(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980480
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】撮像装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/232 20060101AFI20211202BHJP
G06T 5/00 20060101ALI20211202BHJP
H04N 5/92 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
H04N5/232 300
G06T5/00 700
H04N5/232 290
H04N5/232 480
H04N5/92 010
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-195893(P2017-195893)
(22)【出願日】2017年10月6日
(65)【公開番号】特開2019-71522(P2019-71522A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2020年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 稔
【審査官】
佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−152802(JP,A)
【文献】
特開2010−041416(JP,A)
【文献】
特開2015−070328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
G06T 5/00
H04N 5/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像画像に係る映像信号を取得する取得手段と、
前記映像信号に基づいて、動きベクトルを算出するベクトル算出手段と、
振れ検出信号または撮像光学系に関する情報に基づいて、前記動きベクトルの補正に用いる補正パラメータを算出するパラメータ算出手段と、
前記補正パラメータを用いて、前記動きベクトルを補正するベクトル補正手段と、
未現像の前記映像信号に対して、前記補正された動きベクトルを関連付けて記憶する制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記撮像画像の画素座標の変換による前記撮像画像の幾何変形を行わない場合に、前記未現像の前記映像信号に対して前記補正された動きベクトルを関連付けて記憶する制御を行う
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
撮像画像に係る映像信号を取得する取得手段と、
前記映像信号に基づいて、動きベクトルを算出するベクトル算出手段と、
前記撮像画像の画素座標を変換する座標変換手段を有し、前記座標変換手段を用いた画素座標の変換によって、前記撮像画像を幾何変形する幾何変形手段と、
未現像の前記映像信号を記憶する制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段が前記未現像の映像信号を記憶する制御を行わない場合に、前記幾何変形手段は、前記撮像画像の幾何変形を行い、
前記幾何変形手段が、前記撮像画像の幾何変形を行わない場合に、
前記座標変換手段は、振れ検出信号または撮像光学系に関する情報に基づいて、前記動きベクトルの補正に用いる補正パラメータを算出し、前記補正パラメータを用いて、前記動きベクトルを補正し、前記制御手段は、前記未現像の映像信号に対して、前記補正された動きベクトルを関連付けて記憶する制御を行う
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記映像信号に対して、前記補正された動きベクトルを画像情報として関連付ける
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記映像信号に対するヘッダ情報またはメタ情報として前記補正された動きベクトルを関連付ける
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
被写体光を光電変換する撮像素子を備え、
前記補正パラメータは、前記振れ検出信号に基づいて、前記撮像素子のローリングシャッタ駆動に起因する図形歪を補正するためのパラメータである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記補正パラメータは、前記撮像光学系に関する情報に基づいて、歪曲収差を補正するためのパラメータである
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
未現像の前記映像信号は、幾何変形とは異なる現像処理の一部が行われた画像信号を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像画像に係る映像信号を取得する工程と、
前記映像信号に基づいて、動きベクトルを算出する工程と、
振れ検出信号または撮像光学系に関する情報に基づいて、前記動きベクトルの補正に用いる補正パラメータを算出する工程と、
前記補正パラメータを用いて、前記動きベクトルを補正する工程と、
未現像の前記映像信号に対して、前記補正された動きベクトルを関連付けて記憶する制御を行う制御工程とを有し、
前記制御工程では、前記撮像画像の画素座標の変換による前記撮像画像の幾何変形を行わない場合に、前記未現像の前記映像信号に対して前記補正された動きベクトルを関連付けて記憶する制御を行う
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項9】
撮像画像に係る映像信号を取得する工程と、
前記映像信号に基づいて、動きベクトルを算出する工程と、
前記撮像画像の画素座標の変換によって、前記撮像画像を幾何変形する工程と、
未現像の前記映像信号を記憶する制御を行う制御工程とを有し、
前記未現像の映像信号を記憶する制御を行わない場合に、前記撮像画像の幾何変形を行い、
前記撮像画像の幾何変形を行わない場合に、振れ検出信号または撮像光学系に関する情報に基づいて、前記動きベクトルの補正に用いる補正パラメータを算出し、前記補正パラメータを用いて前記動きベクトルを補正し、前記未現像の映像信号に対して、前記補正された動きベクトルを関連付けて記憶する制御を行う
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、動画像に係る映像信号を未現像の状態で記録する装置を開示している。未現像の状態の動画像を、以下ではRAW動画と記述する。また、RAW動画データの記録後に、コンピュータ等で、好みの現像処理を施すことができる。例えば、記録されたRAW動画データから、モニタの特性に合うような画質の画像を生成したり、ユーザの好みの階調や色合いに調整したりして所望の画像を得ることが可能になる。
【0003】
しかし、RAW動画データに対し、幾何変形処理で手振れ補正処理(防振処理)を行う場合においては、記録されたRAW動画データのみでは、並進、回転、あおり、ローリングシャッタ、等の成分で構成される手振れ情報を正確に取得することが困難である。特許文献2は、角速度(ジャイロ)センサから出力される振れ検出信号(角速度情報)を、画像データと共に記録する撮影装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−39578号公報
【特許文献2】特開2012−249158号公報
【特許文献3】特開2014−115824号公報
【特許文献4】特開2012−199802号公報
【特許文献5】特開2016−6920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2が開示する技術を用いて、RAW動画データと共に記録された角速度情報を用いて、幾何変形処理で防振処理を行うことが考えられる。しかし、角速度情報は、基本的には、RAW動画データよりも高速な周波数で取得されるので、角速度情報の取得は、RAW動画データと非同期である。従って、記録時において、ジャイロセンサからの角速度情報を全て記録することは、データ量が膨大で、困難である。また、現像処理時においても、記録した角速度情報を、記録したRAW動画データと同期をとるように加工する必要がある。
【0006】
また、撮影された画像に係る映像信号から動きベクトルを検出し、検出された動きベクトルを用いて、RAW動画データを幾何変形処理して防振処理することが考えられる。しかし、一般に、動きベクトルの検出は、シフトレンズ等を用いた光学的な防振処理のために、幾何変形前の画像データに対して行われる。したがって、求まった動きベクトルは、歪曲収差、ローリングシャッタ歪の影響で歪んでしまい、正しい動きベクトルではない。その結果、記録されたRAW動画データに対して、上記動きベクトルを用いて幾何変形処理を行うと、誤った幾何変形処理となり、正しい防振映像を得ることができない。本発明は、未現像の映像信号の記録後に、少ないデータ量で、精度良く防振処理を行うことを可能にする撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態の撮像装置は、撮像画像に係る映像信号を取得する取得手段と、前記映像信号に基づいて、動きベクトルを算出するベクトル算出手段と、振れ検出信号または撮像光学系に関する情報に基づいて、前記動きベクトルの補正に用いる補正パラメータを算出するパラメータ算出手段と、未現像の前記補正パラメータを用いて、前記動きベクトルを補正するベクトル補正手段と、前記映像信号に対して、前記補正された動きベクトルを関連付けて記憶する制御を行う制御手段とを備え
、前記制御手段は、前記撮像画像の画素座標の変換による前記撮像画像の幾何変形を行わない場合に、前記未現像の前記映像信号に対して前記補正された動きベクトルを関連付けて記憶する制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明の撮像装置によれば、未現像の映像信号の記録後に、少ないデータ量で、精度良く防振処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】幾何変形処理前後の画像における動きベクトルを説明する図である。
【
図3】動きベクトルデータ演算手段の構成例を示す図である。
【
図4】撮像装置の撮像から記録までの動作処理を説明する図である。
【
図5】
図4のS406より得られるデータのフォーマット例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例1)
図1は、本実施形態の撮像装置の構成を示す図である。
図1に示す撮像装置は、撮像光学系0101乃至表示手段0111を備える。撮像光学系0101を通過して、撮像素子0102に結像された光学像(被写体光)は、撮像素子(センサ)0102によって光電変換される。センサ補正手段0103は、撮像素子0102から出力される画像信号に対して、固定パターンノイズや欠陥画素の補正を施す。現像手段0104は、センサ補正手段0103から出力される画像信号に対して、ホワイトバランスの調整や輝度・色差信号への変換、シャープネス調整などの現像処理を施して、メモリ0107へ出力する。
図1に示すように、画像信号(映像信号)が未現像のまま、メモリ0107に出力される系もある。以降、未現像の画像信号データを、RAWデータと記述する。現像された画像信号は、メモリ0107から表示手段0111へ出力され、表示用画像信号として用いられる。メモリ0107は、例えば、DRAMで構成されており、記録用の画像信号、表示用の画像信号、画像処理に必要となる中間信号を保持する。
【0011】
メモリ0107から読み出された画像信号は、ベクトル検出手段0105に入力される。ベクトル検出手段0105は、入力された画像信号から動きベクトルデータを算出し、メモリ0107に書き込む。動きベクトルの検出方法としては、例えば、テンプレートマッチング方式が用いられる。ベクトル検出手段は、画像信号に対して、既知のバンドパスフィルタ処理を施すことで、テンプレートマッチング用の画像信号を生成し、メモリ0107に出力する。そして、ベクトル検出手段0105は、テンプレートマッチング用の画像信号と、この画像信号より時間的に前(例えば、1フレーム前)に取得したテンプレートマッチング用の画像信号を用いて、テンプレートマッチング処理を行う。
【0012】
後述する
図2(A)には、動きベクトル検出用のテンプレート配置の一例が示される。現フレームのテンプレートマッチング用の画像信号0201の任意の位置に、テンプレート0203が配置される。ベクトル検出手段0105は、1フレーム前のテンプレートマッチング用画像信号を参照画像として、各領域との相関地を算出する。参照画像の全領域に対して相関値を算出するのでは演算量が膨大なものとなるため、実際には参照画像上の相関値を算出する矩形領域を探索範囲として設定する。相関値の算出方法としては、例えば、差分絶対値和(Sum of Absolute Difference、以下SADと略す)がある。SAD値が最も小さくなる位置が、テクスチャがもっとも類似している位置となり、その位置を動きベクトルデータとする。本実施形態では、動きベクトルデータは、動きベクトルの重心位置を示す、起点座標(STARTX、STARTY)と、重心位置の移動位置となる終点座標(ENDX、ENDY)で表現される。
【0013】
メモリ0107から読み出された動きベクトルデータは、動きベクトルデータ演算手段0106に入力される。動きベクトルデータ演算手段0106は、動きベクトルデータを補正する。補正された動きベクトルデータは、メモリ0107に書き込まれる。具体的には、動きベクトルデータ演算手段0106に、起点座標(STARTX、STARTY)と終点座標(ENDX、ENDY)を入力すると、補正された起点座標(STARTX’、STARTY’)と終点座標(ENDX’、ENDY’)が出力される。
【0014】
図2は、幾何変形処理前後の画像における動きベクトルを説明する図である。
図2(A)は、幾何変形処理前(歪み補正前)の画像を示す。
図2(B)は、幾何変形処理前(歪み補正後)の画像を示す。領域0201は、撮像領域を示す。領域0202は、出画領域を示す。テンプレート0203は、テンプレートを示す。重心0204は、枠0203のベクトルの重心(起点)を示す。ベクトル0205は、テンプレート0203の動きベクトルを示す。本実施形態では、防振処理を行うための手振れ量を、リアルタイムで算出することを目的として、
図2(A)に示す歪み補正前の画像から動きベクトルが検出される。しかし、実際の出画は、
図2(B)に示す歪み補正後の画像となる。歪み補正後の画像では、テンプレート0203、重心0204、動きベクトル0205が歪んでしまうので、動きベクトルの精度が低下する。つまり、歪み補正後の画像から検出される動きベクトルは、歪み補正における画像の変形量を考慮していない。したがって、歪み補正後の画像から検出される動きベクトルを画像の幾何変形による防振処理に用いると、良好な防振結果を得ることができない。したがって、本実施形態の撮像装置は、動きベクトルデータに対し、画像の変形量を考慮した座標変換処理を施して、歪補正後の画像を考慮した動きベクトルデータに変換する。
【0015】
図3は、動きベクトルデータ演算手段の構成例を示す図である。
動きベクトルデータ演算手段0106は、歪曲収差補正座標演算手段0301と、RS歪座標演算手段0302と、座標合成手段0303とを有する。歪曲収差補正座標演算手段0301は、歪曲収差を補正するための座標を演算する。RS歪座標演算手段0302は、撮像素子0102のローリングシャッタ駆動に起因した図形歪(以下、「ローリングシャッタ歪」と記述)を補正するための座標を演算する。歪曲収差補正座標演算手段0301と、RS歪座標演算手段0302による座標演算処理、並びに、座標演算結果の座標合成手段0303による合成処理については、例えば、特許文献3に開示される方法を適用する。この例では、動きベクトルデータ演算手段0106は、歪曲収差補正とローリングシャッタ歪補正を対象として座標(パラメータ)を演算するが、例えば、あおりに起因した図形歪を補正するための射影変換パラメータを演算してもよい。
【0016】
図1の説明に戻る。CPU0108は、撮像装置全体の制御を行う。ここでは、CPU0108による、手振れ補正制御、動きベクトルデータ演算手段0106の制御に関する部分を説明する。角速度検出手段0109は、例えばジャイロセンサであり、撮像装置に加わる振れに係る振れ検出信号を角速度データとして出力する。CPU0108は、メモリ0107に記憶された動きベクトルデータと、角速度検出手段0109から出力される角速度データに基づいて、既知の手法で撮像装置の姿勢情報(グローバルモーション)を算出する。CPU0108は、算出された姿勢情報に基づいて、撮像光学系0101が有するシフトレンズを駆動する。また、CPU0108は、上記の角速度データに基づいて、ローリングシャッタ歪補正のパラメータを生成する。また、CPU0108は、撮像光学系0101のフォーカス情報、ズーム情報に基づいて、歪曲収差補正のパラメータを生成する。具体的なパラメータの生成方法としては、例えば、特許文献3が開示する方法を適用する。
【0017】
記録手段0110は、静止画データと、動画データを記録するメモリカードなどの半導体メモリである。記録手段0110は、例えば、RAWデータに対し、補正済みの動きベクトルデータを付加したフォーマットのデータを、1画像データとして、記録手段0110に記録する。
【0018】
図4は、実施例1における、撮像装置の撮像から記録までの動作処理を説明するフローチャートである。
S401において、CPU0108が、撮像画像に係る映像信号を取得する。具体的には、CPU0108は、撮像素子0102が出力する撮像画像に係る映像信号を未現像のままRAWデータとしてメモリ0107へ書き出す。続いて、S402において、CPU0108が、メモリ0107から、画像信号と、1フレーム前に生成したテンプレートマッチング用の画像信号とを読み出す。そして、動きベクトル検出手段0105が、ベクトル算出手段として機能し、読み出した画像信号から動きベクトルを検出する。検出された動きベクトルデータは、メモリ0107に書き込まれる。
【0019】
S401と並行して、S403において、CPU010が、撮像時の撮像光学系に関する情報(光学系データ)と、角速度データとを取得する。光学系データは、歪曲収差補正用のパラメータを生成するために必要な撮像光学系の駆動情報である。光学系データは、例えば、フォーカス値や、ズーム値、絞り値などである。角速度データは、ローリングシャッタ歪補正用のパラメータを生成するために必要となる。
【0020】
次に、S404において、CPU0108が、補正パラメータ算出手段として機能し、撮像時の光学系データと、角速度データとを用いて、ベクトル補正パラメータを生成する。CPU0108が、光学系データまたは角速度データを用いて、ベクトル補正パラメータを生成するようにしてもよい。ベクトル補正パラメータは、動きベクトルを補正するために用いるパラメータである。CPU0108は、生成したベクトル補正パラメータをベクトルデータ演算手段0106に設定する。光学系データから歪曲収差補正のパラメータを生成する手法としては、例えば、特許文献3に開示される手法を用いればよい。また、角速度データからローリングシャッタ歪補正用のパラメータを生成する手法としては、例えば、特許文献4に開示される手法を用いればよい。この例では、CPU0108は、歪曲収差補正のパラメータとローリングシャッタ歪補正のパラメータとをベクトル補正パラメータとして算出する。もちろん、CPU0108が、歪曲収差補正のパラメータまたはローリングシャッタ歪補正のパラメータをベクトル補正パラメータとして算出するようにしてもよい。
【0021】
S405において、CPU0108が、メモリ0107から、S402で書き込まれた動きベクトルデータを読み出す。そして、動きベクトルデータ演算手段0106が、ベクトル補正パラメータを用いて、動きベクトルデータを補正する。補正後の動きベクトルデータは、メモリ0107に書き込まれる。
【0022】
S406において、CPU0108が、メモリ0107上にある、S401で取得されたRAWデータと、S405で取得された補正後の動きベクトルデータとを、合体させて1つのデータに変換する。これにより、RAWデータに対して補正後の動きベクトルデータが関連付けられる。
【0023】
図5は、
図4のS406より得られるデータのフォーマット例を示す図である。
図5(A)に示すデータは、フレーム毎に、RAWデータ0501と動きベクトルデータ0502とが交互に配置され、画像情報として関連付けられている。動きベクトルデータ0502は、
図5(B)のデータ0502−1,0502−2で示すように、動きベクトルの重心位置の起点座標(STARTX、STARTY)と、終点座標(ENDX、ENDY)で表現される。
【0024】
図5に示す例では、データフォーマットについては、RAWデータと動きベクトルデータのみを対象としているが、撮像時のフォーカス情報などを一緒に記録してもよい。動きベクトルデータは、画像のヘッダ情報またはメタ情報の1つとして記録してもよい。また、現像済みの画像信号データをJPEG等のデータ形式に変換(圧縮符号化)し、一緒に記録することで、RAWデータの簡易表示用に用いることができるようにしてもよい。
【0025】
図4の説明に戻る。S407において、CPU0108が、S406で生成されたデータを記録手段0110に記録する。続いて、S408において、CPU0108が、全てのRAWデータの記録が完了したかを判断する。記録が完了していないRAWデータがある場合は、処理がS401に戻る。全てのRAWデータの記録が完了した場合は、処理を終了する。
【0026】
補正後の動きベクトルデータを用いて、関連付けられたRAWデータに対し、コンピュータで幾何変形処理を行って防振処理を行うことができる。補正後の動きベクトルデータを用いて幾何変形処理を行うには、例えば、公知のヘルマート変換処理を用いることで、並進成分ならびに回転成分の補正をする。本実施形態においては、1フレーム毎にRAWデータと補正動きベクトルデータを、セットにして、非圧縮形式で記録する形式とした。RAWデータ群を圧縮符号化したデータに対し、圧縮符号化の対象となったRAWデータ群に対応する補正後の動きベクトルデータ群をグルーピングまたは圧縮符号化して、ヘッダ情報として付加してもよい。なお、動きベクトルデータに対し補正をしなくとも、予めRAWデータと共に撮像時の光学系データを一緒に記録しておき、撮像時の光学系データに基づいて、歪曲収差補正をかけたRAWデータに対して、動きベクトル検出をするようにしてもよい。
【0027】
(実施例2)
図6は、実施例2の撮像装置の構成を示す図である。
図6に示す撮像装置は、撮像光学系0601乃至表示手段0611を備える。
図6に示す撮像装置が備える構成のうち、幾何変形手段0606以外は、
図1に示す撮像装置の構成と同様であるので、説明を割愛する。また、撮像装置の撮像から記録までの動作処理も共通である。
【0028】
幾何変形手段0606は、メモリ0607から読み出される画像信号に対して幾何変形処理を施す。幾何変形手段0606は、表示手段0611に出力する現像済みの映像信号を幾何変形処理の対象とする。この幾何変形処理によって、手振れ補正(防振処理)がなされる。幾何変形手段0606は、出力画像に画素の欠陥が生じないよう、出力画像座標に基づき,入力画像上で画素のサンプリング及び補間を行うことで,幾何変換処理を実現する。幾何変形手段0606は,出力画像上の画素を順次スキャンし、出力画像上の画素座標を入力画像上の画素座標に変換する処理を行う。
【0029】
幾何変形手段0606は、座標変換手段0606−1を有している。座標変換手段0606−1が、入力される出力画像上の画素毎の座標を入力画像上のサンプリング画像に順次変換する座標演算を行う。座標変換手段0606−1は、
図3に示す幾何変形パラメータ毎の座標計算手段(RS歪座標演算手段0302および歪曲収差補正座標演算手段0301)と、複数の幾何変形による座標変換を1つの座標変換に合成する座標合成手段0303とを有する。幾何変形手段0606の具体的な制御については、例えば、特許文献5で示される手法を用いればよい。
【0030】
座標変換手段0606−1は、
図1を参照して説明した動きベクトルデータ演算手段0106としても使用することができる。幾何変形手段0606が、幾何変形処理を行わない場合、座標変換手段0606−1は、ベクトル検出手段0605によって検出された動きベクトルを、ベクトル補正パラメータで補正する。そして、CPU0608が、補正後の動きベクトルをRAWデータと関連付けて記録手段0610に記録する。動きベクトルとRAWデータとの関連付けの形式は、実施例1と同様である。幾何変形処理のためにメモリ0107から画像信号が読み出されていない期間が、座標変換手段0606ー1を動きベクトルデータ演算手段0106として使用可能な期間となる。Vブランキング期間を、動きベクトルデータの補正に充てるようにしてもよい。
【0031】
幾何変形手段0606は、例えば、RAWデータが記録手段0610に記録されない場合に、メモリ0607から読み出される現像済みの映像信号に対して幾何変形処理を施す。RAWデータが記録手段0610に記録される場合は、未現像の映像信号に対して幾何変形処理は施されず、座標変換手段0606−1が動きベクトルを補正する。なお、RAWデータとともにJPEGデータのような現像済みの画像信号データが記録手段0610に記録される場合は、未現像の映像信号に対して幾何変形処理は施されないが、現像済みの映像信号に対して幾何変形処理を施す。
【0032】
実施例1と同様に、実施例2の撮像装置によって記録された補正後の動きベクトルデータを用いて、関連付けられたRAWデータに対し、コンピュータで幾何変形処理を行って防振処理を行うことができる。本実施例の撮像装置によれば、動きベクトルデータ補正用に、専用の座標演算手段を設ける必要がなく、効率的に座標演算手段のリソースのシェアを図ることが可能となる。なお、実施例1、2では、未現像の画像信号データをRAWデータとして説明しているが、幾何変形処理とは異なる現像処理の一部が行われた画像信号データも未現像の画像信号データとみなしてよい。
【0033】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0034】
0106 動きベクトルデータ演算手段
0108 CPU