特許第6980324号(P6980324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クリエイティブコーティングスの特許一覧

<>
  • 特許6980324-チタン酸バリウム膜の製造方法 図000011
  • 特許6980324-チタン酸バリウム膜の製造方法 図000012
  • 特許6980324-チタン酸バリウム膜の製造方法 図000013
  • 特許6980324-チタン酸バリウム膜の製造方法 図000014
  • 特許6980324-チタン酸バリウム膜の製造方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6980324
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】チタン酸バリウム膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20211202BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20211202BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20211202BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   H01L21/316 X
   H01L21/31 B
   C23C16/455
   C23C16/40
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-36247(P2021-36247)
(22)【出願日】2021年3月8日
【審査請求日】2021年9月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318004501
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブコーティングス
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英児
(72)【発明者】
【氏名】坂本 仁志
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−270591(JP,A)
【文献】 特開平11−261029(JP,A)
【文献】 特開昭58−206095(JP,A)
【文献】 特開2010−280991(JP,A)
【文献】 特開2012−074477(JP,A)
【文献】 特表2014−520404(JP,A)
【文献】 特開2005−259393(JP,A)
【文献】 特開2012−256926(JP,A)
【文献】 特開2002−090228(JP,A)
【文献】 米国特許第6143072(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/31
C23C 16/455
C23C 16/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内でALDサイクルの実施により対象物の表面にチタン酸バリウム膜を成膜するチタン酸バリウム膜の製造方法であって、
前記ALDサイクルは、酸化チタン膜形成工程と、酸化バリウム形成工程とを含み、
前記酸化チタン膜形成工程は、
前記反応容器にTDMAТ(ТiH[N(CH])を充満させる第1工程と、
前記反応容器から前記TDMAТを排気する第2工程と、
前記反応容器にOHラジカルを充満させる第3工程と、
前記反応容器から前記OHラジカルを排気する第4工程と、
を含み、
前記酸化バリウム形成工程は、
前記反応容器に気化されたバリウム錯体を充満させる第5工程と、
前記反応容器から前記バリウム錯体を排気する第6工程と、
前記反応容器にOHラジカルを充満させる第7工程と、
前記反応容器から前記OHラジカルを排気する第8工程と、
を含み、
前記酸化チタン膜及び前記酸化バリウム膜を、正順または逆順で交互に形成する、チタン酸バリウム膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記バリウム錯体は、減圧化での加熱で昇華させて気化される、チタン酸バリウム膜の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
固体で投入される前記バリウム錯体を収容する容器と、前記容器と前記反応容器とを連結する配管と、をそれぞれ加熱及び減圧して、気化された前記バリウム錯体を前記反応容器に導入する、チタン酸バリウム膜の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記反応容器を真空引きして、前記容器と前記配管とを減圧にする、チタン酸バリウム膜の製造方法。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項において、
前記対象物を加熱して、前記酸化バリウム膜を形成する、チタン酸バリウム膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、
前記バリウム錯体はβ-ジケトンである、チタン酸バリウム膜の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記バリウム錯体は、以下の化学式1で表される、チタン酸バリウム膜の製造方法。
【化1】
【請求項8】
請求項6において、
前記バリウム錯体は、以下の化学式2で表される、チタン酸バリウム膜の製造方法。
【化2】
【請求項9】
請求項6において、
前記バリウム錯体は、以下の化学式3で表される、チタン酸バリウム膜の製造方法。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸バリウム膜の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜コンデンサや半導体集積回路装置等に誘電体膜として用いられるチタン酸バリウム膜は、焼結することで形成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−150205号公報
【特許文献2】特開2008−053281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チタン酸バリウム膜は、焼結することで形成するには、塗布液を被塗物に塗布する塗布工程と、塗布工程にて形成された塗布膜を焼成する工程とを有する。塗布液を被塗物に塗布するには、塗布液を調製する工程、塗布液をフィルターでろ過して不純物を除去する工程、被塗物の表面を清浄にする工程、塗布工程及び塗布後の乾燥工程等を含む。塗布膜を焼成するには、仮焼工程と本焼成工程とを含む。
【0005】
本発明は、チタン酸バリウム膜を原料ガスと反応ガスとから形成するチタン酸バリウム膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、
反応容器内でALD(Atomic Layer Deposition)サイクルの実施により対象物の表面にチタン酸バリウム膜を成膜するチタン酸バリウム膜の製造方法であって、
前記ALDサイクルは、酸化チタン膜形成工程と、酸化バリウム形成工程とを含み、
前記酸化チタン膜形成工程は、
前記反応容器にTDMAТ(Tetrakis dimethylamino titanium:ТiH[N(CH])を充満させる第1工程と、
前記反応容器から前記TDMAТを排気する第2工程と、
前記反応容器にOHラジカルを充満させる第3工程と、
前記反応容器から前記OHラジカルを排気する第4工程と、
を含み、
前記酸化バリウム形成工程は、
前記反応容器に気化されたバリウム錯体を充満させる第5工程と、
前記反応容器から前記バリウム錯体を排気する第6工程と、
前記反応容器にOHラジカルを充満させる第7工程と、
前記反応容器から前記OHラジカルを排気する第8工程と、
を含み、
前記酸化チタン膜及び前記酸化バリウム膜を、正順または逆順で交互に形成する、チタン酸バリウム膜の製造方法に関する。
【0007】
本発明の一態様によれば、酸化チタン膜及び酸化バリウム膜を、正順または逆順で交互に形成するにより、チタン酸バリウム膜を形成している。酸化チタン膜及び酸化バリウム膜を規則正しく配列させれば、チタン酸バリウム膜を形成できるからである。そのために、酸化チタン膜及び酸化バリウム膜をALDにより交互に形成する。
【0008】
酸化チタン膜を形成するための2種類のプリカーサー(前駆体)として、TDMAТ(ТiH[N(CH]とハイドロキシル基OHラジカル(OH)とが用いられる。原料ガスであるTDMAТ(ТiH[N(CH]は、第1工程で反応容器に充満された後、第2工程で排気されても、対象物表面に付着している。第3工程で反応容器に充満されるOHラジカル(OH)は、対象物表面に付着しているTDMAТと反応し、酸化チタンТIO膜が原子層レベルで対象物表面に形成される。第4工程で、OHラジカル(OH)は反応容器から排気される。
【0009】
酸化バリウム膜を形成するための2種類のプリカーサー(前駆体)として、気化されたバリウム錯体とハイドロキシル基OHラジカル(OH)とが用いられる。バリウム錯体とは、分子の中心にあるBaイオンと、それを取り囲むように非共有電子対を持つ配位子とからなる化合物である。原料ガスである気化されたバリウム錯体は、第5工程で反応容器に充満された後、第6工程で排気されても、対象物表面に付着している。第7工程で反応容器に充満されるOHラジカル(OH)は、対象物表面に付着しているバリウム錯体と反応し、酸化バリウムBaO膜が原子層レベルで対象物表面に形成される。第8工程で、OHラジカル(OH)は反応容器から排気される。
【0010】
この第1〜第8工程がALDサイクルであり、これを繰り返すことで、酸化チタン膜及び酸化バリウム膜が交互に形成される。酸化チタンТIO膜及び酸化バリウムBaO膜が規則正しく配列されることで、チタン酸バリウム膜BaТIOが形成される。なお、酸化チタン膜及び酸化バリウム膜は、正順または逆順で交互に積層されればよく、対象物に対する最初の成膜では、第5〜第8工程の後に第1〜第4工程を実施しても良い。
【0011】
チタン酸バリウム膜の膜厚は、繰り返し実施されるALDサイクルのサイクル数に比例し、サイクル数を少なくすることで薄い膜厚とすることも可能である。このようにして薄膜で形成されるチタン酸バリウム膜は、膜厚に依存させて誘電率の低くすることができる誘電体膜に好適に使用することができる。
【0012】
(2)本発明の一態様(1)において、前記バリウム錯体は、減圧化での加熱で昇華させて気化されても良い。バリウム錯体は室温で固体であり、加熱すると昇華して気化される。昇華する温度は、常圧よりも減圧化で低くすることができる。ただしこれに限らず、バリウム錯体を有機溶剤に溶かして、超音波やインジェクタで霧化して供給しても良い。
【0013】
(3)本発明の一態様(2)において、固体で投入される前記バリウム錯体を収容する容器と、前記容器と前記反応容器とを連結する配管と、をそれぞれ加熱及び減圧して、気化された前記バリウム錯体を前記反応容器に導入することができる。容器内の固体のバリウム錯体は、減圧下で加熱されると常圧下よりも低い温度での昇華により気化され、加熱及び減圧下の配管を介して、気体として反応容器に導入することができる。
【0014】
(4)本発明の一態様(3)において、前記反応容器を真空引きして、前記容器と前記配管とを減圧にすることができる。こうすると、反応容器を真空引きする設備を兼用して、容器と配管とを減圧に設定できる。なお、容器と配管とを減圧に設定後、例えば配管に設けられたバルブが閉じられて減圧が維持したまま容器及び配管が加熱されると、バリウム錯体を昇華によって気化させることができる。その後、バルブを開けば、気化されたバリウム錯体を反応容器に導入することができる。
【0015】
(5)本発明の一態様(2)〜(4)において、前記対象物を加熱して、前記酸化バリウム膜を形成すことができる。バリウム錯体が反応容器内に存在する第5〜第7工程では反応容器内は減圧されている。よって、第5〜第7工程中に対象物上に存在するバリウム錯体は、減圧下で加熱されることになり、OHラジカル(OH)と反応させることができる。
【0016】
(6)本発明の一態様(1)〜(5)において、前記バリウム錯体はβ-ジケトンとすることができる。ここで、β-ジケトンとは、-CO-C-CO-基をもつ化合物の総称である。β-ジケトンは、種々の金属イオン例えばBaイオンと安定なキレート化合物を生成する性質を持つので、バリウム錯体となり得る。
【0017】
(7)本発明の一態様(6)において、前記バリウム錯体は、以下の化学式1で表されるものを用いることができる。化学式1に表されるバリウム錯体(β-ジケトン)は、常圧下にて約250℃以上で昇華するが、減圧下では例えば200℃レベルで昇華させることができる。
【化1】
【0018】
(8)本発明の一態様(6)において、前記バリウム錯体は、以下の化学式2で表されるものを用いることができる。化学式2に表されるバリウム錯体(β-ジケトン)は、常圧下にて約300℃以上で昇華するが、減圧下では昇華させる温度をより下げることができる。
【化2】
【0019】
(9)本発明の一態様(6)において、前記バリウム錯体は、以下の化学式3で表されるものを用いることができる。化学式3に表されるバリウム錯体(β-ジケトン)も、常圧下にて約300℃以上で昇華するが、減圧下では昇華させる温度をより下げることができる。
【化3】
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明方法の一実施形態が実施されるALD装置を示す図である。
図2図1に示す反応ガス源の詳細を示す図である。
図3図1に示すALD装置で実施されるALD方法の実施形態を示すタイミングチャートである。
図4】バリウム錯体A、B、Cの揮発率(昇華率)の特性を示す図である。
図5】バリウム錯体Aの揮発率(昇華率)が常圧での温度特性と減圧での温度特性とで異なることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の開示において、提示された主題の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態や実施例を提供する。もちろんこれらは単なる例であり、限定的であることを意図するものではない。さらに、本開示では、様々な例において参照番号および/または文字を反復している場合がある。このように反復するのは、簡潔明瞭にするためであり、それ自体が様々な実施形態および/または説明されている構成との間に関係があることを必要とするものではない。さらに、第1の要素が第2の要素に「接続されている」または「連結されている」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素と第2の要素とが一体的であるもの、あるいは第1の要素と第2の要素とが互いに直接的に接続または連結されている実施形態を含むとともに、第1の要素と第2の要素とが、その間に介在する1以上の他の要素を有して互いに間接的に接続または連結されている実施形態も含む。また、第1の要素が第2の要素に対して「移動する」と記述するとき、そのような記述は、第1の要素及び第2の要素の少なくとも一方が他方に対して移動する相対的な移動の実施形態を含む。
【0022】
1.ALD装置
図1に、ALD装置10の一例が示されている。ALD装置10は、反応容器20と、原料ガス源30と、反応ガス源40と、ガス供給部50と、を含む。反応容器20は、加工対象物(ワークピース)1に成膜するための容器である。反応容器20は、加工対象物1である例えば基板を載置する載置部21を有することができる。加工対象物が粉体等の場合には、反応容器20内で粉体が分散状態で保持されればよい。反応容器20にはガス供給部50が連結され、反応容器20内に各種ガスが導入される。反応容器20には排気管60が連結され、排気ポンプ61によって反応容器20内を排気することができる。
【0023】
ガス供給部50は、原料ガス源30及び反応ガス源40と反応容器20とを連結する。原料ガス源30は、第1原料ガス源31と、第2ガス源32と、を含む。本実施形態では、不活性ガス源70がさらに設けられ、ガス供給部50を介して反応容器20内に不活性ガスを供給して、反応容器20内をパージ可能である。なお、パージガスの導入に代えて、真空ポンプ270により容器10内を排気しても良い。これらのガス源30(31,32)、40及び70からのガスは、流量制御器80A〜80D及びバルブ90A〜90Dを介して、供給タイミング及び流量が制御されて、ガス供給部50を介して択一的に反応容器20内に供給される。
【0024】
第1原料ガス源31は、第1原料ガスとしてTDMAТ(ТiH[N(CH]を供給する。第2原料ガス源32は、第2原料ガスの元になる常温で固体のバリウム錯体を収容している。ここで、バリウム錯体とは、分子の中心にあるBaイオンと、それを取り囲むように非共有電子対を持つ配位子とからなる化合物である。
【0025】
反応ガス源40は、OHラジカルを供給する。反応ガス源40は、図2に示すように、不活性ガス例えばアルゴンArの容器41と、水2を含む加湿器42と、活性化装置43と、を含むことができる。加湿器42からは、アルゴンArによりバブリングされた水が水蒸気ガスとなって送出される。活性化装置43では、加湿されたアルゴンガスが通るガラス管43Aの周囲の誘導コイル43Bでプラズマ3を発生させて、水蒸気を活性化させる。それにより、Ar+HO→Ar+OH+Hとなり、OHラジカル(OH)を生成できる。
【0026】
本実施形態では、常温で固体のバリウム錯体を昇華により気化させている。このために、図1に示第2原料ガス源32にはヒーター33が配置される。また、ガス供給部50には、例えばガス源30(31,32)、40及び70に共用される配管51の周囲に、例えば電熱線などのヒーター52が設けられる。さらに、配管51と反応容器20との連通をオン、オフするためのバルブ53が設けられている。バルブ53及び90Bを開放し、他のバルブ90A、90C及び90Dを閉鎖して、排気ポンプ61を駆動することにより、第2原料ガス源32及びガス供給部50を、反応容器20を介して排気して減圧に設定できる。その後、バルブ53を閉鎖して、ヒーター33及び53により、減圧下でバリウム錯体を昇華させる温度以上に加熱する。それにより、第2原料ガス源32内の固体のバリウム錯体を昇華させて、第2原料ガス源32及びガス供給部50内に第2原料ガスを生成できる。その後、バルブ53を開放すれば、反応容器20に第2原料ガスを導入できる。第2ガス源32と反応容器20を結ぶ専用の配管を有する場合には、その配管にのみヒーター52及びバルブ53を設ければよい。
【0027】
第2原料ガスは、反応容器20内に第2原料ガスが充満された減圧状態でも気体である必要がある。このために、本実施形態では、対象物1を支持する支持台21にヒーター22を設けている。ヒーター22によって、反応容器20内を減圧下での昇華温度に維持することができる。これに代えて、あるいは追加して、反応容器20の壁体を加熱するヒーターを設けても良い。
【0028】
2.ALD工程
反応容器20に対象物1をセットして、ALDサイクルが実施される。一般にALDサイクルとは、原料ガスの投入→排気(パージまたは真空引き)→反応ガスの投入→排気の最小4ステップを一サイクルとする。本実施形態では、ALD装置10で対象物1上に成膜される膜は、酸化チタン膜及び酸化バリウム膜であり、これらが正順または逆順で交互に形成される。よって、本実施形態では、本実施形態でのALDサイクルとは、図3に示すように、第1原料ガスの投入→排気→反応ガスの投入→排気→第2原料ガスの投入→排気→反応ガスの投入→排気を一サイクルとする。対象物1に成膜される膜の厚さはALDサイクルの数Nに比例する。よって、ALDサイクル終了毎にカウントアップされるサイクル数が設定値に達したかが判断され、図3に示すようにALDサイクルが必要数Nだけ繰り返し実施される。
【0029】
2.1.酸化チタン膜
2種類のプリカーサー(前駆体)として、第1原料ガス源31からのTDMAТ(ТiH[N(CH]と、反応ガス源40からのハイドロキシル基OHラジカル(OH)とが用いられる。ALDサイクルを実施するにあたり、先ず、排気ポンプ61により反応容器20内が真空引きされ、例えば10−4Paに設定される。次に、ALDサイクルの1ステップ目として、第1原料ガスTDMAТ(ТiH[N(CH]が反応容器20内に所定の圧力例えば1〜10Paで充満される。ALDサイクルの1ステップ目で、対象物1の表面にTDMAТ(ТiH[N(CH]が浸透する。所定時間経過後、ALDサイクルの2ステップ目として、反応容器20内にパージガスが導入され、反応容器20内のTDMAТ(ТiH[N(CH]が排気されてパージガスに置換される。
【0030】
次に、ALDサイクルの3ステップ目として、反応ガスであるハイドロキシル基OHラジカル(OH)が反応容器20内に所定の圧力例えば1〜10Paで充満される。ALDサイクルの3ステップ目で、対象物1の表面にOHラジカル(OH)が浸透する。その結果、対象物1の表面では、TDMAТ(ТiH[N(CH]がOHラジカル(OH)と反応して、酸化チタン膜ТiOが生成される。特に、対象物1の表面のハイドロキシル基(ヒドロキシ基(−OH)上には、有機金属ガスは室温でも飽和吸着が可能である。よって、成膜中に対象物1を強制加熱する必要がない。所定時間経過後、ALDサイクルの4ステップ目として、反応容器20内にパージガスが導入され、反応容器20内のOHラジカル(OH)がパージガスに置換される。それにより、酸化チタン膜の成膜工程が終了する。
【0031】
2.2.酸化バリウム膜
2種類のプリカーサー(前駆体)として、第2原料ガス源32からのバリウム錯体と、反応ガス源40からのハイドロキシル基OHラジカル(OH)とが用いられる。先ず、排気ポンプ61により反応容器20内が真空引きされ、例えば10−4Paに設定される。次に、ALDサイクルの5ステップ目として、第2原料ガス(気化されたバリウム錯体)が反応容器20内に所定の圧力例えば1〜10Paで充満される。ALDサイクルの51ステップ目で、対象物1の表面に気化されたバリウム錯体が浸透する。所定時間経過後、ALDサイクルの6ステップ目として、反応容器20内にパージガスが導入され、反応容器20内の気化されたバリウム錯体が排気されてパージガスに置換される。
【0032】
次に、ALDサイクルの7ステップ目として、反応ガスであるハイドロキシル基OHラジカル(OH)が反応容器20内に所定の圧力例えば1〜10Paで充満される。ALDサイクルの7ステップ目で、対象物1の表面にOHラジカル(OH)が浸透する。その結果、対象物1の表面では、気化されたバリウム錯体がOHラジカル(OH)と反応して、酸化バリウム膜BaOが生成される。特に、対象物1の表面のハイドロキシル基(ヒドロキシ基(−OH)上には、有機金属ガスは室温でも飽和吸着が可能である。ただし、気化されたバリウム錯体を維持するために、成膜中に対象物1をヒーター22により強制加熱している。所定時間経過後、ALDサイクルの8ステップ目として、反応容器20内にパージガスが導入され、反応容器20内のOHラジカル(OH)がパージガスに置換される。それにより、酸化バリウム膜の成膜工程が終了する。
【0033】
3.チタン酸バリウムBaТiOの成膜
酸化チタンТIO膜及び酸化バリウムBaO膜が規則正しく配列されることで、チタン酸バリウム膜BaТIOが形成される。なぜなら、特に、酸化バリウムBaO膜を形成する時には200℃以上に加熱された状態での成膜なので、吸着−酸化した瞬間は二種の層の積層であるが、時間とともに熱力学的な安定系(すなわちBaТiO)に変化するからである。
【0034】
4.バリウム錯体の昇華
バリウム錯体は、常温で固体であるので、昇華温度まで加熱する必要がある。図4は、各種バリウム錯体の常圧での揮発率(昇華率)を示す特性図である。バリウム錯体Aは化学式1で、バリウム錯体Bは化学式2で、バリウム錯体Cは化学式3で、それぞれ示される。バリウム錯体A〜Cはいずれもβ-ジケトンの例である。
【化1】
【化2】
【化3】
【0035】
バリウム錯体Aは、融点217℃の白色固体であり、株式会社ADEKAのBa−0100(商品名)として知られている。バリウム錯体Bは融点147℃の白色固体であり、バリウム錯体Cは揮発率61%の白色固体である。
【0036】
図4から明らかなように、3種のバリウム錯体A、B、Cの中ではバリウム錯体Aが最も低い温度で昇華が開始されることが分かる。昇華温度は、常圧よりも減圧下では低下する。図5は、バリウム錯体Aの揮発率(昇華率)は、実線で示す常圧時の温度特性から破線で示す減圧下の温度特性にシフトすること示している。このことは、他のバリウム錯体にも同様に適用される。つまり、第2原料ガス源32及びガス供給部50を減圧下で加熱することで、常圧よりも低い温度でバリウム錯体を昇華させることができる。また、減圧された反応容器20内の気化されたバリウム錯体をヒーター22で加熱する温度も下げることができる。バリウム錯体Aでは、図5によると、揮発率(昇華率)が100%となることまでは求められないので、例えば200℃以上に加熱すれば気化させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1…加工対象物、10…ALD装置、20…反応容器、21…支持部、22…ヒーター、30…原料ガス源、31…第1原料源、32…第2原料ガス源、33…ヒーター、40…反応ガス源、50…ガス供給部、51…配管、52…ヒーター、53…バルブ、60…排気管、61…排気ポンプ、70…不活性ガス源、80A〜80D…流量制御器、90A〜90D…バルブ
【要約】
【課題】 チタン酸バリウム膜を原料ガスと反応ガスとから形成するチタン酸バリウム膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】 ALDサイクルの実施によりチタン酸バリウム膜を成膜する方法であって、ALDサイクルは、酸化チタン膜形成工程と、酸化バリウム膜形成工程とを含み、酸化チタン膜形成工程は第1原料ガスとしてTDMAТ(ТiH[N(CH]を用い、反応ガスとしてOHラジカルを用い、酸化バリウム形成工程は、第2原料ガスとして気化されたバリウム錯体を用い、反応ガスとしてOHラジカルを用い、酸化チタン膜及び酸化バリウム膜を、正順または逆順で交互に形成する。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5