【文献】
JIN, P. et al.,"Molecular signatures of maturing dendritic cells: implications for testing the quality of dendritic cell therapies",J. Transl. Med.,2010年,Vol. 8: 4,pp. 1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
部分的に成熟した活性化されたDC集団の免疫療法有効性を増大させるためのインビトロの方法であって、該方法は、請求項1に記載の工程(i)から(iii)を含み、さらに、
iv)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を下回るか否かを決定する工程;ならびに
v)該部分的に成熟した活性化されたDCによる該IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全ての生成を誘導して、増大した免疫療法有効性を有する部分的に成熟した活性化されたDC集団を形成するように、IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全ての量を、該閾値量を上回るようにし得る薬剤の十分な量を添加する工程、
を包含する方法。
患者に由来する部分的に成熟した活性化された樹状細胞組成物の免疫療法有効性を決定する、IL−6、IL−8、IL−12およびTNFαの相対量を、部分的に成熟した活性化された樹状細胞の投与に応答する患者を選択するための指標とするインビトロの方法であって、該方法は、請求項1に記載の工程(i)から(iii)を含み、さらに、
iv)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を下回る場合には、該部分的に成熟した活性化された樹状細胞組成物が低い免疫療法有効性の組成物であること、あるいはIL−6、IL−8、IL−12およびTNFαの全てが閾値を上回る場合には、該部分的に成熟した活性化された樹状細胞組成物が高い免疫療法有効性の組成物であることを決定する工程
を包含し、該閾値を上回るそれら患者が、応答する患者として選択される、方法。
患者に由来する部分的に成熟した活性化された樹状細胞組成物の免疫療法有効性を決定する、IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの相対量を、活性化された樹状細胞の投与に応答しない患者を選択するための指標とするインビトロの方法であって、免疫療法有効性は、該部分的に成熟した活性化された樹状細胞の、安定な疾患を誘導するか、または、固形腫瘍を有する個体の生存を延長する能力の指標となり、該方法は、請求項1に記載の工程(i)から(iii)を含み、さらに、
iv)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を下回る場合には、該部分的に成熟した活性化された樹状細胞組成物が低い免疫療法有効性の組成物であること、あるいはIL−6、IL−8、IL−12およびTNFαの全てが閾値を上回る場合には、該部分的に成熟した活性化された樹状細胞組成物が高い免疫療法有効性の組成物であることを決定する工程
を包含し、該閾値を下回るそれら患者が、応答しない患者として選択される、方法。
前記部分的に成熟した活性化された樹状細胞は、50〜200ng/100万個細胞/24時間のIL−6;500〜2000ng/100万個細胞/24時間のIL−8;少なくとも30〜70ng/100万個細胞/24時間のTNFα;少なくとも75〜100ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p40サブユニット;および1〜3ng/100万個細胞/24時間の生物学的に活性なIL−12 p70を生成する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインビトロの方法。
前記部分的に成熟した活性化された樹状細胞は、75〜150ng/100万個細胞/24時間のIL−6;750〜1500ng/100万個細胞/24時間のIL−8;少なくとも100ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p40;少なくとも1〜3ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p70;および少なくとも30〜70ng/100万個細胞/24時間のTNFαを生成する、請求項6に記載のインビトロの方法。
前記部分的に成熟した活性化された樹状細胞は、100ng/100万個細胞/24時間のIL−6、および1000ng/100万個細胞/24時間のIL−8、少なくとも100ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p40;少なくとも2ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p70;ならびに少なくとも30ngのTNFαを生成する、請求項7に記載のインビトロの方法。
前記樹状細胞分化薬剤は、いかなる他のサイトカインもなしのGM−CSF、またはIL−4、IL−7、IL−13もしくはIL−15との組み合わせでのGM−CSFである、請求項9および10のいずれか1項に記載のインビトロの方法。
前記樹状細胞成熟化薬剤は、不活性化カルメットゲラン桿菌(BCG)、インターフェロンγ(IFNγ)、リポポリサッカリド(LPS)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、イミダゾキノリン化合物、合成2本鎖ポリリボヌクレオチド、Toll様レセプター(TLR)のアゴニスト、樹状細胞の成熟化を誘導することが公知の非メチル化CpGモチーフを含む核酸の配列、またはこれらの任意の組み合わせである、請求項9および10のいずれか1項に記載のインビトロの方法。
前記イミダゾキノリン−4−アミン化合物は、4−アミノ−2−エトキシメチル−α,α−ジメチル−1H−イミダゾール[4,5−c]キノリン−l−5 エタノールまたは1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、またはこれらの誘導体である、請求項20に記載のインビトロの方法。
【背景技術】
【0002】
背景
切除不能の局所的に進行した、または転移性の固形腫瘍を有する患者は予後不良であり、治療選択肢は、特に、標準治療に失敗した後には、ほとんどない。Amato, Semin. Oncol. 27:177−186, 2000; Bramwellら, Cochrane Database Syst. Rev. 3:Cd003293, 2003; Klelgerら, Ann. Oncol. 25:1260−1270, 2014)。近年、がん免疫療法(immune cancer therapies)におけるいくつかの有望な進歩があった(Itoら, Biomed. Res. Int. 2015:605478, 2015; West, JAMA Oncol. 1:115, 2015);しかし、がんに対する有効な免疫応答を高めるために、免疫系は、がん細胞を攻撃するためにまず感作されなければならない(Meleroら, Nat. Rev. Cancer 15:457−472, 2015)。具体的には、腫瘍特異的抗原が、抗原提示細胞によってナイーブT細胞に提示されなければならない。このことは、翻って、活性化された細胞傷害性T細胞(CTL)へのT細胞分化を誘導する(Itoら, Biomed. Res. Int. 2015:605478, 2015; MacKeonら, Front. Immunol. 6:243, 2015)。
【0003】
樹状細胞(DC)は、抗原性化合物の取り込みおよびその後の免疫系への提示を通じて、適応免疫応答を開始することに熟達している。DCは、B細胞およびT細胞の両方を刺激し、共刺激分子(例えば、サイトカイン)を生成して、CTL拡大を駆動する(Banchereauら, Nature 392:245−252, 1998)。DCが広い免疫応答を誘導する能力を考慮して、DCベースの免疫療法研究は近年急激に増大した。DCベースのがんワクチンの臨床試験が、種々の程度の有望さを示し、いくつかの製品は、現在、後期臨床試験の段階にある(Anguilleら, Pharmacol. Rev. 67:731−753, 2015)。血液中で見出される種々のDCが、それらの効率的な抗原クロスプレゼンテーションおよび排出リンパ節へと効果的に移動するそれらの能力に関して公知である。しかし、DCは、末梢血単核細胞のうちの1%未満を構成する。このことは、腫瘍特異的免疫を開始および維持するための組成物を生成するには、細胞材料が不十分であることを意味する(MacKeon, Front. Immunol. 6:243, 2015; Anguilleら, Pharmacol. Rev. 67:731−753, 2015)。結果として、例えば、白血球アフェレーシス(leukapheresis)によって処置されるべき被験体のために集められた単球に由来するDCがエキソビボで生成された;しかし、他のDCタイプを使用するストラテジーが、現在研究されつつある。DCを生成した後、その細胞は一般に、抗原でパルスされ、その患者へと感染し戻される。抗原の選択および供給源(例えば、精製腫瘍特異的または腫瘍関連抗原)。
【0004】
前臨床研究において、活性化されたDC(aDC;DCVax(登録商標)−Direct)は、腫瘍内注射の際に、マウスから腫瘍を除去するにあたって、未成熟DCよりすぐれていることが示された。
【0005】
樹状細胞(DC)は、ナイーブT細胞および記憶T細胞の両方を活性化し得ると考えられる、免疫系の専門抗原提示細胞である。樹状細胞は、免疫療法、特に、がんの免疫療法において使用するために、ますますエキソビボで調製されている。最適な免疫刺激特性を有する樹状細胞の調製は、これら細胞のエキソビボ培養に関する生物学の理解および活用を必要とする。これら細胞を培養するための種々のプロトコルは、各プロトコルに帰する種々の利点とともに、記載されてきた。
【0006】
樹状細胞の活性化は、未成熟DC(これは、皮膚ランゲルハンス細胞に表現型が類似している)を、リンパ節へと移動し得る成熟した抗原提示細胞へと転換するプロセスを開始する。このプロセスは、未成熟樹状細胞を特徴付ける強力な抗原取り込み能の漸進的かつ連続的な喪失を、ならびに共刺激細胞表面分子および種々のサイトカインの発現のアップレギュレーションを生じる。種々の刺激が、DCの成熟化を開始し得る。このプロセスは複雑であり、少なくとも、樹状細胞、特に、単球性樹状細胞のインビトロでの完全成熟化は、使用される樹状細胞成熟化薬剤に依存して、完了するまでに48時間までかかり得る。成熟化の1つの他の転帰は、細胞のインビボ移動特性の変化である。例えば、未成熟樹状細胞成熟化の誘導は、いくつかのケモカインレセプター(CCR7が挙げられ、これは、成熟DCがクラスIおよびクラスIIのMHC分子の状況において、DC表面に提示された抗原に対してT細胞を活性化する場所である排出リンパ節のT細胞領域へと細胞を指向する)を誘導する。用語「活性化」および「成熟化」および「活性化された」および「成熟(した)」とは、未成熟DC(抗原を取り込む能力によって部分的に特徴付けられる)から成熟DC(新規に(de novo)T細胞応答を有効に刺激し得る能力によって部分的に特徴付けられる)への移行を誘導しかつ完了させるプロセスを説明する。この用語は、代表的には、当該分野で交換可能に使用される。
【0007】
公知の成熟化プロトコルは、抗原への曝露の間または後にDCが遭遇すると考えられるインビボ環境に基づく。このアプローチの初期の例は、細胞培養培地としての単球馴化培地(MCM)の使用である。MCMは、単球を培養することによってインビトロで生成され、成熟化因子の供給源として使用される(例えば、US 2002/0160430(本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。成熟化を担うMCM中の主要成分は、炎症(促進)性サイトカインであるインターロイキン1β(IL−lβ)、インターロイキン6(IL−6)および腫瘍壊死因子α(TNFα)であると報告されている。他の樹状細胞成熟化薬剤としては、サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン(IL)−1β、IL−6およびプロスタグランジンE2(PGE
2))の混合物中の例えば、Toll様レセプターアゴニストが挙げられる。
【0008】
DCの成熟化は、従って、多くのシグナル伝達経路を介して作用する多数の異なる因子によって引き金を引かれ得るかまたは開始され得る。結果として、単一の成熟化経路または転帰というものは存在しないが、成熟DCステージの領域(universe)というものは実際に存在し、各々、それら自体の別個の機能的特徴がある。概念として、これは意味のあることである。なぜなら免疫系が応答しなければならない身体への種々の脅威は、異なる攻撃ストラテジーを要求して、多種多様であるからである。例として、細菌感染は、特定の抗体が補充された活性化マクロファージによって最もよく一掃される一方で、ウイルス感染は、ウイルス感染細胞を有効に死滅させる細胞傷害性T細胞を介して最もよく攻撃される。がん細胞の死滅は、代表的には、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞および抗体の組み合わせを要する。
【0009】
DCのインビトロ成熟化は、従って、免疫応答の1タイプを別のタイプより好都合である免疫系を誘導するように、すなわち、免疫応答を極性化するように設計され得る。DCの指向的成熟化(directional maturation)は、成熟化プロセスの転帰が、成熟したDCでの処置から生じる結果として起こる免疫応答を確実にするタイプを必然的に決定するという概念を説明する。その最も単純な形態では、指向的成熟化は、Th1タイプまたはTh2タイプの免疫応答のいずれかに極性化されたT細胞応答を指向するサイトカインを生成するDC集団を生じる。インターフェロンγ、インターフェロンα、およびポリイノシン:ポリシチジン酸を使用して、IL−12を分泌する成熟タイプ1極性化DCを生成するために、樹状細胞成熟化薬剤を補充した。成熟DCは、ナチュラルキラー細胞を誘起するT−ヘルパー細胞1(T
H1)タイププロフィールおよびCTL活性化を増大させる(crease)(Maillardら, Cancer Res. 64:5934−5937, 2004; Trinchieri, Blood 84:4008−4027, 1994)。CTL活性化は、炎症促進状態の引き金を引き、これらの細胞が腫瘍細胞を直接的に死滅させるように刺激する(Coulieら, Nat. Rev. Cancer 14:135−146, 2014)。
【0010】
DCは、9種までの異なるToll様レセプター(TLR1〜TLR9)を発現し、それらの各々は、成熟化の引き金を引くために使用され得る。驚くべきことではないものの、細菌生成物とTLR2およびTLR4との相互作用は、DCの指向的成熟化を生じ、細菌感染を扱うのに最も適した極性化した応答を生じる。結論として、TLR7またはTLR9を介して引き金を引かれた成熟化は、抗ウイルスタイプ応答をより生じるようである。さらなる例として、インターフェロンγ(IFN−γ)を大部分の成熟化プロトコルに付加すると、成熟DCによるインターロイキン12の生成が生じ、これは、Th1タイプ免疫応答を必然的に決定する。逆に、プロスタグランジンE
2を含めると、反対の効果がある。
【0011】
完全に成熟した樹状細胞は、未成熟DCとは定性的にかつ定量的に異なる。一旦完全に成熟した後は、DCは、より高レベルのMHCクラスIおよびクラスII抗原、ならびにより高レベルのT細胞共刺激分子(例えば、CD80およびCD86)を発現する。これらの変化は、樹状細胞がT細胞を活性化する能力を増大させる。なぜならそれら樹状細胞は、細胞表面上の抗原密度を、ならびにT細胞上の共刺激分子(例えば、CD28など)の対応物を介して、T細胞活性化シグナルの大きさを増大させるからである。さらに、成熟DCは、多量のサイトカインを生成し、これは、T細胞応答を刺激しかつ極性化する。これらサイトカインとしては、Th1タイプ免疫応答と関連するインターロイキン12、ならびにTh2タイプ免疫応答と関連するインターロイキン−10およびインターロイキン−4が挙げられる。
【0012】
一般に、エキソビボでDCを生成するための方法は、被験体に由来するDC前駆体細胞に関して富化された細胞集団を得る工程、およびその後、そのDC前駆体細胞を、その被験体に導入して戻す前に、インビトロで完全に成熟したDCへと分化させる工程を包含する。代表的には、このプロセスの間に、成熟しつつあるDCは、DCが成熟していくときに、取り込みおよびプロセシングのために抗原と接触する。DCは、最終的に分化されなければならないか、またはそれらが脱分化して単球/マクロファージへと戻り、それらの免疫強化能力のうちの大部分を失うと考える者もいる。単球から生成されるDCのエキソビボでの成熟化は、当該分野で周知の方法および薬剤で成功裡に達成されてきた。
【0013】
樹状細胞(DC)は、がんの積極的な免疫療法に関する選りすぐりのビヒクルとして認識されている。動物実験によって、マウスを腫瘍形成から防御することおよび確立された腫瘍を排除することの両方においてDCベースの免疫療法の潜在的可能性が示された。これらの成功は、小規模臨床試験においてヒトで少なくとも部分的に再現された。小規模な安全性または概念実証治験から、活性または効力が示され得るより大規模な治験への移行は、上記に記載されるとおりのDC調製の骨の折れるかつ扱いにくい性質によって妨げられてきた。結論として、このような製品の大きな潜在的治療価値にも拘わらず、僅かな会社しか、DCベースのがんワクチンの開発に興味を示してこなかった。
【0014】
成熟化に加えて、その投与法は、転帰に顕著な影響を有する。投与経路は、DCがT細胞分化を誘導し得るように、リンパ節に到達することを可能にしなければならない。いくつかの方法(静脈内注射、皮内注射、およびリンパ節内注射(intranodal injection)を含む)は、以前から研究されてきた(Anguilleら, Pharmacol. Rev. 67:731−753, 2015)。DCの腫瘍内(IT)注射は、DCベースの免疫療法の特別な形態である。注射の際に、ナイーブDCは、例えば、アポトーシス細胞もしくは死滅しつつある(壊死)腫瘍細胞および腫瘍環境からインビボで抗原を取り込み、プロセシングし、そしてリンパ節への移動後にその抗原をT細胞に提示する。実際に、動物モデルにおけるこのような処置の効力は、腫瘍におけるアポトーシスの程度と相関することが見出された(Candidoら, Cancer Res. 61:228−236, 2001)。これは、このアプローチが、DCの注射の前に化学療法剤または放射線での腫瘍の処置と完全に適合性であることを示唆する。さらに、いくつかのグループが、このような併用療法が確立された腫瘍に対して特に有効であることを示した(Nikitinaら, Int. J. Cancer 94:825−833, 2001; Tanakaら, Int. J. Cancer 101:265−269, 2002; Tongら, Cancer Res. 61:7530−7535, 2001)。
【0015】
インビボでの腫瘍細胞は、抗原の供給源であるので、腫瘍内注射は、腫瘍抗原の選択および製造の両方の必要性なしで済ませられる。なぜならIT注射は、大部分のインビトロでのDCベースの治療アプローチにおいて現在使用されているからである。腫瘍抗原の選択は、しばしば、会社が独占的な位置をもつ必要性によって活発になり、今日までに同定された数個の腫瘍抗原がなお、顕著な臨床上の利益を提供することを立証されなければならない。さらに、このような腫瘍抗原の使用はしばしば、一価の免疫原性組成物またはワクチンを生じ、これは、腫瘍細胞が免疫において使用される抗原の発現をダウンレギュレートする場合にその有効性を失い得る。さらに、医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の基準(Good Manufacturing Practices)(GMP)の下で必要とされる条件下で腫瘍抗原を製造する必要性が、古典的なDCベースの免疫法にさらなるコストを加算する。
【0016】
DCのIT注射は、樹状細胞を免疫抑制性の腫瘍環境に置き得る。腫瘍は、DCを不活性化するかまたはT細胞応答をあまり有効でないTh2タイプ免疫応答に向かって曲げていく能力を有するサイトカインを生成することが公知である。いくつかのグループは、DCの遺伝的改変を使用して、これらの抑制効果を、特にサイトカインであるインターロイキン12の生成(IL−12; Nishiokaら, Cancer Res. 59:4035−4041, 1999; Meleroら, Gene Therapy 6: 1779−1784, 1999)またはCD40リガンドの発現(Kikuchiら, Blood 96:91−99,2000)を通じて克服しようと試みた。これらのグループによって説明された有望な結果は、治療アプローチとしてのDCのIT注射の実現性をさらに示す。
【0017】
Triozziら(Cancer 89:2647−2654, 2000)は、転移性黒色腫または乳がんを有する患者におけるDCのIT注射を記載する。彼らは、黒色腫を有する4名の患者および乳がんを有する2名の患者において腫瘍退縮を得た。退縮しつつある病変の生検は、浸潤しているT細胞を示した。これは、DCが腫瘍細胞に対する免疫応答を実際に活性化したことを示唆する。全体としてこれらのデータは、DCのIT注射がヒトにおいて実現可能であり、顕著な臨床上の利益を提供し得ることを示した。しかし、注射されるDC上のMHCクラスII抗原のおよびB7−2(CD86)共刺激分子の顕著なダウンレギュレーションが、観察された。これら重要な分子のダウンレギュレーションは、DCの免疫刺激可能性を低減すると予測される。
【0018】
このダウンレギュレーションを克服するための1つの方法は、WO2004/053072(本明細書に参考として援用される)において開示されている。そこでは、ダウンレギュレーションが、投与する前にDCの部分的成熟化を通じ介して回避され得ることが見出された。この方法では、樹状細胞前駆体(赤血球溶解後の骨髄細胞または単球性樹状細胞前駆体)を、先ずインビトロで誘導して未成熟樹状細胞へと分化させ、その後、その未成熟樹状細胞を誘導して、その細胞を、樹状細胞成熟化薬剤(例えば、BCGおよびIFNγ)、リポポリサッカリド(LPS)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、イミダゾキノリン化合物、合成2本鎖ポリリボヌクレオチド、Toll様レセプター(TLR)のアゴニスト、DCの成熟化を誘導することが公知の非メチル化CpGモチーフを含む核酸の配列、サイトカインの組み合わせ(例えば、インターロイキン1β(IL−1β)、インターロイキン6(IL−6)、およびプロスタグランジンE2(PGE
2)と組み合わせられる、腫瘍壊死因子α(TNFα))、またはこれらの任意の組み合わせとともに培養することによって、成熟化を開始した。その未成熟樹状細胞を、未成熟樹状細胞が完全に成熟することが以前に決定されたものより短い期間にわたって成熟化を継続することを可能にした。樹状細胞をインビトロで完全に成熟させた場合には、その細胞は、患者への投与後に、抗原を取り込みかつプロセシングすることは不可能であった。本明細書で開示される方法は、本明細書で示されるとおりのIL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの有意なレベルが、部分的に成熟した樹状細胞の単離および免疫刺激の必要性のある患者または個体への投与のための製剤化の前に生成されるように、樹状細胞を活性化に十分な期間にわたって成熟させることを可能にされるはずであることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1A〜1Cは、活性化DC処置後のT細胞浸潤を示す。免疫化学染色は、CD3
+活性化T細胞を含む腫瘍浸潤リンパ球を示す。免疫組織化学染色は、CD3
+活性化T細胞、CD4
+ヘルパー細胞、およびCD8
+キラー細胞を含む腫瘍浸潤リンパ球が、27名の生検実施患者のうちの15名においてベースラインから増大したことを示す。代表画像は、600万個の活性化されたDC/注射で処置した明瞭な細胞肉腫の腫瘍(a clear cell sarcoma tumor)のものである。生検時には2回の注射を投与していた。倍率は、20×であり、スケールバーは、200μmを表す。
図1Bおよび
図1Cは、活性化T細胞によるサイトカイン生成を示す。組織切片を、以下に関してプローブした:
図1B IFNγ、そして
図1Cは、RNAscopeを使用するTNFα発現(濃い点)および免疫組織化学を使用するCD3発現(より薄い点)の共染色を示す。黒矢印は、それらそれぞれのサイトカインを発現するCD3
+活性化T細胞を表す。白矢印は、CD3
−サイトカイン生成細胞(おそらくマクロファージ)を表す。代表画像は、600万個の活性化されたDC/注射で処置した明瞭な細胞肉腫の腫瘍のものである。生検時には2回の注射を投与していた。倍率は、20×であり、スケールバーは、100μmを表す。
【
図2AB】
図2A〜2Fは、活性化されたDCの特徴付けを示す。
図2Aは、IL−8生成(ng/10
6 DC/日)と全生存との間の相関を示す。IL−8生成および生存のカプラン−マイヤー曲線。破線は、<985ng/10
6 DC/日(メジアンIL−8濃度)を生成するaDCを注射した患者における生存を示す;実線は、≧985ng/10
6 DC/日を生成する細胞を注射したものを示す。
図2Bは、IL−12p40生成(ng/10
6 DC/日)と全生存との間の相関を示す。IL−12p40生成および生存のカプラン−マイヤー曲線。破線は、<330ng/10
6 DC/日(メジアンIL−12p40濃度)を生成する活性化されたDCを注射した患者における生存を示す;実線は、≧330ng/10
6 DC/日を生成する細胞を注射したものを表す。
図2Cは、8週目での安定な疾患(SD)および生存を有する患者数を示す。8週目でSDを有する患者のカプラン−マイヤー曲線を、8週目で進行性疾患(PD)を有する患者のものと比較した。破線は、8週目でPDを有する患者における生存を示す;実線は、8週目でSDを有する患者のものを表す。全生存は、2群間で有意差があった(p=0.04)。
図2Dは、活性化されたDCによるTNFα生成および8週目での疾患状態を示す。8週目でSDを有する患者数は、黒棒で示され、PDを有する患者数は、白棒で示される。TNFαレベルが>130ng/10
6 DC/日である患者の中で、8週目でPDを有する患者は存在しなかった。多変量解析において、TNFα生成は、生存と相関する(p=0.016)。
図2A〜
図2Dに関して、n=39。患者生存と細胞表面マーカーの発現レベルとの関連性。
図2Eは、MHC−IIに関する染色を測定し、
図2Fは、CD86に関する染色を示す(両方の図においてn=25)。
図2Eの実線は、MHC−IIに関して染色した場合に、>12,000平均蛍光強度(MFI)を有する細胞を伴う患者を示す;破線は、6,200〜12,000 MFIを有する細胞を伴う患者を示す;そして点線は、<6,200 MFIを有する細胞を伴う患者を表す。
図2Fの実線は、CD86に関して染色した場合に、>3,400平均蛍光強度(MFI)を有する細胞を伴う患者を示す;破線は、2,000〜3,400 MFIを有する細胞を伴う患者を示す;そして点線は、<2,000 MFIを有する細胞を伴う患者を表す。ログランク分析を、
図2A〜
図2Cおよび
図2E〜
図2Fに関して使用した。χ2乗分析を、
図2Dに関して使用した。
【
図2CD】
図2A〜2Fは、活性化されたDCの特徴付けを示す。
図2Aは、IL−8生成(ng/10
6 DC/日)と全生存との間の相関を示す。IL−8生成および生存のカプラン−マイヤー曲線。破線は、<985ng/10
6 DC/日(メジアンIL−8濃度)を生成するaDCを注射した患者における生存を示す;実線は、≧985ng/10
6 DC/日を生成する細胞を注射したものを示す。
図2Bは、IL−12p40生成(ng/10
6 DC/日)と全生存との間の相関を示す。IL−12p40生成および生存のカプラン−マイヤー曲線。破線は、<330ng/10
6 DC/日(メジアンIL−12p40濃度)を生成する活性化されたDCを注射した患者における生存を示す;実線は、≧330ng/10
6 DC/日を生成する細胞を注射したものを表す。
図2Cは、8週目での安定な疾患(SD)および生存を有する患者数を示す。8週目でSDを有する患者のカプラン−マイヤー曲線を、8週目で進行性疾患(PD)を有する患者のものと比較した。破線は、8週目でPDを有する患者における生存を示す;実線は、8週目でSDを有する患者のものを表す。全生存は、2群間で有意差があった(p=0.04)。
図2Dは、活性化されたDCによるTNFα生成および8週目での疾患状態を示す。8週目でSDを有する患者数は、黒棒で示され、PDを有する患者数は、白棒で示される。TNFαレベルが>130ng/10
6 DC/日である患者の中で、8週目でPDを有する患者は存在しなかった。多変量解析において、TNFα生成は、生存と相関する(p=0.016)。
図2A〜
図2Dに関して、n=39。患者生存と細胞表面マーカーの発現レベルとの関連性。
図2Eは、MHC−IIに関する染色を測定し、
図2Fは、CD86に関する染色を示す(両方の図においてn=25)。
図2Eの実線は、MHC−IIに関して染色した場合に、>12,000平均蛍光強度(MFI)を有する細胞を伴う患者を示す;破線は、6,200〜12,000 MFIを有する細胞を伴う患者を示す;そして点線は、<6,200 MFIを有する細胞を伴う患者を表す。
図2Fの実線は、CD86に関して染色した場合に、>3,400平均蛍光強度(MFI)を有する細胞を伴う患者を示す;破線は、2,000〜3,400 MFIを有する細胞を伴う患者を示す;そして点線は、<2,000 MFIを有する細胞を伴う患者を表す。ログランク分析を、
図2A〜
図2Cおよび
図2E〜
図2Fに関して使用した。χ2乗分析を、
図2Dに関して使用した。
【
図2EF】
図2A〜2Fは、活性化されたDCの特徴付けを示す。
図2Aは、IL−8生成(ng/10
6 DC/日)と全生存との間の相関を示す。IL−8生成および生存のカプラン−マイヤー曲線。破線は、<985ng/10
6 DC/日(メジアンIL−8濃度)を生成するaDCを注射した患者における生存を示す;実線は、≧985ng/10
6 DC/日を生成する細胞を注射したものを示す。
図2Bは、IL−12p40生成(ng/10
6 DC/日)と全生存との間の相関を示す。IL−12p40生成および生存のカプラン−マイヤー曲線。破線は、<330ng/10
6 DC/日(メジアンIL−12p40濃度)を生成する活性化されたDCを注射した患者における生存を示す;実線は、≧330ng/10
6 DC/日を生成する細胞を注射したものを表す。
図2Cは、8週目での安定な疾患(SD)および生存を有する患者数を示す。8週目でSDを有する患者のカプラン−マイヤー曲線を、8週目で進行性疾患(PD)を有する患者のものと比較した。破線は、8週目でPDを有する患者における生存を示す;実線は、8週目でSDを有する患者のものを表す。全生存は、2群間で有意差があった(p=0.04)。
図2Dは、活性化されたDCによるTNFα生成および8週目での疾患状態を示す。8週目でSDを有する患者数は、黒棒で示され、PDを有する患者数は、白棒で示される。TNFαレベルが>130ng/10
6 DC/日である患者の中で、8週目でPDを有する患者は存在しなかった。多変量解析において、TNFα生成は、生存と相関する(p=0.016)。
図2A〜
図2Dに関して、n=39。患者生存と細胞表面マーカーの発現レベルとの関連性。
図2Eは、MHC−IIに関する染色を測定し、
図2Fは、CD86に関する染色を示す(両方の図においてn=25)。
図2Eの実線は、MHC−IIに関して染色した場合に、>12,000平均蛍光強度(MFI)を有する細胞を伴う患者を示す;破線は、6,200〜12,000 MFIを有する細胞を伴う患者を示す;そして点線は、<6,200 MFIを有する細胞を伴う患者を表す。
図2Fの実線は、CD86に関して染色した場合に、>3,400平均蛍光強度(MFI)を有する細胞を伴う患者を示す;破線は、2,000〜3,400 MFIを有する細胞を伴う患者を示す;そして点線は、<2,000 MFIを有する細胞を伴う患者を表す。ログランク分析を、
図2A〜
図2Cおよび
図2E〜
図2Fに関して使用した。χ2乗分析を、
図2Dに関して使用した。
【
図3】
図3は、活性化された樹状細胞の表現型を示す。種々の樹状細胞活性化マーカーの代表的なフローサイトメトリーヒストグラムが示される。濃い灰色のヒストグラムは、白血球アフェレーシスの間に採取された単球集団のものである。薄い灰色のヒストグラムは、活性化されたDCのものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
本開示は、活性化された樹状細胞組成物の免疫療法有効性を決定するための方法を提供し、上記方法は、(i)活性化された樹状細胞を調製する工程;(ii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの相対量を決定する工程;(iii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの上記決定された量と閾値量とを比較する工程;ならびに(iv)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を下回る場合には、上記活性化された樹状細胞組成物が低い免疫療法有効性の組成物であること;あるいはIL−6、IL−8、IL−12およびTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を上回る場合には、上記活性化された樹状細胞組成物が高い免疫療法有効性の組成物であることを決定する工程を包含する。
【0026】
活性化されたDC集団の免疫療法有効性を増大するための方法もまた提供され、上記方法は、(i)活性化された樹状細胞集団を調製する工程;(ii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの相対量を決定する工程;(iii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの上記決定された量と閾値量とを比較する工程;(iv)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの任意の1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てのいずれかが閾値を下回るか否かを決定する工程;ならびに(v)上記活性化されたDCによるIL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの任意の1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全ての生成を誘導して、増大した免疫療法有効性を有する活性化されたDC集団を形成するように、IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの量を、閾値量を上回るようにし得る薬剤の十分な量を添加する工程を包含する。
【0027】
さらに、本開示は、活性化された樹状細胞の投与に応答する患者を、上記患者に由来する活性化された樹状細胞組成物の免疫療法有効性を決定することによって選択するための方法を提供し、上記方法は、(i)活性化された樹状細胞を調製する工程;(ii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの相対量を決定する工程;(iii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの上記決定された量と閾値量とを比較する工程;ならびに(iv)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を下回る場合には、上記活性化された樹状細胞組成物が低い免疫療法有効性の組成物であること、あるいはIL−6、IL−8、IL−12およびTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を上回る場合には、上記活性化された樹状細胞組成物が高い免疫療法有効性の組成物であることを決定し、そして上記閾値を上回るそれら患者を応答する患者として選択する工程を包含する。
【0028】
さらになお、本開示は、活性化された樹状細胞の投与に応答しない患者を、上記患者に由来する活性化された樹状細胞組成物の免疫療法有効性を決定することによって選択するための方法を提供し、上記方法は、(i)活性化された樹状細胞を調製する工程;(ii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの相対量を決定する工程;(iii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの上記決定された量と閾値量とを比較する工程;ならびに(iv)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を下回る場合には、上記活性化された樹状細胞組成物が低い免疫療法有効性の組成物であること、あるいはIL−6、IL−8、IL−12およびTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を上回る場合には、上記活性化された樹状細胞組成物が高い免疫療法有効性の組成物であることを決定し、そして上記閾値を下回るそれら患者を、応答しない患者として選択する工程を包含する。
【0029】
本開示は、増大した免疫療法有効性を有する活性化された樹状細胞を生成するための樹状細胞成熟化薬剤を選択するための方法をさらに提供し、上記方法は、(i)未成熟樹状細胞と試験樹状細胞成熟化薬剤とを接触させることによって、活性化された樹状細胞を調製する工程;(ii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの相対量を決定する工程;(iii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの上記決定された量と閾値量とを比較する工程;ならびに(iv)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を下回る場合には、上記活性化された樹状細胞組成物が低い免疫療法有効性の組成物であること、あるいはIL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を上回る場合には、上記活性化された樹状細胞組成物が高い免疫療法有効性の組成物であることを決定し、そして閾値を上回る活性化された樹状細胞の生成を誘導する上記樹状細胞成熟化薬剤を選択する工程を包含する。上記樹状細胞成熟化薬剤が一旦決定されると、それは、本明細書で記載されるとおりの部分的に成熟しかつ活性化された樹状細胞の生成を誘導するために使用され得る。
【0030】
上記の方法のうちのいずれか1つの代表的実施形態において、上記活性化された樹状細胞は、約50〜約200ng/100万個細胞/24時間のIL−6;約500〜約2000ng/100万個細胞/24時間のIL−8;少なくとも約30〜約70ng/100万個細胞/24時間のTNFα;少なくとも約75〜約100ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p40サブユニット;および約1〜3ng/100万個細胞/24時間の生物学的に活性なIL−12 p70の閾値量を生成する。上記活性化された樹状細胞はまた、約75〜約150ng/100万個細胞/24時間のIL−6;750〜約1500ng/100万個細胞/24時間のIL−8;少なくとも約100ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p40;少なくとも約1〜3ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p70;および少なくとも約30〜70ng/100万個細胞/24時間のTNFα、または約100ng/100万個細胞/24時間のIL−6、および1000ng/100万個細胞/24時間のIL−8、少なくとも約100ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p40;少なくとも約2ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p70;および少なくとも約30ngのTNFαを生成し得る。
【0031】
上記実施形態のうちのいずれか1つにおいて使用される活性化された樹状細胞は、以下の工程によって調製され得る:(i)末梢血からヒトPBMCを含む細胞集団を単離する工程;(ii)ヒトPBMCを含む上記細胞集団を、ヒト単球性樹状細胞前駆体に関して富化する工程;(iii)ヒト単球性樹状細胞前駆体に関して富化された上記細胞集団を、有効量の樹状細胞分化薬剤を補充した組織培養培地とともに、上記ヒト単球性樹状細胞前駆体を未成熟ヒト樹状細胞へと分化させるために十分な期間にわたって培養する工程;(iv)未成熟ヒト樹状細胞に関して富化された上記細胞集団を、有効量の樹状細胞成熟化薬剤とともに培養する工程であって、上記未成熟ヒト樹状細胞を活性化する工程;ならびに(v)上記活性化されたヒト樹状細胞を単離および洗浄する工程。
【0032】
別の実施形態において、上記活性化された樹状細胞は、以下の工程によって調製される:(i)ヒト単球性樹状細胞前駆体を含む細胞集団を単離する工程;(ii)ヒト単球性樹状細胞前駆体に関して富化された上記細胞集団を、有効量の樹状細胞分化薬剤を補充した組織培養培地とともに、上記ヒト単球性樹状細胞前駆体を未成熟ヒト樹状細胞へと分化させるために十分な期間にわたって培養する工程;(iii)未成熟ヒト樹状細胞に関して富化された上記細胞集団を、有効量の樹状細胞成熟化薬剤とともに培養する工程であって、上記未成熟ヒト樹状細胞を活性化する工程;ならびに(iv)上記活性化されたヒト樹状細胞を単離および洗浄する工程。上記樹状細胞分化薬剤は、いかなる他のサイトカインもなしのGM−CSF、またはIL−4、IL−7、IL−13もしくはIL−15との組み合わせでのGM−CSFであり得る。
【0033】
上記単球性樹状細胞前駆体は、皮膚、脾臓、骨髄、胸腺、リンパ節、臍帯血、または末梢血から得られ得る。ある特定の実施形態において、上記単球性樹状細胞前駆体細胞は、活性化されていない単球性樹状細胞前駆体である。さらに、上記単球性樹状細胞前駆体は、処置される個々の被験体から得られ得るか、またはその個体が応答性の単球性樹状細胞前駆体の十分数を有しない場合、上記単球性樹状細胞前駆体は、処置される個々の被験体にHLAマッチした健康な個々の被験体から得られ得る。
【0034】
部分的に成熟した活性化された樹状細胞を生成するための方法において有用である樹状細胞成熟化薬剤は、不活性化カルメットゲラン桿菌(BCG)、インターフェロンγ(IFNγ)、リポポリサッカリド(LPS)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、イミダゾキノリン化合物、合成2本鎖ポリリボヌクレオチド、Toll様レセプター(TLR)のアゴニスト、樹状細胞の成熟化を誘導することが公知の非メチル化CpGモチーフを含む核酸の配列、またはこれらの任意の組み合わせとの組み合わせでのBCGであり得る。上記不活性化BCGは、全BCG、BCGの細胞壁構成要素、BCG由来リポアラビノマンナン(lipoarabidomannan)、またはBCG成分を含み得、上記BCGは、熱不活性化、ホルマリン処理、またはこれらの組み合わせを使用して不活性化されたBCGであり得る。代表的には、BCGの有効量は、約10
5〜10
7cfu/ミリリットル 組織培養培地であり、IFNγの有効量は、約100〜約1,000ユニット/ミリリットル 組織培養培地である。さらに、上記イミダゾキノリン化合物は、イミダゾキノリン−4−アミン化合物であり得、代表的には、4−アミノ−2−エトキシメチル−α,α−ジメチル−1H−イミダゾール[4,5−c]キノリン−l−5 エタノールまたは1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、またはこれらの誘導体である。代表的には、上記合成2本鎖ポリリボヌクレオチドは、ポリ[I]:ポリ[C(12)U]である。
【0035】
実施形態の説明
樹状細胞は、種々のリンパ性組織および非リンパ性組織で見出される抗原提示細胞の多様な集団である(Liu, Cell 106:259−262,2001; Steinman, Ann. Rev. Immunol. 9:271−296,1991を参照のこと)。樹状細胞としては、脾臓のリンパ性樹状細胞、表皮のランゲルハンス細胞、および血液循環中のベール細胞が挙げられる。まとめると、樹状細胞は、それらの形態、高レベルの表面MHCクラスII発現、ならびにT細胞、B細胞、単球、およびナチュラルキラー細胞上で発現されるある特定の他の表面マーカーの非存在に基づく群として分類される。特に、単球由来樹状細胞(単球性樹状細胞ともいわれる)は、通常、CD11c、CD80、CD86を発現し、HLA−DR
+であるが、CD14
−である。
【0036】
対照的に、単球性樹状細胞前駆体(代表的には、単球)は、通常は、CD14
+である。単球性樹状細胞前駆体は、それらが存在する場所である任意の組織、特に、リンパ性組織(例えば、脾臓、骨髄、リンパ節および胸腺)から得られ得る。単球性樹状細胞前駆体はまた、循環系から単離され得る。
【0037】
末梢血は、単球性樹状細胞前駆体の容易にアクセス可能な供給源である。臍帯血は、単球性樹状細胞前駆体の他の供給源である。単球性樹状細胞前駆体は、免疫応答が誘起され得る種々の生物から単離され得る。このような生物としては、動物(例えば、ヒトおよび非ヒト動物(例えば、霊長類、哺乳動物(イヌ、ネコ、マウス、およびラットが挙げられる))、鳥類(ニワトリが挙げられる)、ならびにこれらのトランスジェニックの種が挙げられる)が挙げられる。
【0038】
ある特定の実施形態において、単球性樹状細胞前駆体および/または未成熟樹状細胞は、健康な被験体から、または免疫刺激の必要性のある被験体(例えば、がん患者または細胞性の免疫刺激が有益であり得るかもしくは望ましいことであり得る他の被験体(すなわち、細菌感染もしくはウイルス感染、または過形成状態を有する被験体など)のような)から単離され得る。樹状細胞前駆体および/または未成熟樹状細胞はまた、部分的活性化および免疫刺激の必要性のあるHLAマッチした被験体への投与のために、HLAマッチした健康な個体から単離され得る。被験体から単離された樹状細胞前駆体および/または未成熟樹状細胞が、適切なレベルの免疫刺激効力因子を生成する活性化された樹状細胞組成物を形成しない特定の実施形態において、HLAマッチした正常ドナーに由来する樹状細胞前駆体または未成熟樹状細胞が、使用され得る。
【0039】
樹状細胞前駆体および未成熟樹状細胞
樹状細胞前駆体(例えば、活性化されていない樹状細胞前駆体、および種々の供給源(血液および骨髄が挙げられる)に由来する未成熟樹状細胞)に関して富化された細胞集団を単離するための方法は、当該分野で公知である。例えば、樹状細胞前駆体および未成熟樹状細胞は、ヘパリン添加血液を集めることによって、アフェレーシスもしくは白血球アフェレーシス(leukapheresis)によって、バフィーコートの調製、ロゼット形成、遠心分離、密度勾配遠心分離(例えば、Ficoll
(登録商標)(例えば、FICOLL−PAQUE
(登録商標)、PERCOLL
(登録商標)(透析不能ポリビニルピロリドン(PVP)で被覆されたコロイド性シリカ粒子(15〜30nm直径))、スクロースなどを使用)、細胞の差次的溶解、濾過などによって、単離され得る。ある特定の実施形態において、白血球集団は、例えば、被験体から血液を集め、線維素除去して、血小板を除去し、赤血球を溶解することによって、調製され得る。樹状細胞前駆体および未成熟樹状細胞は、必要に応じて、例えば、PERCOLL
(登録商標)勾配を介する遠心分離、抗体パニングなどによって、単球性樹状細胞前駆体に関して富化され得る。
【0040】
樹状細胞前駆体および未成熟樹状細胞は必要に応じて、閉鎖無菌系の中で調製され得る。本明細書で使用される場合、用語「閉鎖無菌系」または「閉鎖系」とは、非滅菌の、周囲の、もしくは循環する空気または他の非滅菌条件への曝露が最小限にされるかまたは排除される系をいう。樹状細胞前駆体および未成熟樹状細胞を単離するための閉鎖系は、一般に、オープントップチューブ中での密度勾配遠心分離、細胞のオープンエアー移動、組織培養プレートもしくはシールされていないフラスコ中での細胞の培養などを排除する。代表的実施形態において、閉鎖系は、樹状細胞前駆体および未成熟樹状細胞を最初の収集容器からシール可能な組織培養容器への無菌的移動を、非滅菌空気への曝露なしに可能にする。
【0041】
樹状細胞前駆体を単離するための別の報告された方法は、商業的に処理されたプラスチック基材(例えば、ビーズもしくは磁性ビーズ)を使用して、接着性の単球および他の「非樹状細胞前駆体」を選択的に除去することである(例えば、米国特許第5,994,126号および同第5,851,756号を参照のこと)。接着性の単球および非樹状細胞前駆体は、その非接着性細胞がエキソビボ培養および成熟化のために保持される間に捨てられる。別の方法では、アフェレーシス細胞は、プラスチック培養バッグ(これに、プラスチック(すなわち、ポリスチレンもしくはスチレン)のマイクロキャリアビーズがバッグの表面積を増大させるために添加された)中で培養された。
【0042】
細胞は、ある特定の細胞がビーズに接着する十分な期間にわたって培養される。その接着していない細胞は、バッグから洗い流した(Maffei,ら, Transfusion 40:1419−1420, 2000; WO 02/44338(本明細書に参考として援用される))。ある特定の他の実施形態において、単球性樹状細胞前駆体は、WO 03/010292(その開示は、本明細書に参考として援用される)に開示されるように、単球結合基材への接着によって単離される。例えば、白血球の集団(例えば、白血球アフェレーシスによって単離される)は、単球性樹状細胞前駆体接着基材と接触させられ得る。白血球の集団がその基材と接触される場合、その白血球集団中の単球性樹状細胞前駆体は、上記基材に優先的に接着する。他の白血球(他の潜在的樹状細胞前駆体を含む)は、上記基材への低下した結合親和性を示し、それによって、上記単球性樹状細胞前駆体が上記基材の表面上で優先的に富化されることを可能にする。
【0043】
適切な基材としては、例えば、大きな表面積 対 容積比を有するものが挙げられる。その基材は、例えば、粒状または線維性の基材であり得る。適切な粒状基材としては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、ガラス被覆プラスチック粒子、ガラス被覆ポリスチレン粒子、およびタンパク質吸着に適した他のビーズが挙げられる。本発明における使用に適した線維性基材としては、マイクロキャピラリーチューブおよび微絨毛膜などが挙げられる。粒状または線維性の基材は、代表的には、その接着した単球性樹状細胞前駆体の生存性を実質的に低減することなく、その接着した細胞が溶離されることを可能にする。粒状または線維性の基材は、単球性樹状細胞前駆体または樹状細胞の基材からの溶離を促進するために実質的に非多孔性であり得る。「実質的に非多孔性」の基材は、少なくとも、その基材に存在する孔のうちの大部分が、その基材中に細胞が捕捉されるのを最小限にするために、その細胞より小さい基材である。
【0044】
基材への単球性樹状細胞前駆体の接着は、結合媒体の添加によって必要に応じて増強され得る。適切な結合媒体としては、個々にまたは任意の組み合わせで、例えば、サイトカイン(例えば、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、またはインターロイキン4(IL−4)、インターロイキン15(IL−15)、もしくはインターロイキン13(IL−13)との組み合わせでのGM−CSF)、血漿、血清(例えば、ヒト血清(例えば、自己血清もしくは同種異系血清))、精製タンパク質(例えば、血清アルブミン)、二価カチオン(例えば、カルシウムおよび/またはマグネシウムイオン)ならびに基材への単球性樹状細胞前駆体の特異的接着を補助するかもしくは基材への非単球性樹状細胞前駆体の接着を妨げる他の分子を補充した、例えば、単球性樹状細胞前駆体培養培地(例えば、AIM−V
(登録商標)、RPMI 1640、DMEM、XVIVO 15
(登録商標)など)が挙げられる。ある特定の実施形態において、血漿もしくは血清は、熱不活性化され得る。熱不活性化血漿は、その白血球に対して自己または異種であり得る。
【0045】
基材への単球性樹状細胞前駆体の接着の後に、接着していない白血球は、単球性樹状細胞前駆体/基材複合体から分離される。任意の適切な手段は、その接着していない細胞を複合体から分離するために使用され得る。例えば、接着していない白血球および複合体の混合物は、沈殿させられ得、その接着していない白血球および培地は、捨てられるかまたは排出され得る。あるいは、その混合物は遠心分離され得、その接着していない白血球を含む上清は、ペレット化した複合体から捨てられるかまたは排出され得る。
【0046】
別の方法において、活性化されていない単球性樹状細胞前駆体は、国際特許出願公開番号WO 2004/000444(2003年6月19日出願、現在は米国特許第7,695,627号(ともに本明細書に参考として援用される))に記載されるものなどの接線流濾過デバイスの使用によって調製される白血球が富化された細胞集団から単離され得る。単球性樹状細胞前駆体が富化された細胞集団の単離に有用な接線流濾過デバイスは、クロスフローチャンバ、濾液チャンバおよびその間に配置された濾材を有する除去ユニットを含み得る。その濾材は、一側の保持表面でそのクロスフローチャンバと、および他側の濾液表面でその濾液チャンバと流体連絡した状態にある。そのクロスフローチャンバは、白血球を含む血液構成要素のサンプルを、そのクロスフローチャンバへと、およびその濾材の保持表面に対して平行に導入するように適合された入り口を有する。出口は、その濾材の保持表面の反対側のチャンバの一部において中心に配置されたクロスフローチャンバの中に提供される。接線流濾過デバイスにおける使用に適した濾材は、代表的には、約1〜約10ミクロンの範囲に及ぶ平均孔サイズを有する。その濾材は、平均孔サイズ約3〜約7ミクロンを有し得る。クロスフローチャンバの入り口への所定のサンプル投入速度を提供するための手段およびその濾材を通って濾液チャンバへの濾液の濾過速度を制御するための手段がまた、含まれ得る。その濾過速度制御手段は、その濾材に関する妨害のない(unopposed)濾過速度未満へと濾過速度を制限する。血液構成要素を含むサンプルは、供給源デバイス(例えば、白血球アフェレーシスデバイスまたは白血球アフェレーシスデバイスから収集したサンプルを含む容器)によって提供され得る。
【0047】
単球性樹状細胞前駆体およびこの前駆体に関して富化された細胞集団は、分化、ならびに部分的成熟化および/または拡大のためにエキソビボでまたはインビトロで培養され得る。本明細書で使用される場合、単離された未成熟樹状細胞、樹状細胞前駆体、および他の細胞とは、人の手によって、それらの天然の環境から離れて存在する、および従って、天然生成物ではない細胞をいう。単離された細胞は、精製された形態で、半精製された形態で、または非天然の環境で存在し得る。簡潔には、インビトロおよび/またはエキソビボでの樹状細胞分化は、代表的には、単球性樹状細胞前駆体、または樹状細胞前駆体を有する細胞集団を、1もしくはこれより多くの樹状細胞分化薬剤の存在下で培養する工程を要する。適切な分化薬剤としては、例えば、細胞増殖因子(例えば、(GM−CSF)のようなサイトカイン、またはGM−CSFおよびインターロイキン4(lL−4)、インターロイキン13(lL−13)、インターロイキン15(IL−15)、またはインターロイキン7(IL−7)の組み合わせ))が挙げられ得る。ある特定の実施形態において、単球性樹状細胞前駆体は、単球由来未成熟樹状細胞を形成するために分化される。
【0048】
樹状細胞前駆体は、適切なインビトロ培養条件において培養および分化され得る。適切な樹状細胞組織培養培地としては、AIM−V
(登録商標)、RPMI 1640、DMEM、X−VIVO 15
(登録商標)などが挙げられるが、これらに限定されない。組織培養培地には、細胞の分化を促進するために、血清、血漿、アミノ酸、ビタミン、サイトカイン(例えば、GM−CSFおよび/またはIL−4、IL−7、IL−13、IL−15)、二価カチオンなどが補充され得る。ある特定の実施形態において、樹状細胞前駆体は、無血清培地中で培養され得る。培養条件は、いかなる動物由来生成物をも必要に応じて排除し得る。樹状細胞培養培地とともに使用される代表的なサイトカイン組み合わせは、約500ユニット/mLの、GM−CSFと、IL−4、IL−7、IL−15またはIL−13との各々を含む。活性化されていない樹状細胞前駆体が使用される代表的実施形態において、代表的な樹状細胞組織培養培地には、GM−CSFが、いかなる他のサイトカインもなしに補充され得る。GM−CSFが単独で使用される場合、その組織培養培地にはまた、組織培養基材への活性化されていない単球性樹状細胞前駆体の接着を妨げるために、高濃度のヒトもしくは動物タンパク質が代表的には補充され、それによって、樹状細胞前駆体の成熟化が活性化される。代表的には、ヒトまたは動物タンパク質は、1%より高い濃度で添加され、代表的には、10%もしくはこれ未満の濃度で使用される。そのヒトまたは動物タンパク質は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、血清、血漿、ゼラチン、ポリアミノ酸などであり得る。
【0049】
樹状細胞前駆体は、未成熟樹状細胞を形成するために分化される場合、皮膚ランゲルハンス細胞に表現型が類似である。未成熟樹状細胞は、代表的には、CD14
−およびCD11c
+であり、低レベルのCD86およびCD83を発現し、特化したエンドサイトーシスを介して可溶性抗原を捕捉し得る。
【0050】
樹状細胞成熟化薬剤としては、例えば、BCG、LPS、TNFα、TNFαのインターロイキン(IL)−1β、IL−6、およびプロスタグランジンE
2(PGE
2)の組み合わせ、イミダゾキノリン化合物、例えば、イミダゾキノリン−4−アミン化合物(例えば、4−アミノ−2−エトキシメチル−α,α−ジメチル−1H−イミダゾール[4,5−c]キノリン−1−エタノール(R848と称される)もしくは1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン、およびこれらの誘導体(例えば、WO2000/47719(その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと)、合成2本鎖ポリリボヌクレオチド、例えば、ポリ[I]:ポリ[C(12)U]など、Toll様レセプター(TLR)のアゴニスト(例えば、TLR−3、TLR−4、TLR−7および/もしくはTLR−9)、DCの成熟化を誘導することが公知の非メチル化CpGモチーフを含む核酸の配列など、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。さらに、インターフェロンγは、上記の樹状細胞成熟化薬剤のうちの1種もしくはこれより多くと組み合わされて、未成熟樹状細胞の成熟化を、Th1タイプ応答を誘導し得る表現型に向かって偏らせ得る。BCGの有効量は、代表的には、不活性化前に、約10
5〜10
7cfu/ミリリットル 組織培養培地に等価な範囲に及ぶ。IFNγの有効量は、代表的には、約100〜約1000U/ミリリットル 組織培養培地の範囲に及ぶ。
【0051】
カルメットゲラン桿菌(BCG)は、Mycobacterium bovisの無毒性(avirulent)株である。本明細書で使用される場合、BCGとは、全BCGならびに細胞壁構成要素、BCG由来リポアラビノマンナン、および他のBCG成分をいう。BCGは、必要に応じて不活性化される(例えば、熱不活性化BCG、ホルマリン処理BCG、または熱および他の不活性化方法の組み合わせによるものなど)。有効量のイミダゾキノリン化合物、例えば、イミダゾキノリン−4−アミン化合物(例えば、4−アミノ−2−エトキシメチル−α,α−ジメチル−1H−イミダゾール[4,5−c]キノリン−1−エタノール(R848と称される))は、約1〜約50μg/ml 培養培地であり得、より代表的には、5〜約10μg/ml 培養培地が使用される。イミダゾキノリン化合物は、単独で使用され得るか、あるいは例えば、BCGおよび/またはIFNγ、またはさらなるTLRアゴニストと併用され得る。
【0052】
未成熟DCは、代表的には、有効量の樹状細胞成熟化薬剤(例えば、BCGおよびIFNγ)と、成熟化を誘導し、そして樹状細胞を活性化するが、完全には活性化しないように十分な時間にわたって接触される。代表的には、BCGおよびIFNγが樹状細胞を成熟させるために使用される場合に、少なくとも24時間のインキュベーション期間が完全な成熟化に必要とされ、使用される樹状細胞成熟化薬剤に依存して、約48〜約72時間の代表的インキュベーション期間が、完全な成熟化に必要とされる。使用される樹状細胞成熟化薬剤に依存するある特定の実施形態において、その期間は、約5時間〜約19時間、またはこれより長い時間であり得る。BCGおよびIFNγが使用されるより代表的な実施形態において、樹状細胞の部分的成熟化および最適な活性化のための期間は、約8〜約19時間、またはこれより長い時間であり得る。未成熟樹状細胞は、培養され得、そして適切な成熟化培養条件において部分的に成熟化および活性化され得る。適切な組織培養培地としては、AIM−V(登録商標)、RPMI 1640、DMEM、X−VIVO 15(登録商標)などが挙げられるが、これらに限定されない。上記組織培養培地には、上記細胞の成熟化の誘導を促進するために、アミノ酸;ビタミン;サイトカイン(例えば、GM−CSFのみ(例えば、米国特許第8,389,278号(その全体において本明細書に参考として援用される)を参照のこと)、またはIL−4、IL−7、IL−13、もしくはIL−15との組み合わせでのGM−CSF);二価カチオン;などが補充され得る。代表的なサイトカインは、高濃度のヒトもしくは動物タンパク質とともにGM−CSF単独であり得るか、またはGM−CSFは、組み合わせで使用される場合、約500ユニット/ml〜約1000ユニット/mlのGM−CSFの濃度で使用され、100ng/mlのIL−4、IL−13、もしくはIL−15が使用される。
【0053】
未成熟樹状細胞の部分的成熟化および活性化は、樹状細胞に関して当該分野で公知の方法によってモニターされ得る。細胞表面マーカーは、当該分野でよく知られたアッセイ(例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学など)で検出され得る。その細胞はまた、サイトカイン生成に関して(例えば、ELISA、別の免疫アッセイによって、またはオリゴヌクレオチドアッセイの使用によって)モニターされ得る。樹状細胞成熟化薬剤(例えば、BCGおよびIFNγが挙げられるが、これらに限定されない)の存在下で本発明に従って培養され、および部分的に成熟し、かつ最適に活性化されたDCでは、未成熟樹状細胞と比較した場合に増大したレベルのリン酸化JAK2(janus activated kinase 2)が、当該分野で周知の方法によって成熟化の開始を示すために測定され得る。細胞表面マーカーおよびサイトカインの発現の誘導、ならびにシグナル伝達分子(例えば、jak2)のリン酸化はまた、樹状細胞が一旦個体に投与された後に、樹状細胞がインビボでの抗原の取り込みおよび免疫応答の誘導に関して調節される指標として公知である。
【0054】
上記未成熟樹状細胞は、未成熟樹状細胞の成熟化を開始する、および樹状細胞を部分的に成熟させそして活性化するために必要な期間にわたってのみ、成熟化を受ける。代表的には、有効量のBCGおよび有効量のIFNγとともに約5時間、または8時間、または10〜19時間というインキュベーションが、被験体に投与するために、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせた場合に組成物として使用するための樹状細胞を部分的に成熟させ、活性化することが見出された。完全に成熟したDCは、抗原を取り込み、共刺激細胞表面分子および種々のサイトカインのアップレギュレートされた発現を示す能力を失う。具体的には、成熟したDCは、未成熟樹状細胞より高いレベルのMHCクラスIおよびIIの抗原を発現し、そして成熟した樹状細胞は、一般に、CD80
+、CD83
+、CD86
+、およびCD14
−であると同定される。より高いMHC発現は、DC表面上での抗原密度の増大をもたらす一方で、共刺激分子であるCD80およびCD86のアップレギュレーションは、共刺激分子の対応物(例えば、T細胞上のCD28)を介してT細胞活性化シグナルを強化する。本開示において使用されるとおりの部分的に成熟し、かつ活性化された樹状細胞は、代表的には、樹状細胞成熟化薬剤へと一旦曝露された後、未成熟樹状細胞と比較した場合に、細胞表面上の共刺激分子の発現においてアップレギュレーションを示すような樹状細胞を含む。これらの共刺激分子としては、CD80、CD86および/またはCD54が挙げられるが、これらに限定されない。上記細胞は、CD83を発現してもよいし発現しなくてもよいが、上記細胞は、抗原を効率的に取り込んでプロセシングする能力を維持する。さらに、上記部分的におよび最適に成熟した樹状細胞は、未成熟樹状細胞によって顕著な量では代表的には生成されない、TNF−α、IL−6、IL−8、IL−10および/もしくはIL−12のうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てを生成し得る。
【0055】
IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てのある特定の量を生成する活性化された樹状細胞は、今や改善された臨床転帰と相関した。改善された臨床転帰は、処置されない個体または標準的な承認された処置プロトコルで処置された個体と比較した場合に、例えば、増大した生存時間および/または腫瘍再発までの増大した時間によって、測定され得る。本説明の中で、約50〜約200ng/100万個細胞/24時間のIL−6、約500〜約2000ng/100万個細胞/24時間のIL−8;少なくとも約30〜約70ng/100万個細胞/24時間のTNFα;ならびに/または少なくとも約75〜約100ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p40サブユニットおよび約1〜3ng/100万個細胞/24時間の生物学的に活性なIL−12 p70を生成する活性化された樹状細胞が、改善された臨床転帰と相関する免疫学的有効性を有することが見出された。これらサイトカイン/ケモカインはまた、約75〜約150ng/100万個細胞/24時間の間、および好ましくは、約100ng/100万個細胞/24時間のIL−6;約750〜約1500ng/100万個細胞/24時間、および好ましくは、約1000ng/100万個細胞/24時間のIL−8;少なくとも約100ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p40、および好ましくは少なくとも約100ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p70の範囲に及び得、改善された臨床転帰と相関する免疫学的有効性を生じる。先に開示されるように、改善された臨床転帰は、処置されていないかまたは現在確立されている標準ケアを使用して処置されたかのいずれかである同じがんまたは腫瘍を有する個体と比較して、有意に増大した生存時間または腫瘍もしくはがんの再発までの有意に増大した時間によって特徴付けられる。
【0056】
完全に成熟した樹状細胞は、本発明に関しては好ましくない。なぜならそれらが一旦完全に成熟した後は、その細胞はもはや効率的に抗原を取り込みかつプロセシングしないからである。さらに、先行技術の方法で使用されるとおりの未成熟樹状細胞は、望ましくない。なぜなら腫瘍内で、または腫瘍を取り囲む組織中で代表的には見出される免疫抑制環境は、未成熟樹状細胞による抗原のプロセシングを妨げることが公知のサイトカインの実質的な濃度を含むからである。本開示において、未成熟樹状細胞の部分的成熟化および最適な活性化は、細胞の表面上のサイトカインレセプターをダウンレギュレートして、腫瘍内空間、または取り囲む組織に存在するサイトカインの任意の免疫抑制効果に対してあまり感受性または応答性でないようにし、そして腫瘍内空間もしくは取り囲む組織内に存在する抗原を効率的に取り込みかつプロセシングし得る細胞を提供する。その樹状細胞は、腫瘍内空間内でもしくは取り囲む組織中で見出されるアポトーシス細胞および死滅しつつある腫瘍細胞に由来する実質的な量の腫瘍抗原を取り込み、プロセシングする。その投与した部分的に成熟し、かつ最適に活性化された樹状細胞が一旦、例えば、ケモカインレセプターCCR7の発現によって測定されるように腫瘍内空間内で有効に成熟された後、その樹状細胞は、抗原をいま提示している樹状細胞がT細胞と接触して、当該樹状細胞によって提示される任意の腫瘍抗原に対する免疫応答をアップレギュレートする場所であるリンパ節へと移動する。
【0057】
本発明のさらに別の局面によれば、本開示の種々のDCは、例えば、単球性樹状細胞前駆体、成熟化の前の未成熟樹状細胞として低温保存によって、または薬学的に受容可能なキャリアとの組み合わせにおいてまたはそのキャリアなしのいずれかで部分的成熟化後に、保存され得る。使用され得る低温保存薬剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、アルブミン、デキストラン、スクロース、エチレングリコール、i−エリスリトール、D−リビトール、D−マンニトール、D−ソルビトール、イノシトール、D−ラクトース、コリンクロリド、アミノ酸、メタノール、アセトアミド、グリセロールモノアセテート、および無機酸が挙げられるが、これらに限定されない。コントロールされ、ゆっくりとした冷却速度が、重要であり得る。種々の低温保護剤および種々の細胞タイプは、代表的には、種々の最適な冷却速度を有する。
【0058】
水が氷へと変化する融合相の熱は、代表的には、最小であるべきである。冷却手順は、例えば、プログラム可能な冷凍デバイスまたはメタノールバス手順の使用によって行われ得る。プログラム可能な凍結装置は、最適な冷却速度の決定を可能にし、標準的な再現可能な冷却を容易にする。プログラム可能な、制御された速度の冷凍庫(例えば、Cryomed(登録商標)またはPlanar(登録商標))は、凍結レジメンを所望の冷却速度曲線に調節することを可能にする。
【0059】
完全な凍結の後に、薬学的に受容可能なキャリアありまたはなしのいずれかでの単球性前駆体細胞、未成熟DCおよび/または部分的に成熟したDCは、長期低温貯蔵容器へと迅速に移され得る。代表的実施形態において、サンプルは、液体窒素(−196℃)またはその蒸気(−165℃)中で低温貯蔵され得る。造血幹細胞(特に、骨髄または末梢血に由来)の操作、低温貯蔵、および長期貯蔵に関する考慮事項および手順は、本発明の細胞にたいてい適用可能である。このような考察は、例えば、以下の参考文献(本明細書に参考として援用される)に見出され得る: Taylorら, Cryobiology 27:269−78 (1990); Gorin, Clinics in Haematology 15:19−48 (1986); Bone−Marrow Conservation, Culture and Transplantation, Proceedings of a Panel, Moscow, Jul. 2226, 1968, International Atomic Energy Agency, Vienna, pp. 107−186。
【0060】
凍結した細胞は、好ましくは、迅速に融解され(例えば、37℃〜41℃で維持したウォーターバス中で)、融解したら直ぐに冷却される。融解した際に細胞凝集化を妨げるために細胞を処理することは、望ましいことであり得る。凝集化を妨げるために、種々の手順が使用され得る(DNase(Spitzerら, Cancer 45: 3075−85 (1980)、低分子量デキストランおよびシトレート、ヒドロキシエチルデンプン(Stiffら, Cryobiology 20: 17−24 (1983))などの凍結の前および/または後の添加が挙げられるが、これらに限定されない)。低温保護剤は、ヒトにおいて毒性である場合には、その融解した部分的に成熟したDCの治療的使用の前に除去されるべきである。低温保護剤を除去する一方法は、微々たる濃度へと希釈することによる。凍結された単球性樹状細胞前駆体、未成熟樹状細胞、および/または部分的に成熟したDCが、一旦融解および回復された後、それらは、次いで、部分的に成熟した活性化された樹状細胞の生成を継続するかまたは製剤化された薬学的生成物を生成するかのいずれかのためのさらなる方法において使用され得る。その製剤化された部分的に成熟し、かつ最適に活性化された樹状細胞は、凍結されていない部分的に成熟し、かつ最適に活性化されたDCに関して本明細書で記載されるように投与され得る。
【0061】
部分的に成熟しかつ活性化された樹状細胞の免疫療法有効性の決定
種々の炎症性サイトカインおよびケモカインの量は、当該分野で周知の方法によって測定され得る。本件では、活性化された樹状細胞によって生成されるIL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの組み合わせ、および/または全ての量は、改善された臨床転帰と関連し得る。改善された臨床転帰は、処置されていない個体または標準的な承認された処置プロトコルで処置された個体と比較して、例えば、有意に増大した生存時間および/または腫瘍再発までの有意に増大した時間によって測定され得る。予測外なことには、約50〜約200ng/100万個細胞/24時間のIL−6、約500〜約2000ng/100万個細胞/24時間のIL−8;少なくとも約30〜約70ng/100万個細胞/24時間のTNFα;ならびに/または少なくとも約75〜約100ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p40サブユニットおよび約1〜3ng/100万個細胞/24時間の生物学的に活性なIL−12 p70を生成する活性化された樹状細胞は、改善された臨床転帰と相関する免疫学的有効性を有することが見出された。これらのサイトカイン/ケモカインはまた、約75〜約150ng/100万個細胞/24時間の間、および好ましくは約100ng/100万個細胞/24時間のIL−6;約750〜約1500ng/100万個細胞/24時間、および好ましくは、約1000ng/100万個細胞/24時間のIL−8;少なくとも約100ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p40、および好ましくは、少なくとも約100ng/100万個細胞/24時間のIL−12 p70の範囲に及び得る。
【0062】
これら活性化された樹状細胞は、個体に投与し戻された場合に活性化された樹状細胞組成物が改善された臨床転帰を生じる可能性がありそうか否かを決定するために、免疫療法有効性試験のために使用され得る。さらに、上記免疫療法有効性試験は、有意な免疫応答をおそらく発生させる患者を選択するか、個体に投与し戻された場合に有意な免疫応答を生じると予測されない樹状細胞組成物のロットを却下するために使用され得るか;またはIL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全ての望ましいレベルを生成し得る樹状細胞活性化薬剤をスクリーニングするために使用され得る。個体から単離された末梢血が、IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全ての望ましいレベルを生成し得る活性化された樹状細胞を生じない場合、その患者は、HLAマッチした正常ドナーから単離された活性化された樹状細胞で処置される必要があり得る。
【0063】
活性化された樹状細胞組成物の免疫療法有効性を決定するための方法は、i)上記で示される方法のうちのいずれかを使用して活性化された樹状細胞を調製する工程;ii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの相対量を、当該分野で周知のいずれかの方法を使用して決定する工程;iii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全ての上記決定された量と閾値量とを比較する工程;iv)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を下回る場合には、上記活性化された樹状細胞組成物が低い免疫療法有効性の組成物であること;あるいはIL−6、IL−8、IL−12およびTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を上回る場合には、上記活性化された樹状細胞組成物が高い免疫療法有効性の組成物であることを決定する工程を包含し得る。IL−6、IL−8、IL−12およびTNFαの閾値量は、上記で示される。上記活性化された樹状細胞が高い免疫療法有効性を示す場合、その活性化された樹状細胞は、薬学的に受容可能なキャリアとともに投与するために製剤化され得る。
【0064】
別の実施形態において、活性化されたDC集団の免疫療法有効性を増大させるための方法が提供される。上記方法は、i)活性化された樹状細胞集団を調製する工程;ii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの相対量を、当該分野で周知の方法によって決定する工程;iii)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全ての上記決定された量と閾値量とを比較する工程;iv)IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全てが閾値を下回るか否かを決定する工程;v)上記活性化されたDCによるIL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαのうちの1種もしくはこれらの任意の組み合わせ、および/または全ての生成を誘導して、増大した免疫療法有効性を有する活性化されたDC集団を形成するように、IL−6、IL−8、IL−12および/もしくはTNFαの量を、上記閾値量を上回るようにし得る薬剤の十分な量を添加する工程を包含する。
【0065】
部分的に成熟した樹状細胞のインビボ投与
部分的に成熟しかつ活性化された樹状細胞、またはこのような細胞が富化されかつこのような細胞を含む細胞集団を、例えば、がんまたは腫瘍を有する被験体に投与するための方法および組成物が、提供される。ある特定の実施形態において、このような方法は、樹状細胞前駆体もしくは未成熟樹状細胞を得る工程、樹状細胞成熟化薬剤(例えば、BCGおよびIFNγ)もしくは任意の他の樹状細胞成熟化薬剤(例えば、上記で列挙されるもの)の存在下でそれら細胞を分化させ、かつ部分的に成熟化させる工程によって行われる。上記部分的に成熟しかつ活性化された樹状細胞は、低温状態で医師に提供され得る。投与する前に、その凍結された細胞は迅速に融解され、冷却され、生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤、緩衝液および/または希釈剤とともに、当業者に周知の方法および組成物を使用して製剤化され得る。その部分的に成熟しかつ活性化された樹状細胞は、免疫刺激の必要性のある被験体へと直接投与され得る。代表的には、約10
2〜約10
10 細胞が、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)中に懸濁される。その細胞は、腫瘍へと直接、あるいは、腫瘍もしくは腫瘍床の近傍の領域、腫瘍もしくは腫瘍床と隣接する領域、または腫瘍もしくは腫瘍床との接触にある循環血管もしくはリンパ管へのいずれかに注射され、その細胞ががんもしくは腫瘍抗原へのアクセスを有することが担保される。
【0066】
例えば、限定ではなく、その細胞は、腫瘍へと直接、その腫瘍の外科的除去または切除後に腫瘍床へと、腫瘍周囲空間へと、その腫瘍と直接接触した状態にある排出リンパ節へと、腫瘍もしくはその腫瘍に罹患した器官へと繋がるまたはその腫瘍もしくは器官に供給する血管またはリンパ管(例えば、門脈または肺静脈もしくは肺動脈など)へと、投与され得る。本発明の部分的にかつ最適に成熟した樹状細胞の投与は、腫瘍に対する他の処置(例えば、化学療法または放射線療法)と同時またはその後のいずれかであり得る。さらに、本発明の部分的に成熟した樹状細胞は、別の薬剤と共投与され得、その薬剤は、樹状細胞の成熟化および/あるいは腫瘍内またはその腫瘍近傍もしくは隣接した領域の抗原のプロセシングの補助的手段として作用し得る。さらに、その樹状細胞はまた、腫瘍もしくは腫瘍床の中またはその周りの領域へと埋め込むための徐放性マトリクスへと製剤化または配合され得、その結果、その細胞が、腫瘍抗原との接触のために、腫瘍または腫瘍床へとゆっくりと放出される。
【0067】
本開示で使用される場合、腫瘍としては、固形腫瘍(例示であって限定ではないが、肉腫;膵臓腫瘍;結腸直腸腫瘍;黒色腫;肺腫瘍;乳房腫瘍;卵巣腫瘍;頭頚部腫瘍;胃の腫瘍;前立腺腫瘍;食道腫瘍;子宮頸部もしくは膣の腫瘍;脳腫瘍(例えば、膠芽腫、星状細胞腫、髄膜腫、または髄芽腫)などが挙げられる。さらなる固形腫瘍もまた、本明細書で開示される組成物または方法を使用する処置の対象である。
【0068】
本開示の部分的に成熟し、かつ活性化された樹状細胞は、製剤および投与様式に対して適切な任意の手段によって投与され得る。例えば、細胞は、薬学的に受容可能なキャリアと合わせられ得、シリンジ、カテーテル、カニューレなどで投与され得る。上記のように、その細胞は、徐放性マトリクスの中で製剤化され得る。この様式で投与される場合、その製剤は、使用されるマトリクスに適した手段によって投与され得る。本発明に適用可能な他の方法および投与様式は、当業者に周知である。
【0069】
本発明の組成物は、個体の処置において単独で使用され得る。さらに、その組成物は、がんまたは腫瘍を処置するために任意の他の方法と組み合わせて使用され得る。例えば、本発明の方法は、腫瘍の外科的切除、化学療法(細胞傷害性薬物、アポトーシス性薬剤、抗体など)、放射線療法、凍結療法、小線源療法、免疫療法(抗原特異的成熟活性化樹状細胞、NK細胞、がん細胞または腫瘍抗原に特異的な抗体の投与など)などと組み合わせて使用され得る。これらの方法のうちのいずれかおよび全ては、任意の組み合わせでも使用され得る。併用処置は、同時または逐次的であり得、処置する臨床医によって決定されるとおりの任意の順序で投与され得る。
【0070】
別の実施形態において、樹状細胞およびレシピエント被験体は、同じMHC(HLA)ハプロタイプを有する。被験体のHLAハプロタイプを決定するための方法は、当該分野で公知である。関連実施形態において、部分的に成熟した樹状細胞は、レシピエント被験体に対して同種異系である。その同種異系細胞は、代表的には、少なくとも1つのMHC対立遺伝子(例えば、少なくとも1つを共有するが、全てのMHC対立遺伝子を共有するわけではない)に関して適合される。それほど代表的ではない実施形態では、その樹状細胞およびレシピエント被験体は、互いに対して全て同種異系であるが、全てが少なくとも1つのMHC対立遺伝子を共通して有する。
【0071】
抗腫瘍免疫応答は、任意の1つもしくはこれより多くの周知の方法によって測定され得る。例えば、抗腫瘍応答は、腫瘍のサイズの縮小、腫瘍細胞死もしくは腫瘍細胞壊死の誘導、腫瘍細胞増殖の低減によって、または腫瘍抗原特異的T細胞(TIL)の浸潤などによって測定され得る。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は、本説明の種々の局面の例証として提供されるに過ぎず、本明細書で開示される方法および組成物を限定するとは如何様にも解釈されるべきではない。その方法の好ましい実施形態および/または方法は、例証されかつ記載されてきたが、種々の変更が本説明の趣旨および範囲から逸脱することなくそこで行われ得ることは認識される。
【0073】
この実施例では、活性化された樹状細胞は、種々の固形腫瘍における用量漸増研究において試験される。
【0074】
方法
40名の被験体を、この用量漸増研究に登録して、固形腫瘍において、最適に活性化された樹状細胞を含む活性化されたDC(aDC)の腫瘍内注射の安全性および実現性を、試験した。少なくとも1種の抗腫瘍処置レジメンをスクリーニングの12週間以内に受けたことがある、局所的に進行したまたは転移性の疾患を有する18〜75歳齢の被験体は、研究に適格であった。他の適格性の基準は、米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)パフォーマンスステイタス0または1を有すること、1cm直径より大きくかつ大血管構造から離れて位置する少なくとも1個の注射可能な腫瘍塊または腫脹しにくい領域(例えば、上気道腫瘍)を有すること、完全な用量コースを製造するために十分数の単球を生成すること、6ヶ月より長い平均余命を有すること、および十分な骨髄および腎機能を有することを包含した。自己免疫疾患もしくは臓器移植の病歴を有する被験体を、この研究から排除した。他の排除基準は、HIV−1、HIV−2またはHTLV−IもしくはHTLV−IIの陽性状態を有すること;最初の注射の前4週間以内に、ひどく骨髄抑制性もしくは骨髄毒性の化学療法を受けたこと;2年以内にがん免疫療法を受けていること;処置されていない脳への転移を有すること;ステロイドもしくは抗凝固治療を継続する必要があること;または急性もしくは制御されない感染症を有することを包含した。被験体の特性を、表1にまとめる。
【表1】
【0075】
研究設計
これは、活性化されたDCの安全性および効力の評価であった。この研究の用量漸増部分は、「3+3」設計を使用した。3種の用量レベルを、この研究に含めた:注射1回あたり、200万個、600万個、および1500万個の活性化されたDC。
【0076】
各被験体に、白血球アフェレーシスを受けさせて、単球、DC前駆体細胞を集めた。その活性化されたDC(aDC;商品名DCVax
(登録商標)−Direct)を、以下に記載されるとおりに調製した。最初のaDC注射を、白血球アフェレーシスのおよそ3週間後に行い、その後の注射を、最初の注射の1週間後、2週間後、8週間後、16週間後、および32週間後に投与した。全ての注射を、腫瘍の内部にガイド針を配置し、次いで、より細い針で腫瘍組織へと直接生成物を送達するために、画像ガイダンス(超音波法もしくはコンピューター断層撮影法(CT)のいずれか)を使用して投与した。各免疫のために、3〜4個の針経路を使用して、細胞をその腫瘍境界の中に投与し、単一ボーラスを腫瘍塊の壊死中心部に送達するのを回避すると同時に、死滅腫瘍細胞および死滅しつつある腫瘍細胞へのaDC曝露を増強した。注射後に、その被験体を、バイタルサイン(心拍数、体温および血圧)を30分ごとにとって、2時間にわたって観察した。
【0077】
用量制限毒性(DLT)および最大耐量(MTD)
DLTを、以下のうちのいずれかとして定義した:≧グレード3の注射部位反応、自己免疫疾患の臨床徴候および症状の発生、≧グレード2のアレルギー反応、3日間もしくはこれより長い日数にわたって持続するかまたは薬物介入を要する、≧グレード2の免疫学的反応、≧グレード3の米国立癌研究所共通毒性規準(National Cancer Institute Common Toxicity Criteria)(NCI CTC) v.4毒性、または悪性腫瘍進行に関連しないグレード4もしくは生命を脅かす事象。その最大耐量(MTD)を、被験体のうちの1/3以下が用量制限毒性(DLT)を経験する最高用量レベルとして定義した。
【0078】
効力の評価
処置効力を、固形腫瘍の効果判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)v.1.1(Eisenhauerら, Eur. J. Cancer 4:228−247, 2009)または免疫応答関連基準(Hoosら, J. Nat’l. Cancer Inst. 102:1388−1397, 2010)に従って、コンピューター断層撮影法(CT)または磁気共鳴(MR)法による画像化研究によって評価した。簡潔には、進行性疾患(PD)を、研究の間に観察された最小の合計と比較して、標的病変の直径の合計の≧20%増大として定義した。そしてその絶対合計は、≧5mm増大でなければならない。安定な疾患(SD)は、部分応答(≧30%標的病変直径減少)とみなすには不十分な腫瘍縮小を有すると同時に、PDとみなすには不十分な腫瘍増殖を有すると定義した。
【0079】
活性化されたDCの調製
単球を、タンジェンシャルフローフィルトレーションを使用して、白血球アフェレーシス生成物から精製した。その細胞を、Teflon組織培養バッグ(Saint−Gobain, Malvern, PA)の中に入れ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF+2% ヒト血清アルブミン)の存在下で未成熟DCへと5日間にわたって分化させた。細胞を、5日間培養し、次いで、BCGマイコバクテリアを死滅させ、IFNγを添加して、約10〜19時間の期間にわたってDC活性化を誘導した。活性化後に、活性化された樹状細胞を、少量のRPMI−1640、40% ヒト血清アルブミンおよび10% DMSO中に再懸濁し、その細胞を、1用量アリコートで低温貯蔵した。フローサイトメトリーを、樹状細胞活性化マーカーを探す細胞に対して行った(
図3)。
【0080】
サイトカインレベル決定
TNFα、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10、およびIL−12p40のためのカスタムマルチプレックス磁性ビーズセット(Luminex Corp., Austin, TX)およびIL−12p70のためのシングルプレックスセット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を使用して、製造業者のプロトコルに従って、DCVax−Direct生成物培養からの清澄化上清中のサイトカインの濃度を決定した。データを、100万個の生きているDCあたりで正規化した二連の決定の平均値として報告する。
【0081】
腫瘍生検の評価
生検で採取した腫瘍を、標準法を使用して、ホルマリン固定およびパラフィン包埋(FFPE)した。全ての免疫組織化学を、QualTek Molecular Laboratories(Santa Barbara, CA)によって行った。
【0082】
FFPE標本におけるIFNγおよびTNFα転写物のインサイチュ検出を、RNAscopeアッセイと、プローブHs−IFNγおよびHs−TNFα(それぞれ、カタログ番号310501および310421、Advanced Cell Diagnostics(ACD), USA)、ならびに陽性コントロールプローブPPIB(カタログ番号313901)、およびRNAscope 2.0 HD Reagentキット(Brown)(カタログ番号310035, ACD, USA)とを使用して、製造業者が推奨する手順に従って行った。IFNγおよびTNFα RNAscope特異性を検証するために、3名の健康なドナーに由来するPBMCを、T細胞刺激の前後に試験した。T細胞を刺激するために、PBMCを、Ficoll−Paque(Sigma−Aldrich)を使用して単離し、10% ウシ胎仔血清を補充したRPMI−1640培地中で再懸濁し、50ng/mL ホルボールミリステートアセテート(PMA)および1μg/mL イオノマイシン(Sigma−Aldrich)で5時間、37℃および5% CO
2において処理した。細胞を、Histogel(登録商標)中の10% 中性緩衝化ホルマリン(NBF)中で固定し、加工処理し、FFPEブロックの中に包埋した。次いで、切片(5μm)を、上記で示されるようにRNAscopeを使用して試験した。その刺激されたT細胞は、非処理細胞と比較して、IFNγおよびTNFαの両方において強い増大を示した。染色したスライドのデジタル画像を、Aperio ScanScope XTデジタルスライドスキャナーで獲得した。
【0083】
統計分析
統計分析を行って、サイトカインレベルが転帰と関連するか否かを決定した。さらに、ベースライン特性もしくは処置因子が、サイトカインレベルもしくは転帰の予測となるか否かを評価した。応答を、2つの変数に基づいて測定した:二バイナリ尺度(binary measure)としての8週目でのSDおよび生存期間。多重度を検定するための調節は行わなかった。p値0.05を、統計的有意と見做した。
【0084】
第1に、記述尺度(descriptive measure)を、有効性尺度間の相関を含め、サイトカインレベルに関して生成した。次に、ベースライン特性または処置因子とサイトカインレベルとの間の関連を、ノンパラメトリックANOVA(ウィルコクソン)法を使用して評価した。測定値の散布図を、サイトカインレベルの対の全てに関して検討した。比例ハザードモデルを使用して、個々のサイトカインレベルの関数としての生存をフィットさせ、後方回帰(backward regression)を使用して、特別な尺度が、ジョイントモデルにおいてより予測的であるか否かを決定した。ロジスティックモデルを使用して、8週間でのSDを、個々のサイトカインレベルの関数としてフィットさせ、後方回帰を使用して、特別な尺度が、ジョイントモデルにおいてより予測的であるか否かを決定した。比例ハザードモデル、ロジスティックモデル、傾向検定、または尤度比χ二乗検定(likelihood−ratio χ
2 tests)を使用して、ベースライン特性または処置因子と、尺度およびエンドポイントに適切であるとして、生存および8週間でのSDとの関連を評価した。サイトカインレベルに基づく生存のカプラン−マイヤープロットに関しては、メジアン値を、2群間のカットオフとして各サイトカインに関して使用した。
【0085】
その分析および散布図の検討に基づくと、観察の群は、潜在的なアウトライアーまたはおそらく被験体の特有のセットであるようであった(結果でさらに記載される)。これら被験体の記録を削除した上で分析を繰り返した。SASバージョン9.3(SAS Institute Inc., Cary, NC)を使用して分析を完了させた。
【0086】
結果
被験体
全体として、40名の被験体を研究に登録した。これらのうち、1名の被験体を、aDCの不正確な製剤化に起因して評価できないとみなした。被験体の人口統計および臨床上の特性を、表1に示す。中間の被験体年齢は、53歳齢であった(範囲30〜73歳)。研究は、21名の女性(53.8%)を含んだ。腫瘍タイプのうちの多数が研究の中に含められ、最も一般的なものは、肉腫(n=8)、結腸直腸癌(n=7)、および黒色腫(n=6)であった。被験体は、3個の病変というメジアンを有した(範囲=1〜5個の病変)。以前の処置のメジアン数は、2であった(平均=3;範囲=1〜9)。全ての手順を、放射線科医によって意識下鎮静法によって促進される画像ガイダンス(コンピューター断層撮影法または超音波)の下で、外来患者ベースで行った。200万個のaDC用量では、16名の被験体に、4回の注射というメジアンで投与した(範囲=1〜6回の注射)。600万個のaDC用量では、20名の被験体に、3回の注射というメジアンで投与した(範囲=2〜6回の注射)。1500万個のaDC用量では、3名の被験体に、4回の注射というメジアンで投与した(範囲=3〜4回の注射)。被験体あたり1個の腫瘍のみに注射した。
【0087】
aDCを、画像ガイダンスの下で、1回の注射あたり、200万個、600万個、または1500万個の生きている、活性化された自己DCの用量において腫瘍内に投与した。各注射通院時(0日目、7日目、14日目、次いで、8週目、16週目、および32週目)に、1個の病変に注射した。腫瘍内注射のためのaDCを調製するために、それらを、BCGおよびIFNγへの曝露を介して活性化した。活性化されたDCの上清を集めて、サイトカイン生成を測定した。腫瘍生検を、腫瘍壊死および浸潤リンパ球に関して評価した。腫瘍サイズを、標準的画像化手順を通じてモニターし、免疫をモニターするために血液を収集した。
【0088】
安全性および生存
画像ガイダンスの下での腫瘍内注射は、一般には、十分に許容されかつ実現可能であった。合計で、200万個の用量レベルで16名の被験体に、600万個の用量レベルで20名の被験体に、および1500万個の用量レベルで3名の被験体に、i.t.注射を行った。用量漸増の間に用量制限毒性(DLT)は観察されなかった。従って、最大耐量(MTD)は決定されなかった。最大試験用量(1500万個のaDC)は、十分に許容された。研究処置に関する有害事象を、表2に報告する。
【表2-1】
【表2-2】
略語:aDC、活性化された樹状細胞;G、グレード(米国立癌研究所共通用語規準バージョン4に準拠)。
a有害事象が異なるグレードで複数日に観察された場合、観察された最高グレードを列挙した。
b全患者のうちのパーセント、N=39。
【0089】
処置関連有害事象は、32名の被験体(82.1%)において観察されたが、これらのうちのほぼ全てが、グレード1または2であり、大部分は、研究期間の最後までには消散した。最も一般的な有害事象は、発熱(n=31、79.5%)、悪寒(n=16、41.0%)、疲労(n=12、23.1%)、注射部位疼痛または不快感(n=11、28.2%)、寝汗(n=10、25.6%)、食欲減退(n=9、23.1%)、および筋肉痛(n=7、17.9%)であった。
【0090】
4件のグレード3(10.3%)および1件のグレード4(2.6%)の処置関連有害事象があり、全件が、600万個のaDC/注射用量においてであった。
【0091】
組織学
連続する生検データを、28名の被験体から集めた。合計で、104個の生検材料を採取した。新たなもしくは増大した壊死を、14名の生検実施被験体(57%)において観察した。新たなもしくは増大した数の間質リンパ球を、14名の生検実施被験体(50.0%)において観察した;新たなもしくは増大した数の浸潤リンパ球を、15名の生検実施被験体(54%)において観察した;そして8名の生検実施被験体(29%)では、浸潤リンパ球および間質リンパ球の両方を観察した。生検材料を、3週目および8週目に集め、腫瘍周辺もしくは腫瘍内のT細胞を、一般に、8週間の処置後開始で検出した。従って、免疫応答は、その時間枠内のどこかで開始された。いくらかの被験体において、そのT細胞蓄積は、最初の注射の2週間後もしくは3週間後に検出された。これらT細胞は、活性化されたDC注射後の腫瘍へと集まる既存の抗腫瘍免疫応答を表し得る。
【0092】
デノボもしくは有意に増強されたPD−L1発現を、25個の評価した腫瘍生検材料のうちの19個で観察した。リンパ球およびPD−L1の両方に関して染色した生検材料の中で、新たな、もしくは増大したPD−L1発現を、新たな、もしくは増大した浸潤T細胞を有する12名の被験体のうちの9名で、および新たな、もしくは増大した間質リンパ球を有する12名の被験体のうちの11名で観察した。新たな、もしくは増大したPD−L1発現を有する全19名の被験体の中で、14名は、腫瘍周辺リンパ球もしくは浸潤リンパ球のいずれかを有した。
【0093】
浸潤T細胞が観察された場合、それらは、主に、CD4
+およびCD8
+細胞の混合物であった;しかし、CD4
+T細胞またはCD8
+T細胞のいずれかが専ら観察された場合も数例あった。場合によっては、そのT細胞は、生検切片中の全細胞のうちの30%超を構成した(
図1Aもまた参照のこと)。
【0094】
腫瘍関連および腫瘍浸潤T細胞機能性を評価するために、RNAscope分析を、選択された組織上でのIFNγおよびTNFα発現に関して行った。試験したサンプルにおけるT細胞の大部分は、両方のサイトカインに関して陽性であった(
図1Bおよび1C)。このことは、十分に機能的なT細胞が、腫瘍へと動員されたことを示唆する。TNFαを発現する組織マクロファージもまた、検出された。
【0095】
サイトカインレベル、生存および安定な疾患(SD)
aDCのサイトカインレベルを、被験体での注射の前に評価した。aDCの各バッチは、被験体自身の単球に由来しているので、サイトカインレベルで観察された被験体間変動性の程度は大きかった。従って、サイトカインレベル間の内部相関およびサイトカインレベルとベースライン特性、処置因子、生存、およびSDとの間の関連性を8週間で評価した。
【0096】
統計分析の間に、3名の被験体が、高レベルのIL−8およびIL−6を有するが、低いTNFαレベルを有する活性化されたDCを有した。これらの被験体は、統計上のアウトライアーとして一貫して出現した。第1のアウトライアー被験体は、600万個のaDC処置群の51歳齢の男性黒色腫被験体であった。彼には5個の病変があり、以前に一ラウンドの処置を受けていた。彼は、3回の注射を受け、8週目でSDを有し、最初の注射のおよそ9ヶ月後に死亡した。第2のアウトライアー被験体は、600万個のaDC処置群の59歳齢の女性乳がん被験体であった。彼女には3個の病変があり、以前に8ラウンドの処置を受けていた。彼女は、3回の注射を受け、最初の注射のおよそ1ヶ月後に死亡した。第3のアウトライアー被験体は、1500万個のaDC処置群の52歳齢の男性肺がん被験体であった。彼には3個の病変があり、以前に5ラウンドの処置を受けていた。彼は3回の注射を受け、8週目でPD(進行性疾患)を有し、最初の注射のおよそ3.5ヶ月後に死亡した。全3名の被験体は、重度の疾患負荷を有し、極めて予後不良であった。その3名の被験体には、彼らを研究の被験体の残りから区別する他の既知の目立った特徴はなかった。その被験体のうちの1名に由来するaDCの探索的分析は、その精製された単球がaDCへと完全に変わり損ねた可能性があることを示唆する。その後の分析では、上記アウトライアー被験体データを排除した。
【0097】
サイトカインレベルの間の内部相関
活性化の質およびaDCによって生成されるサイトカインの効果を評価するために、TNFα、IL−6、IL−8、IL−10、IL12p40、およびIL−12p70のレベルを決定した。評価した種々のサイトカインの間には、高いレベルの内部相関があった。それらの値は、単変量分析において転帰(安定な疾患(SD)もしくは生存)と相関した。別個に、後方回帰モデルを使用して、その尺度の相対的予測強度を評価し、そして因子の全てで出発して、ジョイントモデルに基づいて変数組み合わせを同定した。相関したサイトカインを、3群にソートした。第1の群には、IL−6、IL−12p40およびより低い程度のTNFαを含めた。IL−6およびIL−12p40に関するピアソンのr値は、0.64(p=0.004)であった。IL−6およびTNFαに関するr値は、0.88(p=<0.001)であった。IL−8およびIL−12p40に関するr値は、0.641(p<0.001)であった。第2の群は、IL−10およびIL−8であった。IL−18およびIL−10に関するr値は、0.63(p<0.001)であった。第3の群は、IL−12p40およびIL−12p70であった。これらに関するr値は、0.55(p<0.001)であった。aDCを生成するために使用される短い活性化時間が、IL−12p70生成の完全な補完を検出するには最適でなかったことに注意すべきである。
【0098】
サイトカインレベルとベースライン特性および処置因子との間の関連性
次に、サイトカインレベルとベースライン特性および処置因子(適応症、病変の数、以前の処置、用量、注射の回数、年齢、合計腫瘍直径もしくは最長腫瘍直径(SLD)、およびスクリーニング時の絶対リンパ球数(ALC)を含む)との間の関連性を、回帰分析を使用して決定した。SLDは、IL−8(R
2=0.20;p=0.006)、IL−12p40(R
2=0.14;p=0.026)およびIL−12p70(R
2=0.11;p=0.051)のレベルと負の関連があり、IL−10レベル(R
2=0.023)と正の関連があった。ALCは、IL−12p40(R
2=0.26;p=0.002)と正の関連があった。SLDもALCも、生存と独立して関連しなかった。
【0099】
サイトカインレベルと生存との間の関連性
サイトカインレベルを、比例ハザードモデルにおいて個々にフィットさせて、それらが生存を予測となり得るか否かを決定した。単変量分析は、IL−6(p=0.048)、IL−8(p=0.014)、およびIL−12p40(p=0.016)が生存と関連することを示した。具体的には、985ng/10
6 細胞/日より高いIL−8レベルおよび330 /10
6 細胞/日より高いIL−12p40レベルは、有意に高い全生存(それぞれ、p=0.0022およびp=0.0077;
図2Aおよび2B)を示した。
【0100】
探索的分析を行って、抜き出されたサイトカイン対のジョイントモデルを評価し、そして潜在的因子相互作用を評価した。IL−8およびIL−12p40の組み合わせは、潜在的に有意な相互作用項(interaction term)と関連した(p=0.020)。そのジョイント相互作用モデルは、IL−8およびIL−12p40の両方の高い値を有する被験体が、全般的によりよく応答し得ることを示す。この結果は、DC有効性尺度と臨床転帰との間により複雑な関係性が存在し得ることを示唆する。
【0101】
サイトカインレベルと8週目での安定な疾患との間の関連性
カプラン−マイヤー分析は、生存が8週目でのSDと有意に関連する(p=0.004、
図2C)ことが示された;従って、SDと関連するサイトカインマーカーが存在するか否かを決定した。サイトカインレベルを、ロジスティックモデルへと個々にフィットさせて、それらが8週目でのSDの予測となるか否かを決定した。単変量分析から、8週目でのSDとTNFαとの間には正の関連性(p=0.015、
図2D)が明らかにされ、この関連性は、多変量後方回帰モデルにおいて確認された(p=0.014)。
【0102】
DCの質の他の尺度
25名の被験体に由来する注射されたaDCを、表面マーカー発現に関して分析した。生存とMHCクラスI抗原(傾向に関するログランクp=0.07)およびCD86共刺激分子(傾向に関するログランクp=0.1)の発現レベル(三分位値へと分けた平均蛍光強度)との間の弱い相関は、DCの質が腫瘍内に送達された場合に被験体の転帰に関する主な原動力であるという仮説のさらなる裏付けを与える(
図2Eおよび
図2F)。
【0103】
疾患の安定化は、高レベルのTNFを生成するaDCで処置したより多くの被験体において観察された(p<0.01)。生存は、TNFα、IL−6およびIL−8の高い生成レベルと同様に関連した。
【0104】
この研究において、活性化された自己樹状細胞(aDC)の安全性および効力を試験した。aDCを、切除不能の、局所的に進行した、または転移性の固形腫瘍を有する被験体の処置として、腫瘍内に注射した。被験体を、0週目、1週目、2週目、8週目、16週目および32週目で、または投与するべき自己aDCがなくなるまで、注射1回あたり200万個、600万個、または1500万個のaDCで処置した。DLTは観察されなかったので、MTDは存在しなかった。この観察は、DLTもMTDも同定されなかった他のDCワクチン研究(Butterfield, Front. Immunol. 4:454, 2013, Draubeら, PLoS One 6:e18801, 2011)と一致する。DCワクチンが自己細胞を使用することを考慮すると、制限された毒性しかないことは、驚くべきことではなかった。DCワクチン用量が、白血球アフェレーシスの間に抽出され得、処置の間に転換され得る細胞数(これは、実現可能な最大用量といわれる)によってのみ制限されることは、以前に示されている(Anguilleら, Pharmacol. Rev. 67:731−753, 2015)。
【0105】
本明細書で投与される最大用量は、1500万個のaDC/注射であり、この用量は、十分に許容された;しかし、この大用量は、有効なT細胞応答を生じるために必要というわけではない可能性がある。腎臓がんおよび前立腺がんのDCワクチン治験の1つの大規模メタ分析は、用量と転帰との間の正の相関を突き止めた(Draubeら, PLoS One 6:e18801, 2011)。しかし、いくつかの他の研究は、より少ない細胞でも、DCが排出リンパに有効に達する限りにおいて、比較的少ないDCで同等の免疫応答を達成し得ることを示した(Telら, Cancer Res. 73:1063−1075, 2013; Aarntzenら, Clin. Cancer Res. 19:1525−1533, 2013, Verdijkら, Expert Opin. Biol. Ther. 87:865−874, 2008), Celliら, Blood 120:3945−3948, 2012)。比較的少ない低グレードの処置関連有害事象が、この研究のaDC処置で認められた。これらの有害事象は、免疫系の活性化(例えば、発熱)と主に関連していた。これらの結果は、MTDの欠如と合わせると、aDCが固形腫瘍の安全な処置であることを示す。
【0106】
aDCの効力に関連して、注射した腫瘍の生検から、増大した壊死、ならびにCD4
+ヘルパー細胞およびCD8
+キラー細胞を含むリンパ球の浸潤が示された。個々の症例では、免疫反応性は、患者生検においてT細胞の迅速なおよび遅延した浸潤ならびに広範囲な壊死の両方とともに観察された。これらの観察は、腫瘍サイズの明白な縮小の前に起こった(データは示さず)。研究から、腫瘍における、ある特定のタイプのT細胞(例えば、間質リンパ球およびCTL)の増大した浸潤および蓄積はいくつかの固形腫瘍において改善された転帰と強く相関することが示された(Tosoliniら, Cancer Res. 71:1263−1271, 2011; Smythら, Adv. Immunol. 90:1−50, 2006; Clementeら, Cancer 77:1303−1310, 1996)。さらに、PD−L1は、試験した25個の腫瘍のうちの19個においてアップレギュレートされ、このアップレギュレーションは、免疫活性化に対する腫瘍応答を恐らく反映する。特に、T細胞に関して陽性の試験した腫瘍生検材料は、増大したPD−L1発現を有する可能性がより高かいことがその理由であった。PD−L1は、リンパ球浸潤の間に誘起される、T細胞活性をダウンレギュレートして、過剰な免疫反応を制御する共刺激分子である。そして腫瘍は、それを使用して、免疫応答から逃れる(Itoら, Biomed. Res. Int. 2015:605478, 2015, Anguilleら, Pharmacol. Rev. 67:731−753, 2015)。上記のPD−L1データが、生検で採取した腫瘍に由来することを考慮すると、PD−L1発現の出現は、免疫応答のダウンレギュレーションを示すというよりむしろ、成功裡の抗腫瘍免疫応答誘導のマーカーとして役立ち得る。全体として、これらの結果は、aDCが固形腫瘍における有効なT細胞応答を刺激するという証拠を提供する。
【0107】
aDC処置が有効であることから、患者の転帰もまた改善されるはずである。aDCによって分泌されるサイトカインによって測定される場合に、生存機構がDC有効性に関連したという仮説を本明細書中で立てる。従って、aDCのサイトカインレベルを、腫瘍へとaDCを注射する前に評価した。IL−12p40が生存と有意に関連していることが観察された。IL−12p40は、IL−12p70ともいわれるヘテロダイマーIL−12複合体のうちの1つのサブユニットである。IL−12は、ナチュラルキラー細胞および成熟T細胞を刺激することが公知である。それは、抗腫瘍活性を有するT
H1細胞へとT
H2細胞を変換する一助となることもまた公知である(Del Vecchioら, Clin. Cancer Res. 12:4677−4685, 2007)。従って、IL−12p40生成aDCは、有効なDCワクチンにとって理想的である。さらに、IL−8分泌は、生存と関連した。具体的には、高いIL−8分泌は、有意により高い全生存を示した。IL−8は、がんと負に関連すると主に考えられている。IL−8は、血管形成、細胞増殖、および細胞生存を促進する;しかし、それはまた、腫瘍微小環境への免疫細胞の浸潤を促進する(Waugh and Wilson, Clin. Cancer Res. 14:6735−6741, 2008)。BCG免疫療法の場合、IL−8は、抗腫瘍免疫応答の発生と関連した(de Boerら, Urol. Res. 25:31−34, 1997)。IL−8生成aDCの局所適用が、腫瘍への免疫細胞の浸潤を刺激した可能性がありそうである。さらに、回帰モデルは、その2種の組み合わせが、生存と正に関連することを示した。この観察は、IL−8およびIL−12p40(およびおそらく他のサイトカイン)の組み合わせが、個々のサイトカインよりむしろ、改善された生存の鍵であり得ることを示す。現在では、生存と相関することが示されたその分泌されたサイトカインが直接的な機能的重要性を有するか否か、またはそれらが全体的なDCの有効性の感度の高い尺度として働いているか否かは、不明である。患者のベースラインパラメーターと、サイトカイン生成によって測定される場合のDCの有効性との間で観察された関連性は、SLDおよびALCのような因子が、患者をDCベースの療法からより大きな利益を得やすくし得ることを示唆するが、R
2値は、これらのベースラインパラメーターが、サイトカインレベルにおける変動のうちの25%までを説明するに過ぎないことを示唆する。この可能性は、より均質な患者集団を用いたその後の研究においてさらなる注目される価値があり、さらなる調査の対象になる。
【0108】
aDC処置患者のさらなる生存分析は、8週目でのSDが生存と有意に相関することを示した。これらのデータは、腫瘍がaDCによって安定化され得る場合、進行なしの生存のオッズが有意に増大することを示す。従って、どのサイトカインが、8週目でのSDと関連するかを調査した。サイトカインレベルの分析は、TNFαが8週目でのSDと正に関連することを示した。TNFαは、DC成熟化ならびにT細胞感作、増殖、および動員を含む免疫応答をアップレギュレートすることと広範囲に関連する十分に特徴付けられたサイトカインである(Calzasciaら, J. Clin. Invest. 117:3833−3845, 2007; van Horssenら, Oncologist 11:397−408, 2006)。ヒト研究は、TNFαの患肢灌流が局所的に進行した軟組織肉腫を処置するために使用され得ることを示した(Eggermontら, Lancet Oncol. 4:429−437, 2006)。さらに、TNFαは、マウスにおいて抗腫瘍免疫応答にとって極めて重要であることが示された(Calzasciaら, J. Clin. Invest. 117:3833−3845, 2007)。TNFαとの間での本明細書で観察された正の関連性は、これらの結果と一致する。有意な内部相関がまた、IL−6、IL−8、およびIL−12p40との間で観察された;しかし、明らかな有意性は、生物学的に関連するものよりむしろ、IL−8とIL−12p40との間の内部相関の結果であり得る。あるいは、上記で考察されるように、それは、全体的なDC有効性の反映であり得る。この仮説は、生存とaDCの表面でのMHC−IIおよびCD86(重要なDC成熟化のマーカー)の発現との間の相関的傾向によって裏付けられる(Steinman and Banchereau, Nature 449:419−426, 2007)。
【0109】
活性化されたDC(aDC)が、固形腫瘍を有する患者にとっての安全で、実現可能な処置選択肢であることは、本明細書で示されてきた。特定のサイトカインが、1もしくはこれより多くがaDCによって分泌される場合に、疾患の安定化をもたらし、長期間の生存を生じることが同定された。上記のデータを考慮すると、aDCが、切除できない、局所的に進行したまたは転移性の固形腫瘍を有する患者の生存を、複数の固形腫瘍における顕著な毒性なしで延ばすための有望な処置であり、局所的および全身的な免疫応答を誘起し得ることは、明らかである。臨床転帰(例えば、疾患の安定化および生存)は、インビトロでのサイトカイン生成のようなDC有効性尺度と有意に関連する。
【0110】
本明細書での結果に基づいて、(i)活性化された樹状細胞の腫瘍内(i.t.)注射が安全でありかつ十分に許容される;(ii)活性化されたDCのi.t.注射後の臨床転帰が、サイトカイン生成によって測定されるDC有効性と相関する;(iii)個々のサイトカインが、臨床転帰パラメーターとの異なる関連性を示す、ということが見出された。これは、DC機能と、考えられる治療上の利益との間の複雑な相関を示唆する。
【0111】
例証的な実施形態が例証されかつ記載されてきた一方で、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更がそこで行われ得ることは認識される。
独占的所有権または独占権が請求される本発明の実施形態は、以下のとおりに定義される。