均反射率が67.95[%]以上である
ことを特徴とする紫外線反射材。
【請求項3】
壁面等に塗布される紫外線反射材であって、
消石灰と、硫酸バリウムと、増粘剤とを含有し、
前記硫酸バリウムの平均粒子径が1.7[μm]以下であり、且つ該硫酸バリウムが重量比において25[%]以上90[%]以下混合され、
前記増粘剤が重量比において1[%]未満であり、
前記消石灰が重量比において9[%]以上51[%]以下であり、
波長が280−240[nm]のUV−C領域における反射率の平均値である平均反射率が60[%]以上である
ことを特徴とする紫外線反射材。
【請求項4】
壁面等に塗布される紫外線反射材であって、
消石灰と、硫酸バリウムと、増粘剤とを含有し、
前記硫酸バリウムの平均粒子径が4.8[μm]以下であり、且つ該硫酸バリウムが重量比において90[%]混合され
前記増粘剤が重量比において1[%]未満であり、
前記消石灰が重量比において9[%]であり、
波長が280−240[nm]のUV−C領域における反射率の平均値である平均反射率が60.17[%]以上である
ことを特徴とする紫外線反射材。
【請求項5】
壁面等に塗布される紫外線反射材であって、
消石灰と、炭酸マグネシウムと、増粘剤とを含有し、
前記炭酸マグネシウムの平均粒子径が3.0[μm]以下であり、且つ該炭酸マグネシウムが重量比において5[%]以上60[%]以下の割合で混合され、
前記増粘剤が重量比において1[%]未満であり、
前記消石灰が重量比において39[%]以上51[%]以下であり、
波長が280−240[nm]のUV−C領域における反射率の平均値である平均反射率が60[%]以上である
ことを特徴とする紫外線反射材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線反射材に関し、紫外線を効率良く反射する紫外線反射材に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、波長が約400[nm]以下の光は紫外線(UV:Ultra Violet)と呼ばれている。このうち、波長が400−315[nm]の部分はUV−A領域と呼ばれ、波長が315−280[nm]の部分はUV−B領域と呼ばれ、さらに波長が約280[nm]以下の部分はUV−Cとも呼ばれている。
【0003】
一般に、太陽光(直射日光)の殺菌作用は古くから知られており、世界保健機関(WHO)が発展途上国の人に向けて水道水を太陽の元に置くことを推奨している。因みに、太陽から放射される太陽光には、本来的にUV−A領域、UV−B領域及びUV−C領域の紫外線が含まれているものの、このうちUV−C領域が大気中のオゾン層においてほぼ遮断されるため、地表に到達する太陽光にはUV−A領域及びUV−B領域が含まれる。従って、UV−A領域及びUV−B領域の紫外線には、ある程度の殺菌作用があると考えられる。
【0004】
一方、UV−C領域の紫外線のうち、特に波長が約254[nm]付近の光は、殺菌や抗ウイルスの効果が高いことが知られている。このため、波長が約254[nm]付近の紫外線は、殺菌線とも呼ばれる。また、この紫外線を照射する紫外線光源は、殺菌灯とも呼ばれる。
【0005】
また、波長が約254[nm]付近の紫外線に対する反射率は、アルミニウムが約80[%]と高い値を示すことが知られている。アルミニウムに関しては、板状に形成されたアルミニウム板の他に、ガラス板の表面にアルミニウムを蒸着させたものや、粉末状のアルミニウムを含有する塗料を塗布したものにおいても、紫外線の反射率が比較的高い値となることが知られている。
【0006】
そこで、例えば紫外線光源とアルミニウム等の反射板とを取り付けた殺菌装置により、医療用具や食料品等を効率良く殺菌することが考えられる。具体的な殺菌装置として、例えば複数の紫外線光源を装置内に整列配置し、これらと対向する位置にアルミニウム等でなる反射板を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この殺菌装置では、紫外線光源及び反射板の間に輸血用の液体バッグや飲料水を注入する液体バッグ等を設置し、該紫外線光源から紫外線を照射することにより、液体バッグ内の液体を殺菌することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−14751号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで医療分野では、例えば各種医療行為が行われる診察室や病室等において、室内を全体的に殺菌したい場合がある。一例として、腎不全の患者に対して人工透析が行われる人工透析室では、室内の浮遊菌や各器具の表面に付着した細菌等を殺菌することにより、患者の血液に細菌やウイルス等が入ることによる感染症を防止することが望ましい。また一般家庭においても、室内に浮遊或いは付着している細菌やウイルスの感染対策として、これらの細菌等を殺菌することにより感染力を抑止することが望ましい。
【0009】
そこで人工透析室では、例えば天井に紫外線光源を設置し、人工透析が行われない夜間等に該紫外線光源を点灯することにより、室内の浮遊菌や各器具の表面に付着した細菌等の殺菌やウイルスの死滅効果を図ることが考えられる。また一般家庭では、例えば太陽光を窓から室内に取り入れることにより、室内の浮遊菌やドアノブ等に付着した細菌やウイルスの死滅効果を図ることが考えられる。
【0010】
しかしながら、人工透析室には、患者が使用するベッドや透析装置等、種々の器具が設置されている。これらの器具は、その表面等において紫外線(殺菌線)を遮断することになり、また反射率が必ずしも高くない。また多くの場合、人工透析室の壁面に使用される壁紙やペンキ等の塗料、或いは樹脂のパネルは、紫外線(殺菌線)が吸収されてしまい、殆ど反射しない。さらに一般家庭においても、同様に室内に家具や生活用品等の各種物品が設置されているため、これらにより太陽光に含まれる紫外線が遮断されてしまい、その反射率は必ずしも高くない。また一般家庭では、壁紙、ペンキ等の塗料や樹脂パネル等により、紫外線の多くが吸収され、殆ど反射されない。
【0011】
このため、人工透析室では、紫外線光源から見た場合に各種器具の影となる箇所に対し、紫外線(殺菌線)を到達させることが極めて難しく、十分に殺菌できない箇所が発生してしまう恐れがあった。また一般家庭においても、太陽光に含まれる紫外線を室内の広い範囲に到達させることは難しく、十分な殺菌効果を得られない恐れがあった。
【0012】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、紫外線を良好に反射し得る紫外線反射材を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため本発明の紫外線反射材においては、壁面等に塗布される紫外線反射材であって、消石灰と、炭酸カルシウムと、増粘剤とを含有する紫外線反射材であって、炭酸カルシウムの平均粒子径が3.0[μm]以下であり、且つ該炭酸カルシウムが重量比において50[%]以上90[%]以下であり、波長が280−240[nm]のUV−C領域における反射率の平均値である平均反射率が65[%]以上であるようにした。
【0014】
本発明は、壁面等に塗布される紫外線反射材において、含有する炭酸カルシウムの平均粒子径を3.0[μm]以下に小さくすると共に重量比を50[%]以上90[%]以下のように高い割合とすることにより、紫外線のうち殺菌効果が高いとされるUV−C領域における平均反射率を65[%]以上に高め得ることを、実験及び測定により明らかにした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、紫外線を良好に反射し得る紫外線反射材を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】平均粒子径が1.0[μm]の炭酸カルシウムを用いた場合の波長と反射率との関係を示す略線図である。
図2】平均粒子径が3.0[μm]の炭酸カルシウムを用いた場合の波長と反射率との関係を示す略線図である。
図3】平均粒子径が6.0[μm]の炭酸カルシウムを用いた場合の波長と反射率との関係を示す略線図である。
図4】平均粒子径が8.9[μm]の炭酸カルシウムを用いた場合の波長と反射率との関係を示す略線図である。
図5】炭酸カルシウムの比率を相違させた場合における、波長領域ごとの平均反射率の分布を示す略線図である。
図6】波長領域ごとの、炭酸カルシウムの比率と平均反射率との関係を示す略線図である。
図7】炭酸カルシウムの平均粒子径を相違させた各試料における、波長と反射率との関係を示す略線図である。
図8】波長領域ごとの、炭酸カルシウムの平均粒子径と平均反射率との関係を示す略線図である。
図9】比較試料における波長と反射率との関係を示す略線図である。
図10】平均粒子径が0.3[μm]の硫酸バリウムを用いた場合の波長と反射率との関係を示す略線図である。
図11】平均粒子径が1.1[μm]の硫酸バリウムを用いた場合の波長と反射率との関係を示す略線図である。
図12】平均粒子径が1.7[μm]の硫酸バリウムを用いた場合の波長と反射率との関係を示す略線図である。
図13】平均粒子径が4.8[μm]の硫酸バリウムを用いた場合の波長と反射率との関係を示す略線図である。
図14】硫酸バリウムの比率を相違させた場合における、波長領域ごとの平均反射率の分布を示す略線図である。
図15】波長領域ごとの、硫酸バリウムの比率と平均反射率との関係を示す略線図である。
図16】硫酸バリウムの平均粒子径を相違させた各試料における、波長と反射率との関係を示す略線図である。
図17】波長領域ごとの、硫酸バリウムの平均粒子径と平均反射率との関係を示す略線図である。
図18】炭酸マグネシウムを用いた場合の波長と反射率との関係を示す略線図である。
図19】波長領域ごとの、炭酸マグネシウムの比率と平均反射率との関係を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0018】
[1.第1の実施の形態]
[1−1.紫外線反射材の構成]
第1の実施の形態に係る紫外線反射材は、塗壁材料である漆喰と類似した成分を含有している。この紫外線反射材は、調合された段階において液状ないしゲル状であり、施工時に壁面等に塗布された後、乾燥により硬化する。
【0019】
本実施の形態による紫外線反射材は、具体的に消石灰(すなわち水酸化カルシウム:Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)及び増粘剤等を含有している。このうち増粘剤等には、骨材、寸莎(すさ)及びのりが含まれる。骨材としては、例えば山砂、川砂や石灰製砂等を使用することができる。寸莎としては、例えば麻や藁等の繊維を使用することができる。のりとしては、例えば草木や海藻等、或いは合成樹脂等を使用することができ、接着や保水等の役割を果たす。
【0020】
因みに日本国では、JIS A 6919:2020「内装上塗り用既調合しっくい」において、漆喰(しっくい)に関し、消石灰又は生石灰の質量の比率が、全固形分質量の50[%]以上である旨が規定されている。一方、本実施の形態に係る紫外線反射材は、消石灰の質量(重量)の比率が50[%]未満となる場合もあるため、JISにおいて規定された漆喰に該当するもの、及び該当しないものの双方が含まれている。
【0021】
[1−2.材料の粒子径及び反射率の測定]
次に、本実施の形態による紫外線反射材に関し、消石灰及び炭酸カルシウムの比率(重量比)や、該炭酸カルシウムの粒径を変化させた試料を複数種類作成し、各試料を平面板にそれぞれ塗布して乾燥及び硬化させた後、紫外線の反射率を測定した。
【0022】
本実施の形態では、炭酸カルシウムの粒子径として、平均粒子径を用いるものとした。本実施の形態における「平均粒子径」は、原則として、レーザー回折式の粒度分布測定装置(島津製作所製 SALD−200V)により測定した粒度分布における積算値が50%となる粒径、いわゆるD50を意味する。また表記の都合上、以下の表や図面等においては、平均粒子径をMD(Mean Diameter)とも表す。
【0023】
また本実施の形態では、紫外線の反射率を測定する際に、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所製 UV−3600)及び積分球付属装置を使用した。具体的には、光源光を回折格子によって単色光に分光し、波長を240−780[nm]の範囲で変化させながら、試料を塗布した平面板の平面に照射し、当該平面において反射した反射光の強度を、拡散反射される光を含めて積分球により検出器に集めて測定した。また、光源光を所定の基準板に照射して得られる反射光の強度を検出器により測定してベースラインとし、各試料の反射光の強度を基準光の強度で除算して数値「100」を乗じることにより、百分率により表される反射率を算出するものとした。
【0024】
さらに本実施の形態では、紫外線(UV:ultraviolet)を波長領域ごとに区分し、波長が400−315[nm]の紫外線をUV−Aと呼び、波長が315−280[nm]の紫外線をUV−Bと呼び、波長が280−240[nm]の紫外線をUV−Cと呼ぶものとする。また紫外線は、全般的に殺菌効果を有しており、このうちUV−Cは、上述したように、特に強い殺菌作用があることが知られている。
【0025】
[1−3.実施例]
[実施例1]
実施例1では、表1に示すように、平均粒子径が1.0[μm]の炭酸カルシウムを用いながら、該炭酸カルシウム及び消石灰の比率を相違させた5種類の試料SC1−1、SC1−2、SC1−3、SC1−4及びSC1−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、図1に示すグラフが得られた。
【0026】
【表1】
【0027】
[実施例2]
実施例2では、表2に示すように、平均粒子径が3.0[μm]の炭酸カルシウムを用いながら、該炭酸カルシウム及び消石灰の比率を相違させた5種類の試料SC2−1、SC2−2、SC2−3、SC2−4及びSC2−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、図2に示すグラフが得られた。
【0028】
【表2】
【0029】
[実施例3]
実施例3では、表3に示すように、平均粒子径が6.0[μm]の炭酸カルシウムを用いながら、該炭酸カルシウム及び消石灰の比率を相違させた5種類の試料SC3−1、SC3−2、SC3−3、SC3−4及びSC3−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、図3に示すグラフが得られた。
【0030】
【表3】
【0031】
[実施例4]
実施例4では、表4に示すように、平均粒子径が8.9[μm]の炭酸カルシウムを用いながら、該炭酸カルシウム及び消石灰の比率を相違させた5種類の試料SC4−1、SC4−2、SC4−3、SC4−4及びSC4−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。ただし、この実施例4において用いる炭酸カルシウムの平均粒子径は、上述したD50では無く、JIS M 8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算される値(SW径とも呼ばれる)である。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、図4に示すグラフが得られた。
【0032】
【表4】
【0033】
[1−4.各種統計値の算出]
次に、実施例1〜実施例4において得られた反射率の測定結果を基に、各種の統計値を算出した。まず、炭酸カルシウムの平均粒子径が3.0[μm]である実施例2において得られた反射率の一部を基に、紫外線の各波長領域(UV−A、UV−B及びUV−C)における平均値(以下これを平均反射率と呼ぶ)をそれぞれ算出したところ、表5に示す各値が得られた。
【0034】
【表5】
【0035】
また、この表5に示した各値を基に、波長領域と平均反射率との関係をまとめたところ、図5に示すグラフが得られた。この図5では、炭酸カルシウムの比率を90%、80%、50%及び45%とした場合における、波長領域と平均反射率との関係を、曲線Q5−1、Q5−2、Q5−3及びQ5−4としてそれぞれ表している。
【0036】
さらに、表5に示した各値を基に、炭酸カルシウムの比率と平均反射率との関係をまとめたところ、図6に示すグラフが得られた。この図6では、波長領域UV−A、UV−B及びUV−Cにおける、炭酸カルシウムの比率と平均反射率との関係を、曲線Q6−A、Q6−B及びQ6−Cとしてそれぞれ表している。
【0037】
今度は、実施例1〜実施例4において炭酸カルシウムの比率を90[%]とした場合に着目し、試料SC1−1、SC2−1、SC3−1及びSC4−1を抽出して、それぞれの波長と反射率との関係を重ね合わせたところ、図7に示すグラフが得られた。
【0038】
また、試料SC1−1、SC2−1、SC3−1及びSC4−1により得られた反射率を基に、紫外線の各波長領域(UV−A、UV−B及びUV−C)における平均値(すなわち平均反射率)をそれぞれ算出したところ、表6に示す各値が得られた。
【0039】
【表6】
【0040】
さらに、表6に示した各値を基に、炭酸カルシウムの平均粒子径と平均反射率との関係をまとめたところ、図8に示すグラフが得られた。この図8では、波長領域UV−A、UV−B及びUV−Cにおける、炭酸カルシウムの平均粒子径と平均反射率との関係を、曲線Q8−A、Q8−B及びQ8−Cとしてそれぞれ表している。
【0041】
[1−5.まとめ]
以上の構成において、第1の実施の形態では、紫外線反射材に関し、消石灰及び炭酸カルシウムの比率や、該炭酸カルシウムの平均粒子径を相違させた試料を複数種類作成し、各試料の反射率を測定し、また各種統計値を算出した。
【0042】
ここで、第1の実施の形態との比較用に、周知物品である4種類の比較試料SR1、SR2、SR3及びSR4を採用し、それぞれにおける波長と反射率との関係を計測したところ、図9に示す特性曲線Q9−1、Q9−2、Q9−3及びQ9−4が得られた。
【0043】
比較試料SR1は、一般家庭用のアルミホイル(マイホイル、株式会社UACJ製箔製)であり、特性曲線Q9−1として示すように、紫外線(240−400[nm])に対する反射率が約45−55[%]であった。また比較試料SR1は、波長254[nm]における反射率が47.71[%]であった。
【0044】
比較試料SR2は、市販のアルミニウム板であり、特性曲線Q9−2として示すように、紫外線に対する反射率が約28−44[%]であった。また比較試料SR2は、波長254[nm]における反射率が31.14[%]であった。
【0045】
比較試料SR3は、市販のビニルクロス(白色)であり、特性曲線Q9−3として示すように、紫外線に対する反射率が約19−68[%]であった。また比較試料SR3は、波長254[nm]における反射率が22.5[%]であった。
【0046】
比較試料SR4は、市販のペンキ(白色)を塗布及び硬化させたものであり、特性曲線Q9−4として示すように、紫外線に対する反射率が約6−47[%]であった。また比較試料SR4は、波長254[nm]における反射率が6.9[%]であった。
【0047】
このように各比較試料は、紫外線の範囲内において最も波長が長い400[nm]付近において、反射率が最大でも68[%]であり、波長254[nm]においては反射率が最大でも約48[%]であった。
【0048】
一方、第1の実施の形態では、まず図1から、実施例1における傾向として、同一の試料においては、波長が大きく(長く)なるに連れて反射率が概ね増加しており、また同一の波長においては、炭酸カルシウムの比率が大きくなるに連れて反射率が概ね高まっている。この傾向は、図2図4に示したように、実施例2〜実施例4においても同様であった。
【0049】
また、表5及び図6から分かるように、炭酸カルシウムの平均粒子径が3.0[μm]である場合、各波長領域において、該炭酸カルシウムの比率が大きくなるに連れて、平均反射率が高まっている。このうち波長領域UV−Cにおける平均反射率の値及び曲線Q6−Cに着目すると、炭酸カルシウムの比率が比較的少ない45[%]のときに平均反射率が比較的高い60[%]以上となっており、炭酸カルシウムの比率が僅かに増加して50[%]になると平均反射率が一段と高まって65[%]以上となっている。さらに曲線Q6−Cでは、炭酸カルシウムの比率が比較的高い90[%]のときに、平均反射率が十分に高い70[%]以上となっている。
【0050】
このことから、第1の実施の形態による紫外線反射材では、炭酸カルシウムの比率を少なくとも50[%]以上とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を65[%]以上のように十分に高い値とすることができる。
【0051】
さらに、表6及び図8から分かるように、炭酸カルシウムの比率を90[%]とした場合、各波長領域において、該炭酸カルシウムの平均粒子径が小さくなるに連れて、平均反射率が高まっている。このうち波長領域UV−Cの曲線Q8−Cに着目すると、炭酸カルシウムの平均粒子径が比較的大きい8.9[μm]の場合に、平均反射率が53.73[%]に過ぎないものの、平均粒子径がこれよりもやや小さい6.0[μm]の場合に、平均反射率が67.95[%]にまで大きく増加している。さらに曲線Q8−Cでは、炭酸カルシウムの平均粒子径が十分に小さい1.0[μm]の場合に、平均反射率が73.52[%]にまで高まっている。
【0052】
また図8において、波長領域UV−Bの曲線Q8−Bは、平均反射率が曲線Q8−Cよりも全般的に高く、平均粒子径が1.0[μm]の場合に、平均反射率が77.15[%]にまで高まっている。さらに、波長領域UV−Aの曲線Q8−Aは、平均反射率が曲線Q8−Bよりも全般的に高く、平均粒子径が1.0[μm]の場合に、平均反射率が83.87[%]にまで高まっている。
【0053】
このような関係から、第1の実施の形態による紫外線反射材では、炭酸カルシウムの平均粒子径を少なくとも6.0[μm]以下とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を、67.95[%]以上のように十分に高い値とすることができる。またこの場合、波長領域UV−B(280−315[nm])における平均反射率を71.90[%]以上にでき、さらに波長領域UV−A(315−400[nm])における平均反射率を79.66[%]以上のように極めて高い値とすることができる。これらの平均反射率は、各比較試料における紫外線の反射率(図9)と比較しても、十分に高い値となっている。
【0054】
ところで、波長領域UV−C(240−280[nm])における紫外線の反射率に関して、上述したように、波長254[nm]付近の紫外線に対するアルミニウム板の反射率が約80[%]となっている。しかしながら、仮にアルミニウム板を壁面等に設置する場合、壁面に合わせた形状への加工処理や、壁面に固定するための施工処理等が必要となり、技術やコスト等の面で施工が困難となる場合がある。また、上述したように表面にアルミニウムを蒸着させる場合には、加工処理が煩雑になり、コストも上昇してしまう。
【0055】
一方、表6から分かるように、第1の実施の形態による紫外線反射材のうち、平均粒子径が1.0[μm]の炭酸カルシウムを90[%]の比率とした試料SC1−1では、波長領域UV−Cにおける平均反射率が73.52[%]であり、アルミニウム板の約80[%]に対して十分に近い値となっている。また、この紫外線反射材は、一般的な漆喰と同様、壁面等に塗布した後、乾燥により硬化させることにより施工が完了する。
【0056】
このため第1の実施の形態による紫外線反射材は、例えば複雑な凹凸を有する面や曲面など、アルミニウム板の設置やアルミニウムの蒸着加工等が困難な壁面であっても容易に施工でき、波長領域UV−Cの紫外線を高い反射率で反射することができる。これによりこの紫外線反射材は、殺菌灯等の光源から照射される波長領域UV−Cの紫外線を良好に反射でき、当該光源から紫外線が直接到達し得ない箇所にも反射を利用して到達させ、幅広く殺菌させることができる。
【0057】
さらに第1の実施の形態による紫外線反射材は、例えば一般家庭の内壁面等に施工された場合、窓から入射する太陽光、特に当該太陽光に含まれる波長領域UV−Aから波長領域UV−Cに渡る広い範囲の紫外線を、当該壁面において反射させることができる。これによりこの紫外線反射材は、室内において太陽光が直接到達し得ないような箇所にまでその反射光を到達させることができ、室内の様々な箇所において、浮遊菌やドアノブの表面に付着した細菌等を殺菌すること、或いはウイルスの死滅効果を図ること等が期待できる。
【0058】
すなわち第1の実施の形態による紫外線反射材は、図1図9の各波形としても示したように、白色の壁紙や塗料のような一般的な内壁材料と比較して、紫外線の反射率が格段に高いため、当該紫外線反射材が内壁面等に施工された室内空間の様々な箇所において、極めて高い殺菌効果を得ることができる。
【0059】
以上の構成によれば、第1の実施の形態による紫外線反射材は、炭酸カルシウムの比率を少なくとも50[%]以上とし、且つ平均粒子径を6.0[μm]以下とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を十分に高い値とすることができる。
【0060】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による紫外線反射材は、第1の実施の形態による紫外線反射材の各成分、すなわち漆喰と類似した成分に対し、硫酸バリウム(BaSO)を加えるようにした。
【0061】
[2−1.材料の粒子径及び反射率の測定]
この第2の実施の形態による紫外線反射材に関し、消石灰、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムの比率や、該硫酸バリウムの平均粒子径を変化させた試料を複数種類作成し、各試料を平面板にそれぞれ塗布して乾燥及び硬化させた後、第1の実施の形態と同様の手法により、紫外線の反射率を測定した。
【0062】
本実施の形態では、硫酸バリウムの平均粒子径として、動的光散乱法による粒子径の測定装置(マルバーン・パナリティカル社製 ゼータサイザーナノ ZS)により得られた測定値を使用した。また本実施の形態では、第1の実施の形態における実施例2において使用した、平均粒子径が3.0[μm]の炭酸カルシウムを使用した。
【0063】
[2−2.実施例]
[実施例5]
実施例5では、表7に示すように、平均粒子径が0.3[μm]の硫酸バリウムを用いながら、該硫酸バリウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率を相違させた5種類の試料SB1−1、SB1−2、SB1−3、SB1−4及びSB1−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、図10に示すグラフが得られた。
【0064】
【表7】
【0065】
[実施例6]
実施例6では、表8に示すように、平均粒子径が1.1[μm]の硫酸バリウムを用いながら、該硫酸バリウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率を相違させた5種類の試料SB2−1、SB2−2、SB2−3、SB2−4及びSB2−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、図11に示すグラフが得られた。
【0066】
【表8】
【0067】
[実施例7]
実施例7では、表9に示すように、平均粒子径が1.7[μm]の硫酸バリウムを用いながら、該硫酸バリウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率を相違させた5種類の試料SB3−1、SB3−2、SB3−3、SB3−4及びSB3−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、図12に示すグラフが得られた。
【0068】
【表9】
【0069】
[実施例8]
実施例8では、表10に示すように、平均粒子径が4.8[μm]の硫酸バリウムを用いながら、該硫酸バリウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率を相違させた5種類の試料SB4−1、SB4−2、SB4−3、SB4−4及びSB4−5を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、図13に示すグラフが得られた。
【0070】
【表10】
【0071】
[2−3.各種統計値の算出]
次に、実施例5〜実施例8において得られた反射率の測定結果を基に、各種の統計値を算出した。まず、硫酸バリウムの平均粒子径が1.7[μm]である実施例7において得られた反射率の一部を基に、紫外線の各波長領域(UV−A、UV−B及びUV−C)における平均値(以下これを平均反射率と呼ぶ)をそれぞれ算出したところ、表11に示す各値が得られた。
【0072】
【表11】
【0073】
また、この表11に示した各値を基に、波長領域と平均反射率との関係をまとめたところ、図14に示すグラフが得られた。この図14では、硫酸バリウムの比率を90%、60%、25%、5%及び0%とした場合における、波長領域と平均反射率との関係を、曲線Q14−1、Q14−2、Q14−3、Q14−4及びQ14−5としてそれぞれ表している。
【0074】
さらに、表11に示した各値を基に、硫酸バリウムの比率と平均反射率との関係をまとめたところ、図15に示すグラフが得られた。この図15では、波長領域UV−A、UV−B及びUV−Cにおける、硫酸バリウムの比率と平均反射率との関係を、曲線Q15−A、Q15−B及びQ15−Cとしてそれぞれ表している。
【0075】
今度は、実施例5〜実施例8において硫酸バリウムの比率を90[%]とした場合に着目し、試料SB1−1、SB2−1、SB3−1及びSB4−1を抽出して、それぞれの波長と反射率との関係を重ね合わせたところ、図16に示すグラフが得られた。
【0076】
また、試料SB1−1、SB2−1、SB3−1及びSB4−1により得られた反射率を基に、紫外線の各波長領域(UV−A、UV−B及びUV−C)における平均値(すなわち平均反射率)をそれぞれ算出したところ、表12に示す各値が得られた。
【0077】
【表12】
【0078】
さらに、表12に示した各値を基に、硫酸バリウムの平均粒子径と平均反射率との関係をまとめたところ、図17に示すグラフが得られた。この図17では、波長領域UV−A、UV−B及びUV−Cにおける、硫酸バリウムの平均粒子径と平均反射率との関係を、曲線Q17−A、Q17−B及びQ17−Cとしてそれぞれ表されている。
【0079】
[2−4.まとめ]
以上の構成において、第2の実施の形態では、紫外線反射材に関し、硫酸バリウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率や、該硫酸バリウムの平均粒子径を相違させた試料を複数種類作成し、各試料の反射率を測定し、また各種統計値を算出した。
【0080】
まず図10から、実施例5における傾向として、同一の試料においては、波長が大きく(長く)なるに連れて反射率が概ね増加しており、また同一の波長においては、硫酸バリウムの比率が大きくなるに連れて反射率が概ね高まっている。この傾向は、図11図13に示したように、実施例6〜実施例8においても同様であった。
【0081】
また、表11及び図15から分かるように、硫酸バリウムの平均粒子径が1.7[μm]である場合、各波長領域において、該硫酸バリウムの比率が大きくなるに連れて、平均反射率が高まっている。このうち波長領域UV−Cにおける平均反射率の値及び曲線Q15−Cに着目すると、硫酸バリウムが含まれていない0[%]のときに平均反射率が52.99[%]であったのに対し、僅かに含まれる5[%]のときに平均反射率が57.17[%]にまで高まっている。また、硫酸バリウムの比率が25[%]になると平均反射率が60[%]を超え、硫酸バリウムの比率が90[%]になると平均反射率が一段と高い65[%]以上となっている。
【0082】
このことから、第2の実施の形態による紫外線反射材では、硫酸バリウムの比率を少なくとも5[%]以上とし、一般に誤差と考え得る範囲を超えた比率とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を60[%]以上のように高い値とすることができる。
【0083】
さらに、表12及び図17から分かるように、硫酸バリウムの比率を90[%]とした場合、各波長領域において、該硫酸バリウムの平均粒子径が小さくなるに連れて、平均反射率が高まっている。このうち波長領域UV−Cの曲線Q17−Cに着目すると、硫酸バリウムの平均粒子径が比較的大きい4.8[μm]の場合に、平均反射率が60.17[%]に過ぎないものの、平均粒子径がこれよりも小さい1.1[μm]の場合に、平均反射率が70[%]を超えるまでに増加している。さらに曲線Q17−Cでは、硫酸バリウムの平均粒子径が極めて小さい0.3[μm]の場合に、平均反射率が77.62[%]にまで高まっている。
【0084】
また図17において、波長領域UV−Bの曲線Q17−Bは、平均反射率が曲線Q17−Cよりも全般的に高く、平均粒子径が0.3[μm]の場合に、平均反射率が80.30[%]にまで高まっている。さらに、波長領域UV−Aの曲線Q17−Aは、平均反射率が曲線Q17−Bよりも全般的に高く、平均粒子径が0.3[μm]の場合に、平均反射率が86.13[%]にまで高まっている。
【0085】
このような関係から、第2の実施の形態による紫外線反射材では、硫酸バリウムの平均粒子径を少なくとも4.8[μm]以下とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を、60.17[%]以上のように十分に高い値とすることができる。またこの場合、波長領域UV−B(280−315[nm])における平均反射率を62.98[%]以上にでき、さらに波長領域UV−A(315−400[nm])における平均反射率を68.65[%]以上のように極めて高い値とすることができる。
【0086】
これらをまとめると、第2の実施の形態による紫外線反射材では、消石灰、炭酸カルシウム及び増粘剤等を含有する塗壁材料、すなわち漆喰等に対し、硫酸バリウムを有意な比率で混合することにより紫外線の反射率を高めることができる。また第2の実施の形態による紫外線反射材では、硫酸バリウムの比率を高めること、及び該硫酸バリウムの平均粒子径を小さくすることにより、紫外線の反射率さらに高めることができる。
【0087】
また第2の実施の形態による紫外線反射材では、周知のアルミニウム板や一般的な内壁材料等と比較した場合に、第1の実施の形態による紫外線反射材と同様の作用効果を奏し得る。
【0088】
以上の構成によれば、第2の実施の形態による紫外線反射材は、硫酸バリウムの比率を少なくとも5[%]以上とし、且つ平均粒子径を4.8[μm]以下とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を十分に高い値とすることができる。
【0089】
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による紫外線反射材は、第1の実施の形態による紫外線反射材の各成分、すなわち漆喰と類似した成分に対し、炭酸マグネシウム(MgCO)を加えるようにした。
【0090】
この第3の実施の形態による紫外線反射材に関し、消石灰、炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウムの比率を変化させた試料を複数種類作成し、各試料を平面板にそれぞれ塗布して乾燥及び硬化させた後、第1の実施の形態と同様の手法により、紫外線の反射率を測定した。
【0091】
[実施例9]
実施例9では、表13に示すように、平均粒子径が3.0[μm]の炭酸マグネシウムを用いながら、該炭酸マグネシウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率を相違させた4種類の試料SM1−1、SM1−2、SM1−3及びSM1−4を作製し、それぞれにおける紫外線の反射率を測定した。また、各試料における波長と反射率との関係をまとめたところ、図18に示すグラフが得られた。
【0092】
【表13】
【0093】
次に、実施例9において得られた反射率の一部を基に、紫外線の各波長領域(UV−A、UV−B及びUV−C)における平均値(すなわち平均反射率)をそれぞれ算出したところ、表14に示す各値が得られた。
【0094】
【表14】
【0095】
また、この表14に示した各値を基に、炭酸マグネシウムの比率と平均反射率との関係をまとめたところ、図19に示すグラフが得られた。この図19では、波長領域UV−A、UV−B及びUV−Cにおける、炭酸マグネシウムの比率と平均反射率との関係を、曲線Q19−A、Q19−B及びQ19−Cとしてそれぞれ表している。
【0096】
以上の構成において、第3の実施の形態では、紫外線反射材に関し、炭酸マグネシウム、消石灰及び炭酸カルシウムの比率を相違させた試料を複数種類作成し、各試料の反射率を測定し、また波長領域ごとの統計値を算出した。
【0097】
まず図18から、実施例9における傾向として、同一の試料においては、波長が大きく(長く)なるに連れて反射率が概ね増加しており、また同一の波長においては、炭酸マグネシウムの比率が大きくなるに連れて反射率が概ね高まっている。
【0098】
また、表14及び図19から分かるように、各波長領域において、該炭酸マグネシウムの比率が大きくなるに連れて、平均反射率が高まっている。このうち波長領域UV−Cにおける平均反射率の値及び曲線Q19−Cに着目すると、炭酸マグネシウムが含まれていない0[%]のときに平均反射率が59.71[%]であったのに対し、僅かに含まれる5[%]のときに平均反射率が61.39[%]にまで高まっている。また、炭酸マグネシウムの比率が25[%]になると平均反射率が65[%]を超え、炭酸マグネシウムの比率が60[%]になると平均反射率がさらに高い67[%]以上となっている。
【0099】
また図19において、波長領域UV−Bの曲線Q19−Bは、平均反射率が曲線Q19−Cよりも全般的に高く、炭酸マグネシウムの比率が60[%]の場合に平均反射率が76.51[%]にまで高まっている。さらに、波長領域UV−Aの曲線Q19−Aは、平均反射率が曲線Q19−Bよりも全般的に高く、炭酸マグネシウムの比率が60[%]の場合に平均反射率が81.97[%]にまで高まっている。
【0100】
このような関係から、第3の実施の形態による紫外線反射材では、炭酸マグネシウムの比率を5[%]以上60[%]以下とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を60[%]以上のように高い値とすることができる。
【0101】
また第3の実施の形態による紫外線反射材では、周知のアルミニウム板や一般的な内壁材料等と比較した場合に、第1の実施の形態による紫外線反射材と同様の作用効果を奏し得る。
【0102】
以上の構成によれば、第3の実施の形態による紫外線反射材は、炭酸マグネシウムの比率を5[%]以上60[%]以下とすることにより、波長領域UV−C(240−280[nm])における平均反射率を十分に高い値とすることができる。
【0103】
[4.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、炭酸カルシウムの比率を少なくとも50[%]以上とし、第2の実施の形態においては、硫酸バリウムの比率を5[%]以上とし、第3の実施の形態においては、炭酸マグネシウムの比率を5[%]以上とすることにより、紫外線の反射率を高める場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、これらを適宜組み合わせても良い。
【0104】
また上述した第1の実施の形態においては、紫外線反射材を診察室や病室の壁面に塗布する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば診察室の天井面や床面等、種々の面に塗布しても良い。或いは、例えば紫外線により食品等の殺菌処理を行う殺菌装置の内側面等、紫外線の照射により殺菌処理を行う対象物が存在する空間の内側面に塗布しても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0105】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、例えば病院や診療所等の診察室や病室等の壁面に塗布する塗壁材料に利用できる。
【符号の説明】
【0107】
SC1−1、SC1−2、SC1−3、SC1−4、SC1−5、SC2−1、SC2−2、SC2−3、SC2−4、SC2−5、SC3−1、SC3−2、SC3−3、SC3−4、SC3−5、SC4−1、SC4−2、SC4−3、SC4−4、SC4−5、SB1−1、SB1−2、SB1−3、SB1−4、SB1−5、SB2−1、SB2−2、SB2−3、SB2−4、SB2−5、SB3−1、SB3−2、SB3−3、SB3−4、SB3−5、SB4−1、SB4−2、SB4−3、SB4−4、SB4−5、SM1−1、SM1−2、SM1−3、SM1−4……試料。

【要約】      (修正有)
【課題】人工透析室の壁面への塗布により室内殺菌効果を高める等の効果がある、紫外線を良好に反射し得る紫外線反射材を提供する。
【解決手段】消石灰と、炭酸カルシウムと、増粘剤とを主要成分とする紫外線反射材において、炭酸カルシウムの比率を少なくとも50[%]以上とし、且つ炭酸カルシウムの平均粒子径を6.0[μm]以下とすることにより、殺菌効果が高いとされるUV−C(240−280[nm])を含む紫外線波長領域において、平均反射率を十分に高い値とすることができる。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19