(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド踏面に、タイヤ周方向に連続して延びる3本以上の周方向主溝と、該周方向主溝によって少なくともタイヤ幅方向一方側が区画された、複数の陸部と、を有するタイヤであって、
前記複数の陸部のうち、少なくとも、タイヤ赤道面に対して車両装着外側の半部に位置する外側陸部と、タイヤ赤道面に対して車両装着内側の半部に位置する内側陸部と、にそれぞれ、陸部内で終端する副溝と、該副溝と前記周方向主溝とを連通する少なくとも1本の枝溝と、を含む共鳴器を備え、
前記外側陸部の共鳴器における前記副溝は、少なくとも一部が、トレッド踏面における開口幅が溝底の溝幅よりも狭い隠れ溝部からなり、
前記内側陸部の共鳴器における前記副溝は、トレッド踏面における開口幅が溝底の溝幅よりも狭くされていない顕れ溝部のみからなっていることを特徴とする、タイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るタイヤ10の、トレッド踏面11を示す部分展開図である。本実施形態のタイヤ10は、図示を一部省略するが、ビード部間にトロイダル状に延びるラジアル構造を有するカーカスと、トレッド部のカーカスのタイヤ径方向外側に配設されるベルトと、ベルトのタイヤ径方向外側に配設されてトレッド踏面11を形成するトレッドゴムと、を備えている。
【0018】
本実施形態のタイヤ10は、
図1に示すように、トレッド踏面11に、タイヤ周方向に連続して延びる3本以上の周方向主溝12と、周方向主溝12によって少なくともタイヤ幅方向一方側が区画された複数の陸部13と、を有している。
【0019】
本実施形態において、タイヤ10は、4本の周方向主溝12によって少なくともタイヤ幅方向一方側が区画された、5箇所の陸部13を有している。より具体的には、トレッド踏面11に、タイヤ赤道面CLを挟んで隣り合う2本の周方向主溝12a,12bによって区画された中央陸部13aと、タイヤ赤道面CLの一方側のタイヤ半部HA(
図1では、図面左側)に位置する2本の周方向主溝12a,12cによって区画された中間陸部13bと、該タイヤ半部HAの接地端TE及び該接地端TE側の周方向主溝(ショルダー主溝)12cによって区画されたショルダー陸部13cと、タイヤ赤道面CLの他方側のタイヤ半部HB(
図1では、図面右側)に延びる2本の周方向主溝12b,12dによって区画された中間陸部13dと、該タイヤ半部HBの接地端TE及び該接地端TE側の周方向主溝(ショルダー主溝)12dによって区画されたショルダー陸部13eと、を有している。
ここで、タイヤ半部HAは、タイヤ10を車両に装着したときに内側(
図1中、IN側と表示)となる車両装着内側部分であり、タイヤ半部HBは、タイヤ10を車両に装着したときに外側(
図1中、OUT側と表示)となる車両装着外側部分である(
図2,3,5のIN側、OUT側も同様)。
【0020】
本実施形態において、周方向主溝12は4本設けられているが、これに限るものではなく、5本等、3本以上設けられていてもよい。
なお、このタイヤ10における周方向主溝12(12a,12b,12c,12d)は、いずれもタイヤ周方向に沿って直線状に連続して延びているが、他の例において、ジグザグ状または波状等の直線状以外の延在形態とすることができる。また、この例における陸部13(13a,13b,13c,13d,13e)は、いずれもタイヤ周方向に連続して延びるリブ状の陸部であるが、他の例において、ブロック陸部等とすることができる。
【0021】
本実施形態のタイヤ10は、複数の陸部13のうち、少なくとも、タイヤ幅方向最外側の周方向主溝12のタイヤ幅方向内側に隣接している中間陸部13に、中間陸部13内で終端する副溝14と、副溝14と周方向主溝12とを連通する少なくとも1本の枝溝15と、を含む共鳴器16を備えている。この共鳴器16は、一例として、ヘルムホルツ型の共鳴器(
図1参照)である。
図1に示すように、本実施形態において、タイヤ10は、タイヤ幅方向最外側の周方向主溝12dのタイヤ幅方向内側に隣接している中間陸部13dに、共鳴器16aを、タイヤ幅方向最内側の周方向主溝12cのタイヤ幅方向内側に隣接している中間陸部13bに、共鳴器16bを、それぞれ備えている。共鳴器16aは、中間陸部13d内で終端する副溝14aと、副溝14aと周方向主溝12(12b,12d)とを連通する少なくとも1本の枝溝15aと、を含み、共鳴器16bは、中間陸部13b内で終端する副溝14bと、副溝14bと周方向主溝12(12a,12c)とを連通する少なくとも1本の枝溝15bと、を含む。
即ち、
図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、複数の陸部13のうち、少なくとも、タイヤ赤道面CLに対して車両装着外側の半部(タイヤ半部HB)に位置する外側陸部13dと、タイヤ赤道面CLに対して車両装着内側の半部(タイヤ半部HA)に位置する内側陸部13bと、にそれぞれ、陸部13内で終端する副溝14と、副溝14と周方向主溝12とを連通する少なくとも1本の枝溝15と、を含む共鳴器16を備えている。
【0022】
また、本発明のタイヤでは、共鳴器16が、2本の枝溝15(15a,15b)のいずれか一方のみを含む構成とすることもできる。即ち、共鳴器16が、陸部13を区画するタイヤ幅方向一方側の周方向主溝12にのみ連通する構成、例えば、外側陸部13dの副溝14aは、周方向主溝12b或いは周方向主溝12d、内側陸部13bの副溝14bは、周方向主溝12a或いは周方向主溝12c、に連通する構成とすることもできる。また、本発明のタイヤでは、共鳴器16が、3本、4本、またはそれ以上の枝溝15を含む構成とすることもできる。
【0023】
本実施形態において、枝溝15は、トレッド踏面11における溝幅が、0.4〜1.2mmであることが好ましく、0.5〜0.7mmであることがより好ましい。溝幅が0.4mm以上であれば、トレッド踏面11の接地時にも枝溝15が閉じないので、共鳴器16の機能を発揮することができ、溝幅が1.2mm以下であれば、枝溝15周辺の陸部剛性を確保して、偏摩耗を抑制することができる。
なお、この枝溝15は、常時、開口した状態になっている。
【0024】
この共鳴器16(16a,16b)において、副溝14(14a,14b)は、タイヤ踏面11における平面視で、大略矢印形状を幅方向で二分した形状、即ち、タイヤ幅方向長さよりもタイヤ周方向長さが長い形状を有しており、また、副溝14の溝容積は、副溝14に接続する枝溝15(15a,15b)の溝容積よりも大きい。
【0025】
本実施形態において、共鳴器16aは、副溝14のタイヤ周方向一方側(
図1では、図面上側)の端部が、2本の枝溝15aの一方により周方向主溝12bと、副溝14のタイヤ周方向他方側(
図1では、図面下側)の端部が、2本の枝溝15aの他方により周方向主溝12dと、連通している。また、共鳴器16bは、副溝14のタイヤ周方向一方側(
図1では、図面上側)の端部が、2本の枝溝15bの一方により周方向主溝12aと、副溝14のタイヤ周方向他方側(
図1では、図面下側)の端部が、2本の枝溝15bの他方により周方向主溝12cと、連通している。
但し、本発明のタイヤでは、枝溝15が、副溝14のタイヤ周方向端部以外の部分、例えば、副溝14のタイヤ周方向中央部分に設けられていてもよい。
【0026】
図2及び
図3は、
図1に示すトレッド踏面11の部分拡大図であり、
図2は、共鳴器16aをその周辺部分と共に拡大して示し、
図3は、共鳴器16bとその周辺部分と共に拡大して示している。
本実施形態の、共鳴器16における副溝14は、一部が、トレッド踏面11における開口幅aが溝底の溝幅(溝底幅b)よりも狭い隠れ溝部Gからなり、他部が、トレッド踏面11における開口幅aが溝底の溝幅(溝底幅b)よりも狭くされていない顕れ溝部Hからなっている。
本実施形態において、外側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14aは、
図2に示すように、溝の一部である、副溝14aの延在方向略半分の一方(
図2では、図面下側)が、隠れ溝部Gからなり、溝の他部である、副溝14aの延在方向略半分の他方(
図2では、図面上側)の大部分が、顕れ溝部Hからなる。この副溝14aは、隠れ溝部G側が、枝溝15aの他方により周方向主溝12dと連通し、顕れ溝部H側が、枝溝15aの一方により周方向主溝12bと連通している(
図2参照)。
【0027】
本実施形態では、隠れ溝部Gが、副溝14aの延在方向略半分の一方に続いて、周方向主溝12b側が顕れ溝部H端部(
図2では、図面上側)まで、周方向主溝12d側が顕れ溝部H途中まで、副溝14aの延在方向に沿って延在している。即ち、隠れ溝部Gの、トレッド踏面11に開口する開口部Oが、隠れ溝部G端部(
図2では、図面上側)から、周方向主溝12bに連通する枝溝15a方向に向かって、両側(即ち、タイヤ幅方向側)に徐々に拡大して顕れ溝部Hを形成している(
図2参照)。
【0028】
本実施形態の、外側陸部13の共鳴器16における副溝14は、少なくとも一部が、トレッド踏面11における開口幅aが溝底の溝幅(溝底幅b)よりも狭い隠れ溝部Gからなり、内側陸部13の共鳴器16における副溝14は、トレッド踏面11における開口幅aが溝底の溝幅(溝底幅b)よりも狭くされていない顕れ溝部Hのみからなっている。
本実施形態において、外側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14aは、
図2に示すように、溝の一部の、副溝14aの延在方向略半分の一方(
図2では、図面下側)が、隠れ溝部Gからなっているが、内側陸部13bの共鳴器16bにおける副溝14bは、
図3に示すように、溝の全部が顕れ溝部Hのみ、即ち、副溝14bの全てが顕れ溝部Hからなっている。この副溝14b、即ち、顕れ溝部Hは、一方側(
図3では、図面上側)が枝溝15bの一方により周方向主溝12aと連通し、他方側(
図3では、図面下側)が枝溝15aの他方により周方向主溝12cと連通している。
なお、本実施形態において、外側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14aは、溝の一部である、副溝14aの延在方向略半分の一方(
図2では、図面下側)が、隠れ溝部Gからなっているが、溝の一部でなく、副溝14aの全てが隠れ溝部Gからなっていてもよい。
【0029】
図2,3に示すように、本実施形態において、隠れ溝部Gは、トレッド踏面11に開口する開口部Oのトレッド踏面11における開口幅aが、溝底の溝幅である溝底幅bよりも狭く(
図2参照)形成されており、顕れ溝部Hは、トレッド踏面11における開口幅aが溝底の溝幅である溝底幅bよりも狭くされていない、即ち、開口幅aが、溝底幅bと同一幅或いは溝底幅bより広く形成されている。本実施形態の場合、顕れ溝部Hのトレッド踏面11における開口幅aは、溝底幅bと略同一幅(
図3参照)に形成されている。
図1,3中、当該隠れ溝部Gの、トレッド踏面11には表れない溝壁を、隠れ線(破線)で示す。
ここで、隠れ溝部Gの、トレッド踏面11に開口する開口部Oは、隠れ溝部Gの長さ方向全域にわたり溝部開口幅略中央に位置している。
また、開口部Oの開口幅aは、トレッド踏面11における開口部Oの開口延在方向両側の開口縁に対する直交方向間距離をいい、溝底幅bは、溝底延在方向両側の溝壁に対する直交方向間距離をいう。
これら、副溝14aを含む共鳴器16aと副溝14bを含む共鳴器16bは、それぞれタイヤ周方向に亘って略等間隔に複数個が配置されている。
【0030】
外側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14aは、少なくとも一部が、隠れ溝部Gからなることで、隠れ溝部Gによって、副溝14aを、タイヤ10が凹凸や段差等が含まれる粗い路面を走行する場合でも、即ち、路面の状況にかかわらず、確実に閉じることができる。これにより、走行路面との間で区画される気室を、所定容積にすることができ、また、走行路面との間に予期しない隙間が生じて、気室そのものが形成されないということを、極力生じ難くすることができる。
このため、走行路面の状態にかかわらず、備えられた共鳴器16が確実に機能し、車両走行時に、気柱共鳴音を確実に低減することができる。
【0031】
なお、
図1に示す、本実施形態のタイヤ10は、タイヤ半部HBに位置する外側陸部13dに、共鳴器16aを備え、タイヤ半部HAに位置する内側陸部13bには、共鳴器16bを備えているが、共鳴器16aを、タイヤ半部HBに位置する外側陸部13dとタイヤ半部HAに位置する内側陸部13bの、両方に備えてもよい。
即ち、
図4に示すように、タイヤ半部HBに位置する外側陸部13dとタイヤ半部HAに位置する内側陸部13bの両方に、少なくとも一部が、トレッド踏面11における開口幅aが溝底の溝幅(溝底幅b)よりも狭い隠れ溝部Gからなる、副溝14aを含む、共鳴器16aを備えてもよい。
【0032】
本実施形態の、共鳴器16における副溝14の、溝底の溝幅は、タイヤ周方向の一方側から他方側へ向かって漸減している。
本実施形態において、外側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14aは、溝底の溝幅が、タイヤ周方向の一方側から他方側へ向かって漸減しており、顕れ溝部Hを、タイヤ周方向の一方側に有している。
即ち、
図2に示すように、外側陸部13dの共鳴器16aにおける、隠れ溝部G及び顕れ溝部Hからなる副溝14aは、溝底の溝幅である溝底幅bが、タイヤ周方向の一方側(図面上側)に配置されている顕れ溝部Hから、タイヤ周方向の他方側(図面下側)に配置されている隠れ溝部Gへ向かって、徐々に縮小するように漸減している。これにより、副溝14aは、隠れ溝部Gが、枝溝15aを介して周方向主溝12dに連通し、溝底幅bが隠れ溝部Gより広い顕れ溝部Hが、枝溝15aを介して周方向主溝12bに連通している。
【0033】
より具体的には、本実施形態において、共鳴器16aにおける副溝14aは、トレッド踏面11の平面視で、タイヤ周方向の一方側(図面上側)、即ち、顕れ溝部Hが、他方側(図面下側)、即ち、隠れ溝部Gより溝底幅bが広く形成されている。
同様に、
図3に示すように、中間陸部13bに位置する、共鳴器16bの副溝14b、即ち、顕れ溝部Hの、溝底の溝幅である溝底幅bは、枝溝15bを介して周方向主溝12aに連通するタイヤ周方向の一方側(図面上側)から、枝溝15bを介して周方向主溝12cに連通するタイヤ周方向の他方側(図面下側)へ向かって、徐々に縮小するように漸減している。
【0034】
本実施形態の、外側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14aは、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に対し傾斜して延在しており、一部が隠れ溝部Gからなるとともに、他部が顕れ溝部Hからなっており、隠れ溝部Gは、顕れ溝部Hに対し、車両装着外側に配置されている。
図2に示ように、本実施形態において、隠れ溝部Gは、トレッド踏面11の平面視で、全体形状が弓なりに曲がった弧状に形成され、タイヤ周方向の一方側(図面上側)が、タイヤ車両装着時のタイヤ幅方向内側に位置し、他方側(図面下側)が、タイヤ車両装着時のタイヤ幅方向外側に位置するように、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に対し傾斜して延在している。
タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に対し傾斜して延在していることで、本実施形態の副溝14aは、隠れ溝部Gからなる副溝14aの一部(図面下側)が、顕れ溝部Hからなる副溝14aの他部(図面上側)に対し、タイヤ車両装着時のタイヤ幅方向外側である車両装着外側に配置されている。
【0035】
本実施形態において、隠れ溝部Gの傾斜角度は、タイヤ周方向に対して10〜60°が好ましく、35〜45°がより好ましい。これにより、ポンプ効果による排水性能をより向上させることができる。
ここで、隠れ溝部Gのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、トレッド踏面11の平面視における、隠れ溝部Gの開口部Oの、タイヤ周方向の一方側(図面上側)端部と他方側(図面下側)端部を結ぶ直線が、タイヤ周方向線(タイヤ赤道面CL)となす角度であり、隠れ溝部Gのタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、トレッド踏面11の平面視における、隠れ溝部Gの開口部Oの、タイヤ幅方向の一方側(図面左側)端部と他方側(図面右側)端部を結ぶ直線が、タイヤ幅方向線となす角度である。
【0036】
本実施形態の、タイヤ赤道面CLに対して車両装着内側の半部に位置する中間陸部13の共鳴器16における副溝14は、タイヤ周方向に対し10〜60度の角度で傾斜して延在している。
本実施形態において、タイヤ赤道面CLに対して車両装着内側の半部(タイヤ半部HA、
図1では、図面左側)に位置する中間陸部13bの、共鳴器16bにおける副溝14b、即ち、顕れ溝部Hの傾斜角度は、タイヤ周方向に対して10〜60°が好ましく、35〜45°がより好ましい。これにより、ポンプ効果による排水性能をより向上させることができる。
ここで、顕れ溝部Hの傾斜角度は、トレッド踏面11の平面視における、顕れ溝部Hの開口部の、タイヤ周方向の一方側(図面上側)端部と他方側(図面下側)端部を結ぶ直線が、タイヤ周方向線(タイヤ赤道面CL)となす角度である。
【0037】
本実施形態において、タイヤ赤道面CLに対して車両装着外側の半部(タイヤ半部HB、
図1では、図面右側)に位置する共鳴器16における副溝14の、タイヤ周方向に対する傾斜角度は、タイヤ赤道面CLに対して車両装着内側の半部(タイヤ半部HA、
図1では、図面左側)に位置する共鳴器16における副溝14の、タイヤ周方向に対する傾斜角度よりも大きい。
図1に示す例では、タイヤ半部HBに位置する共鳴器16aにおける副溝14aの、タイヤ周方向に対する傾斜角度は、タイヤ半部HAに位置する共鳴器16bにおける副溝14bの、タイヤ周方向に対する傾斜角度よりも大きい。
【0038】
本実施形態において、共鳴器16aの副溝14a、即ち、隠れ溝部Gは、溝長手方向略全域が、隠れ溝部Gの溝幅b方向略中心を通る開口部Oにより、トレッド踏面11に開口している。
この隠れ溝部Gの開口部Oの開口幅aは、0.2〜0.7mmであることが好ましく、0.3〜0.5mmであることがより好ましい。開口幅aが、0.2mm以上であれば、タイヤの製造時において、隠れ溝部Gを成形する金型の引き抜きが容易になり、0.7mm以下であれば、タイヤの接地時に、隠れ溝部Gの開口部Oが閉塞し易く、該隠れ溝部Gを区画する溝壁が相互に支え合うため、共鳴器16が形成された中間陸部13の剛性(特に、せん断剛性)をより好適に維持することができるからである。なお、開口部Oは、必ずしも開口している必要は無く、状況によっては、完全に閉じることがあってもよい。
【0039】
本実施形態の、タイヤ赤道面CLに対して車両装着内側の半部に位置する中間陸部13の共鳴器16における副溝14と、タイヤ赤道面CLに対して車両装着外側の半部に位置する中間陸部13の共鳴器16における副溝14とは、一方の隠れ溝部Gと他方の顕れ溝部Gとが、タイヤ幅方向で重なる位置に配置されている。
本実施形態において、
図1に示すように、タイヤ10のタイヤ半部HBに位置する内側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14a、即ち、隠れ溝部Gと、タイヤ半部HAに位置する内側陸部13bの共鳴器16bにおける副溝14b、即ち、顕れ溝部Hとは、タイヤ幅方向で重なる位置に配置されている。
これにより、内側陸部13dと内側陸部13bの相互間で、タイヤ幅方向における隠れ溝部Gと顕れ溝部Hとが重なることになる。これは、
図4に示すタイヤ10においても同様である。
【0040】
また、本実施形態の、内側陸部13の共鳴器16における副溝14は、トレッド踏面11における開口幅aが、タイヤ周方向の一方側で他方側より広くされており、タイヤ周方向の他方側の端が、外側陸部13の共鳴器16における副溝14の顕れ溝部Hと、タイヤ幅方向で重なる位置に配置されている。
本実施形態において、
図1に示すように、内側陸部13bの共鳴器16bにおける副溝14b、即ち、顕れ溝部Hは、トレッド踏面11における開口幅aが、タイヤ周方向の一方側(図面上側)で他方側(図面下側)より広くされており、タイヤ周方向の他方側(図面下側)の端が、外側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14aの、タイヤ周方向の一方側(図面上側)に位置する顕れ溝部Hと、タイヤ幅方向で重なる位置に配置されている。
これにより、タイヤ幅方向において、外側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14aの隠れ溝部Gは、内側陸部13bの共鳴器16bにおける副溝14b、即ち、顕れ溝部Hと重なる位置になり、内側陸部13dと内側陸部13bの相互間で、タイヤ幅方向における隠れ溝部Gと顕れ溝部Hの位置が重なることになる。
内側陸部13dと内側陸部13bの相互間で、タイヤ幅方向における隠れ溝部Gと顕れ溝部Hの位置が重なることは、
図4に示すタイヤ10においても同様であり、
図4に示すタイヤ10の場合、タイヤ幅方向において、外側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14aの隠れ溝部Gは、内側陸部13bの共鳴器16aにおける副溝14aの顕れ溝部Hと重なる位置になる。
【0041】
図5は、共鳴器16aの副溝14aにおける隠れ溝部Gの断面を示す、副溝14の延在方向に直交する面の断面図である。
図5に示すように、本実施形態において、隠れ溝部Gからなる副溝14aの断面形状は、トレッド踏面11における開口部Oの開口幅aが、隠れ溝部Gの溝深さdよりも狭く(小さく)、溝底の溝幅である溝底幅bよりも狭い(小さい)、略フラスコ形状を有している。
この共鳴器16aにおける隠れ溝部Gは、副溝14aの延在方向に直交する面の断面視で、トレッド踏面11側から順に、トレッド踏面11における開口幅aと同様の溝幅の開口部側部分eと、開口幅aよりも広幅の溝幅の溝底側部分fと、から構成されている(
図5参照)。
この共鳴器16aでは、隠れ溝部Gの、開口部側部分eの溝幅は一定である一方で、溝底側部分fの溝幅は、トレッド踏面11側から溝底b側に向かって溝底側部分fの中間付近までの間で漸増した後、溝底まで一定に維持されている。
【0042】
また、隠れ溝部G及び顕れ溝部Hの溝深さ(トレッド踏面11の法線方向に沿う長さ)dは、6.0〜9.0mmであることが好ましく、7.0〜8.0mmであることがより好ましい。溝深さdが6mm以上であれば、溝底側部分fの溝深さが十分な深さになって、副溝14の溝容積の確保が容易になり、9mm以下であれば、開口部側部分eにおける剛性をより好適に確保することができる。
なお、溝深さdは、隠れ溝部G及び顕れ溝部Hの全域で一定に形成されている。
【0043】
本実施形態の隠れ溝部Gにおいて、開口部Oの溝底幅bは、1.0〜4.0mmであることが好ましく、1.5〜2.5mmであることがより好ましく、開口部側部分eは1.0〜4.0mmであることが好ましく、2.0〜3.0mmであることがより好ましく、溝底側部分fは4〜7mmであることが好ましく、5〜6mmであることがより好ましい。
溝底幅bが1.5mm以上であれば、タイヤ接地時にも共鳴器16の気室が潰れず、気室容積を確保することができるので、所期の吸音性能を発揮させることができ、2.5mm以下であれば、陸部剛性が下がって、操縦安定性が低下するのを抑制することができる。開口部側部分eが1.0mm以上であれば、陸部の開口端近傍におけるめくれ摩耗を抑制することができ、4.0mm以下であれば、走行による摩耗中期でのウエット(WET)性能の低下を抑制することができる。
但し、本発明の共鳴器において、隠れ溝部Gの溝底側部分fは、当該断面視で、トレッド踏面11の開口部O側から溝底側に向かって、溝幅が漸増及び漸減する形状(例えば、円形、楕円形または菱形)、又は、トレッド踏面11から溝底側に向かって、溝幅が常に漸増する形状(例えば、三角形状または半円状)等とすることもできる。
【0044】
また、本発明の共鳴器において、隠れ溝部Gは、溝幅がトレッド踏面11の開口部O側から溝底側に向かって漸増することにより、トレッド踏面11の開口部Oにおける開口幅aが、溝底側の溝幅よりも小さくなる構成であってもよい。
【0045】
続いて、本実施形態に係るタイヤ10による作用・効果を説明する。
このタイヤ10では、上述のように、複数の陸部13のうち、少なくとも、タイヤ幅方向最外側の周方向主溝12(12c,12d)のタイヤ幅方向内側に隣接している中間陸部13(13b,13d)に、中間陸部13内で終端する副溝14と、副溝14と周方向主溝12とを連通する少なくとも1本の枝溝15と、を含む共鳴器(本実施形態においては、ヘルムホルツ型の共鳴器)16(16a,16b)を備え、共鳴器16における副溝14は、一部が、トレッド踏面11における開口幅aが溝底の溝幅(溝底幅b)よりも狭い隠れ溝部Gからなり、他部が、トレッド踏面11における開口幅aが溝底の溝幅(溝底幅b)よりも狭くされていない顕れ溝部Hからなっている。
このため、タイヤ10に備えられた共鳴器16は、隠れ溝部Gからなる部分において、確実に機能し、車両走行時に、走行路面と周方向主溝12(12a,12b,12c,12d)との間で生じる気柱共鳴音を、確実に低減することができる。
【0046】
そして、このタイヤ10では、共鳴器16の副溝14は、トレッド踏面11における開口部Oの開口幅aが、溝底の溝幅である溝底幅bよりも狭い隠れ溝部Gである。隠れ溝部Gでは、トレッド踏面11に開口する開口部Oの開口幅aが、溝底幅bよりも狭いため、トレッド踏面11に共鳴器16を設けたことによる陸部剛性の過剰な低下を抑制し、もってトレッドにおける偏摩耗を抑制することができる。
この構成を有する共鳴器16では、隠れ溝部Gの溝底側で気室容積を十分に確保できるため、共鳴器16の周波数帯域を気柱共鳴音の低減に有効な範囲内に維持しつつ、トレッドにおける偏摩耗を抑制することができる。更に、この共鳴器16を備えるタイヤ10では、共鳴器16が形成された陸部13の剛性が低減し難いため、車両旋回時の操縦安定性を向上させることができる。
【0047】
特に、外側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14aは、少なくとも一部が、トレッド踏面11における開口幅aが溝底幅bよりも狭い隠れ溝部Gからなり、内側陸部13bの共鳴器16bにおける副溝14bは、トレッド踏面11における開口幅aが溝底幅bよりも狭くされていない顕れ溝部Hのみからなっている(
図1参照)場合、走行路面との接地面内の排水能力を確保するウエット(WET)性能と、操縦安定性能に繋がるブロック剛性を確保するドライ(DRY)性能と、静粛性のバランスが良くなる。
一般に、トレッド踏面11のイン(IN)側は、接地性がよいのに加え、ウエット性能への影響が大きいので、顕れ溝部Hのみとし、アウト(OUT)側は、イン側に比べれば接地し難い傾向にあるので、粗い路面を走行する場合でも、即ち、路面の状況にかかわらず、副溝14aを確実に閉じることができる隠れ溝部Gとしている。加えて、アウト側は、大きな横力に対抗する必要があるため、隠れ溝部Gとすることが望ましい。
【0048】
また、タイヤ半部HBに位置する外側陸部13dとタイヤ半部HAに位置する内側陸部13bの両方に、少なくとも一部が、トレッド踏面11における開口幅aが溝底の溝幅(溝底幅b)よりも狭い隠れ溝部Gからなる、副溝14aを含む、共鳴器16aを備えた(
図4参照)場合、走行路面との接地面内の排水能力を確保するウエット性能と、静粛性を両立させることができる。
【0049】
このタイヤ10では、外側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14aは、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に対し傾斜して延在しており、一部が隠れ溝部Gからなるとともに、他部が顕れ溝部Hからなっており、隠れ溝部Gは、顕れ溝部Hに対し、車両装着外側に配置されている。このため、車両装着外側において、隠れ溝部Gによりブロック剛性を確保することができるので、車両走行時に、横力に対抗して旋回性能を高めることができる。
【0050】
このタイヤ10では、共鳴器16における副溝14の、溝底幅bは、タイヤ周方向の一方側から他方側へ向かって漸減している。このため、副溝14内の水等を、溝底幅bが広い方へと、即ち、他方側(図面下側)から一方側(図面上側)へと、滑らかに送り込むことができるので、ポンプ効果による排出効率を向上させることができる。更に、一方側が顕れ溝部Hである場合、一方側は走行路面に対し開口しているので、ポンプ効果による排出効率をより高めることができる。
【0051】
このタイヤ10では、タイヤ赤道面CLに対して車両装着内側の半部(タイヤ半部HA、
図1では、図面左側)に位置する中間陸部13の共鳴器16における副溝14は、タイヤ周方向に対し10〜60度の角度で傾斜して延在している。このため、副溝14内の水等は、トレッド踏面11の接地ラインに対して垂線方向に、水流となって排出されるので、ポンプ効果を確実に発揮させることができる。
【0052】
このタイヤ10では、内側陸部13bの共鳴器16bにおける副溝14b、即ち、顕れ溝部Hは、トレッド踏面11における開口幅aが、タイヤ周方向の一方側(図面上側)で他方側(図面下側)より広くされており、タイヤ周方向の他方側(図面下側)の端が、外側陸部13dの共鳴器16aにおける副溝14aの、タイヤ周方向の一方側(図面上側)に位置する顕れ溝部Hと、タイヤ幅方向で重なる位置に配置されている。このため、トレッド踏面11における剛性分布が均一化されることになるので、耐偏磨耗性を向上させることができ、また、パターンノイズが抑制されて静粛性を高めることができる。
【0053】
また、このタイヤ10では、隠れ溝部Gに、トレッド踏面11における開口部Oの開口幅aと同様の溝幅が、タイヤ径方向内側方向(溝深さd方向)に維持された、開口部側部分eが設けられているため、共鳴器16周辺のトレッドにおける偏摩耗をより確実に抑制することができる。
【0054】
また、このタイヤ10では、隠れ溝部G(即ち、副溝14)が、副溝14に連通する枝溝15を介して周方向主溝12に連通しているので、タイヤ10の負荷転動時に、隠れ溝部Gがポンプとして作用し、隠れ溝部G内に入り込んだ水等を、周方向主溝12に効率的に排出することができる。即ち、タイヤ10の負荷転動時に、隠れ溝部Gの溝壁が倒れ込み、隠れ溝部G内の水を押し出す。このため、タイヤ10の排水性等を向上させることができる。
【0055】
また、このタイヤ10では、共鳴器16の複数個が、中間陸部13b,13dに、タイヤ周方向に亘って略等間隔に配置されている。そのため、タイヤ周方向に亘って、気柱共鳴音を低減すると共に、トレッドにおける偏摩耗を極力抑制することができる。
また、複数個の陸部13に共鳴器16を設けた場合、設けられた共鳴器16が連通する他の周方向主溝12における気柱共鳴音もまた低減されるため、タイヤ10に生じる気柱共鳴音の総和を低減することができる。