(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている車両用照明灯具では、第1発光素子から出射される光は投影レンズの光軸に対して上方に出射され、第2発光素子から出射される光は投影レンズの光軸に対して下方に出射される。このように出射される光が第1発光素子及び第2発光素子の前方に配置された投影レンズに入射するように、上記第1リフレクタによって第1発光素子から出射される光を前方に反射すると共に上記第2リフレクタによって第2発光素子から出射される光を前方に反射する必要がある。
【0006】
上記特許文献1に開示されている車両用照明灯具において、第1発光素子から出射される光及び第2発光素子から出射される光を効率良く投影レンズに入射させるためには、第1リフレクタ及び第2リフレクタがそれぞれ前方に大きく迫り出すように設けられることが好ましい。しかし、第1リフレクタ及び第2リフレクタがこのように大型化されると、灯具が大型化し易くなる。
【0007】
そこで、本発明は、互いに異なる方向に光を出射する複数の光源を備え、これらの光源からの光を有効に利用しつつ大型化が抑制され得る車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の車両用前照灯は、第1の光を出射する第1光源と、前記第1光源の下方に配置され、第2の光を出射する第2光源と、前記第1光源及び前記第2光源の前方に配置され、前記第1の光及び前記第2の光が透過する投影レンズと、前記第1光源と前記第2光源との間に配置され、前記第1の光の一部を遮蔽するシェードと、を備え、前記シェードは、前記第1光源側から前記投影レンズに向かって延在し、前記第1の光の一部を前方に反射する凹状の第1反射面と、前記第2光源側から前記投影レンズに向かって延在し、前記第2の光の一部を前方に反射する凹状の第2反射面と、を有し、前記第1光源の出射面の法線が前方斜め下を向き、前記第2光源の出射面の法線が前方斜め上を向くことを特徴とする。
【0009】
上記車両用前照灯では、第1光源の出射面の法線が前方斜め下を向いていことから、第1の光の一部を投影レンズに直接入射させると共に第1の光の他の一部を第1光源の下方に配置された第1反射面で反射させて投影レンズに入射させることができる。このため、第1の光を有効に利用することができる。また、第2光源の出射面の法線が前方斜め上を向いていことから、第2の光の一部を投影レンズに直接入射させると共に第2の光の他の一部を第2光源の上方に配置された第2反射面で反射させて投影レンズに入射させることができる。このため、第2の光を有効に利用することができる。さらに、第1反射面及び第2反射面はシェードの一方の面と他方の面とに形成されるため、一つの部材で第1反射面及び第2反射面を形成することができる。また、第1の光の一部及び第2の光の一部がそれぞれ投影レンズに直接入射することを前提とするため、第1反射面及び第2反射面を前方に大きく迫り出させる必要がない。このように、上記車両用前照灯では、大型のリフレクタを用いずとも、第1の光及び第2の光を効率良く投影レンズに入射させることができる。したがって、上記車両用前照灯は、互いに異なる方向に光を出射する複数の光源を備え、これらの光源からの光を有効に利用しつつ大型化が抑制され得る。
【0010】
また、前記投影レンズの焦点が前記シェードの前方端と前記投影レンズとの間に形成されることが好ましい。
【0011】
シェードが上記のように第1の光の一部を遮蔽することによって、シェードの前方端は第1の光による配光のカットラインを形成することができる。また、上記のように第1光源の出射面の法線が前方斜め下を向くと共に第2光源の出射面の法線が前方斜め上を向くため、第1の光及び第2の光はシェードの前方端に向かって出射され、シェードの前方端近傍が明るくなり易い。ここで、投影レンズの焦点がシェードの前方端と投影レンズとの間、すなわちシェードの前方端近傍に形成されることによって、上記カットライン近傍を明るくすることができる。
【0012】
また、鉛直断面において、前記第1光源と前記第2光源とは、前記投影レンズの光軸に対して互いに非対称な位置に配置されることが好ましい。
【0013】
また、前記第1反射面で反射される前記第1の光及び前記第2反射面で反射される前記第2の光の少なくとも一方は、発散角が小さくされて前方に反射されることが好ましい。
【0014】
第1反射面で前方に反射される第1の光の発散角が小さくされることによって、第1の光を所定の範囲に集めてから投影レンズに入射させることができる。このため、第1の光の配光のうち所定の範囲を他の範囲より相対的に明るくすることができる。例えば、上記カットライン近傍を明るくすることができる。また、第2反射面で前方に反射される第2の光の発散角が小さくされることによって、第2の光を所定の範囲に集めてから投影レンズに入射させることができる。このため、第2の光の配光のうち所定の範囲を他の範囲より相対的に明るくすることができる。例えば、第1の光の配光と第2の光の配光とが重なる部分を明るくすることができる。
【0015】
また、前記第1光源の上方を覆う第3反射面と、前記第2光源の下方を覆う第4反射面と、を更に備えることが好ましい。
【0016】
上記のような第3反射面及び第4反射面が備えられることによって、第1の光及び第2の光をより有効に利用し易くなる。なお、第1光源から出射する第1の光の多くは上記のように直接または第1反射面に反射されて投影レンズに入射する。第3反射面は、上記特許文献1に記載されているリフレクタのように光源から出射される光の全てを反射させることを想定するものではないため、上記特許文献1に記載されているようなリフレクタに比べて小さくすることができる。また、第2光源から出射する第2の光の多くは上記のように直接または第2反射面に反射されて投影レンズに入射するため、第4反射面も第3反射面と同様に小さくすることができる。
【0017】
また、前記第3反射面で反射される前記第1の光及び前記第4反射面で反射される前記第2の光の少なくとも一方が発散されることが好ましい。
【0018】
第3反射面で反射される第1の光が発散させることによって、第1の光を広い範囲に照射することができる。また、第4反射面で反射される第2の光も同様に、発散されることによって第2の光を広い範囲に照射することができる。
【0019】
また、前記第1光源及び前記第2光源の少なくとも一方がLEDアレイからなることが好ましい。
【0020】
第1光源及び第2光源がLEDアレイから成る場合、当該LEDアレイに含まれる各LEDの点灯パターンが制御されることによって、第1光源の配光及び第2光源の配光を制御することが容易になる。
【0021】
また、前記シェードの前方端は、左右端から中央に向かって徐々に後方に凹んでいることが好ましい。
【0022】
シェードの前方端が上記形状であることによって、上記カットラインを所望の形状とすることが容易になる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、互いに異なる方向に光を出射する複数の光源を備え、これらの光源からの光を有効に利用しつつ大型化が抑制され得る車両用前照灯が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る車両用前照灯を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。
【0026】
車両用前照灯は、一般的に車両の前方の左右方向のそれぞれに備えられるものであり、左右の車両用前照灯は左右方向に概ね対称の構成とされる。従って、本実施形態では、一方の車両用前照灯について説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る灯具ユニットと当該灯具ユニットを収容する筐体とを示す図である。なお、
図1では、灯具ユニットの側面図と筐体の断面図とを示している。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の車両用前照灯1は、筐体10と、当該筐体10内に収容される灯具ユニットLUとを備える。
【0029】
筐体10は、ランプハウジング11、フロントカバー12及びバックカバー13を主な構成要素として備える。ランプハウジング11の前方は開口しており、当該開口を塞ぐように光透過性のフロントカバー12がランプハウジング11に固定されている。また、ランプハウジング11の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー13がランプハウジング11に固定されている。
【0030】
ランプハウジング11と、当該ランプハウジング11の前方の開口を塞ぐフロントカバー12と、当該ランプハウジング11の後方の開口を塞ぐバックカバー13とによって形成される空間は灯室LRとされ、この灯室LR内に灯具ユニットLUが収容されている。
【0031】
図2は、
図1に示す灯具ユニットの斜視図である。
図3は、
図2に示す灯具ユニットLUの分解斜視図である。
【0032】
図2、
図3に示すように、灯具ユニットLUは、投影レンズ15、レンズホルダ20、リフレクタユニット30、第1光源ユニット40、第2光源ユニット50、第3光源ユニット60、冷却ユニット70を主な構成要素として備える。
【0033】
冷却ユニット70は、ヒートシンク71及び冷却ファン75を主な構成要素として備える。ヒートシンク71は、第1ベース部72、第2ベース部73、放熱フィン74を有する。第1ベース部72は前方斜め上方及び左右に延在する板状体であり、第2ベース部73は第1ベース部72の下端から前方斜め下及び左右に延在する板状体である。放熱フィン74は、第1ベース部72及び第2ベース部73の背面に形成される。冷却ファン75は放熱フィン74の背面側に設けられる。
【0034】
第1光源ユニット40は、第1基板41、第1光源42、第1コネクタ43を主な構成要素として備える。第1基板41は板状体であり、例えば金属からなる。第1光源42は、第1基板41上に配置され、ロービームとなる第1の光を出射する。第1光源42は、並列された複数の光源からなる。本実施形態の第1光源42は、並列された複数のLEDからなるLEDアレイである。当該LEDアレイに含まれる各LEDの点灯パターンが制御されることによって、第1光源42から出射される第1の光の配光を制御することができる。第1光源42の点灯パターンの制御は、第1基板41上に設けられる第1コネクタ43を介して不図示の発光制御回路に電気信号が入力されることによって行われる。
【0035】
第1基板41は冷却ユニット70の第1ベース部72の前面に重ねられて固定されるため、第1基板41の表面は第1ベース部72の前面と概ね平行となる。上記のように第1ベース部72は前方斜め上に延在するため、第1基板41の表面も前方斜め上に延在する。また、第1基板41に固定される第1光源42の出射面は第1基板41の表面と概ね平行である。したがって、第1光源42の出射面の法線は前方斜め下を向く。
【0036】
第2光源ユニット50は、第2基板51、第2光源52、第2コネクタ53を主な構成要素として備える。第2基板51は板状体であり、例えば金属からなる。第2光源52は、第2基板51上に配置され、ハイビームとなる第2の光を出射する。第2光源52は、並列された複数の光源からなる。本実施形態の第2光源52は、並列された複数のLEDからなるLEDアレイである。当該LEDアレイに含まれる各LEDの点灯パターンが制御されることによって、第2光源52から出射される第2の光の配光を制御することができる。第2光源52の点灯パターンの制御は、第2基板51上に設けられる第2コネクタ53を介して不図示の発光制御回路に電気信号が入力されることによって行われる。
【0037】
第2基板51は冷却ユニット70の第2ベース部73の前面に重ねられて固定されるため、第2基板51の表面は第2ベース部73の前面と概ね平行となる。上記のように第2ベース部73は前方斜め下に延在するため、第2基板51の表面も前方斜め下に延在する。また、第2基板51に固定される第2光源52の出射面は第2基板51の表面と概ね平行である。したがって、第2光源52の出射面の法線は前方斜め下を向く。
【0038】
上記のように第1光源42は第1ベース部72に固定され、第2光源52は第2ベース部73に固定されることによって、第2光源52は第1光源42の下方に配置される。鉛直断面において、第1光源42と第2光源52とは、投影レンズ15の光軸に対して互いに非対称な位置に配置される。また、上記のように第1光源42の出射面の法線は前方斜め下を向き、第2光源52の出射面の法線は前方斜め下を向くため、第1光源42から第1の光が出射される方向と第2光源52から第2の光が出射される方向とは互いに交差する。
【0039】
第3光源ユニット60は、第3基板61、第3光源62、第3コネクタ63を主な構成要素として備える。第3基板61は板状体であり、例えば金属からなる。第3光源62は、第3基板61上に配置され、車両のステアリングの操作及び方向指示器の操作の少なくとも一方に連動して第3の光を出射する。例えば、ステアリングの操舵角に応じて第3の光の光量が調整される。本実施形態の第3光源62はLEDである。また、第3基板61はヒートシンク71の側方に固定され、第3の光は第3光源62から横方向に出射される。具体的には、投影レンズ15の光軸と第3光源62の出射面62fの法線とは、上から見た場合に互いに直交しており、第3光源62の出射面62fの法線は投影レンズ15を通らない。また、第3コネクタ63は第3基板61上に設けられ、第3コネクタ63を介して不図示の発光制御回路に入力される電気信号によって、第3光源62の発光が制御される。
【0040】
図4は、
図2に示す灯具ユニットLUの鉛直方向の断面図である。
図5は、
図3に示すリフレクタユニット30、第1光源42、及び第2光源52の正面図である。
【0041】
リフレクタユニット30は、シェード35、第1光源42用のリフレクタ31、第1光源42用の第1サイドリフレクタ31a、第1光源42用の第2サイドリフレクタ31b、第2光源52用のリフレクタ32、第2光源52用の第1サイドリフレクタ32a、第2光源52用の第2サイドリフレクタ32b、を主な構成要素として有する。
【0042】
シェード35は、第1光源42と第2光源52との間に配置され、第1の光の一部を遮蔽する。また、シェード35は、上面に第1反射面35aを有し、下面に第2反射面35bを有する。第1反射面35aは、第1光源42側から投影レンズ15に向かって延在し、第1の光の一部を前方に反射する凹状の反射面である。第2反射面35bは、第2光源52側から投影レンズ15に向かって延在し、第2の光の一部を前方に反射する凹状の反射面である。また、シェード35の前方端35cは、後述するカットラインに合わせた形状を有しており、左右端から中央に向かって徐々に後方に凹んでいる。
【0043】
リフレクタ31は、第1光源42の上方に配置され、第1光源42の上方を覆う第3反射面31rを第1光源42側に有する。第3反射面31r及びシェード35の第1反射面35aは、第1光源42に備えられる複数のLEDの並列方向に沿って形成され、当該複数のLEDを上下側から挟むように配置される一対のリフレクタとなる。
【0044】
第1サイドリフレクタ31aは、シェード35の第1反射面35aとリフレクタ31の第3反射面31rとで挟まれる空間のうち第1光源42に備えられる複数のLEDの並列方向の一方の端に形成される。また、第2サイドリフレクタ31bは、当該空間の他方の端に形成される。第1サイドリフレクタ31a及び第2サイドリフレクタ31bは、後方から前方に向かうにつれて互いの間隔が広がるように形成されている。
【0045】
リフレクタ32は、第2光源52の下方に配置され、第2光源52の下方を覆う第4反射面32rを第2光源52側に有する。第4反射面32r及びシェード35の第2反射面35bは、第2光源52に備えられる複数のLEDの並列方向に沿って形成され、当該複数のLEDを上下側から挟むように配置される一対のリフレクタとなる。
【0046】
第1サイドリフレクタ32aは、シェード35の第2反射面35bとリフレクタ32の第4反射面32rとで挟まれる空間のうち第2光源52に備えられる複数のLEDの並列方向の一方の端に形成される。また、第2サイドリフレクタ32bは、当該空間の他方の端に形成される。第1サイドリフレクタ32a及び第2サイドリフレクタ32bは、後方から前方に向かうにつれて互いの間隔が広がるように形成されている。
【0047】
投影レンズ15は、平凸レンズであり、第1光源42及び第2光源52の前方において第1光源42の出射面42fの法線及び第2光源52の出射面52fの法線が通る位置に配置される。第1の光及び第2の光は、投影レンズ15の背面側の平坦な入射面から入射して投影レンズを透過する。また、本実施形態では、投影レンズ15の焦点は、シェード35の前方端35cと投影レンズ15との間に形成される。
【0048】
図1から
図4に示すレンズホルダ20は、冷却ユニット70と投影レンズ15との間に配置される。投影レンズ15がレンズホルダ20に固定されると共にレンズホルダ20が冷却ユニット70に固定されることによって、投影レンズ15、レンズホルダ20、及び冷却ユニット70の相対的位置が固定される。また、リフレクタユニット30、第1光源ユニット40、第2光源ユニット50、及び第3光源ユニット60は冷却ユニット70に固定されるため、リフレクタユニット30、第1光源ユニット40、第2光源ユニット50、及び第3光源ユニット60と投影レンズ15とレンズホルダ20との相対的位置も固定される。
【0049】
レンズホルダ20のうち第3光源62が配置される側の側方には、第3光源62から出射される第3の光の配光を調整する光学部材21が一体に形成される。本実施形態の光学部材21は、後方から前方に向かうにつれて第3の光が入射する方向に垂直な方向の幅が大きくなる凸レンズである。すなわち、光学部材21の後方端21aから光学部材21の前方端21bに向かうにつれて、光学部材21の鉛直方向の幅が大きくなっている。また、本実施形態のレンズホルダ20は、光学部材21と投影レンズ15との間に形成される貫通孔となる切り欠き22を有する。
【0050】
次に、本実施形態の車両用前照灯1からの光の出射及び車両用前照灯1の作用について説明する。
図6は、
図4の一部を拡大し、第1光源42及び第2光源52から出射される光の光路例を概略的に示す図である。なお、
図6に示す各反射面の角度、光の反射角や屈折角等は正確でない場合がある。また、上記のように、車両用前照灯は車両の左右に対称に設けられる。以下の配光の説明では、左右に設けられる車両用前照灯が同様に点灯または消灯する場合の配光について説明する。
【0051】
第1光源42から出射する第1の光L11,L12,L13は、以下に説明するように投影レンズ15に入射して透過し、フロントカバー12を介して出射することで、
図7(A)に示すロービームの配光を形成する。
【0052】
第1の光L11,L12,L13は、第1光源42に備えられる各LEDの出射面42fから出射する。LEDでは、出射面42fから垂直な方向に出射される第1の光L11,L12の強度が他の方向に出射される第1の光L13の強度に対して相対的に強くなる。第1光源42に備えられるそれぞれのLEDの出射面42fの法線は前方斜め下を向くため、第1光源42の出射面42fから垂直に出射される第1の光L11,L12は、シェード35の前方端35cに向かって出射され、シェード35の前方端35c近傍またはシェード35の前方端35cより前方を通る。よって、第1光源42の出射面42fから垂直に出射される第1の光L11,L12の全部または一部がシェード35の前方端35c近傍に照射され、シェード35の前方端35cに入射する第1の光L11,L12の光量が多くなる。また、第1の光のうちシェード35の前方端35cより後方に照射される光の一部は、シェード35によって遮蔽される。シェード35がこのように第1の光の一部を遮蔽することによって、シェード35の前方端35cは第1の光によるロービームの配光のカットラインを形成することができる。本実施形態では、上記のように第1の光の一部はカットラインが形成されるシェード35の前方端35cに直接入射すると共に前方端35cに入射する第1の光の光量が多くなり、シェード35の前方端35c近傍が明るくなり易い。ここで、投影レンズ15の焦点15fがシェード35の前方端35cと投影レンズ15との間、すなわちシェード35の前方端35c近傍に形成されることによって、ロービームの配光のカットライン近傍を明るくすることができる。なお、シェード35の前方端35cは、ロービームの所望のカットラインの形状に合わせた形状とされ、本実施形態では上記のように凹状に形成されている。
【0053】
シェード35の前方端35cよりも前方を通る第1の光L12の少なくとも一部は、投影レンズ15に直接入射する。また、第1の光の他の一部は、第1反射面35a、第3反射面31r、第1サイドリフレクタ31a、第2サイドリフレクタ31bのいずれかによって前方に反射されて投影レンズ15に入射する。
【0054】
第1反射面35aで反射される第1の光L11は、発散角が小さくなって前方に反射されてから投影レンズ15に入射する。このため、第1の光の配光のうち所定の範囲を他の範囲より相対的に明るくすることができる。例えば第1反射面35aで反射される第1の光L11をシェード35の前方端35c近傍に集めることによって、ロービームの配光のカットライン近傍をより明るくすることができる。
【0055】
また、本実施形態では、第1光源42に備えられる複数のLEDを上下から挟むように第1反射面35a及び第3反射面31rが備えられることによって、複数のLEDから出射される第1の光を有効に利用し易くなる。第1の光の多くは上記のように直接または第1反射面35aに反射されて投影レンズ15に入射する。このように第3反射面31rは第1の光の全てを反射させるものではないため大型化が抑制され得る。
【0056】
第1反射面35aで反射される第1の光L11は、上記のように、シェード35の前方端35c近傍に集められることが好ましい。一方、第3反射面31rで反射される第1の光L13はより広い範囲に照射されることによって、第1の光の配光が形成されることが好ましい。したがって、第3反射面31rで反射される第1の光L13は、発散されることが好ましい。
【0057】
また、第1サイドリフレクタ31a及び第2サイドリフレクタ31bが光を拡散させることによって、第1光源42に備えられる複数のLEDのうち両端に配置されるLEDからの光を拡散させて広い範囲に出射させることができる。このため、第1光源42に備えられるLEDの数を少なくしても広い配光を形成することができる。
【0058】
第2光源52から出射する第2の光L21,L22,L23は、以下に説明するように投影レンズ15に入射して透過し、フロントカバー12を介して出射する。このとき、第2の光L21,L22,L23の少なくとも一部は第1の光L11,L12,L13よりも上方に向けて出射する。したがって、第2の光L21,L22,L23の少なくとも一部によって上記カットラインよりも上方の配光が形成される。また、第2光源52から出射する第2の光による配光と第1光源42から出射する第1の光による配光とが合わさり、
図7(B)に示すハイビームの配光が形成される。
【0059】
第2の光L21,L22,L23は、第2光源52に備えられる各LEDの出射面52fから出射する。第2光源52に備えられるそれぞれのLEDの出射面52fの法線は前方斜め上を向くため、第2光源52の出射面52fから垂直に出射される第2の光L23は、シェード35の前方端35cに向かって出射され、シェード35の前方端35c近傍が明るくなり易い。ここで、上記のように投影レンズ15の焦点がシェード35の前方端35c近傍に形成されることによって、上記カットライン近傍、すなわち第1の光の配光と第2の光の配光とが重なる部分を他の部分より相対的に明るくすることができる。
【0060】
シェード35の前方端35cよりも前方を通る第2の光L21の少なくとも一部は、投影レンズ15に直接入射する。また、第2の光の他の一部は、第2反射面35b、第4反射面32r、第1サイドリフレクタ32a、第2サイドリフレクタ32bのいずれかによって前方に反射されて投影レンズ15に入射する。
【0061】
第2反射面35bで反射される第2の光L23は、発散角が小さくなって前方に反射されてから投影レンズ15に入射する。このため、第2の光の配光のうち所定の範囲を他の範囲より相対的に明るくすることができる。例えば第2反射面35bで反射される第2の光L23をシェード35の前方端35c近傍に集めることによって、第1の光の配光と第2の光の配光とが重なる部分をより明るくすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、第2光源52に備えられる複数のLEDを上下から挟むように第2反射面35b及び第4反射面32rが備えられることによって、複数のLEDから出射される第2の光を有効に利用し易くなる。第2の光の多くは上記のように直接または第2反射面35bに反射されて投影レンズ15に入射する。このように第4反射面32rは第2の光の全てを反射させるものではないため大型化が抑制され得る。
【0063】
第2反射面35bで反射される第2の光L23は、上記のように、シェード35の前方端35c近傍に集められることが好ましい。一方、第4反射面32rで反射される第2の光L22はより広い範囲に照射されることによって、第2の光の配光が形成されることが好ましい。したがって、第4反射面32rで反射される第2の光L22は、発散されることが好ましい。
【0064】
また、第1サイドリフレクタ32a及び第2サイドリフレクタ32bが光を拡散させることによって、第2光源52に備えられる複数のLEDのうち両端に配置されるLEDからの光を拡散させて広い範囲に出射させることができる。このため、第2光源52に備えられるLEDの数を少なくしても広い配光を形成することができる。
【0065】
なお、昼間照明時には、第1光源42及び第2光源52に備えられる複数のLEDのうち少なくとも一部が弱く点灯される等して、
図7(C)に示す昼間照明の配光が形成される。
【0066】
第3の光は、上記のように第3光源62から横方向に出射される。第3光源62から出射された第3の光は、光学部材21によって配光が調整されて出射する。このように第3の光が出射されることによって、第3光源62を車両の側方照射用の光源とすることが容易になる。また、光学部材21が後方から前方に向かうにつれて第3の光が入射する方向に垂直な方向の幅が大きくなるレンズであることによって、第3の光を前方斜め横に出射させることが容易になる。また、光学部材21が凸レンズであることによって、第3の光の発散角を小さくして所定の範囲に照射させ易くなる。また、上記のように光学部材21と投影レンズ15との間に切り欠き22が形成されることによって、第3の光が光学部材21から投影レンズ15へと伝搬して投影レンズ15から意図しない光が出射されることを抑制することができる。このようにして第3の光は、光学部材21によって第1の光及び第2の光とは別に配光が調整される。
【0067】
なお、第3光源62から出射される第3の光は、上記のように車両のステアリングの操作及び方向指示器の操作の少なくとも一方に連動し、第1の光や第2の光が照射される範囲よりも正面視において車両の外側に向けて一時的に照射される。
【0068】
上記のように第1光源42、第2光源52及び第3光源62が発光する時に発する熱は、ヒートシンク71へと伝わり、冷却ファン75によって冷却される。上記のように、本実施形態の車両用前照灯1において、第1光源42、第2光源52及び第3光源62は、一つのヒートシンク71を共用する。このため、第1光源42及び第2光源52用のヒートシンクや冷却ファンとは別に第3光源62用のヒートシンクや冷却ファン等を設ける必要がない。したがって、車両用前照灯1は、ロービーム用の光源である第1光源42及びハイビーム用の光源である第2光源52に加えて第3光源62を備えつつ、大型化が抑制され得る。また、上記のように第3の光の配光を調整する光学部材21と投影レンズ15とが一体とされることによって、車両用前照灯1の大型化が更に抑制され得る。
【0069】
また、上記のように車両用前照灯1では、第1光源42の出射面42fの法線が前方斜め下を向いていることから、第1の光の一部を投影レンズ15に直接入射させると共に第1の光の他の一部を第1光源42の下方に配置された第1反射面35aで反射させて投影レンズ15に入射させることができる。このため、第1の光を有効に利用することができる。また、第2光源52の出射面52fの法線が前方斜め上を向いていることから、第2の光の一部を投影レンズ15に直接入射させると共に第2の光の他の一部を第2光源52の上方に配置された第2反射面35bで反射させて投影レンズ15に入射させることができる。このため、第2の光を有効に利用することができる。さらに、第1反射面35a及び第2反射面35bはシェード35の一方の面と他方の面とに形成されるため、一つの部材で第1反射面35a及び第2反射面35bを形成することができる。また、第1の光の一部及び第2の光の一部がそれぞれ投影レンズ15に直接入射することを前提とするため、第1反射面35a及び第2反射面35bを前方に大きく迫り出させる必要がない。このように、車両用前照灯1では、大型のリフレクタを用いずとも、第1の光及び第2の光を効率良く投影レンズ15に入射させることができる。したがって、車両用前照灯1は、互いに異なる方向に光を出射する複数の光源を備え、これらの光源からの光を有効に利用しつつ大型化が抑制され得る。
【0070】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
例えば、上記実施形態では、第1光源がロービーム用の光源であると共に第2光源がハイビーム用の光源である例を挙げて説明した。しかし、第1光源及び第2光源は、当該形態に限定されず、他の光を出射する光源であっても良い。
【0072】
また、上記実施形態では、第1反射面35aで反射される第1の光及び第2反射面35bで反射される第2の光は発散角が小さくされて前方に反射される例を挙げて説明したが、第1反射面35aで反射される第1の光及び第2反射面35bで反射される第2の光の一方の発散角が小さくされてもよく、両方の発散角が小さくされなくても良い。
【0073】
また、上記実施形態では、第3反射面31rで反射される第1の光及び第4反射面32rで反射される第2の光が発散される例を挙げて説明したが、第3反射面31rで反射される第1の光及び第4反射面32rで反射される第2の光の一方が発散されても良く、両方が発散されなくても良い。また、第3反射面31r及び第4反射面32rが必須の構成要素ではない。
【0074】
また、第3の光の出射方向は特に限定されない。例えば第3の光は、車両用前照灯から前方斜め上に出射されることにより、オーバーヘッドサインランプとされても良い。また、第3の光は、車両用前照灯から前方斜め下に出射されることにより、ロービームの配光の一部や走行ラインを照射する光とされても良い。さらに、第3の光は、クリアランスランプ(CLL)としての配光や、デイタイムランニングランプ(DRL)としての補助的な配光とされても良い。
【0075】
また、第3光源62の配置は特に限定されない。例えば第3光源62は、第1光源42よりも上方に配置されても良く、第2光源52よりも下方に配置されても良い。さらに、第3光源62は第1基板41上に設けられても良い。この場合、第3光源62は、第1光源42から離して設けられても良く、第1基板41を折り曲げることで第1光源42とは異なる方向に光を出射できるように設けられても良い。
【0076】
また、第3の光の配光を調整する光学部材21は、レンズホルダ20とは別に設けられても良い。また、光学部材21は、レンズに限定されず、第3の光を所望の方向に反射させる反射部材等であっても良く、第3の光の出射方向に応じて適宜形態を変更することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、レンズホルダ20に形成される切り欠き22によってレンズホルダ20と投影レンズ15との間に貫通孔が形成される例を挙げて説明した。しかし、第3の光の一部が投影レンズ15に伝搬することを抑制する観点からは、レンズホルダ20のうち光学部材21の前方に貫通孔が形成されてもよく、光学部材21と投影レンズ15との間に遮光部材が備えられても良い。ただし、本発明は、第3の光が投影レンズ15に伝搬することを抑制する形態に限定されず、第3の光の一部が投影レンズ15に入射しても良い。
【0078】
また、第1光源42、第2光源52、及び第3光源62の少なくともいずれか1つが別のヒートシンク上に配置される形態も考えられる。例えば、第1光源42及び第2光源52の一方と第3光源62とが1つのヒートシンクを共用し、第1光源42及び第2光源52の他方が別のヒートシンク上に配置されても良い。