【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、総務省、「複数周波数帯域の同時利用による周波数利用効率向上技術の研究開発」研究開発委託契約に基づく開発項目「複数無線周波数帯無線フレーム同時伝送技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の周波数帯のうちの第1〜第n(nは、2以上の自然数)の周波数帯について前記特徴量算出部により算出される特徴量がそれぞれx1〜xnで表されるとき、前記判定基準は、x1〜xn、およびウエイトを含む多項式で表され、
前記判定基準生成部は、
前記第1〜第nの周波数帯のうちの少なくとも1つに信号が存在する第1の教師信号が前記信号検出装置に入力されたときに、前記特徴量算出部により算出されるx1〜xnを前記多項式に与えることで得られる評価値が所定の閾値以下であれば前記ウエイトの値を更新し、
前記第1〜第nの周波数帯のいずれにも信号が存在しない第2の教師信号が前記信号検出装置に入力されたときに、前記特徴量算出部により算出されるx1〜xnを前記多項式に与えることで得られる評価値が前記閾値よりも大きければ前記ウエイトの値を更新し、
前記第1の教師信号および前記第2の教師信号が前記信号検出装置に所定回数入力されたときに、前記判定基準として前記ウエイトが更新された多項式を出力し、
前記判定部は、前記第1〜第nの周波数帯について前記特徴量算出部によりそれぞれ算出される特徴量を前記判定基準生成部から出力される多項式に与えることで得られる評価値に基づいて、前記第1〜第nの周波数帯のうちの少なくとも1つに信号が存在するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の信号検出装置。
前記複数の周波数帯のうちの第1〜第n(nは、2以上の自然数)の周波数帯について前記特徴量算出部により算出される特徴量がそれぞれx1〜xnで表されるとき、前記判定基準は、x1〜xn、およびウエイトを含む多項式で表され、
前記判定基準生成部は、
前記第1〜第2の周波数帯のうちの少なくとも1つに信号が存在する第1の教師信号が前記信号検出装置に入力されたときに、前記特徴量算出部により算出されるx1〜xnを前記多項式に与えることで得られる評価値を確率領域に変換した値を使用して前記ウエイトの値を更新し、
前記第1〜第nの周波数帯のいずれにも信号が存在しない第2の教師信号が前記信号検出装置に入力されたときに、前記特徴量算出部により算出されるx1〜xnを前記多項式に与えることで得られる評価値を確率領域に変換した値を使用して前記ウエイトの値を更新し、
前記第1の教師信号および前記第2の教師信号が前記信号検出装置に所定回数入力されたときに、前記判定基準として前記ウエイトが更新された多項式を出力し、
前記判定部は、前記第1〜第nの周波数帯について前記特徴量算出部によりそれぞれ算出される特徴量を前記判定基準生成部から出力される多項式に与えることで得られる評価値に基づいて、前記第1〜第nの周波数帯のうちの少なくとも1つに信号が存在するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の信号検出装置。
前記判定部により前記複数の周波数帯のうちの少なくとも1つの周波数帯に信号が存在すると判定されたときに、前記複数の周波数帯のうちの少なくとも1つの周波数帯に信号が存在するか否かを前記判定部とは異なる方法で判定する第2の判定部、をさらに備え、
前記判定基準生成部は、前記第2の判定部による判定結果に基づいて前記判定基準を更新する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の信号検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係わる無線通信システムの一例を示す。
図1に示す無線通信システム1は、特に限定されるものではないが、例えば、無線LANシステムである。そして、無線通信システム1は、無線通信装置2、3を含む。各無線通信装置2、3は、例えば、ユーザ端末である。ユーザ端末は、モバイル端末であってもよい。
【0014】
無線通信装置2、3は、複数の周波数帯を利用してデータを伝送できる。具体的には、無線通信装置2、3は、複数の周波数帯を同時に利用してデータを伝送できる。この実施例では、無線通信装置2、3は、920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯のうちの2つ以上を同時に利用してデータを伝送できる。なお、無線通信装置2、3間の通信品質は、周波数帯ごとに異なる。よって、無線通信装置2、3は、周波数帯ごとに異なる変調方式および異なる符号でデータを伝送してもよい。
【0015】
図2は、送信回路の一例を示す。この送信回路は、
図1に示す無線通信装置2、3に実装される。
【0016】
送信回路10は、
図2に示すように、フレーム生成器11−1〜11−n、ミキサ12−1〜12−nを備える。ただし、送信回路10は、
図2に示していない他の回路要素を備えていてもよい。例えば、送信回路10は、フレーム生成器11−1〜11−nとミキサ12−1〜12−nとの間に変調器を備えていてもよい。
【0017】
各フレーム生成器11−1〜11−nは、入力データを伝送するフレームを生成する。各フレームの先頭には、プリアンブルと呼ばれる既知のビット列が付加される。プリアンブルは、STF(Short Training Field)およびLTF(Long Training Field)を含む。STFおよびLTFは、それぞれ、既知の繰返し信号により構成される。
【0018】
ミキサ12−1〜12−nは、それぞれ、フレーム生成器11−1〜11−nの出力信号(あるいは、フレーム生成器11−1〜11−nの出力信号に基づいて生成される変調信号)にRF発振信号f1〜fnを乗算する。すなわち、出力信号(変調信号)が無線周波数帯にアップコンバートされる。なお、RF発振信号f1〜fnの周波数は、
図1に示す実施例においては、920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯である。そして、送信回路10は、アンテナを介して信号を出力する。
【0019】
<第1の実施形態>
図3は、本発明の第1の実施形態に係わる信号検出装置の一例を示す。第1の実施形態に係わる信号検出装置30は、無線通信装置の受信回路内に実装される。すなわち、信号検出装置30は、例えば、
図1に示す無線通信装置2、3に実装される。
【0020】
受信アンテナと信号検出装置30との間には、
図3に示すように、ミキサ21−1〜21−nが設けられる。ミキサ21−1〜21−nは、それぞれ、アンテナを介して受信する電波(受信波)にRF発振信号f1〜fnを乗算する。これらのRF発振信号f1〜fnの周波数は、送信回路10において使用されるRF発振信号f1〜fnの周波数と実質的に同じである。よって、各周波数帯f1〜fnの受信波成分が抽出される。
【0021】
信号検出装置30は、
図3に示すように、特徴量算出部31−1〜31−n、判定基準生成部32、判定部33を備える。ただし、信号検出装置30は、
図3に示していない他の回路要素を備えていてもよい。
【0022】
特徴量算出部31−1〜31−nは、それぞれ、対応する受信波成分の特徴量を算出する。すなわち、特徴量算出部31−1は、周波数帯f1の受信波成分の特徴量を算出する。同様に、特徴量算出部31−2〜31−nは、それぞれ、周波数帯f2〜fnの受信波成分の特徴量を算出する。そして、特徴量算出部31−1〜31−nは、算出した特徴量x1〜xnを出力する。
【0023】
特徴量は、受信波の状態を表す。この実施例では、特徴量は、上述したSTF及び/又はLTFを利用して算出される受信波の自己相関を表す。この場合、各特徴量算出部31−1〜31−nは、ある時刻の受信波と所定時間経過後の受信波との相関を計算することにより自己相関値を計算する。この結果、フレームが伝送されているとき(すなわち、信号が存在するとき)は、大きな自己相関が得られ、フレームが伝送されていないとき(すなわち、信号が存在しないとき)は、自己相関は小さくなる。
【0024】
或いは、特徴量は、受信波と既知信号との相互相関を表してもよい。この場合、各特徴量算出部31−1〜31−nは、受信波と既知信号(すなわち、STF及び/又はLTFを表す信号)との相関を計算することにより相互相関値を計算する。この結果、フレームが伝送されているとき(すなわち、信号が存在するとき)は、大きな相互相関が得られ、フレームが伝送されていないとき(すなわち、信号が存在しないとき)は、相互相関は小さくなる。
【0025】
判定基準生成部32は、特徴量算出部31−1〜31−nにより生成される特徴量x1〜xnに基づいて、機械学習により判定基準を生成する。具体的には、判定基準生成部32は、周波数帯f1〜fnのうちの少なくとも1つの周波数帯に信号が存在する状態と、周波数帯f1〜fnのいずれにも信号が存在しない状態と、を互いに識別するための判定基準を生成する。機械学習としては、例えば、パーセプトロンまたはロジスティック回帰が使用される。
【0026】
判定部33は、受信回路に信号が到着しているか否かを判定する。具体的には、判定回路は、特徴量算出部31−1〜31−nにより算出される複数の特徴量に対して、判定基準生成部32により生成される判定基準を適用することにより、周波数帯f1〜fnのうちの少なくとも1つの周波数帯に信号が存在するか否かを判定する。
【0027】
判定部33による判定結果は、無線通信装置の動作の制御に使用される。例えば、信号を受信していない期間に主回路への電力の供給を停止または抑制する構成においては、無線通信装置は、信号が存在すると判定部33により判定されたときに主回路を起動する。
【0028】
なお、信号検出装置30は、例えば、プロセッサエレメントおよびメモリを含むプロセッサシステムで実現される。この場合、プロセッサエレメントは、メモリに格納されているプログラムを実行することにより信号検出装置30の機能を提供する。すなわち、特徴量算出部31−1〜31−n、判定基準生成部32、判定部33は、プロセッサシステムがプログラムを実行することにより実現される。ただし、信号検出装置30の一部は、ハードウェア回路で実現してもよい。
【0029】
図4は、第1の実施形態に係わる信号検出方法の一例を示すフローチャートである。なお、S1は、無線通信装置が通信を開始する前に実行される。
【0030】
S1において、判定基準生成部32は、周波数帯f1〜fnのうちの少なくとも1つの周波数帯に信号が存在する状態と、周波数帯f1〜fnのいずれにも信号が存在しない状態と、を互いに識別するための判定基準を生成する。このとき、判定基準生成部32は、機械学習により判定基準を生成する。そして、生成された判定基準は、判定部33に与えられる。或いは、生成された判定基準は、判定部33がアクセス可能なメモリに格納される。なお、判定基準を生成する方法は、後で説明する。
【0031】
S2〜S4は、判定基準生成部32により判定基準が生成された後に、電源がON状態の無線通信装置において信号検出装置30により実行される。
【0032】
S2において、信号検出装置30には、各周波数帯の受信波が与えられる。すなわち、信号検出装置30は、各周波数帯の受信波を表す受信波情報を取得する。このとき、特徴量算出部31−1には、周波数帯f1の受信波を表す受信波情報が与えられる。同様に、特徴量算出部31−2〜31−nには、それぞれ周波数帯f2〜fnの受信波を表す受信波情報が与えられる。なお、各周波数帯の受信波が信号を含んでいるか否かは、この時点では不明である。
【0033】
S3において、特徴量算出部31−1〜31−nは、それぞれ、自分に割り当てられている周波数帯の受信波の特徴量を算出する。すなわち、特徴量算出部31−1は、周波数帯f1の特徴量を算出する。同様に、特徴量算出部31−2〜31−nは、それぞれ周波数帯f2〜fnの受信波の特徴量を算出する。特徴量は、上述したように、フレームのプリアンブルに設定されているSTF及び/又はLTFを利用して自己相関または相互相関を計算することで算出される。
【0034】
S4において、判定部33は、S1において生成された判定基準を用いて信号が存在するか否かを判定する。具体的には、判定部33は、特徴量算出部31−1〜31−nにより算出される各周波数帯f1〜fnの特徴量に対して判定基準を適用することにより、周波数帯f1〜fnのうちの少なくとも1つの周波数帯に信号が存在するか、いずれの周波数帯f1〜fnにも信号が存在しないのか、を判定する。
【0035】
次に、判定基準を生成する方法を詳しく説明する。判定基準は、判定基準生成部32において機械学習により生成される。ここで、判定基準生成部32による機械学習では、判定基準モデルが設定される。そして、信号検出装置30に教師信号が与えられると、この教師信号に対応する特徴量が特徴量算出部31−1〜31−nにより生成され、判定基準モデルに入力される。判定基準生成部32は、特徴量が入力されたときに判定基準モデルの状態を表す評価値を計算し、この評価値が与えられた教師信号に対応する目標値に近づくように判定基準モデルを更新する。
【0036】
機械学習においては、判定基準生成部32は、上述の更新処理を繰り返し実行することにより、適正な判定基準を生成する。なお、この実施例では、機械学習としてパーセプトロンが使用される。
【0037】
図5は、機械学習において使用される特徴量の例を模式的に示す。この例では、2つの周波数帯f1、f2が使用される。この場合、信号検出装置30に教師信号が与えられたときに、特徴量算出部31−1、31−2により特徴量x1、x2が生成される。なお、横軸は、周波数帯f1の特徴量x1を表し、縦軸は、周波数帯f2の特徴量x2を表す。また、
図5において、特徴量x1、x2は正規化されている。
【0038】
×印は、教師信号00が与えられたときの特徴量x1、x2の分布を表す。教師信号00は、周波数帯f1、f2の双方において信号が存在しない状態に相当する。このケースでは、特徴量x1が0.5以下であり、且つ、特徴量x2も0.5以下である確率が高い。
【0039】
△印は、教師信号10が与えられたときの特徴量x1、x2の分布を表す。教師信号10は、周波数帯f1に信号が存在するが、周波数帯f2には信号が存在しない状態に相当する。このケースでは、特徴量x1が0.5〜1.0であり、且つ、特徴量x2が0.5以下である確率が高い。
【0040】
□印は、教師信号01が与えられたときの特徴量x1、x2の分布を表す。教師信号01は、周波数帯f1に信号が存在しないが、周波数帯f2には信号が存在する状態に相当する。このケースでは、特徴量x1が0.5以下であり、且つ、特徴量x2が0.5〜1.0である確率が高い。
【0041】
○印は、教師信号11が与えられたときの特徴量x1、x2の分布を表す。教師信号11は、周波数帯f1、f2の双方において信号が存在する状態に相当する。このケースでは、特徴量x1が0.5〜1.0であり、且つ、特徴量x2も0.5〜1.0である確率が高い。
【0042】
図6は、判定基準生成部32内で特徴量およびウエイトに基づいて評価値を計算する回路の一例を示す。なお、この回路は、例えば、プロセッサを用いた演算により実現される。
【0043】
この例では、周波数帯f1、f2が使用されるものとする。すなわち、信号検出装置30に教師信号が与えられると、特徴量算出部31−1、31−2により特徴量x1、x2が生成される。この場合、判定基準モデルは、(1)式で表される。
u=z0*w0+z1*w1+z2*w2・・・(1)
評価値uは、判定基準モデルの出力を表す。w0〜w2は、ウエイトを表す。z0〜z2は、特徴量の入力パターンを表し、特徴量に基づいて算出される。
【0044】
本実施形態においては、z0=1、z1=x1、z2=x2となる。この場合、上述の(1)式は、
u=1*w0+x1*w1+x2*w2・・・(1)´
で表される。
【0045】
したがって、特徴量およびウエイトに基づいて評価値を計算する回路は、
図6に示すように、乗算器40〜42、総和器43を備える。乗算器40は、「1」にウエイトw0を乗算する。乗算器41は、特徴量x1にウエイトw1を乗算する。乗算器42は、特徴量x2にウエイトw2を乗算する。そして、総和器43は、ウエイトw0、ウエイトw1が乗算された特徴量x1、ウエイトw2が乗算された特徴量x2の和を出力する。
【0046】
図7は、判定基準を生成する処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、
図4に示すS1に相当する。なお、このフローチャートの開始時に、S11において、判定基準生成部32は、変数i、jを初期化する。
図5〜
図6に示す例では、変数iは、教師信号のインデックスを示す。変数jは、機械学習の実行回数をカウントする。
【0047】
S12において、信号検出装置30に教師信号iが与えられる。教師信号iは、例えば、不図示の教師信号生成器により生成される。この場合、教師信号生成器は、
図2に示す送信回路と同等の機能を備え、所望の周波数帯(ここでは、f1、f2)を利用して上述したプリアンブルを含むフレームを送信できる。なお、上述した教師信号00は、教師信号生成器が信号を送信しない状態に相当する。教師信号10は、教師信号生成器が周波数帯f1を利用して信号を送信することで実現される。教師信号01は、教師信号生成器が周波数帯f2を利用して信号を送信することで実現される。教師信号11は、教師信号生成器が周波数帯f1およびf2を利用してそれぞれ信号を送信することで実現される。
【0048】
S13において、特徴量算出部31−1〜31−nは、信号検出装置30に教師信号iが与えられたときの特徴量x1〜xnを算出する。S14において、判定基準生成部32は、算出された特徴量x1〜xnを判定基準モデルに入力することにより、評価値uを算出する。すなわち、与えられた教師信号iに対応する評価値uが算出される。
【0049】
S15において、判定基準生成部32は、教師信号iに対して算出した評価値uが正しいか否かを判定する。具体的には、周波数帯f1〜fnのうちの1つ以上の周波数帯に信号が存在する状態を表す教師信号が与えられたときには、判定基準生成部32は、以下の判定を行う。
u>0:正しい
u≦0:誤り
一方、周波数帯f1〜fnのいずれの周波数帯にも信号が存在しない状態を表す教師信号が与えられたときには、判定基準生成部32は、以下の判定を行う。
u>0:誤り
u≦0:正しい
【0050】
図5〜
図6に示す例では、教師信号01、10、または11が与えられたときには、評価値uがゼロよりも大きければ「正しい」と判定され、評価値uがゼロ以下であれば「誤り」と判定される。一方、教師信号00が与えられたときには、評価値uがゼロよりも大きければ「誤り」と判定され、評価値uがゼロ以下であれば「正しい」と判定される。
【0051】
教師信号iに対して算出した評価値uが正しいときは、判定基準生成部32の処理はS17に進む。一方、教師信号iに対して算出した評価値uが誤りであったときは、判定基準生成部32は、S16において、ウエイトwを更新する。ウエイトwは、例えば(2)式で更新される。
w=w+ρtz・・・(2)
wは、ウエイトw0〜wnを要素とするベクトルを表す。zは、特徴量の入力パターンz0〜znを要素とするベクトルを表す。ρは、ステップサイズを表す。tは、信号が存在するときは「+1」を表し、信号が存在しないときは「−1」を表す。
【0052】
よって、例えば、「信号が存在する」を表す教師信号が与えられたときに、評価値uが負の値となり、S15で「誤り」と判定されたときは、判定基準生成部32は、ウエイトw0〜wnを大きくする。また、「信号が存在しない」を表す教師信号が与えられたときに、評価値uが正の値となり、S15で「誤り」と判定されたときは、判定基準生成部32は、ウエイトw0〜wnを小さくする。
【0053】
S17において、判定基準生成部32は、変数iが最大値に達したか判定する。最大値は、教師信号の個数を表す。教師信号の個数は任意に設定される。例えば教師信号の個数をM個に設定した場合には、変数iの最大値は「M」である。この場合、更新処理は「M×N」回実行される。なお、無線通信システム1がQ個の周波数帯を使用できる場合、教師信号のタイプの数は、2^Qで表される。本実施形態においては、周波数帯は2つであるため、教師信号のタイプは、教師信号00、10、01、11の4つとなる。
【0054】
変数iが最大値に達していなければ、S18において変数iがインクリメントされた後、信号検出装置30の処理はS12に戻る。すなわち、信号検出装置30は、各教師信号に対してS12〜S16の処理を実行する。
【0055】
変数iが最大値に達していれば、判定基準生成部32は、S19において、変数jがNに達したか判定する。Nは、機械学習の実行回数の最大値を表す。そして、変数jが最大値に達していなければ、S20において変数jがインクリメントされ、S21において変数iが初期化された後、信号検出装置30の処理はS12に戻る。すなわち、信号検出装置30は、各教師信号に対してS12〜S16の処理をN回ずつ実行する。
【0056】
各教師信号に対してS12〜S16の処理がN回ずつ実行され、
図7に示すフローチャートの処理が終了すると、ウエイトw0〜wnが決定される。そして、判定基準生成部32は、決定したウエイトw0〜wnを判定基準モデルに与えることにより判定基準を生成する。この後、信号検出装置30は、生成した判定基準を用いて信号が存在するか否かを判定する。
【0057】
図8は、信号が存在するか否かを判定する方法の一例を説明する図である。なお、この実施例でも、周波数帯f1、f2が使用されるものとする。また、横軸および縦軸は、それぞれ、周波数帯f1の特徴量x1および周波数帯f2の特徴量x2を表す。
【0058】
領域00は、周波数帯f1、f2の双方に信号が存在しないときに特徴量x1、x2が得られる確率の高い領域を表す。領域10は、周波数帯f1に信号が存在し、且つ、周波数帯f2に信号が存在しないときに特徴量x1、x2が得られる確率の高い領域を表す。領域01は、周波数帯f1に信号が存在せず、且つ、周波数帯f2に信号が存在するときに特徴量x1、x2が得られる確率の高い領域を表す。領域11は、周波数帯f1、f2の双方に信号が存在するときに特徴量x1、x2が得られる確率の高い領域を表す。
【0059】
即ち、少なくとも1つの周波数帯に信号が存在するときは、特徴量x1、x2は、領域10、領域01、または領域11において検出される確率が高い。一方、いずれの周波数帯にも信号が存在しないときは、特徴量x1、x2は、領域00内で検出される確率が高い。換言すれば、領域10、01、11内で特徴量x1、x2が検出されるときは、少なくとも1つの周波数帯に信号が存在する確率が高い。一方、領域00内で特徴量x1、x2が検出されるときは、いずれの周波数帯にも信号が存在しない確率が高い。
【0060】
ここで、判定基準は、機械学習により、少なくとも1つの周波数帯に信号が存在するときの特徴量に対して所定の演算を実行することで生成される評価値と、いずれの周波数帯にも信号が存在しないときの特徴量に対して所定の演算を実行することで得られる評価値と、を互いに識別するように生成されている。上述の例では、判定基準は、少なくとも1つの周波数帯に信号が存在するときの評価値uがゼロよりも大きくなり、いずれの周波数帯にも信号が存在しないときの評価値がゼロ以下となるように生成されている。
【0061】
したがって、判定基準は、
図8において破線で示すように、領域10、01、11と領域00とを識別するように設定される。この例では、判定基準は(1)または(1)´式で表される。ここで、この判定基準は、x1、x2についての1次の多項式である。したがって、判定基準は、直線で表される。なお、機械学習によるウエイトの更新は、
図8に示す判定基準を表す直線の傾きおよび/または切片(x1切片、x2切片)を調整する処理に相当する。
【0062】
信号検出装置30は、上述の判定基準を利用して、信号が存在するか否かを判定する。即ち、判定部33は、特徴量算出部31−1〜31−nにより生成される特徴量x1〜xnに判定基準を適用することで、信号が存在するか否かを判定する。具体的には、判定部33は、特徴量算出部31−1〜31−2により生成される特徴量x1〜x2を判定基準に与えることで評価値uを算出する。そして、判定部33は、評価値uがゼロよりも大きければ少なくとも1つの周波数帯に信号が存在すると判定し、評価値uがゼロ以下であればいずれの周波数帯にも信号が存在しないと判定する。
【0063】
このように、第1の実施形態では、機械学習により判定基準が生成され、その判定基準を利用して信号の有無が判定される。したがって、通信開始前に適切な機械学習で判定準を生成しておけば、信号の有無の判定精度が高くなる。
【0064】
図9は、判定基準生成部32内で特徴量およびウエイトに基づいて評価値を計算する回路の他の例を示す。この回路も、例えば、プロセッサを用いた演算により実現される。
【0065】
この例でも、周波数帯f1、f2が使用されるものとする。すなわち、信号検出装置30に教師信号が与えられると、特徴量算出部31−1、31−2により特徴量x1、x2が生成される。この場合、判定基準モデルは、(3)式で表される。
u=z0*w0+z1*w1+z2*w2+z3*w3+z4*w4+z5*w5・・・(3)
評価値uは、判定基準モデルの出力を表す。w0〜w5は、ウエイトを表す。z0〜z5は、特徴量の入力パターンを表し、特徴量に基づいて算出される。
本実施形態においては、z0=1、z1=x1、z2=x2、z3=(x1)
2、z4=(x2)
2、z5=x1*x2となる。したがって、上述の(3)式は、
u=1*w0+x1*w1+x2*w2+(x1)
2*w3+(x2)
2*w4+x1*x2*w5・・・(3)´
で表される。
【0066】
判定基準を生成する回路は、
図9に示すように、乗算器50〜58、総和器59を備える。乗算器50は、「1」にウエイトw0を乗算する。乗算器51は、特徴量x1にウエイトw1を乗算する。乗算器52は、特徴量x2にウエイトw2を乗算する。乗算器53は、特徴量x1を二乗する。乗算器54は、乗算器53の出力信号にウエイトw3を乗算する。乗算器55は、特徴量x2を二乗する。乗算器56は、乗算器55の出力信号にウエイトw4を乗算する。乗算器57は、特徴量x1に特徴量x2を乗算する。乗算器58は、乗算器57の出力信号にウエイトw5を乗算する。そして、総和器59は、ウエイトw0、ウエイトw1が乗算された特徴量x1、ウエイトw2が乗算された特徴量x2、ウエイトw3が乗算された特徴量x1の二乗、ウエイトw4が乗算された特徴量x2の二乗、特徴量x1と特徴量x2とウエイトw5との積の和を計算する。
【0067】
判定基準生成部32は、
図7に示すフローチャートでウエイトw0〜w5を決定する。そして、(3)または(3)´式で表される判定基準モデルに決定したウエイトw0〜w5を与えることにより判定基準が生成される。
【0068】
判定部33は、判定基準生成部32により生成された判定基準を用いて信号が存在するか否かを判定する。但し、この判定基準は、x1、x2についての2次の多項式である。したがって、判定基準は、2次曲線で表される。
【0069】
図10は、(3)または(3)´式で表される判定基準を利用して信号が存在するか否かを判定する方法の一例を説明する図である。横軸および縦軸は、それぞれ、周波数帯f1の特徴量x1および周波数帯f2の特徴量x2を表す。このケースでは、周波数帯f1、f2のいずれにも信号が存在しないときには、特徴量x1、x2は、判定基準を表す破線の内側(又は、左下側)に現れる確率が高い。すなわち、周波数帯f1、f2のいずれにも信号が存在しないときには、特徴量x1、x2に基づいて算出される評価値uがゼロよりも小さくなり、「信号が存在しない」と判定される。一方、周波数帯f1、f2の少なくとも一方に信号が存在するときには、特徴量x1、x2は、判定基準を表す破線の外側に現れる確率が高い。すなわち、周波数帯f1、f2の少なくとも一方に信号が存在するときには、特徴量x1、x2に基づいて算出される評価値uがゼロよりも大きくなり、「信号が存在する」と判定される。
【0070】
なお、信号が存在しないときに信号が「信号が存在する」と判定されるケース(即ち、誤検出)は、判定基準を表す曲線の外側に領域00がはみ出す状態に相当する。また、信号が存在するときに信号が「信号が存在しない」と判定されるケース(即ち、検出漏れ)は、判定基準を表す曲線の内側に領域10、01、11がはみ出す状態に相当する。よって、
図8および
図10から明らかなように、(1)または(1)´式で表されるモデルを使用するケースと比較して、(3)または(3)´式で表されるモデルを使用するケースにおいて信号の誤検出および検出漏れが改善する。
【0071】
なお、上述の実施例では、パーセプトロンを利用して信号の有無が判定されるが、本発明はこの方法に限定されるものではない。例えば、信号検出装置30は、ロジスティック回帰を利用して信号の有無を判定してもよい。この場合、(4)式で表されるシグモイド関数を利用して確率領域[0.0〜1.0]において信号の有無を判定する。
【0073】
(4)式において、uは、パーセプトロンで算出される評価値を表す。よって、シグモイド関数の出力は、
図11に示す特性を有する。信号検出装置30は、σ(u)が0.5よりも大きいときは「信号が存在する」と判定し、σ(u)が0.5以下であるときは「信号が存在しない」と判定する。
【0074】
判定基準生成部32は、
図7に示すフローチャートを利用して判定基準を生成する。ただし、ロジスティック回帰を利用する方法では、教師信号に対してシグモイド関数の出力値が正解であっても不正解であっても、ウエイトは更新される。ウエイトは、(5)式で更新される。
w=w−ρ(σ(u)−t)z・・・(5)
wは、ウエイトw0〜wnを要素とするベクトルを表す。zは、特徴量の入力パターンz0〜znを要素とするベクトルを表す。ρは、ステップサイズを表す。tは、信号が存在するときは「+1」を表し、信号が存在しないときは「ゼロ」を表す。
【0075】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、信号検出装置30は、初期設定において機械学習で生成した判定基準を利用して信号の有無を判定する。これに対して、第2の実施形態では、初期設定において生成した判定基準は、無線通信装置の通信中に更新される。
【0076】
図12は、第2の実施形態に係わる信号検出装置の一例を示す。第2の実施形態の信号検出装置60は、第1の実施形態の信号検出装置30と同様に、無線通信装置の受信回路内に実装される。そして、信号検出装置60は、
図12に示すように、特徴量算出部61−1〜61−n、判定基準生成部62、一次判定部63、スイッチ64、二次判定部65−1〜65−nを備える。ただし、信号検出装置60は、
図12に示していない他の回路要素を備えていてもよい。
【0077】
特徴量算出部61−1〜61−nは、第1の実施形態の特徴量算出部31−1〜31−nと同様に、周波数帯f1〜fnについて特徴量x1〜xnを算出する。判定基準生成部62は、第1の実施形態の判定基準生成部32と同様に、判定基準を生成する。ただし、判定基準生成部62は、二次判定部65−1〜65−nの判定結果に応じて判定基準を更新する機能を有する。一次判定部63は、第1の実施形態の判定部33と同様に、特徴量x1〜xnに対して判定基準を適用することにより、周波数帯f1〜fnのうちの少なくとも1つに信号が存在するのか、或いは、周波数帯f1〜fnのいずれにも信号が存在しないのかを判定する。
【0078】
スイッチ64は、一次判定部63において「信号が存在する」と判定されたときに、無線通信装置の受信波を二次判定部65−1〜65−nに導く。このとき、周波数帯f1〜fnの受信波がそれぞれ二次判定部65−1〜65−nに導かれる。なお、一次判定部63において「信号が存在しない」と判定されたときには、スイッチ64は、受信波を二次判定部65−1〜65−nに導かないようにしてもよい。
【0079】
二次判定部65−1〜65−nは、周波数帯f1〜fnに信号が存在するか否かを判定する。ただし、二次判定部65−1〜65−nは、一次判定部63とは異なる方法で信号の有無を判定する。
【0080】
例えば、
図2に示す送信回路10から送信されるフレームにCRC(Cyclic Redundancy Check)が付加されているときは、二次判定部65(65−1〜65−n)は、受信信号を復調してCRC判定を行う。この場合、二次判定部65は、CRC判定が成功したときは信号が存在すると判定し、CRC判定が失敗したときは信号が存在しないと判定する。或いは、無線LANシステムにおいては、二次判定部65は、SIGNALフィールドの復号結果に基づいて信号の有無を判定してもよい。この場合、二次判定部65は、復号が成功したときに信号が存在すると判定し、復号が失敗したときに信号が存在しないと判定してもよい。
【0081】
二次判定部65−1〜65−nは、判定結果を判定基準生成部62に送信する。したがって、判定基準生成部62は、各周波数帯に信号が存在するか否かを表す判定結果を受信する。そうすると、判定基準生成部62は、二次判定部65−1〜65−nから受信する判定結果を利用して判定基準を更新する。このとき、判定基準生成部62は、
図7または
図11を参照しながら説明した手順で判定基準を更新する。このとき、二次判定部65−1〜65−nから受信する判定結果は、教師信号として使用される。
【0082】
図13は、第2の実施形態に係わる信号検出方法の一例を示すフローチャートである。S31〜S33は、
図4に示すフローチャートのS1〜S3と実質的に同じである。すなわち、信号検出装置60は、無線通信装置が通信を開始する前に判定基準を生成する。そして、無線通信装置が通信を開始すると、信号検出装置60は、各周波数帯の受信波の特徴量を算出する。
【0083】
S34〜S35において、一次判定部63は、判定基準を利用して信号の有無を判定する。このとき、一次判定部63は、いずれか1つ以上の周波数帯に信号が存在するのか、或いは、いずれの周波数帯にも信号が存在しないのかを判定する。そして、いずれの周波数帯にも信号が存在しないと判定されたときは(S35:No)、信号検出装置60の処理がS32に戻る。
【0084】
いずれか1つ以上の周波数帯に信号が存在すると判定されたときは(S35:Yes)、信号検出装置60は、S36において、二次判定を実行する。このとき、無線通信装置内の主回路(例えば、復調回路、復号回路など)が起動される。また、スイッチ64は、各周波数帯の受信波を二次判定部65−1〜65−nに導く。そして、二次判定部65−1〜65−nは、それぞれ対応する周波数帯に信号が存在するか否かを判定する。これらの判定結果は、判定基準生成部62に送信される。
【0085】
S37において、判定基準生成部62は、二次判定部65−1〜65−nから受信する判定結果に基づいて判定基準を更新する。以降、信号検出装置60は、S32〜S37の処理を繰り返し実行しながら信号の有無を検出する。
【0086】
このように、第2の実施形態では、信号検出装置60の初期設定において生成された判定基準は、通信動作中に更新される。したがって、信号検出の精度がさらに向上する。