特許第6980598号(P6980598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980598粒子線治療装置および粒子線治療装置の移動床の移動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980598
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】粒子線治療装置および粒子線治療装置の移動床の移動方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   A61N5/10 H
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-97350(P2018-97350)
(22)【出願日】2018年5月21日
(65)【公開番号】特開2019-201730(P2019-201730A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2021年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 和史
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−156263(JP,A)
【文献】 特開2018−038670(JP,A)
【文献】 特開2001−353228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状を成し、粒子線治療を行う治療室が内部に設けられる回転ガントリと、
前記回転ガントリの内周面に固定され、前記回転ガントリの回転とともに回転可能な照射ポートと、
前記回転ガントリの内周面に沿う円弧部と前記治療室の床面に沿う水平部とが形成され、前記回転ガントリの一端と他端に設けられた2つの環状の軌道レールと、
前記軌道レールの間に架け渡され、前記軌道レールに沿って並び、かつ自重で移動可能な複数の移動床と、
を備え、
前記照射ポートが前記円弧部にあるときに、前記移動床が前記軌道レールに沿って自重で落下して前記水平部にある前記移動床同士が密接し、
前記照射ポートが前記水平部にあるときに、前記移動床が前記軌道レールに沿って自重で落下して前記照射ポートと前記移動床とが密接することを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項2】
前記照射ポートと少なくとも1つの前記移動床とが接触可能かつ離間可能であり、
前記照射ポートが前記回転ガントリの回転とともに移動されたときに、前記照射ポートに押されて前記移動床が移動される請求項1に記載の粒子線治療装置。
【請求項3】
前記軌道レールの全周うちの少なくとも4分の3の範囲に亘って前記移動床と前記照射ポートとが設けられる請求項1または請求項2に記載の粒子線治療装置。
【請求項4】
複数の移動床が互いに連結された移動床ユニットを備え、
少なくとも2つの前記移動床ユニットが前記軌道レールに沿って並んで設けられる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の粒子線治療装置。
【請求項5】
前記移動床が前記軌道レールに沿って自重で落下したときに、前記照射ポートと前記移動床との間、または前記移動床同士の間に生じる隙間を塞ぐスクリーン部を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粒子線治療装置。
【請求項6】
前記スクリーン部は、
前記照射ポートと前記移動床との間に設けられ、これらの間に生じる隙間を塞ぐ第1種スクリーン部と、
前記移動床同士の間に設けられ、これらの間に生じる隙間を塞ぐ第2種スクリーン部と、
から成る請求項5に記載の粒子線治療装置。
【請求項7】
前記スクリーン部は、前記回転ガントリの内周面の全体に亘って設けられる請求項5に記載の粒子線治療装置。
【請求項8】
円筒形状を成し、粒子線治療を行う治療室が内部に設けられる回転ガントリと、
前記回転ガントリの内周面に固定され、前記回転ガントリの回転とともに回転可能な照射ポートと、
前記回転ガントリの内周面に沿う円弧部と前記治療室の床面に沿う水平部とが形成され、前記回転ガントリの一端と他端に設けられた2つの環状の軌道レールと、
前記軌道レールの間に架け渡され、前記軌道レールに沿って並び、かつ自重で移動可能な複数の移動床と、
を備える粒子線治療装置が設けられ、
前記照射ポートが前記円弧部にあるときに、前記移動床が前記軌道レールに沿って自重で落下して前記水平部にある前記移動床同士が密接するステップと、
前記照射ポートが前記水平部にあるときに、前記移動床が前記軌道レールに沿って自重で落下して前記照射ポートと前記移動床とが密接するステップと、
を含むことを特徴とする粒子線治療装置の移動床の移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、粒子線治療装置および粒子線治療装置の移動床の移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転ガントリ内の治療室内のベッド上に患者を配置し、この患者の患部(がん)に照射ポートから粒子線ビームを照射して治療を行う技術が知られている。照射ポートは、回転ガントリの回転とともに回転し、患者に対して様々な方向から粒子線ビームを照射することができる。治療室の床面は、照射ポートの回転とともに移動される移動床により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5452262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の技術では、回転ガントリおよび照射ポートが回転されたときに、これらの動作に応じて移動床を移動させるための制御装置が必要である。回転ガントリおよび照射ポートの動作は、単純な円運動であるものの、移動床は、円弧部と水平部を有する略D字状を成すレールに沿って移動されるので、制御装置による移動床の制御が煩雑になるという課題がある。
【0005】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、煩雑な制御を行わずに移動床を移動させることができる粒子線治療装置の移動床の移動技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る粒子線治療装置は、円筒形状を成し、粒子線治療を行う治療室が内部に設けられる回転ガントリと、前記回転ガントリの内周面に固定され、前記回転ガントリの回転とともに回転可能な照射ポートと、前記回転ガントリの内周面に沿う円弧部と前記治療室の床面に沿う水平部とが形成され、前記回転ガントリの一端と他端に設けられた2つの環状の軌道レールと、前記軌道レールの間に架け渡され、前記軌道レールに沿って並び、かつ自重で移動可能な複数の移動床と、を備え、前記照射ポートが前記円弧部にあるときに、前記移動床が前記軌道レールに沿って自重で落下して前記水平部にある前記移動床同士が密接し、前記照射ポートが前記水平部にあるときに、前記移動床が前記軌道レールに沿って自重で落下して前記照射ポートと前記移動床とが密接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、煩雑な制御を行わずに移動床を移動させることができる粒子線治療装置の移動床の移動技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の粒子線治療装置を示す断面図。
図2】軌道レールおよび移動床を示す斜視図。
図3】軌道レールおよび移動床を示す断面図。
図4】移動床を示す斜視図。
図5】回転ガントリの回転角度が0度のときの移動床を示す正面図。
図6】回転ガントリの回転角度が45度のときの移動床を示す正面図。
図7】回転ガントリの回転角度が135度のときの移動床を示す正面図。
図8】回転ガントリの回転角度が180度のときの移動床を示す正面図。
図9】第2実施形態の移動床を示す正面図。
図10】第3実施形態の粒子線治療装置を示す断面図。
図11】第3実施形態の移動床を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本実施形態を添付図面に基づいて説明する。まず、第1実施形態の粒子線治療装置について図1から図8を用いて説明する。以下、図1の紙面右側を粒子線治療装置の正面側(前方側)として説明する。図1の符号1は、粒子線治療装置である。この粒子線治療装置1では、炭素イオンの粒子線ビーム2を被検体としての患者3の病巣組織(がん)に照射して治療を行う。
【0010】
粒子線治療装置1を用いた放射線治療技術は、重粒子線がん治療技術とも称される。この技術は、がん病巣(患部)を炭素イオンがピンポイントで狙い撃ちし、がん病巣にダメージを与えながら、正常細胞へのダメージを最小限に抑えることが可能とされる。なお、粒子線とは、放射線のなかでも電子より重いものと定義され、陽子線、重粒子線が含まれる。このうち重粒子線は、ヘリウム原子より重いものと定義される。
【0011】
重粒子線を用いるがん治療では、従来のエックス線、ガンマ線、陽子線を用いたがん治療と比較してがん病巣を殺傷する能力が高く、患者3の体の表面では放射線量が弱く、がん病巣において放射線量がピークになる特性を有している。そのため、照射回数と副作用を少なくすることができ、治療期間をより短くすることができる。
【0012】
特に図示はしないが、粒子線治療装置1は、荷電粒子である炭素イオンを生成するイオン源と、炭素インを加速する前段加速器である線形加速器と、炭素イオンを加速して粒子線ビーム2とするリング状の円形加速器と、円形加速器から出射された粒子線ビーム2を輸送するビーム輸送ラインとを備える。なお、円形加速器は、磁場と加速電場の周波数を制御することで粒子線ビーム2を加速する高周波加速空洞を備える。
【0013】
図1に示すように、粒子線治療装置1は、ビーム輸送ラインにより粒子線ビーム2が導かれ、この粒子線ビーム2の照射対象となる患者3が配置される回転ガントリ4を備える。
【0014】
まず、イオン源で生成された炭素イオンは、線形加速器で光速の約10%まで加速され、粒子線ビーム2となって円形加速器に入射される。この粒子線ビーム2は、円形加速器を約百万回周回する間に光速の約70%まで加速され、粒子線ビーム2となる。そして、この粒子線ビーム2がビーム輸送ラインを介して回転ガントリ4まで導かれる。
【0015】
線形加速器、円形加速器およびビーム輸送ラインは、内部が真空にされるビームパイプとしての真空ダクト5を備える。線形加速器、円形加速器およびビーム輸送ラインの真空ダクト5が一体となり、粒子線ビーム2をイオン源から回転ガントリ4まで導く輸送経路が構成される。つまり、真空ダクト5は、粒子線ビーム2を通過させるのに充分な真空度を有する密閉された連続空間である。そして、真空ダクト5の内部を粒子線ビーム2が進行する。
【0016】
線形加速器、円形加速器およびビーム輸送ラインは、粒子線ビーム2を制御する複数の電磁石装置6を備える。それぞれの電磁石装置6は、真空ダクト5の外周を囲むように配置される。また、複数の電磁石装置6が、真空ダクト5が延びる方向に沿って並んでいる。
【0017】
これらの電磁石装置6には、様々な種類のものが用いられる。例えば、粒子線ビーム2の収束および発散を制御する制御用の四極電磁石装置、粒子線ビーム2の進行方向の変更に用いられる偏向電磁石装置である。
【0018】
図1に示すように、回転ガントリ4は、円筒形状を成す大型の装置である。この回転ガントリ4は、その円筒の軸Jが水平方向を向くように設置される。そして、この軸Jを中心として回転ガントリ4が回転可能となっている。また、回転ガントリ4の下部には、回転ガントリ4を回転可能な状態で支持する支持ローラ7と、この回転ガントリ4を回転させる駆動モータ8が設けられる。なお、回転ガントリ4は、その外周に固定されたエンドリング9を介して支持ローラ7に支持される。駆動モータ8の回転駆動力は、支持ローラ7およびエンドリング9を介して回転ガントリ4に与えられる。
【0019】
なお、回転ガントリ4には、ビーム輸送ラインから延長された真空ダクト5および電磁石装置6が取り付けられる。回転ガントリ4において、真空ダクト5は、まず、回転ガントリ4の外部からその水平軸Jに沿って導かれ、回転ガントリ4の円筒外周側へ向けて一旦延びた後に、再び回転ガントリ4の内周側に向けて延びる。
【0020】
また、真空ダクト5の端部には、ビーム輸送ラインにより導かれた粒子線ビーム2を患者3に向けて照射する照射ポート10が設けられる。この照射ポート10は、回転ガントリ4の内周面に固定されている。なお、粒子線ビーム2は、水平軸Jに対して直交する方向に照射ポート10から照射される。
【0021】
なお、真空ダクト5の端部において、回転ガントリ4の水平軸Jに沿う部分には、回転機構(図示略)が設けられている。そして、この部分が回転ガントリ4の回転とともに回転するようになっている。
【0022】
さらに、真空ダクト5の端部近傍には、スキャニング電磁石11が設けられる。このスキャニング電磁石11は、粒子線ビーム2を、X方向に偏向走査するX偏向走査磁石(図示略)とY方向に偏向走査するY偏向走査磁石(図示略)とを有している。そして、スキャニング電磁石11は、粒子線ビーム2を制御することで、細い粒子線ビーム2を患者3の患部形状に3次元的に合致させて走査することができる。つまり、照射ポート10から照射される粒子線ビーム2は、ビーム進行方向に対して直交する2方向(X方向およびY方向)に走査可能となっている。
【0023】
なお、回転ガントリ4の内部には、粒子線治療を行う治療室12が設けられる。患者3は、この治療室12に設けられた治療台13に載置される。この治療台13は、患者3を載置した状態で移動可能となっている。この治療台13の移動によって患者3を粒子線ビーム2の照射位置に移動させて位置合わせを行うことができる。そのため、患者3の病巣組織に最適な精度で粒子線ビーム2を照射することができる。
【0024】
また、回転ガントリ4を回転させることで、患者3を中心として照射ポート10を回転させることができる。例えば、患者3(水平軸J)を中心として照射ポート10を、正面視で右回り(時計回り)または左回り(反時計回り)に180度ずつ回転させることができる(図5から図8参照)。そして、患者3の周囲のいずれの方向からも粒子線ビーム2を照射させることができる。つまり、回転ガントリ4は、ビーム輸送ラインにより導かれた粒子線ビーム2の患者3に対する照射方向を変更可能な装置である。そのため、患者3の負担を軽減しつつ、最適な方向から粒子線ビーム2を正確に患部に照射することができる。
【0025】
本実施形態では、回転ガントリ4および照射ポート10の回転方向において、正面視で右回り(時計回り)を正方向の回転とし、左回り(反時計回り)を負方向の回転として説明する。なお、正方向の回転をした場合の180度の位置と、負方向の回転をした場合の−180度の位置は、同じ位置である。
【0026】
粒子線ビーム2は、患者3の体内を通過する際に運動エネルギーを失って速度が低下するとともに、速度の二乗にほぼ反比例する抵抗を受け、ある一定の速度まで低下すると急激に停止する。そして、粒子線ビーム2の停止点近傍では、ブラッグピークと呼ばれる高エネルギーが放出される。粒子線治療装置1は、このブラッグピークを患者3の病巣組織(患部)の位置に合わせることにより、正常組織のダメージを抑えつつ、病巣組織のみを死滅させることができる。
【0027】
図1に示すように、回転ガントリ4の内部に設けられた治療室12は、建屋14から繋がる部屋15と一体を成すように形成されている。この建屋14側の部屋15の床と壁と天井とが、治療室12と連なるように設けられる。なお、治療台13は、建屋14側の部屋15の床に固定される。つまり、回転ガントリ4および照射ポート10が回転されても、治療台13の位置は変化しないようになっている。
【0028】
回転ガントリ4の内部には、内壁部16が設けられる。この内壁部16は、円盤状を成し、その周縁が、回転ガントリ4の内周面の全周に亘って設けられたサポート部17に支持される。この内壁部16は、サポート部17により周方向に回転自在に支持される。この内壁部16により、回転ガントリ4の内部が、治療室12の部分とそれ以外の部分とに仕切られる。
【0029】
内壁部16において、治療室12と反対側の中央部には、逆回転同期モータ18が接続される。この逆回転同期モータ18は、回転ガントリ4の内周面に固定される。駆動モータ8の駆動力により回転ガントリ4が回転されたときに、逆回転同期モータ18が内壁部16を回転ガントリ4の回転方向とは逆方向に回転させる。
【0030】
例えば、回転ガントリ4を正面視で右回りに回転させるときに、内壁部16を左回りに回転させる。このとき、回転ガントリ4の回転速度と内壁部16の回転速度とを同一にする。つまり、内壁部16は、回転ガントリ4が回転されても、見かけ上、静止しているようになる。なお、内壁部16の治療室12側には、この内壁部16を治療室12側から見えないように隠蔽する化粧壁19が設けられる。
【0031】
回転ガントリ4の内部には、その一端側(前方側)と他端側(後方側)に設けられた2つの環状の軌道レール20と、これらの軌道レール20の間に架け渡される複数の移動床21とが設けられる。
【0032】
移動床21は、前後方向に長い長方形の板状を成す部材である。これらの移動床21より治療室12の床と壁と天井とが形成される。なお、前方側の軌道レール20が内壁部16に固定される。一方、後方側の軌道レール20が、建屋14側の部屋15の床と壁と天井に固定される。回転ガントリ4および照射ポート10が回転した場合であっても、前後の軌道レール20は、回転せずに静止される。
【0033】
図2および図5に示すように、軌道レール20には、回転ガントリ4の内周面に沿う円弧部22と治療室12の床面に沿う水平部23とが形成される。これらの軌道レール20は、正面視で円弧部分と水平部分とを有するD字形状を成す。そして、互いの軌道レール20の間に照射ポート10および移動床21が配置される。治療室12は、軌道レール20の形状に合わせたドーム型(板蒲鉾型)の形状となる。
【0034】
また、軌道レール20に架け渡された移動床21は、軌道レール20に沿って並び、かつ軌道レール20に沿って自重で移動可能となっている。回転ガントリ4の回転とともに、照射ポート10が回転されると、この照射ポート10の回転に連れ立って移動床21が移動される。そして、照射ポート10がいずれの位置に移動されても、移動床21により治療室12の床と壁と天井とが維持される(図5から図8参照)。
【0035】
移動床21において床に相当する部分は、建屋14の部屋15の床と面一となるように設けられる。治療の準備をするときには、この移動床21により構成された床面上を、患者3および技師が歩行することができる。移動床21が常に治療室12の床と壁と天井を形成しているので、回転ガントリ4の内周面が治療室12側から見えないように隠蔽される。
【0036】
また、照射ポート10は、粒子線ビーム2を患者3に向けて照射する照射部24と、この照射部24を支持する台形を成す胴カバーとしての基台部25とを備える。この基台部25は、正面視で軌道レール20に対応する部分に配置される。なお、基台部25は、回転ガントリ4の中心に向かって窄まる形状を成す。つまり、基台部25は、照射部24から回転ガントリ4の内周面と接触する部分に向かって拡大する形状である。
【0037】
なお、基台部25の側面は、軌道レール20が延びる方向に対して垂直に交差し難いように、所定の角度で傾斜されている。回転ガントリ4の回転とともに照射ポート10が回転されると、基台部25の側面に移動床21が接触し、この基台部25に押されることで、移動床21が軌道レール20に沿って移動される(図6から図8参照)。
【0038】
本実施形態では、照射ポート10の基台部25と少なくとも2つの移動床21とが接触可能かつ離間可能である。さらに、照射ポート10が回転ガントリ4の回転とともに移動されたときに、照射ポート10の基台部25に押されて移動床21が移動される。このようにすれば、照射ポート10を移動させる回転ガントリ4の回転力により移動床21を移動させることができる。また、それぞれの移動床21は、軌道レール20に沿って自重で落下可能となっている。
【0039】
図3に示すように、軌道レール20は、断面視でC字形状を成す。また、それぞれの移動床21の前後端部には、摺動ローラ26が設けられる。これらの摺動ローラ26が軌道レール20に保持される。これらの摺動ローラ26は、それぞれの移動床21が軌道レール20に沿って自重で落下するときに、その落下速度を調整する制動装置を備える。この制動装置を予め調整しておくことで、移動床21が落下して照射ポート10と接触しても、その接触時の衝撃を緩和することができる。
【0040】
図4および図5に示すように、軌道レール20に沿って並ぶ24枚の移動床21が設けられる。また、複数の移動床21が連結部材27を介して互いに連結される。これら連結された移動床21により移動床ユニットU1〜U3が形成される。そして、移動床ユニットU1〜U3が軌道レールに沿って並んで設けられる。このようにすれば、回転ガントリ4がいずれの位置に回転されても、照射ポート10の両側部に移動床ユニットU1〜U3を配置させることができる。
【0041】
第1実施形態では、8枚ずつの移動床21が互いに連結され、第1から第3までの3つの移動床ユニットU1〜U3が形成される。なお、移動床ユニットU1〜U3同士は連結されておらず、互いに離間可能となっている。
【0042】
第1移動床ユニットU1は、一端側の移動床21Aが照射ポート10に隣接され、他端側の移動床21Bが第2移動床ユニットU2に隣接される。第2移動床ユニットU2は、一端側の移動床21Cが第1移動床ユニットU1に隣接され、他端側の移動床21Dが第3移動床ユニットU3に隣接される。第3移動床ユニットU3は、一端側の移動床21Eが第2移動床ユニットU2に隣接され、他端側の移動床21Fが照射ポート10に隣接される。
【0043】
連結部材27は、移動床21の摺動ローラ26の軸部に保持される。なお、連結部材27は、移動床21に対して摺動ローラ26の軸部を中心として揺動される。つまり、隣接する移動床21同士は、互いに揺動自在な状態となる。そして、移動床ユニットU1〜U3全体の形状は、軌道レール20の形状に合わせて変形可能となっている。例えば、移動床ユニットU1〜U3が軌道レール20の円弧部22にあるときには円弧を成し、移動床ユニットU1〜U3が軌道レール20の水平部23にあるときには水平を成す。
【0044】
また、移動床ユニットU1〜U3において、互いに連結された移動床21同士の隙間は、所定寸法(例えば3cm)以下になるように調整される。そのため、移動床21同士の隙間に、移動床21上を歩行する者の爪先が挟まることがないようにしている。
【0045】
図4に示すように、第1移動床ユニットU1および第3移動床ユニットU3において、照射ポート10の基台部25に近接する端部側の移動床21の側部には、基台部25の側面に接触される接触ローラ28が設けられる。移動床ユニットU1〜U3が基台部25に押されるとき、または、移動床ユニットU1〜U3が自重で落下したときに、接触ローラ28が基台部25の側面に接触されるので、基台部25または移動床21を疵付けることがない。また、移動床ユニットU1〜U3同士のそれぞれの端部の移動床21に接触ローラ28を設けても良い。
【0046】
図5から図8に示すように、照射ポート10と移動床ユニットU1,U3との間、および移動床ユニットU1〜U3同士の間には、スクリーン部29,30が設けられる。第1実施形態では、照射ポート10と移動床ユニットU1,U3との間に設けられ、これらの間に生じる隙間を塞ぐ第1種スクリーン部29と、移動床ユニットU1〜U3同士の間に設けられ、これらの間に生じる隙間を塞ぐ第2種スクリーン部30とが設けられる。
【0047】
これらのスクリーン部29,30は、その両端に巻取部31を備える。なお、巻取部31は、布状を成すスクリーン部29,30をロール状に巻き取る巻取装置を備える。第1種スクリーン部29は、照射ポート10の基台部25と移動床ユニットU1,U3の端部側の移動床21とに接続される。第2種スクリーン部30は、2つの移動床ユニットU1〜U3の端部側のそれぞれの移動床21に接続される。
【0048】
スクリーン部29,30は、移動床ユニットU1〜U3が軌道レール20に沿って自重で落下したときに、照射ポート10と移動床ユニットU1,U3との間、または移動床ユニットU1〜U3同士の間に生じる隙間を塞ぐようになっている。このようにすれば、移動床ユニットU1〜U3の移動により生じる隙間がスクリーン部29,30により閉塞されるので、治療室12側の患者3から回転ガントリ4の内周面の構造物が見えないように隠蔽することができる。
【0049】
また、第1種スクリーン部29と第2スクリーン部30の2つの種類のものが設けられることで、照射ポート10と移動床ユニットU1,U3とが離間された場合、および移動床ユニットU1〜U3同士が離間された場合のいずれであっても、患者3から回転ガントリ4の内周面の構造物が見えないように隠蔽することができる。
【0050】
また、照射ポート10と移動床ユニットU1,U3との隙間、および移動床ユニットU1〜U3同士の隙間は、照射ポート10および移動床ユニットU1〜U3の移動とともに、その幅寸法が変化する。スクリーン部29,30は、巻取部31により適宜巻き取られるので、その幅寸法が隙間の幅寸法に応じて変化する。
【0051】
次に、回転ガントリ4の回転角度が0度から180度まで右回り(時計回り)に回転される態様を説明する。図5に示すように、回転ガントリ4の回転角度が0度の場合に、照射ポート10が軌道レール20の頂点位置Vに配置される。この位置を基準として、回転ガントリ4および照射ポート10が正面視で右回り(正方向)または左回り(負方向)に180度ずつ回転可能となっている。
【0052】
照射ポート10が軌道レール20の頂点位置V(円弧部22)にあるときに、第2移動床ユニットU2が軌道レール20の水平部23に配置され、治療室12の床面を形成する。また、第1移動床ユニットU1および第3移動床ユニットU3が軌道レール20の円弧部22に配置され、治療室12の壁面を形成する。
【0053】
このときに、第1移動床ユニットU1および第3移動床ユニットU3は、照射ポート10の基台部25から離れ、軌道レール20に沿って自重で落下して、水平部23にある第2移動床ユニットU2に密接される。
【0054】
図6に示すように、回転ガントリ4が0度から正面視で右回りに45度になるように回転されると、照射ポート10の基台部25の側面が第1移動床ユニットU1の一端側の移動床21Aに接触する。そして、第1移動床ユニットU1が基台部25に押されて、軌道レール20に沿って右回りに下方に移動される。
【0055】
また、第1移動床ユニットU1の他端側の移動床21Bが第2移動床ユニットU2の一端側の移動床21Cに接触する。そして、第2移動床ユニットU2が第1移動床ユニットU1に押されて、軌道レール20に沿って移動される。
【0056】
また、第2移動床ユニットU2の他端側の移動床21Dが第3移動床ユニットU3の一端側の移動床21Eに接触する。そして、第3移動床ユニットU3が第2移動床ユニットU2に押されて、軌道レール20に沿って移動される。
【0057】
図7に示すように、回転ガントリ4が45度から正面視で右回りに135度になるように回転されると、照射ポート10に押されて、第1から第3移動床ユニットU1〜U3が移動される。そして、照射ポート10が軌道レール20の水平部23に到達する。ここで、第3移動床ユニットU3を形成する複数枚の移動床21のうち、半分以上の枚数の移動床21が軌道レール20の頂点位置Vを超えると、第3移動床ユニットU3が軌道レール20に沿って右回りに自重で落下する。
【0058】
第3移動床ユニットU3が落下されると、この第3移動床ユニットU3の一端側の移動床21Eが第2移動床ユニットU2と離れる。そして、第3移動床ユニットU3の他端側の移動床21Fが照射ポート10の基台部25の側面に密接される。
【0059】
図8に示すように、回転ガントリ4が135度から正面視で右回りに180度になるように回転されると、照射ポート10に押されて、第1から第2移動床ユニットU1,U2が移動される。なお、第3移動床ユニットU3は、照射ポート10と接触した状態で、この照射ポート10の移動とともに自重で移動される。
【0060】
次に、回転ガントリ4の回転角度が180度から0度まで左回り(反時計回り)に回転される態様を説明する。図8に示すように、回転ガントリ4の回転角度が180度の場合に、照射ポート10の基台部25の両側面に第1移動床ユニットU1と第3移動床ユニットU3が密接される。また、第2移動床ユニットU2は、第1移動床ユニットU1に支持されて、軌道レール20の円弧部22に配置される。
【0061】
図7に示すように、回転ガントリ4が180度から正面視で左回りに135度になるように回転されると、照射ポート10の基台部25の側面が第3移動床ユニットU3の他端側の移動床21Fを押すようになる。そして、第3移動床ユニットU3が基台部25に押されて、軌道レール20に沿って左回りに上方に移動される。
【0062】
照射ポート10が右回りに移動されると、第1移動床ユニットU1と第2移動床ユニットU2とがその自重により移動される。ここで、第1移動床ユニットU1は、軌道レール20の水平部23に沿って水平に移動し、第2移動床ユニットU2は、軌道レール20の円弧部22に沿って右回りに下方に移動する。
【0063】
図6に示すように、回転ガントリ4が135度から正面視で左回りに45度になるように回転されると、照射ポート10の軌道レール20の水平部23から離れる。この照射ポート10に押されて、第3移動床ユニットU3が移動される。ここで、第3移動床ユニットU3を形成する複数枚の移動床21のうち、半分以上の枚数の移動床21が軌道レール20の頂点位置Vを超えると、第3移動床ユニットU3が軌道レール20に沿って左回りに自重で落下する。
【0064】
第3移動床ユニットU3が落下されると、この第3移動床ユニットU3の他端側の移動床21Fが照射ポート10の基台部25の側面から離れる。そして、第3移動床ユニットU3の一端側の移動床21Eが第2移動床ユニットU2に密接される。ここで、第1移動床ユニットU1は、第2移動床ユニットU2および第3移動床ユニットU3の自重により押され、軌道レール20の円弧部22に沿って左回りに上方に移動される。
【0065】
図5に示すように、回転ガントリ4が45度から正面視で左回りに0度になるように回転されると、第1移動床ユニットU1の一端側の移動床21Aが照射ポート10の基台部25の側面から離れる。そして、照射ポート10が軌道レール20の頂点位置Vに配置される。ここで、第1移動床ユニットU1の他端側の移動床21Bが第2移動床ユニットU2の一端側の移動床21Cと密接される。また、第3移動床ユニットU3の一端側の移動床21Eが第2移動床ユニットU2の他端側の移動床21Dと密接される。
【0066】
なお、回転ガントリ4は、その回転角度が0度から−180度まで左回り(反時計回り)に回転されることも可能であり、その回転角度が−180度から0度まで右回り(時計回り)に回転されることも可能である。
【0067】
本実施形態では、回転ガントリ4を回転させる駆動モータ8の回転駆動力により、照射ポート10が回転し、この照射ポート10を回転させる力で、移動床21を移動させることができる。そのため、移動床21を移動させるためのモータなどの動力源を設ける必要がなく、かつ移動床21の煩雑な制御を行わずに済むようになる。さらに、軌道レール20の水平部23には、常に移動床21または照射ポート10が密接して配置されるので、治療室12の床面を隙間なく形成することができる。
【0068】
また、軌道レール20の全周うちの少なくとも4分の3の範囲に亘って移動床21と照射ポートとが設けられる。このようにすれば、回転ガントリ4がいずれの位置に回転されても、移動床21を軌道レール20の水平部23に配置することができる。
【0069】
また、移動床21の回転ガントリ4の回転方向における長さを移動床長と称し、1つの移動床ユニットU1〜U3の回転ガントリ4の回転方向における長さをユニット長と称する。また、軌道レール20の円弧部22において、照射ポート10が重なる距離を重複距離と称する。ここで、移動床長は、円弧部22が沿う仮想円の円周の5分の4である。また、重複距離は、円弧部22が沿う仮想円の円周の5分の1以下である。そして、3つの移動床ユニットU1〜U3の各ユニット長は等しく、いずれも8枚の移動床21から構成される。さらに、軌道レール20の水平部23の長さは、1つの移動床ユニットU1〜U3のユニット長とほぼ等しくなっている。
【0070】
また、移動床21が自重で落下可能となっていることで、移動床21を移動させるための煩雑な制御を行わずに済むようになっている。さらに、移動床21を移動させるための駆動力を付与する専用のモータを設ける必要がなくなるので、粒子線治療装置1のコストダウンが図れる。また、粒子線治療装置1のメンテナンスを容易に行えるようになる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の移動床21について図9を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0072】
図9に示すように、軌道レール20に沿って並ぶ24枚の移動床21が設けられる。第2実施形態では、6枚ずつの移動床21が互いに連結され、第1から第4までの4つの移動床ユニットU11〜U14が形成される。
【0073】
第1移動床ユニットU14は、一端側の移動床21Gが照射ポート10に隣接され、他端側の移動床21Hが第2移動床ユニットU12に隣接される。第2移動床ユニットU12は、一端側の移動床21Jが第1移動床ユニットU11に隣接され、他端側の移動床21Kが第3移動床ユニットU13に隣接される。第3移動床ユニットU13は、一端側の移動床21Lが第2移動床ユニットU12に隣接され、他端側の移動床21Mが第4移動床ユニットU14に隣接される。第4移動床ユニットU14は、一端側の移動床21Nが第3移動床ユニットU13に隣接され、他端側の移動床21Pが照射ポート10に隣接される。
【0074】
照射ポート10が軌道レール20の頂点位置V(円弧部22)にあるときに、第2移動床ユニットU12および第3移動床ユニットU13が軌道レール20の水平部23に配置され、治療室12の床面を形成する。また、第1移動床ユニットU11および第4移動床ユニットU14が軌道レール20の円弧部22に配置され、治療室12の壁面を形成する。つまり、照射ポート10が軌道レール20の円弧部22にあるときに、移動床ユニットU11〜U14が軌道レール20に沿って自重で落下して水平部23にある移動床ユニットU12,U13同士が密接する。
【0075】
回転ガントリ4の回転角度が0度から180度まで右回り(時計回り)に回転される場合には、照射ポート10の基台部25が第1移動床ユニットU11の一端側の移動床21Gに接触する。そして、第1移動床ユニットU11が基台部25に押されて、軌道レール20に沿って右回りに下方に移動される。このときに、第2移動床ユニットU12が第1移動床ユニットU11に押されて軌道レール20に沿って右回りに移動される。さらに、第3移動床ユニットU13および第4移動床ユニットU14も軌道レール20に沿って右回りに移動される。
【0076】
照射ポート10が軌道レール20の水平部23に到達し、第4移動床ユニットU14を形成する複数枚の移動床21のうち、半分以上の枚数の移動床21が軌道レール20の頂点位置Vを超えると、第4移動床ユニットU14が軌道レール20に沿って右回りに自重で落下する。そして、第4移動床ユニットU14の他端側の移動床21Pが照射ポート10の基台部25に密接する。つまり、照射ポート10が軌道レール20の水平部23にあるときに、移動床ユニットU14が軌道レール20に沿って自重で落下して照射ポート10と移動床ユニットU14とが密接する。
【0077】
また、第3移動床ユニットU13を形成する複数枚の移動床21のうち、半分以上の枚数の移動床21が軌道レール20の頂点位置Vを超えると、第3移動床ユニットU13が軌道レール20に沿って右回りに自重で落下する。そして、回転ガントリ4の回転角度が180度になり、照射ポート10が最下部の位置まで移動されると、この照射ポート10の左右のそれぞれに2つずつの移動床ユニットU11〜U14が配置される。
【0078】
第2実施形態では、4つの移動床ユニットU11〜U14を設けることで、軌道レール20の左右に2つずつの移動床ユニットU11〜U14が均等に振り分けられ易くなる。
【0079】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の粒子線治療装置1Aについて図10から図11を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0080】
図10および図11に示すように、第3実施形態では、軌道レール20に沿って並ぶ24枚の移動床21が設けられる。これらの移動床21は、互いに連結されていない。つまり、第3実施形態では、移動床ユニットが設けられていない構成となっている。
【0081】
第3実施形態では、回転ガントリ4の内部には、その一端側(前方側)と他端側(後方側)に設けられた2つの円形状を成すスクリーンレール32と、これらのスクリーンレール32の間に架け渡される1枚のスクリーン部33とが設けられる。
【0082】
スクリーンレール32は、軌道レール20の外周側、かつ回転ガントリ4の内周面に近接する位置に設けられる。なお、前方側のスクリーンレール32が内壁部16に固定される。一方、後方側のスクリーンレール32が、建屋14側の部屋15の床と壁と天井に固定される。回転ガントリ4および照射ポート10が回転した場合であっても、前後のスクリーンレール32は、回転せずに静止される。
【0083】
スクリーン部33は、回転ガントリ4の内周面に沿うほぼ円筒形を成し、回転ガントリ4の内周面の全体に亘って広がる部材となっている。このスクリーン部33は、布状であっても良いし、板状であっても良い。そして、スクリーン部33は、照射ポート10の基台部25の側面に固定部34により固定される。
【0084】
回転ガントリ4の回転とともに照射ポート10が回転されると、この照射ポート10とともにスクリーン部33も回転される。そして、照射ポート10の基台部25の側面と移動床21の間、または、移動床21同士の間に隙間が生じても、この隙間がスクリーン部33により閉塞されるので、治療室12側の患者3から回転ガントリ4の内周面の構造物が見えないように隠蔽することができる。
【0085】
第3実施形態では、スクリーン部33が回転ガントリ4の内周面の全体に亘って一体的に設けられるので、スクリーン部33の構造を簡素化することができる。
【0086】
本実施形態に係る粒子線治療装置を第1実施形態から第3実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。
【0087】
なお、本実施形態では、少なくとも2つの移動床21が、照射ポート10と接触可能かつ離間可能であるが、少なくとも1つの移動床21が照射ポート10と接触可能かつ離間可能であっても良い。例えば、照射ポート10の左右に配置される移動床21のうち、いずれか一方の移動床21が照射ポート10に固定されていても良い。
【0088】
なお、本実施形態では、3つの移動床ユニットU1〜U3または4つの移動床ユニットU11〜U14が設けられる形態を例示したが、その他の数の移動床ユニットを設けても良い。例えば、軌道レール20に沿って並ぶ24枚の移動床21のうち、12枚ずつ移動床21を連結して、2つの移動床ユニットが設けられても良い。また、5つ以上の移動床ユニットが設けられても良い。また、移動床ユニットの個数は、偶数であっても良いし、奇数であっても良い。
【0089】
なお、本実施形態では、軌道レール20に沿って並ぶ24枚の移動床21の形態を例示したが、その他の枚数の移動床21が設けられても良い。例えば、18枚の移動床21を設けても良いし、28枚の移動床21を設けても良い。また、移動床21の枚数は、偶数枚が好ましいが、奇数枚であっても良い。
【0090】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、軌道レールの間に架け渡され、軌道レールに沿って並び、かつ自重で移動可能な複数の移動床を備えることにより、煩雑な制御を行わずに移動床を移動させることができる。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
1(1A)…粒子線治療装置、2…粒子線ビーム、3…患者、4…回転ガントリ、5…真空ダクト、6…電磁石装置、7…支持ローラ、8…駆動モータ、9…エンドリング、10…照射ポート、11…スキャニング電磁石、12…治療室、13…治療台、14…建屋、15…部屋、16…内壁部、17…サポート部、18…逆回転同期モータ、19…化粧壁、20…軌道レール、21(21A〜21P)…移動床、22…円弧部、23…水平部、24…照射部、25…基台部、26…摺動ローラ、27…連結部材、28…接触ローラ、29,30…スクリーン部、31…巻取部、32…スクリーンレール、33…スクリーン部、34…固定部、J…軸、U1〜U3…移動床ユニット、U11〜U14…移動床ユニット、V…頂点位置。
図1
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図5
図6
図7
図8
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図10
図11