特許第6980558号(P6980558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980558
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】評価装置及び評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   G01B11/24 A
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-27537(P2018-27537)
(22)【出願日】2018年2月20日
(65)【公開番号】特開2019-144063(P2019-144063A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2020年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】荒木 要
(72)【発明者】
【氏名】滝下 峰史
(72)【発明者】
【氏名】上野 宏和
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−137265(JP,A)
【文献】 特開2015−148592(JP,A)
【文献】 特開2017−075880(JP,A)
【文献】 特開2010−169450(JP,A)
【文献】 米国特許第05521707(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01B 21/00−21/32
B23Q 17/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の中心軸に対して螺旋状に前記測定対象物の表面に形成された第1溝を有する前記測定対象物に対して、第1位置で測定される、前記第1溝の幅方向に沿った前記第1溝の第1断面の形状を評価する評価装置であって、
前記第1断面の設計値と同じ設計値である第2断面を有する第2溝が形成された基準物と、
前記中心軸に沿って移動し、非接触で断面形状を測定するセンサを備え、第2位置で前記センサに前記第2断面の形状を測定させる処理、及び、複数の測定位置で前記センサに前記第1溝の幅方向に沿った前記第1溝の断面の形状を測定させる処理をする測定部と、
複数の前記測定位置で前記第1溝の断面の形状が測定されて得られた複数の断面の形状データのそれぞれと、前記第2位置で前記第2断面の形状が測定されて得られた前記第2断面の形状データとの差分を示す複数の差分データを算出する第1算出部と、
前記差分データの近似直線の傾き値を算出する処理を、複数の前記差分データのそれぞれに対して実行することにより、複数の前記傾き値を算出する第2算出部と、
複数の前記測定位置と複数の前記傾き値との関係を示す傾きデータの近似直線において、前記傾き値がゼロの位置を前記第1位置と決定する決定部と、
前記第2断面の形状データと、前記決定部が決定した前記第1位置で、前記測定部が前記センサに前記第1断面の形状を測定させて得られた前記第1断面の形状データとの差分に基づいて、前記第1断面の形状を評価する評価部と、を備える評価装置。
【請求項2】
前記決定部は、複数の前記傾き値のうち、外れ値があるか否かを判断し、前記外れ値があると判断したとき、前記外れ値を除いて前記傾きデータの近似直線を算出する、請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記第2算出部は、前記差分データの近似直線を算出するのに用いるサンプリング数を、複数の前記測定位置の数より多くし、サンプリングされた複数の差分値のうちで外れ値があるか否かを判断せずに、前記差分データの近似直線を算出する処理を、複数の前記差分データのそれぞれに対して実行する、請求項2に記載の評価装置。
【請求項4】
前記第2溝の深さ方向及び幅方向の両方と直交する方向において、前記第2溝の幅方向に沿った前記第2溝の断面は、同じ形状及び同じ寸法を有しており、
前記第2断面は、前記第2溝の幅方向に沿った前記第2溝の断面である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の評価装置。
【請求項5】
測定対象物の中心軸に対して螺旋状に前記測定対象物の表面に形成された第1溝を有する前記測定対象物に対して、第1位置で測定される、前記第1溝の幅方向に沿った前記第1溝の第1断面の形状を評価する評価方法であって、
前記第1断面の設計値と同じ設計値である第2断面を有する第2溝が形成された基準物が予め用意されており、前記中心軸に沿って移動し、非接触で断面形状を測定するセンサに第2位置で前記第2断面の形状を測定させる第1測定ステップと、
複数の測定位置で前記センサに前記第1溝の幅方向に沿った前記第1溝の断面の形状を測定させる第2測定ステップと、
複数の前記測定位置で前記第1溝の断面の形状が測定されて得られた複数の断面の形状データのそれぞれと、前記第2位置で前記第2断面の形状が測定されて得られた前記第2断面の形状データとの差分を示す複数の差分データを算出する第1算出ステップと、
前記差分データの近似直線の傾き値を算出する処理を、複数の前記差分データのそれぞれに対して実行することにより、複数の前記傾き値を算出する第2算出ステップと、
複数の前記測定位置と複数の前記傾き値との関係を示す傾きデータの近似直線において、前記傾き値がゼロの位置を前記第1位置と決定する決定ステップと、
前記決定ステップが決定した前記第1位置で前記センサに前記第1断面の形状を測定させる第3測定ステップと、
前記第2断面の形状データと、前記第3測定ステップで前記センサに前記第1断面の形状を測定させて得られた前記第1断面の形状データとの差分に基づいて、前記第1断面の形状を評価する評価ステップと、を備える評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋状の溝が表面に形成された測定対象物において、その溝の断面形状を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、長さ1m、直径30cm以上の高重量且つ長大な金属丸棒の表面を切削加工機で加工して、金属丸棒の表面に螺旋状の溝を形成し、スクリュー、プロペラ、ドリル等の加工物を製造することが行われている。このような加工物は、不良品の製造を未然に防ぐために、溝の形状が評価される。例えば、加工物が受側の加工物に嵌合されるオスメス構造を持つ加工物であれば、加工物を切削加工機からクレーンで持ち上げて、受側の加工物に嵌合させ、隙間ゲージで数十箇所の隙間を手作業で測定し、加工物の形状が評価される。そして、形状を評価した結果、問題があれば、加工物は、再度、クレーンで持ち上げられて、切削加工機に設置され、問題箇所が加工される。以上のことが繰り返されて、最終的に基準を満たす溝形状を有する加工物が製造される。このように、従来の評価手法では、切削加工機からクレーンを用いて加工物を載せ替える作業が必要となるため、作業日数がかかるという問題があった。そこで、この問題を解消するための新たな評価手法が望まれる。
【0003】
かかる背景のもと、特許文献1では、螺旋状の溝が表面に形成された測定対象物の形状を高分解能且つ短時間で計測する技術が開示されている。詳細には、特許文献1では、測定対象物の中心軸を中心に回転しながら中心軸と平行に移動する測定対象物の溝の断面形状をセンサ部により非接触で計測させて、溝の全域の形状の測定データを取得する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、球面レンズのような凹凸面を有する測定対象物において設計値に対する修正部分を精度良く特定する三次元測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−148592号公報
【特許文献2】特開2002−122423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2の手法では、周囲温度等の設置環境に応じて生じるセンサの誤差、及び、センサが原理的に持つ測定誤差が何ら考慮されていないので、このような誤差の影響により測定対象物の形状の加工精度を正しく評価することができないという課題がある。
【0007】
また、特許文献1、2の手法では、熱膨張又は熱収縮による測定対象物の形状変化が何ら考慮されていないので、測定対象物の測定値がこの形状変化の影響を受けている場合、測定値と設計値とを単に比較しただけでは、測定対象物の加工精度を正しく評価できないという課題がある。
【0008】
本発明の目的は、螺旋状の溝が表面に形成された測定対象物に対して、センサの誤差、測定対象物の形状変化にかかわらず、溝の断面形状を正確に評価できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る評価装置は、測定対象物の中心軸に対して螺旋状に前記測定対象物の表面に形成された第1溝を有する前記測定対象物に対して、第1位置で測定される、前記第1溝の幅方向に沿った前記第1溝の第1断面の形状を評価する評価装置であって、前記第1断面の設計値と同じ設計値である第2断面を有する第2溝が形成された基準物と、前記中心軸に沿って移動し、非接触で断面形状を測定するセンサを備え、第2位置で前記センサに前記第2断面の形状を測定させる処理、及び、複数の測定位置で前記センサに前記第1溝の幅方向に沿った前記第1溝の断面の形状を測定させる処理をする測定部と、複数の前記測定位置で前記第1溝の断面の形状が測定されて得られた複数の断面の形状データのそれぞれと、前記第2位置で前記第2断面の形状が測定されて得られた前記第2断面の形状データとの差分を示す複数の差分データを算出する第1算出部と、前記差分データの近似直線の傾き値を算出する処理を、複数の前記差分データのそれぞれに対して実行することにより、複数の前記傾き値を算出する第2算出部と、複数の前記測定位置と複数の前記傾き値との関係を示す傾きデータの近似直線において、前記傾き値がゼロの位置を前記第1位置と決定する決定部と、前記第2断面の形状データと、前記決定部が決定した前記第1位置で、前記測定部が前記センサに前記第1断面の形状を測定させて得られた前記第1断面の形状データとの差分に基づいて、前記第1断面の形状を評価する評価部と、を備える。
【0010】
本発明の一態様の第1効果について説明する。測定対象物に形成された第1溝の全体において断面形状の測定をするのでは、測定時間が長くなる。本発明の一態様では、第1溝の断面のうち、第1位置でセンサによって測定される第1断面の形状を評価の対象とする。基準物には、第2断面を有する第2溝が形成されている。第2断面は、第1断面の形状を評価するときに、基準となる断面である。このため、第2断面の設計値(設計形状及び設計寸法)は、第1断面の設計値と同じにされている。
【0011】
本発明の一態様は、第1断面の形状データと第2断面の形状データとの差分を基にして、第1断面の形状を評価する。周囲環境によるセンサの測定誤差、センサが原理的に持つ測定誤差があったとしても、これらの測定誤差は、第1断面の形状データ、第2断面の形状データの両方に含まれる。上記差分を求めることで、これらの測定誤差がなくなる。また、熱膨張、熱収縮により測定対象物に形状変化があった場合、基準物も測定対象物と同様に形状変化している。上記差分を求めることで、この形状変化の成分がなくなる。本発明の一態様によれば、上記差分を基にして、第1断面の形状を評価するので、第1断面の形状を正確に評価することができる。
【0012】
本発明の一態様の第2効果について説明する。本発明の一態様は、第1位置で測定される第1断面の形状を評価の対象とする。第1位置から中心軸に沿って僅かにずれるだけで、第1溝の断面の形状及び寸法が異なることがある(例えば、第1溝が捻れながら、螺旋状に延びている)。このような第1溝の断面形状の測定に、本発明の一態様が適用される場合、第1位置にセンサを正確に位置決めして、第1溝の断面(すなわち、第1断面)の形状を測定する必要がある。第1位置は、測定対象物及び基準物が配置された状態の評価装置の設計図面等で特定できる。しかしながら、設計図面上の第1位置と実際の第1位置との誤差は不可避的に発生し、この誤差が大きければ、第1断面の形状を正確に測定することができない。
【0013】
そこで、本発明の一態様は、測定対象物の中心軸に沿った所定範囲を設定し(この範囲に第1位置が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい)、所定範囲に含まれる複数の測定位置を基にして、第1位置を決定する。複数の測定位置が、4つの測定位置P1〜P4を例にして詳しく説明する。第1算出部は、測定位置P1で第1溝の断面の形状が測定されて得られたその断面の形状データと第2断面の形状データとの差分を示す差分データD1、測定位置P2で第1溝の断面の形状が測定されて得られたその断面の形状データと第2断面の形状データとの差分を示す差分データD2、測定位置P3で第1溝の断面の形状が測定されて得られたその断面の形状データと第2断面の形状データとの差分を示す差分データD3、測定位置P4で第1溝の断面の形状が測定されて得られたその断面の形状データと第2断面の形状データとの差分を示す差分データD4を算出する。
【0014】
第2算出部は、差分データD1の近似直線の傾き値V1、差分データD2の近似直線の傾き値V2、差分データD3の近似直線の傾き値V3、差分データD4の近似直線の傾き値V4を算出する。測定位置P1〜P4と傾き値V1〜V4との関係を示す傾きデータの近似直線において、傾き値がゼロとなる測定位置が、第1位置となる。なぜならば、第1断面と第2断面とは、設計値が同じなので、第1断面の形状データと第2断面の形状データとの差分データの近似直線の傾き値は、理想的には、ゼロとなるからである(実際には、第1溝の加工誤差等が原因でゼロとはならず、上述したように、評価部は、第1断面の形状データと第2断面の形状データとの差分に基づいて、第1断面の形状を評価する)。以上説明したように、本発明の一態様によれば、第1位置を正確に特定することができるので、第1断面の形状を正確に測定することができる。
【0015】
傾き値がゼロとは、傾き値を丸めることにより(例えば、端数の切り上げ、切り捨て)、ゼロにした場合も含む(傾き値は、例えば、測定対象物および基準物が載置されたステージの移動精度等に応じて、丸められることがある)。また、センサが第1断面の形状を正確に測定できる位置であれば、傾き値が厳密にゼロを示す位置でなくてもよく、傾き値がほぼゼロの位置も、傾き値がゼロの位置に含まれる。
【0016】
上記構成において、前記決定部は、複数の前記傾き値のうち、外れ値があるか否かを判断し、前記外れ値があると判断したとき、前記外れ値を除いて前記傾きデータの近似直線を算出する。
【0017】
本発明の一態様は、傾きデータの近似直線を基にして第1位置を決定するので、複数の測定位置の数(言い換えれば、複数の傾き値の数)が少なくても、第1位置を決定することができる。傾き値の中に外れ値が含まれている場合、複数の測定位置の数が少ないと、傾きデータの近似直線に及ぼす外れ値の影響が大きくなる。これにより、第1位置を正確に決定することができなくなる。この構成によれば、外れ値を除外するので、第1位置を正確に決定することができる。
【0018】
上記構成において、前記第2算出部は、前記差分データの近似直線を算出するのに用いるサンプリング数を、複数の前記測定位置の数より多くし、サンプリングされた複数の差分値のうちで外れ値があるか否かを判断せずに、前記差分データの近似直線を算出する処理を、複数の前記差分データのそれぞれに対して実行する。
【0019】
差分データの近似直線を算出するのに用いるサンプリング数(差分値の数)が多ければ、サンプリングされた複数の差分値の中に外れ値が含まれていても、外れ値が差分データの近似直線に与える影響は小さい。よって、外れ値を考慮することなく、差分データの近似直線の算出が可能となる。この構成は、差分データの近似直線を算出するのに用いるサンプリング数を、傾きデータの近似直線の算出に用いる複数の測定位置の数より多くすることにより、差分データの近似直線を算出するのに用いるサンプリング数が多くなるようにしている。
【0020】
上記構成において、前記第2溝の深さ方向及び幅方向の両方と直交する方向において、前記第2溝の幅方向に沿った前記第2溝の断面は、同じ形状及び同じ寸法を有しており、前記第2断面は、前記第2溝の幅方向に沿った前記第2溝の断面である。
【0021】
この構成によれば、第2溝の幅方向に沿った第2溝の断面であれば、第2断面として用いることができる。このため、センサを第2位置に位置決めする精度が高くなくても、第2断面の形状を正確に測定することができる。
【0022】
本発明の他の態様に係る評価方法は、測定対象物の中心軸に対して螺旋状に前記測定対象物の表面に形成された第1溝を有する前記測定対象物に対して、第1位置で測定される、前記第1溝の幅方向に沿った前記第1溝の第1断面の形状を評価する評価方法であって、前記第1断面の設計値と同じ設計値である第2断面を有する第2溝が形成された基準物が予め用意されており、前記中心軸に沿って移動し、非接触で断面形状を測定するセンサに第2位置で前記第2断面の形状を測定させる第1測定ステップと、複数の測定位置で前記センサに前記第1溝の幅方向に沿った前記第1溝の断面の形状を測定させる第2測定ステップと、複数の前記測定位置で前記第1溝の断面の形状が測定されて得られた複数の断面の形状データのそれぞれと、前記第2位置で前記第2断面の形状が測定されて得られた前記第2断面の形状データとの差分を示す複数の差分データを算出する第1算出ステップと、前記差分データの近似直線の傾き値を算出する処理を、複数の前記差分データのそれぞれに対して実行することにより、複数の前記傾き値を算出する第2算出ステップと、複数の前記測定位置と複数の前記傾き値との関係を示す傾きデータの近似直線において、前記傾き値がゼロの位置を前記第1位置と決定する決定ステップと、前記決定ステップが決定した前記第1位置で前記センサに前記第1断面の形状を測定させる第3測定ステップと、前記第2断面の形状データと、前記第3測定ステップで前記センサに前記第1断面の形状を測定させて得られた前記第1断面の形状データとの差分に基づいて、前記第1断面の形状を評価する評価ステップと、を備える。
【0023】
本発明の他の態様に係る評価方法は、本発明の一態様に係る評価装置を方法の観点から規定しており、本発明の一態様に係る評価装置と同様の作用効果を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、螺旋状の溝が表面に形成された測定対象物に対して、センサの誤差、測定対象物の形状変化にかかわらず、溝の断面形状を正確に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る評価装置を示す全体構成図である。
図2】評価装置にセットされた測定対象物及び基準物を上方から見た平面図である。
図3】前方から後方に見た場合の評価装置を示す図である。
図4】実施形態に係る評価装置の構成を示すブロック図である。
図5】測定対象物の一部及び基準物を拡大した拡大図である。
図6】差分データを説明する説明図である。
図7】傾きデータの近似直線の一例を示すグラフである。
図8】実施形態に係る評価装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。各図において、同一符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その構成について、既に説明している内容については、その説明を省略する。
【0027】
図1は、実施形態に係る評価装置1を示す全体構成図である。図2は、評価装置1にセットされた測定対象物300及び基準物400を上方から見た平面図である。評価装置1は、溝302(第1溝)が螺旋状に形成された測定対象物300に対して、溝302の断面形状を評価する装置である。評価装置1は、機械部MEと、コンピュータ部CPと、を備える。機械部MEは、溝302の断面形状の評価に必要となる画像を取得するために必要な各種の作業をする。コンピュータ部CPは、機械部MEを制御すると共に、機械部MEで取得された画像を基にして、溝302の断面形状を評価する。
【0028】
図1及び図2において、Z方向は、測定対象物300の長手方向を指し、+Z方向は、長手方向の前方を指し、−Z方向は、長手方向の後方を指す。Y方向は、上下方向を指し、+Y方向は、上方を指し、−Y方向は、下方を指す。X方向は、Y方向及びZ方向のそれぞれと直行する左右方向を指し、+X方向は、後方から前方を見て右方を指し、−X方向は、後方から前方を見て左方を指す。
【0029】
図1を参照して、機械部MEは、台座部100と、ステージ110と、支持部120と、センサ130と、取付部140と、天井部150と、を備える。
【0030】
測定対象物300の表面には、測定対象物300の中心軸CZに対して螺旋状に溝302(第1溝)が形成されている。本明細書の図面では示されていないが、溝302は、捻れながら螺旋状に延びている。測定対象物300としては、例えば、スクリュー、プロペラ、ドリル等が採用される。
【0031】
台座部100は、例えば、平板状であり、地上に対して固定されている。ステージ110は、台座部100に対して+Z方向、−Z方向に移動可能、つまり、測定対象物300の長手方向に対して移動可能に取り付けられている。
【0032】
例えば、台座部100の上面にはZ方向に沿って案内溝(図略)が設けられ、ステージ110の底面にはこの案内溝に勘合するローラ(図略)が設けられている。これにより、ステージ110はこの案内溝に沿ってローラが案内されることで、台座部100の上をZ方向に沿って移動できる。
【0033】
ステージ110のZ方向の両端には一対の支持部120が立設されている。−Z方向側の支持部120は測定対象物300の−Z方向側の端部320を支持し、+Z方向側の支持部120は測定対象物300の+Z方向側の端部320を支持する。ここで、一対の支持部120は、測定対象物300の長手方向がZ方向と平行になるように測定対象物300を支持する。
【0034】
図2を参照して、測定対象物300は、螺旋状に溝302が形成された測定対象領域310と、一対の端部320と、を備える。一対の端部320は、それぞれ、測定対象領域310のZ方向側の端部から中心軸CZに沿って延びる円柱形状の部材である。
【0035】
図1を参照して、測定対象物300は、長手方向の中心軸CZを回転軸として回転可能に一対の支持部120により支持されている。具体的には、一対の支持部120は、それぞれ、端部320が挿入される軸受(図略)を備え、軸受を介して、測定対象物300を回転可能に支持する。
【0036】
天井部150は、例えば平板状であり、台座部100の上側に設けられている。天井部150には、取付部140がZ方向に移動可能に取り付けられている。例えば、天井部150には、Z方向と平行に案内溝(図略)が設けられ、取付部140の上面には、この案内溝に嵌合するローラ(図略)が設けられている。取付部140は、この案内溝にローラが案内され、天井部150に対してZ方向に移動できる。
【0037】
取付部140の下面には、センサ130が着脱可能に取り付けられている。
【0038】
センサ130は、物体の3次元形状を非接触で測定する3次元画像センサで構成される。詳細には、センサ130は、測定光を溝302に照射する光源と、溝302からの反射光を受光するカメラとを備える。実施形態では、測定光として、光切断線が採用される。但し、これは一例であり、測定光としては、光切断線に代えてスポット光が採用されてもよい。
【0039】
カメラと光源とは、カメラの光軸と光源の光軸とが所定の頂角を持つように配置されている。そのため、カメラが撮影した画像内に表れる測定光の座標と頂角とを用いて三角測量の原理を適用することで、溝302の形状を測定できる。
【0040】
図2を参照して、センサ130で測定される溝断面の1つとして、溝302の断面C1(第1断面)がある。断面C1は、交点P21において、溝302の延設方向L21と直交する面(言い換えれば、溝302の幅方向に沿った面)で溝302を切断したときの溝302の形状を示す面である。交点P21は、中心軸CZの上方に位置する。交点P21は、溝302の底部を通る溝底線L23と中心軸CZとが立体交差する箇所において、溝302の溝底が位置する点を示す。交点P21の真上にある位置Z1(第1位置)において、センサ130は、断面C1の形状を非接触で測定する。この測定において、センサ130の光源は、延設方向L21と直交する方向(溝302の幅方向)に光切断線を照射する。
【0041】
基準物400には、断面C2(第2断面)を有する溝402(第2溝)が形成されている。基準物400の材料は、測定対象物300の材料と同じである。断面C2の設計値は、断面C1の設計値と同じである。設計値とは、言い換えれば、設計形状及び設計寸法である。
【0042】
基準物400は、+Z方向側の支持部120の上面に設置されている。溝402の延設方向L11は、溝302の延設方向L21と平行である。センサ130は、取付部140によって基準物400の上方の所定の位置Z2(第2位置)に位置決めされて、基準物400の溝402の断面C2の形状を非接触で計測する。
【0043】
断面C2は、交点P11において、溝402の延設方向L11と直交する面(言い換えれば、溝402の幅方向に沿った面)で溝402を切断したときの溝402の形状を示す面である。交点P11は、中心軸CZの上方に位置する。交点P11は、溝402の底部を通る溝底線L13と中心軸CZとが立体交差する箇所において、溝402の溝底が位置する点を示す。交点P11の真上にある位置Z2(第2位置)において、センサ130は、断面C2の形状を非接触で測定する。この測定において、センサ130の光源は、延設方向L11と直交する方向(溝402の幅方向)に光切断線を照射する。
【0044】
溝402は、螺旋状でなく、溝402の深さ方向d2及び幅方向d1(図5)の両方と直交する方向において、短い直線形状を有する。この直交する方向において、溝402の幅方向に沿った溝402の断面は、同じ形状及び同じ寸法を有する。従って、センサ130が位置Z2に正確に位置決めされておらず、中心軸CZ上で多少ずれて位置決めされていても、測定される断面の形状及び寸法は同じである。よって、断面C2の形状の測定では、位置Z2と多少ずれた位置であっても問題はない。
【0045】
位置Z1(図1)は、測定対象物300を上方から下方に見た場合、中心軸CZ上にある。そのため、センサ130を位置Z2に位置決めして断面C2の形状を測定した後、センサ130を−Z方向に移動させて位置Z1に位置決めするだけで、断面C2と平行な断面C1を測定できる。
【0046】
実施形態では、測定対象物300がZ方向へのみ移動され、中心軸CZ回りに回転されないものとする。そのため、評価装置1は、測定対象物300の溝302の全域の形状を測定できない。そこで、評価装置1は、溝302の1カ所又は数カ所の断面の形状を測定する。ここでは、1カ所の断面(断面C1)を例に説明する。
【0047】
評価装置1は、切削加工機で構成されてもよい。この場合、評価装置1は、センサ130が加工刃に交換されることで、切削加工機になる。切削加工する際には、ステージ110上には円筒状の加工対象物が取り付けられる。そして、加工刃が取り付けられた取付部140は、位置Z1に位置決めされた後、−Y方向に移動して加工刃を加工対象物に当接させる。そして、加工対象物は、支持部120により中心軸CZを回転軸として回転されながら、ステージ110により−Z方向又は+Z方向に移動されることで、螺旋状の溝302が形成される。これにより、測定対象物300が加工される。
【0048】
図3は、前方から後方に見た場合の評価装置1を示す図である。支持部120は、ステージ110に立設された柱部1202と、柱部1202の上側に設けられた治具1201とを備える。治具1201は、上面に基準物400が載置される。そのため、治具1201のX方向の幅は柱部1202の幅よりも多少広くなっている。
【0049】
治具1201は、端部320の上半分と当接する半円筒状の孔1203を備えている。また、治具1201は、端部の320の下半分と当接する孔1204を備えている。孔1203と孔1204とは、端部320を挟持することで軸受を構成する。
【0050】
図4は、実施形態に係る評価装置1の構成を示すブロック図である。機械部MEについては、既に説明した通りである。コンピュータ部CPについて説明する。コンピュータ部CPは、本体部710と、操作部720と、表示部730と、を備える。
【0051】
本体部710は、機能ブロックとして、制御処理部711と、記憶部712と、移動制御部713と、測定処理部714と、第1算出部715と、第2算出部716と、決定部717と、評価部718と、を備える。本体部710は、これらの機能を実現するめのハードウェア(CPU、RAM、ROM、HDD等)、ソフトウェア、プログラム、データ等により構成される。
【0052】
制御処理部711は、本体部710の各部(記憶部712、移動制御部713、測定処理部714、第1算出部715、第2算出部716、決定部717、評価部718)を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御するための装置である。
【0053】
記憶部712は、上記ソフトウェア、プログラム、データ等を記憶する。
【0054】
移動制御部713は、ステージ110、支持部120及び取付部140を制御する。詳細には、移動制御部713は、ステージ110をZ方向に移動させるモータ(図略)に駆動信号を出力することで、ステージ110をZ方向に移動させる。
【0055】
また、移動制御部713は、測定対象物300を中心軸CZ回りに回転させるモータ(図略)に駆動信号を出力することで、支持部120に、測定対象物300を中心軸CZ回りに回転させる。但し、実施形態では、測定対象物300は、中心軸CZ回りに回転されないものとする。また、移動制御部713は、取付部140をZ方向に移動させるモータ(図略)に駆動信号を出力することで、取付部140をZ方向に移動させる。これにより、センサ130が中心軸CZに沿って移動し、位置Z1又は位置Z2に位置決めされる。
【0056】
測定処理部714は、測定部(図略)の構成要素の1つである。測定部は、測定処理部714、移動制御部713、センサ130及び取付部140によって構成される。図4及び図5を参照して、測定部について詳しく説明する。図5は、図2において、測定対象物300の一部及び基準物400を拡大した拡大図である。図5では、測定対象物300及び基準物400を上方から見ているので、Z方向を示す軸は中心軸CZと重なることになる。Z方向を示す軸と中心軸CZとを分けて示すために、中心軸CZより上にZ方向を示す軸が描かれている。方向d1は、溝302及び溝402の幅方向を示す。図面に垂直な方向d2は、溝302及び溝402の深さ方向d2を示す
【0057】
測定部は、位置Z2(第2位置)でセンサ130に溝402(第2溝)の断面C2(第2断面)の形状を測定させる処理をする。これにより、断面C2の形状データが得られる。
【0058】
測定部は、中心軸CZに沿って所定範囲Rを設定し、所定範囲Rに含まれる複数の測定位置でセンサ130に溝302(第1溝)の幅方向d1に沿った溝302の断面の形状を測定させる処理をする。これにより、複数の断面の形状データが得られる。複数の測定位置には、位置Z3、位置Z4及び位置Z5が含まれる。位置Z3でセンサ130に測定される溝302の断面が断面C3である。位置Z4でセンサ130に測定される溝302の断面が断面C4である。位置Z5でセンサ130に測定される溝302の断面が断面C5である。
【0059】
測定部は、位置Z1(第1位置)でセンサ130に溝302の断面C1(第1断面)の形状を測定させる処理をする。これにより、断面C1の形状データが得られる。
【0060】
測定処理部714は、これらの3つの処理において、位置Z2、複数の測定位置(位置Z3〜Z5を含む)、位置Z1に、センサ130を移動させる命令を移動制御部713にしたり、これらの位置でセンサ130に画像を撮像する命令(断面を測定する命令)をしたり、センサ130が撮像した画像に対して、所定の画像処理をして、断面の形状データを生成したりする。
【0061】
断面の形状データについて、断面C1の形状データを例にして詳しく説明する。断面C1の形状データは、Y方向のある位置を基準高さとしたとき、断面C1の複数のサンプリング点のそれぞれの高さ(深さ)を示すデータである。
【0062】
測定処理部714は、センサ130のカメラが撮影した画像を取得し、その画像に表れる光切断線の座標と、カメラの頂角と、光源の頂角と、に対して三角測量の原理を適用して各サンプリング点の高さデータを算出し、断面C1の形状データを生成する。光切断線の座標としては、例えば、光切断線が画像の水平方向に延びるのであれば、垂直方向の座標が採用される。この場合、測定処理部714は、光切断線が表れた画像に対して垂直方向と平行に注目ラインを設定し、注目ラインにおいて輝度ピークが表れる座標を探索する処理を、注目ラインを水平方向にずらしながら繰り返すことで、各サンプリング点の光切断線の座標を特定する。
【0063】
測定対象物300に形成された溝302の全体において断面形状の測定をするのでは、測定時間が長くなる。評価装置1は、溝302の断面のうち、センサ130の位置が位置Z1の状態でセンサ130によって測定される断面C1(第1断面)の形状を評価の対象とする。位置Z1は、交点P21の真上にある。
【0064】
評価装置1は、断面C1の形状を比較測定することにより、断面C1の形状を評価する。比較測定は、相対測定、間接測定とも称される。比較測定のために、センサ130の位置が位置Z2の状態でセンサ130によって断面C2(第2断面)の形状が測定される。位置Z2は、交点P11の真上にある。
【0065】
所定範囲Rに含まれる複数の測定位置でセンサ130に溝302の断面の形状を測定させる理由を説明する。溝302は、中心軸CZを中心にして、捻れながら螺旋状に延びている。このため、位置Z1から中心軸CZに沿って僅かにずれるだけで、溝302の断面の形状及び寸法が異なる。このような溝302の断面形状の測定に、実施形態が適用される場合、位置Z1にセンサ130を正確に位置決めして、溝302の断面(すなわち、断面C1)の形状を測定する必要がある。位置Z1は、測定対象物300及び基準物400が配置された状態の評価装置1の設計図面等で特定できる。しかしながら、設計図面上の位置Z1と実際の位置Z1との誤差は不可避的に発生するので、センサ130の位置が位置Z1でなく、位置Z1からずれた位置Z3の状態で、センサ130によって溝302の断面(すなわち断面C3)の形状が測定されることがある。上記誤差が大きければ、断面C1の形状を正確に測定することができない。
【0066】
そこで、測定部は、センサ130を評価装置1の設計図面で特定される位置Z1に移動させ(この位置が位置Z3とする)、位置Z3を中心に中心軸CZに沿った所定範囲Rを設定する。所定範囲Rは、位置Z1が含まれる範囲である。オペレータは、上記誤差が考慮して、所定範囲Rを予め決めて、所定範囲Rの大きさを測定部に記憶させる。図5では、位置Z3を中心にして、−δmm離れた位置Z4と+δmm離れた位置Z5とで規定される範囲が所定範囲Rにされている。測定部は、所定範囲Rに含まれる複数の測定位置を基にして、位置Z1を決定する。この詳細は後で説明する。
【0067】
図4及び図5を参照して、第1算出部715は、測定処理部714によって生成された複数の断面の形状データ(言い換えれば、所定範囲Rに含まれる複数の測定位置で、溝302の断面の形状が測定されて得られた複数の断面の形状データ)のそれぞれと、測定処理部714によって生成された断面C2の形状データ(言い換えれば、位置Z2で断面C2の形状が測定されて得られた断面C2の形状データ)との差分を示す複数の差分データを算出する。
【0068】
第1算出部715について詳しく説明する。複数の測定位置の数が整数nとする。複数の測定位置には、位置Z4、位置Z3、位置Z5が含まれる。位置Z4で測定される溝302の断面が断面C4である。位置Z3で測定される溝302の断面が断面C3である。位置Z5で測定される溝302の断面が断面C5である。
【0069】
第1算出部715は、n個の差分データDD(DD1−1〜DD1−n)を算出する。図6は、差分データDDを説明する説明図である。差分データDDは、黒色で示す線であり、灰色で示す線は、差分データDDの近似直線である。図5及び図6を参照して、断面C4の形状データSD−1、断面C3の形状データSD−m、断面C5の形状データSD−n、断面C2の形状データSD2のそれぞれを示すグラフにおいて、横軸は、溝の幅方向d1に沿った断面上の位置を示し、縦軸は、断面形状の高さ(言い換えれば、溝の深さ)を示す。
【0070】
断面C4の形状データSD−1と断面C2の形状データSD2との差分が、差分データDD−1である。断面C3の形状データSD−mと断面C2の形状データSD2との差分が、差分データDD−mである。断面C5の形状データSD−nと断面C2の形状データSD2との差分が、差分データDD−nである。差分データDDのそれぞれを示すグラフにおいて、横軸は、溝の幅方向d1に沿った断面上の位置を示し、縦軸は、差分値を示す。
【0071】
断面C1の設計値と断面C2の設計値とは同じである。このため、断面C1の形状及び寸法は、理想的には断面C2の形状及び寸法と一致し、これらの断面の差分データDD(図略)の近似直線の傾き値は、ゼロとなる。実際には、溝302の加工誤差等が原因でゼロとはならず、断面C1の形状データと断面C2の形状データとの差分に基づいて、断面C1の形状が評価される。
【0072】
断面C4が測定された位置Z4、断面C3が測定された位置Z3、断面C5が測定された位置Z5は、それぞれ、断面C1が測定された位置Z1と異なる。このため、断面C4、断面C3、断面C5のそれぞれの形状及び寸法は 断面C2の形状及び寸法と一致しない。よって、差分データDD−1、差分データDD−m、差分データDD−nのそれぞれの近似直線の傾き値は、ゼロにならない。
【0073】
図4及び図6を参照して、第2算出部716は、差分データDDの近似直線を算出する処理を、n個の差分データDDのそれぞれに対して実行する。そして、第2算出部716は、差分データDDの近似直線の傾き値を算出する処理を、n個の差分データDDのそれぞれに対して実行することにより、n個の傾き値を算出する。
【0074】
図4を参照して、決定部717は、n個の測定位置(複数の測定位置)と第2算出部716が算出したn個の傾き値(複数の傾き値)との関係を示す傾きデータの近似直線を算出する。図7は、傾きデータの近似直線の一例を示すグラフである。グラフの横軸は、Z方向を示す軸での位置を示し、縦軸は、傾き値を示す。グラフ中の複数の点(11個の点)は、傾きデータであり、n個の測定位置のそれぞれに対応する傾き値を示す。n個の数は、傾きデータの近似直線を算出できる数である。オペレータは、nの値を測定部に記憶させる
【0075】
図4及び図7を参照して、決定部717は、傾きデータの近似直線において、傾き値がゼロを示す位置を位置Z1(第1位置)と決定する。傾き値がゼロとは、傾き値を丸めることにより(例えば、端数の切り上げ、切り捨て)、ゼロにした場合も含む(傾き値は、例えば、測定対象物300および基準物400が載置されたステージ110の移動精度等に応じて、丸められることがある)。また、センサ130が断面C1(第1断面)の形状を正確に測定できる位置であれば、傾き値が厳密にゼロを示す位置でなくてもよく、傾き値がほぼゼロの位置も、傾き値がゼロの位置に含まれる。
【0076】
図4及び図5を参照して、測定部(図略)は、決定部717が決定した位置Z1(第1位置)にセンサ130を移動させ、この位置でセンサ130に溝302の断面C1の形状を測定させる。評価部718は、この測定で得られた断面C1の形状データと、測定部が既に測定した断面C2の形状データとの差分に基づいて、断面C1の形状を評価する。
【0077】
詳しく説明すると、評価部718は、断面C1の形状データと断面C2の形状データSD2とにおいて、サンプリング点が対応する高さデータ同士の差分を求め、その差分の統計値(例えば、平均値)を算出することで、断面C1の形状データと断面C2の形状データとの差分の評価値を算出する。そして、評価部718は、評価値が所定の評価基準値以下であれば、断面C1は正常と判定し、評価値が評価基準値を超えていれば、断面C1は異常と判定する。なお、評価対象となる断面C1の位置が複数あれば、評価部718は、複数の位置のそれぞれに対する評価値を求める。そして、評価部718は、例えば、全ての評価値が評価基準値以下であれば、測定対象物300の溝302の形状は正常と判定する。
【0078】
操作部720は、例えば、キーボードやマウス等の入力装置で構成され、オペレータから種々の操作を受け付ける。種々の操作としては、測定開始の指示等が含まれる。
【0079】
表示部730は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置で構成され、評価部718の評価結果等を表示する。また、表示部730は、図6に示す各種グラフ、図7に示すグラフを表示してもよい。
【0080】
実施形態に係る評価装置1の動作を説明する。図8は、この動作を説明するフローチャートである。図4図5及び図8を参照して、測定処理部714は、移動制御部713に対して、センサ130の位置を位置Z2に移動させる命令をする。移動制御部713は、取付部140を移動させて、取付部140に取り付けられたセンサ130を位置Z2に位置決めする(ステップS1)。溝402の深さ方向d2及び幅方向d1の両方と直交する方向において、溝402の幅方向d1に沿った溝402の断面は、同じ形状及び同じ寸法を有する。このため、センサ130が、位置Z2に正確に位置決めされず、中心軸CZに沿って位置Z2から多少ずれた位置に位置決めされても、センサ130は、断面C2の形状を正確に測定することができる。
【0081】
測定処理部714は、位置Z2で、センサ130に備えられるカメラに断面C2の光切断線を含む画像を撮像させて、この画像から断面C2の形状データSD2を生成する(ステップS2、図6)。
【0082】
測定処理部714は、移動制御部713に対して、センサ130の位置を位置Z1に移動させる命令をする。移動制御部713は、取付部140を移動させて、取付部140に取り付けられたセンサ130を位置Z1に位置決めする。ここでは、センサ130が位置Z1に正確に位置決めされず、位置Z3に位置決めされたとする(ステップS3)。
【0083】
測定処理部714は、位置Z3を中心にして所定範囲Rを設定し、移動制御部713に対して、取付部140を位置Z4から位置Z5に一定速度で移動させる命令をする(位置Z5から位置Z4に一定速度で移動させる命令でもよい)。移動制御部713は、取付部140を位置Z4から位置Z5に一定速度で移動させる。この期間中、測定処理部714は、取付部140に取り付けられたセンサ130に備えられるカメラに、所定のフレームレートで、溝302の断面の光切断線を含む画像(動画)を撮像させて、これらの画像(フレーム)から複数の断面のそれぞれの形状データSDを生成する(ステップS4、図6)。なお、評価装置1は、ステップS3及びステップS4を、ステップS1及びステップS2より先に実行してもよい。
【0084】
測定処理部714は、センサ130に備えられるカメラのフレームレートと、取付部140の移動速度と、所定範囲Rの長さと、に基づいて、溝302の複数の断面のそれぞれの形状が測定された測定位置を算出する(ステップS5)。これら複数の測定位置は、Z方向を示す軸の座標上の位置である。
【0085】
第1算出部715は、ステップS4で生成された複数の断面の形状データSDのそれぞれと、ステップS2で生成された断面C2の形状データSD2との差分を示す複数の差分データDDを算出する(ステップS6、図6)。
【0086】
第2算出部716は、ステップS6で算出された複数の差分データDDのそれぞれに対して、回帰分析をし、複数の差分データDDのそれぞれの近似直線を算出する(ステップS7)。そして、第2算出部716は、ステップS7で算出された複数の近似直線のそれぞれの傾き値を算出する(ステップS8)。
【0087】
決定部717は、ステップS8で算出された複数の傾き値と、ステップS5で算出された複数の測定位置との関係を示す傾きデータに対して、回帰分析をし、傾きデータの近似直線を算出する(ステップS9、図7)。
【0088】
決定部717は、ステップS8で算出された複数の傾き値のうち、ステップS9で算出した傾きデータの近似直線に対して、外れ値があるか否かを判断する(ステップS10)。外れ値の判断手法としては、例えば、残差、スチューデント化(標準化)があるが、これらに限定されず、統計的に外れ値を判断する手法であれば適用することができる。
【0089】
決定部717は、外れ値があると判断したとき(ステップS10でYes)、外れ値が除かれた傾きデータに対して、回帰分析をし、傾きデータの近似直線を算出する(ステップS9)。
【0090】
決定部717は、外れ値がないと判断したとき(ステップS10でNo)、傾きデータの近似直線において、傾き値がゼロとなる位置を位置Z1と決定する(ステップS11、図7)。
【0091】
測定処理部714は、移動制御部713に対して、センサ130の位置を、ステップS11で決定された位置Z1に移動させる命令をする。移動制御部713は、取付部140を移動させて、取付部140に取り付けられたセンサ130を位置Z1に位置決めする(ステップS12)。
【0092】
測定処理部714は、位置Z1で、センサ130に備えられるカメラに断面C1の光切断線を含む画像を撮像させて、この画像から断面C1の形状データを生成する(ステップS13)。
【0093】
評価部718は、ステップS13で生成された断面C1の形状データと、ステップS2で生成された断面C2の形状データSD2(図6)との差分を基にして、断面C1の形状を評価する(ステップS14)。
【0094】
実施形態の主な効果を説明する。実施形態は、断面C1の形状データと断面C2の形状データSD2との差分を基にして、断面C1の形状を評価する(ステップS14)。周囲環境によるセンサ130の測定誤差、センサ130が原理的に持つ測定誤差があったとしても、これらの測定誤差は、断面C1の形状データ、断面C2の形状データの両方に含まれる。上記差分を求めることで、これらの測定誤差がなくなる。また、熱膨張、熱収縮により測定対象物300に形状変化があった場合、基準物400も測定対象物300と同様に形状変化している。上記差分を求めることで、この形状変化の成分がなくなる。実施形態によれば、上記差分を基にして、断面C1の形状を評価するので、断面C1の形状を正確に評価することができる。
【0095】
図7を参照して、複数の測定位置と複数の傾き値との関係を示す傾きデータの近似直線において、傾き値がゼロとなる測定位置が、位置Z1となる。なぜならば、断面C1と断面C2とは、設計値が同じなので、断面C1の形状データと断面C2の形状データSD2との差分データの近似直線の傾き値は、理想的には、ゼロとなるからである。実施形態によれば、位置Z1を正確に特定することができるので、断面C1の形状を正確に測定することができる。
【0096】
図7に示す複数の測定位置のピッチを限りなく小さくすれば、いずれかの測定位置での傾き値がゼロとなるので、位置Z1を決定することができる。この場合、測定位置の数が多くなるので、位置Z1を決定するための計算量が膨大となり、この結果、位置Z1の決定に長時間を要することになる。これに対して、実施形態によれば、傾きデータの直線近似を用いて、傾き値がゼロとなる位置を位置Z1と決定する。これにより、測定位置の数が少なくても、位置Z1を決定できるので、位置Z1の決定に長時間を要することはない。
【0097】
上述したように、実施形態によれば、複数の測定位置の数(言い換えれば、複数の傾き値の数)が少なくても、位置Z1を決定することができる。傾き値の中に外れ値が含まれている場合、複数の測定位置の数が少ないと、傾きデータの近似直線に及ぼす外れ値の影響が大きくなる。これにより、位置Z1を正確に決定することができなくなる。実施形態によれば、外れ値を除外するので(ステップS10でYes)、位置Z1を正確に決定することができる。
【0098】
ステップS7において、図6に示す差分データDDの近似直線を算出するのに用いるサンプリング数(差分値の数)が多ければ、サンプリングされた複数の差分値の中に外れ値が含まれていても、外れ値が差分データDDの近似直線に与える影響は小さい。よって、外れ値を考慮することなく、差分データDDの近似直線の算出が可能となる。実施形態は、複数の差分データDDのそれぞれの近似直線を算出するのに用いるサンプリング数を、図7に示す傾きデータの近似直線の算出に用いる複数の測定位置の数より多くすることにより、複数の差分データDDのそれぞれの近似直線を算出するのに用いるサンプリング数が多くなるようにしている。
【符号の説明】
【0099】
1 評価装置
300 測定対象物
302 溝(第1溝)
400 基準物
402 溝(第2溝)
CP コンピュータ部
CZ 中心軸
C1 断面(第1断面)
C2 断面(第2断面)
C3,C4,C5 断面
DD(DD−1、DD−m、DD−n) 差分データ
d1 幅方向
d2 深さ方向
ME 機械部
R 所定範囲
SD(SD−1〜SD−n) 形状データ
SD2 断面C2の形状データ
Z1 位置(第1位置)
Z2 位置(第2位置)
Z3,Z4,Z5 測定位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8