(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
以下に示す説明において、距離測定装置1および光源駆動装置20の各構成要素は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。距離測定装置1の処理部80および制御部70、光源駆動装置20の放電制御部23および取得部24は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされたプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶メディア、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例がある。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る光源駆動装置20の機能構成および使用環境を例示する図である。本実施形態に係る光源駆動装置20は、複数の容量素子22、電源21、および放電制御部23を備える。複数の容量素子22は互いに並列であり、かつ、それぞれが放電時に発光素子10に電力を供給する。電源21は、複数の容量素子22を充電する。放電制御部23は、複数の容量素子22が放電するタイミングを個別に制御する。以下に詳しく説明する。
【0012】
発光素子10はたとえば発光ダイオードであり、電流が流れることにより発光する。また、発光素子10は、レーザ発振するレーザダイオードである。発光素子10は容量素子22の放電電流によりパルス発光する。なお、本図では光源駆動装置20が5個の容量素子22を備える例を示しているが、これに限定されない。光源駆動装置20は、2個以上の容量素子22を備えればよい。
【0013】
従来のように一つの容量素子のみを用い、充電および放電を繰り返して発光素子を複数回発光させる場合には、一度放電した後、再び十分な電荷が充電されるまでの間、再度発光素子を発光させることができない。そして、充電時間を短縮するためには充電の時定数を小さく設定すると共に、電流容量の大きな電源を用いなければならず、コストが増大する。
【0014】
これに対し、本実施形態において、複数の容量素子22は互いに並列に接続されている。したがって、複数の容量素子22を同時に充電できる。そして、本実施形態の放電制御部23は、複数の容量素子22の放電タイミングを個別に、すなわち互いに独立に制御する。そうすることにより、たとえば一つの容量素子22を放電後、充電をしている間に他の容量素子22を放電させることができる。すなわち、容量素子22の充電時間にかかわらず、連続して複数の容量素子22を放電させ、発光素子10を短いパルス間隔で、発光させることができる。
【0015】
また、従来のように一つの容量素子のみを用い、充電および放電を繰り返して発光素子を複数回発光させる場合、発光素子の発光強度を変化させるためにはたとえば容量素子に充電される電荷の量を制御する必要があった。このような制御は、特に短い間隔でパルス発光を繰り返す中では、精度良く行うのが難しい場合があった。
【0016】
これに対し、本実施形態では、たとえば放電制御部23が複数の容量素子22をそれぞれ単独で、または複数同時に放電させて発光素子10を発光させることにより、発光素子10の発光強度を容易に変化させることができる。
【0017】
本実施形態に係る光源駆動装置20は、たとえば距離測定装置1に用いることができる。
図2は、第1の実施形態に係る距離測定装置1の機能構成を示すブロック図である。距離測定装置1は、光源駆動装置20、発光素子10、および処理部80を備える。処理部80は、発光素子10が光を出射してからその光の反射光を受光するまでの時間を用いて、その光の出射方向において光を反射した反射物までの距離を算出する。発光素子10はたとえば距離測定装置1における光源である。
【0018】
また、距離測定装置1は、反射光を受光する受光部50をさらに備える。光源駆動装置20から処理部80に、容量素子22の放電タイミング、すなわち発光素子10の発光タイミングを示す信号が入力される。そして、処理部80では、発光タイミングと受光部50の受光タイミングに基づいて、距離が算出される。
【0019】
以上、本実施形態によれば、光源駆動装置20が複数の容量素子22を備え、放電制御部23が、複数の容量素子22が放電するタイミングを個別に制御する。したがって、光源から出力されるパルスの間隔や強度の制御の自由度を高めることができる。
【0020】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る距離測定装置1の機能構成を例示する図である。本実施形態に係る距離測定装置1は、複数の発光素子10を備える点を除いて第1の実施形態に係る距離測定装置1と同じである。本実施形態に係る距離測定装置1は、光源駆動装置20、複数の発光素子10、受光部50、および処理部80を備える。光源駆動装置20は複数の発光素子10の発光を制御する。処理部80は、発光素子10が光を出射してからその光の反射光を受光するまでの時間を用いて、その光の出射方向において光を反射した反射物までの距離を算出する。光源駆動装置20の放電制御部23から処理部80に、容量素子22の放電タイミング、すなわち発光素子10の発光タイミングを示す信号が入力される。以下に詳しく説明する。
【0021】
本実施形態に係る光源駆動装置20は、第1の実施形態に係る光源駆動装置20と同様の構成を有する。ただし、複数の容量素子22は互いに異なる発光素子10に放電電流を供給する。光源駆動装置20は、複数の発光素子10を駆動する。光源駆動装置20は、複数の容量素子22、電源21、および放電制御部23を備える。複数の容量素子22はそれぞれ、放電時に複数の発光素子10のいずれかに電力を供給する。たとえば、第1の容量素子22aは第1の発光素子10aに電力を供給し、第2の容量素子22bは第2の発光素子10bに電力を供給する。ここで、第2の容量素子22b、は第1の容量素子22aとは異なる容量素子22であり、第2の発光素子10bは、第1の発光素子10aとは異なる発光素子10である。ただし、第1の容量素子22aの特性と第2の容量素子22bの特性は同じであっても良いし、互いに異なっていても良い。第1の発光素子10aの特性と、第2の発光素子10bの特性は同じであっても良いし、互いに異なっていてもよい。また、電源21は複数の容量素子22を充電する。放電制御部23は、複数の容量素子22が放電するタイミングを制御する。なお、光源駆動装置20は物理的に一体化された装置であってもよいし、複数のユニットからなっていても良い。
【0022】
図4は、第2の実施形態の距離測定装置1の変形例を示す図である。本変形例に係る光源駆動装置20は、複数の電源21を備える点を除いて第2の実施形態の光源駆動装置20と同じである。本実施形態に係る光源駆動装置20は、複数の容量素子22、複数の電源21、および放電制御部23を備える。複数の容量素子22はそれぞれ、放電時に複数の発光素子10のいずれかに電力を供給する。たとえば、第1の容量素子22aは第1の発光素子10aに電力を供給し、第2の容量素子22bは第2の発光素子10bに電力を供給する。また、複数の電源21はそれぞれ、複数の容量素子22のいずれかを充電する。たとえば、第1の電源21aは第1の容量素子22aを充電し、第2の電源21bは第2の容量素子22bを充電する。ここで、第2の電源21bは第1の電源21aとは別の電源21である。ただし、第1の電源21aの特性と第2の電源21bの特性は同じであっても良いし、互いに異なっていても良い。放電制御部23は、複数の容量素子22が放電するタイミングを制御する。
【0023】
図3および
図4では距離測定装置1が二個の発光素子10を備え、光源駆動装置20が二個の容量素子22を備える例を示しているが、これに限定されない。距離測定装置1が三個以上の発光素子10を備え、光源駆動装置20が3個以上の容量素子22を備えてもよい。
【0024】
本実施形態の放電制御部23は、複数の容量素子22の放電タイミングを互いに独立に制御する。そうすることにより、たとえば一つの容量素子22を放電後、充電をしている間に他の容量素子22を放電させることができる。すなわち、容量素子22の充電時間にかかわらず、連続して複数の容量素子22を放電させ、複数の発光素子10を順に、短いパルス間隔で発光させることができる。
【0025】
また、本実施形態では、たとえば放電制御部23が複数の容量素子22をそれぞれ単独で、または複数同時に放電させて発光素子10を発光させることにより、発光素子10の発光強度を容易に変化させることができる。
【0026】
以上、本実施形態によれば、距離測定装置1が複数の発光素子10を備え、放電制御部23が、複数の容量素子22が放電するタイミングを個別に制御する。したがって、光源から出力されるパルスの間隔や強度の制御の自由度を高めることができる。
【0027】
(実施例1)
図5は、実施例1に係る光源駆動装置20および発光素子10の回路構成を例示する図である。本実施例に係る光源駆動装置20は、第1の実施形態で説明した構成を有している。本実施例に係る光源駆動装置20は、本図に示すような回路および後述する集積回路100を用いて実現される。
【0028】
光源駆動装置20は、n個(nは自然数)の容量素子22(容量素子C
chg1〜C
chgn)と、FETからなるスイッチM
1〜M
nと、抵抗R
lim1〜R
limnと、抵抗R
chg1〜R
chgnと、ダイオードD
clpと、抵抗R
mと、容量素子C
pと、電源21とを備える。容量素子C
chg1〜C
chgnが複数の容量素子22に相当し、レーザダイオードLDが発光素子10に相当し、電圧V
hが電源21の出力電圧に相当する。また、放電制御部23は、スイッチM
1〜M
nおよび集積回路100等により実現される。本図では、光源駆動装置20が五つの容量素子22を備える例(n=5の例)を示しているが、これに限定されない。
【0029】
光源駆動装置20では、電源21から出力される高電圧V
hが容量素子C
chg1〜C
chgnに印加され、容量素子C
chg1〜C
chgnが充電される。そして、容量素子C
chg1〜C
chgnに充電された電荷を、それぞれスイッチM
1〜M
nを通じて瞬間的に放電して、レーザダイオードLDに流すことにより、パルスレーザ光を出力する。一例として、容量素子C
chg1〜C
chgnはそれぞれ数十から百数十ボルトまで充電され、その後に数十アンペアで放電される。
【0030】
以下、容量素子C
chgk(kは1以上n以下の整数)を例に容量素子22の放充電について、詳細に説明する。なお、以下において、各素子の第1の端子と第2の端子とは互いに異なる端子である。容量素子C
chgkの第1の端子には抵抗R
limkの第1の端子が接続され、容量素子C
chgkの第2の端子には抵抗R
chgkを介して電源21が接続されている。さらに容量素子C
chgkの第2の端子と接地端子との間には、スイッチM
kが接続されている。スイッチM
kのゲートには後述する制御部230の出力端子が接続されている。また、抵抗R
limkの第2の端子には、ダイオードD
clpのアノードが接続されている。ダイオードD
clpのカソードは接地端子に接続されている。
【0031】
抵抗R
limkの第2の端子には、レーザダイオードLDのカソードが接続されている。そして、レーザダイオードLDのアノードは、接地端子に接続されている。また、抵抗R
mと容量素子C
pとを直列接続したものに対し、レーザダイオードLDが並列接続されている。
【0032】
ここで、放電制御部23は、制御部230およびスイッチM
1〜M
nを含んで構成される。
【0033】
充電時においては、電源21により容量素子C
chgkに高電圧V
hを印加すると共に、トリガ信号V
TkによりスイッチM
kをオフ状態とする。これにより、本図中破線の充電経路201で容量素子C
chgkは高電圧V
hにより充電される。そして、放電時においては、トリガ信号V
Tkにより、スイッチM
kをオン状態とする。これにより、容量素子C
chgkに蓄えられた電荷が、本図中破線の放電経路202で瞬間的に放電され、レーザダイオードLDが発光する。ここで、電源21としてはたとえばチャージポンプ等の高圧生成回路を用いることができる。容量素子C
chg1〜C
chgnのそれぞれについてトリガ信号V
Tkを設けることにより、独立に充放電を制御することができる。
【0034】
図6は、集積回路100のハードウエア構成を示す図である。制御部230は集積回路100を用いて実現される。集積回路100は、トリガ信号V
T1〜V
Tnを出力する。出力されたトリガ信号V
T1〜V
Tnは、それぞれスイッチM
1〜M
nに入力される。集積回路100は、例えばSoC(System On Chip)である。
【0035】
集積回路100は、バス102、プロセッサ104、メモリ106、ストレージデバイス108、入出力インタフェース110、及びネットワークインタフェース112を有する。バス102は、プロセッサ104、メモリ106、ストレージデバイス108、入出力インタフェース110、及びネットワークインタフェース112が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ104などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ104は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ106は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現されるメモリである。ストレージデバイス108は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどを用いて実現されるストレージデバイスである。
【0036】
入出力インタフェース110は、集積回路100を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。入出力インタフェース110から出力されたトリガ信号V
T1〜V
Tnは、それぞれスイッチM
1〜M
nに入力される。
【0037】
ネットワークインタフェース112は、集積回路100を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えばCAN(Controller Area Network)通信網である。なお、ネットワークインタフェース112が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0038】
ストレージデバイス108は、制御部230の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ104は、このプログラムモジュールをメモリ106に読み出して実行することで、制御部230の機能を実現する。
【0039】
集積回路100のハードウエア構成は
図6に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ106に格納されてもよい。この場合、集積回路100は、ストレージデバイス108を備えていなくてもよい。
【0040】
図7は実施例1に係るトリガ信号V
T1〜V
Tnのタイミングチャートの一例である。本例によれば、発光素子10は、同じ間隔で繰り返し発光する。タイミングチャートを示す情報は、たとえば予め集積回路100のストレージデバイス108等に記憶させておき、放電制御部23(制御部230)がそれを読み出して実行することで出力できる。トリガ信号V
Tkは容量素子C
chgkを放電させるためのトリガ信号である。トリガ信号V
Tkがロー(Low)レベルである間、スイッチM
kがオフとなり、容量素子C
chgkは充電される。トリガ信号V
Tkがローレベルからハイ(High)レベルに変化したタイミングでスイッチM
kがオンとなり、容量素子C
chgkが放電される。
【0041】
本図は、容量素子C
chg1〜C
chgnを順に放電させる場合のタイミングチャートである。本図の例において放電制御部23は、第1のタイミング(たとえばタイミングt
1)で第1の容量素子22(たとえば容量素子C
chg1)を放電させ、第1のタイミングとは異なる第2のタイミング(たとえばタイミングt
2)で、第1の容量素子22とは異なる第2の容量素子22(たとえば容量素子C
chg2)を放電させる。こうすることにより、第1の容量素子22が放電後に再び十分充電されるのを待つことなく、別の容量素子22を放電させることができる。ひいては、発光素子10のパルス発光の間隔を短くすることができる。第1のタイミングと第2のタイミングの間隔は特に限定されないが、容量素子22に充電が完了するより短い間隔で発光素子10をパルス発光させることができる。たとえば第1のタイミングと第2のタイミングの間隔は、第1の容量素子22を充電し始めてから充電が完了するまでにかかる時間、および第2の容量素子22を充電し始めてから充電が完了するまでにかかる時間の少なくとも一方よりも短い。なお、容量素子C
chgkを充電し始めてから充電が完了するまでにかかる時間は、容量素子C
chgkの容量および抵抗R
limkおよび抵抗R
chgkの抵抗値等に依存する。
【0042】
本図の例において具体的には、トリガ信号V
T1が立ち上がったタイミング、すなわちローレベルからハイレベルに変化したタイミング(t
1)から(k−1)×t
d秒後にトリガ信号V
Tkが立ち上がる。すなわち、トリガ信号V
Tkが立ち上がるタイミングt
kは、t
1を基準として(t
1=0)、t
k=(k−1)×t
d(k≧2)で表される。各トリガ信号V
Tkは、立ち上がってから時間t
pwが経過したタイミングでローレベルに戻る。そして、トリガ信号V
T1は一度立ち上がってからn×t
d秒後(nは自然数)に再度立ち上がる。こうして、トリガ信号V
T1〜V
Tnは順に繰り返して立ち上がり、容量素子C
chg1〜C
chgnを順に放電させる。そうすることにより、発光素子10は、いずれかの容量素子22が放電される度にt
d秒間隔でパルス発光する。本図の例において、第1のタイミングと第2のタイミングの間隔はt
dで表される。また、一つの容量素子22が放電されてから、次に放電されるまでの間にトリガ信号V
Tkがローレベルになっている時間は十分長くすることができる。したがって、一つの容量素子22が放電されてから、次に放電されるまでの間に、各容量素子22はフル充電されることができる。本図の例において容量素子22の充電に用いることができる時間はn×t
dで表される。
【0043】
ただし、トリガ信号のタイミングチャートは上記の例に限らず、たとえば、複数の容量素子22が放電される間隔は一定でなくてもよい。
【0044】
なお、本実施例において、容量素子C
chg1〜C
chgnの容量(キャパシタンス)は互いに同じであっても良いし、少なくとも一つが異なっていても良い。抵抗R
lim1〜R
limnの抵抗値は互いに同じであっても良いし、少なくとも一つが異なっていても良い。また、抵抗R
chg1〜R
chgnの抵抗値は互いに同じであっても良いし、少なくとも一つが異なっていても良い。
【0045】
また、容量素子C
chg1〜C
chgnに対してそれぞれ独立に電源21が設けられ、容量素子C
chg1〜C
chgnが互いに異なる電源21により充電されても良い。
【0046】
以上、本実施例においても第1の実施形態と同様に、光源駆動装置20が複数の容量素子22を備え、放電制御部23が、複数の容量素子22が放電するタイミングを個別に制御する。したがって、光源から出力されるパルスの制御の自由度を高めることができる。
【0047】
くわえて、本実施例の放電制御部23は、第1のタイミングで第1の容量素子22を放電させ、第1のタイミングとは異なる第2のタイミングで、第1の容量素子22とは異なる第2の容量素子22を放電させる。したがって、発光素子10のパルス発光の間隔を短くすることができる。
【0048】
(実施例2)
図8は、実施例2に係る光源駆動装置20および発光素子10の回路構成を例示する図である。本実施例に係る光源駆動装置20は、第2の実施形態で説明した構成を有している。すなわち、光源駆動装置20は複数の発光素子10を駆動する。本実施例に係る光源駆動装置20は、本図に示すような回路および実施例1で説明したような集積回路100を用いて実現される。
【0049】
光源駆動装置20は、n個(nは整数)の容量素子22(容量素子C
chg1〜C
chgn)と、FETからなるスイッチM
1〜M
nと、抵抗R
lim1〜R
limnと、抵抗R
chg1〜R
chgnと、ダイオードD
clp1〜D
clpnと、抵抗R
m1〜R
mnと、容量素子C
p1〜C
pnと、電源21とを備える。容量素子C
chg1〜C
chgnが複数の容量素子22に相当し、レーザダイオードLD
1〜LD
nが複数の発光素子10に相当し、電圧V
hが電源21の出力電圧にそれぞれ相当する。また、放電制御部23は、スイッチM
1〜M
nおよび集積回路100等により実現される。本図では、光源駆動装置20が二つの容量素子22を備える例(n=2の例)を示しているが、これに限定されない。
【0050】
光源駆動装置20では、電源21から出力される高電圧V
hが容量素子C
chg1〜C
chgnに印加され、容量素子C
chg1〜C
chgnが充電される。そして、容量素子C
chg1〜C
chgnに充電された電荷を、それぞれスイッチM
1〜M
nを通じて瞬間的に放電して、レーザダイオードLD
1〜LD
nに流すことにより、パルスレーザ光を出力する。一例として、容量素子C
chg1〜C
chgnはそれぞれ数十から百数十ボルトまで充電され、その後に数十アンペアで放電される。
【0051】
以下、容量素子C
chgk(kは1以上n以下の整数)を例に容量素子22の放充電について、詳細に説明する。容量素子C
chgkの第1の端子には抵抗R
limkの第1の端子が接続され、容量素子C
chgkの第2の端子には抵抗R
chgkを介して電源21が接続されている。さらに容量素子C
chgkの第2の端子と接地端子との間には、スイッチM
kが接続されている。スイッチM
kのゲートには制御部230の出力端子が接続されている。また、抵抗R
limkの第2の端子には、ダイオードD
clpkのアノードが接続されている。ダイオードD
clpkのカソードは接地端子に接続されている。
【0052】
抵抗R
limkの第2の端子には、レーザダイオードLD
kのカソードが接続されている。そして、レーザダイオードLD
kのアノードは、接地端子に接続されている。また、抵抗R
mkと容量素子C
pkとを直列接続したものに対し、レーザダイオードLD
kが並列接続されている。
【0053】
充電時においては、電源21により容量素子C
chgkに高電圧V
hを印加すると共に、トリガ信号V
TkによりスイッチM
kをオフ状態とする。これにより、容量素子C
chgkは高電圧V
hにより充電される。そして、放電時においては、トリガ信号V
Tkにより、スイッチM
kをオン状態とする。これにより、容量素子C
chgkに蓄えられた電荷が瞬間的に放電され、レーザダイオードLD
kが発光する。ここで、電源21としてはたとえばチャージポンプ等の高圧生成回路を用いることができる。容量素子C
chg1〜C
chgnのそれぞれについてトリガ信号V
Tkを設けることにより、独立に充放電を制御することができる。
【0054】
本実施例に係るトリガ信号V
T1〜V
Tnのタイミングチャートの一例は、
図7と同様に示すことができる。
【0055】
なお、本実施例において、容量素子C
chg1〜C
chgnの容量(キャパシタンス)は互いに同じであっても良いし、少なくとも一つが異なっていても良い。抵抗R
lim1〜R
limnの抵抗値は互いに同じであっても良いし、少なくとも一つが異なっていても良い。抵抗R
chg1〜R
chgnの抵抗値は互いに同じであっても良いし、少なくとも一つが異なっていても良い。また、レーザダイオードLD
1〜LD
nの特性、抵抗R
m1〜R
mnの特性、容量素子C
p1〜C
pnの特性についても、互いに同じであっても良いし、少なくとも一つが異なっていても良い。
【0056】
以上、本実施例においても、第2の実施形態と同様に、距離測定装置1が複数の発光素子10を備え、放電制御部23が、複数の容量素子22が放電するタイミングを個別に制御する。したがって、光源から出力されるパルスの制御の自由度を高めることができる。
【0057】
加えて、本実施例の放電制御部23は、第1のタイミングで第1の容量素子22を放電させて第1の発光素子10を発光させ、第1のタイミングとは異なる第2のタイミングで、第1の容量素子22とは異なる第2の容量素子22を放電させて第2の発光素子10を発光させることができる。したがって、距離測定装置1全体として、出力されるパルス発光の間隔を短くすることができる。
【0058】
(実施例3)
図9は、実施例3に係る光源駆動装置20および発光素子10の回路構成を例示する図である。本実施例に係る光源駆動装置20は、以下に説明する点を除いて実施例2の光源駆動装置20と同じである。本実施例に係る光源駆動装置20は、第2の実施形態の変形例で説明した構成を有している。すなわち、一つの発光素子とその電源回路との組み合わせが複数構成されている。本実施例に係る光源駆動装置20は、本図に示すような回路および実施例1で説明したような集積回路100を用いて実現される。
【0059】
光源駆動装置20は、n個(nは自然数)の容量素子22(容量素子C
chg1〜C
chgn)と、FETからなるスイッチM
1〜M
nと、抵抗R
lim1〜R
limnと、抵抗R
chg1〜R
chgnと、ダイオードD
clp1〜D
clpnと、抵抗R
m1〜R
mnと、容量素子C
p1〜C
pnと、複数の電源21とを備える。容量素子C
chg1〜C
chgnが複数の容量素子22に相当し、レーザダイオードLD
1〜LD
nが複数の発光素子10に相当し、電圧V
h1〜V
hnが複数の電源21の出力電圧にそれぞれ相当する。また、放電制御部23は、スイッチM
1〜M
nおよび集積回路100等により実現される。本図では、光源駆動装置20が二つの容量素子22を備える例(n=2の例)を示しているが、これに限定されない。
【0060】
光源駆動装置20では、電源21から出力される高電圧V
h1〜V
hnが容量素子C
chg1〜C
chgnに印加され、容量素子C
chg1〜C
chgnが充電される。そして、容量素子C
chg1〜C
chgnに充電された電荷を、それぞれスイッチM
1〜M
nを通じて瞬間的に放電して、レーザダイオードLD
1〜LD
nに流すことにより、パルスレーザ光を出力する。一例として、容量素子C
chg1〜C
chgnはそれぞれ数十から百数十ボルトまで充電され、その後に数十アンペアで放電される。
【0061】
以下、容量素子C
chgk(kは1以上n以下の整数)を例に容量素子22の放充電について、詳細に説明する。容量素子C
chgkの第1の端子には抵抗R
limkの第1の端子が接続され、容量素子C
chgkの第2の端子には抵抗R
chgkを介して電源21が接続されている。さらに容量素子C
chgkの第2の端子と接地端子との間には、スイッチM
kが接続されている。スイッチM
kのゲートには制御部230の出力端子が接続されている。また、抵抗R
limkの第2の端子には、ダイオードD
clpkのアノードが接続されている。ダイオードD
clpkのカソードは接地端子に接続されている。
【0062】
抵抗R
limkの第2の端子には、レーザダイオードLD
kのカソードが接続されている。そして、レーザダイオードLD
kのアノードは接地端子に接続されている。また、抵抗R
mkと容量素子C
pkとを直列接続したものに対し、レーザダイオードLD
kが並列接続されている。
【0063】
充電時においては、電源21により容量素子C
chgkに高電圧V
hkを印加すると共に、トリガ信号V
TkによりスイッチM
kをオフ状態とする。これにより、容量素子C
chgkは高電圧V
hkにより充電される。そして、放電時においては、トリガ信号V
Tkにより、スイッチM
kをオン状態とする。これにより、容量素子C
chgkに蓄えられた電荷が瞬間的に放電され、レーザダイオードLD
kが発光する。ここで、電源21としてはたとえばチャージポンプ等の高圧生成回路を用いることができる。容量素子C
chg1〜C
chgnのそれぞれについてトリガ信号V
Tkを設けることにより、独立に充放電を制御することができる。
【0064】
本実施例に係るトリガ信号V
T1〜V
Tnのタイミングチャートの一例は、
図7と同様に示すことができる。
【0065】
なお、本実施例において、高電圧V
h1〜V
hnの電圧値は互いに同じであっても良いし、少なくとも一つが異なっていても良い。
【0066】
以上、本実施例においても、第2の実施形態と同様に、距離測定装置1が複数の発光素子10を備え、放電制御部23が、複数の容量素子22が放電するタイミングを個別に制御する。したがって、光源から出力されるパルスの制御の自由度を高めることができる。
【0067】
加えて、本実施例の放電制御部23は、第1のタイミングで第1の容量素子22を放電させて第1の発光素子10を発光させ、第1のタイミングとは異なる第2のタイミングで、第1の容量素子22とは異なる第2の容量素子22を放電させて第2の発光素子10を発光させることができる。したがって、距離測定装置1全体として、出力されるパルス発光の間隔を短くすることができる。
【0068】
(実施例4)
本実施例に係る光源駆動装置20は、実施例1〜3の少なくともいずれかに係る光源駆動装置20と同様の構成を有している。以下では、光源駆動装置20が、実施例1で説明した構成を有する場合について説明する。
【0069】
本実施例の放電制御部23は、第3のタイミングt
S、および、第3のタイミングt
Sとは異なる第4のタイミングt
Lのそれぞれで、複数の容量素子22のうち少なくともいずれかを放電させる。そして、第4のタイミングt
Lにおいて、第3のタイミングt
Sよりも大きな電力を発光素子10に供給する。以下に詳しく説明する。
【0070】
第4のタイミングt
Lにおいて、第3のタイミングt
Sよりも大きな電力を発光素子10に供給する本実施例の構成には、たとえば以下の第1例〜第3例がある。第4のタイミングt
Lにおいて、第3のタイミングt
Sよりも大きな電力が発光素子10に供給されることにより、第3のタイミングt
Sよりも第4のタイミングt
Lにおいてより大きな強度のパルス光が出力される。
【0071】
図10は、実施例4の第1例に係るトリガ信号V
T1〜V
T4のタイミングチャートの一例である。第1例において、複数の容量素子22は、第3の容量素子22と、第3の容量素子22の容量よりも大きな容量を有する第4の容量素子22とを含む。そして、放電制御部23は、第3のタイミングt
Sで第3の容量素子を放電させ、第4のタイミングt
Lで第4の容量素子22を放電させる。本図の例において、たとえば、光源駆動装置20は少なくとも四つの容量素子22(容量素子C
chg1〜C
chg4)を備える。たとえば、容量素子C
chg1の容量とC
chg2の容量は互いに同じであり、容量素子C
chg3の容量とC
chg4の容量は互いに同じである。ここで、容量素子C
chg1および容量素子C
chg2を第3の容量素子22とし、容量素子C
chg3および容量素子C
chg4を第4の容量素子22とする。すなわち、容量素子C
chg3の容量は容量素子C
chg1の容量よりも大きい。
【0072】
そして、第3のタイミングt
Sでトリガ信号V
T1またはV
T2が立ち上がることにより容量素子C
chg1またはC
chg2が放電される。また、第4のタイミングt
Lでトリガ信号V
T3またはV
T4が立ち上がることにより容量素子C
chg3またはC
chg4が放電される。このように第4のタイミングt
Lでより大きな容量の容量素子22が放電されることにより、第4のタイミングt
Lにおいて、第3のタイミングt
Sよりも大きな電流が発光素子10に流れ、大きな電力が発光素子10に供給される。
【0073】
また、第3のタイミングが連続する場合において、容量素子C
chg1とC
chg2とを交互に放電させ、第4のタイミングが連続する場合において、容量素子C
chg3とC
chg4とを交互に放電させることにより、短いパルス間隔で発光素子10を発光させることができる。なお、光源駆動装置20は三個以上の第3の容量素子22および三個以上の第4の容量素子22を備えていても良い。すなわち、第3のタイミングが連続する場合、および第4のタイミングが連続する場合において、光源駆動装置20は三個以上の容量素子22を順に放電させても良い。
【0074】
図11は、実施例4の第2例に係るトリガ信号V
T1〜V
T4のタイミングチャートの一例である。本例において放電制御部23は、第4のタイミングt
Lにおいて、第3のタイミングt
Sよりも多くの容量素子22を放電させる。本図の例において、たとえば、光源駆動装置20は少なくとも四つの容量素子22(容量素子C
chg1〜C
chg4)を備える。たとえば、少なくとも容量素子C
chg1の容量とC
chg2の容量は互いに同じであり、容量素子C
chg3の容量とC
chg4の容量は互いに同じである。そして、第3のタイミングt
Sではトリガ信号V
T1またはV
T2のみが立ち上がることにより容量素子C
chg1またはC
chg2のみが放電される。また、第4のタイミングt
Lでトリガ信号V
T1とV
T3とが同時に立ち上がることにより容量素子C
chg1とC
chg3とが同時に放電される。または、第4のタイミングt
Lでトリガ信号V
T2とV
T4とが同時に立ち上がることにより、容量素子C
chg2とC
chg4とが同時に放電される。このように、第4のタイミングt
Lで第3のタイミングt
Sよりも多くの容量の容量素子22が放電されることにより、第4のタイミングt
Lにおいて、第3のタイミングt
Sよりも大きな電流が発光素子10に流れ、大きな電力が発光素子10に供給される。
【0075】
また、本例においても、第3のタイミングが連続する場合、および第4のタイミングが連続する場合において、複数の容量素子22を交互に放電させることにより、短いパルス間隔で発光素子10を発光させることができる。なお、第3のタイミングが連続する場合、および第4のタイミングが連続する場合において、光源駆動装置20は三個以上の容量素子22を順に放電させても良い。また、同時に放電させる容量素子22の数は特に限定されない。
【0076】
なお、第2例において、同時に放電されうる複数の容量素子22、すなわち容量素子C
chg1の容量とC
chg3の容量は互いに同じであっても良いし、少なくとも一つが異なっていても良い。複数の容量素子22の容量が互いに異なる場合、たとえば二種の容量の組み合わせにより発光素子10の発光強度を3段階に変化させることができる。具体的には、本図の例において、容量素子C
chg3の容量およびC
chg4の容量が、容量素子C
chg1の容量および容量素子C
chg2の容量よりも大きい場合、弱い強度のパルス光を出力したいタイミングでは容量素子C
chg1またはC
chg2のみを放電させ、中程度の強度のパルス光を出力したいタイミングでは容量素子C
chg3またはC
chg4のみを放電させ、強い強度のパルス光を出力したいタイミングでは容量素子C
chg1とC
chg3、または、容量素子C
chg2とC
chg4を組み合わせて同時に放電させればよい。
【0077】
図12は、実施例4の第3例に係る光源駆動装置20および発光素子10の回路構成を例示する図である。第3例に係る回路構成は、複数の電源21を備える点を除いて実施例1の回路構成と同様である。第3例に係るトリガ信号V
T1およびV
T2のタイミングチャートの一例は、
図10と同様に表すことができる。第3例において、複数の容量素子22は、第3の容量素子22と、第3の容量素子22を充電する電圧よりも大きな電圧で充電される第4の容量素子22とを含む。そして、放電制御部23は、第3のタイミングt
Sで第3の容量素子22を放電させ、第4のタイミングt
Lで第4の容量素子22を放電させる。
【0078】
図12において、光源駆動装置20は複数の電源21を備える。そして、複数の電源21の出力電圧は高電圧V
h1〜V
hnで表される。容量素子C
chgkの第1の端子には抵抗R
limkが接続され、容量素子C
chgkの第2の端子には抵抗R
chgkを介して電源21が接続され、高電圧V
hkが印加されている。
【0079】
本例において、光源駆動装置20は少なくとも四つの容量素子22(容量素子C
chg1〜C
chg4)および四つの電源21を備えている。たとえば、高電圧V
h1と高電圧V
h2は互いに同じであり、高電圧V
h3と高電圧V
h4は互いに同じである。ここで、たとえば高電圧V
h3は高電圧V
h1より大きくなっている。そうすることにより、容量素子C
chg3および容量素子C
chg4は容量素子C
chg1および容量素子C
chg2よりも大きな電圧で充電され、より多くの電荷が蓄積される。そして、第3のタイミングt
Sでトリガ信号V
T1またはV
T2が立ち上がることにより容量素子C
chg1または容量素子C
chg2が放電される。また、第4のタイミングt
Lでトリガ信号V
T3またはV
T4が立ち上がることにより容量素子C
chg3または容量素子C
chg4が放電される。このように第4のタイミングt
Lで、第3のタイミングt
Sよりも大きな電荷が蓄積された容量素子22が放電されることにより、第4のタイミングt
Lにおいて、第3のタイミングt
Sよりも大きな電流が発光素子10に流れ、大きな電力が発光素子10に供給される。
【0080】
また、本例においても、第3のタイミングt
Sが連続する場合、および第4のタイミングt
Lが連続する場合において、複数の容量素子22を交互に放電させることにより、短いパルス間隔で発光素子10を発光させることができる。なお、第3のタイミングが連続する場合、および第4のタイミングが連続する場合において、光源駆動装置20は三個以上の容量素子22を順に放電させても良い。
【0081】
放電制御部23は、大きな強度のパルス光を出力したいタイミングを第4のタイミングt
Lとし、それ以外のタイミングを第3のタイミングt
Sとするよう、第1例から第3例で説明したようなトリガ信号を出力する。具体的にはたとえば、光源駆動装置20が距離測定装置1に含まれる場合、放電制御部23は初期状態として第3のタイミングt
Sを予め定められた間隔で繰り返し設ける。そして、ユーザが距離測定の精度を上げる旨の操作を距離測定装置1に行ってから予め定められた時間が経過するまでの間、第4のタイミングt
Lを予め定められた間隔で繰り返し設ける。このようにすることでユーザが希望する場合に発光素子10の出力強度を上げ、測定精度を向上させることができる。
【0082】
なお、本実施例において、各容量素子22の放電の間隔は、たとえば各容量素子22がフル充電できる時間以上とすることができる。
【0083】
また、上記の第1例から第3例では、第3のタイミングt
Sが連続する場合、および第4のタイミングt
Lが連続する場合において、複数の容量素子22を交互に放電させる例を示したが、これに限定されない。第3のタイミングt
Sが連続する場合、および第4のタイミングt
Lが連続する場合において、同じ容量素子22が続けて放電されても良い。この場合でも、上記したのと同様に発光強度を制御することができる。
【0084】
また、第1例から第3例と同様の方法を実施例2の光源駆動装置20および発光素子10に適用しても良い。
【0085】
以上、本実施例においても、光源駆動装置20が複数の容量素子22を備え、放電制御部23が、複数の容量素子22が放電するタイミングを個別に制御する。したがって、光源から出力されるパルスの制御の自由度を高めることができる。
【0086】
加えて、本実施例によれば、第4のタイミングt
Lにおいて、第3のタイミングt
Sよりも大きな電力を発光素子10に供給する。したがって、光源から出力されるパルス光の強度を制御することができる。
【0087】
(実施例5)
図13は、実施例5に係る距離測定装置1の機能構成を例示するブロック図である。本実施例に係る距離測定装置1は、発光素子10、光源駆動装置20、可動反射部30、制御部70、処理部80、および受光部50を備える。距離測定装置1はたとえばLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)装置である。
【0088】
本実施例に係る光源駆動装置20は、第1の実施形態、第2の実施形態、実施例1〜4のうち少なくともいずれかの光源駆動装置20と同様の構成を有する。また、上記した通り、発光素子10はたとえば半導体レーザである。発光素子10から出力される光の波長は特に限定されないが、たとえば700nm以上1050nm以下の近赤外光である。可動反射部30は、たとえばMEMSミラーおよび駆動回路を含んで構成される。MEMSミラーは反射面の角度は制御部70により制御される。そして、可動反射部30はその反射面で発光素子10から発せられた光を反射することで所望の方向に向けて光を出力する。可動反射部30はたとえば2軸駆動のMEMSミラーを含むことにより、光で対象物体を二次元に走査することができる。ただし、距離測定装置1において、光の出力方向が可変であれば距離測定装置1の構成は特に限定されない。たとえば、発光素子10が可動ステージに固定され、制御部70が発光素子10の方向を制御することにより、光の出力方向を制御しても良い。
【0089】
なお、光源駆動装置20が第2の実施形態、実施例2および実施例3の少なくともいずれかに説明した構成を有する場合には、距離測定装置1は複数の発光素子10を備えている。その場合、たとえば図示しない光学系を用いることにより、複数の発光素子10からの光は同軸上に出力されるよう構成される。
【0090】
制御部70および処理部80のハードウエア構成は
図6と同様に例示することができる。制御部70および処理部80は上記した集積回路100を用いて実装されている。本実施例において、入出力インタフェース110には光源駆動装置20のスイッチM
1〜M
n、可動反射部30の駆動回路、受光部50が接続されている。
【0091】
ストレージデバイス108は、制御部70および処理部80の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ104は、このプログラムモジュールをメモリ106に読み出して実行することで、制御部70および処理部80の機能を実現する。
【0092】
受光部50は、たとえばフォトダイオードと検出回路とを含んで構成される。受光部50では、フォトダイオードの受光面に入射した光が光電変換され、受光信号が生成される。
【0093】
処理部80は、発光素子10が光を出射してからその光の反射光を受光部50が受光するまでの時間を用いて、その光の出射方向において光を反射した物体までの距離を算出する。具体的には、処理部80には光源駆動装置20の放電制御部23から、光の出力タイミングを示すトリガが入力される。また、処理部80は、受光部50から受光信号を取得する。なお、処理部80は、受光信号に対し、必要に応じてノイズ除去等の処理を施しても良い。処理部80は放電制御部23からのトリガおよび受光部50からの受光信号に基づいて、発光素子10が光を出射してからその光の反射光を受光部50が受光するまでの時間を算出する。さらに処理部80は必要に応じて算出した時間を補正しても良い。処理部80は、発光素子10が光を出射してからその光の反射光を受光部50が受光するまでの時間に、光の速度を乗じ、2分の1倍することで、距離測定装置1から物体までの距離を算出する。また、処理部80は、制御部70から光の出射方向を示す情報を取得することで、物体の方向と距離とを示す情報を生成することができる。
【0094】
たとえば距離測定装置1が移動体に取り付けられている場合、距離測定装置1の周囲をパルス光が繰り返し出力しながら二次元に走査することで、周囲の物体の方向と距離を検出することができる。この場合、距離測定装置1がパルスを出力すべき基本のタイミングは予め定められている。通常は、距離測定装置1は一定の間隔でパルスを出力する。ただし、走査範囲の領域によって、パルスの間隔は異なっていても良い。実施例1に係る放電制御部23はたとえば、このような基本のタイミングのうちいずれかを第1のタイミングとし、他のいずれかを第2のタイミングとして決定する。また、実施例3に係る放電制御部23はたとえば、このような基本のタイミングのうちいずれかを第3のタイミングt
Sとし、他のいずれかを第4のタイミングt
Lとして決定する。
【0095】
本実施例に係る光源駆動装置20が実施例3の構成を有する場合、放電制御部23が第3のタイミングt
Sおよび第4のタイミングt
Lを決めるための処理の例にはたとえば以下の第1の処理例〜第3の処理例がある。
【0096】
図14は、第1の処理例を説明するための図である。また、
図15は、本処理例を行う光源駆動装置20の機能構成を例示する図である。第1の処理例において、距離測定装置1は移動体90に取り付けられている。すなわち、発光素子10および光源駆動装置20は、移動体90に取り付けられている。光源駆動装置20は、移動体90の周囲の地図情報を取得する取得部24をさらに備える。そして放電制御部23は、地図情報に基づいて、第4のタイミングt
Lを決定する。以下に詳しく説明する。
【0097】
移動体90はたとえば車両である。道路上の移動体90の移動を円滑に行わせるよう、移動体90の位置を高い精度で特定したい場合がある。そのための一つの方法として、地図上の目印となるランドマーク92の位置と、実際に距離測定装置1で特定されるランドマーク92の位置とを照合して移動体90の位置の特定精度を高める方法がある。その場合、ランドマーク92が位置すると思われる方向d
2に対して、その他の方向d
1よりも高い強度のパルス光を出力し、移動体90からみたランドマーク92の方向およびランドマーク92と移動体90との距離を測定すると、S/N比が大きくなるため、移動体90の位置の特定精度を高めることができる。ランドマーク92はたとえば道路脇に並んでいるキロポスト、100mポスト、デリニエータ、交通インフラ設備(たとえば標識、方面看板、信号)、電柱、街灯などの地物である。
【0098】
本処理例において、移動体90はたとえばGPSおよび方位計等の内界センサ(不図示)を備える。そして、取得部24は、移動体90のおよその位置(たとえば緯度および経度)及び向きを示す事前情報を内界センサから取得する。また、取得部24は事前情報が示す位置の周囲の地図情報を、通信ネットワークを介して、たとえば地図サービスのサーバから取得する。地図情報はランドマーク92の位置を示す情報を含む。次いで、取得部24は事前情報および地図情報に基づいて、ランドマーク92が位置すると予想される方向および距離を算出する。
【0099】
取得部24は上記したような集積回路100で実現される。ストレージデバイス108は、取得部24の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ104は、このプログラムモジュールをメモリ106に読み出して実行することで、取得部24の機能を実現する。
【0100】
本処理例において距離測定装置1は移動体90の周囲をパルス光で走査している。そして、放電制御部23は、ランドマーク92が位置すると予想される方向に向けてパルス光を出力するタイミングを第4のタイミングt
Lとする。そして、その他のタイミングを第3のタイミングt
Sとする。そうすることにより、移動体90からみたランドマーク92の方向およびランドマーク92と移動体90との距離をより高精度で測定できる。処理部80は、予想されたランドマーク92の方向および距離と、距離測定装置1で測定されたランドマーク92の方向および距離とのズレ量を算出し、そのズレ量を減らすように事前情報を補正して移動体90の位置の特定精度を高める。
【0101】
次に、第2の処理例について説明する。本処理例において、取得部24は天候を示す天候情報を取得する。取得部24はたとえば事前情報が示す位置の周囲の天候を示す情報を、通信ネットワークを介して、たとえば天候情報提供サービスのサーバから取得できる。そして、放電制御部23は、天候情報に基づいて第4のタイミングt
Lを決定する。以下に詳しく説明する。
【0102】
距離測定装置1から出射される光は、物体に反射され、受光されるまでの間にたとえば雨や霧等の粒子に反射、吸収されうる。その場合、受光強度が低下し、正確な距離測定が難しくなる場合がある。そこで、天候が雨、霧、雪等の場合には、高い強度のパルス光を出力し、測定精度を向上させることが好ましい。
【0103】
取得部24はたとえば、取得した天候情報が雨、霧、または雪を示す場合、走査における全ての出射タイミングを第4のタイミングt
Lとする。一方、天候情報が晴れ、または曇りを示す場合、走査における全ての出射タイミングを第3のタイミングt
Sとする。取得部24は予め定められた所定の時間が経過するごとに天候情報を取得し、第3のタイミングt
Sまたは第4のタイミングt
Lを設定する。なお、放電制御部23は、天候情報が示す雨、霧、または雪の程度に基づいて、三段階以上にパルス光の強度を切り替えるようにしても良い。三段階以上に強度を切り替える方法は、たとえば実施例4の第2例において説明した通りである。放電制御部23は、雨、霧、または雪の程度が強いほど、大きな電力を発光素子10に供給するよう一つ以上の容量素子22を放電させればよい。
【0104】
図16は、第3の処理例に係る光源駆動装置20およびその使用環境を示す図である。本処理例において、距離測定装置1は発光素子10の発光強度をモニタするためのモニタ受光部12を備える。モニタ受光部12はたとえばフォトダイオードおよび検出回路を含んで構成される。本処理例の取得部24は、発光素子10から発せられた光の少なくとも一部を受光するモニタ受光部12の検出結果を取得する。そして、放電制御部23は、モニタ受光部12の検出結果に基づいて第4のタイミングt
Lを決定する。以下に詳しく説明する。
【0105】
発光素子10の発光強度は、同じ入力電力であっても素子の劣化やその他の要因により変動しうる。そこで、モニタ受光部12により発光素子10の発光強度をモニタし、モニタされた発光強度に基づいて放電制御部23が第3のタイミングt
Sと第4のタイミングt
Lとを決めることで、所望の発光強度を維持できる。
【0106】
本処理例において、発光素子10からの出力光はたとえばハーフミラー等により分岐され、一部がモニタ受光部12の検出面に入射する。モニタ受光部12では入射した光の強度を示す情報が生成され放電制御部23がそれを取得する。なお、発光素子10の光の分岐とモニタ受光部12の検出は、距離測定装置1の通常の走査の間に常時行われていても良いし、予め定められた時間ごとに行われても良い。
【0107】
たとえば放電制御部23は、モニタ受光部12が受光した光の強度が予め定められた基準より低くなった場合に、第4のタイミングt
Lを設ける。具体的には放電制御部23は、モニタ受光部12の検出結果が予め定められた基準よりも大きい場合にそれ以後の出射タイミングを第3のタイミングt
Sとし、検出結果が予め定められた基準よりも小さい場合にそれ以後の出射タイミングを第4のタイミングt
Lとする。検出結果に対する基準は予めストレージデバイス108等に記憶されており、放電制御部23は、その基準を読み出して用いることができる。
【0108】
なお、本処理例において、取得部24は、モニタ受光部12の代わりに受光部50から光の検出結果を取得しても良い。そうすれば、距離測定装置1が受光する光が弱く、距離の測定が難しい場合に第4のタイミングt
Lが設けられ、充分な受光量を確保することができる。その場合、距離測定装置1はモニタ受光部12を別途備えなくても良い。
【0109】
以上、本実施例においても、光源駆動装置20が複数の容量素子22を備え、放電制御部23が、複数の容量素子22が放電するタイミングを個別に制御する。したがって、光源から出力されるパルスの制御の自由度を高めることができる。
【0110】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 互いに並列であり、かつ、それぞれが放電時に発光素子に電力を供給する複数の容量素子と、
前記複数の容量素子を充電する電源と、
前記複数の容量素子が放電するタイミングを個別に制御する放電制御部と、を備える光源駆動装置。
2. 1.に記載の光源駆動装置において、
前記放電制御部は、第1のタイミングで第1の前記容量素子を放電させ、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングで、前記第1の容量素子とは異なる第2の前記容量素子を放電させる光源駆動装置。
3. 2.に記載の光源駆動装置において、
前記第1のタイミングと前記第2のタイミングの間隔は、前記第1の容量素子を充電し始めてから充電が完了するまでにかかる時間、および前記第2の容量素子を充電し始めてから充電が完了するまでにかかる時間の少なくとも一方よりも短い光源駆動装置。
4. 1.から3.のいずれか一つに記載の光源駆動装置において、
前記放電制御部は、第3のタイミング、および、前記第3のタイミングとは異なる第4のタイミングのそれぞれで、前記複数の容量素子のうち少なくともいずれかを放電させ、
前記第4のタイミングにおいて、前記第3のタイミングよりも大きな前記電力を前記発光素子に供給する光源駆動装置。
5. 4.に記載の光源駆動装置において、
前記複数の容量素子は、第3の前記容量素子と、前記第3の容量素子の容量よりも大きな容量を有する第4の前記容量素子とを含み、
前記放電制御部は、前記第3のタイミングで前記第3の容量素子を放電させ、前記第4のタイミングで前記第4の容量素子を放電させる光源駆動装置。
6. 4.に記載の光源駆動装置において、
前記複数の容量素子は、第3の前記容量素子と、前記第3の容量素子を充電する電圧よりも大きな電圧で充電される第4の前記容量素子とを含み、
前記放電制御部は、前記第3のタイミングで前記第3の容量素子を放電させ、前記第4のタイミングで前記第4の容量素子を放電させる光源駆動装置。
7. 4.に記載の光源駆動装置において、
前記放電制御部は、前記第4のタイミングにおいて、前記第3のタイミングよりも多くの前記容量素子を放電させる光源駆動装置。
8. 4.から7.のいずれか一つに記載の光源駆動装置において、
前記発光素子および当該光源駆動装置は、移動体に取り付けられており、
前記移動体の周囲の地図情報を取得する取得部をさらに備え、
前記放電制御部は、前記地図情報に基づいて、前記第4のタイミングを決定する光源駆動装置。
9. 4.から7.のいずれか一つに記載の光源駆動装置において、
天候を示す天候情報を取得する取得部をさらに備え、
前記放電制御部は、前記天候情報に基づいて前記第4のタイミングを決定する光源駆動装置。
10. 4.から7.のいずれか一つに記載の光源駆動装置において、
前記発光素子から発せられた光の少なくとも一部を受光する受光部の検出結果を取得する取得部をさらに備え、
前記放電制御部は、前記検出結果に基づいて前記第4のタイミングを決定する光源駆動装置。
11. 10.に記載の光源駆動装置において、
前記放電制御部は、前記受光部が受光した光の強度が予め定められた基準より低くなった場合に、前記第4のタイミングを設ける光源駆動装置。
12. 1.から11.のいずれか一つに記載の光源駆動装置と、
前記発光素子と、
前記発光素子が光を出射してから当該光の反射光を受光するまでの時間を用いて、当該光の出射方向において当該光を反射した反射物までの距離を算出する処理部と、を備える距離測定装置。