(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0012】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
[第1実施形態]
本実施形態では、インクカートリッジが装填される印刷装置が、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから異なる色のインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の用紙に画像を形成するインクジェット方式のラインカラープリンタである場合を例に説明する。
【0014】
図1(a)〜(c)に示す印刷装置100は、インクカートリッジ1が装填されるインクジェット方式のラインカラープリンタである。印刷装置100は、用紙の搬送方向に沿って並べて配置された4つのインクヘッド(図示せず)を有する。4つのインクヘッドは、それぞれ異なる色のインクを吐出し、各色の画像を互いに重ね合わせてカラー画像を形成する。
【0015】
なお、インクカートリッジ1を印刷装置100に対して水平に着脱する方向を「着脱方向A」とする。そして、インクカートリッジ1を印刷装置100に挿入して装填させる方向を「装填方向A1」、インクカートリッジ1を印刷装置100から離脱させ取り外す方向を「離脱方向A2」とする。装填方向A1は、インクカートリッジ1に充填されたインクが印刷装置100に流出する方向(以下、「インク流出方向B」という)と同方向となり、後述するインク容器2を外装体4に収容する際に挿入する方向は、離脱方向A2と同方向となる。
【0016】
印刷装置100には、演算処理装置101が備えられており、この演算処理装置101が、上述したインクヘッドによる印刷処理や、搬送機構の駆動制御の他、インクカートリッジからのインク供給に関する制御も行う。
【0017】
演算処理装置101は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、およびその他の電子回路等のハードウェア、あるいはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、またはこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールである。演算処理装置101は、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザ操作に対する種々の処理を行う。また、演算処理装置101には、操作パネル102が接続されており、この操作パネル102を通じて、ユーザによる指示や設定操作を受け付けることができる。
【0018】
図1(a),(c)に示すように、印刷装置100の、装置本体100aの上部には、インクカートリッジ1が取付けられるカートリッジ取付機構103が設けられている。カートリッジ取付機構103は、4つのインクヘッドに1つずつ対応して、合計4つ設けられている。
【0019】
また、カートリッジ取付機構103の上方を覆うように上面装置104が配設されている。インクカートリッジ1の装填は、この上面装置104の下面と装置本体100aの上面との間に水平方向(装填方向A1)に挿入することにより行われる。この上面装置104には、例えば、ADF(Auto Document Feeder)にセットした原稿を搬送に伴い光学的に読み取ってデジタルデータ化する画像読取装置(スキャナ)や、上述の操作パネル102が配設される。
【0020】
また、カートリッジ取付機構103には、インクカートリッジ1を印刷装置100に装填した際に、後述するインクカートリッジ1の供給口部11と嵌合するホルダ部111が設けられている。
【0021】
次に、インクカートリッジ1の構成について説明する。
【0022】
図2に示すように、インクカートリッジ1は、インク容器2と、インク供給部3と、外装体4と、係合部5とを備える。
【0023】
インク容器2は、インクを収納する袋体である。本実施の形態のインク容器2は、長方形状の熱可塑性フィルムを2枚重ね、長手方向(請求項の一方向に相当)の一端にインク供給部3を介在させた状態で、その周囲を熱溶着により接合して袋状に形成されている。インク容器2を、外装体4の開口部から挿入し、インク供給部3が組み付けられた係合部5を外装体4の開口部に嵌合することで、インクカートリッジ1が組み立てられる。
【0024】
インク容器2には、シリコーンオイルを含む油性インクが収納されている。具体的には、インク容器2に収納される油性インクは、主として非水系溶剤と色材とから構成され、非水系溶剤としてシリコーンオイルを含む。シリコーンオイルは、非水系溶剤の15〜100質量%の範囲で含有されることが好ましい。非水系溶剤には、シリコーンオイル以外に、石油系炭化水素溶剤、脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤等が含まれていてもよい。
【0025】
また、インク容器2に収納される油性インクの色材としては、顔料および染料のいずれも使用することができ、単独で使用しても両者を併用してもよい。また、インク容器2に収納される油性インクは、顔料分散剤、防腐剤、酸化防止剤、界面活性剤等を含んでいてもよい。
【0026】
インク供給部3は、インクカートリッジ1が印刷措置100に装填された際に、インク容器2内のインクを印刷装置100に供給するためのものである。インク供給部3は、インク容器2の装填方向A1側の端に取り付けられている。
【0027】
なお、インク供給部3との名称は、印刷装置100で使用する際に、この部分を通して印刷装置100にインクが供給されることから名付けられたものであるが、後述するように、インク充填装置30のインク供給接続部38にインクカートリッジ1を接続すれば、このインク供給部3を介して、逆にインク容器2内にインクを注入、充填することもできる。
【0028】
図3〜
図5に示すように、インク供給部3は、インク容器2の内部と外部とを連通させる供給口部11を備えている。供給口部11には、印刷装置100のホルダ部111および後述するインク充填装置30のインク供給接続部38と嵌合する供給口側ジョイント部13と、供給口側ジョイント部13の周囲を取り囲む円環状の凹部14とが設けられている。供給口側ジョイント部13は、中空円柱状に形成され、先端に開口部13aが形成されている。この開口部13aを介して、インク容器2の内部と外部とが連通される。供給口部11は、開口部13aが装填方向A1に向けられた状態で係合部5と係合している。
【0029】
また、供給口部11には、開口部13aを開放または閉止する中栓15と、中栓15をインク流出方向Bに付勢して開口部13aを閉止させる付勢部材(請求項の付勢手段に相当)16と、インクカートリッジ1の着脱に伴う中栓15の摺動を着脱方向Aに沿ってガイドする被覆部材17とが組み込まれている。
【0030】
また、インク供給部3は、インク容器2の熱可塑性フィルムに熱溶着された連通管19を有している。連通管19は筒状の部材であり、インク容器2の内外を連通している。
【0031】
そして、中栓15等が組み込まれた供給口部11を、連通管19の開口部に挿入して液密状態で嵌着することにより、供給口部11とインク容器2は一体化されている。このような構造によれば、中栓15による開口部13aの開閉により、インク容器2の内部と外部とを連通させ、または遮断することができる。
【0032】
中栓15は、先端が開口部13aを塞いでインク容器2の内部と外部との連通を閉止する栓部15aと、栓部15aの後端側(離脱方向A2側)から延設される軸部15bと、栓部15aの先端に設けられ、印刷装置100のホルダ部111の押圧部(図示せず)および後述するインク充填装置30の押圧部44と係合する係合受け部15cと、栓部15aの周囲に嵌め込まれ、開口部13aを閉止した際に栓部15aと供給口側ジョイント部13との間の間隙を埋めるOリング15dとを有する。
【0033】
中栓15は、付勢部材16の付勢力によって栓部15aの先端側の面が供給口側ジョイント部13の先端部の内側の面に当接して開口部13aを閉止する。また、Oリング15dが栓部15aと供給口側ジョイント部13との間の間隙を埋める。これにより、インク容器2の内部と外部との連通が遮断され、インクは外部に流出しない。
【0034】
付勢部材16は、バネやゴムなどの弾性体で構成され、栓部15aの後端側から開口部13aを閉止する方向(すなわち、装填方向A1)に付勢する。本実施の形態では、付勢部材16としてバネを使用している。
【0035】
被覆部材17は、付勢部材16を支持する支持部17aと、支持部17aから延設された略円筒形状の被覆部17bとで構成されている。被覆部材17は、支持部17aで付勢部材16を支持するとともに、中栓15の軸部15bが供給口部11から露出している部分をすべて覆い隠すように長さが設定されている。すなわち、
図4、
図6に示すように栓部15aが開口部13aを閉止している状態でも、
図7に示すように栓部15aが押圧部116に押し込まれて開口部13aが開放されている状態でも、中栓15の軸部15bは被覆部材17によって覆い隠されている。
【0036】
このように、被覆部17bは、中栓15の摺動の有無に拘わらず、供給口部11から露出した軸部15bをすべて覆うような長さとされているため、例えばインク残量が少なくなりインク容器2が萎んだときであっても、軸部15bの端部とインク容器2の内面とが接触することがない。これにより、中栓15によってインク容器2が損傷する危険性がなくなるため、ユーザは取り扱いを注意することなくインクカートリッジ1を使用することができる。
【0037】
また、
図4に示すように、被覆部17bの中央から装填方向A1側は、軸部15bとの間隙を可能な限り狭めた内径(案内用内径)とされている。これにより、軸部15bは、インクカートリッジ1の着脱時に着脱方向Aに沿って正しい姿勢で摺動できる。さらに、被覆部17bの中央から離脱方向A2側は、軸部15bとの間隙がより広くなるような内径とされている。
【0038】
案内用内径を加工するには高い精度が求められるため、製造コストが嵩むという問題があるが、本実施形態では、被覆部17bにおいて、案内用内径が不要な部分は案内用内径よりも所定径だけ大きくし、案内用内径となる部分を不必要に成形しないことで製造コストを抑制している。
【0039】
上述の構成を備えたインクカートリッジ1によれば、
図4、
図6に示すように、供給口部11が印刷装置100のホルダ部111または後述するインク充填装置30のインク供給接続部38に接続される前は、付勢部材16の付勢力により栓部15aが開口部13aに向けて押圧されるため、開口部13aが塞がれるとともにOリング15dにより栓部15aと供給口側ジョイント部13との間の間隙が埋まり、供給口側ジョイント部13が閉止されてインクが通過できない状態となる。
【0040】
これとは逆に、詳細は後述するが、
図7に示すように、中栓15が付勢部材16の付勢力と逆方向の押圧力を受けてインク容器2内に向けて摺動すると、開口部13aが開放されてインク容器2の内部と外部とが連通する。このとき、インクカートリッジ1が印刷装置100に装填されているのであれば、インク流出方向Bに沿って、インクカートリッジ1からインクを印刷装置100に供給することができる。また、このとき、インクカートリッジ1がインク充填装置30に装填されているのであれば、インクカートリッジ1のインク容器2内にインクを充填することができる。
【0041】
なお、供給口側ジョイント部13の先端には、インクカートリッジ1を印刷装置100またはインク充填装置30に装填したときに、印刷装置100またはインク充填装置30の接続部分と、開口部13aとの間に僅かな隙間を設け、インクの流出量または流入量を一定量に適正化させるため、突起部13bが設けられている。本実施形態では、
図3に示すように、開口部13aの周囲に、3つの突起部13bが略等角度間隔をおいて設けられている。
【0042】
外装体4は、紙製(例えば、段ボール)のシート部材に設定された折り辺を折り曲げて糊代部分を貼り合わせることにより、長手方向における一端が開口され、他端が閉止された、有底の中空直方体をなす箱状に組み立てられている。
【0043】
外装体4の開口部(カートリッジ装填時における印刷装置100側の開口部)には、印刷装置100側のカートリッジ取付機構103に係合される係合部5が嵌め込まれ、印刷装置100のカートリッジ取付機構103との突当面となっている。
【0044】
係合部5は、樹脂、金属などの硬質材料で形成され、インクカートリッジ1を印刷装置100に装填した際に、カートリッジ取付機構103と係合される着脱機構として機能する。係合部5は、外装体4の開口部と嵌合するため、その開口部の寸法と略同等の大きさで成形されている。
【0045】
図2、
図3に示すように、係合部5は、外装体4の開口部に嵌合した後、裏面に粘着性を有するシール状のラベル21(例えばフィルム法合成紙のように合成樹脂を主成分とする合成紙の裏面に接着剤を塗布したシート物)で貼り付け固定される。ラベル21は、外装体4に係合部5を嵌合させた状態で、外装体4の側面から、係合部5を経て、反対側の側面に渡って巻き回されることにより、係合部5を外装体4に組み付け固定している。
【0046】
次に、インク充填装置30の構成について説明する。
【0047】
図5に示すインク充填装置30は、インクカートリッジ1にインクを充填する装置である。
【0048】
なお、インク充填装置30の説明において、
図5に矢印で示す上下左右を上下左右方向とする。
図5における上下方向は、鉛直方向に平行である。
【0049】
図5に示すように、インク充填装置30は、インクカートリッジ1から外装体4および係合部5が取り外された状態の、インク供給部3が取り付けられたインク容器2が設置される設置部31を備えている。
【0050】
設置部31は、土台部32と、土台部32に立設された複数の支柱33と、支柱の上端に設けられた天井部34とを備える。開口部13aを上向きにして天井部34にインク供給部3が取り付けられることで、インク容器2が天井部34に吊り下げられた状態で設置される。
【0051】
また、設置部31は、上下方向に延びるガイドレール35と、ガイドレール35に沿って昇降可能なスライダ36と、インク容器2を挟持する挟持部材37とを備える。ガイドレール35は、天井部34に吊り下げられたインク容器2の側方(
図5の例では左方)の位置に配置されている。挟持部材37は、インク容器2の短手方向(左右方向)においてインク容器2の全体を挟むことができるように構成されている。挟持部材37は、インク容器2を挟持した位置より下方へのインクの落下を抑えるストッパとしての機能を有する。挟持部材37は、図示しないモータ等により、インク容器2の挟持動作を行うことができる。挟持部材37は、スライダ36に固定されており、インク容器2を挟持した状態で、インク容器2に対して挟持位置をずらしつつ、スライダ36とともに下降可能に構成されている。スライダ36は、図示しないモータの駆動力により昇降可能に構成されている。
【0052】
また、インク充填装置30は、インク供給部3に接続されるインク供給接続部38を備える。
図6、
図7に示すように、インク供給接続部38は、インク供給部3に接続される充填装置側ジョイント部39を備えている。
【0053】
充填装置側ジョイント部39は、概ね外形円柱状の部材であって、その下端部には、供給口側ジョイント部13と嵌合する円環状の凸部40が形成されている。凸部40の内方は凹部41となっている。
【0054】
凹部41の開口付近の内周面にはインク漏洩防止用のOリング42が設けられている。凹部41にはインク流路43が連通しており、このインク流路43は後述する切替弁51に接続されている。また、凹部41の中心には、棒状の押圧部44が下方に向けて設けられている。押圧部44の先端(下端)は、中栓15の係合受け部15cに係合するように尖った形状になっている。この押圧部44には、環状の受け板45が摺動可能に挿通しており、受け板45と押圧部44の基部との間には弾性部材46が介装されている。本実施の形態では、弾性部材46としてバネを使用している。
【0055】
図5に示すように、インク供給接続部38は、切替弁51に接続されている。切替弁51の第1切替経路52には、インク充填部としての第1ポンプ53と、シリコーンオイルを含む油性インクが貯えられたインクタンク54が接続されている。第1ポンプ53は、その吸込側がインクタンク54に接続され、その吐出側が切替弁51に接続されている。切替弁51を第1切替経路52の側に切り替え、第1ポンプ53を駆動させれば、インクタンク54のインクを、インク供給接続部38を経てインク容器2内に注入、充填することができる。
【0056】
また、
図5に示すように、切替弁51の第2切替経路55には、インク容器2の内部を吸引する第2ポンプ56の吸引口が接続されている。第2ポンプ56の吐出口には、吸引した空気の放出口が設けられている。
【0057】
図6、
図7に示すように、インク供給接続部38は、図示しないモータの駆動力により、上下方向に移動自在に構成されている。ただし、インク充填装置30のインク供給接続部38とインク供給部3とが、相対的に移動可能であればよい。インク充填装置30のインク供給接続部38が所定位置に設置され、インク供給部3およびインク容器2が設置された設置部31が、インク供給接続部38に対して上下方向に移動自在とされていてもよいし、必要であれば、両方が移動してもよい。いずれにしても、この動作により、インク充填装置30の押圧部44が、インク供給部3の供給口部11の中栓15を付勢部材16の付勢力に抗して移動させ、またはその押圧を解除して付勢部材16が中栓15を移動させれば、供給口部11の開口部13aを開閉することができる。
【0058】
また、
図5に示すように、インク充填装置30は、インク充填装置30全体の動作を制御する制御部57を備えている。制御部57は、CPU、メモリ等を備えて構成される。
【0059】
次に、インク充填装置30を用いてインク容器2にインクを充填するインク充填方法について説明する。ここでは、使用済みのインクカートリッジ1の空になったインク容器2にインクを充填する場合について説明する。
【0060】
まず、作業者によりインクカートリッジ1から外装体4および係合部5が取り外され、インク供給部3が取り付けられた状態のインク容器2が、インク充填装置30の設置部31に設置される。この際、開口部13aを上向きにして天井部34にインク供給部3が取り付けられることで、インク容器2が天井部34に吊り下げられた状態で設置される。
【0061】
次いで、インク供給部3の供給口部11を開く工程が行われる。具体的には、制御部57は、インク供給部3の上方からインク供給接続部38を下降させて、インク供給部3にインク供給接続部38を接続させる。
【0062】
この際、充填装置側ジョイント部39の凸部40が、供給口部11の供給口側ジョイント部13に嵌合し、押圧部44がその先端(下端)を中栓15の係合受け部15cに係合させて中栓15を下方に押し下げる。これにより、供給口部11(の開口部13a)が開かれる。供給口側ジョイント部13と嵌合した充填装置側ジョイント部39の凹部41の内周面にはOリング42があるため、確実なインク漏洩防止効果が得られる。充填装置側ジョイント部39と供給口側ジョイント部13との嵌合に伴い、受け板45が弾性部材46を圧縮して押圧部44に沿って上昇し、充填装置側ジョイント部39と供給口側ジョイント部13とが嵌合した状態において受け板45は弾性部材46の復元力を受けて供給口側ジョイント部13に所定の力で当接するので、嵌合状態は安定し、Oリング42の密封機能と相俟ってインクの漏れを防止する。
【0063】
次いで、インク容器2にインクを注入する工程が行われる。具体的には、まず、制御部57は、挟持部材37にインク容器2を挟持させる。この際、挟持部材37(スライダ36)の高さ位置は、インク供給部3の下方近傍の所定位置でインク容器2を挟持できる位置に調整されている。
【0064】
このように、挟持部材37によりインク容器2を途中で挟持することで、インクの注入を開始した際の供給口部11からのインクの落下距離が、供給口部11から挟持部材37による挟持位置までとなる。これに対し、インク容器2を吊り下げただけの状態(挟持部材37でインク容器2を挟持していない状態)では、インクの注入を開始した際の供給口部11からのインクの落下距離は、供給口部11からインク容器2の下端までとなる。すなわち、挟持部材37でインク容器2を挟持することで、インク容器2を吊り下げただけの状態で供給口部11からインクを注入する場合よりも、インクの落下距離が抑制される状態となる。
【0065】
そして、挟持部材37がインク容器2を挟持した状態で、制御部57は、供給口部11からインク容器2へのインクの注入を開始させる。具体的には、制御部57は、切替弁51を第1切替経路52の側に切り替え、第1ポンプ53の駆動を開始させる。これにより、インクタンク54のインクがインク供給接続部38および供給口部11を経てインク容器2に注入が開始される。
【0066】
インクの注入開始後、制御部57は、インクの注入量の増加に応じてインク容器2の状態を調整しつつ、インクの注入を行う。具体的には、制御部57は、インクの注入量の増加に応じて挟持部材37を下降させることで、インク容器2の挟持部材37による挟持位置を下方へ移動させつつ、インクの注入を行う。これにより、インク容器2からインクがあふれることを回避しつつ、インクが注入される。挟持部材37の移動速度は、インク容器2内のインクの液面が一定の位置に維持されるように調整される。
【0067】
必要量のインクが注入されると、制御部57は、第1ポンプ53を停止させることで、インク容器2へのインクの注入を終了させる。また、制御部57は、挟持部材37をインク容器2の下端より下方まで下降させて、挟持部材37によるインク容器2の挟持を解除させる。ここで、注入するインクの量は任意であり、インク容器2が満杯になるまで注入してもよいし、需要者のニーズに応じて実効容量の一部のみを満たす程度に注入してもよい。
【0068】
ここで、上述したインク容器2にインクを注入する工程では、インクの注入に伴ってインク容器内に空気が入ってしまう場合がある。また、インクの注入前にインク容器2内にすでに空気が入っており、注入後にも空気がそのまま残っている場合も考えられる。インクカートリッジ1のインク容器2に空気が入っていると、このインクカートリッジ1を印刷装置100に装填して印刷を行なわせた場合、印刷装置100のインク供給系に空気が入り込み、インクヘッドにおいてインクの不連続な供給やインク供給不能といった、印刷に有害な不具合が発生する場合が考えられる。このため、インク容器2からはできるだけ空気を抜いておくことが望ましい。
【0069】
そこで、上述したインクを注入する工程に続いて、インク容器2から空気を抜く(抜気する)工程が行われる。具体的には、制御部57は、切替弁51を第2切替経路55に切り替え、第2ポンプ56を駆動させる。インク容器2内の空気は、切替弁51を経て第2ポンプ56により放出口から外部へ放出される。これにより、インク容器2は、必要量のインクが充填され、空気はほとんど存在しない状態となる。
【0070】
次いで、インク供給部3の供給口部11を閉じてインク容器2を密封する工程が行われる。具体的には、制御部57は、インク供給接続部38を上昇させることで、押圧部44による中栓15の押圧を解除する。これにより、付勢部材16の付勢力によって中栓15が上方に移動し、中栓15によってインク容器2が密封される。これにより、インク容器2にインクを充填する一連の工程が終了となる。
【0071】
以上説明したように、第1実施形態では、インク容器2を、天井部34に吊り下げただけの状態で供給口部11からインクを注入する場合よりも、インクの落下距離が抑制される状態として、供給口部11からインク容器2へのインクの注入を開始させ、インクの注入量の増加に応じてインク容器2の状態を調整しつつ、インク容器2にインクを注入する。これにより、インク容器2へのインク注入時の供給口部11からのインクの落下による衝撃が軽減されるので、インクの泡立ちを抑制できる。
【0072】
具体的には、第1実施形態では、インク容器2を挟持部材37で挟持された状態として供給口部11からインク容器2へのインクの注入を開始させ、インクの注入量に応じて挟持部材37による挟持位置を下方へ移動させつつ、インク容器2にインクを注入する。これにより、インクの落下距離を抑制することでインクの泡立ちを抑制しつつインク容器2にインクを充填することを実現できる。
【0073】
また、インク容器2に注入するインクは、シリコーンオイルを含む油性インクである。シリコーンオイルを含む油性インクは、特に、衝撃により泡立ちやすい。これに対し、上述のインク充填方法を用いることで、シリコーンオイルを含む油性インクをインク容器2に注入する場合でも、インク注入時の泡立ちを抑えることができ、インク容器2内のインクへの空気の混入を抑えることができる。
【0074】
[第2実施形態]
次に、上述した第1実施形態のインク充填装置およびインク充填方法を変更した第2実施形態について説明する。
【0075】
図8、
図9に示すように、第2実施形態におけるインク充填装置30Aは、上述した第1実施形態のインク充填装置30の設置部31を、設置部31Aに置き換えた構成である。
【0076】
なお、第2実施形態の説明において、
図8に矢印で示す上下左右を上下左右方向とする。
図8における上下方向は、鉛直方向に平行である。また、
図8の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表側を前方とする。
【0077】
設置部31Aは、第1実施形態の設置部31のガイドレール35、スライダ36、および挟持部材37を、ガイドレール61、スライダ62、および挟持部材63に置き換えた構成である。
【0078】
ガイドレール61は、上下方向に延びる長尺状の部材であり、天井部34に吊り下げられたインク容器2の前方の位置において、土台部32に立設されている。スライダ62は、図示しないモータの駆動力により、ガイドレール61に沿って昇降可能な部材である。挟持部材63は、インク容器2の先端部(下端部)を挟持する部材である。挟持部材63は、図示しないモータ等により、インク容器2の保持動作を行うことができる。挟持部材63は、スライダ62に固定されており、スライダ62とともに昇降可能に構成されている。
【0079】
次に、インク充填装置30Aを用いてインク容器2にインクを充填するインク充填方法について説明する。
【0080】
インク充填装置30Aを用いたインク充填方法において、インク容器2にインクを注入する工程以外の工程は、上述した第1実施形態と同様である。このため、インク容器2にインクを注入する工程について説明し、その他の工程の説明は省略する。
【0081】
インク容器2にインクを注入する工程において、制御部57は、挟持部材62にインク容器2の先端部(下端部)を挟持させる。この際、作業者がインク容器2の先端を挟持部材62が挟持可能な位置まで誘導し、入力部(図示せず)に対して挟持動作を実行させる操作入力を行うことで、制御部57が挟持部材62に挟持動作を行わせる。なお、インク容器2の先端を挟持部材62が挟持可能な位置まで誘導する機構を設け、その機構によりインク容器2の先端を挟持部材62が挟持可能な位置まで誘導し、挟持部材62にインク容器2の先端を挟持させるようにしてもよい。
【0082】
次いで、制御部57は、
図10に示すようにインク容器2が長手方向において前側に曲げられた状態となるように、スライダ62および挟持部材63の高さ位置を調整する。この際、制御部57は、インク容器2の曲げ位置から下方へのインクの落下を抑えることができる曲率でインク容器2が曲げられるとともに、曲げ位置がインク供給部3の下方近傍の所定位置となるように、スライダ62および挟持部材63の高さ位置を調整する。
【0083】
上記のようにインク容器2を曲げることで、インクの注入を開始した際の供給口部11からのインクの落下距離が、供給口部11からインク容器2の曲げ位置までとなる。すなわち、インク容器2を曲げることで、インク容器2を吊り下げただけの状態で供給口部11からインクを注入する場合よりも、インクの落下距離が抑制される状態となる。
【0084】
そして、インク容器2が曲げられた状態で、制御部57は、切替弁51を第1切替経路52の側に切り替え、第1ポンプ53の駆動を開始させることで、供給口部11からインク容器2へのインクの注入を開始させる。
【0085】
インクの注入開始後、制御部57は、インクの注入量の増加に応じてインク容器2の状態を調整しつつ、インクの注入を行う。具体的には、制御部57は、インクの注入量の増加に応じて挟持部材63を下降させることで、インク容器2の曲げ位置を下方へ移動させつつ、インクの注入を行う。これにより、インク容器2からインクがあふれることを回避しつつ、インクが注入される。挟持部材62の移動速度は、インク容器2内のインクの液面が一定の位置に維持されるように調整される。
【0086】
必要量のインクが注入されると、制御部57は、第1ポンプ53を停止させることで、インク容器2へのインクの注入を終了させる。また、制御部57は、挟持部材63によるインク容器2の挟持を解除させる。これにより、インク容器2にインクを注入する工程が終了となる。
【0087】
以上説明したように、第2実施形態では、インク容器2が曲げられた状態として供給口部11からインク容器2へのインクの注入を開始させ、インクの注入量の増加に応じてインク容器2の曲げ位置を下方へ移動させつつ、インク容器2にインクを注入する。このようにしても、インクの落下距離を抑制することでインクの泡立ちを抑制しつつインク容器2にインクを充填することを実現できる。
【0088】
また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、衝撃により泡立ちやすいシリコーンオイルを含む油性インクをインク容器2に注入する場合でも、インク注入時の泡立ちを抑えることができ、インク容器2内のインクへの空気の混入を抑えることができる。
【0089】
[第3実施形態]
次に、上述した第1実施形態のインク充填装置およびインク充填方法を変更した第3実施形態について説明する。
【0090】
図11に示すように、第3実施形態におけるインク充填装置30Bは、上述した第1実施形態のインク充填装置30の設置部31を、設置部31Bに置き換えた構成である。
【0091】
なお、第3実施形態の説明において、
図11に矢印で示す上下前後を上下前後方向とする。
図11における上下方向は、鉛直方向に平行である。
【0092】
設置部31Bは、インク容器2が載置される板状の載置台71と、インク供給部3が取り付けられる保持板72とを備える。保持板72は、載置台71に立設されている。
【0093】
設置部31Bは、図示しないモータの駆動力により、
図11に実線で示す充填開始時状態と、二点鎖線で示す充填終了時状態との間で回動可能に構成されている。設置部31Bの充填開始時状態において、載置台71は水平状態となり、保持板72は鉛直状態となる。また、設置部31Bの充填終了時状態において、載置台71は鉛直状態となり、保持板72は水平状態となる。
【0094】
インク充填装置30Bにおいては、インク供給接続部38は、インク供給部3に接続された状態で、設置部31Bの回動とともに回動するように構成されている。また、インク供給接続部38は、設置部31Bが充填終了時状態のときに、図示しないモータの駆動力により、上下方向に移動自在に構成されている。
【0095】
次に、インク充填装置30Bを用いてインク容器2にインクを充填するインク充填方法について説明する。
【0096】
まず、作業者により、インク供給部3が取り付けられた状態のインク容器2が、充填終了時状態の設置部31Bに設置される。この際、開口部13aを上向きにして保持板72にインク供給部3が取り付けられる。ここで、インク供給接続部38は設置部31Bの上方にある。
【0097】
次いで、インク供給部3の供給口部11を開く工程が行われる。具体的には、制御部57は、インク供給部3の上方からインク供給接続部38を下降させて、インク供給部3にインク供給接続部38を接続させる。これにより、押圧部44が中栓15を下方に押し下げ、供給口部11(の開口部13a)が開かれる。
【0098】
次いで、インク容器2にインクを注入する工程が行われる。具体的には、まず、制御部57は、設置部31Bを充填終了時状態から充填開始時状態に移行させる。これにより、
図11に実線で示すように、水平状態の載置台71に、インク容器2を、その長手方向を水平方向(前後方向)として載置した状態となる。
【0099】
これにより、インクの注入を開始した際の供給口部11からのインクの落下距離が、供給口部11から横向きのインク容器2の下側の内面までとなる。すなわち、インク容器2を水平状態の載置台71に載置して横向きの状態とすることで、インク容器2を吊り下げただけの状態で供給口部11からインクを注入する場合よりも、インクの落下距離が抑制される状態となる。
【0100】
そして、インク容器2が水平状態の載置台71に載置された状態で、制御部57は、供給口部11からインク容器2へのインクの注入を開始させる。具体的には、制御部57は、切替弁51を第1切替経路52の側に切り替え、第1ポンプ53の駆動を開始させる。これにより、インクタンク54のインクがインク供給接続部38および供給口部11を経てインク容器2に注入が開始される。
【0101】
インクの注入開始後、制御部57は、インクの注入量の増加に応じてインク容器2の状態を調整しつつ、インクの注入を行う。具体的には、制御部57は、インクの注入量の増加に応じて設置部31Bを回動させて充填開始時状態から充填終了時状態に徐々に移行させることで、インク容器2をインク供給部3側が上になるように徐々に立たせつつ、インクの注入を行う。これにより、インク容器2からインクがあふれることを回避しつつ、インクが注入される。
【0102】
必要量のインクが注入されると、制御部57は、第1ポンプ53を停止させることで、インク容器2へのインクの注入を終了させる。また、制御部57は、設置部31Bが充填終了時状態になり載置台71およびインク容器2が鉛直状態になると設置部31Bの回動を停止させる。これにより、インク容器2にインクを注入する工程が終了となる。ここで、インクの注入を終了するタイミングが、設置部31Bが充填終了時状態になる前であってもよいし、設置部31Bが充填終了時状態になった後であってもよい。
【0103】
上述したインクを注入する工程に続いて、インク容器2から空気を抜く工程が行われ、その後、インク容器2を密封する工程が行われる。インク容器2から空気を抜く工程、およびインク容器2を密封する工程は、上述した第1実施形態で説明したものと同様のものである。
【0104】
以上説明したように、第3実施形態では、水平状態の載置台71にインク容器2を横向きで載置した状態として供給口部11からインク容器2へのインクの注入を開始させ、インクの注入量に応じて載置台71およびインク容器2を、インク容器2のインク供給部3側が上になるように鉛直状態へ移行させつつ、インク容器2にインクを注入する。このようにしても、インクの落下距離を抑制することでインクの泡立ちを抑制しつつインク容器2にインクを充填することを実現できる。
【0105】
また、第3実施形態においても、第1および第2実施形態と同様に、衝撃により泡立ちやすいシリコーンオイルを含む油性インクをインク容器2に注入する場合でも、インク注入時の泡立ちを抑えることができ、インク容器2内のインクへの空気の混入を抑えることができる。
【0106】
[その他の実施形態]
上述のように、本発明は第1乃至第3実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0107】
上述した第1乃至第3実施形態では、インク容器2に収納されるインクがシリコーンオイルを含む油性インクである場合について説明したが、インク容器2に収納されるインクはこれに限らない。インク容器2に収納されるインクは、水性インク、シリコーンオイルを含む油性インク以外の油性インク、溶剤インク、紫外線硬化型インク等であってもよい。
【0108】
上述した第1実施形態では、インク容器2を挟持した挟持部材37をガイドレール35に沿って動力で下降させるものとしたが、作業者が挟持部材を保持して手動によりインク容器2を挟持部材で挟持し、手動により挟持部材を下降させるようにしてもよい。
【0109】
上述した第2実施形態では、インク容器2の下端部を挟持部材63で挟持して持ち上げることでインク容器2を曲げた状態とし、挟持部材63をガイドレール61に沿って動力で下降させることでインク容器2の曲げ位置を下方へ移動させた。しかし、作業者がインク容器2の下端部を手で保持して持ち上げることでインク容器2を曲げた状態とし、インク容器2の下端部を保持した手を下げることでインク容器2の曲げ位置を下方へ移動させるようにしてもよい。
【0110】
上述した第1乃至第3実施形態では、第2ポンプ56によりインク容器2から抜気したが、他の方法で抜気してもよい。例えば、インクの注入が終了した後、押圧部44による開口部13aの開放を維持したまま、作業者が手などを使ってインク容器2に外側から適度な圧力を加えることで、開口部13aから空気を押し出すようにしてもよい。また、例えば、インク容器2を挟む移動自在な一対の板状の部材を設け、その一対の部材により開口部13aが開放されたインク容器2を両側から挟んで押しつぶすように圧力をかけ、内部の空気を押し出すようにしてもよい。
【0111】
第1乃至第3実施形態において、インクを注入する工程で必要量よりもやや多めのインクをインク容器2に注入し、その後、開口部13aを開放したままで、第2ポンプ56で適当量のインクを吸引し、インク容器2内のインクが必要量になったところで、インク容器2を密封する工程を実行して開口部13aを閉止するようにしてもよい。この方法によれば、余分な量のインクを吸引してインク容器2外に抜き出す際に、インクとともに空気を確実に抜き出すことができる。
【0112】
上述した第1乃至第3実施形態では、使用済みのインクカートリッジ1の空になったインク容器2にインクを充填する場合について説明した。しかし、第1乃至第3実施形態のインク充填方法は、インクカートリッジ1を製造する際に、その製造工程の一部において、空のインク容器2にインクを充填する場合にも適用できる。すなわち、第1乃至第3実施形態におけるインク容器2にインクを充填する方法は、インクカートリッジ1の製造方法に適用できる。また、第1乃至第3実施形態のインク充填方法は、インクが残存しているインク容器2にインクを充填する場合にも適用できる。
【0113】
第1乃至第3実施形態において、インク容器2にインクが残存している場合に、供給口部11を開く工程とインクを注入する工程との間で、インク容器2に残存しているインクを第2ポンプ56により吸い出してからインクを注入するようにしてもよい。このようなインクを吸い出す工程を設けることとすれば、インク容器2に残存しているインクと、新たに注入するインクタンク54のインクとが、インク容器2内で混合するのを回避できる。これは、インク容器2に残存しているインクと新たに注入するインクとの間で、インクの性質に看過できない程度の相違がある場合等に有効である。
【0114】
上述のインクを吸い出す工程を設ける場合は、第2ポンプ56の吐出口に、空気の放出口と選択的に切替可能に廃棄容器が設けられる。そして、第2ポンプ56によりインク容器2に残存しているインクを吸いだす際は、第2ポンプ56の吐出口の接続先が廃棄容器に切り替えられる。
【0115】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0116】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0117】
(付記1)
インクを収納する袋状のインク容器と、
前記インク容器の一方向の一端に取り付けられ、前記インク容器の内部と外部とを連通させる供給口部と、
前記供給口部を開閉する中栓と、
前記中栓を閉止する方向に付勢する付勢手段と
を備えるインクカートリッジに対するインク充填方法であって、
前記付勢手段の付勢に抗して前記中栓を前記インク容器内に押圧して前記供給口部を開く工程と、
前記インク容器を、前記一方向の一端を上にして吊り下げただけの状態で前記供給口部からインクを注入する場合よりも、前記インク容器内における前記供給口部からのインクの落下距離が抑制される状態として前記供給口部から前記インク容器へのインクの注入を開始させ、インクの注入量の増加に応じて前記インク容器の状態を調整しつつ、前記インク容器にインクを注入する工程と、
前記インク容器にインクを注入した後、前記中栓に対する押圧を解除して前記インク容器を密封する工程と
を含むことを特徴とするインク充填方法。
【0118】
(付記2)
前記インクを注入する工程は、
前記一方向の一端を上にした前記インク容器を挟持部材で挟持された状態として前記供給口部から前記インク容器へのインクの注入を開始させ、インクの注入量に応じて前記挟持部材による前記インク容器の挟持位置を前記一方向の一端側から他端側へ移動させつつ、前記インク容器にインクを注入する工程であることを特徴とする付記1に記載のインク充填方法。
【0119】
(付記3)
前記インクを注入する工程は、
前記一方向の一端を上にした前記インク容器を前記一方向において曲げられた状態として前記供給口部から前記インク容器へのインクの注入を開始させ、インクの注入量に応じて前記インク容器の曲げの位置を前記一方向の一端側から他端側へ移動させつつ、前記インク容器にインクを注入する工程であることを特徴とする付記1に記載のインク充填方法。
【0120】
(付記4)
前記インクを注入する工程は、
水平状態の載置台に前記一方向を水平方向として前記インク容器を載置した状態として前記供給口部から前記インク容器へのインクの注入を開始させ、インクの注入量に応じて前記載置台および前記インク容器を前記一方向の一端が上になるように鉛直状態へ移行させつつ、前記インク容器にインクを注入する工程であることを特徴とする付記1に記載のインク充填方法。
【0121】
(付記5)
前記インク容器に注入するインクが、シリコーンオイルを含む油性インクであることを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載のインク充填方法。
【0122】
(付記6)
インクを収納する袋状のインク容器と、
前記インク容器の一方向の一端に取り付けられ、前記インク容器の内部と外部とを連通させる供給口部と、
前記供給口部を開閉する中栓と、
前記中栓を閉止する方向に付勢する付勢手段と
を備えるインクカートリッジの製造方法であって、
前記付勢手段の付勢に抗して前記中栓を前記インク容器内に押圧して前記供給口部を開く工程と、
前記インク容器を、前記一方向の一端を上にして吊り下げただけの状態で前記供給口部からインクを注入する場合よりも、前記インク容器内における前記供給口部からのインクの落下距離が抑制される状態として前記供給口部から前記インク容器へのインクの注入を開始させ、インクの注入量の増加に応じて前記インク容器の状態を調整しつつ、前記インク容器にインクを注入する工程と、
前記インク容器にインクを注入した後、前記中栓に対する押圧を解除して前記インク容器を密封する工程と
を含むことを特徴とするインクカートリッジの製造方法。