特許第6980315号(P6980315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980315ラタノプロステンブノドの製造方法及びそのための中間体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980315
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ラタノプロステンブノドの製造方法及びそのための中間体
(51)【国際特許分類】
   C07C 201/02 20060101AFI20211202BHJP
   C07C 203/04 20060101ALI20211202BHJP
   C07C 69/732 20060101ALI20211202BHJP
   C07C 67/10 20060101ALI20211202BHJP
   C07C 59/54 20060101ALI20211202BHJP
   C07C 51/09 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C07C201/02
   C07C203/04
   C07C69/732 ZCSP
   C07C67/10
   C07C59/54
   C07C51/09
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-506760(P2020-506760)
(86)(22)【出願日】2018年8月3日
(65)【公表番号】特表2020-530010(P2020-530010A)
(43)【公表日】2020年10月15日
(86)【国際出願番号】KR2018008854
(87)【国際公開番号】WO2019031774
(87)【国際公開日】20190214
【審査請求日】2020年2月6日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0101252
(32)【優先日】2017年8月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518254931
【氏名又は名称】ヨンスン ファイン ケミカル カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】コ,ウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヒョン イク
(72)【発明者】
【氏名】イ,キ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】オ,チャン ヨン
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−518716(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/093771(WO,A1)
【文献】 特表2013−531063(JP,A)
【文献】 特表2016−515520(JP,A)
【文献】 特表2008−523088(JP,A)
【文献】 特表2009−501150(JP,A)
【文献】 特表2008−531579(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0137518(US,A1)
【文献】 Li, Weixia, et al,Biological activity evaluation and structure-activity relationships analysis of ferulic acid and caffeic acid derivatives for anticancer,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2012年,Vol.22(19),p.6085-6088
【文献】 Alza, Natalia P., et al,Synthesis and cholinesterase inhibition of cativic acid derivatives,Bioorganic & Medicinal Chemistry,2014年,Vol.22(15),p.3838-3849
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 201/02
C07C 203/04
C07C 69/732
C07C 67/10
C07C 59/54
C07C 51/09
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)下記化学式3で表される化合物を、下記化学式4で表される化合物とエステル化反応させて、下記化学式5で表される化合物を収得する段階;及び
(ii)下記化学式5で表される化合物のブロミドを硝酸銀(AgNO)を用いてニトロ化反応させる段階を含む、下記化学式1で表されるラタノプロステンブノドの製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】
【請求項2】
段階(i)におけるエステル化反応は、塩基の存在下で行なわれる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記塩基は、炭酸カリウムである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記化学式3で表される化合物は、下記化学式2で表される化合物のイソプロピルエステル基を加水分解反応させて製造される、請求項1に記載の製造方法。
【化5】
【請求項5】
前記加水分解反応は、水酸化リチウム・一水和物を用いて行われる、請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
下記化学式5で表される化合物。
【化6】
【請求項7】
(i)下記化学式3で表される化合物を、下記化学式4で表される化合物とエステル化反応させる段階を含む、下記化学式5で表される化合物の製造方法。
【化7】

【化8】

【化9】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラタノプロステンブノド(Latanoprostene bunod)の製造方法及びそのための中間体に関するものであり、より詳しくは、ラタノプロステンブノドを経済的且つ効率的に製造する方法及びそれに用いられる中間体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記化学式1で表されるラタノプロステンブノド(4−(ニトロオキシ)ブチル(Z)−7−((1R,2R,3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−((R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンチル)シクロペンチル)ヘプト−5−エノエート)は、緑内障治療剤であるベスネオ(Vesneo(登録商標))の活性薬学的成分(API)である。
【0003】
【化1】
【0004】
アメリカ特許第7,273,946号には下記反応式1で表されたように、テトラヒドロフランを出発物質として4−ブロモブチルナイトレートを製造し、ラタノプロスト酸と結合反応させて、ラタノプロステンブノドを製造する方法が開示されている。しかしながら、前記製造方法では、4−ブロモブチルナイトレート合成の際に強酸を用いる危険性があり、硝酸溶液への硫酸の滴下の際に急激な発熱による爆発の危険性がある。さらに、結合反応の際に生成されたブロミドがラタノプロステンブノドのナイトレートと反応して副生成物が多量生成されるという不具合がある。
【0005】
【化2】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ラタノプロステンブノドの効率的且つ経済的な製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、前記製造方法に用いられる中間体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、下記化学式1で表されるラタノプロステンブノドの製造方法に関するものであって、本発明の製造方法は、
(i)下記化学式3で表される化合物を、下記化学式4で表される化合物とエステル化反応させて、下記化学式5で表される化合物を収得する段階;及び
(ii)下記化学式5で表される化合物のブロミドをニトロ化反応させる段階を含む。
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】
【化5】
【0012】
【化6】
【0013】
以下、本発明の製造方法を下記反応式2を参照してより詳しく説明する。なお、下記反応式2で表された方法は、代表的に用いられた方法を例示したものであるに過ぎず、反応試薬、反応条件などは場合に応じて適宜変更されてよい。
【0014】
【化7】
【0015】
第1段階:化学式5で表される化合物の合成
化学式5で表される化合物は、化学式3で表される化合物を化学式4で表される化合物と塩基の存在下でエステル化反応させて製造することができる。
【0016】
前記塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸カリウムなどが用いられてよく、特に、炭酸カリウムを用いて行うことが好ましい。
【0017】
このとき、反応溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムイミドなどが用いられてよく、特に、ジメチルホルムイミドを用いて行うことが好ましい。
【0018】
反応温度は、約40〜50℃の範囲が適合し、反応時間は、約2時間が好ましい。
【0019】
第2段階:化学式1で表される化合物の製造
化学式1で表される化合物は、化学式5で表される化合物のブロミドをニトロ化反応させて製造することができる。
【0020】
前記ニトロ化反応は、硝酸塩を用いて置換反応させて行なってよい。前記硝酸塩としては、硝酸銀(AgNO3)を用いることが好ましい。硝酸塩を用いる場合、置換反応の際に生成された臭化銀(AgBr)が沈澱されて副反応を低減させることができる。
【0021】
このとき、反応溶媒としては、アセトニトリルが好ましい。
【0022】
反応温度は、約30〜40℃の範囲が適合し、反応時間は、約40〜50時間の範囲が好ましい。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記化学式3で表される化合物は、下記化学式2で表される化合物のイソプロピルエステル基を加水分解反応させて製造することができる。
【0024】
【化8】
【0025】
前記加水分解反応は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム・一水和物などを用いて行われてよく、特に、水酸化リチウム・一水和物を用いて行うことが好ましい。
【0026】
このとき、反応溶媒としては、エタノール、メタノール、水、又はこれらの混合溶媒などが用いられてよく、特に、メタノールと水との混合溶媒が好ましい。
【0027】
反応温度は、室温が適合し、反応時間は、15〜20時間の範囲が好ましい。
【0028】
本発明の一実施形態は、ラタノプロステンブノドの製造中間体である下記化学式5で表される化合物に関するものである。
【0029】
【化9】
【0030】
本発明の一実施形態は、前記化学式5で表される化合物の製造方法に関するものであって、本発明の一実施形態に係る製造方法は、
(i)下記化学式3で表される化合物を下記化学式4で表される化合物とエステル化反応させる段階を含む。
【0031】
【化10】
【0032】
【化11】
【0033】
前記化学式5で表される化合物の製造方法に関する詳細な説明は、ラタノプロステンブノドの製造方法に関連して上述した第1段階と同一であるので、重複を避けるために具体的な説明を省略する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の製造方法によれば、化学式1で表されるラタノプロステンブノドを副反応を低減しながら効率的且つ経済的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明することにする。なお、これらの実施例は、単に発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではないことは当業者にとって自明である。
【0036】
製造例1:化学式3で表される化合物の製造
ラタノプロスト(2)(30g)をメタノール(600mL)に溶かした後、水(120mL)と水酸化リチウム・一水和物(14.55g)を加え、室温で約15時間撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(エチルアセテート:メタノール=15:1)にて観測した。反応完了後、反応溶媒を濃縮し、1M塩化アンモニウム(300mL)、2M硫酸水素ナトリウム(300mL)及びエチルアセテート(300mL)を加え、約15〜20分間撹拌した。有機層を分離し無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過後に減圧濃縮した。得られた残留物をシリカゲルを用いたクロマトグラフィー(エチルアセテート:メタノール=5:1)にて精製して、純粋なラタノプロスト酸((Z)−7−((1R,2R,3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−((R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンチル)シクロペンチル)ヘプト−5−エン酸)(3)(23.9g、88%)を収得した。
【0037】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) : 7.30-7.25 (2H, m), 7.20-7.14 (3H, m), 5.53-5.30 (2H, m), 4.16-4.08 (5H, m), 3.95-3.94 (1H, m), 3.74-3.66 (1H, m), 2.84-2.60 (2H, m), 2.36-2.31 (2H, t, J = 6.7 Hz), 2.27-2.23 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.18-2.10 (2H, q, J = 7.3 Hz), 1.88-1.86 (2H, m), 1.84-1.47 (8H, m), 1.40-1.32 (2H, m);
13C NMR (300 MHz, CDCl3) : δ = 177.5, 142.2, 129.6, 129.5, 128.6, 126.0, 78.7, 74.6, 71.7, 52.6, 51.9, 42.6, 38.9, 35.3, 33.2, 32.2, 29.2, 26.8, 26.5, 24.8, 14.3.。
【0038】
実施例1:化学式5で表される化合物の製造
化学式3で表される化合物(22.8g)をジメチルホルムイミド(342mL)に溶かした後、炭酸カリウム(24.2g)及び1,4−ジブロモブタン(4)(37.8g)を加え、約40〜50℃で約2時間加熱撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(エチルアセテート100%)にて観測した。反応完了後、飽和塩化ナトリウム水溶液(684mL)及びエチルアセテート(684mL)を加え、約15〜20分間撹拌した。有機層を分離して飽和塩化ナトリウム水溶液(456mL)で洗浄した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過後に減圧濃縮した。得られた残留物をシリカゲルを用いたクロマトグラフィー(エチルアセテート100%)にて精製して、純粋な4−ブロモブチル(Z)−7−((1R,2R,3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−((R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンチル)シクロペンチル)ヘプト−5−エノエート(5)(25.5g、83%)を収得した。
【0039】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) : 7.31-7.16 (5H, m), 5.51-5.35 (2H, m), 4.17 (1H, s), 4.12-4.08 (2H, t, J = 6.3 Hz), 3.95 (1H, s), 3.69-3.65 (1H, m), 3.45-3.41 (2H, t, J = 6.5 Hz), 2.85-2.63 (2H, m), 2.60 (1H, s), 2.38-2.30 (3H, m), 2.28-2.07 (3H, m), 1.98-1.59 (14H, m), 1.56-1.47 (1H, m), 1.44-1.25 (2H, m);
13C NMR (300 MHz, CDCl3) : δ = 174.0, 142.2, 129.6, 129.5, 128.6, 128.5, 126.0, 79.0, 74.9, 71.4, 69.6, 53.1, 52.0, 42.7, 39.2, 35.9, 33.8, 33.2, 32.3, 29.8, 29.4, 27.4, 27.1, 26.8, 25.0.。
【0040】
実施例2:化学式1で表される化合物の製造
化学式5で表される化合物(25.5g)をアセトニトリル(382mL)に溶かした後、硝酸銀(16.5g)を加え、約30〜40℃で約40〜50時間加熱撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:エタノール=5:1)にて観測した。反応完了後、反応物の温度を室温に冷却させ、不溶性固体をセルライトろ過を施して除去した。ろ過液を減圧濃縮し、エチルアセテート(382mL)及び水(382mL)を加え、約15〜20分間撹拌した。有機層を分離し、飽和塩化ナトリウム水溶液(382mL)を加え、約10〜15分間撹拌した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過後に減圧濃縮した。得られた残留物をシリカゲルを用いたクロマトグラフィー(ヘキサン:エタノール=5:1)にて精製して、純粋な4−(ニトロオキシ)ブチル(Z)−7−((1R,2R,3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−2−((R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンチル)シクロペンチル)ヘプト−5−エノエート(1)(14.0g、56.8%)を収得した。
【0041】
1H NMR (300 MHz, CDCl3) : 7.31-7.26 (2H, m), 7.21-7.15 (3H, m), 5.51-5.34 (2H, m), 4.49-4.45 (2H, t, J = 6.2 Hz), 4.16-4.15 (1H, m), 4.12-4.08 (2H, t, J = 6.0 Hz), 3.95-3.94 (1H, m), 3.67 (1H, m), 2.85-2.75 (1H, m), 2.72-2.62 (2H, m), 2.40-2.38 (1H, d, J = 5.8 Hz), 2.35-2.30 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.28-2.21 (1H, m), 2.17-2.09 (2H, m), 1.87-1.86 (2H, m), 1.84-1.58 (12H, m), 1.56-1.47 (1H, m), 1.43-1.27 (2H, m);
13C NMR (300 MHz, CDCl3) : δ = 173.9, 142.2, 129.6, 129.5, 128.5, 128.5, 125.9, 78.9, 74.9, 72.7, 71.4, 63.6, 53.0, 52.0, 42.6, 39.2, 35.9, 33.9, 32.2, 29.7, 27.1, 26.7, 25.1, 24.9, 23.8.。