特許第6980429号(P6980429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980429
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】断熱パネル
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/08 20060101AFI20211202BHJP
   F25D 23/06 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   F25D23/08 S
   F25D23/06 303A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-125850(P2017-125850)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-7712(P2019-7712A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 透
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−031447(JP,A)
【文献】 特開昭62−284176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/08
F25D 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を保ちつつ対向配置された一対の表面板と、
前記一対の表面板の周縁部に配された枠材と、
前記一対の表面板及び前記枠材によって囲まれた内部空間に発泡充填された断熱材と、を備え、
前記枠材の表面には、前記枠材の延設方向に沿って延びる一対の突起部と、前記一対の突起部に挟まれた箇所に設けられる凹部と、が形成され、
前記凹部における一対の側面は、前記一対の突起部によってそれぞれ構成され、
前記一対の突起部のうち、少なくとも一方の突起部には、前記凹部の深さ方向について当該突起部を貫通するとともに、前記内部空間と外部とを連通する孔部が形成されており、
前記孔部における前記外部側の開口は、
前記一方の突起部における先端面から前記凹部に向かう前記側面に亘って設けられている断熱パネル。
【請求項2】
前記孔部は、
前記内部空間と連通される内部側通路と、
一端側において前記開口と連通されると共に、他端側において前記内部側通路と連通される外部側通路と、を有しており、
前記内部側通路と前記外部側通路との接続部分は、段差状をなす請求項1に記載の断熱パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の断熱パネルを相互に組み付けることで箱形をなすプレハブ式貯蔵庫が知られている。このようなプレハブ式貯蔵庫に使用されている断熱パネルは、間隔を隔てて対向配置された一対の表面板と、その周縁部に配された合成樹脂製の枠材とからなる外殻体の中空部に断熱材が発泡充填されることで形成されている。外殻体の中空部内に発泡性の断熱材を注入・充填する作業の際には、外郭体の中空部内の空気及び断熱材の発泡により発生するガスによって中空部内に断熱材が充填されない場合がある。そこで、このような断熱材の未充填箇所の発生を防ぐために、ガス抜き用の孔部を設ける構成が知られている(下記特許文献1参照)。特許文献1の構成では枠材の外面に、他の断熱パネルの凸部が嵌合される凹部が形成されている。上述したガス抜き用の孔部は、凹部の底面において、幅方向における中央部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−31447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のようなガス抜き用の孔部を有する構成では、断熱材が孔部を通じて枠材の外部にわずかに漏れ、固化する。このため、漏れた断熱材を除去する作業が必要となる。上記特許文献1のように、孔部が凹部の底面に形成されている構成では、孔部から漏れた断熱材は、孔部を中心として凹部の底面に広がる形で配されてしまい、凹部から断熱材を取り除く作業が困難となってしまう。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、孔部から漏れた断熱材を容易に除去することが可能な断熱パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の断熱パネルは、互いに間隔を保ちつつ対向配置された一対の表面板と、前記一対の表面板の周縁部に配された枠材と、前記一対の表面板及び前記枠材によって囲まれた内部空間に発泡充填された断熱材と、を備え、前記枠材の表面には、前記枠材の延設方向に沿って延びる凹部が形成され、前記凹部における一対の側面は、前記枠材の延設方向に沿って延びる一対の突起部によってそれぞれ構成され、前記一対の突起部のうち、少なくとも一方の突起部には、前記内部空間と前記凹部とを連通する孔部が形成されており、前記孔部における前記凹部側の開口は、前記一方の突起部における先端面と、前記一方の突起部における前記他方の突起部側の側面との接続部分に設けられていることに特徴を有する。上記構成によれば、断熱材を充填した際に、孔部の開口から漏れた断熱材が、凹部内において突起部の先端付近に配される。このため、漏れた断熱材が凹部の底面から漏れる場合と比較して、断熱材を容易に除去することができる。
【0007】
また、前記孔部は、前記内部空間と連通される内部側通路と、一端側において前記開口と連通されると共に、他端側において前記内部側通路と連通される外部側通路と、を有しており、前記内部側通路と前記外部側通路との接続部分は、段差状をなすものとすることができる。断熱材を充填した際に、断熱材は、内部側通路及び外部側通路を通って、内部空間から凹部側に流動する。内部側通路と外部側通路との接続部分が段差状をなす構成とすれば、直線状をなす構成と比べて、断熱材が通路内を流動し難くなるから、断熱材が外部に漏れる事態を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、孔部から漏れた断熱材を容易に除去することが可能な断熱パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る断熱パネルを用いて構成されたプレハブ式貯蔵庫を示す斜視図
図2】断熱パネルの正面図
図3】断熱パネルの縦断面図
図4】コーナ枠材を表側から視た斜視図
図5】コーナ枠材を裏側から視た斜視図
図6】コーナ枠材を第1壁部41側から視た平面図
図7】コーナ枠材及び発泡治具を示す断面図(図6のVII−VII線で切断した図に対応)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を図1から図7によって説明する。本実施形態に係るプレハブ式冷蔵庫の冷蔵庫本体10は、図1に示すように、複数の断熱パネル20を組み付けることで箱形に形成されている。冷蔵庫本体10の前面壁には出入口となる開口部が形成され、開口部には、これを開閉するスライド扉12が設けられている。断熱パネル20としては、例えば、ルーフパネル15とベースパネル(底面を形成、図示せず)、側面と前後面に配されるサイドパネル17及び周壁の四つ角に配されるコーナパネル19を例示することができる。
【0011】
断熱パネル20の構造について、サイドパネル17を例にして説明する。図2及び図3に示すように、断熱パネル20は、互いに間隔を保ちつつ対向配置された一対の表面板23,23と、表面板23の周縁部に配され、一対の表面板23,23と共に外殻体21を構成する枠材30と、一対の表面板23,23及び枠材30によって囲まれた内部空間27に発泡充填された断熱材25と、を備える。表面板23は、例えば金属板とされ、枠材30は、例えば硬質塩化ビニル等の合成樹脂成形品からなり、断熱材25は、発泡樹脂からなる。なお、断熱パネル20の形状は長方形状に限定されず適宜変更可能である。
【0012】
枠材30は、図2に示すように、直線状の外周枠材31と、隣り合う2つの外周枠材31,31の端部同士を連結するコーナ枠材40とからなっている。外周枠材31は、例えば、押出成形によって成形されており、全長に亘って、凹凸を有する断面形状(図3参照)をなしている。図3に示すように、表面板23の周端部は主面部に対して直角に曲げられており、外周枠材31に形成された差込溝33及び、コーナ枠材40に形成された差込溝40A(図4参照)に差し込まれている。また、外周枠材31の表面(断熱パネル20の側面)には、図3に示すように、一対の凸条部37,37によって構成された凹条部が設けられている。この凹条部に、隣接する断熱パネル20の凸条部(図示せず)が嵌合されることで、断熱パネル20同士が連結される。また、断熱パネル20の外殻体21には、断熱材25を注入するための注入孔(図示せず)が設けられている。
【0013】
次に、コーナ枠材40の構成について図2の左側のコーナ枠材40を例示して説明する。コーナ枠材40は、例えば射出成形によって成形されており、図4に示すように、平面視略L字形状に連結される第1壁部41と、第2壁部51と、を備える。また、第1壁部41の側端部と第2壁部51の側端部は、L字状をなす連結壁部40Bによって連結されている。第1壁部41の表面は、外周枠材31の表面と共に断熱パネル20の側面を構成するもので、外周枠材31側の端部が相対的に低い段差部42とされ、その段差部42に外周枠材31の端部が嵌合される。これにより、第1壁部41の表面と外周枠材31の表面とが面一をなす。なお、図4においては、外周枠材31を2点鎖線で概略的に図示している。第2壁部51の表面は、断熱パネル20の側面を構成するもので、外周枠材31側の端部が低い段差状をなす段差部52とされ、その段差部52に外周枠材31の端部が嵌合される。
【0014】
第1壁部41の表面には、一対の突起部43,43が設けられている。一対の突起部43,43は、第1壁部41と接続される外周枠材31の延設方向(枠材の延設方向)に沿って延び、この外周枠材31に設けられた一対の凸条部37,37(図3参照)に連なる構成とされる。第2壁部51の表面には、一対の突起部53,53が設けられている。一対の突起部53,53は、第2壁部51と接続される外周枠材31の延設方向(枠材の延設方向)に沿って延び、この外周枠材31に設けられた一対の凸条部(図示せず)に連なる構成とされる。突起部43及び突起部53は、L字状をなす形で連結されている。
【0015】
また、第1壁部41の表面には、第1壁部41と接続される外周枠材31の延設方向に沿って延びる凹部45(溝部)が形成されている。凹部45は、一対の突起部43,43に挟まれた箇所に設けられ、凹部45における一対の側面45A,45Aは、一対の突起部43,43によってそれぞれ構成されている。なお、側面45Aは、図4及び図7に示すように、凹部45の手前側(図7の上側)が奥側(底面45Bに近い側)に比べて低い段差状をなしている。また、第2壁部51の表面には、第2壁部51と接続される外周枠材31の延設方向に沿って延びる凹部55が形成されている。凹部55は、一対の突起部53,53に挟まれた箇所に設けられ、凹部55における一対の側面55A,55Aは、一対の突起部53,53によってそれぞれ構成されている。
【0016】
第1壁部41の突起部43には、図4に示すように、孔部46が形成されている。孔部46は、内部空間27に断熱材25が発泡充填される際に発生するガスを外部へ排出するためのガス抜き孔である。孔部46は、図7に示すように、第1壁部41を厚さ方向について貫通する形で形成されており、内部空間27と凹部45とを連通する構成とされる。孔部46は、内部側通路47及び外部側通路49と、を有する。内部側通路47は、内部空間27と連通される通路である(図5も参照)。外部側通路49は、その一端側(図7の上側)において、凹部45側に開口された開口48と連通される通路である。外部側通路49は、その他端側において内部側通路47と接続されており、外部側通路49と内部側通路47との接続部分50は、段差状をなしている。
【0017】
孔部46における凹部45側の開口48は、図4に示すように、突起部43における先端面43Aと、突起部43における側面45A(他方の突起部43側の側面)との接続部分43Dに設けられている。つまり、開口48は、先端面43Aと側面45Aの双方に亘って設けられている。また、図6に示すように、孔部46は平面視において長方形状をなしており、一対の孔部46,46が、コーナ枠材40の幅方向(図6の左右方向、断熱パネル20の厚さ方向)に並ぶ形で配されている。また、孔部46は、突起部43において段差部42寄りの箇所に形成されている。
【0018】
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、外殻体21を組み立てた後、発泡治具で外殻体21を保持し、外殻体21の内部空間27に断熱材25の原料液を注入する。図7では、コーナ枠材40を保持する押え治具60を図示している。なお、図7では、表面板23を図示省略してある。押え治具60には、コーナ枠材40を保持するための保持凹部61が形成されている。押え治具60にセットされた状態では、コーナ枠材40の凹部45の開口部が、保持凹部61の底面によって覆われるものの、凹部45には空間が確保されている。断熱材25の原料液が発泡充填する際には、内部空間27内の空気(もしくは、発泡前に気体を充填している場合にはその気体)及び発泡に伴って発生したガスが、孔部46から凹部45に排出される。また、発泡した断熱材25の一部25Aは、孔部46から外部に漏れる場合がある。
【0019】
図7に示すように、本実施形態では、孔部46の開口48が突起部43の先端面43Aから側面45Aに亘って設けられている。このような構成とすれば、断熱材25を充填した際に、孔部46の開口48から漏れた断熱材25の一部25Aは、開口48から保持凹部61の底面側に向かう形で延び、固化する。つまり、断熱材25の一部25Aが凹部45の底面45Bから遠ざかる方向に向かい易くなる。これにより、断熱材25の一部25Aが、凹部45内において突起部43の先端付近に配される。このため、漏れた断熱材25が凹部45の底面45Bから漏れる場合と比較して、断熱材25を容易に除去することができる。なお、固化された断熱材25の一部25Aは、図7に示すように開口48から延びる形状をなすため、比較的小さい外力によって、その根元から折ることができ、容易に除去することができる。
【0020】
また、孔部46は、内部側通路47及び外部側通路49を有し、内部側通路47及び外部側通路49は段差状をなす形で連結されている。このようにすれば、断熱材25を充填した際に、断熱材25は、内部側通路47及び外部側通路49を通って、内部空間27から凹部45側に流動する。内部側通路47と外部側通路49とが段差状をなす構成とすれば、直線状をなす構成と比べて、断熱材25が通路内を流動し難くなるから、断熱材25が外部に漏れる事態を抑制できる。
【0021】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0022】
(1)上記実施形態では、断熱パネルとして、プレハブ式冷蔵庫に用いるものを例示したが、これに限定されない。断熱パネルは、例えば、プレハブ式冷蔵庫以外のプレハブ式貯蔵庫(冷凍庫、恒温高湿庫、クリーンルームなど)に用いることができる。
(2)上記実施形態では、ガス抜き用の孔部46がコーナ枠材40に形成されている構成を例示したが、これに限定されない。例えば、孔部46が外周枠材31に形成されていてもよい。
(3)上記実施形態では、一対の突起部43,43の各々に孔部46が形成されている構成を例示したが、孔部46は一方の突起部43のみに設けられていてもよい。
(4)上記実施形態において、内部側通路47と外部側通路49の接続部分50は段差状をなしていなくてもよく、例えば、直線状をなしていてもよい。
【符号の説明】
【0023】
20…断熱パネル、23…表面板、25…断熱材、27…内部空間、30…枠材、43…突起部、43A…突起部における先端面、43D…接続部分、45…凹部、45A…側面(凹部における側面)、46…孔部、47…内部側通路、48…孔部における凹部側の開口、49…外部側通路、50…接続部分(内部側通路と外部側通路との接続部分)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7