特許第6980413号(P6980413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980413保湿性向上方法、化粧料用保湿性材料及び保湿性化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980413
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】保湿性向上方法、化粧料用保湿性材料及び保湿性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20211202BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20211202BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61K8/34
   A61Q19/00
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-104003(P2017-104003)
(22)【出願日】2017年5月25日
(65)【公開番号】特開2018-199629(P2018-199629A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2019年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】599098518
【氏名又は名称】株式会社ディーエイチシー
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝久
(72)【発明者】
【氏名】野村 道康
(72)【発明者】
【氏名】石川 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】荒川 充
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−290161(JP,A)
【文献】 特開2004−051561(JP,A)
【文献】 特開2000−159655(JP,A)
【文献】 特開平05−221821(JP,A)
【文献】 特開平11−012154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
E03B1/00−11/16
C02F1/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋深層水を全体の30重量%以上とし、海洋深層水とポリオールとを、海洋深層水とポリオールとの重量比率を9:1〜3:7として併用し、海洋深層水は、海洋深層水原水を、逆浸透膜ろ過法、電気透析法又はイオン交換膜法によりイオン処理して、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオンの比率が、K:Na:Ca:Mg:Cl=1:30〜70:10〜40:40〜150:200〜500となるようにイオン選択処理され、電気伝導度が12.5〜30mS/cmであることを特徴とする、保湿性向上方法。
【請求項2】
請求項1記載の保湿性向上方法において、ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、グリセレス−26、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール、マルチトール、キシリトール、カプリリルグリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、保湿性向上方法。
【請求項3】
海洋深層水とポリオールとの併用材料であり、海洋深層水とポリオールとが重量比率で9:1〜3:7であって、海洋深層水を全体の30重量%以上で含有し、海洋深層水は、含まれるカリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオンの比率が、K:Na:Ca:Mg:Cl=1:30〜70:10〜40:40〜150:200〜500であり、電気伝導度が12.5〜30mS/cmであることを特徴とする、化粧料用保湿性材料。
【請求項4】
請求項3記載の化粧料用保湿性材料において、ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、グリセレス−26、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール、マルチトール、キシリトール、カプリリルグリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、化粧料用保湿性材料。
【請求項5】
請求項3又は4の項記載の化粧料用保湿性材料を含むことを特徴とする、保湿性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な保湿性向上方法、化粧料用保湿性材料及び保湿性化粧料に関し、特に、海洋深層水とポリオールとを特定の重量比で併用することにより、皮膚に対する保湿性を向上させることができる、保湿性向上方法、化粧料用保湿性材料並びに保湿性化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肌が荒れる原因としては、主として、老化や日焼け等により、肌が乾燥することが一つの要因であることが知られている。
従って、皮膚の保湿性を保持するための化粧料の開発は、化粧品業界で主要な課題であり、これまでも種々の研究がなされてきた。
【0003】
皮膚に潤いを与える化粧料としては、化粧水やジェルなどの水系化粧料を例示することができるが、これらの水系化粧料としては、多価アルコールやアミノ酸などの保湿成分に対して、水分を高配合することにより、保湿効果を皮膚に付与する化粧料がある。
【0004】
かかる化粧料の保湿性を高めるために、特に保湿持続性を高めるために、グリセリンをはじめ、ブチレングリコールやソルビトール等のポリオールの保湿成分を高配合する試みがなされている。
しかし、ポリオール等の保湿成分を高配合すると、塗布時の皮膚への馴染み感が悪く、塗布後のべたつき感が高まる等、使用感に劣ってしまうという問題がある。
【0005】
一方、海洋深層水は、有光層(補償深度)である200m以深の海水であり、光合成による有機物生産がほとんど行われず分解が卓越している。さらに、無機栄養塩を多く含むことなどから、種々の利用が試みられている。
【0006】
海洋深層水を利用した化粧料としては、例えば、本出願人による特開2016−94372号公報(特許文献1)に、カロテノイドの生体への吸収性を高めるため、海洋深層水とカロテノイドとを併用する高吸収用組成物が記載されており、好ましくは、カロテノイドは、かんきつ類由来であり、より好ましくはかんきつ類由来のカロテノイドはクリプトキサンチンであり、海洋深層水は原水又は逆浸透法で淡水化して得られた淡水と海洋深層水との原水を混合した水であることを特徴とする、カロテノイド高吸収用組成物が開示されている。
【0007】
また、特開2008−297205号公報(特許文献2)には、海洋深層水を黒豚由来の動物性コラーゲンとともに使用する化粧品が開示されており、具体的には、海洋深層水を精製水とともに用いて、真皮結合組織を活性化させることが記載されている。
【0008】
しかし、海洋深層水をポリオールと併用することで、元来のポリオールの保湿性と比較して、格段に保湿性を高めることは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016−94372号公報
【特許文献2】特開2008−297205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ポリオールを用いた場合の皮膚の保湿性効果を顕著に高めることができる保湿性向上方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、ポリオールのみ、またはポリオールと海洋深層水以外の水、例えば精製水等とを組み合わせた場合よりも、皮膚の保湿性が向上する化粧料用保湿性材料及び当該化粧料用保湿性材料を含む保湿性化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意研究したところ、ポリオールと海洋深層水とを特定の重量比率で組み合わせて併用することにより、ポリオールと海洋深層水以外の水とを組み合わせた場合よりも皮膚へ塗布した場合に保湿性が高められることを見出し、本発明に至ったものである。
請求項1記載の保湿性向上方法は、海洋深層水を全体の30重量%以上とし、海洋深層水とポリオールとを、海洋深層水とポリオールとの重量比率を9:1〜3:7として併用することを特徴とする、保湿性向上方法である。
【0012】
請求項1記載の保湿性向上方法は、上記保湿性向上方法において、海洋深層水は、海洋深層水原水を、逆浸透膜ろ過法、電気透析法又はイオン交換膜法によりイオン処理して、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオンの比率が、K:Na:Ca:Mg:Cl=1:30〜70:10〜40:40〜150:200〜500となるようにイオン選択処理されたものであり、電気伝導度が12.5〜30mS/cmであることを特徴とする、保湿性向上方法である。
【0013】
請求項記載の保湿性向上方法は、上記いずれかの保湿性向上方法において、ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、グリセレス−26、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール、マルチトール、キシリトール、カプリリルグリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、保湿性向上方法である。
【0014】
請求項記載の化粧料用保湿性材料は、海洋深層水とポリオールとの併用材料であり、海洋深層水とポリオールとが重量比率で9:1〜3:7であって、海洋深層水を全体の30重量%以上で含有することを特徴とする、化粧料用保湿性材料である。
【0015】
請求項3記載の化粧料用保湿性材料は、上記化粧料用保湿性材料において、海洋深層水は、含まれるカリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオンの比率が、K:Na:Ca:Mg:Cl=1:30〜70:10〜40:40〜150:200〜500であり、電気伝導度が12.5〜30mS/cmであることを特徴とする、化粧料用保湿性材料である。
【0016】
請求項記載の化粧料用保湿性材料は、上記いずれかの化粧料用保湿性材料において、ポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、グリセレス−26、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール、マルチトール、キシリトール、カプリリルグリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、化粧料用保湿性材料である。
【0017】
請求項記載の保湿性化粧料は、上記いずれかの化粧料用保湿性材料を含むことを特徴とする、保湿性化粧料である。
【0018】
なお、本発明において「海洋深層水」とは、海洋深層水原水のみならず、海洋深層水原水を処理して含有されるイオンを特定の比率にしたもの(以下、「イオン選択処理」と称す)も含まれることを意味するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の保湿性向上方法および化粧料用保湿性材料によれば、皮膚に塗布した際、角層水分量を高めて保湿性を向上させることが可能となる。
特に、海洋深層水、好ましくはイオン選択処理された海洋深層水をポリオールと特定の重量比で併用することで、ポリオールそのもの、またポリオールと精製水(海洋深層水以外の水)等とを併用した場合と比較して、角層水分量を相乗的に高めることができ、保湿性を向上することができる。
さらに、海洋深層水とポリオールとを特定の重量比で併用することで、柔らかく、肌なじみの良い独特な感触が生まれるため、前記化粧料用保湿性材料を使用した本発明の保湿性化粧料は優れた感触であるとともに、保湿性が向上するため、皮膚のしっとり感をもたらし、肌荒れ改善や肌荒れ防止に有効な効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】海洋深層水、精製水及びこれらの水とグリセリンとを併用した場合のスキンコンダクタンスを評価した結果を示す図である。
図2】海洋深層水又は精製水と種々のポリオールとを組み合わせて併用した場合のスキンコンダクタンスを評価した結果を示す図である。
図3】海洋深層水の濃度を変化させてグリセリンと併用した場合のスキンコンダクタンスを評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を以下の実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の保湿性向上方法は、海洋深層水を全体の30重量%以上とし、海洋深層水とポリオールとを、海洋深層水とポリオールとの重量比率を9:1〜3:7として併用することにより、保湿性を向上させる方法である。
また、本発明の化粧料用保湿性材料は、海洋深層水とポリオールとの併用材料であり、海洋深層水とポリオールとが重量比率で9:1〜3:7であって、海洋深層水を全体の30重量%以上で含有する化粧料用保湿性材料であり、また本発明の保湿性化粧料は、前記化粧料用保湿性材料を含む化粧料である。
【0022】
このように、海洋深層水を全体の30重量%以上とし、海洋深層水とポリオールとの重量比率を9:1〜3:7として併用することで、皮膚の角層の水分保持量を高めることが可能となり、保湿性を向上させることができる。
【0023】
本発明に用いられる海洋深層水(Deep seawater,DSW)は、一般に、海面下200m以深のNa、K、Ca、Mgや、無機栄養成分を豊富に含む低温で、清潔且つ衛生的な水であり、安全性、安定性に優れているものである。
海洋深層水を採水するための取水地としては、静岡県伊東市(伊豆赤沢)を始め、現在9都道県で、15の取水施設が有り(海洋深層水利用学会HP調べ、2017年2月現在)、これらの取水地から採水される海洋深層水のいずれも本発明の適用の対象とすることができ、また前記取水地以外で採水した海洋深層水を用いることも可能である。
【0024】
特に好ましくは、伊豆赤沢海洋深層水であり、かかる海洋深層水は、伊豆赤沢沖の水深約800mから汲み上げられるもので、表層水に比べて、微生物の存在比が数千分の一程度のものである。また、伊豆赤沢海洋深層水は、伊豆半島付近の海洋表層で北東方向に向けて流れている黒潮や、伊豆半島南東沖海底の高い海底火山群からなる伊豆・小笠原弧が形成されていることから、伊豆赤沢沖は、首都圏・大都市圏に最も近いにもかかわらず、汚染されていない清浄な海洋深層水を取水することができる場所であり、本発明において、有効に適用することができるものである。
【0025】
本発明において好適に用いられる海洋深層水としては、採水した海洋深層水に含まれるイオンを特定の比率にイオン選択処理した海洋深層水が特に好適であり、これは例えば、塩分等の皮膚への刺激を考慮することが望ましいからである。
【0026】
海洋深層水原水中に含まれるイオンを特定の比率に処理する方法としては、特に限定されず、例えば、公知の逆浸透膜ろ過法、電気透析法やイオン交換膜法等を用いてイオン選択処理することができる。
また、海洋深層水原水をイオン選択処理する公知の方法であれば他の任意の方法も適用することができる。
【0027】
例えば、イオン選択処理する方法としては、電気透析装置「アストム株式会社製、アシライザー25型 100対×3段連続式(海水脱塩仕様)」を用いて、電気透析法(イオン交換膜法)によりイオン交換膜と直流電流の作用で、海洋深層水原水中にあるイオン性物質の脱塩・濃縮を行なって、脱塩処理をする方法等を用いることもできる。
更に、特開2000−159655号公報に開示されているように、海洋深層水を逆浸透膜装置(東洋紡株式会社製、HR5155)で脱塩処理した後、電気透析装置(旭ガラス株式会社製、セレミオンCMV、セレミオンASV)によって脱塩処理する方法を適用してもよく、また、特開2010−274214号公報に記載されているような逆浸透膜法で脱塩処理する方法を適用してもよい。
【0028】
イオン選択処理としては、海洋深層水を、例えば、含有されるカリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオンの比率が、K:Na:Ca:Mg:Cl=1:30〜70:10〜40:40〜150:200〜500程度となるようにイオン選択処理することが望ましい。具体的には、例えば海洋深層水100g中、Kが0〜0.1g程度、Naが0.01〜0.50g程度、Caが0.01〜0.04g程度、Mgが0.05〜0.5g程度、Clが0.1〜1.0g程度となるように処理された海洋深層水とすることが望ましい。
かかるイオン選択処理された海洋深層水のミネラル分の組成が、ポリオールとの併用により皮膚の角層の水分保持量を高め、保湿性を向上させるために特に有効に機能するため、イオン選択処理された海洋深層水を好適に用いる。
なお、一般に、天然にがりは、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオンの比率が、K:Na:Ca:Mg:Cl=1:2〜25:0〜1:1〜5:10〜50程度であり、天然にがりを用いた水溶液と、イオン選択処理した海洋深層水とはミネラル分の組成が大きく異なり、にがりを用いた水溶液は適用することは望ましくない。
【0029】
なお、例えば伊豆赤沢産の海洋深層水を下記の電気透析処理方法(電気透析装置「アストム株式会社製、アシライザー25型」)によってイオン選択処理した海洋深層水(EDミネラル水)、富山県滑川産の海洋深層水(EDミネラル水)及び各種のにがりは、以下の表1に示すイオンの成分の組成を有する。
【0030】
【表1】
【0031】
また、本発明に適用する海洋深層水の電気伝導度は、0〜30mS/cmであることが望ましく、5〜15mS/cmであることがより望ましいため、かかる電気伝導度となるように、海洋深層水をイオン選択処理等して調整することが、更に本発明の効果を奏するために望ましい。
【0032】
また、本発明に適用することができるポリオールとしては、化粧料に用いられるポリオールであれば任意のポリオールを用いることができ、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、グリセレス−26、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール、マルチトール、キシリトール、カプリリルグリコール等を例示することができ、これらのポリオールを少なくとも1種用いることができる。
【0033】
これらのポリオールは、保湿剤として知られているが、上記海洋深層水と併用することにより、特に配合重量比率として海洋深層水:ポリオールとを重量比率で9:1〜3:7で併用、好ましくは9:1〜4:6で併用することにより、更に、前記海洋深層水を全体の30重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以上の含有量として適用することで、格段に保湿性能を向上させることができる。
【0034】
上記海洋深層水とポリオールとの併用は、上記海洋深層水にポリオールを配合して混合しても、ポリオールに海洋深層水を配合して混合しても、海洋深層水とポリオールとを少しずつ配合しながら混合しても、いずれの方法であっても均一に混合することができれば任意の配合方法や配合手段を採用することができる。
【0035】
本発明による保湿性は、皮膚の角層の水分保持量によって評価することができ、例えば、スキンコンダクタンス(μS)を測定することで評価できる。
スキンコンダクタンスは値が大きいほど保湿性が高いことを意味し、その測定方法は、スキンコンダクタンスが測定できれば任意の機器を用いることができ、例えば、スキコン(SKICON−200、アイ・ビイ・エス株式会社製)が例示できる。
【0036】
本発明によれば、スキンコンダクタンスは、海洋深層水を用いた場合やポリオールと精製水等の水(海洋深層水以外の水)を併用して用いた場合に比べて、単に加算的な保湿性向上効果ではなく、顕著な保湿性向上効果を奏することが可能である。
【0037】
本発明の化粧料用保湿性材料は、上記海洋深層水と上記ポリオールとの併用材料であり、上記海洋深層水と上記ポリオールとは重量比率で9:1〜3:7、好ましくは、9:1〜4:6で含有するものである。
海洋深層水と上記ポリオールとを重量比率で9:1〜3:7、好ましくは、9:1〜4:6で含有するものであれば、他に精製水を含有していても特に問題はないが、化粧料用保湿性材料中、海洋深層水は、30重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以上含むものが望ましく、また、精製水を含まず、海洋深層水とポリオールとからなる化粧料用保湿性材料であってもよい。
【0038】
本発明の化粧料は、上記化粧料用保湿性材料を含有するものであり、その形態は、ローション、乳液、クリーム、パック、ジェル状化粧料、石鹸、液状洗浄剤、日焼け・日焼け止めオイル、白粉、パウダー、ファンデーション、香水、エナメル、エナメル除去剤、眉墨、頬紅、アイクリーム、アイシャドー、マスカラ、アイライナー、口紅、リップクリーム、はみがき、皮膚の手入れ製剤、毛髪の手入れ製剤若しくは頭皮の手入れ製剤などのような化粧料用分野における化粧料に適用される任意の形態をとることができる。
【0039】
また、本発明の化粧料は、上記化粧料用保湿性材料を必須成分とすれば、本発明の効果を損なわない限り、化粧料分野において、化粧料の製造に通常使用または添加物として許容される成分、例えば、油分、界面活性剤(乳化剤、可溶化剤、懸濁化剤、安定剤等)、美白剤、紫外線防御剤、抗菌剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、活性酸素除去剤、増粘剤、防腐剤、香料、着色料、キレート剤、アミノ酸、糖類、粉体、酸化防止剤、ゲル化剤、消臭剤、pH調整剤、清涼剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ビタミン類などを1種又は2種以上含有するものであってもよい。
【実施例】
【0040】
本発明を次の実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に記載がない場合には%は重量%を表わす。
(使用EDミネラル水)
海洋深層水として、伊豆赤沢沖の水深800m程度からくみ上げられた海洋深層水(伊豆赤沢産)を、以下の方法でイオン選択処理した海洋深層水の電気透析水(海洋深層水(EDミネラル水))を用いた(電気伝導度は12.5mS/cm)。
具体的には、電気透析装置「アストム株式会社製、アシライザー25型 100対×3段連続式(海水脱塩仕様)」を用いて、伊豆赤沢産の海洋深層水を電気透析法(イオン交換膜法)によりイオン交換膜を用いて直流電流を負荷することにより、海洋深層水原水中にあるイオン性物質の脱塩・濃縮を行なって、脱塩処理をして、イオン処理した海洋深層水(EDミネラル水)を得た。
かかる海洋深層水(EDミネラル水)は、下記表2に示す成分組成を有する。
海洋深層水中のK、Na、Ca、Mgのイオン含有量はマルチタイプICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製)を用いて測定し、Cl含有量は高速液体クロマトグラフ(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
【0041】
【表2】
【0042】
(保湿性評価試験1)
上記伊豆赤沢産海洋深層水(EDミネラル水)、精製水及びグリセリン(新日本理化株式会社製)を用いて、保湿性の評価を行った。
具体的には、以下の表3の組成の実施例1及び比較例1〜3の化粧料用保湿性材料試験液を用いて保湿性の評価をおこなった。
比較例1.100%海洋深層水(EDミネラル水)
比較例2.100%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例1.10%グリセリン+90%海洋深層水(EDミネラル水)
比較例3.10%グリセリン+90%精製水(電気伝導度0mS/cm)
【0043】
【表3】
【0044】
具体的には、以下の手順で保湿性の評価を実施した。
まず被験者の前腕外側皮膚を、レモン石鹸(カネヨ石鹸株式会社製)を用いて洗浄後、タオルドライして、気温20℃、湿度50%の恒温恒湿室で30分間安静に保った。
その後、前記洗浄した前腕外側皮膚のスキンコンダクタンス(μS)をスキコン(SKICON−200,アイ・ビイ・エス株式会社製)で測定した(未塗布)。
【0045】
次いで、前記30分間安静を保持した後の前記洗浄した前腕外側皮膚に9cmの試験部位を設定し、そこに上記実施例1及び比較例1〜3の各試験液を50μL塗布し、塗布後30分間、上記恒温室で安静を保持した後、前記スキコンを用いて、塗布した前腕外側皮膚のスキンコンダクタンス(μS)を測定した。
なお、上記保湿性評価試験を被験者7名に実施して、その平均の結果を図1に示す。
また、上記未塗布の場合も同じ被験者7名の平均の結果を図1に示す。
【0046】
図1より、比較例1のEDミネラル水及び比較例2の精製水を上記皮膚に塗布し、30分経過した場合には、未塗布の場合と特に有意な差は見られないが、10重量%グリセリンとともに海洋深層水(EDミネラル水)を併用した実施例1の場合には、10重量%グリセリンと精製水とを併用した比較例3、前記比較例1及び2の場合と比較して、スキンコンダクタンス値が大きく、保湿性が高いことが明らかとなった。
【0047】
(保湿性評価試験2)
上記伊豆赤沢産海洋深層水(EDミネラル水)又は精製水と、種々のポリオールとを組み合わせた試験液を用いて、保湿性の評価を行った。
具体的には、以下の表4の組成の実施例2〜5及び比較例4〜7の化粧料用保湿性材料試験液を用いて保湿性の評価をおこなった。
実施例2.10%ブチレングリコール+90%海洋深層水(EDミネラル水:ED)
比較例4.10%ブチレングリコール+90%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例3.10%プロパンジオール+90%海洋深層水(EDミネラル水:ED)
比較例5. 10%プロパンジオール+90%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例4.10%ジプロピレングリコール+90%海洋深層水(EDミネラル水:ED)
比較例6.10%ジプロピレングリコール+90%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例5. 10%ソルビトール+90%海洋深層水(EDミネラル水:ED)
比較例7. 10%ソルビトール+90%精製水(電気伝導度0mS/cm)
【0048】
【表4】
【0049】
具体的には、上記保湿性評価試験1と同様に、以下の手順で保湿性の評価を実施した。
まず被験者の前腕外側皮膚を、レモン石鹸(カネヨ石鹸株式会社製)を用いて洗浄後、タオルドライして、気温20℃、湿度50%の恒温恒湿室で30分間安静に保った。
その後、前記洗浄した前腕外側皮膚のスキンコンダクタンス(μS)をスキコン(SKICON−200,アイ・ビイ・エス株式会社製)で測定した(未塗布)。
【0050】
次いで、前記30分間安静を保持した後の前記洗浄した前腕外側皮膚に9cmの試験部位を設定し、そこに上記実施例2〜5及び比較例4〜7の各試験液を50μL塗布し、塗布後、30分間上記恒温室で安静を保持した後、前記スキコンを用いて、塗布した前腕外側皮膚のスキンコンダクタンス(μS)を測定した。
なお、上記保湿性評価試験を被験者6名に実施して、その平均の結果を図2に示す。
また、上記未塗布の場合も同じ被験者6名の平均の結果を図2に示す。
【0051】
図2より、全てのポリオールについて、ポリオールと精製水とを併用した比較例の各試験液と比較して、ポリオールと海洋深層水(EDミネラル水:ED)とを併用した実施例の各試験液のほうが、スキンコンダクタンス値が大きく、保湿性が高いことが明らかとなった。
【0052】
(保湿性評価試験3)
上記伊豆赤沢産海洋深層水(EDミネラル水)の濃度を種々変化させて、10%グリセリンと併用し、更に必要に応じ精製水を併用した化粧料用保湿性材料試験液を用いて、保湿性の評価を行った。
具体的には、以下の表5の組成の実施例6〜10及び比較例8〜10の試験液を用いて保湿性の評価をおこなった。
比較例8.10%グリセリン+90%精製水(電気伝導度0mS/cm)
比較例9.10%グリセリン+10%海洋深層水(EDミネラル水)+80%精製水(電気伝導度0mS/cm)
比較例10.10%グリセリン+20%海洋深層水(EDミネラル水)+70%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例6.10%グリセリン+30%海洋深層水(EDミネラル水)+60%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例7.10%グリセリン+50%海洋深層水(EDミネラル水)+40%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例8.10%グリセリン+70%海洋深層水(EDミネラル水)+20%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例9.10%グリセリン+80%海洋深層水(EDミネラル水)+10%精製水(電気伝導度0mS/cm)
実施例10.10%グリセリン+90%海洋深層水(EDミネラル水)
【0053】
【表5】
【0054】
具体的には、以下の手順で保湿性の評価を実施した。
まず被験者4名の前腕外側皮膚を、レモン石鹸(カネヨ石鹸株式会社製)を用いて洗浄後、タオルドライして、気温20℃、湿度50%の恒温恒湿室で30分間安静に保った。
その後、前記洗浄した前腕外側皮膚のスキンコンダクタンス(μS)をスキコン(SKICON−200,アイ・ビイ・エス株式会社製)で測定した(未塗布)。
【0055】
次いで、前記30分間安静を保持した後の前記洗浄した前腕外側皮膚に9cmの試験部位を設定し、そこに上記実施例6〜10及び比較例8〜10の各試験液を25μL塗布し、塗布後30分間、上記恒温室で安静を保持した後、前記スキコンを用いて、塗布した前腕外側皮膚のスキンコンダクタンス(μS)を測定した。
なお、各被験者の上記未塗布のスキンコンダクタンス値を1として、30分経過後の塗布試験部位のスキンコンダクタンス値を相対値で表し、その平均の結果を表6及び図3に示す。
また、表6及び図3中の「無塗布」は、上記被験者4名の上記未塗布の状態のスキンコンダクタンス値を1とし、試験液を塗布しないで30分間、上記恒温室で安静を保持した後に、前記未塗布のスキンコンダクタンスを測定した皮膚の部位と同じ部位を測定したスキンコンダクタンス値を相対値で表わしたものである。
【0056】
【表6】
【0057】
表6及び図3の結果より、グリセリンと精製水を併用した比較例8(0%海洋深層水(EDミネラル水))の場合と比較して、また、海洋深層水(EDミネラル水)が全体の10%又は20%の比較例9〜10の場合と比較して、実施例6〜10に示すように、海洋深層水(EDミネラル水)濃度が高くなることで、保湿性が高くなることが明らかとなった。
ヒトの皮膚に塗布した場合に、保湿性を特に有意に感じることができるのは、実施例6〜10の海洋深層水(EDミネラル水)の含有量が30重量%以上の場合であり、海洋深層水(EDミネラル水)濃度が高いものとポリオールとを併用することで、保湿性効果が高まることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、海洋深層水(EDミネラル水)をポリオールと併用することにより、皮膚への保湿性を保持する性能が向上することにより、保湿性を付与する化粧品へ有効に適用することが可能となる。

図1
図2
図3