特許第6980372号(P6980372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980372エキスパンションジョイントカバーの敷設構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980372
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】エキスパンションジョイントカバーの敷設構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   E04B1/68 100A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-183117(P2016-183117)
(22)【出願日】2016年9月20日
(65)【公開番号】特開2018-48453(P2018-48453A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】永谷 有弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和彰
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 諒
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 正則
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−227820(JP,A)
【文献】 実開昭51−108312(JP,U)
【文献】 国際公開第2012/039295(WO,A1)
【文献】 特開2003−055984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震建造物と隣接構造体との間に形成されて地震発生時の揺れを吸収するための移動用間隙を閉塞するように並べて敷設されるエキスパンションジョイントカバーの敷設構造であって、
前記エキスパンションジョイントカバーは、
上方に向かって開放する有底箱状のケース内に充填材が充填、硬化される充填部を有し、前記ケースの側壁部には、一端部に充填部内に突出して鍔部により前記ケースの側壁部との間で充填材を抱き込む抱き込み部を有するとともに、他端部が側壁部から外側に向かって突出する抱き込み部材が貫通状に固定され、
前記エキスパンションジョイントカバーの前記抱き込み部材は、側壁部からの突出部が、隣接する他のエキスパンションジョイントカバーの側壁部に衝接して、該他のエキスパンションジョイントカバーとの間に所定の目地幅を有する目地を形成するエキスパンションジョイントカバーの敷設構造。
【請求項2】
前記抱き込み部材は、ボルトの一端部に座金近似の板状部材を前記鍔部として組み付けて形成され、前記ボルトの頭部をケースの外側に向かって突出させた請求項1記載のエキスパンションジョイントカバーの敷設構造。
【請求項3】
前記抱き込み部材は、一対の側壁部において、長さ方向中心線に対する非線対称位置に配置される請求項1または2記載のエキスパンションジョイントカバーの敷設構造。
【請求項4】
前記充填部内に補強部材が埋設される請求項1、2または3記載のエキスパンションジョイントカバーの敷設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキスパンションジョイントカバーの敷設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
免震建造物と隣接構造体との間に形成されて地震発生時の揺れを吸収するための移動用間隙を覆うエキスパンションジョイントカバーとしては、従来、特許文献1に記載されたものが知られている。この従来例において、免震建物(免震建造物)とその周囲の地盤(隣接構造体)との間には、免震建物の相対的な揺れの動きを吸収するための溝(移動用間隙)が確保されており、免震ジョイントカバー装置(エキスパンションジョイントカバー)は、免震建物に設けられたベースと、地盤の擁壁に設けられた受枠との間に掛け渡され、これにより溝の上部開口が塞がれる。
【0003】
上記免震ジョイントカバー装置は、底板の両側縁及び両端縁にそれぞれ起立壁を一体的に有するカバー本体を備え、このカバー本体の内部には、化粧ブロックがモルタルなどを介して敷き並べられる。また、上記カバー本体の外面には、底板の両側縁に起立壁を一体的に有するスライドカバーがスライド可能に重ね合わされており、免震ジョイントカバー装置は、平常時には、スライドカバーの全長部分がカバー本体と重なる状態でそのカバー本体の両端部がベースと受枠とで支持される。
【0004】
一方、地震が発生し、溝の幅が広がったときには、スライドカバーがカバー本体に対してスライドし、免震ジョイントカバー装置が伸長する。このときカバー本体は一端部をベースに支持され、その他端部は、同様に一端部のみを受枠に支持されたスライドカバーの他端部とともに支え合うような状態になる。以上のカバー本体の底板の上面には、起立壁と平行に並ぶように複数の補強材が取り付けられており、これにより、上述のような状態においても、モルタル等の荷重を支えることができるものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-227820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来例は見栄えが悪くなりやすいという欠点がある。
【0007】
すなわち、免震建造物周りの地面を構成するエキスパンションジョイントカバーには、例えば大型車両などの大きな荷重が移動用間隙の直上位置において作用する場合もあり得る。この点、上述した従来例のように、例えば金属等からなる有底無蓋の箱状体の内部にモルタル等の充填材を充填、固化して構成していると、荷重を受けた際に撓むことにより、箱状体の側壁部がモルタルから剥離してしまい、ひび割れが生じてしまう。
【0008】
また、上述の剥離によれば、全体の強度が低下してしまうおそれもある。
【0009】
本発明は以上の欠点を解消すべくなされたものであって、見栄えを良好に維持することができ、強度の向上も期待し得るエキスパンションジョイントカバーの敷設構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば上記目的は、
免震建造物1と隣接構造体2との間に形成されて地震発生時の揺れを吸収するための移動用間隙3を閉塞するように並べて敷設されるエキスパンションジョイントカバーの敷設構造であって、
前記エキスパンションジョイントカバーは、
上方に向かって開放する有底箱状のケース4内に充填材5が充填、硬化される充填部6を有し、前記ケース4の側壁部7には、一端部に充填部6内に突出して鍔部8により前記ケース4の側壁部7との間で充填材5を抱き込む抱き込み部9を有するとともに、他端部が側壁部7から外側に向かって突出する抱き込み部材10が貫通状に固定され、
前記エキスパンションジョイントカバーの前記抱き込み部9は、側壁部7からの突出部が、隣接する他のエキスパンションジョイントカバーの側壁部7に衝接して、該他のエキスパンションジョイントカバーとの間に所定の目地幅を有する目地を形成するエキスパンションジョイントカバーの敷設構造を提供することにより達成される。
【0011】
本発明によれば、エキスパンションジョイントカバーは、免震建造物1と隣接構造体2との間に形成されて地震発生時の揺れを吸収するための移動用間隙3を覆うことにより、免震建造物1への安全な出入りを確保する。このエキスパンションジョイントカバーは、上方に向かって開放する有底箱状のケース4内部に充填部6を有し、該充填部6内に充填材5を充填、硬化して形成される。
【0012】
上記充填材5として従来例のように例えばモルタル等を使用することにより、免震建造物1周囲の舗装面(隣接構造体2)との意匠的統一感を良好に確保することができる。なお、従来例のように表面に化粧ブロックを配置する場合には、充填材5としてモルタルやコンクリートなどの他、高強度の発泡樹脂を用いても意匠的統一感を良好に確保することが可能である。
【0013】
また、このように充填材5が充填される充填部6内には、ケース4の側壁部7から抱き込み部9が突出しており、この抱き込み部9に形成される鍔部8と側壁部7との間で充填材5を抱き込むようにして側壁部7が充填材5と一体化される。
【0014】
したがって本発明によれば、移動用間隙3の直上位置において大きな荷重が作用して撓んでしまうようなときにも、抱き込み部9が設けられていることにより、側壁部7と充填材5との剥離を防ぐことができ、見栄えを低下させるようなひび割れの発生を防止することができる。すなわち、充填材5の接着力のみに頼るのではなく、側壁部7に抱き込まれた充填材5の圧縮強度をも利用することにより、剥離に対する高い耐性を発揮することができる。また、上述のように側壁部7と充填材5とが一体化することにより、エキスパンションジョイントカバーの強度の向上も期待できる。
【0015】
上記抱き込み部9は、例えば、一端を側壁部7に固定されたL字形状の板材により構成することが可能であるが、側壁部7に貫通状に固定され、一端部に上記抱き込み部9が形成されるとともに、他端を隣接する他のエキスパンションジョイントカバーの側壁部7に衝接させて所定の目地幅を確保する抱き込み部材10を用いて構成した場合には、上述した側壁部7の剥離防止に加え、エキスパンションジョイントカバー同士の目地幅の管理をも容易にすることができる。また、上記抱き込み部材10は、ボルト11の一端部に座金近似の板状部材12を組み付けて構成することが可能であり、この場合には、汎用の部品を利用して極めて簡易に得ることができる。
【0016】
また、上述の目地幅は、ある程度細くすることにより引き締まった印象を与えることができる。このため、上記抱き込み部材10を一対の側壁部7、7において、長さ方向中心線Cに対する非線対称位置に配置すれば、隣接するエキスパンションジョイントカバーの抱き込み部材10、10同士を突き合わせてしまうことによる目地幅の拡大を防止できる。
【0017】
さらに、上述した強度は、充填部6内に補強部材13を埋設することによっても、簡単に高めることができる。この場合、上述した抱き込み部9は、補強部材13と干渉しない長さにすれば足りる。この補強部材13には、例えば図3(a)に示すような格子状の金属部材、いわゆるグレーチングを用いることが可能である。なお、上述した抱き込み部材10を補強部材13に連結させた場合には、ケース4、充填材5、および補強部材13が一体化し、さらに強度を向上させることも可能である。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、見栄えを良好に維持することができ、強度の向上も期待し得るエキスパンションジョイントカバーを提供することができ、地震対策設備の充実を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】免震建造物の基礎周りの構造を説明する図で、(a)は要部縦断面図、(b)は(a)の要部拡大図、(c)は要部拡大平面図である。
図2図1(b)の要部拡大図で、(a)は連結装置周辺を示す図、(b)は移動可能端を示す図、(c)は移動可能端が斜面に乗り上げた状態を示す図である。
図3】エキスパンションジョイントカバーを示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)は(a)の3D部分拡大図、(e)は(b)の3E部分拡大図、(f)は(c)の3F部分拡大図である。
図4】エキスパンションジョイントカバーの敷設手順を示す図で、(a)は未敷設状態を示す斜視図、(b)はエキスパンションジョイントカバーをクレーンにより所定位置まで吊り下げる工程を示す斜視図である。
図5】耐荷重性能を説明する図で、(a)は大型車両の荷重が作用している状態を示す縦断面図、(b)は平面図、(c)は(b)の5C-5C線断面図である。
図6】抱き込み部がない場合の荷重作用時の挙動を概念的に説明する図で、(a)は平面図、(b)は(a)の6B-6B線断面図、(c)は(b)の6C部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1ないし図5に本発明の実施の形態を示す。図3(a)ないし(c)に示すように、本発明に係るエキスパンションジョイントカバーAは、有底無蓋のケース4内にモルタル(充填材5)を充填して形成される本体部20と、該本体部20の後端縁(以下、本明細書において図3(a)の左側を「前方」、右側を「後方」とする。)に連結されるフラッププレート21とを有する。
【0021】
上記ケース4は、ステンレス等の金属からなり、平面視矩形形状をなし、この実施の形態においては長さ1.5m前後、幅1m前後のサイズに形成される。また、ケース4の先端側の両隅角部には後述する連結装置22との連結部4aが形成される。この連結部4aは、図3(a)ないし(c)、および(f)に示すように、ケース4内の他の領域から矩形状に区画され、ケース4の先端側の壁面には透孔23が形成される。これによりケース4内は、上記連結部4aを除く残余の領域をモルタル5の充填部6とされる。
【0022】
また、上記本体部20は、図3(a)ないし(c)に示すように、上述した充填部6内に収容されるグレーチング(補強部材13)を有する。このグレーチング13は、前後方向(長手方向)に配設されるベアリングバー13aと、幅方向に配設される例えば捩り棒状のツイストバー13bとを格子状に接合して形成される。集中荷重に対する強度、剛性を確保するために、ベアリングバー13aとツイストバー13bには鋼材が使用される。以上のグレーチング13は、上述した充填部6よりもひとまわり小さい寸法に形成され、また、上述のケース4同様、先端側の両隅角部が連結部4aを避けるように矩形状に切り欠かれる。なお、図3(a)において24は、グレーチング13をケース4の底壁部に固定する固定部材である。
【0023】
一方、上記フラッププレート21は縞鋼板からなる。このフラッププレート21は、図3(e)に示すように、ヒンジ部材25によりケース4の後端縁の表面側に垂直回転自在に連結される。また、フラッププレート21の下方にはストッパ21aが設けられ、フラッププレート21が下方に回動する角度を規制する。
【0024】
また、上記ケース4の側壁部7には、モルタル5を抱き込むための抱き込み部材10が装着されて抱き込み部9が形成される。上記抱き込み部材10は、図3(d)に示すように、ボルト11の後端部に座金近似の板状部材12(鍔部8)を組み付けて形成され、側壁部7に貫通状に固定される。具体的には、上記ボルト11を側壁部7の通し穴7aに外側から差し込み、ボルト11の頭部11aを側壁部7の外側に引っ掛けた状態で側壁部7の内側からナット26を締結することにより固定される。なお、図3(d)において26'は、板状部材12を固定するためのナットである。
【0025】
また、上記抱き込み部材10は、側壁部7に固定した状態において、先端が上述のグレーチング13に干渉しない程度の長さにされる。さらに、側壁部7において抱き込み部材10は、図3(b)および(c)に示すように、高さ方向における中央部に配置される。一方、側壁部7の長さ方向には、側壁部7、7毎に位置を異ならせて配置され、言い換えれば、図3(a)に示すように、一対の側壁部7において、ケース4の長さ方向中心線Cに対する非線対称位置に配置される。
【0026】
以上のエキスパンションジョイントカバーAは、内部にグレーチング13を固定し、側壁部7に抱き込み部材10を装着した状態のケース4に対し、その充填部6内にモルタル5を充填し、適宜養生して硬化させることにより製造される。充填材5が硬化した状態において、ケース4、グレーチング13、および充填材5は隙間なく密に一体になっており、また、ケース4の側壁部7は、抱き込み部9を構成する板状部材12によって近傍の一部のモルタル5を抱き込むようにしてモルタル5と強固に一体化される。なお、この実施の形態においては、図1(c)に示すように、モルタル5の表面側に化粧タイル27が敷設されてさらに意匠性が高められる。
【0027】
また、このようにして製造されたエキスパンションジョイントカバーAは、図1(a)ないし(c)に示すように、免震装置上に構築される建造物(免震建造物1)と、それに隣接する舗装面2との間に形成される移動用間隙3を閉塞するように並べて敷設される。上記建造物1は、地盤35を掘り下げて形成されたコンクリート躯体28上に設置されるアイソレータ等の免震装置29上に構築され、上記コンクリート躯体28は、地盤35面下において建造物1の周囲まで延設され、建造物1から一定間隔離れた位置で地表面に露出して建造物1の外側に舗装面2を提供する。
【0028】
また、この実施の形態においてコンクリート躯体28には、上記舗装面2よりも少し手前で免震装置29の設置面から地盤35面近傍まで立ち上がるようにして縦壁28aが形成され、建造物1の下端には、この縦壁28aのほぼ直上位置まで周囲に向かって張り出すようにしてコンクリートが打設されて張り出し部1aが形成される。コンクリート躯体28は、上記縦壁28aの上端よりもやや低い位置からさらに外側に向かって延設されて凹形状をなすようにして舗装面2へと連続し、これにより上記張り出し部1aと舗装面2との間において移動用間隙3が形成される。なお、移動用間隙3は、上述した免震装置29の設置面の深さのままコンクリート躯体28を舗装面2の直下まで水平方向に拡幅し、上述の縦壁28aを省略して構成することも可能である。
【0029】
地震が発生した際には、上記舗装面2が水平方向に揺れるのに対し、免震装置29により地震動を吸収する建造物1の揺れが抑えられることにより、舗装面2と張り出し部1aとの間隔が拡縮するが、移動用間隙3がこの拡縮を吸収することにより、舗装面2と張り出し部1aとの衝突が避けられる。エキスパンションジョイント床構造は、このような拡縮の吸収を妨げることなく、上述のエキスパンションカバーAにより移動用間隙3を覆って構築される。
【0030】
上述したエキスパンション床構造は、図1(b)に示すように、エキスパンションジョイントカバーAの本体部20の一端縁部が垂直回転自在に連結される連結装置22と、上記本体部20の他端縁部を進退移動自在に支承する支持装置30とを有する。
【0031】
上記連結装置22は、図2(a)および図4(a)に示すように、金属材料からなる長尺のレール材31を有する。このレール材31は、円弧状に屈曲して形成される縦壁部31aを有し、該縦壁部31aには、その高さ方向に長寸の長孔31bが長手方向に沿って所定ピッチで穿孔される。
【0032】
上記レール材31は縦壁部31aの両端から延設される一対の取付片31c、31cにおいてアングル材32に固定され、このアングル材32を介して張り出し部1aの上面に適宜の脚部材33により高さ調整されて固定される。固定状態において、上記縦壁部31aは、円弧状の曲率面が移動用間隙3に向けて凸となる姿勢で張り出し部1aの先端縁に沿って配置される。以上のようにしてレール材31の張り出し部1aへの設置が完了すると、図4(a)において2点鎖線で示すように、張り出し部1a上面にアングル材32の表面を露出させるようにしてモルタル5'が充填され、これによりレール材31等を外部に露出させた状態で脚部材33等が埋設されて連結装置22が完成する。なお、図2(a)において34は、脚部材33を張り出し部1aに固定するコンクリートビスである。
【0033】
以上の連結装置22は、レール材31の長孔31bに挿入した連結ボルト36の先端を上述の長孔31bに貫通させた後、連結部4a内においてダブルナット等からなる連結ナット37で締め付けることによりエキスパンションジョイントカバーAと連結される。なお、連結部4aの上面は、図1(c)等に示すように適宜のカバー材38により閉塞される。
【0034】
一方、上記支持装置30は、図2(b)および図4(a)に示すように、型材を枠組みして形成される受枠39を有する。この受枠39は、上面がほぼ水平面である水平支持部39aの後方に、上面が後上がりの傾斜面である傾斜支持部39bを連続して形成される。
【0035】
また、受枠39を上述した連結装置22と同じ程度の高さに設置するために、上述したコンクリート躯体28の舗装面2の移動用間隙3側には、図1(b)に示すように舗装面2よりも一段低い設置基部40が形成される。受枠39の設置は、この設置基部40上に設置される適宜の支持脚41により高さ調整されてなされる。なお、支持脚41は、コンクリートビスやコンクリートボンドなどにより設置基部40上の固定され、また、支持装置30の設置基部40への設置が完了すると、上述した連結装置22における場合と同様に、図4(a)において2点鎖線で示すように、設置基部40上面に受枠39の表面を露出させるようにしてモルタル5'が充填され、これにより支持脚41等が埋設されて支持装置30が完成する。
【0036】
図4に以上のようにして完成した連結装置22、支持装置30に対し、エキスパンションジョイントカバーAを敷設する手順を示す。図4(a)に示すように、移動用間隙3を挟んで建造物1側にはレール材31が、舗装面2側には受枠39が配置される。
【0037】
エキスパンションジョイントカバーAの設置は、図4(b)に示すように、エキスパンションジョイントカバーAをクレーン42により設置位置まで移動させることにより行われる。上述の通り、エキスパンションジョイントカバーAの各側壁部7からは抱き込み部材10を構成するボルト11の頭部11aが外側に向かって突出しており、また、この頭部11aは、各エキスパンションジョイントカバーAのケース4の長さ方向中心線に対する非線対称位置に配置されることから、隣接するエキスパンションジョイントカバーA同士は、上記頭部11aと側壁部7とを突き合わせ、衝合させることにより、一律に頭部11aの高さ寸法に応じた間隔を隔てて配置することができる。
【0038】
以上のエキスパンション床構造は、通常運用時には、図2(b)に示すように、受枠39の水平支持部39aにより本体部20の後端部を支承する。この状態で地震のために建造物1が舗装面2に対して水平移動すると、本体部20は水平支持部39a上を摺動し、移動用間隙3の閉塞状態が維持される。また、建造物1が隣接構造体2側に大きく移動すると、図2(c)に示すように、本体部20の後端部は傾斜支持部39bに乗り上げて上方に移動し、本体部20の先端部は、上述した連結ボルト36が長孔31b内を移動することにより、レール材31の縦壁部31aの曲率中心周りに垂直回転して追随する。
【0039】
さらに、本体部20の傾斜支持部39bへの乗り上げに追随するように、フラッププレート21は自重により図2(c)において時計回りに回転し、舗装面2とのスムーズな接続が維持される。
【0040】
また、通常運用時において、図5(a)に示すように大型車両43のタイヤ43aが移動用間隙3の直上位置でエキスパンションジョイントカバーAに乗り上げたときには、大きな荷重WがエキスパンションジョイントカバーAを撓ませる方向に作用する。図5(b)はエキスパンションジョイントカバーAが撓みやすい状況を詳細に示したもので、二点鎖線は大型車両のタイヤ43aの接地領域を示しており、タイヤ43aが移動用間隙3の幅方向中央位置においてエキスパンションジョイントカバーAに乗り上げている。
【0041】
この場合、エキスパンションジョイントカバーAは、移動用間隙3の幅方向に弓なりに撓みやすく、図6に示すように、この撓みに伴って一対の側壁部7、7は、それぞれの基端を支点としてモルタル5から離れる方向に倒れ込むようにして開きやすくなる。この点、上述のように側壁部7に抱き込み部9が形成されることにより、エキスパンションジョイントカバーAが撓んでしまったときにも、側壁部7の開き方向の変形を抑えることができる。なお、抱き込み部材10は、図5(b)に示すように、ケース4の一対の側壁部7、7において、移動用間隙3の幅方向中心から等距離に配置されている。
【0042】
なお、以上の実施の形態においては、エキスパンションジョイントカバーAを建造物1と舗装面2との間に設置する場合を示したが、建造物1、1同士の連絡通路(渡り廊下)に設置しても足りる。また、上述の実施の形態においては、エキスパンションジョイントカバーAを一端縁部側を中心に垂直回転させるために、連結装置22に形成された長孔31b内で垂直回転移動する連結ボルト36を用いる場合を示したが、連結ボルト36を水平姿勢に固定しておいてエキスパンションジョイントカバーAの連結部4a側の透孔23を縦長にしたり、あるいは、鉛直姿勢に固定された連結ボルト36をエキスパンションジョイントカバーAの一端縁部底面側に形成したボルト挿入部に遊挿させても足りる。
【符号の説明】
【0043】
1 免震建造物
2 隣接構造体
3 移動用間隙
4 ケース
5 充填材
6 充填部
7 側壁部
8 鍔部
9 抱き込み部
10 抱き込み部材
11 ボルト
12 板状部材
13 補強部材
C 長さ方向中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6