特許第6980467号(P6980467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980467球状シリカフィラー用粉末及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980467
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】球状シリカフィラー用粉末及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20211202BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C01B33/18 Z
   C08L101/00
   C08K3/36
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-175588(P2017-175588)
(22)【出願日】2017年9月13日
(65)【公開番号】特開2019-52051(P2019-52051A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡部 拓人
(72)【発明者】
【氏名】野上 直嗣
(72)【発明者】
【氏名】深澤 元晴
【審査官】 佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−172433(JP,A)
【文献】 特開2011−144360(JP,A)
【文献】 特開2004−131372(JP,A)
【文献】 樋口昌史 ほか,Journal of the Ceramic Society of Japan,Vol.105,日本,1997年,pp.385-390,<DOI: 10.2109/jcersj.105.385>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 33/193
C08K 3/36
C08L 101/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均円形度が0.80以上であり、且つ、キータイト相を80質量%以上含むことを特徴とする、球状シリカフィラー用粉末。
【請求項2】
セラミックスガラスまたは樹脂中に配合して使用されることを特徴とする請求項1に記載の球状シリカフィラー用粉末
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラーとして、セラミックスガラスや樹脂材料に配合する際の流動性や充填性を高める目的で球状化した球状シリカフィラー用粉末に関する。本発明は、例えば、セラミックスガラスやプラスチック、ゴム等の材料中に配合して使用されることを特徴とする球状シリカフィラー用粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、セラミックスガラスや樹脂材料等の物性や機能等を向上させることを目的として、様々なフィラーが使用されている。キータイトは、シリカの結晶構造の1つであり、高温・高圧・高水蒸気圧下での存在が確認されている[非特許文献1、2]。また、キータイトの屈折率は1.52、熱膨張率は−1ppm/K(0℃〜500℃)であり、広く使用されているフィラーの1つである非晶質シリカとは異なった特徴を有している。このため、セラミックスガラスや樹脂材料等の熱膨脹率や屈折率等を制御するために、フィラーとして多くの用途に使用されることが期待されている。
【0003】
しかしながら、キータイトは、フィラーとしては一般的ではない。キータイトは、石英やクリストバライトのような一般的な結晶相では無く、安価に合成することが困難であり、フィラーとしての適用例はほとんどない。
【0004】
フィラーとしてより好適に使用するためには、セラミックスガラスや樹脂への充填性や加工性、溶融流動性を向上させる必要があり、キータイトの場合も球状で適当な粒度分布を持ち、且つ、凝集が少ないことが求められている。例えば、特許文献1では、合成樹脂に熱膨張係数の小さな無機充填材として、キータイトを20質量%充填しているが、キータイト粒子の充填率は低く、熱膨張低減効果は不十分であった。また、キータイト以外のフィラーも充填されており、熱膨張低減効果がキータイトによるものとはいいがたい。
【0005】
キータイトの合成方法としては種々の方法が開示されている。
【0006】
キータイトは、主に高温・高圧・高水蒸気圧下で合成されている。例えば、非特許文献1には、温度が380〜585℃の間で圧力が34〜124MPaの条件下で水熱結晶化に合成されることが例示されている。また、非特許文献2には、温度が300℃で圧力が1〜3kbarで処理時間が50時間以下の水熱処理により合成されることが例示されている。このような水熱法による合成では、高温・高圧に耐える容器が必要となり、安価に合成することは困難である。
【0007】
高温・高圧・高水蒸気圧下での水熱合成法以外の方法も提案されている。例えば、非特許文献3では、金属アルコキシドの加水分解により調整したサブミクロンの球状シリカに、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム)を0.5〜7質量%(酸化物換算)をメノウ乳鉢にて混合し、ラバーブレス法にて100MPaで成形した成形物を700〜800℃で6時間焼成することでキータイトが合成されることが例示されている。しかしながら、この方法ではキータイトは焼結体として得られるため、セラミックスガラスや樹脂等に混合可能な球状粒子として得ることは困難である。また、キータイト相の割合や得られた粒子の平均円形度、樹脂に充填時の効果が明記されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平7−39146号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】British Ceramic Transaction Journal 83(5),129 (1984)
【非特許文献2】Contributions to Mineralogy and Petrology 53,25 (1975)
【非特許文献3】Journal of the Ceramic Society of Japan 105(5),385 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、セラミックスガラスや樹脂に充填した場合に、低粘度・高流動性を有し、高充填することが可能なため、熱膨脹率を制御しやすい球状シリカフィラー用粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)平均円形度が0.80以上であり、且つ、キータイト相を80%以上含むことを特徴とする、球状シリカフィラー用粉末。
)セラミックスガラスまたは樹脂中に配合して使用されることを特徴とする(1)に記載の球状シリカフィラー用粉末
【発明の効果】
【0012】
本発明者によれば、セラミックスガラスや樹脂材料に充填した場合に、低粘度・高流動性を有する球状シリカフィラー用粉末を提供することができる。また、キータイト相含有率が高いため、セラミックスガラスや樹脂に充填した際に熱膨脹率制御効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は実施例1で得られた球状シリカフィラー用粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
図2図2は実施例1で得られた球状シリカフィラー用粉末のX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の球状シリカフィラー用粉末は、平均円形度が0.80以上であり、好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.90以上である。平均円形度が0.80未満であると、ガラスや樹脂と混合した際の粒子の転がり抵抗が大きくなり、流動性が低下する。また、本発明の球状シリカフィラー用粉末には、キータイト相が80質量%以上含まれる。キータイト相の含有率が80質量%未満であると、熱膨張率の低減効果が不十分となる。
【0015】
本発明の球状シリカフィラー用粉末の平均粒子径は、特に規定されないが、フィラーとして使用されることを考慮すると、0.05μmから100μmであることが好ましく、0.2μmから50μmが特に好ましい。
【0016】
本発明の原料である球状非晶質シリカ粒子は、平均円形度が0.80以上であり、好ましくは、好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.90以上である。球状非晶質シリカ粒子の平均円形度が0.80未満であると、得られる球状キータイトの平均円形度が0.80未満となり、樹脂と混合した際の粒子の転がり抵抗が大きくなり、流動性が低下する。
【0017】
本発明の球状シリカフィラー用粉末の製造方法は、加熱結晶化法が用いられる。
【0018】
加熱結晶化法は、原料粉末を高温で加熱して結晶化させる方法である。高温が得られればどの様な加熱装置を使用しても良いが、例えば、電気炉、ロータリーキルン、プッシャー炉、ローラーハースキルンなどが用いられる。
【0019】
原料球状非晶質シリカ粒子を加熱する温度は650〜725℃が好ましい。加熱温度が650℃未満であると、結晶化に時間を要するし、また、結晶化が不十分となりキータイト相の比率が低くなり、熱膨張低減効果が不十分となる。加熱温度が725℃を超えると、キータイト以外の結晶相、例えば石英等が生成するため、熱膨張低減効果が不十分となる。また、加熱時間は3〜20時間が好ましい。加熱時間が3時間未満であると、キータイトへの結晶化が不十分となり、熱膨張低減効果が不十分となる。また、加熱時間が20時間を超えると、経済的では無く、キータイト以外の結晶相である石英等が生成するため、熱膨張低減効果が不十分となる。
【0020】
加熱結晶化法で得られたキータイト相を含有するシリカの凝集体を解砕することで、粉末状とする。解砕方法は特に規定されないが、メノウ乳鉢、ボールミル、振動ミル、ジェットミル、湿式ジェットミルなどが使用される。解砕は乾式で解砕してもよいが、水やアルコール等の液体と混合して湿式で解砕してもよい。解砕前あるいは解砕後に水やアルコール類で洗浄することで、添加したリチウム化合物を除去することができる。洗浄後に乾燥することで粉末の球状キータイトが得られる。乾燥方法は特に規定しないが、加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、超臨界二酸化炭素乾燥などが挙げられる。
【0021】
リチウム化合物と原料である球状非晶質シリカの混合方法は特に規定しないが、メノウ乳鉢やボールミル、振動ミル等の粉砕機、各種ミキサー類が挙げられる。混合の際には、リチウム化合物と原料の球状非晶質シリカを粉体のまま混合しても良いし、水やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類等の有機溶剤と混合しても良い。なかでも、均一混合しやすいことから、水や有機溶媒にリチウム化合物を溶解させ、原料である球状非晶質シリカと湿式混合することが特に好ましい。
【0022】
リチウム化合物の添加量は酸化リチウム換算で0.01質量%から10質量%が好適である。0.01質量%未満であると、キータイトへの結晶化速度が遅く、結晶化に長時間を要し、また、結晶化が不十分であるため、セラミックスガラスや樹脂の物性制御効果、例えば熱膨張率低減効果が不十分となる。10質量%を超えると、得られるキータイト粒子が融着しやすくなり、平均円形度の高い球状粒子が得られなくなるため、セラミックスガラスや樹脂材料等に充填しにくくなる。さらに、キータイト以外の結晶相である石英等も生成するため、セラミックスガラスや樹脂の物性制御効果、例えば熱膨張率低減効果が不十分となる。
【0023】
加熱結晶化の際に、キータイトへの結晶化を促す助剤として、リチウム化合物を添加する。リチウム化合物としては、リチウム元素が含まれていれば特に規定しないが、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム等の無機塩類、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、クエン酸リチウム等の有機酸塩類、オクチル酸リチウム、ステアリン酸リチウム等の金属石けん類、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム類などが挙げられる。なかでも、水や有機溶媒に溶解させながら湿式混合により均一混合が可能であり、加熱後に不純物が残留しにくい点から、水酸化リチウムまたは酸化リチウムが特に好ましい。
【0024】
原料粉末である球状非晶質シリカは、ゾルゲル法や水ガラス法などの湿式合成法によって得られたものであれば特に規定しない。ゾルゲル法の合成条件は特に規定しないが、メタノール、エタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール等のアルコール類などの一般的に使用されている溶媒が使用される。シリカ源としては、テトラエトキシシランやテトラメトキシシランなどのアルコキシシラン類が用いられる。触媒には、アンモニア、メチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の塩基性触媒、酢酸、塩酸、硫酸等の酸性触媒が使用される。アルコキシシランを加水分解させるため、水も添加される。球状非晶質シリカの粒径は添加するアルコキシシラン類の量により調整できる。小粒径の球状非晶質粒子はアルコキシシランの添加量を少なくし、大粒径の球状非晶質粒子はアルコキシシランの添加量を多くすることで調整できる。大粒形を得るためには、アルコキシシランを一度に添加するのではなく、徐々に添加する、あるいは、数回に分けて添加することで球状粒子が得られる。アルコキシシランを一度に多量に添加すると、凝集粒子が生成するため、球状粒子が得られにくくなる。触媒としてはアンモニアが好適であり、溶液のpHは8〜12が好適である。また、水の添加量は1〜30質量%が好適である。また、水ガラス(珪酸ナトリウム)の水溶液に塩酸や硫酸などの酸を添加することでも球状非晶質シリカが得られるが、不純物の残留量の少ないゾルゲル法により得られる球状非晶質シリカが好ましい。
【0025】
湿式合法で得られた球状非晶質シリカを乾燥することで、粉末状とする。乾燥方法は特に規定しないが、加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、超臨界二酸化炭素乾燥などが挙げられる。また、乾燥前に濃縮することで、効率よく乾燥することができる。燥濃縮方法として、ろ過や遠心分離が上げられる。球状非晶質シリカの凝集を抑制するため、ろ過などで濃縮後、エタノール等で残留している触媒やアルコキシシラン類を洗浄除去し、乾燥することが好ましい。
【0026】
本発明で得られた球状シリカフィラー用粉末は、平均円形度が高いため、極めて流動性が良く、樹脂に充填する際に極めて良好な成形性を示し、又、充填率を高めることができる。得られた球状粒子は、必要に応じて、所望の平均粒子径が得られるよう分級したり、表面処理を施すことによって、更に充填率を上げることができる。表面処理剤としては、一般にシランカップリング剤が用いられるが、他にチタネートカップリング剤またはアルミネート系カップリング剤も用いることができる。
【0027】
本発明の球状シリカフィラー用粉末は、例えば、ガラス中に配合して使用される。ガラスの種類としては、例えば、PbO−B −ZnO系、PbO−B−Bi系、PbO−V−TeO 系、SiO−ZnO−RO系(ROはアルカリ金属酸化物)、SiO−B−RO系、SiO−B−RO系(ROはアルカリ土類金属酸化物)等の組成を有するガラスが挙げられる。
【0028】
本発明の球状シリカフィラー用粉末は、例えば、樹脂中に配合して使用される。樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂等が挙げられる。
【0029】
ガラスや樹脂中における球状シリカフィラー用粉末の割合は、目標とする熱膨脹率等の物性に応じて適宜選択される。例えば、樹脂の使用量は、キータイト相含有球状シリカ100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは10〜50質量部の範囲で適宜選択される。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
(球状非晶質シリカの合成)
エタノール:528g、水:48g、アンモニア水(28質量%):122gの混合溶液にテトラエトキシシラン:21gを添加し、撹拌しながら室温で3時間反応させた。遠心沈降とエタノール洗浄を3回繰り返した後、乾燥させた。走査型電子顕微鏡で球状粒子の生成を確認し、粉末X線回折にて非晶質であることを確認した。また、平均円形度は0.97、平均粒子径は0.4μmであった。
【0032】
(球状シリカフィラー用粉末の合成)
球状非晶質シリカ:1gに、エタノール:10gに溶解させた水酸化リチウム:14.1mg(酸化リチウムとして5.0mg)を添加し、メノウ乳鉢にて1時間混合した。電気炉にて675℃で5時間加熱し、冷却後にメノウ乳鉢にて解砕した。走査型電子顕微鏡にて球状粒子の生成を確認した(図1参照)。粉末X線回折にてキータイトが生成していることを確認した(図2参照)。平均円形度は0.91、平均粒子径は0.3μmであった。
【0033】
実施例及び比較例にて作製した粒子組成物の特性を、以下の方法で評価した。
【0034】
[キータイト相の同定及び定量]
キータイト相の同定及び定量は、粉末X線回折測定およびリートベルト法によりおこなった。使用装置は、リガク社製 RINT−UltimaIV、X線源はCuKα、管電圧40kV、管電流40mA、スキャン速度5.0°/min、2θスキャン範囲10°〜80°の条件で測定した。定量分析は、リートベルト法ソフトウェア(リガク社製、統合粉末X線ソフトウェアPDXL)を使用した。キータイト相の含有率は、内標準物質として NIST製X線回折用標準試料α−アルミナ50質量%を各試料に添加し、キータイト相の含有率を測定した。結果を表1、2に示す。
【0035】
[平均円形度]
試料をカーボンテープで試料台に固定後、オスミウムコーティングを行い、日本電子社製走査型電子顕微鏡「JSM−7001F SHL」で撮影した倍率10万倍、解像度2048×1356ピクセルの画像をパソコンに取り込んだ。この画像を、マウンテック社製画像解析装置「MacView Ver.4」を使用し、簡単取り込みツールを用いて粒子を認識させ、粒子の投影面積(S)と粒子の投影周囲長(L)を算出し、式(1)より円形度を測定した。撮影した粒子が、複数の一次粒子が凝集して二次粒子となっている形状の場合、二次粒子を単一の粒子とみなし、投影面積(S)は二次粒子全体の面積、周囲長(L)は、二次粒子の界面に沿って測定した長さとする。このようにして得られた任意の投影面積円相当径50nm以上の粒子100個の円形度を求め、その平均値を平均円形度とした。
円形度=4πS/L (1)
【0036】
[密度]
実施例1で得られた粉末5gを測定用試料セルに入れ、乾式密度計(島津製作所社製「アキュピックII1340」)を用い、気体置換法により測定した。
【0037】
[平均粒子径]
ベックマンコールター製「レーザー回折式粒度分布測定装置LS 13 320」を用いて測定を行った。試料はガラスビーカーに50ccの純水と、実施例1で得られた粉末0.1g添加して、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製「SFX250」)で1分間、分散処理を行った。分散処理を行った球状シリカフィラー用粉末の分散液をスポイトでレーザー回折式粒度分布測定装置に一滴ずつ添加し、所定量添加してから30秒後に測定を行った。レーザー回折式粒度分布測定装置内のセンサで検出した粒子による回折/散乱光の光強度分布のデータから粒度分布を計算した。平均粒子径は測定される粒子径の値に相対粒子量(差分%)を乗じて、相対粒子量の合計(100%)で割って求めた。ここでの%は体積%である。
【0038】
[粘度]
実施例1で得られた粉末が全体の50体積%になるように、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学社製「JER828」)と混合し、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR−250」、回転数2000rpm)にて混練し、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物を、レオメーター(日本シイベルヘグナー社製「MCR−300」)を用い下記条件にて粘度を測定した。
プレート形状:円形平板25mmφ
試料厚み:1mm
温度:25±1℃
剪断速度:1s−1
【0039】
[熱膨張係数]
実施例1で得られた粉末が全体の50体積%になるように、低融点ガラス(旭硝子社製「TNS062」、熱膨張係数:13ppm/K)と混合して溶融・成型した後、TMA(ブルカー社製「DIL402C」)にて熱膨張率を評価した。昇温条件は、5℃/min、測定温度は−10℃〜280℃、雰囲気は、ヘリウム雰囲気で測定し、得られた結果から0℃〜100℃の熱膨張係数を算出した。
【0040】
実施例2−5、比較例1−6
実施例1で得られた球状非晶質シリカを、表1、2に示す加熱温度、加熱時間で処理した以外は実施例1と同様に行った。
【0041】
実施例6
実施例1で得られた球状非晶質シリカを、球状非晶質シリカ1gに炭酸リチウム12.3mg(酸化リチウムとして5.0mg)を添加し、メノウ乳鉢にて1時間混合した以外は、実施例1と同様に行った。
【0042】
比較例7
実施例1で得られた球状非晶質シリカを比較例7とし、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0043】
比較例8
水:48g、アンモニア水(28質量%):122gの混合溶液にテトラエトキシシラン:21gを添加し、撹拌せず室温で1日反応させた。遠心沈降とエタノール洗浄を3回繰り返した後、得られた凝集物を乳鉢で湿式解砕し、スギノマシン社製高圧ホモジナイザー(湿式微粒化装置「スターバーストミニ」)を用いて、微粉化処理を行い、得られた分散溶液を、遠心沈降・乾燥させ、粉末を得た。走査型電子顕微鏡で破砕形状粒子の生成を確認し、粉末X線回折にて非晶質であることを確認した。また、平均円形度は0.78、平均粒子径は0.5μmであった。得られた非晶質シリカを実施例1と同様に加熱処理及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0044】
【表1】


【0045】
【表2】


【0046】
本発明の球状シリカフィラー用粉末を含有する樹脂組成物は、平均円形度が小さい球状シリカフィラー用粉末を含有する樹脂組成物と比較して、粘度が低く抑えられ、高充填できるという結果になった。また、本発明の球状シリカフィラーを含有するガラス組成物は、キータイト含有率が小さい球状シリカフィラー用粉末を含有するガラス組成物と比較して、熱膨脹率が低く抑えられるという結果になった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の球状シリカフィラー用粉末は、セラミックスガラスや樹脂に充填した場合に、低粘度・高流動性を有し、高充填することが可能であり、キータイト相含有率が高いため、熱膨脹率を制御しやすいフィラーとして利用可能である。
図1
図2