(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加工予定軌跡を第一加工軌跡と第二加工軌跡とに分割し、前記第一加工軌跡と前記第二加工軌跡の間にミクロジョイントを形成して被加工材をレーザの照射により切断する切断方法であって、
前記加工予定軌跡の始点から、前記加工予定軌跡上に位置する第一分割点まで延びる前記第一加工軌跡に沿って第一加工溝を形成する第一加工溝形成工程と、
前記加工予定軌跡上で、前記第一分割点よりも前記加工予定軌跡の終点側において、前記第一分割点と間を開けて位置する第二分割点から、前記加工予定軌跡の前記終点まで延びる前記第二加工軌跡に沿って第二加工溝を形成する第二加工溝形成工程と、
前記第一分割点と前記第二分割点の少なくとも一方において、製品予定部から切断される残材予定部側に、前記被加工材を貫通し、貫通方向と直交する方向であって前記加工予定軌跡から前記残材予定部に向かう方向に3mm以上の幅を有する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
ガス炎を前記貫通孔に挿入して、前記ガス炎により前記ミクロジョイントを切断するミクロジョイント切断工程と、を備える、
切断方法。
加工予定軌跡を、第一加工軌跡と第二加工軌跡とに分割し、前記第一加工軌跡と前記第二加工軌跡の間にミクロジョイントを形成して被加工材をレーザの照射により切断する、
前記被加工材の製造方法であって、
前記加工予定軌跡の始点から、前記加工予定軌跡上に位置する第一分割点まで延びる前記第一加工軌跡に沿って第一加工溝を形成する第一加工溝形成工程と、
前記加工予定軌跡上で、前記第一分割点よりも前記加工予定軌跡の終点側において、前記第一分割点と間を開けて位置する第二分割点から、前記加工予定軌跡の前記終点まで延びる前記第二加工軌跡に沿って第二加工溝を形成する第二加工溝形成工程と、
前記第一分割点と前記第二分割点の少なくとも一方において、製品予定部から切断される残材予定部側に、前記被加工材を貫通し、貫通方向と直交する方向であって前記加工予定軌跡から前記残材予定部に向かう方向に3mm以上の幅を有する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
ガス炎を前記貫通孔に挿入して、前記ガス炎により前記ミクロジョイントを切断するミクロジョイント切断工程と、
を備える、
被加工材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について、
図1(A)から
図12を参照して説明する。なお、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法等は適宜調整されている。
図1(A)は、本実施形態に係る切断装置100の全体構成を示す図である。
図2は、切断装置100のトーチ保持部材10の構成を示す側面図である。
【0019】
切断装置100は、
図1(A)に示すように、トーチ2と、定盤3と、トーチ2を保持するとともにトーチ2を所定の角度に保持するトーチ保持部材10と、トーチ2をトーチ保持部材10とともに切断装置100の定盤上でX軸方向(走行方向)及びY軸方向(横行方向)に移動させる移動機構16と、制御システム20と、を備えている。
【0020】
トーチ(切断トーチ)2は、
図2に示すように、円筒部の先端側が略円錐形に形成され先端にノズル孔が開口されたレーザトーチであり、アシストガスを噴射するとともにファイバーレーザ発振器(不図示)で生成されたレーザビームをノズル孔から照射して、被加工材W0に切溝を形成する。本実施形態において、被加工材W0は鋼板である。被加工材W0は、板状以外もの、例えば、ブロック(塊)状やパイプ状のものであってもよい。
【0021】
ファイバーレーザ発振器(不図示)は、例えば、LD(レーザダイオード)と、増幅用ファイバーとを備え、LD(レーザダイオード)が発振したレーザビームを増幅用ファイバーによって増幅して切断に使用可能なレーザビームを生成するように構成されている。
そして、ファイバーレーザ発振器で生成されたレーザビームは、伝送ファイバー(不図示)を介してトーチ(切断トーチ)2に伝送される。
【0022】
本実施形態では、トーチ2は定盤3の上方に位置され、トーチ2の軸線(以下、トーチ軸線という)O1方向にレーザビームを照射して鋼板等の被加工材W0に加工溝を加工する。
トーチ2のトーチ軸線O1と被加工材W0の加工面との交点には加工点が形成され、この加工点が移動した経路、すなわち加工軌跡に加工溝が形成される。
【0023】
定盤3は、トーチ2により加工する被加工材W0を載置するためのものであって、定盤3の両側面には、走行方向(以下、X軸方向という)に台車が移動するためのレールが配置されるとともに、この台車に配置された後述するトーチ保持部材10が横行方向(以下、Y軸方向という)に移動可能とされており、定盤3の上面は、X軸とY軸とから構成されたXY面に沿う平坦な面とされている。
【0024】
トーチ保持部材10は、
図2に示すように、側面視略L字型の管状部材12及び13が軸受け12aを介して連結されるとともに、管状部材12の上端が軸受け14を介して支持フレーム10aによって光軸Aを中心に回動自在に支持されて構成されている。レーザー光を定盤3に照射するトーチ2は、管状部材13の下端に設けられている。管状部材12の外周で軸受け14の内側に位置する部分には、第1の平ギア15aが配設されている。この第1の平ギア15aは支持フレーム10aに固着された駆動モータ15bにより回転する第2の平ギア15cと歯合するように配設されている。駆動モータ15bの駆動は、リミットスイッチ15dによる出力が制御システム20に送られて制御される構成となっている。これら駆動モータ15b、第1の平ギア15a、第2の平ギア15c、およびリミットスイッチ15dは、旋回機構15Aを構成している。
【0025】
一方、管状部材13の外周で軸受け12aの内側に位置する部分には第3の平ギア16aが配設されている。この第3の平ギア16aは、管状部材12に固定された駆動モータ(不図示)により回転する第4の平ギア(不図示)と歯合するように配設されている。この構成において、トーチ2は光軸Bを中心として鉛直面内で傾斜が可能となっている。なお、これら第3の平ギア16a、第4の平ギア及び駆動モータは、角度設定機構15Bを構成している。
【0026】
角度設定機構15Bを光軸Bを中心として回動させることにより、トーチ軸線O1を所望の傾斜角度に傾けて、平面視した被加工材WOの任意の方向に向けることができる。
【0027】
なお、傾斜角度とはトーチ2が被加工材WOに対して相対移動する場合に、この相対移動する方向と直交する面におけるトーチ軸線O1が被加工材の加工面と交差する角度をいう。換言すると、加工軌跡の法線方向(接線と直交する方向)の面におけるトーチ軸線O1が加工面と交差する角度をいう。
【0028】
移動機構16は、トーチ保持部材10が配置された台車を走行方向(X軸方向)に移動させるX軸方向移動機構16Xと、台車上でトーチ保持部材10を横行方向(Y軸方向)に移動させるY軸方向移動機構16Yと、を備えており、演算部22からドライバ26に出力されたX軸方向制御信号、Y軸方向制御信号に基づいて、トーチ2とともにトーチ保持部材10を、X軸方向及びY軸方向に駆動してトーチ2を所定のXY座標位置に移動させる。
【0029】
また、移動機構16は、トーチ保持部材10を高さ方向(Z軸方向)に移動可能とするZ軸方向移動機構16Zを備えており、Z軸方向移動機構16Zは、支持フレーム10aによってトーチ保持部材10に接続されていて、必要に応じてトーチ保持部材10の高さを変更し、トーチ2の先端と被加工材との間隔を調整することができる。
このように構成された移動機構16は、トーチ2を被加工材W0に対して相対移動させる。
【0030】
図1(B)は,制御システムの概略構成の一例を説明するブロック図である。
制御システム20は、
図1(B)に示すように、入力部21と、演算部22と、記憶部24と、ドライバ26と、を備え、記憶部24には、例えば、
図3に示すような手順で動作する切断プログラムが格納されている。演算部22が切断プログラムを実行することで、制御システム20は、トーチ保持部材10および移動機構16による加工点の経路、角度設定機構15Bによるトーチ2の傾斜角度等を制御して、被加工材WOに所望の形状の加工溝を形成することができる。
なお、切断プログラムは、制御プログラムと制御プログラムの動作を定義するNCプログラムのいずれか一方又は双方により構成されてもよい。
【0031】
入力部21は、被加工材WOに関するデータを演算部22に入力するためのものであり、被加工材WOに関するデータとして、例えば、被加工材WOの材質、厚さt、トーチ2の加工予定軌跡(被加工材WOを平面視した形状)T
0に関するデータ等が入力される。
【0032】
加工予定軌跡T
0に関するデータは、例えば、座標データとして与えられ、被加工材WOの加工面の傾斜(又はトーチ軸線O1の傾斜角度)により加工点は移動するため、加工予定軌跡T
0に関するデータは、例えば、加工面と直交して定義されるルート面により表されることが好適である。
【0033】
演算部22は、不図示のCPUやメモリ等のハードウェアを備えたプログラム実行可能な装置(コンピュータ)である。
演算部22は、入力された加工予定軌跡T
0に関するデータ等および切断プログラムに基づいて、対応する加工溝を形成するための加工点、傾斜角度等を算出する。
【0034】
また、演算部22は、トーチ2のトーチ軸線O1が所定の傾斜角度を向くための角度設定機構15Bの回動角度、加工点が加工軌跡に沿って移動するための旋回機構15Aの回動角度、トーチ保持部材10および移動機構16の適正位置を算出し、これらを駆動するための制御信号をドライバ26に出力する。
【0035】
記憶部24は、ハードディスクやROM等の不揮発性記憶媒体である。
記憶部24には、例えば、被加工材の材質、厚さtに関連する切断に必要なデータがデータベースとして格納されている。データベースは、切断プログラムが加工点等を算出する際に参照される。
【0036】
ドライバ26は、トーチ2をX軸方向に移動させて加工点のX座標位置を制御するX軸方向移動機構16X、Y軸方向に移動させて加工点のY座標位置を制御するY軸方向移動機構16Y、Z軸方向に移動させて加工点のZ座標位置を制御するZ軸方向移動機構16Z、旋回機構15A、角度設定機構15Bに駆動電力を供給する。
【0037】
本実施形態において、ドライバ26は、演算部22から出力された加工軌跡に沿った加工点の所要通過点の間におけるXY座標位置と、旋回機構15A及び角度設定機構15Bの回動角度が定義された駆動指令信号に基づいて、X軸方向移動機構16Xと、Y軸方向移動機構16Yと、旋回機構15Aと、角度設定機構15Bとを駆動して、トーチ軸線O1が所定の方向において所定の傾斜角度を維持し、かつ加工軌跡に沿って移動するようになっている。
また、加工軌跡上の所要通過点における加工点での旋回機構15A及び角度設定機構15Bの回動角度は直線補間により制御可能とされている。
【0038】
次に、本実施形態に係る切断プログラムの動作について
図3を参照して説明する。
図3は、制御システム20における切断プログラムの動作手順の一例を示すフローである。初めに、演算部22は、切断装置100等の初期化動作を行い、切断処理の制御を開始する(ステップS10)。次に、演算部22はステップS11を実行する。
【0039】
(ステップS11)
ステップS11において、制御システム20は、操作者に対して、被加工材W0に関するデータとして、例えば、被加工材W0の材質、厚さt、トーチ2の傾斜角度、加工予定軌跡T
0に関するデータを、入力部21から入力することを求める。
【0040】
図4は、切断する鋼板の平面図である。以降の説明において、X軸座標がxで、Y軸座標がyの座標を(x、y)として示す。
操作者は、
図4に示すように、切断する加工予定軌跡T
0の始点P0(X0、Y0)と、終点P3(X3、Y3)を入力する。本実施形態において、始点P0と終点P3を結ぶ直線は、
図4に示すように、Y軸と平行である。なお、操作者は鋼板上の任意の位置を始点P0および終点P3として入力することができる。
始点P0は、切り込みのための孔開け加工(ピアシング)を行うため、
図4に示すように、製品予定部W1から離れた残材予定部W2に配置する。操作者による入力部21から入力が完了すると、次に、演算部22は、ステップS12を実行する。
【0041】
(ステップS12)
ステップS12において、演算部22は、加工予定軌跡T
0の加工条件を算出する。加工条件の算出は、自動生成プログラムによって行われる。自動生成プログラムとは、制御システム20に搭載されたアプリケーションプログラムであり、切断プログラムで定義された加工軌跡の変更および追加を行うプログラムである。自動生成プログラムは、ステップS11において入力された被加工材W0の材質、厚さt、トーチ2の傾斜角度、加工予定軌跡T
0の始点と終点との長さ、記憶部24に格納されたデータベースから、実際の加工軌跡やミクロジョイントBの形成の有無を含む加工軌跡の分割数を決定する。
【0042】
図5は、自動生成プログラムによって変更および追加された加工軌跡が示された、切断する鋼板の平面図である。
演算部22は、始点P0(X0、Y0)から、終点P3(X3、Y3)までの直線距離が1m以上であり、被加工材W0の材質、厚さtを考慮すると、鋼板の跳ね上がりが発生する可能性が高いと判断し、
図5に示すように、ミクロジョイントBを一箇所、始点P0(X0、Y0)と終点P3(X3、Y3)との間に形成することを決定する。
なお、演算部22は、始点P0(X0、Y0)から終点P3(X3、Y3)までの直線距離によらず、例えば操作者が入力したミクロジョイントBの個数や位置により、ミクロジョイントBを形成の有無を含む加工軌跡の分割数やミクロジョイントBの位置を決定してもよい。
【0043】
加工予定軌跡T
0は、
図5に示すように、ミクロジョイントBによって、始点P0(X0、Y0)を含む第一加工軌跡T
1と、終点P3を含む第二加工軌跡T
2に分割される。ここで、
図5に示すように、第一加工軌跡T
1の終点をP1(第一分割点)、第二加工軌跡T
2の始点をP2(第二分割点)とする。
【0044】
第一加工軌跡T
1は、
図5に示すように、加工予定軌跡T
0の始点P0から、加工予定軌跡T
0上に位置する第一分割点P1まで延びる。
第二加工軌跡T
2は、
図5に示すように、加工予定軌跡T
0上で、第一分割点P1よりも加工予定軌跡T
0の終点P3側において、第一分割点P1と間を開けて位置する第二分割点P2から、加工予定軌跡T
0の終点P3まで延びる。
ミクロジョイントBは、第一分割点P1と第二分割点P2との間に形成される。第一分割点P1と第二分割点P2との間隔は、およそ1〜20mmである。
【0045】
一方、演算部22は、始点P0(X0、Y0)から終点P3(X3、Y3)までの直線距離が短く、鋼板の跳ね上がりが発生する可能性が低いと判断した場合、加工予定軌跡T
0を分割しない。
【0046】
演算部22は、第一加工軌跡T
1の第一分割点P1において、
図5に示すように、第一分割点P1から補助通過点P11までの加工溝G11、補助通過点P11から補助通過点P12までの加工溝G12、補助通過点P12から補助通過点P13までの加工溝G13を加工軌跡として追加する。
【0047】
補助通過点P11と、補助通過点P12と、補助通過点P13とは、製品予定部W1ではなく、被加工材W0から切断される残材予定部W2に配置される。
【0048】
図5に示すように、第一加工軌跡T
1と加工溝G12とは平行に形成されており、また、加工溝G11と加工溝G13とは平行に形成されている。また、補助通過点P13は、第一加工軌跡T
1に接している。そのため、第一加工軌跡T
1と、加工溝G11と、加工溝G12と、加工溝G13と、を形成することで、被加工材W0の残材予定部W2に、被加工材W0を貫通する貫通孔Hを形成することができる。
【0049】
貫通孔Hは、切断プログラムに基づいた切断装置100による切断加工の完了後、ミクロジョイントBを切断するための手切りガス吹管等のガス炎を挿入する挿入口となる。ガス炎を挿入しやすくするため、貫通孔Hは、貫通孔Hの貫通方向と直交する方向であって加工予定軌跡T
0から残材予定部W2に向かう方向の幅が、3mm以上となるように、加工溝G11と、加工溝G12と、加工溝G13と、を形成することが望ましい。本実施形態において、加工溝G11は、貫通方向と直交する方向に3mm以上の幅を有している。
【0050】
さらに演算部22は、第二加工軌跡T
2の第二分割点P2において、
図5に示すように、補助通過点P21から第二分割点P2までの補助加工溝G21を加工軌跡として追加する。補助通過点P21は残材予定部W2に配置される。
加工予定軌跡T
0を第一加工軌跡T
1と第二加工軌跡T
2とに分割する場合、第二加工軌跡T
2の切断加工を開始するため、切り込みのための孔をあける加工(ピアシング)を再度行う必要がある。このピアシングは、製品予定部W1ではなく、残材予定部W2にて行うことが望ましい。そのため、ピアシングを行う補助通過点P21は、残材予定部W2に配置される。以降の説明において、補助通過点P21から第二分割点P2までの補助加工溝G21を「再切り込み部」と称する。
【0051】
演算部22は、加工条件の算出が完了すると、次にステップS13以降を実行し、被加工材W0の第一加工軌跡T
1の切断を開始する。
【0052】
(ステップS13)
図6は、第一加工軌跡T
1の切断開始時における被加工材W0の斜視図である。
ステップS13において、演算部22は、第一加工軌跡T
1の切断を開始する。演算部22は、ドライバ26に制御信号を出力して、
図6に示すように、トーチ2を始点P0の上方に配置し、加工点を始点P0に一致させる。次に、演算部22は、レーザビームの照射を開始し、始点P0にピアシングにより孔を形成する。
次に、演算部22は、ステップS14を実行する。
【0053】
(ステップS14)
ステップS14において、演算部22は、トーチ2をY軸方向に移動させ、加工点を第一加工軌跡T
1の始点P0から第一加工軌跡T
1の第一分割点P1に向かって移動させ、第一加工溝を形成する(第一加工溝形成工程)。
次に、演算部22は、ステップS15を実行する。
【0054】
(ステップS15)
ステップS15において、演算部22は、第一加工軌跡T
1の第一分割点P1において、切断加工が完了であるかどうかを判定する。第一加工軌跡T
1の切断加工後においては、次に第二加工軌跡T
2の切断加工が必要であるので、演算部22は、第一加工軌跡T
1の第一分割点P1において、「加工完了ではない」と判定する。演算部22は、「加工完了ではない」と判定した場合、次にステップS16を実行する。
【0055】
一方、ステップS12において、「加工予定軌跡T
0を分割しない」と決定した場合、第一加工軌跡T
1の切断加工後、以降の切断加工は必要ない。この場合、演算部22は、「加工完了」と判定し、切断加工を完了させる。
【0056】
(ステップS16)
図7は、第一加工軌跡T
1の終点に貫通孔Hを形成中における被加工材W0の斜視図である。
ステップS16において、演算部22は、ステップS12において軌跡を算出した加工溝G11と、加工溝G12と、加工溝G13と、を切断加工し、第一加工軌跡T
1の終点である第一分割点P1に貫通孔Hを形成する(貫通孔形成工程)。トーチ2を移動させ、加工点を補助通過点P11から補助通過点P12を経由して補助通過点P13に向かって移動させる。その後、演算部22は、トーチ2からのレーザビームの照射を停止し、切断加工を中断する。
次に、演算部22は、ステップS13を実行し、第二加工軌跡T
2の切断を開始する。
【0057】
(ステップS13)
ステップS13において、演算部22は、第二加工軌跡T
2の切断を開始する。演算部22は、ドライバ26に制御信号を出力して、
図8に示すように、トーチ2を補助通過点P21の上方に配置し、加工点を補助通過点P21に一致させる。次に、演算部22は、レーザビームの照射を開始し、補助通過点P21にピアシングにより孔を形成する。
次に、演算部22は、ステップS14を実行する。
【0058】
(ステップS14)
ステップS14において、演算部22は、トーチ2を移動させ、加工点を補助通過点P21から第ニ加工軌跡T
2の第二分割点P2を経由して終点P3に向かって移動させ、第ニ加工溝を形成する。次に、演算部22は、ステップS15を実行する。
【0059】
(ステップS15)
ステップS15において、演算部22は、第ニ加工軌跡T
2の終点P3において、切断加工が完了であるかどうかを判定する。第二加工軌跡T
2の切断加工後においては、さらなる切断加工は必要ないため、演算部22は第二加工軌跡T
2の終点P3において、「加工完了」と判定する。
演算部22は、「加工完了」と判定し、切断加工を完了させる(第二加工溝形成工程)。
【0060】
切断装置100による、上記切断プログラムに基づく切断加工が完了後、製品予定部W1と残材予定部W2とは、少なくともミクロジョイントBにおいて接続されている。ミクロジョイントBを切断するために、例えば、手切りガス吹管のガス炎を貫通孔Hに挿入する。手切りガス吹管のガス炎を、第二加工軌跡T
2の第二分割点P2の方向に平行移動させることで、ミクロジョイントBを容易に切断することができる(ミクロジョイント切断工程)。
なお、被加工材W0に複数のミクロジョイントが形成される場合、全てのミクロジョイントを形成する切断加工の完了後に後工程としてミクロジョイント切断工程を行ってもよいし、一部のミクロジョイントを形成する切断加工の完了後に形成済みのミクロジョイントに対してミクロジョイント切断工程を行ってもよい。
【0061】
貫通孔Hの貫通方向と直交する方向であって加工予定軌跡T
0から残材予定部W2に向かう方向の幅は、3mm以上であることが望ましい。その場合、ミクロジョイント切断工程において用いる、例えば手切りガス吹管のガス炎の切断加工幅(1.5mm〜2mm程度)よりも十分に大きく、使用者は、手切りガス吹管のガス炎を容易に貫通孔Hに挿入し、ミクロジョイントBを切断することができる。
【0062】
ここで、手切りガス吹管による切断時において、手作業による位置ズレが発生することを考慮して、再切り込み部は、第二加工軌跡T
2の第二分割点P2から残材予定部W2方向に、少なくとも3mmの幅を持っていることが望ましい。
【0063】
ここで、ミクロジョイント切断工程において初めに切断される貫通孔Hの側面(加工溝G11側)は、手切りガス吹管のガス炎を移動させる方向に対して80度〜90度の角度を成すように形成されている。そのため、手切りガス吹管による切断時において、手切りガス吹管のガス炎による切断加工を好適に開始しやすい。上記貫通孔Hの側面(加工溝G11側)は、手切りガス吹管のガス炎を移動させる方向に対して垂直であることが望ましい。
【0064】
(第一実施形態の効果)
本実施形態の切断方法、切断プログラム、自動生成プログラム、制御システム、切断装置100および被加工材の製造方法によれば、後工程のミクロジョイントBの切断を容易とするため、第一加工軌跡T
1の第一分割点P1において、製品予定部W1から切断される残材予定部W2に、貫通孔Hを形成する。貫通孔Hは、第一加工軌跡T
1の第一分割点P1における切溝を広げることと同様の効果を有し、ミクロジョイントを切断するための手切りガス吹管等のガス炎を挿入しやすくする。
【0065】
本実施形態の切断方法、切断プログラム、自動生成プログラム、制御システム、切断装置100および被加工材の製造方法によれば、切断する加工軌跡の始点P0(X0、Y0)と終点P3(X3、Y3)とを指定することで、被加工材W0の材質、厚さt等を考慮して、ミクロジョイントBの形成の有無を含む加工軌跡の分割数を決定し、必要と判断した場合、加工予定軌跡T
0を分割する。被加工材W0の浮き上がりを好適に防止することができる。
【0066】
(変形例)
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の第一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0067】
上記実施形態において、レーザはファイバーレーザであったが、レーザの種類はこれに限定されない。レーザはYAGレーザやCO
2レーザ等であってもよい。
【0068】
上記実施形態において、操作者が、切断する加工軌跡の始点P0(X0、Y0)と終点P3(X3、Y3)とを入力することで、自動生成プログラムが、貫通孔Hを形成する加工溝(G11、G12,G13)や補助加工溝G21の加工軌跡を算出し、加工軌跡に追加していたが、加工軌跡の設定態様は、これに限定されない。操作者が、自ら加工溝(G11、G12,G13)や補助加工溝G21の加工経路を切断プログラムとして入力して、加工経路を決定してもよい。
【0069】
上記実施形態において、切断する加工軌跡の始点P0(X0、Y0)と終点P3(X3、Y3)との間に形成されるミクロジョイントBの個数は一個であったが、ミクロジョイントの個数はこれに限定されない。始点P0(X0、Y0)と終点P3(X3、Y3)の距離に比例して、ミクロジョイントBの個数を増加させてもよい。ミクロジョイントBの個数が増加すれば、
図3に示す切断プログラムの制御フローにおいて、ステップS13からステップS16のループ処理回数も増加する。分割された加工軌跡の終点には、終点P3(X3、Y3)を除いて、貫通孔Hが形成される。すなわち、ミクロジョイントの個数と同じ数の貫通孔Hが形成される。
【0070】
上記実施形態において、貫通孔Hの形状は、被加工材W0の平面視において長方形状であったが、貫通孔Hの形状は、これに限定されない。
図9および
図10は、加工軌跡の変形例を示す平面図である。貫通孔は、
図9に示すように、被加工材W0の平面視において円形状であってもよい。また、貫通孔は、
図10に示すように、被加工材W0の平面視において三角形状であってもよい。いずれの場合においても、ミクロジョイントBを切断するための手切りガス吹管等を挿入しやすいように、貫通孔Hは、貫通孔Hの貫通方向と直交する方向であって加工予定軌跡T
0から残材予定部W2に向かう方向の幅が3mm以上となることが望ましい。
【0071】
上記実施形態において、再切り込み部の形状は直線であったが、再切り込み部の形状は、これに限定されない。再切り込み部の形状は、
図9に示すように、「コの字」形状であってもよいし、
図10に示すように、「L字」形状であってもよい。いずれの場合も、手切りガス吹管による切断時において、手作業による位置ズレが発生することを考慮して、再切り込み部は、第二加工軌跡T
2の第二分割点P2から残材予定部W2方向に、少なくとも3mmの幅を持っていることが望ましい。
【0072】
上記実施形態において、貫通孔Hは第一分割点P1において形成されていたが、貫通孔の形成位置は、これに限定されない。
図11は、加工軌跡の変形例を示す斜視図である。貫通孔は、
図11に示す貫通孔HBのように、第二分割点P2において形成されていてもよい。第一分割点P1と第二分割点P2の少なくとも一方において、残材予定部側に、貫通孔が形成されていれば、ミクロジョイントの切断のための手切りガス吹管等のガス炎を挿入しやすい。第一分割点P1と第二分割点P2の両方において、貫通孔が形成されていれば、より好適にミクロジョイントの切断を行うことができる。
【0073】
図11に示すように、貫通孔HBを第二分割点P2において形成する加工方法の概略は以下のようになる。
上記実施形態同様に、第一加工軌跡T
1の切断加工を行う。ステップS16において、貫通孔を形成する代わりに、
図11に示すように、第一分割点P1から補助通過点P11までの補助加工溝G12が形成される。補助通過点P11は残材予定部W2に配置される。
【0074】
次にステップS13において、第二加工軌跡T
2の切断を開始する際、残材予定部W2のいずれかの場所にて、レーザビームの照射を開始して、ピアシングにより孔を形成する。その後、トーチ2を補助通過点P23、P22、P21を経由させて、第二分割点P2まで移動させることで、上記実施形態の貫通孔Hと同様の角柱状の貫通孔HBが形成される(貫通孔形成工程)。その後、上記実施形態同様に、第二加工軌跡T
2の切断加工を行う。
【0075】
ミクロジョイントBを切断するために、例えば、手切りガス吹管のガス炎を貫通孔HBに挿入する。手切りガス吹管のガス炎を、第一加工軌跡T
1の第一分割点P1の方向に平行移動させることで、ミクロジョイントBを容易に切断することができる(ミクロジョイント切断工程)。この場合も、手切りガス吹管による切断時において、手作業による位置ズレが発生することを考慮して、補助加工溝G12は、第一加工軌跡T
1の第一分割点P1から残材予定部W2方向に、少なくとも3mmの幅を持っていることが望ましい。
【0076】
上記実施形態において、形成される加工溝は、鋼板の板厚方向に対して垂直であったが、鋼板の切断態様は垂直切断に限定されない。
図12は、傾斜をつけた加工溝により開先形状に切断した鋼材の斜視図である。角度設定機構15Bにより、トーチ2の傾斜角度を制御することで、
図12に示すような開先形状を形成する場合であっても、貫通孔Hを形成することができる。開先形状は、Y開先形状等の様々な開先形状のいずれであってもよい。この場合であっても、貫通孔Hは、貫通孔Hの貫通方向と直交する方向であって加工予定軌跡T
0から残材予定部W2に向かう方向の幅が3mm以上となることが望ましい。
【0077】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態について、
図13を参照して説明する。本実施形態は、貫通孔Hの切断加工方法が第一実施形態と異なっている。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0078】
本実施形態に係る切断装置100Bの全体構成は、第一実施形態に係る切断装置100と同じである。切断装置100Bは、切断装置100と比較して、貫通孔Hの形成時におけるトーチ2の制御が異なっている。
【0079】
図13は、切断装置100Bによって切断する鋼板の斜視図である。第一加工軌跡T
1の第一分割点P1に貫通孔Hを形成する際、演算部22は、トーチ2を移動機構16だけでなく、さらに角度設定機構15Bを制御し、トーチ2の位置と傾斜角度を調整し、貫通孔Hを
図13に示すような円すい形状に形成する(貫通孔形成工程)。この場合であっても、貫通孔Hは、貫通孔Hの貫通方向と直交する方向であって加工予定軌跡T
0から残材予定部W2に向かう方向の幅が3mm以上となることが望ましい。
【0080】
(第二実施形態の効果)
本実施形態の切断方法、切断プログラム、自動生成プログラム、制御システム、切断装置100および被加工材の製造方法によれば、貫通孔Hの形成に移動機構16と角度設定機構15Bを用いることで、多様な貫通孔Hの形状を形成することができる。鋼板の切断態様が垂直切断でなく、複雑な開先切断である場合であっても、移動機構16と角度設定機構15Bを用いることで、貫通孔Hを形成することができる。