【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、
反応容器内でALD(Atomic Layer Deposition)サイクルの実施により対象物の表面にチタン酸バリウム膜を成膜するチタン酸バリウム膜の製造方法であって、
前記ALDサイクルは、酸化チタン膜形成工程と、酸化バリウム形成工程とを含み、
前記酸化チタン膜形成工程は、
前記反応容器にTDMAТ(Tetrakis dimethylamino titanium:ТiH[N(CH
3)
4])を充満させる第1工程と、
前記反応容器から前記TDMAТを排気する第2工程と、
前記反応容器にOHラジカルを充満させる第3工程と、
前記反応容器から前記OHラジカルを排気する第4工程と、
を含み、
前記酸化バリウム形成工程は、
前記反応容器に気化されたバリウム錯体を充満させる第5工程と、
前記反応容器から前記バリウム錯体を排気する第6工程と、
前記反応容器にOHラジカルを充満させる第7工程と、
前記反応容器から前記OHラジカルを排気する第8工程と、
を含み、
前記酸化チタン膜及び前記酸化バリウム膜を、正順または逆順で交互に形成する、チタン酸バリウム膜の製造方法に関する。
【0007】
本発明の一態様によれば、酸化チタン膜及び酸化バリウム膜を、正順または逆順で交互に形成するにより、チタン酸バリウム膜を形成している。酸化チタン膜及び酸化バリウム膜を規則正しく配列させれば、チタン酸バリウム膜を形成できるからである。そのために、酸化チタン膜及び酸化バリウム膜をALDにより交互に形成する。
【0008】
酸化チタン膜を形成するための2種類のプリカーサー(前駆体)として、TDMAТ(ТiH[N(CH
3)
4]とハイドロキシル基OHラジカル(OH
*)とが用いられる。原料ガスであるTDMAТ(ТiH[N(CH
3)
4]は、第1工程で反応容器に充満された後、第2工程で排気されても、対象物表面に付着している。第3工程で反応容器に充満されるOHラジカル(OH
*)は、対象物表面に付着しているTDMAТと反応し、酸化チタンТIO
2膜が原子層レベルで対象物表面に形成される。第4工程で、OHラジカル(OH
*)は反応容器から排気される。
【0009】
酸化バリウム膜を形成するための2種類のプリカーサー(前駆体)として、気化されたバリウム錯体とハイドロキシル基OHラジカル(OH
*)とが用いられる。バリウム錯体とは、分子の中心にあるBaイオンと、それを取り囲むように非共有電子対を持つ配位子とからなる化合物である。原料ガスである気化されたバリウム錯体は、第5工程で反応容器に充満された後、第6工程で排気されても、対象物表面に付着している。第7工程で反応容器に充満されるOHラジカル(OH
*)は、対象物表面に付着しているバリウム錯体と反応し、酸化バリウムBaO膜が原子層レベルで対象物表面に形成される。第8工程で、OHラジカル(OH
*)は反応容器から排気される。
【0010】
この第1〜第8工程がALDサイクルであり、これを繰り返すことで、酸化チタン膜及び酸化バリウム膜が交互に形成される。酸化チタンТIO
2膜及び酸化バリウムBaO膜が規則正しく配列されることで、チタン酸バリウム膜BaТIO
3が形成される。なお、酸化チタン膜及び酸化バリウム膜は、正順または逆順で交互に積層されればよく、対象物に対する最初の成膜では、第5〜第8工程の後に第1〜第4工程を実施しても良い。
【0011】
チタン酸バリウム膜の膜厚は、繰り返し実施されるALDサイクルのサイクル数に比例し、サイクル数を少なくすることで薄い膜厚とすることも可能である。このようにして薄膜で形成されるチタン酸バリウム膜は、膜厚に依存させて誘電率の低くすることができる誘電体膜に好適に使用することができる。
【0012】
(2)本発明の一態様(1)において、前記バリウム錯体は、減圧化での加熱で昇華させて気化されても良い。バリウム錯体は室温で固体であり、加熱すると昇華して気化される。昇華する温度は、常圧よりも減圧化で低くすることができる。ただしこれに限らず、バリウム錯体を有機溶剤に溶かして、超音波やインジェクタで霧化して供給しても良い。
【0013】
(3)本発明の一態様(2)において、固体で投入される前記バリウム錯体を収容する容器と、前記容器と前記反応容器とを連結する配管と、をそれぞれ加熱及び減圧して、気化された前記バリウム錯体を前記反応容器に導入することができる。容器内の固体のバリウム錯体は、減圧下で加熱されると常圧下よりも低い温度での昇華により気化され、加熱及び減圧下の配管を介して、気体として反応容器に導入することができる。
【0014】
(4)本発明の一態様(3)において、前記反応容器を真空引きして、前記容器と前記配管とを減圧にすることができる。こうすると、反応容器を真空引きする設備を兼用して、容器と配管とを減圧に設定できる。なお、容器と配管とを減圧に設定後、例えば配管に設けられたバルブが閉じられて減圧が維持したまま容器及び配管が加熱されると、バリウム錯体を昇華によって気化させることができる。その後、バルブを開けば、気化されたバリウム錯体を反応容器に導入することができる。
【0015】
(5)本発明の一態様(2)〜(4)において、前記対象物を加熱して、前記酸化バリウム膜を形成すことができる。バリウム錯体が反応容器内に存在する第5〜第7工程では反応容器内は減圧されている。よって、第5〜第7工程中に対象物上に存在するバリウム錯体は、減圧下で加熱されることになり、OHラジカル(OH
*)と反応させることができる。
【0016】
(6)本発明の一態様(1)〜(5)において、前記バリウム錯体はβ-ジケトンとすることができる。ここで、β-ジケトンとは、-CO-C-CO-基をもつ化合物の総称である。β-ジケトンは、種々の金属イオン例えばBaイオンと安定なキレート化合物を生成する性質を持つので、バリウム錯体となり得る。
【0017】
(7)本発明の一態様(6)において、前記バリウム錯体は、以下の化学式1で表されるものを用いることができる。化学式1に表されるバリウム錯体(β-ジケトン)は、常圧下にて約250℃以上で昇華するが、減圧下では例えば200℃レベルで昇華させることができる。
【化1】
【0018】
(8)本発明の一態様(6)において、前記バリウム錯体は、以下の化学式2で表されるものを用いることができる。化学式2に表されるバリウム錯体(β-ジケトン)は、常圧下にて約300℃以上で昇華するが、減圧下では昇華させる温度をより下げることができる。
【化2】
【0019】
(9)本発明の一態様(6)において、前記バリウム錯体は、以下の化学式3で表されるものを用いることができる。化学式3に表されるバリウム錯体(β-ジケトン)も、常圧下にて約300℃以上で昇華するが、減圧下では昇華させる温度をより下げることができる。
【化3】