(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980500
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/74 20060101AFI20211202BHJP
H01L 21/683 20060101ALN20211202BHJP
【FI】
H05B3/74
!H01L21/68 N
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-228190(P2017-228190)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-102135(P2019-102135A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 安紀
【審査官】
川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−016796(JP,A)
【文献】
実開昭53−144544(JP,U)
【文献】
特開2016−129183(JP,A)
【文献】
特開2010−238396(JP,A)
【文献】
特開2003−133032(JP,A)
【文献】
特開2003−045765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02−3/18
H05B 3/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有するセラミック体と、
該セラミック体の内部または他方の主面において前記主面に対向するように引き回され、円形状の領域に配置された帯状の発熱抵抗体とを備えており、
該発熱抵抗体は、平面視で前記円形状の領域の周方向に延在する円弧状の複数の第1配線パターンと、前記円形状の領域の径方向に延在して2つの前記第1配線パターンを接続する第2配線パターンとを有し、2つの前記第1配線パターンと前記第2配線パターンとの接続部がそれぞれ屈曲した形状の屈曲部を有するとともに、
該屈曲部のそれぞれが内側に第1凹部を有し外側に第2凹部を有することを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記発熱抵抗体は、前記屈曲部が前記屈曲部以外の領域よりも酸化物を多く有していることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記第1凹部が円弧状に凹んでいることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記第2凹部が円弧状に凹んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のヒータ。
【請求項5】
前記第1凹部が前記第2凹部よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体ウエハ等の試料を加熱する際に用いられるヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒータとして、例えば、特許文献1に記載の静電チャック装置が知られている。特許文献1に記載の静電チャック装置は、セラミック焼結体の内部にヒータエレメントを有している。ヒータエレメントは、帯状であって、円形状の領域に引き回されている。ヒータエレメントは、周方向に伸びる部分と径方向に伸びる部分とこれらが繋がる角部とを備えている。角部は、外側に凸部を有しており、内側に凹部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−129183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の静電チャック装置においては均熱性の向上が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様のヒータは、主面を有するセラミック体と、該セラミック体の内部または他方の主面において前記主面に対向するように引き回され
、円形状の領域に配置された帯状の発熱抵抗体とを備えており、
該発熱抵抗体は
、平面視で前記円形状の領域の周方向に延在する円弧状の複数の第1配線パターンと、前記円形状の領域の径方向に延在して2つの前記第1配線パターンを接続する第2配線パターンとを有し、2つの前記第1配線パ
ターンと前記第2配線パターンとの接続部がそれぞれ屈曲した形状の屈曲部を有するとともに、該屈曲部
のそれぞれが内側に第1凹部を有し外側に第2凹部を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様のヒータによれば、均熱性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すように、ヒータ100は、セラミック体1と発熱抵抗体2とを備えている。ヒータ100は、例えば、半導体ウエハ等を加熱するために用いることができる。
【0009】
セラミック体1は、試料に接する部材である。ヒータ100が半導体ウエハを加熱するために用いられる場合には、セラミック体1は一方の主面に試料保持面10を有する。セラミック体1は、例えば、積層体である。セラミック体1は、例えば、円板状である。
【0010】
セラミック体1は、例えば、窒化アルミニウム等のセラミック材料を有する。セラミック体1は、例えば、複数のグリーンシートを積層して、これを窒素雰囲気中で焼成することによって得ることができる。セラミック体1の内部または他方の主面には発熱抵抗体2が位置している。また、必要に応じて、セラミック体1の内部に、静電吸着用電極が位置していてもよい。
【0011】
セラミック体1の寸法は、例えば、主面の直径を30〜500mm程度に、厚みを5〜
25mm程度に設定できる。
【0012】
発熱抵抗体2は、電流を流すことによって、発熱する部材である。発熱抵抗体2は、セラミック体1の内部または他方の主面において、一方の主面に対向するように引き回されている。ヒータ100が半導体ウエハを加熱するために用いられる場合には、ヒータ100が発熱することによって試料保持面10が加熱され、この熱が半導体ウエハに伝わることで、半導体ウエハを加熱できる。
【0013】
図2に示すように、発熱抵抗体2は、屈曲した形状の屈曲部20を有する。より具体的には、発熱抵抗体2は、複数の屈曲部20を有する線状のパターンである。発熱抵抗体2は、例えば、セラミック体1の他方の主面のほぼ全面に位置している。また、発熱抵抗体2は、例えば、セラミック体1の内部のうち一方の主面に対向する仮想面のほぼ全面に位置している。さらに具体的には、例えば、
図2に示すように、同心円状に配列された複数の屈曲部20を有する線状パターンがセラミック体1の内部の仮想面または他方の主面のほぼ全体に位置している。なお、
図2においては、断面図ではあるが図面の見やすさを優先してセラミック体1のハッチングを省略している。また、発熱抵抗体2が位置している領域を塗りつぶして表示するとともに、その一部を部分的に拡大することで発熱抵抗体2の配線パターンを示し、さらにその一部を部分的に拡大することで配線パターンの詳細な構造を示している。発熱抵抗体2は、発熱密度が一定となるように構成されている。これにより、ヒータ100の一方の主面において熱分布にばらつきが生じることを低減できる。
【0014】
発熱抵抗体2は、導体成分およびセラミック成分を含んでいる。導体成分としては、例えばタングステン又は炭化タングステンを有する金属材料を含んでいる。セラミック成分としては、例えば、窒化アルミニウムの粉末を含んでいる。
【0015】
本例のヒータ100においては、屈曲部20が、内側に第1凹部21を有し、外側に第2凹部22を有する。一般的に、屈曲部20においては、電流の多くが内側を流れる。そこで、本例においては、内側に第1凹部21を設けることによって電流の流れを発熱抵抗体2の幅方向における中央付近に近づけることができる。また、一般的に屈曲部は電流の流れる方向に対して垂直な方向の幅が局所的に大きくなってしまい。クールスポットが発生してしまうおそれがある。そこで、屈曲部20の外側に第2凹部22を設けることによって屈曲部20の幅を細くすることができるため、クールスポットの発生を低減できる。その結果、主面の均熱性を向上できる。第1凹部21および第2凹部22は、例えば、部分円状に切りかかれたような形状であってもよい。言い換えると、第1凹部21および第2凹部22の形状は、円弧状であってもよい。
【0016】
発熱抵抗体2は、例えば、幅を0.5〜5mmに設定できる。第1凹部21および第2凹部22の大きさは、例えば、第1凹部21および第2凹部22の形状が、部分円状に切りかかれたような形状である場合には、部分円状の半径を発熱抵抗体2の幅に対して1〜5%の長さに設定できる。
【0017】
また、発熱抵抗体2は、屈曲部20が屈曲部20以外の領域よりも酸化物を多く有していてもよい。屈曲部20に第1凹部21および第2凹部22を設けると、発熱抵抗体2のうち、屈曲部20と、この屈曲部20に隣り合う部分との間の隙間が大きくなるために、発熱密度が低下する。そこで、本例のように屈曲部20に酸化物を多く含有させることによって、屈曲部20における発熱量を増やしてもよい。これにより、部分的に発熱密度が低下するおそれを低減できるので、均熱性を向上できる。発熱抵抗体2がタングステンを有している場合には、酸化物としては、例えば、酸化タングステン(WO
3)が挙げられる。酸化物は、例えば、第1凹部21または第2凹部22に沿って位置させることができ
る。言い換えると、第1凹部21または第2凹部22の形状が円弧状である場合には、酸化物は第1凹部21または第2凹部22に沿って円弧状に位置させることができる。発熱抵抗体2がタングステンを主成分としている場合には、第1凹部21および第2凹部22付近におけるタングステンと酸化タングステンとの割合をmol%で10:1にしてもよい。酸化物の存在は、例えば、X線回折(XRD)または電子線マイクロアナライザ(EPMA)等によって確認できる。
【0018】
また、第1凹部21が円弧状に凹んでいてもよい。これにより、第1凹部21において応力が集中するおそれを低減できる。その結果、ヒータ100の耐久性を向上できる。また、ヒータ100は、第2凹部22が円弧状に凹んでいてもよい。これにより、第2凹部22において応力が集中するおそれを低減できる。その結果、ヒータ100の耐久性を向上できる。
【0019】
ヒータ100は、第1凹部21が第2凹部22よりも大きくてもよい。一般的に、屈曲部20においては、電流の多くが内側を流れる傾向にあるが、第1凹部21が第2凹部22よりも大きいことによって、電流の流れを内側から中心側に寄せることができるので、屈曲部20の外側でクールスポットが生じるおそれを低減できる。
【符号の説明】
【0020】
1:セラミック体
2:発熱抵抗体
10:試料保持面
20:屈曲部
21:第1凹部
22:第2凹部
100:ヒータ