特許第6980320号(P6980320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980320ワークのレーザ加工方法及び切削工具の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980320
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ワークのレーザ加工方法及び切削工具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/364 20140101AFI20211202BHJP
【FI】
   B23K26/364
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-529194(P2020-529194)
(86)(22)【出願日】2019年3月28日
(65)【公表番号】特表2021-505394(P2021-505394A)
(43)【公表日】2021年2月18日
(86)【国際出願番号】CN2019080274
(87)【国際公開番号】WO2019185002
(87)【国際公開日】20191003
【審査請求日】2020年6月2日
(31)【優先権主張番号】201810274677.2
(32)【優先日】2018年3月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520167047
【氏名又は名称】上海名古屋精密工具股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI NAGOYA PRECISION TOOLS CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】孫思叡
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−006135(JP,A)
【文献】 特表2017−524534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク上に加工しようとする構造体の形態、及び、加工しようとする構造体とワーク各箇所との接触境界を決定して切除対象の素材体を取得する工程と、
前記切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割し、各素材ブロックの境界と加工しようとする構造体の境界に基づいて、レーザカット加工計画を生成する工程と、
前記レーザカット加工計画に従って、各前記境界沿いにレーザ光により前記ワークを切断することで、構造体が形成されるまで各素材ブロックを切り取って前記ワークから次々に取り外す工程と、
前記素材ブロックの最大規格は、レーザ光によるワークの加工可能深さ、即ち、レーザ光の光路方向に沿ってレーザ光がワークを加工する際に達し得る最も遠い箇所により決定される工程と、を含み、
前記レーザ光による加工可能深さは、レーザ加工される箇所のワークの厚みよりも小さいことを特徴とするワークのレーザ加工方法。
【請求項2】
前記ワークは、完成品を製造するための材料であって、PCD、CBN、硬質合金、セラミックス及びサーメットの1又は複数から選択される材質であることを特徴とする請求項1に記載のワークのレーザ加工方法。
【請求項3】
前記ワークは、完成品を製造するための材料であって、球状、柱状、錐状、プレート状及びブロック状の1又は複数の形態を含むことを特徴とする請求項1に記載のワークのレーザ加工方法。
【請求項4】
更に、素材ブロックのデジタル情報を取得し、デジタル化されたレーザカット加工計画を生成するとともに、コンピュータ制御下でレーザ加工を実施することを特徴とする請求項1に記載のワークのレーザ加工方法。
【請求項5】
請求項1に記載のワークのレーザ加工方法を切削工具に適用した切削工具の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のワークのレーザ加工方法を切削の実施に要する各機能部位の製造に適用した切削工具の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のワークのレーザ加工方法を切削の実施に要する各機能部位の製造に適用した切削工具の製造方法であって、
前記機能部位は、チップブレーカ溝、チップポケット、すくい面及び逃げ面の1又は複数を含む切削工具の製造方法。
【請求項8】
切削工具による切削の実施に要する各機能部位のパラメータを設定するとともに、前記切削の実施に要する機能部位、及び、当該機能部位とワークの各箇所との接触境界を生成して切除対象の素材体を取得する工程と、
前記切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割し、各素材ブロックの境界と加工しようとする構造体の境界に基づいて、レーザカット加工計画を生成する工程と、
前記レーザカット加工計画に従って、各前記境界沿いにレーザ光により前記ワークを切断することで、各素材ブロックを切り取ってワークから次々に取り外し、切削の実施に要する機能部位を形成する工程と、を含み、
前記レーザ光による加工可能深さは、レーザ加工される箇所のワークの厚みよりも小さいことを特徴とする切削工具の製造方法。
【請求項9】
前記機能部位のパラメータは、すくい角、逃げ角、チップ厚、刃幅比、溝底円弧、ねじれ角及び切れ刃傾き角の1又は複数を含むことを特徴とする請求項8に記載の切削工具の製造方法。
【請求項10】
前記切除される素材は、PCD、CBN、硬質合金、セラミックス及びサーメットの1又は複数であることを特徴とする請求項8に記載の切削工具の製造方法。
【請求項11】
前記レーザ光は、パルスレーザ光及び連続レーザ光の1又は複数であることを特徴とする請求項8に記載の切削工具の製造方法。
【請求項12】
3軸及び3軸以上の多軸連動加工機を用い、コンピュータ制御下で製造を実施することを特徴とする請求項8に記載の切削工具の製造方法。
【請求項13】
5軸連動加工機を用いる切削工具の製造方法であって、
切削工具のらせん溝のパラメータを設定するとともに、らせん溝とワークの各箇所との接触境界を生成して、切除対象の素材体及びそのデータ情報を取得し、
切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割し、各素材ブロックの境界と加工しようとする構造体の境界に基づいて、デジタル化されたレーザカット加工計画を生成し、
前記デジタル化されたレーザカット加工計画に従って、コンピュータ制御下においてレーザ光により前記ワークを切断することで、各素材ブロックを切り取り、前記ワークから次々と取り外してらせん溝を形成し、
前記レーザ光による加工可能深さは、レーザ加工される箇所のワークの厚みよりも小さいことを特徴とする製造方法。
【請求項14】
前記らせん溝のパラメータは、すくい角、逃げ角、チップ厚、刃幅比、溝底円弧、ねじれ角及び切れ刃傾き角の1又は複数を含むことを特徴とする請求項13に記載の切削工具の製造方法。
【請求項15】
前記切除される素材は、PCD、CBN、硬質合金、セラミックス及びサーメットの1又は複数であることを特徴とする請求項13に記載の切削工具の製造方法。
【請求項16】
前記レーザ光はパルスレーザ光及び連続レーザ光の1又は複数であることを特徴とする請求項13に記載の切削工具の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の方法で製造されることを特徴とする切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークのレーザ加工方法に関し、より詳細には、レーザを使用してワークを加工することによりワークに曲面、溝本体、穴等の所望の形状を加工する方法、並びに、PCD、CBN、超硬合金、セラミックス、サーメット及びその他の材料を使用して必要な性能を発揮する切削工具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンド焼結体(PCD)工具及び立方晶窒化ホウ素(CBN)工具は、機械加工が困難な材料を切断する解決手段を提供するものである。
【0003】
立方晶窒化ホウ素(CBN又はPCBN)は人工的に合成可能な材料であり、その硬度は、ダイヤモンドに次いで高く、高温での良好な安定性を備える(硬化鉄金属及び超硬合金材料を加工する際に高温となる)。色々な形状のCBN工具が、硬化鉄金属を連続的又は断続的に切断したり、溶接金属や複合金属を溶接したり、する用途に使用されている。
【0004】
PCD工具は、PCD材料をカッター本体に溶着することによって作製される。一般的に、PCD材料とマトリックス材料は、高温高圧下で金属ベースのバインダーでダイヤモンド粒子を焼結することによって作製される。PCD工具は、放電加工又はレーザ加工により切断し、カーバイド又はスチール基板に溶接した後、鋭利に加工することによって作製される。この工具は、非鉄金属(例えばアルミニウム等)及び研磨性の高い合成材料を高速で処理することができ、プラスチック加工の用途に特に有効である。PCD工具は、非鉄金属、複合材料、プラスチック、及び加工が非常に困難な超硬合金のフライス加工に使用されている。
【0005】
PCD及びCBNの特性から一般的な研削方法で加工することは困難である。特に、完全なスパイラルエッジの工具を作製することはできないが、その代わりとして、複数のパッチ片を接合することにより不連続なスパイラルブレードを作製することはできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記目的のために、現在使用されている解決策の1つは電食である。これは、銅ホイールと工具のパッチ片との間を電食することによって接合している。しかしながら、この方法は、処理に時間を要するだけでなく、表面粗さを制御することができないため、表面の仕上がり条件を満たすことが困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、電気浸食方式に基づいて新たな開発を行った。まず初めに、エッチング液に大電流を流し、次に、徐々に電流を減少させて複数の小電流を使用することにより複数回エッチングし、表面の仕上がり条件を改善することとした。しかしながら、処理効率は大幅に低下し、電気浸食方式による表面仕上がりは、研削によって得られる表面仕上がりと常に一致するとは限らなかった。
【0008】
その結果、PCD又はCBDで作製された溝付き研削用の特殊な研削砥石を使用することにより、当該技術分野において、表面の滑らかさの条件を満たす3番目の技術解決手段が誕生した。特に、この研削砥石を用いる方法では、研削と電気侵食の特製を組み合わせた特別な電食技術を使用することにより、PCD材料又はCBN材料の切削に必要な部品を高速で処理することができることが明らかとなった。
【0009】
本発明の目的は、形成するワークの条件に応じたレーザを用いて加工することにより、加工効率に優れたワークのレーザ加工方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、切削工具を作製するにあたってレーザ加工の応用方法を提供し、硬質材料をレーザ加工することにより、切削工具に必要な機能部位を高速で作製することができ、工具の加工効率を向上させることである。
【0011】
本発明の別の目的は、PCD材料又はCBN材料を切削するために必要な各種の機能部品を迅速に加工することができ、工具の加工効率を向上させることができる切削工具の製造方法を提供することである。
【0012】
本発明のワークのレーザ加工方法は、以下の工程を含む。
ワーク上に加工しようとする構造体の形態、及び、加工しようとする構造体とワーク各箇所との接触境界を決定して切除対象の素材体を取得する工程;
前記切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割し、各素材ブロックの境界と加工しようとする構造体の境界に基づいて、レーザカット加工計画を生成する工程;
レーザカット加工計画に従って、各前記境界沿いにレーザ光により前記ワークを切断することで、構造体が形成されるまで各素材ブロックを切り取って前記ワークから次々に取り外す工程;
前記素材ブロックの最大規格は、レーザ光によるワークの加工可能深さ、即ち、レーザ光の光路方向に沿ってレーザ光がワークを加工する際に達し得る最も遠い箇所により決定される工程;
前記レーザ光による加工可能深さは、レーザ加工される箇所のワークの厚みよりも小さいことを特徴とする。
【0013】
本発明によって提供される加工方法において、前記ワークは、完成品を製造するための材料であって、PCD、CBN、硬質合金、セラミックス及びサーメットの1又は複数から選択される材質であるが、これらの材料に限定されない。また、前記ワークは、完成品を製造するための材料であって、球状、柱状、錐状、プレート状及びブロック状の1又は複数の形態を含むが、これらの形態に限定されない。
【0014】
本発明の加工方法は、工具加工、とりわけ、硬質材料を使用した機能部品の切削に必要な切削工具の加工に適している。
【0015】
本発明の切削工具の製造方法は、以下の工程を含む。
切削工具による切削の実施に要する各機能部位のパラメータ(例:すくい角、逃げ角、チップ厚、刃幅比、溝底円弧、ねじれ角、切れ刃傾き角等であるが、これらに限定されない)を設定するとともに、前記切削の実施に要する機能部位、及び、当該機能部位とワークの各箇所との接触境界を生成して切除対象の素材体を取得する工程;
前記切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割し、各素材ブロックの境界と加工しようとする構造体の境界に基づいて、レーザカット加工計画を生成する工程;
前記レーザカット加工計画に従って、各前記境界沿いにレーザ光により前記ワークを切断することで、各素材ブロックを切り取ってワークから次々に取り外し、切削の実施に要する機能部位を形成する工程。
【0016】
本発明の製造方法で作製される切削工具に必要な機能部品としては、切りくず溝、らせん溝、すくい面、逃げ面等が含まれるが、これらに限定されない。そして、レーザ光による加工可能深さは、レーザ加工される箇所のワークの厚みよりも小さくされている。
【0017】
本発明の切削工具でらせん溝を処理するための実施形態では下記の工程を含む。
切削工具のらせん溝のパラメータ(例として、すくい角、逃げ角、チップ厚、刃幅比、溝底円弧、ねじれ角及び切れ刃傾き角等が挙げられるがこれらに限定されない)を設定するとともに、らせん溝とワークの各箇所との接触境界を生成して、切除対象の素材体及びそのデータ情報を取得する工程;
切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割し、各素材ブロックの境界と加工しようとする構造体の境界に基づいて、デジタル化されたレーザカット加工計画を生成する工程;
前記デジタル化されたレーザカット加工計画に従って、コンピュータ制御下においてレーザ光により前記ワークを切断することで、各素材ブロックを切り取り、前記ワークから次々と取り外してらせん溝を形成する工程。
そして、レーザ光による加工可能深さは、レーザ加工される箇所のワークの厚みよりも小さくされている。
【0018】
本発明の方法の自動化レベルを向上するために、3軸及び3軸以上の多軸連動加工機を用い、コンピュータ制御下で製造を実施することが好ましい。
【0019】
本発明は、以下の工程を含む、5軸連動加工機を用いる切削工具の製造方法である。
切削工具のらせん溝のパラメータ(例として、すくい角、逃げ角、チップ厚、刃幅比、溝底円弧、ねじれ角及び切れ刃傾き角等が挙げられるがこれらに限定されない)を設定するとともに、らせん溝とワークの各箇所との接触境界を生成して、切除対象の素材体及びそのデータ情報を取得する工程;
切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割し、各素材ブロックの境界と加工しようとする構造体の境界に基づいて、デジタル化されたレーザカット加工計画を生成する工程;
前記デジタル化されたレーザカット加工計画に従って、コンピュータ制御下においてレーザ光により前記ワークを切断することで、各素材ブロックを切り取り、前記ワークから次々と取り外してらせん溝を形成する工程。
そして、レーザ光による加工可能深さは、レーザ加工される箇所のワークの厚みよりも小さくなっている。
【0020】
本発明で提供される方法において、切除される素材としては、PCD、CBN、硬質合金、セラミックス及びサーメット等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明で提供される方法において、前記レーザ光は、パルスレーザ光及び連続レーザ光の1又は複数である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の技術的解決策により、下記の有利な効果を実現することができる。
【0023】
本発明が提供する切削工具の加工方法と、従来の電食又は研削とを比較すると、本実施形態で用いるレーザは、材料切断を実行する従来の方法を単純に置換するものではなく、レーザの特性を利用して材料を小分けに分割することにより材料を除去することから、従来の処理方法と比べて処理時間を大幅に短縮することができる。従来の電食又は粉砕は、材料に対する押圧によって材料を100%除去するものであるため、材料除去率が変わらず100%除去する必要があるため、処理時間を短縮することが困難である。
【0024】
本実施形態では、レーザが材料を切断するだけであるため、電食又は研削のように大量の廃液が発生することがなく、少量の固形廃棄物しか発生しないし、容易にリサイクルできるので環境保護の観点からも優れている。
【0025】
本実施形態では、(レーザ加工の境界部分の材料が除去される)材料除去率が低いので、加工面積を減少させることができ、加工効率を向上することができる。他の従来の加工方法では、加工対象のワークの表面を除去する部分を走査して加工対象全てを層状に、ホットメルト/ガス化/エッチングにより1つずつ気化するため、固体の残渣は生じないものの、加工中に生成されるガスによって環境汚染が生じるし、また処理に多大なエネルギーを消費する。これに対し、本実施形態の方法は、生産コストを削減することに有益であるだけでなく、加工面に熱的損傷及び機械的損傷を容易に引き起こさない低出力レーザ(レーザ彫刻及びフライス盤に適用されるレーザ)を使用しているので、研削と同等の表面性状が得られるし、加工時間を大幅に短縮することができるので加工効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態において、ワーク上で処理される切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割する方法の概略を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態において、ワーク上で処理される切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割する別の方法の概略を示す概略図である。
図3図2に示される素材ブロックをレーザ切断することにより素材体から分割される状態を示す概略図である。
図4】本発明の一実施形態において、ワーク上で処理される切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割する別の方法を示す概略図であり、切断対象の素材体は複数の素材ブロックに切断され、素材ブロックはレーザ切断することにより素材体から分離される。
図5】本発明の方法で図4の素材体を処理した後の素材体の形態を示す概略図である。
図6】本発明の一実施形態に係る加工対象のワークと溝体の形状の概略図である。
図7図6を別の角度から見た概略図である。
図8図6に示す加工対象のワークをレーザ切断する実施形態を示す概略図である。
図9図6に示す加工対象のワークをレーザ切断する別の一実施形態を示す概略図である。
図10】加工対象のワークをレーザで切断するときの概略図であり、素材体から切断された素材ブロックは素材体本体から分離される。
図11】レーザによって素材体を切断して溝体を形成する工程において、素材ブロックの形態で素材体から切り離される材料の概略図である。
図12】本発明の方法によって素材体にらせん溝を作製した後の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照しつつ、以下に本発明の技術的特徴を詳細に説明する。本発明の実施形態は、本発明の技術的解決策を例示するためにのみ使用されるものに過ぎず、実施形態に示すもののみに限定されるわけではない。本発明は、好ましい実施形態を参照し、当業者に理解され、本発明の技術的解決策を実行できるように詳述されている。本発明の技術的解決策の技術的思想及び範囲から逸脱することがない修正又は同等の置換はいずれも、本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0028】
レーザは、レーザ切断、レーザ刻印、パンチング加工等、機械加工の分野で広く使用されていることが一般的に知られている。レーザ切断及びパンチングには、主に、鋼板と鋼管の加工に使用され、レーザは加工に属するワークピースを完全に切断するために使用される。レーザ刻印は、主に金属表面のテクスチャ加工に使用される。レーザは、材料を貫通することなく加工できるので、加工材料の表面をレーザーエッチング、ガス化、又はホットメルトによってのみ加工することができる。したがって、レーザは金属除去効率が低いので、深く処理することができない。したがって、本実施形態では、非貫通でありながら効率的なレーザ加工方法を提供するものである。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態において、ワーク上で処理される切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割する方法の概略を示す概略図である。図2は、本発明の一実施形態において、ワーク上で処理される切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割する別の方法の概略を示す概略図である。本実施形態のレーザ加工方法は、図1及び図2に示すように、ワーク100上に加工しようとする構造体の形態、及び、加工しようとする構造体とワーク各箇所との接触境界を決定して切除対象の素材体120を取得する。切除対象の素材体120は、複数の素材ブロック121に分割され、レーザカット加工計画を生成する。つまり、レーザ光の光路が素材体を切断するために向けられると、各素材ブロックの境界と加工しようとする構造体の境界沿いにレーザ光によりワークを切断することでレーザ加工し、レーザ加工は素材ブロック121の境界線と一致させることにより1つずつ2つに分離していく。これによりレーザ加工の後に、複数の素材ブロック121がワークから次々に取り外される(図3参照)。
【0030】
図4は、本発明の一実施形態において、ワーク上で処理される切除対象の素材体を複数の素材ブロックに分割する別の方法を示す概略図であり、切断対象の素材体は複数の素材ブロックに切断され、素材体からレーザ切断されて素材ブロックが分離される。レーザは切断される素材体とワーク100との間の境界に沿って第1方向及び第2方向にワークを切断する。レーザで切断した後に、複数の円錐状の素材ブロック121がワークから次々と取り外され、図5に示すように、加工により形成された形状では、湾曲した切断境界が形成されている。
【0031】
レーザ光による加工可能深さは、レーザ加工される箇所のワークの厚みよりも小さくなる。つまり、レーザはワークを切断するわけではなく、貫通切断の例は次の通りである。レーザ光路は、ワークの片側から入射し、次に反対側の光路に沿ってワークに貫通穴を残す。この実施形態において、レーザは、素材体の一方の側に入射する光路を有し、光路に沿って素材体の他方の面から出射することはない。
【0032】
レーザは切断のために使用され、素材ブロック121の最大規格は、レーザ光によるワークの加工可能深さに依存する。すなわち、ワークの加工可能深さは、レーザ光の光路方向に沿って、レーザ光がワークを加工する際に達し得る最も遠い箇所である。ワークから分離された素材ブロック121はそれぞれ、切断境界を含み、切断境界の長さは、レーザ光によるワークの加工可能深さ以下である必要がある。切断境界の長さは、レーザごとによって異なるし、レーザ光ごとによって異なる。切断境界の長さは、製造方法の特定の要件で決定される。本実施形態の方法を実施するために、パルスレーザ及び連続レーザのいずれか一方若しくは両方が使用される。
【0033】
素材ブロック121がワークから徐々に取り外され、それによって処理される構造体の形状が徐々に形成される。処理において、自動化レベルを向上するために、切断される素材体120及び分割された複数の素材ブロック121がデジタル化されてデータ情報が作成される。既存の三軸及び三軸以上の多軸連動加工機を用い、コンピュータ制御下でレーザフォーカスポイント、レーザ光路及びワークを同時に自動的に操作する。
【0034】
図6は、本発明一実施形態に係る加工対象のワークと溝体の形状の概略図である。図7は、図6を別の角度から見た概略図である。工具のらせん溝のパラメータ(例えば、すくい角、芯材の厚み、ブレード幅比、溝底円弧、らせん角、切れ刃傾き角)は事前に設定されており、加工対象のワーク100にらせん状の溝が形成されており、溝本体とワークの外縁との境界111が設けられている。
【0035】
本実施形態は、パルスレーザ又は固定レーザによって生成された連続レーザを使用する。好適な固定レーザとしては、Qスイッチレーザ、モードロックレーザ、シングルモード及び周波数安定化レーザ、及び波長可変レーザ等が含まれる。
【0036】
レーザ300の焦点は、レーザが加工物を切断するように調整される。らせん溝を形成するために、レーザは溝本体とワークの外縁の間の境界に沿ってワークを径方向及び軸方向に切断し、ワークから切除された素材ブロックがワーク本体から分離される。詳細は図8及び図9を参照されたい。
【0037】
図10は、加工対象のワークをレーザで切断するときの概略図であり、素材体から切断された素材ブロックは素材体本体から分離される。図10に示すように、加工対象の素材体をレーザ切断することにより作製された被切断材200は、素材ブロックがブロック状で素材体から分離される。レーザ切断が進行するに伴って、被切断材200が連続的に生成されて溝体110が形成される。
【0038】
図12は、本発明の方法によって素材体にらせん溝を作製した後の一実施形態を示す概略図である。図10図11及び図12を参照すると、溝本体の形状に沿ってレーザで切断した後に、ワーク上に完全な溝本体が形成されている。
【0039】
本発明の実施形態の方法と電食又は研削とを比較すると、電食又は粉砕は、材料に対する押圧によって材料を100%除去するものであるため、材料除去率が変わらず100%除去する必要があるため、処理時間を短縮することが困難である。一方、本実施形態で用いるレーザは、材料切断を実行する従来の方法を単純に置換するものではなく、レーザの特性を利用して材料を小分けに分割することにより材料を除去することから従来の処理方法と比べて処理時間を大幅に短縮することができる。第2の利点として、本実施形態では、電食又は研削によって大量の廃液が発生することがなく、レーザが材料を切断するだけであるため、少量の固形廃棄物しか発生することがなく、容易にリサイクルできるので環境保護の観点からも優れている。第3の利点として、本実施形態では、材料除去率が低い(レーザ加工の境界部分の材料のみが除去される)ので、加工面積を減少させることができ、加工効率を向上することができる。他の従来の高エネルギーレーザ加工方法では、加工対象のワークの表面を除去する部分を走査して加工対象全てを層状に1つずつ気化するため固体の残渣は生じないものの、加工中に生成されるガスによって環境汚染が生じるし、また処理に多大なエネルギーが消費される。これに対し、本実施形態の方法によれば、生産コストを削減することに有益であるだけでなく、加工面に熱的損傷及び機械的損傷を容易に引き起こさない低出力レーザ(レーザ彫刻及びフライス盤に適用されるレーザ)を使用しているので、研削と同等の表面性状が得られるし、加工時間を大幅に短縮することができるので加工効率を向上することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12