特許第6980596号(P6980596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980596セラミックス反射材およびこれを備える光源モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980596
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】セラミックス反射材およびこれを備える光源モジュール
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/117 20060101AFI20211202BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20211202BHJP
【FI】
   C04B35/117
   H01L33/60
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-82379(P2018-82379)
(22)【出願日】2018年4月23日
(65)【公開番号】特開2019-189481(P2019-189481A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2020年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 義裕
(72)【発明者】
【氏名】草野 一英
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−241131(JP,A)
【文献】 特開2013−116838(JP,A)
【文献】 特開2011−211024(JP,A)
【文献】 特開2007−305844(JP,A)
【文献】 特開2011−222674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/117
H01L 33/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面を有し、
該反射面は、複数のセラミックスの結晶粒子を含有する集合体を複数有しており、
該集合体に含まれている前記結晶粒子間の窪みを結晶粒子間窪みとした場合、
前記集合体は、前記結晶粒子間窪みの深さよりも深さが深い境界によって隔てられており、
前記反射面は、3個以上の前記集合体の前記境界が一点に会合した多重点を有し、
前記集合体の平均径は、8μm以上100μm以下であり、
前記多重点は、深さ方向に沿って狭くなるように窪んでいるとともに、
前記反射面の正面視における前記多重点の幅の平均値が、1.5μm以上8μm以下である、セラミックス反射材。
【請求項2】
前記反射面の表面積比は、1.03以上1.3以下である、請求項1に記載のセラミックス反射材。
【請求項3】
前記セラミックス反射材は、アルミナとジルコニアとの複合セラミックスからなる、請求項1または請求項2に記載のセラミックス反射材。
【請求項4】
前記セラミックス反射材は、該セラミックス反射材を構成する全成分100質量%のうち、前記アルミナを55質量%以上97質量%以下含有し、前記ジルコニアを3質量%以上45質量%以下含有している、請求項3に記載のセラミックス反射材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のセラミックス反射材と光源デバイスとを備える、光源モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミックス反射材およびこれを備える光源モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のヘッドライトには、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)または半導体レーザ等の光源デバイスが用いられている。ここで、光源デバイスは、遠方視認性を高めるために、更なる高輝度化が求められている。これに伴い、光源デバイスの支持基板および光源デバイスの周辺で用いられる部材には高い反射率が求められている。
【0003】
このような反射率の高い部材として、本出願人は、アルミナ結晶とジルコニア結晶とを含む酸化物セラミックスを提案している(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2014/156831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、光源デバイスの小型化が進んでおり、これに伴い光源デバイスの支持基板および光源デバイスの周辺で用いられる部材も小型化する必要がある。しかしながら、小型化に対応するため、部材の厚みを薄くすると、透過率が高くなり、部材の反射率が低下する。そこで、厚みが薄くとも高い反射率を有する部材が求められている。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みて案出されたものであり、厚みが薄くとも高い反射率を有するセラミックス反射材およびこれを備える光源モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のセラミックス反射材は、反射面を有する。そして、この反射面は、複数のセラミックスの結晶粒子を含有する集合体を複数有している。該集合体に含まれている前記結晶粒子間の窪みを結晶粒子間窪みとした場合、前記集合体は、前記結晶粒子間窪みの深さよりも深さが深い境界によって隔てられている。前記反射面は、3個以上の前記集合体の前記境界が一点に会合した多重点を有する。また、前記集合体の平均径は、8μm以上100μm以下である。また、前記多重点は、深さ方向に沿って狭くなるように窪んでいるとともに、前記反射面の正面視における前記多重点の幅の平均値が、1.5μm以上8μm以下である。
【0008】
また、本開示の光源モジュールは、上記セラミックス反射材と光源デバイスとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示のセラミックス反射材は、厚みが薄くとも、高い反射率を有する。
【0010】
また、本開示の光源モジュールは、小型であっても、高い輝度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の光源モジュールの構成の一例を示す模式図である。
図2】本開示のセラミックス反射材における反射面の一例を模式的に示す拡大図である。
図3】走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて測定した、図2のA−A線の断面プロファイルの一例である。
図4】本開示のセラミックス反射材における集合体の断面の一例を模式的に示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示のセラミックス反射材およびこれを備える光源モジュールについて、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0013】
まず、本開示のセラミックス反射材1と光源デバイス2とを備える光源モジュール10について、図1を用いて説明する。ここで、本開示の光源モジュール10とは、図1に示す構成に限るものではなく、光源デバイス2の周辺において、高い反射率が求められている部分に、本開示のセラミックス反射材1を備えるものであればよい。
【0014】
図1に示す光源モジュール10では、セラミックス反射材1の反射面1a上に金属層3を介して光源デバイス2が位置している。ここで、反射面1aとは、セラミックス反射材1の表面のうち、光源デバイス2等からの可視光を反射する面のことである。また、金属層3は、電極または配線として利用してもよい。
【0015】
本開示のセラミックス反射材1における反射面1aは、図2に示すように、集合体4と、3個以上の集合体4の境界が一点に会合した多重点5とを有する。ここで、図2においては、図が煩雑になるため示していないが、集合体4とは、セラミックスの結晶粒子を複数含有するものである。言い換えれば、複数の結晶粒子が集まって形成される1つの粒が集合体4である。なお、集合体4同士の境界は、セラミックスの結晶粒子同士の境界よりも窪んでいる。言い換えるならば、多重点5を挟んで隣り合う集合体4同士は、反射面1aにおいて接していない。よって、セラミックス反射材1の反射面1aにおいて、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて取得した画像データから、個々の集合体4の判別が可能である。なお、集合体4同士の境界の窪みにおける深さの平均値は0.4μm以上である。
【0016】
また、多重点5とは、3個以上の集合体4に囲まれた部分であり、具体的には、3個の集合体4に囲まれた三重点、4個の集合体4に囲まれた四重点等のことである。
【0017】
そして、本開示のセラミックス反射材1における集合体4の平均径は、8μm以上100μmである。このように、複数のセラミックスの結晶粒子を含有する集合体4は、各結晶粒子の間の粒界で可視光を反射するとともに、集合体4の平均径が上記数値範囲を満足していることで、各集合体4にて可視光を効果的に反射することができる。
【0018】
なお、集合体4の平均径が、25μm以上48μm以下であるならば、各集合体4にて可視光をより効果的に反射することができ、反射率が向上する。
【0019】
ここで、集合体4の平均径は、以下の方法で測定すればよい。まず、本開示のセラミックス反射材1の反射面1aにおいて、SPMを用いて画像データを取得する。ここで、画像データのサイズは、例えば、100μm×100μmまたは200μm×200μm等であればよい。次に、画像データを用いて、コード法により集合体4の平均径を算出する。具体的には、画像データにおいて、一定長さの直線上にある集合体4の個数から各集合体4の長さを測定する。そして、この測定を少なくとも3ヵ所以上行ない、その平均値を集合体4の平均径とすればよい。
【0020】
さらに、本開示のセラミックス反射材1における多重点5は、深さ方向に沿って狭くなるように窪んでいるとともに、反射面1aの正面視における多重点5の幅の平均値が、1
.5μm以上8μm以下である。このように、深さ方向に沿って狭くなるように窪んでいる多重点5は、多重点5内に進入してきた可視光を反射面1a側に反射するとともに、多重点5の幅が上記数値範囲を満足していることで、多重点5で可視光が乱反射してセラミックス反射材1を透過してしまうことを抑制し、可視光を効果的に反射することができる。
【0021】
よって、以上の構成を満足する本開示のセラミックス反射材1は、厚みが薄くとも高い反射率を有する。ここで、厚みが薄くとも高い反射率とは、厚みが0.6mmである場合に反射率が93%以上であることを言う。なお、反射率の測定方法としては、分光測色計(コニカミノルタ製 CR−13)を用いて、波長範囲を可視光領域で、厚みが0.6mmであるセラミックス反射材1の反射面1aの測定を行なえばよい。そして、測定結果から可視光領域全体の反射率の平均値を読めばよい。
【0022】
また、多重点5の幅の平均値は、以下の方法で測定すればよい。まず、本開示のセラミックス反射材1の反射面1aにおいて、SPMを用いて画像データを取得する。ここで、画像データのサイズは、例えば、100μm×100μmまたは200μm×200μm等であればよい。次に、画像データにおいて、多重点5を通過する任意の直線の断面プロファイルを取得する。そして、図3に示すように、断面プロファイルにおける最高点と最低点とを確認し、最高点と最低点との高低差を求める。次に、図3に示すように、断面プロファイルから、この高低差の半分となる高さにおける多重点5の幅を求める。そして、この作業を少なくとも3個以上の異なる多重点5に対して行ない、各多重点5の幅の平均値を求めればよい。
【0023】
なお、多重点5の深さの平均値は、例えば、0.8μm以上5μm以下であってもよい。ここで、多重点5の深さとは、上述した多重点5の幅の平均値の測定における、最高点と最低点との高低差のことである。そして、多重点5の深さの平均値は、上述した多重点5の幅の平均値の測定方法と同じ測定方法を行ない、少なくとも3個以上の異なる多重点5の最高点と最低点との距離(高低差)を算出し、この平均値とすればよい。
【0024】
また、本開示のセラミックス反射材1における反射面1aの表面積比は、1.03以上1.3以下であってもよい。ここで、反射面1aの表面積比とは、上述した多重点5の幅の平均値の測定において、SPMにより画像データから算出されるパラメータであり、指定面が理想的にフラットであると仮定した時の面積Sに対する実際の表面積Sの比S/Sのことである。ここで、反射面1aにおいて多重点5が多く存在する程、実際の表面積Sが大きくなり、反射面1aの表面積比の値が大きくなる。そして、反射面1aの表面積比が上記数値範囲を満足するならば、本開示のセラミックス反射材1の反射率は向上する。
【0025】
また、本開示のセラミックス反射材1は、アルミナとジルコニアとの複合セラミックスからなっていてもよい。このような構成を満足するならば、アルミナは高い熱伝導率を有し、ジルコニアはアルミナよりも高い屈折率を有することから、本開示のセラミックス反射材1は、高い放熱性および反射率を兼ね備える。
【0026】
ここで、ジルコニアとは、主にジルコニア(ZrO)であるが、ジルコニアの他に、ジルコニアの安定化の作用をなす安定化剤成分(イットリア(Y)、セリア(Ce)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO))を含むものである。なお、ジルコニアから分離が困難であるハフニア(HfO)を含んでいてもよい。
【0027】
また、本開示のセラミックス反射材1は、セラミックス反射部1を構成する全成分100質量%のうち、アルミナを55質量%以上97質量%以下含有し、ジルコニアを3質量
%以上45質量%以下含有してもよい。このような構成を満足するならば、本開示のセラミックス反射材1は、さらに高い放熱性と反射率と兼ね備える。
【0028】
ここで、本開示のセラミックス反射材1を構成する成分は、X線回折装置(XRD)を用いて測定し、得られた2θ(2θは、回折角度である。)の値より、JCPDSカードと照合することにより、確認することができる。また、各成分の含有量については、蛍光X線分析法またはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により求めればよい。
【0029】
また、本開示のセラミックス反射材1における集合体4は、図4に示すように、アルミナ結晶粒子6およびジルコニア結晶粒子7を含有してもよい。このような構成を満足するならば、集合体4が屈折率の異なるアルミナ結晶粒子6およびジルコニア結晶粒子7を含有していることで、本開示のセラミックス反射材1の反射率が向上する。
【0030】
ここで、集合体4がアルミナ結晶粒子6およびジルコニア結晶粒子7を含有しているか否かは、以下の方法で確認すればよい。まず、アルミナ結晶粒子6およびジルコニア結晶粒子7が有るか否かを、上述したように、XRDを用いて測定し、得られた2θの値より、JCPDSカードと照合することにより確認する。
【0031】
次に、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて、反射面1aの元素マッピングを行なう。そして、元素マッピングにより、集合体4が、アルミニウムおよび酸素が同時に検出される結晶粒子(アルミナ結晶粒子6)と、ジルコニウムおよび酸素が同時に検出される結晶粒子(ジルコニア結晶粒子7)とを含有しているか否かを確認すればよい。なお、走査型電子顕微鏡(SEM)で反射面1aを反射電子像として撮影した場合、図4に示すように、アルミナ結晶粒子6は黒色系の色調を呈するのに対し、ジルコニア結晶粒子7は白色系の色調を呈することから、目視においてアルミナ結晶粒子6とジルコニア結晶粒子7とは識別できるものである。
【0032】
なお、集合体4のアルミナ結晶粒子6の平均結晶粒径は、例えば、0.3μm以上1.0μm以下であってもよい。また、集合体4のジルコニア結晶粒子7の平均結晶粒径は、例えば、0.3μm以上0.8μm以下であってもよい。
【0033】
ここで、集合体4のアルミナ結晶粒子6およびジルコニア結晶粒子7の平均結晶粒径は、以下の測定方法により算出すればよい。まず、セラミックス反射材の反射面1aを鏡面加工し、焼成温度から50〜100℃低い温度範囲で熱処理を行なう。そして、熱処理した面を測定面として、SEMを用いて5000倍の倍率で撮影する。次に、撮影した画像データを画像解析ソフト(例えば、三谷商事株式会社製のWinROOF)を用いて解析する。これにより、各アルミナ結晶粒子6および各ジルコニア結晶粒子7の結晶粒径を得ることができることから、その平均値をそれぞれ求めればよい。
【0034】
次に、セラミックス反射材の製造方法の一例について説明する。ここでは、セラミックス反射材が、アルミナとジルコニアとの複合セラミックスからなる場合について説明する。
【0035】
まず、アルミナ(Al)粉末と、ジルコニア(ZrO)粉末とを準備する。なお、ジルコニア粉末は安定化剤成分として、イットリア(Y)、セリア(Ce)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)を含有していてもよい。そして、安定化剤成分の含有量としては、ジルコニアおよび安定化剤成分の合計100モル%のうち、例えば、1.5モル%以上4.0モル%以下であればよい。なお、ジルコニア粉末は、ジルコニアから分離が困難であるハフニア(HfO)を含有していてもよい。
【0036】
そして、アルミナ粉末およびジルコニア粉末を、それぞれ55:45〜97:3となるように秤量し、これを混合することで一次原料粉末を得る。なお、必要に応じて、焼結助剤として、酸化珪素(SiO)粉末、炭酸カルシウム(CaCO)粉末および水酸化マグネシウム(Mg(OH))粉末を準備し、一次原料粉末に混合してもよい。
【0037】
次に、一次原料粉末100質量部に対して、3質量部以上10質量部以下のバインダと、20質量部以上100質量部以下の溶媒とを秤量し、これらを攪拌機内に入れて、混合・攪拌することで、スラリーを得る。ここで、バインダとしては、PVA、アクリルおよびワックスを用いる。
【0038】
次に、このスラリーを噴霧造粒装置(スプレードライヤー)で噴霧造粒することによって顆粒を得る。ここで、顆粒の平均径を10μm以上120μm以下にすることで、集合体の平均値を8μm以上100μm以下とすることができる。
【0039】
そして、この顆粒を用いてプレス法で成形することによって、成形体を得ることができる。ここで、設定成形圧を0.5ton/cm以上2.0ton/cm以下とするとともに、この設定成形圧の90%以上を保持する時間を0.5秒以下として、プレス成形を行なう。
【0040】
次に、得られた成形体を大気(酸化)雰囲気の焼成炉に入れて、最高温度を1400℃以上1550℃以下にして0.5時間以上3時間以下保持することで焼成する。
【0041】
このように、プレス法での成形において、上記設定成形圧の90%以上を保持する時間を0.5秒以下とするような、極短時間の加圧で成形体を得ることで、成形体において顆粒が完全には潰れずに残り、上記最高温度で焼成することで、完全には潰れずに残った顆粒が集合体となり、深さ方向に沿って狭くなるように窪んでいる多重点を有する、本開示のセラミックス反射材が得られる。なお、多重点の幅の平均値、反射面の表面積比、多重点を含む境界が窪んでいるか否かは、上記設定成形圧、上記最高温度、スラリーを得る際のバインダにおける、PVA、アクリルおよびワックスの配合比を調整することで、任意の値にすることができる。
【0042】
また、集合体のアルミナ結晶粒子の平均結晶粒径を、0.3μm以上1.0μm以下とするには、一次原料粉末に使用するアルミナ粉末の平均粒径を、0.2μm以上0.8μm以下とすればよい。また、集合体のジルコニア結晶粒子の平均結晶粒径を、0.3μm以上0.8μm以下とするには、一次原料粉末に使用するジルコニア粉末の平均粒径を0.2μm以上0.6μm以下とすればよい。
【0043】
次に、本開示の光源モジュールの製造方法の一例について説明する。まず、本開示のセラミックス反射材を準備する。そして、セラミックス反射材の反射面に、厚膜印刷法により、金、銀、銅またはこれらの混合物等を含むペーストを塗布する。その後、熱処理することで、反射面上に位置する金属層を得る。そして、金属層上に光源デバイスを配置することにより、本開示の光源モジュールを得る。ここで、生産効率の観点から、セラミックス反射材を所望の大きさとし、セラミックス反射材に金属層を形成した後、所望サイズの個片となるように、工業用ダイヤモンドを埋め込んだ回転円盤等を用いて切断して分割してもよい。
【0044】
なお、金属層は、ペーストで形成する方法以外にも、公知のめっき法、スパッタリング法、活性金属法等によって形成してもよい。また、金属層の表面において、部分的もしくは全面にめっき処理を行ってもよい。めっき処理を行うことによって、金属層が酸化腐蝕
するのを抑制することができる。また、めっきの種類としては公知のめっきであればよく、例えば、金めっき、銀めっきまたはニッケル−金めっき等が挙げられる。
【0045】
以下、本開示の実施例を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
集合体の平均径および多重点の幅の平均値が異なる試料を作製し、反射率の測定を行なった。まず、平均粒径が0.5μmのアルミナ粉末と、平均粒径が0.4μmのジルコニア粉末とを準備した。なお、ジルコニア粉末は、安定化剤成分として、イットリアを含有させた。具体的には、安定化剤成分であるイットリアの含有量を、ジルコニアおよび安定化剤成分の合計100モル%のうち、3モル%とした。
【0047】
次に、アルミナ粉末およびジルコニア粉末を、それぞれ70:30となるように秤量し、これを混合することで一次原料粉末を得た。また、焼結助剤として、酸化珪素粉末、炭酸カルシウム粉末および水酸化マグネシウム粉末を準備した。そして、焼結助剤を、一次原料粉末100質量部に対して、0.5質量部となるように添加した。
【0048】
次に、一次原料粉末100質量部に対して、3質量部のバインダと、80質量部の溶媒とを秤量し、これらを攪拌機内に入れて、混合・攪拌することで、スラリーを得た。ここで、バインダとしては、PVA、アクリルおよびワックスを用いた。
【0049】
次に、このスラリーを噴霧造粒装置で噴霧造粒することによって顆粒を得た。そして、この顆粒を用いて、設定成形圧の90%以上を保持する時間が0.5秒以下となるように、プレス法で成形することによって、成形体を得た。
【0050】
次に、得られた成形体を大気雰囲気の焼成炉に入れて焼成した。そして、スラリーを得る際のバインダにおけるPVA、アクリルおよびワックスの配合比、プレス法での設定成形圧、噴霧造粒で得る顆粒の平均径、焼成での最高温度を適宜調整することで、表1に示す各試料を得た。なお、各試料は、円板形状であり、直径が20mm、厚みが表1に示す値となるように作製した。
【0051】
次に、各試料の反射面における集合体の平均径を、以下の方法で測定した。まず、各試料の反射面において、SPMを用いて200μm×200μmの画像データを取得した。次に、この画像データを用いて、コード法により集合体の平均径を算出した。具体的には、画像データにおいて、一定長さの直線上にある集合体の個数から各集合体の長さを測定した。そして、この測定を少なくとも3ヵ所行ない、その平均値を集合体の平均径とした。
【0052】
次に、各試料の反射面における多重点の幅の平均値を、以下の方法で測定した。まず、各試料の反射面において、SPMを用いて200μm×200μmの画像データを取得した。次に、画像データにおいて、多重点を通過する任意の直線の断面プロファイルを取得した。そして、断面プロファイルにおける最高点と最低点とを確認し、最高点と最低点との高低差を求めた。次に、断面プロファイルから、この高低差の半分となる高さにおける多重点の幅を求める。そして、この作業を3個の異なる多重点に対して行ない、各多重点の幅の平均値を求めた。
【0053】
次に、各試料の反射率を、以下の方法で測定した。まず、分光測色計(コニカミノルタ製 CR−13)を用いて、波長範囲を可視光領域で、各試料の反射面の測定を行なった。そして、測定結果から可視光領域全体の反射率の平均値を読みとった。結果を表1に示
す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示すように、厚みが0.6mmの各試料を比較した際に、試料No.4、6、7、9は、反射率が93%以上であった。このことから、反射面において、集合体の平均径が8μm以上100μmであるとともに、多重点の幅の平均値が1.5μm以上8μm以下であるセらミックス反射材であれば、厚みが薄くとも高い反射率を有することがわかった。
【実施例2】
【0056】
反射面の表面積比が異なる試料を作製し、反射率の測定を行なった。なお、反射面の表面積比が表2に示す値となるように、スラリーを得る際のバインダにおけるPVA、アクリルおよびワックスの配合比、プレス法での設定成形圧、焼成での最高温度を適宜調整したこと以外は、実施例1の試料No.4と同様の方法により、実施例1の試料No.4と同じ集合体の平均径および多重点の幅の平均値となるように、各試料を作製した。なお、試料No.11は、実施例1の試料No.4と同じ試料である。
【0057】
次に、各試料の反射面の表面積比を、SPMを用いて、200μm×200μmの反射面の画像データを取得し、この画像データから算出した。
【0058】
そして、実施例1と同じ方法により、各試料の反射率を測定した。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2に示すように、試料No.12〜15は、厚みが0.6mmにおける反射率が93.5%以上であった。このことから、反射面の表面積比が1.03以上1.3以下であるセラミックス反射材であれば、厚みが薄くとも、さらに高い反射率を有することがわかった。
【符号の説明】
【0061】
1:セラミックス反射材
1a:反射面
2:光源デバイス
3:電極
4:集合体
5:多重点
6:アルミナ結晶粒子
7:ジルコニア結晶粒子
10:光源モジュール
図1
図2
図3
図4