特許第6980554号(P6980554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980554ポリウレタン樹脂組成物、それを用いた成形体および電気電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980554
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物、それを用いた成形体および電気電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/65 20060101AFI20211202BHJP
   C08G 18/30 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20211202BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20211202BHJP
【FI】
   C08G18/65
   C08G18/30 020
   H01L23/30 R
   C08G101:00
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-25806(P2018-25806)
(22)【出願日】2018年2月16日
(65)【公開番号】特開2019-142993(P2019-142993A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2020年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲也
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06288133(US,B1)
【文献】 特開平08−053530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)水酸基含有化合物、(B)イソシアネート化合物、および(C)水を反応させることによって得られる、電気電子部品用のポリウレタン樹脂組成物であって、
前記(A)水酸基含有化合物として、(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、および(A−3)アミンポリオールが用いられるとともに、
前記(A−2)ポリブタジエンポリオールに対する前記(A−1)ヒマシ油系ポリオールの混合比((A−1)/(A−2))が、質量比で50以下であることを特徴とする、
ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A−2)ポリブタジエンポリオールに対する前記(A−1)ヒマシ油系ポリオールの混合比((A−1)/(A−2))が、質量比で1以上であることを特徴とする、
請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A−3)アミンポリオールに対する、前記(A−1)ヒマシ油系ポリオールおよび前記(A−2)ポリブタジエンポリオールの合計量の混合比((A−1)+(A−2))/(A−3))が、質量比で1以上であることを特徴とする、
請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A−3)アミンポリオールに対する、前記(A−1)ヒマシ油系ポリオールおよび前記(A−2)ポリブタジエンポリオールの合計量の混合比((A−1)+(A−2))/(A−3))が、質量比で55以下であることを特徴とする、
請求項3に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)水の配合量が、前記(A)水酸基含有化合物、前記(B)イソシアネート化合物、および前記(C)水の全量を100質量%としたときに0.1〜1.2質量%の範囲内であることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物からなる成形体を備える電気電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸基含有化合物として少なくともヒマシ油系ポリオールを用いたポリウレタン樹脂組成物と、このポリウレタン樹脂組成物からなる成形体と、この成形体を備える電気電子部品とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランス、コンデンサ、放電安定器、車載電装部品、車載センサ類、電子基板等の電気電子部品においては、被覆材料または封止材料としてポリウレタン樹脂が好適に用いられている。ポリウレタン樹脂により電気電子部品を被覆または封止することによって、当該電気電子部品の電気的絶縁、当該電気電子部品に対する物理的影響(例えば振動または衝撃等)からの保護、あるいは、当該電気電子部品に対する周囲環境からの物質的影響(例えば、水分または塵埃等)の保護等を実現することができる。
【0003】
ポリウレタン樹脂は、原料である水酸基含有化合物(ポリオール化合物)およびイソシアネート化合物の種類、組合せ、他の官能基の併用等によって非常に多様な性質のものを製造することができる。これらさまざまなポリウレタン樹脂の中でも、原料としてヒマシ油由来化合物を用いたものは、電気電子部品の被覆材料または封止材料として有用であることが知られている。これは、ヒマシ油由来化合物を用いたポリウレタン樹脂が、良好な絶縁性を有するだけでなく、比較的安価であり、さらに、植物由来原料であるためバイオマス度を向上して環境負荷を低減することもできるためである。
【0004】
ところで、電気電子部品用途のポリウレタン樹脂に対しては、当該電気電子部品または当該電気電子部品を用いた電気電子製品の軽量化または低コスト化等を目的として、低密度化が進められている。それゆえ、電気電子部品が備えるポリウレタン成形体としてはフォーム(発泡体)が好適に用いられる。本願出願人は、電気電子部品用のポリウレタン樹脂組成物として、特許文献1に開示するように、イソシアネート化合物として、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)とヒマシ油とを反応させて得たイソシアネート基末端プレポリマーを用いたフォームタイプのポリウレタン樹脂組成物を提案している。
【0005】
本願出願人の検討によれば、発泡剤として水を用いた場合、独立気泡率が高いままであれば経時的にポリウレタンフォームが収縮し、独立気泡率を低下させればポリウレタンフォームの透水性が高くなって十分な電気絶縁性が得られないことが明らかとなった。特許文献1に開示するポリウレタン樹脂組成物は、ポリウレタンフォームとして成形したときに、低い独立気泡率と低い透水性(および十分な電気絶縁性)とを両立させることができるため、電気電子部品用途の材料として好適に用いることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5761879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気電子部品用途のポリウレタン樹脂組成物に対しては、近年、物性のより一層の改善が求められる傾向にある。例えば、被覆材料または封止材料である成形体においては、透水性が低いだけでなく、成形後に収縮しにくいこと(非収縮性を有すること)が好ましい。例えば、電気電子部品の高集積化が進むと、その構造も精細化するが、従来では問題にならなかった成形体の収縮の程度が、高集積化した電気電子部品が備える精細な構造等に影響を及ぼすおそれがある。それゆえ、特に電気電子部品用途のポリウレタン樹脂組成物においては、低い透水性だけでなく良好な非収縮性を有することも求められている。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、電気電子部品用途に好適に用いることができ、低い透水性とともに良好な非収縮性を実現することが可能なポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物は、前記の課題を解決するために、少なくとも(A)水酸基含有化合物、(B)イソシアネート化合物、および(C)水を反応させることによって得られるポリウレタン樹脂組成物であって、前記(A)水酸基含有化合物として、(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、および(A−3)アミンポリオールが用いられるとともに、前記(A−2)ポリブタジエンポリオールに対する前記(A−1)ヒマシ油系ポリオールの混合比((A−1)/(A−2))が、質量比で50以下である構成である。
【0010】
前記構成によれば、(A)水酸基含有化合物として、(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、およびに(A−3)アミンポリオールを用いるとともに、(A−2)ポリブタジエンポリオールに対する(A−1)ヒマシ油系ポリオールの混合比を質量比で半分以下とすることで、得られるポリウレタン成形体の透水性を相対的に低くすることができるだけでなく、当該成形体の収縮を有効に抑制して良好な非収縮性を実現することができる。これにより、良好な電気絶縁性を実現することができるだけでなく、成形体の収縮の程度が小さいため電気電子部品に精細な構造等が含まれているとしても当該構造等に与える影響を有効に抑制することができる。その結果、特に電気電子部品用途に好適に用いることが可能なポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0011】
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物においては、前記(A−2)ポリブタジエンポリオールに対する前記(A−1)ヒマシ油系ポリオールの混合比((A−1)/(A−2))が、質量比で1以上である構成であってもよい。
【0012】
また、本開示に係るポリウレタン樹脂組成物においては、前記(A−3)アミンポリオールに対する、前記(A−1)ヒマシ油系ポリオールおよび前記(A−2)ポリブタジエンポリオールの合計量の混合比((A−1)+(A−2))/(A−3))が、質量比で1以上である構成であってもよい。
【0013】
また、本開示に係るポリウレタン樹脂組成物においては、前記(A−3)アミンポリオールに対する、前記(A−1)ヒマシ油系ポリオールおよび前記(A−2)ポリブタジエンポリオールの合計量の混合比((A−1)+(A−2))/(A−3))が、質量比で55以下である構成であってもよい。
【0014】
また、本開示に係るポリウレタン樹脂組成物においては、前記(C)水の混合量は、前記(A)水酸基含有化合物、前記(B)イソシアネート化合物、および前記(C)水の総質量を100質量%としたときに0.1〜1.2質量%の範囲内である構成であってもよい。
【0015】
また、本開示に係るポリウレタン樹脂組成物においては、電気電子部品用である構成であってもよい。
【0016】
本開示に係る成形体は、前記構成のポリウレタン樹脂組成物からなるものであればよい。また、本開示に係る電気電子部品は、前記構成のポリウレタン樹脂組成物からなる成形体を備えるものであればよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、以上の構成により、電気電子部品用途に好適に用いることができ、低い透水性とともに良好な非収縮性を実現することが可能なポリウレタン樹脂組成物を提供することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物は、(A)水酸基含有化合物、(B)イソシアネート化合物、および(C)水を反応させることによって得られるものである。(A)水酸基含有化合物としては、(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、および(A−3)アミンポリオールが用いられるとともに、これら各成分の反応に際しては、これら3種類の(A)水酸基含有化合物の混合比(配合比)を好適化している。
【0019】
具体的には、本開示に係るポリウレタン樹脂組成物においては、(A−2)ポリブタジエンポリオールに対する(A−1)ヒマシ油系ポリオールの混合比((A−1)/(A−2))が、質量比で50以下であればよいが、この混合比((A−1)/(A−2))が、質量比で1以上であることが好ましく、さらに、(A−3)アミンポリオールに対する、(A−1)ヒマシ油系ポリオールおよび(A−2)ポリブタジエンポリオールの合計量の混合比((A−1)+(A−2))/(A−3))を好適化することがより好ましい。以下、本発明の代表的な実施の形態について説明する。
【0020】
[(A)水酸基含有化合物]
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物においては、原料である(A)水酸基含有化合物としては、前記の通り、(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、および(A−3)アミンポリオールの3種類が必須成分として用いられる。
【0021】
(A−1)ヒマシ油系ポリオールは、分子中にヒマシ油脂肪酸エステル構造を有するポリオールであればよい。(A−1)ヒマシ油系ポリオールの具体的な種類は特に限定されないが、代表的には、ヒマシ油もしくヒマシ油脂肪酸を用いて合成されたヒマシ油誘導体ポリオールを挙げることができる。ヒマシ油誘導体ポリオールとしては、具体的には、例えば、ヒマシ油とポリオールとのエステル交換反応生成物、このエステル交換反応生成物にアルキレンオキサイドを付加させたもの、ヒマシ油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物、このエステル化反応物にアルキレンオキサイドを付加させたもの等を挙げることができるが特に限定されない。
【0022】
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物において原料として用いられる(A−1)ヒマシ油系ポリオールとしては、前述した化合物(あるいは例示しない他のヒマシ油系ポリオール)の中から1種類のみを選択して用いてもよいし、2種類以上の化合物を適宜選択して組み合わせて用いてもよい。
【0023】
(A−2)ポリブタジエンポリオールは、分子中にポリブタジエン構造を有するポリオールであればよい。具体的には、例えば、1,3−ブタジエンがトランス1,4結合したポリブタジエン構造を有するポリオール、1,3−ブタジエンがシス1,4結合したポリブタジエン構造を有するポリオール、1,3−ブタジエンが1,2結合したポリブタジエン構造を有するポリオール、これら結合が混在したポリブタジエン構造を有するポリオール等を挙げることができるが、特に限定されない。また、これらポリオールでは、分子中のポリブタジエン構造の両端に水酸基を有するものであってもよいし、ポリブタンジエン構造が鎖状であってもよい。
【0024】
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物において原料として用いられる(A−2)ポリブタジエンポリオールとしては、前述した化合物(あるいは例示しない他のポリブタジエンポリオール)の中から1種類のみを選択して用いてもよいし、2種類以上の化合物を適宜選択して組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(A−3)アミンポリオールは、分子中に複数の水酸基を有する三級アミンであればよい。代表的には、芳香族アミンポリオールまたは脂肪族アミンポリオールを挙げることができる。(A−3)アミンポリオールとして、芳香族アミンポリオールおよび/または脂肪族アミンポリオールを用いることによって、後述するポリオール混合物の長期安定性を向上させることが可能となる。
【0026】
芳香族アミンポリオールとしては、アニリン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'−ジアミノ−3、3'−ジエチルジフェニルメタン等の芳香族アミンにアルキレンオキサイドを付加したもの、およびマンニッヒ系ポリオール等を挙げることができるが、特に限定されない。脂肪族アミンポリオールとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加したものを挙げることができるが、特に限定されない。これらのうち、芳香族アミンポリオールとしては、マンニッヒ系ポリオールが特に好ましく、脂肪族アミンポリオールとしては、エチレンジアミンにアルキレンオキサイドを付加したものが特に好ましい。
【0027】
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物において原料として用いられる(A−3)アミンポリオールとしては、前述した化合物(あるいは例示しない他のアミンポリオール)の中から1種類のみを選択して用いてもよいし、2種類以上の化合物を適宜選択して組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本開示においては、(A)水酸基含有化合物としては、前述した(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、および(A−3)アミンポリオールの3種類が用いられればよく、後述する実施例または参考例で例示するように、(A)水酸基含有化合物は、(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、および(A−3)アミンポリオールの3種類のみで構成されてもよい。さらに、本開示においては、(A)水酸基含有化合物としては、これら3種類以外の化合物を含有してもよい。また、本開示においては、(A)水酸基含有化合物に分類される化合物であっても、得られる成形体の物性等といった諸条件に応じて、ポリオール混合物または反応時に用いられる全成分において特定の化合物の配合を排除することができる。
【0029】
[(B)イソシアネート化合物]
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物においては、原料である(B)イソシアネート化合物としては、分子中に複数のイソシアネート基を有する化合物であればよい。具体的には、前述した(A)水酸基含有化合物と反応してポリウレタンを形成することが可能な化合物であれば特に限定されないが、代表的には、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0030】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0031】
脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0032】
芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、4,4'−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0033】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0034】
さらに、(B)イソシアネート化合物としては、前述した有機ポリイソシアネート(あるいは例示しない他のイソシアネート化合物)のカルボジイミド体、アロハネート体、ビューレット体、イソシアヌレート体、アダクト体等の変性体等を用いることもできる。
【0035】
また、本開示に係るポリウレタン樹脂組成物において原料として用いられる(B)イソシアネート化合物は、プレポリマーであってもよいしプレポリマーでなくてもよい。すなわち、(B)イソシアネート化合物は、前述した有機ポリイソシアネート(あるいは例示しない他のイソシアネート化合物)であってもよいし、前述した有機ポリイソシアネート等と任意の(A)水酸基含有化合物とをイソシアネート基過剰条件で反応させたもの(プレポリマー)であってもよい。
【0036】
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物において原料として用いられる(B)イソシアネート化合物としては、前述した化合物(あるいは例示しない他のイソシアネート化合物)の中から1種類のみを選択して用いてもよいし、2種類以上の化合物を適宜選択して組み合わせて用いてもよい。また、本開示においては、(B)イソシアネート化合物に分類される化合物であっても、得られる成形体の物性等といった諸条件に応じて、反応時に用いられる全成分において特定の化合物の配合を排除することができる。
【0037】
[(C)水およびその他の成分]
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物は、少なくとも、前述した(A)水酸基含有化合物および前述した(B)イソシアネート化合物に加えて、(C)水を反応させることにより得られるものであればよい。(C)水は、(A)水酸基含有化合物および(B)イソシアネート化合物の反応に際して、得られるポリウレタン樹脂組成物を発泡させる発泡剤として機能する。
【0038】
また、本開示に係るポリウレタン樹脂組成物の製造においては、(A)水酸基含有化合物、(B)イソシアネート化合物、および(C)水以外にその他の成分が用いられてもよい。その他の成分としては、具体的には、例えば、触媒、整泡剤、充填剤、界面活性剤、酸化防止剤、難燃剤、抗カビ剤、消臭剤、分散剤、変色防止剤、可塑剤、香料等の公知の添加剤を挙げることができるが、特に限定されない。これらの中でも、(A)水酸基含有化合物および(B)イソシアネート化合物の反応を促進する観点から(D)触媒を用いることが好ましい。
【0039】
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物の製造において用いられる(D)触媒の具体的な種類は特に限定されず、ポリウレタン樹脂の製造(ポリウレタンの合成)の分野で公知の各種の触媒を用いることができる。具体的な触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,2−ジメチルイミダゾール等の3級アミン;金属および有機酸の金属塩、金属キレート化合物等の有機金属化合物;等が挙げられる。
【0040】
金属および有機酸の金属塩を構成する金属としては、例えば、亜鉛、錫、鉛、ジルコニウム、ビスマス、コバルト、マンガン、鉄等を挙げることができるが、特に限定されない。また、金属および有機酸の金属塩を構成する有機酸としては、例えば、オクテン酸、ナフテン酸等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0041】
金属キレート化合物としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナート、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトン亜鉛等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0042】
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物の製造において用いられる(D)触媒としては、前述した化合物(あるいは例示しない他の触媒機能を有する化合物または物質)の中から1種類のみを選択して用いてもよいし、2種類以上の化合物等を適宜選択して組み合わせて用いてもよい。また、本開示においては、(D)触媒も含めたその他の成分に分類される物質を用いてもよいものの、得られる成形体の物性等といった諸条件に応じて、反応時に用いられる全成分において特定の物質の配合を排除することができる。
【0043】
[ポリウレタン樹脂組成物]
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物は、少なくとも前述した(A)〜(C)の各成分を原料として反応させて得られるものであればよいが、このうち(A)成分としては、(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、および(A−3)アミンポリオールを必須成分として用いればよい。したがって、本開示では、反応に際しての(A)〜(C)の各成分、並びにその他の成分((D)触媒を含む)の具体的な配合量は特に限定されない。
【0044】
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物において、反応に際しての(A)〜(C)の各成分の代表的な配合量について、必須成分である(A)水酸基含有化合物、(B)イソシアネート化合物、および(C)水の総質量を「原料総質量」と規定して説明する。まず、(A)水酸基含有化合物の好ましい配合量としては、原料総質量100質量部に対して15〜80質量部の範囲内を挙げることができ、20〜70質量部の範囲内であることがより好ましい。また、(B)イソシアネート化合物の好ましい配合量としては、原料総質量100質量部に対して20〜85質量部の範囲内を挙げることができ、25〜80質量部の範囲内であることがより好ましい。原料総質量における(A)水酸基含有化合物または(B)イソシアネート化合物の配合量が前記の範囲内であれば、ポリウレタン樹脂組成物の成形性をより良好なものとすることができる。
【0045】
また、(C)水の好ましい配合量としては、原料総重量100質量部に対して0.1〜1.2質量部の範囲内を挙げることができ、0.2〜1.1質量部の範囲内であることがより好ましく、0.3〜1.0質量部の範囲内であることがより好ましい。(C)水の配合量がこの範囲内であれば、得られる成形体の透水性、電気絶縁性、および衝撃吸収性、並びに、ポリウレタン樹脂組成物の成形性をより良好なものとすることができる。
【0046】
また、必須成分である(A)〜(C)成分以外に、その他の成分として(D)触媒を配合してもよい場合には、当該(D)触媒の好ましい配合量としては、原料総重量100質量部に対して0.01〜5.0質量部の範囲内を挙げることができ、0.1〜3.0質量部の範囲内であることがより好ましい。(D)触媒の配合量がこの範囲内であれば、(A)水酸基含有化合物および(B)イソシアネート化合物の反応性をより良好なものにできるとともに、ポリウレタン樹脂組成物の成形性を好適なものにすることができる。
【0047】
言い換えれば、本開示に係るポリウレタン樹脂においては、必須成分である(A)〜(C)成分の総質量を100質量%として、各成分の好ましい配合率を百分率で説明することができる。まず、(A)水酸基含有化合物の配合率は、15〜80質量%の範囲内が好ましく、20〜70質量%の範囲内がより好ましい。また、(B)イソシアネート化合物の配合率は、20〜85質量%の範囲内が好ましく、25〜80質量%の範囲内がより好ましい。また、(C)水の配合率は、0.1〜1.2質量%の範囲内が好ましく、0.2〜1.1質量%の範囲内が好ましく、0.3〜1.0質量%の範囲内がより好ましい。
【0048】
ここで、前記の(A)〜(C)成分の配合率は、これら必須成分の総質量100質量%内における比率であるが、(D)触媒等のその他の成分の好ましい配合率は、必須成分である(A)〜(C)成分の総質量100質量%に対して「外部添加」される比率と位置づけることができる。
【0049】
(D)触媒の好ましい配合率は、原料総重量が100質量%であるときに、0.01〜5.0質量%の範囲内で外部添加されることが好ましく、0.1〜3.0質量%の範囲内で外部添加されることがより好ましい。例えば、原料総質量100質量%に対して(D)触媒を0.01質量%外部添加したときには、反応に際しての全成分((A)〜(D)成分)の百分率は100.01質量%となる。
【0050】
ここで、本開示においては、(A)水酸基含有化合物として、前記の3種類のポリオールを用いているため、これらポリオールを所定の混合比の条件(混合条件)を満たすように混合することが特に好ましい。具体的な混合条件としては、(A−2)ポリブタジエンポリオールに対する(A−1)ヒマシ油系ポリオールの混合比((A−1)/(A−2))である混合条件1と、(A−3)アミンポリオールに対する、前記(A−1)ヒマシ油系ポリオールおよび前記(A−2)ポリブタジエンポリオールの合計量の混合比((A−1)+(A−2))/(A−3))である混合条件2とを挙げることができる。なお、これら混合条件はいずれも質量比である。
【0051】
本開示においては、(A)〜(C)の各成分を反応させる際において(あるいはポリオール混合物の組成において)混合条件1における上限が少なくとも規定される。すなわち、本開示に係るポリウレタン樹脂組成物の製造((A)〜(C)成分の反応)に際しては(あるいは後述するポリオール混合物においては)、質量比(A−1)/(A−2)が50以下((A−1)/(A−2)≦50)となるように、(A−1)ヒマシ油系ポリオールおよび(A−2)ポリブタジエンポリオールが混合されればよい。これにより、得られる成形体において、透水性(吸水率)を低くすることができるとともに非収縮性を良好なものにする(得られる成形体を収縮し難いものにする)ことができる(後述する比較例4参照)。
【0052】
また、混合条件1の下限は特に限定されないものの、質量比(A−1)/(A−2)が1以上((A−1)/(A−2)≧1)となるように、(A−1)ヒマシ油系ポリオールおよび(A−2)ポリブタジエンポリオールが混合されればよい。これにより、得られる成形体において、低透水性および非収縮性を良好なものにできるだけでなく、その独立気泡率を向上することができ、さらには成形体の外観も良好なものにすることができる(後述する参考例1参照)。
【0053】
なお、特許文献1では、得られる成形体において、独立気泡率を低くすることと透水性を低くすることとを両立させている。しかしながら、本願発明者らのさらなる鋭意検討の結果、近年の要求に応じて透水性をより一層低くする観点では、逆に独立気泡率を高くした方がよいことが明らかとなった。それゆえ、本願発明では、特許文献1よりも独立気泡率を向上させている。
【0054】
ここで、本開示においては、後述する実施例等で評価するように、得られる成形体の外観を目視で観察しているが、この観察では、特許文献1に開示する収縮の発生の有無(非収縮性の評価)だけでなく、成形体の表面のセルが粗いか否か、並びに、成形体の表面が荒れているか否かも評価している。成形体の表面のセルの粗さおよび表面の荒れの状態を言い換えれば、成形体の表面の均質性が良好であるか否かということができる。
【0055】
成形体の非収縮性は、当該成形体が電気電子部品の構造の一部(例えば被覆層または封止部)を構成する場合には、電気電子部品が備える構造等に影響を及ぼすおそれがある。例えば、被覆層または封止部となる成形体が収縮し過ぎれば電気電子部品の精細な構造を損なう可能性があり得る。また、成形体の表面の均質性が良好でなければ、電気電子部品の被覆箇所または封止箇所において密着性または電気絶縁性に何らかの影響が及ぼされることも懸念される。それゆえ、成形体の表面は良好な均質性を有していることが好ましい。ポリウレタン樹脂組成物の製造に際して(あるいはポリオール混合物の組成において)が混合条件1を満たすことで、本開示に係るポリウレタン成形体の表面は良好な均質性を実現することができる。
【0056】
さらに、本開示においては、ポリウレタン樹脂組成物の製造に際して(あるいはポリオール混合物の組成において)、混合条件1に加えて混合条件2を満たすことが好ましい。混合条件2である質量比(A−1)+(A−2))/(A−3)は、1以上であればよく55以下であればよい。混合条件2の下限が1未満であっても、成形体の非収縮性、独立気泡率、表面の均質性等を良好なものとすることができるが、諸条件によっては成形体の硬度が高くなり過ぎる傾向にある。成形体の硬度が高くなり過ぎると、電気電子部品を被覆したり封止したりした際に、構造の破損または剥離等が生じたりハンダクラック等が生じたりするおそれがある(後述する参考例2参照)。また、混合条件2の上限が55を超えても、成形体の非収縮性、独立気泡率、表面の均質性、硬度等を良好なものとすることができるが、後述するポリオール混合物の長期安定性を実現することができなくなる(後述する参考例3参照)。
【0057】
[ポリウレタン樹脂組成物の製造方法]
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、前述した(A)〜(C)の各成分を公知の混合装置(ミキサー等)により混合して、必要に応じて各種条件を設定して(A)〜(C)の各成分を反応させればよい。なお、ポリウレタン樹脂組成物の製造のために、(A)〜(C)の各成分(あるいはその一部)を混合したものを、説明の便宜上「原料混合物」と称する。
【0058】
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物の製造に際しては、(A)〜(C)の各成分(必要に応じて(D)触媒等のその他の成分)を配合して混合した原料混合物、すなわち「1液型」の原料混合物が調製(製造)されてもよい。あるいは、(A)水酸基含有化合物と(B)イソシアネート化合物とをそれぞれ別に調製しておき、成形体を製造(成形)する直前(使用直線)に混合する原料混合物、すなわち「2液型」の原料混合物が調製(製造)されてもよい。
【0059】
本開示においては、前記の通り、(A)成分として、(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、および(A−3)アミンポリオールの3種類を併用している。それゆえ、本開示においては、ポリウレタン樹脂組成物が「2液型」であれば、(A)水酸基含有化合物としては、少なくともこれら3種類のポリオールを予め混合したポリオール混合物(あるいはポリオール組成物もしくは水酸基含有化合物組成物)を調製すればよい。
【0060】
また、後述する実施例および参考例では、(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、および(A−3)アミンポリオールに加えて、発泡剤である(C)水と(D)触媒とを混合してポリオール混合物を調製している。なお、(B)イソシアネート化合物に他の成分を混合した場合には、前記ポリオール混合物と同様に、便宜上「イソシアネート混合物(あるいはイソシアネート組成物)」と称すればよい。さらに、(D)触媒以外にその他の成分を配合してもよい場合は、その種類に応じて、ポリオール混合物またはイソシアネート混合物にその他の成分を配合すればよい。
【0061】
後述する比較例1〜3に示すように、ポリウレタン樹脂組成物の製造に際して、原料である(A)成分として、(A−1)ヒマシ油系ポリオールのみを用いた場合、成形体が収縮しやすくなる(比較例2参照)。また、(A)成分として(A−2)ポリブタジエンポリオールのみを用いた場合、成形体の透水性(吸水率)が高くなる(比較例1参照)。
【0062】
これに対して、(A−1)ヒマシ油系ポリオールおよび(A−2)ポリブタジエンポリオールを併用すると、成形体の収縮を有効に抑制できるとともに透水性(吸水率)も有効に抑制できることが明らかとなった。ただし、(A)成分として、(A−1)ヒマシ油系ポリオールおよび(A−2)ポリブタジエンポリオールのみを必須成分として用いた場合、ポリウレタン樹脂組成物を製造するための原料混合物を「2液型」とした場合に、ポリオール混合物の長期安定性(貯蔵安定性)が低下することも明らかとなった(比較例3参照)。そこで、さらなる鋭意検討の結果、(A−1)ヒマシ油系ポリオールおよび(A−2)ポリブタジエンポリオールに加えて(A−3)アミンポリオールを併用することで、ポリオール混合物の長期安定性を向上できることが明らかとなった(実施例1〜13参照)。
【0063】
さらに、(A)水酸基含有化合物として(A−3)アミンポリオールを併用した場合には、(A)成分および(B)成分の具体的な種類にもよるが、得られる成形体において、その硬度を良好に調節できることも明らかとなった。(A−3)アミンポリオールの配合量を多くする(すなわち混合条件2を小さくする)と、得られる成形体の硬度を上昇させることができる(参考例2参照)。そこで、ポリウレタン樹脂組成物の用途に応じて(A−3)アミンポリオールの配合量を調節することで、得られる成形体において好適な硬度を実現することが可能になる。
【0064】
したがって、本開示には、(A)水酸基含有化合物、(B)イソシアネート化合物、および(C)水(必要に応じて(D)触媒等のその他の成分)を配合して用いる「1液型」の原料混合物により得られるポリウレタン樹脂組成物だけでなく、(A)水酸基含有化合物である(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、および(A−3)アミンポリオールを含有する組成物(ポリオール混合物)と(B)イソシアネート化合物(あるいはイソシアネート混合物)との組合せ(セット)である「2液型」の原料混合物により得られるポリウレタン樹脂組成物も含まれる。
【0065】
また、本開示に係るポリウレタン樹脂組成物においては、前記の通り(B)イソシアネート化合物の具体的な種類は特に限定されない。そのため、本開示には、ポリウレタン樹脂組成物またはポリウレタン成形体を得る目的で、(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、および(A−3)アミンポリオールを含有するポリオール混合物(ポリオール組成物または水酸基含有化合物組成物)が含まれてもよい。なお、前記の通り、発泡剤である(C)水、並びに、必要に応じて配合される(D)触媒等のその他の成分は、例えば、ポリオール混合物に予め混合されていればよい。
【0066】
なお、本開示において、ポリオール混合物の長期安定性の評価は特に限定されず、後述する実施例で説明した方法で評価すればよく、あるいは、公知の他の方法で評価してもよい。また、本開示において、ポリオール混合物の粘度は特に限定されないが、6000mPa・s以下であることが好ましく、5000mPa・s以下であることがより好ましい。ポリオール混合物の粘度がこの上限値以下であれば、当該ポリオール混合物および原料混合物の取扱性がより良好なものとなり、ポリウレタン樹脂組成物の成形性を良好なものとすることができる。なお、ポリオール混合物の粘度は後述する実施例で説明した測定方法により測定すればよい。
【0067】
[成形体および電気電子部品]
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物は、様々な用途に使用可能であるが、特に、電気電子部品用途に好適に用いることができる。本開示に係るポリウレタン樹脂組成物からなる成形体、すなわち、前述した原料混合物を反応させて形成(硬化もしくは製造)される成形体(硬化体もしくは硬化物)では、良好な電気絶縁性と保護性能を実現することができるだけでなく、前記の通り、良好な低透水性、非収縮性、独立気泡率を実現することができ、さらに低密度化および良好な弾性率も実現することができる。したがって、本開示には、前記構成のポリウレタン樹脂組成物からなる成形体も含まれる。本開示に係る成形体は、電気電子部品において被覆材料または封止材料として好適に用いることができる。
【0068】
本開示に係る成形体の具体的な構成は特に限定されないが、その密度は、100〜400kg/m3 の範囲内であることが好ましく、120〜380kg/m3 の範囲内であることがより好ましい。密度がこの範囲内であれば、電気電子部品の被覆材料または封止材料として用いた場合に、当該電気電子部品の重量増加を抑制し軽量化に寄与することができる。なお、成形体の密度は、後述する実施例で説明した方法により測定(算出)すればよい。
【0069】
また、本開示に係る成形体の硬度(shore A)は、1〜80の範囲内であることが好ましく、10〜70の範囲内であることがより好ましい。硬度がこの範囲内であれば、電気電子部品の被覆材料または封止材料として用いた場合、当該電気電子部品が備える構造等に影響を及ぼすおそれを回避または抑制することができる。例えば、電気電子部品が電子基板であるときに、硬度が高すぎるとハンダクラック等のダメージが生じたり、構造の剥離等が生じたりするするおそれがある。これに対して、成形体の硬度が前記の範囲内であれば、被覆材料または封止材料として軟らか過ぎず硬過ぎない「程よい」(良好な)硬度を実現することができる。なお、成形体の硬度(shore A)は、後述する実施例で説明した方法により測定すればよい。
【0070】
また、本開示に係る成形体の独立気泡率は、50%以上であることが好ましく、70%以上であることが好ましい。独立気泡率がこの下限値以上であれば、電気電子部品の被覆材料または封止材料として用いた場合に透水性が高くなることを有効に抑制することができる。一般に、独立気泡率が低いと透水性(吸水率)が高くなる傾向があり、成形体(被覆材料または封止材料)が吸水すると電気絶縁性が低下するおそれがあるが、成形体が良好な独立気泡率を有することで、透水性を低くして電気絶縁性の低下を抑制または防止することができる。また、独立気泡率がこの範囲内であれば、成形体の硬度を「程よい」範囲にしやすくなる。なお、成形体の独立気泡率は、後述する実施例で説明した方法により測定(算出)すればよい。
【0071】
また、本開示に係る成形体の反発弾性率は、1〜50%の範囲内であることが好ましく、3〜40%の範囲内であることが好ましい。反発弾性率がこの範囲内であれば、電気電子部品の被覆材料または封止材料として用いた場合に、良好な衝撃吸収性を実現することができるので、被覆または封止された電気電子部品の構造を良好に保護することができる。なお、成形体の反発弾性率は、後述する実施例で説明した方法により測定すればよい。
【0072】
また、本開示に係る成形体の吸水率は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることが好ましい。吸水率がこの上限値以下であれば、当該成形体の透水性が十分に低いということができるので、電気電子部品の被覆材料または封止材料として用いた場合に、吸水による電気絶縁性の低下を良好に抑制または防止することができる。なお、成形体の吸水率は、後述する実施例で説明した方法により測定(算出)すればよい。
【0073】
また、本開示に係る成形体の非収縮性の評価方法は特に限定されず、後述する実施例で説明したように、形成(硬化または製造)翌日に目視により評価すればよく、あるいは、公知の他の方法で評価してもよい。一般に、ポリウレタン樹脂は、(A)水酸基含有化合物と(B)イソシアネート化合物とが反応して硬化した後に収縮するため、収縮の程度が大きければ、電気電子部品の被覆材料または封止材料として用いた場合に、その構造が破損したり剥離したりするおそれがある。本開示では、目視で収縮による変形が確認できなければ、電気電子部品の構造に影響がほとんどないと判断できるので、十分な非収縮性を有していると評価することができる。
【0074】
本開示に係るポリウレタン樹脂組成物は、前記の通り電気電子部品用途に好適に用いることができ、本開示に係る成形体は、前記の通り電気電子部品の被覆材料または封止材料(あるいは他の構造)として好適に用いることができる。それゆえ、本開示には、前記構成のポリウレタン樹脂組成物からなる成形体を備える電気電子部品も含まれる。本開示に係る電気電子部品は、本開示に係る成形体(ポリウレタン成形体)を、被覆部材または封止部材もしくは他の部材として備えているものであればよい。
【0075】
本開示に係る電気電子部品の具体的な構成は特に限定されず、公知の電気部品または公知の電子部品を挙げることができる。具体的な電気電子部品としては、例えば、トランス、コンデンサ、放電安定器、車載電装部品、車載センサ類、電子基板等が挙げられる。また、本開示に係る電気電子部品が使用される製品は特に限定されないが、例えば、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機、太陽光パネル、電動工具、各種の輸送機器(移動装置、具体的には、電車、自動車、バイク、電動自転車等)を挙げることができる。それゆえ、本開示に係る電気電子部品は、これらの製品に用いられる部品であればよい。
【0076】
本開示に係る電気電子部品の製造方法は特に限定されず、当該電気電子部品の種類に応じて公知の各種の方法を採用することができる。例えば、本開示に係る成形体が被覆材料として用いられる場合には、成形型の内部に被覆処理前の電気電子部品を配置し、前述したように原料混合物を調製し、この原料組成物を注入して一体成形することにより、本開示に係る電気電子部品を製造することができる。原料組成物の硬化反応温度は特に限定されないが、好ましくは15〜120℃の範囲内を挙げることができる。あるいは、被覆処理前の電気電子部品の被覆対象部位に公知の接着層を形成し、予め成形した成形体を接着する製造方法であってもよい。
【0077】
このように、本開示に係るポリウレタン樹脂組成物では、原料である(A)水酸基含有化合物として、(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、およびに(A−3)アミンポリオールを用いるとともに、(A−2)ポリブタジエンポリオールに対する(A−1)ヒマシ油系ポリオールの混合比を質量比で半分以下とすることで、得られるポリウレタン成形体の透水性を相対的に低くすることができるだけでなく、当該成形体の収縮を有効に抑制して良好な非収縮性を実現することができる。これにより、良好な電気絶縁性を実現することができるだけでなく、成形体の収縮の程度が小さいため電気電子部品に精細な構造等が含まれているとしても当該構造等に与える影響を有効に抑制することができる。その結果、特に電気電子部品用途に好適に用いることが可能なポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【実施例】
【0078】
本発明について、実施例、比較例および参考例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例等におけるポリオール混合物およびポリウレタン成形体の物性等の測定または評価は次に示すようにして行った。
【0079】
(ポリオール混合物の貯蔵安定性)
各実施例、各比較例、または各参考例で得られたポリオール混合物((A)成分、(C)成分および(D)成分の混合物)を、保管容器内に密閉し、25℃で90日間静置した。その後、ポリオール混合物に分離が生じているか否かを目視により観察した。静置後のポリオール混合物に分離が生じていない場合を「○」、分離が生じている場合を「×」として評価した。
【0080】
(ポリオール混合物の粘度)
各実施例、各比較例、または各参考例で得られたポリオール混合物の粘度を、JIS Z−8803に準拠して回転粘度計(東機産業株式会社または東京計器株式会社製、商品名:B型粘度計BM)を用いて測定した。
【0081】
(ポリウレタン成形体の外観)
各実施例、各比較例、または各参考例で得られたポリウレタン成形体について、その製造の翌日の外観を目視により観察した。ポリウレタン成形体の表面のセルが粗くないとともに表面が荒れていない場合(表面の均質性が優れている場合)を「○」、表面のセルが粗くないが表面がやや荒れている場合(表面の均質性が良好な場合)を「△」、表面のセルが粗い場合および/または表面が荒れている場合(表面の均質性が低い場合)を「×」として評価した。
【0082】
(ポリウレタン成形体の評価用試料の作成)
各実施例、各比較例、または各参考例で得られたポリウレタン成形体を、製造してから温度23℃±2℃かつ湿度50%±5%の環境で24時間静置した。その後、ポリウレタン成形体の中心部(コア部)から、4cm×4cm×4cm(密度、硬度、および反発弾性率)または2cm×3cm×4cm(独立気泡率)または4cm×4cm×1.5cm(吸水率)の寸法で切り出して評価用試料とした。
【0083】
(ポリウレタン成形体の密度)
各実施例、各比較例、または各参考例で得られたポリウレタン成形体の評価用試料について、その密度をJIS K−7222に準拠して測定した。なお、単位はkg/m3 とした。
【0084】
(ポリウレタン成形体の硬度)
各実施例、各比較例、または各参考例で得られたポリウレタン成形体の評価用試料について、その硬度(shore A)を、JIS K−7312に準拠してゴム硬度計(高分子計器株式会社製、商品名:アスカーA型硬度計)により測定した。
【0085】
(ポリウレタン成形体の独立気泡率)
各実施例、各比較例、または各参考例で得られたポリウレタン成形体の評価用試料について、その独立気泡率を、ASTM D2856−70に準拠して空気比較式比重計(東芝ベックマン株式会社製、商品名:モデル930)により測定した。
【0086】
(ポリウレタン成形体の反発弾性率)
各実施例、各比較例、または各参考例で得られたポリウレタン成形体の評価用試料について、その反発弾性率を、JIS K−6400に準拠して測定した。
【0087】
(ポリウレタン成形体の吸水率)
各実施例、各比較例、または各参考例で得られたポリウレタン成形体の評価用試料を、50℃で24時間乾燥し、乾燥剤を同封した容器内で放冷し、乾燥後の評価用試料の重量を精密天秤で測定した。次に、この評価用試料を蒸留水中に完全に浸漬して20℃で24時間経過した後に、当該評価用試料を取り出し、その表面の水をふき取ってから精密天秤によりその重量を測定した。蒸留水に浸漬する前の評価用試料の重量をW0とし、蒸留水に浸漬した後の重量をW1としたときに、次の計算式に基づいて吸水率を算出した。
【0088】
吸水率[%]={(W1−W0)/W0}×100
(ポリウレタン成形体の非収縮性)
ポリウレタン成形体が収縮すれば変形が生じる。そこで、各実施例、各比較例、または各参考例で得られたポリウレタン成形体について、その製造の翌日の変形の有無を目視により観察した。変形が生じていない場合を「○」、変形が生じている場合を「×」として評価した。
【0089】
(ポリウレタン樹脂組成物の原料)
各実施例、各比較例、または各参考例におけるポリウレタン樹脂組成物では、原料である(A)水酸基含有化合物として、表1に示す2種類の(A−1)ヒマシ油系ポリオール、2種類の(A−2)ポリブタジエンポリオール、および3種類の(A−3)アミンポリオールをそれぞれ適宜選択して組み合わせて用いた。
【0090】
【表1】
【0091】
また、各実施例、各比較例、または各参考例におけるポリウレタン樹脂組成物では、原料である(B)イソシアネート化合物として、表2に示す2種類の化合物のいずれかを用いた。また、(A)水酸基含有化合物と(B)イソシアネート化合物との反応に用いられる(D)触媒としては、表2に示す2種類の触媒を併用した。
【0092】
【表2】
【0093】
なお、後述する各実施例、各比較例、または各参考例においては、ポリウレタン樹脂組成物の製造に際しての各成分の組成を表3〜表5にまとめているが、これら表においては、(A)水酸基含有化合物、(B)イソシアネート化合物、および(D)触媒の具体的な種類は、表1または表2に示す略号で記載している。
【0094】
(実施例1)
(A)水酸基含有化合物、(C)水、および(D)触媒として表3に示す種類(略号)のものを用い、これらを表3に示す配合量で配合して混合することにより、実施例1に係るポリオール混合物を調製した。なお、このポリオール混合物は、表3に示すように混合条件1および2の双方を満たしている。調製したポリオール混合物について、前記の通り、貯蔵安定性を評価し粘度を測定した。その結果を表3に示す。
【0095】
次に、実施例1に係るポリオール混合物に対して表3に示す種類(略号)の(B)イソシアネート化合物を表3に示す配合量で配合し、回転数3000rpmの高速ミキサーを用いて7秒間混合した。これにより、本実施例1に係るポリウレタン樹脂組成物を製造するための原料混合物を調製した。なお、この原料混合物のイソシアネートインデックスは表3に示すように100である。
【0096】
調製した原料混合物を1Lの開放式モールド(成形型)に注入し、所定時間養生して硬化させた後に脱型した。これにより、実施例1に係るポリウレタン成形体(ポリウレタン樹脂組成物またはポリウレタンフォーム)を得た。得られたポリウレタン成形体について、前記の通り、諸物性を評価または測定した。その結果を表3に示す。
【0097】
(実施例2〜7)
(A)水酸基含有化合物、(C)水、および(D)触媒の種類または配合量を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜7に係るポリオール混合物を調製した。なお、これらポリオール混合物は、いずれも表3に示すように、混合条件1および2の双方を満たしている。これらポリオール混合物について、前記の通り、貯蔵安定性を評価し粘度を測定した。その結果を表3に示す。
【0098】
また、(B)イソシアネート化合物の種類または配合量を、これらポリオール混合物に対して表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2〜7に係るポリウレタン樹脂組成物を製造するための原料混合物を調製するとともに、実施例2〜7に係るポリウレタン成形体を得た。なお、調製した各原料混合物のイソシアネートインデックスはいずれも表3に示すように100である。これらポリウレタン成形体について、前記の通り、諸物性を評価または測定した。その結果を表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
(実施例8〜13)
(A)水酸基含有化合物、(C)水、および(D)触媒の種類または配合量を表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8〜13に係るポリオール混合物を調製した。なお、これらポリオール混合物は、いずれも表4に示すように、混合条件1および2の双方を満たしている。これらポリオール混合物について、前記の通り、貯蔵安定性を評価し粘度を測定した。その結果を表4に示す。
【0101】
また、(B)イソシアネート化合物の種類または配合量を、これらポリオール混合物に対して表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして実施例8〜13に係るポリウレタン樹脂組成物を調製するとともに、実施例8〜13に係るポリウレタン成形体を得た。なお、調製した各ポリウレタン樹脂組成物のイソシアネートインデックスはいずれも表4に示すように100である。これらポリウレタン成形体について、前記の通り、諸物性を評価または測定した。その結果を表4に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
(比較例1〜3)
(A)水酸基含有化合物として、(A−1)ヒマシ油系ポリオール、(A−2)ポリブタジエンポリオール、および(A−3)アミンポリオールのいずれかを配合しないとともに、各成分の種類または配合量を表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜3に係るポリオール混合物を調製した。これらポリオール混合物について、前記の通り、貯蔵安定性を評価し粘度を測定した。その結果を表5に示す。
【0104】
また、(B)イソシアネート化合物の種類または配合量を、これらポリオール混合物に対して表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1〜3に係るポリウレタン樹脂組成物を製造するための原料混合物を調製するとともに、比較例1〜3に係るポリウレタン成形体を得た。なお、調製した各原料混合物のイソシアネートインデックスはいずれも表5に示すように100である。これらポリウレタン成形体について、前記の通り、諸物性を評価または測定した。その結果を表5に示す。
【0105】
(参考例1、比較例4、および参考例2,3)
混合条件1の下限に満たない組成(参考例1)、混合条件1の上限を超える組成(比較例4)、混合条件2の下限に満たない組成(参考例2)、または混合条件2の上限を超える組成(参考例3)となるように、各成分の種類または配合量を表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4または参考例1〜3に係るポリオール混合物を調製した。これらポリオール混合物について、前記の通り、貯蔵安定性を評価し粘度を測定した。その結果を表5に示す。
【0106】
また、(B)イソシアネート化合物の種類または配合量を、これらポリオール混合物に対して表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして比較例4または参考例1〜3に係るポリウレタン樹脂組成物を製造するための原料混合物を調製するとともに、比較例4または参考例1〜3に係るポリウレタン成形体を得た。なお、調製した各原料混合物のイソシアネートインデックスはいずれも表5に示すように100である。これらポリウレタン成形体について、前記の通り、諸物性を評価または測定した。その結果を表5に示す。
【0107】
【表5】
【0108】
(実施例、比較例および参考例の対比)
実施例1〜13に示すように、本開示に係るポリウレタン樹脂組成物においては、予め調製されるポリオール混合物が良好な貯蔵安定性(長期安定性)を示すとともに、その粘度も取扱いやすい範囲内となっている。また、本開示に係るポリウレタン成形体(すなわち本開示に係るポリウレタン樹脂組成物)であれば、いずれも吸水率は20%以下に低下しているとともに、良好な非収縮性を実現することができる。
【0109】
また、本開示に係るポリウレタン成形体は、その外観も良好であるだけでなく、硬度(shore A)も15〜60の範囲内に入っており、さらに、発泡剤である(C)水の使用量に比較して相対的に低密度となっている。また、本開示に係るポリウレタン成形体であれば、良好な反発弾性率を実現できるだけでなく独立気泡率も相対的に高くなっている。
【0110】
これに対して、比較例1〜3では、(A)水酸基含有化合物として、必須である(A−1)〜(A−3)の3種類を用いなければ、得られる成形体の非収縮性が悪化したり、吸水率が高くなったり、その外観が悪くなったり、ポリオール混合物の貯蔵安定性が不十分であったりする。また、比較例4のように混合条件1の上限を超えれば、得られる成形体の非収縮性が悪化するとともに外観も悪化する。
【0111】
ここで、参考例1では、ポリウレタン樹脂組成物は混合条件1の下限から外れており、成形体の独立気泡率が比較的低く、その外観も悪化しているが、従来と同程度の吸水率を実現することができるとともに良好な非収縮性を実現することができる。また、ポリオール混合物においても良好な貯蔵安定性および粘度を実現することができる。さらに、参考例2または3では、いずれも混合条件2を満たしておらず、成形体の硬度が高くなり過ぎたりポリオール混合物の貯蔵安定性が不十分であったりするが、成形体の吸水率は実施例と同程度に低く、良好な非収縮性を実現できるとともに、独立気泡率および外観も良好なものとなっている。
【0112】
それゆえ、本開示に係るポリウレタン樹脂組成物においては、(A)水酸基含有化合物として(A−1)〜(A−3)の3種類を併用するとともに、混合条件1の上限以下となるように(A−1)ヒマシ油系ポリオールおよび(A−2)ポリブタジエンポリオールを配合すれば、得られる成形体において良好な低透水性および非収縮性を実現できることがわかる。また、混合条件1を満たせば、成形体の独立気泡率が向上し良好な外観が実現できるとともに、さらに混合条件2を満たせば、成形体の硬度を良好な範囲内に収めることができるとともに、ポリオール混合物の長期安定性を向上できることがわかる。
【0113】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、低い透水性および良好な非収縮性が求められるポリウレタンフォームを形成する分野に好適に用いることができ、特に、電気電子部品の被覆材料または封止材料等のように電気電子部品の分野に広く好適に用いることができる。