(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980340
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】鎖錠構造
(51)【国際特許分類】
E05B 65/00 20060101AFI20211202BHJP
E05B 65/02 20060101ALI20211202BHJP
E05B 65/10 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
E05B65/00 D
E05B65/02 B
E05B65/10 L
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-172591(P2017-172591)
(22)【出願日】2017年9月8日
(65)【公開番号】特開2019-49105(P2019-49105A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯村 慎吾
【審査官】
芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−36365(JP,A)
【文献】
特開平10−102846(JP,A)
【文献】
特開2000−145233(JP,A)
【文献】
特開2014−237997(JP,A)
【文献】
実公昭46−19672(JP,Y1)
【文献】
特開平9−151641(JP,A)
【文献】
特開2008−31666(JP,A)
【文献】
特開2010−112020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施錠操作により鎖錠片がキャビネットの嵌合部に係合する錠装置を備え、扉に固定される取付板に前記錠装置が固定された鎖錠構造であって、
取付板を扉に対してスライド可能とする開放手段を備え、前記開放手段を用いて取付板をスライドさせることにより、鎖錠片を嵌合部から離脱させることが可能となる鎖錠構造。
【請求項2】
取付板側から締め付けられる特殊ネジにより、取付板と受金具が扉を挟持するように固定された請求項1に記載の鎖錠構造。
【請求項3】
受金具の先端に脱落を防止する引掛部を備えた請求項1又は2に記載の鎖錠構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットに用いられる鎖錠構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、キャビネットに鎖錠構造を設けることは、広く行われている。鎖錠構造を施錠状態とすることにより、扉に備えられたハンドルの操作をしても扉を開かないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−043977号公報
【0004】
ところで、錠が故障した場合、キャビネットを解錠することは困難であった。特に、電子錠や電磁錠が故障した場合に備えようとすると、錠自体に強制解除手段をもたせる必要があり、錠の大型化や高コスト化が避けられなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明の課題は、故障時に備えた強制解除手段を錠自体が持たなくても、故障時にキャビネットの扉を開放できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、施錠操作により鎖錠片がキャビネットの嵌合部に係合する錠装置を備え、扉に固定される取付板に前記錠装置が固定された鎖錠構造であって、取付板を扉に対してスライド可能とする開放手段を備え、前記開放手段を用いて取付板をスライドさせることにより、鎖錠片を嵌合部から離脱させることが可能となる鎖錠構造とする。
【0007】
また、取付板側から締め付けられる特殊ネジにより、取付板と受金具が扉を挟持するように固定された構成とすることが好ましい。
【0008】
また、受金具の先端に脱落を防止する引掛部を備えた構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、故障時に備えた強制解除手段を錠自体が持たなくても、故障時にキャビネットの扉を開放することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態におけるキャビネットの斜視図である。ただし、側板の一部などは省略している。
【
図2】ハンドル周りの分解斜視図である。ただし、扉の正面側から見た斜視図である。
【
図3】ハンドル周りの分解斜視図である。ただし、扉の背面側から見た斜視図である。
【
図4】通常時の取付板の配置を示した斜視図である。
【
図5】通常時の取付板の配置を示した正面図である。
【
図6】解錠するために取付板を
図4の状態からずらした状態を示した斜視図である。
【
図7】解錠するために取付板を
図5の状態からずらした状態を示した平面図である。
【
図8】施錠時の鎖錠装置と嵌合部の状態を示した斜視図である。
【
図9】施錠時の鎖錠装置と嵌合部の状態を扉の背面側から見た図である。
【
図10】
図8の状態から取付板をずらした場合の鎖錠装置と嵌合部の状態を示した斜視図である。
【
図11】
図9の状態から取付板をずらした場合の鎖錠装置と嵌合部の状態を扉の背面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態の鎖錠構造は、施錠操作により鎖錠片21がキャビネット1の嵌合部11に係合する錠装置2を備えており、この錠装置2は扉12に固定される取付板3に固定されている。また、鎖錠構造は、取付板3を扉12に対してスライド可能とする開放手段を備えており、この開放手段を用いて取付板3をスライドさせることにより、鎖錠片21を嵌合部11から離脱させることが可能となる。このため、故障時に備えた強制解除手段を錠自体が持たなくても、故障時にキャビネット1の扉12を開放することが可能となる。
【0012】
図1に示すように、実施形態のキャビネット1の扉12は、ハンドル13と錠装置2を備えている。また、
図2に示すことから理解されるように、扉12には、錠装置2を挿通する貫通孔14と取付板3をスライドさせるガイド孔52を備えている。ハンドル13は、扉12を開閉操作する際の持ち手として使用される。このハンドル13は、キャビネット1の開口の外側(フレーム部分)で金具とクランプが係合するように配置されている。なお、実施形態では、ハンドル13と錠装置2が横並びするように配置されているが、ハンドル13よりも扉12の中央側に位置するように、錠装置2が配置されている。
【0013】
図3に示すように、実施形態の錠装置2の先端部には板状の鎖錠片21(ベロ)を取り付けている。この鎖錠片21は錠装置2の施錠操作によりキャビネット1の内側に設けた嵌合部11の孔部15に回転動作を伴い係合することができる。なお、実施形態の錠装置2は、特殊キーを挿入し認証が完了すると特定手順で解錠操作(回転)が可能となるものであるため、この操作を知らない人は開けられず、安全性が確保される。
【0014】
実施形態の鎖錠構造は、錠装置2を固定する取付板3を備えている。取付板3にはネジ51を挿入可能な取付孔31が設けられており、取付板3は取付孔31に挿入されたネジ51を用いて扉12に固定される。実施形態の取付板3は、市販品のプラスドライバーやマイナスドライバーでは外すことができない形状に頭部が切り欠かれた特殊ネジ51を用いて、扉12表面に固定されている。この際、特殊ネジ51を締めこむことで、取付板3と受金具6が扉12をしっかり挟み込むような状態とすることで、取付板3を扉12に対して固定する。このように、取付板3と受金具6とが扉12を挟持するように固定され、取付板3と受金具6が、取付板3側から締め付けられる特殊ネジ51を用いて締め付け固定される構造とすれば、取付板3と扉12の固定状態を解除できるのは、特殊な工具を持っている者に限られるため、安全性を高めることができる。
【0015】
実施形態の受金具6の上下には、左右方向に延びる腕部61を備えている。実施形態では、この腕部61に、ネジ51に対応するネジ孔63を形成している。また、上側の腕部61の先端に下向きに延びる部位を備えることで、上向きに凹んだ引掛部62を形成している。キャビネット1の内側には、引掛部62が引っ掛かることができる部位が備えられるが、実施形態においては、補強フレーム16に設けた切欠部17に腕部61を挿入することで、引掛部62をキャビネット1に引っ掛けることができる。このように、受金具6の先端に脱落を防止する引掛部62を備えた構成とすれば、ネジ51を外してしまった場合であっても、受金具6が落下することを回避できる。
【0016】
実施形態の補強フレーム16は、扉12の裏側に固定されており、少なくとも扉12のハンドル13側に上下方向に延びるように設けられている。実施形態の補強フレーム16は、錠装置2を挿通する孔18を備えている。また、補強フレーム16の側面側で孔18の上下位置には、受金具6の腕部61を挿入するための切欠部17を形成している。なお、鎖錠片21は補強フレーム16の孔18から扉12の内側に向けて突出するように配置されており、鎖錠片21が回動する際に補強フレーム16が障害にならないものとなっている。
【0017】
ここで、通常時の開閉操作について説明する。施錠する際には、まず、ハンドル13を操作して扉12を閉塞状態とする。その後、セキュリティを高めるために、錠装置2を操作して鎖錠片21を嵌合部11に係合させ、施錠する。なお、実施形態では電気錠を使用しており、錠装置2に差し込まれたキーが正しいものと認証された後に、キーを回せば鎖錠片21を回動させることができ、鎖錠片21と嵌合部11を係合させることができる。
【0018】
施錠した状態から扉12を開放する際には、特定の手順を踏んで錠装置2を解錠する。その後、ハンドル13を操作すれば、扉12を開放させることができる。実施形態では、錠装置2に差し込まれたキーが正しいものと認証された後に、キーを回すことで、鎖錠片21と嵌合部11の係合状態を解除することができる。
【0019】
次に、キーの認証ができなくなるなど、錠装置2が故障した際の扉12の開放手順について説明する。まず、取付板3を固定している特殊ネジ51を緩める。その後、取付板3を扉12の表面に沿って左右方向に移動させる。つまり、
図4及び
図5に示す状態から
図6及び
図7に示す状態となるように、取付板3を扉12の中央部側寄りに移動させる。この際、ネジ51が挿入されたガイド孔52によって取付板3の移動方向がガイドされる。つまり、ネジ51とガイド孔52が開放手段として機能する。
【0020】
このような作業をすると、
図8及び
図9に示すような鎖錠片21が嵌合部11と係合した状態から、
図10及び
図11に示すように、鎖錠片21と嵌合部11の係合が解除された状態にすることができる。なお、実施形態のガイド孔52は、その一部が下方に窪んでおり、この窪みにネジ51を嵌め込んだ状態にすれば、鎖錠片21と嵌合部11の係合が解除された状態を維持しやすくなる。
【0021】
鎖錠片21が嵌合部11の孔部15より離脱するまで、取付孔31を左右方向に移動させた後、ハンドル13を操作すれば扉12を開放することができる。なお、扉12に設けたガイド孔52は取付板3で覆われるため、その形状が直視できず、構造を知らない人は容易に解錠することができない。
【0022】
実施形態においては、ネジ51を完全に外しても引掛部62が補強フレーム16に引っ掛かっているため、受金具6は保持される。このため、キャビネット1の内側に受金具6が落下して内部機器に接触するような事故を防止できる。
【0023】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、鎖錠片はフレーム内側に係合する構成としてもよい。
【0024】
また、錠装置は電気的若しくは電磁的機構を伴わなくてもよい。
【0025】
ガイド孔はクランク形状等でもよい。より複雑化することでセキュリティを高めることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 キャビネット
2 錠装置
3 取付板
6 受金具
11 嵌合部
12 扉
21 鎖錠片
51 ネジ
62 引掛部