特許第6980685号(P6980685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980685
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】カム制御式多方向操向可能ハンドル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20211202BHJP
   A61M 25/01 20060101ALI20211202BHJP
   A61F 2/24 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   A61M25/092 510
   A61M25/01
   A61M25/092 500
   A61F2/24
【請求項の数】28
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-549463(P2018-549463)
(86)(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公表番号】特表2019-509135(P2019-509135A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(86)【国際出願番号】US2017023034
(87)【国際公開番号】WO2017165229
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2020年2月20日
(31)【優先権主張番号】62/311,031
(32)【優先日】2016年3月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/453,735
(32)【優先日】2017年3月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バオ・クウ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ティー・ウィンストン
(72)【発明者】
【氏名】アッシャー・エル・メトチク
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ロバート・ディクソン
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−275766(JP,A)
【文献】 特開2010−069299(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0089125(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0234280(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
A61M 25/01
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向可能なカテーテルのための制御ハンドルであって、
遠位および近位方向に延びる長手方向軸線を画定するハウジングと、
前記ハウジングに対して軸方向に動作可能であり、かつ、前記ハウジングに対して前記長手方向軸線の周りに回転方向に動作可能であるカム部材と、
少なくとも一つのフォロアが前記ハウジングに対する前記カム部材の動きに応答して前記ハンドルに対して動作するように前記カム部材と係合させられた少なくとも一つのフォロアと、
前記少なくとも一つのフォロアに対して結合され、かつ、前記ハウジングに対する前記少なくとも一つのフォロアの位置に基づいて前記カテーテルの屈曲をもたらすために前記ハンドルから前記操向可能なカテーテル内へと遠位方向に延びるプルワイヤと
を具備する、制御ハンドル。
【請求項2】
フレックスノブをさらに備え、その回転によって前記カム部材の軸方向調整がなされる、請求項1に記載のハンドル。
【請求項3】
前記フレックスノブは、前記ハウジングに対する前記フレックスノブおよび中心シャフトの回転を可能とすると共に前記ハウジングに対する前記フレックスノブおよび中心シャフトの軸方向動作を制限するために、前記カム部材を軸方向に貫通して延びる前記中心シャフトに対して固定され、かつ、前記ハウジングと回転方向に係合させられる、請求項2に記載のハンドル。
【請求項4】
前記中心シャフトは、前記ハウジングに対する前記フレックスノブの回転が前記ハウジングに対する前記カム部材の軸方向動作を引き起こすように、前記カム部材と係合させられる、請求項3に記載のハンドル。
【請求項5】
前記カム部材に対して固定されたポジションノブをさらに備え、前記ポジションノブの回転によって前記カム部材の回転調整がなされる、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項6】
前記カム部材は、前記少なくとも一つのフォロアと接する一つの軸方向端部に接触面を備え、前記接触面は、前記ハンドルの前記長手方向軸線を中心とする周方向位置の関数として軸方向位置が変化する斜面を有する、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項7】
前記カム部材の接触面の傾斜は、前記カム部材が前記ハンドルの前記長手方向軸線を中心として回転させられるとき前記少なくとも一つのフォロアが漸進的に軸方向に動くように、前記接触面の周りを周方向に移動する軸方向位置が漸進的に変化する、請求項6に記載のハンドル。
【請求項8】
前記カム部材の接触面は、前記ハンドルの中心シャフトの周りに円周方向に延びる環状面を備える、請求項6または請求項7に記載のハンドル。
【請求項9】
前記カム部材の接触面は、前記ハンドルの前記長手方向軸線に対して平行でも垂直でもない斜面を画定する平面である、請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項10】
前記少なくとも一つのフォロアは、それぞれが前記プルワイヤのそれぞれのものに結合された独立して動作可能な複数のスライダーを備える、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項11】
前記スライダーは、前記ハウジングに対して軸方向にのみ移動するように拘束される、請求項10に記載のハンドル。
【請求項12】
前記ハウジングに対して前記カム部材を回転させることにより、前記スライダーの一つ以上が前記ハウジングに対して近位方向に移動させられ、同時に前記スライダーの一つ以上が前記ハウジングに対して遠位方向に移動させられる、請求項10または請求項11に記載のハンドル。
【請求項13】
前記カム部材の軸方向移動によって、前記スライダーの全てが同じ軸方向に移動させられる、請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項14】
前記少なくとも一つのフォロアが、前記カム部材が前記少なくとも一つのフォロアから離れるように移動するときに前記少なくとも一つのフォロアが前記カム部材と接触したままであるように、前記カム部材に向かって付勢される、請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項15】
前記少なくとも一つのフォロアはジンバル機構を備える、請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項16】
前記ジンバル機構はジンバルリングとジンバルプレートとを備える、請求項15に記載のハンドル。
【請求項17】
前記ジンバルリングは前記ハウジング内に回動可能に結合され、かつ、前記ジンバルプレートは前記ジンバルリング内に回動可能に結合される、請求項16に記載のハンドル。
【請求項18】
前記プルワイヤが前記ジンバルプレートに結合される、請求項16または請求項17に記載のハンドル。
【請求項19】
前記カム部材が前記ジンバルプレートと接触している、請求項16ないし請求項18のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項20】
前記ジンバルプレートは、そこで前記カム部材が前記ジンバルプレートに接触する一つ以上のバンプまたは谷を備え、前記カム部材が前記一つ以上のバンプまたは谷に接触するときに前記ジンバルプレートに対する前記カム部材の軸方向位置がわずかに調整される、請求項19に記載のハンドル。
【請求項21】
前記カム部材の位置が前記ジンバル機構の向きを決定し、かつ、前記ジンバル機構の向きが前記プルワイヤの軸方向位置を決定する、請求項15ないし請求項20のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項22】
前記プルワイヤは、前記ジンバル機構におけるワイヤガイドの周りに巻き付けられる、請求項15ないし請求項21のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項23】
前記少なくとも一つのフォロアがボール・ソケット機構を備え、前記カム部材が前記ボール・ソケット機構のソケット部分に接触する、請求項1ないし請求項22のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項24】
前記少なくとも一つのフォロアから前記プルワイヤの少なくとも一つに動作を伝達するラック・ピニオン機構をさらに備える、請求項1ないし請求項23のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項25】
前記カム部材の前記軸方向および円周方向位置の一つを、前記カム部材の前記軸方向および周方向位置の他方の動きを可能としながら、選択的に固定するよう構成されたクラッチ機構をさらに備える、請求項1ないし請求項24のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項26】
前記ハンドルは、ユーザーが、取り付けられたカテーテルの半径方向の屈曲の大きさを独立して調整し、かつ、前記半径方向の屈曲が向けられる周方向角度を調整することを可能とすることができる、請求項1ないし請求項25のいずれか1項に記載のハンドル。
【請求項27】
取り付けられたカテーテルの半径方向屈曲の大きさおよび前記半径方向屈曲が向けられる周方向角度は、前記カテーテルをその長手方向軸線の周りで回転させることなく、前記ハンドルを用いて調節可能である、請求項26に記載のハンドル。
【請求項28】
カテーテルに結合された請求項1に記載のハンドルを備えたアセンブリであって、前記プルワイヤは前記カテーテルの軸方向長さに沿って延在し、かつ、前記ハンドルは、前記カテーテルの半径方向の屈曲の大きさを調整すると共に前記半径方向の屈曲が向けられる周方向角度を調整するよう動作可能である、アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、取り付けられたカテーテルまたはその他の経管腔デバイスを操向するための制御ハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
開胸手術よりも侵襲性の低い様式で、フレキシブルな経血管カテーテルを使用して、心臓弁のようなプロテーゼデバイスを患者の体内に導入して移植するための経血管技術が開発されている。典型的なカテーテル制御システムは、例えばカテーテルの長手方向軸線に対して垂直な二つの直交軸線に関して、カテーテルの遠位端部の限られた屈曲のみを可能にする。例えば、従来のカテーテル制御ハンドルは、レバーまたはダイヤルを作動させることによりカテーテルの遠位先端が長手方向軸線の一方の側へと半径方向に撓むように、カテーテルの一方の側に沿って延びるプルワイヤに連結されたレバーまたはダイヤルを含むことができる。遠位先端を別な方向へと撓ませるために、典型的には、別なプルワイヤに結合された追加のレバー/ダイヤルを作動させることが必要である。したがって、複数の作動デバイスは、典型的には、所望の周方向に所望の程度の半径方向の屈曲を発生させるために、慎重な組み合わせまたは順序で同時に作動させられる必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書には、取り付けられたカテーテルの改善された操向性を提供するためにカムベース機構を利用するカテーテル制御ハンドルが開示される。互いに独立してカテーテルの屈曲の円周方向角度および半径方向の大きさを決定するためにカムベース機構を利用することによって、ユーザーによる屈曲のより直接的かつ精細な制御が可能となる。いくつかの開示された実施形態は、カテーテルプルワイヤの張力を制御するために傾斜したカム面に沿って乗るカムフォロアとして軸方向に動作可能なスライダーを使用し、一方、他の実施形態は、カムフォロアとしてボール・ソケット機構を使用し、さらに他の実施形態はカムフォロアとしてジンバル機構を使用する。開示された制御ハンドルは、患者の体内でカテーテル全体を回転させることなく、取り付けられたカテーテルの半径方向の屈曲の大きさおよび半径方向の屈曲が生じる周方向の角度の両方の独立した制御を可能にする。半径方向の屈曲角度の調整を継続的に可能としながら周方向の屈曲角度を固定するためにクラッチ機構を組み込むこともできる。
【0004】
ハンドルはフレックスノブを備えることができ、その回転によってカム部材の軸方向調整がなされる。フレックスノブは、ハウジングに対するフレックスノブおよび中心シャフトの回転を可能とすると共にハウジングに対するフレックスノブおよび中心シャフトの軸方向動作を制限するために、カム部材を軸方向に貫通して延びる中心シャフトに対して固定することができ、かつ、ハウジングと回転方向に係合させることができる。中心シャフトは、ハウジングに対するフレックスノブの回転がハウジングに対するカム部材の軸方向移動を引き起こすように、カム部材と係合させることができる。
【0005】
ハウジングは、カム部材に対して固定されたポジションノブをさらに備えることができ、このポジションノブの回転はカム部材の回転調整を引き起こす。ポジションノブおよびフレックスノブは、ハンドルの遠位端部に隣接してまたはハンドルの近位端部に隣接して配置することができる。
【0006】
カム部材は、フォロアと接する一つの軸方向端部に接触面を備えることができ、かつ、接触面は、ハンドルの長手方向軸線を中心とする周方向位置の関数として軸方向位置が変化する傾斜を有することができる。カム部材接触面の傾斜は、カム部材がハンドルの長手方向軸線の周りを回転させられるときフォロアが漸進的に遠位方向または近位方向に移動するように、接触面の周りを周方向に移動する軸方向位置が漸進的に変化し得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、各プルワイヤは、回転および平行移動可能なカム部材に沿ったその接触位置に応じてハンドルの長手方向溝に沿ってスライドするそれ自身のスライダーまたはフォロアに結合される。カム部材の回転によりスライダーのいくつかが遠位方向に移動させられかつスライダーのいくつかが近位方向に移動させられ、屈曲の方向の変化を引き起こす。カム部材の直線的な平行移動は、全てのスライダーを遠位方向または近位方向のいずれかに一緒にスライドさせ、屈曲の程度に変化を引き起こす。
【0008】
いくつかの実施形態では、ソケットがフォロアとして機能すると共にプルワイヤに対して結合されるようにボール・ソケット機構が組み込まれ、ソケットは、カム部材との接触に応答してボールの周りを関節運動する。同様に、カム部材の回転および平行移動は、屈曲の方向および屈曲の程度に独立した変化を引き起こす。
【0009】
いくつかの実施形態では、カムフォロアとして機能するように、ハンドルにジンバル機構を組み込むことができる。プルワイヤはジンバル機構の内側プレートに対して結合することができ、内側ジンバルプレートは、ジンバルプレートと接触するカム部材の回転および平行移動によってハウジングに対して多次元的に作動させることができる。いくつかの実施形態では、プルワイヤに張力を加える際に機械的利点を提供するために、プーリシステムをハンドルに組み込むことができる。いくつかの実施形態では、プルワイヤに張力を加える際に機械的利点を提供すると共にカム/ジンバル機構に対してプリワイヤを結合するために、ハンドルにラック・ピニオン機構を組み込むことができ、これは、プルワイヤへの曲げおよびダメージを回避するのを助けることができる。
【0010】
開示された技術の上記およびその他の目的、特徴および利点は、添付図面を参照してなされる以下の詳細な説明からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】プロテーゼ心臓弁用のデリバリーカテーテルのような経血管処置を行うための例示的なカム制御式の多方向操向可能な制御ハンドルの斜視図であり、これはカムの表面に沿って乗る複数のスライダーおよび連結されたカテーテルの制御された運動を含む。図21はカテーテルに結合された図1のハンドルを示す。
図2図1の制御ハンドルの分解斜視図である。
図3】ボール・ソケットカム機構を含む、経血管デバイス用の別なカム制御式の操向可能なカテーテル制御ハンドルの一部の斜視図である。
図4】ジンバル機構を含む例示的なカム制御式多方向操向可能カテーテル制御ハンドルの斜視図である。
図5】ジンバル機構を含む例示的なカム制御式多方向操向可能カテーテル制御ハンドルの斜視図である。
図6】ジンバル機構を含む例示的なカム制御式多方向操向可能カテーテル制御ハンドルの斜視図である。
図7図4のハンドルの側面図である。
図8図4のハンドルの側断面図である。
図9図4のハンドルの斜視断面図である。
図10図4のハンドルのさまざまな状態を示す側面図である。
図11図4のハンドルのさまざまな状態を示す側面図である。
図12図4のハンドルのさまざまな状態を示す側面図である。
図13】ジンバル機構を含む別な例示的カム制御式多方向操向可能ハンドルの斜視図である。
図14図13のハンドルの側断面図である。
図15図13のハンドルの側面図である。
図16図13のハンドルのさまざまな状態を示す側面図である。
図17図13のハンドルのさまざまな状態を示す側面図である。
図18図13のハンドルのさまざまな状態を示す側面図である。
図19図13のハンドルのさまざまな状態を示す側面図である。
図20】プルワイヤに張力を加える際の機械的利点のためにラック・ピニオン機構を利用するカテーテル制御ハンドル用の代替的ジンバルベースワイヤ駆動機構を示す概略図である。
図21】フレキシブルカテーテルに結合された図1の制御ハンドルを示す図であり、制御ハンドルを用いたカテーテルの操向性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1および図2は、取り付けられたカテーテルのためのカム制御される多方向操向性を提供する例示的なカテーテル制御ハンドル10を示している。ハンドルの遠位端部40は、患者に挿入するための経血管カテーテル(図21のシステム500参照)またはその他の細長い操向可能な管状デバイスに結合することができ、一方、近位端部41は、ハンドル10および取り付けられたカテーテルを通るその他のデバイスおよび/または流体の通過のための管腔アクセスを含むことができる。
【0013】
ハンドル10は、それに沿ってスライダー22がスライドする傾斜した近位面46を有するカム部材16を備えることができる。スライダー22は、それがカムフォロアとして作用するように軸方向動作のみに拘束される。スライダー22は、スロット68内のスライダー22の軸方向の動きが、関連付けられたプルワイヤに張力を加え/変化させるように、カテーテルの側面に沿って延びるプルワイヤに結合することができる。いかなる数のスライダーおよびプルワイヤを含んでいてもよい。
【0014】
ハンドル10は、カム16の軸方向並進動作を引き起こす第1のノブ42(本明細書では「フレックスノブ」と呼ぶ)と、カム16の周方向回転を引き起こす第2のノブ60(本明細書では「ポジションノブ」と呼ぶ)と、フレックスノブ42を介したカムの軸方向位置の調整を可能としながら第2のノブ60によって選択されたカム16の回転位置をロックするためにクラッチまたはブレークとして機能するオプションとして第3のノブ34(本明細書では「クラッチノブ」と呼ぶ)とを含むことができる。
【0015】
フレックスノブ42を回転させることにより、ユーザーはカム16をハンドルの残部に対して軸方向に移動させることができ、これはスライダー22の全てを対応する距離だけ軸方向に移動させるが、これは、今度は、スライダーに取り付けられたプルワイヤの全ての張力を一緒に増減させ、取り付けられたカテーテルの遠位先端の半径方向の屈曲の度合いを変化させる(だが、屈曲したカテーテル先端の周方向角度に対しては必ずしも変化しない)。
【0016】
ユーザーは、ポジションノブ60を回転させることによって、カム16およびその傾斜端面46をハンドルの中心軸線の周りで回転させ、一つ以上のスライダー22をスロット68内で遠位方向に移動させると共に一つ以上の他のスライダーをスロット68内で近位方向に移動させることができ、これに依存して傾斜端面46の一部が各スライダー22と接触状態となる。これによって一つ以上のプルワイヤの張力を増大させ、同時に一つ以上のプルワイヤの張力を減少させることができ、この結果、(患者の内部でカテーテル全体を回転させることなく)取り付けられたカテーテルの屈曲した遠位先端がその中心軸線の周りで回動し、それが半径方向に屈曲させられる周方向角度を変化させる。
【0017】
したがって、フレックスノブ42およびポジションノブ60のそれぞれは、単一のノブの調整によって、全てのスライダー22および関連するプルワイヤを個別に調整することができ、ノブ42および60のそれぞれは、カテーテルの遠位先端への、非常に異なるが補足的な合成的調整をもたらすことができる。
【0018】
一つの例示的な方法では、直線状先端チップを有する取り付けられたカテーテルから始まって、ユーザーはまずフレックスノブ42を十分な量だけ回転させて、カテーテルの遠位先端を直線状位置の長手方向軸線から所望の角度まで(例えば直線から30度の屈曲角度まで)半径方向に屈曲させることができる。この屈曲は、周方向動作を伴わない、全く半径方向のものであってもよい(例えば半径方向屈曲は、遠位先端がゼロ度の固定周方向角度にある間に半径方向屈曲が生じ得る)。次に、ユーザーはポジションノブ60を回転させて、それが半径方向に屈曲させられるカテーテルの遠位先端の周方向角度を徐々に変化させることができる。例えば、ポジションノブ60を一方向に回転させると、遠位先端の周方向角度を時計回りに変化させることができ、一方、ポジションノブを反対方向に回転させると、周方向角度を反時計回りに変化させることができる。周方向角度のこの変化は、遠位先端の半径方向屈曲の程度を維持しながら引き起こすことができる。さらに、ポジションノブ60を使用して遠位先端屈曲の周方向角度を変更する場合、カテーテル自体を患者の内部で回転させる必要はない。代わりに、カテーテルの遠位先端は、真っ直ぐな状態から異なる周方向に単純に屈曲させられ、カテーテルの残部は静止したままとすることができる。
【0019】
別の例示的な方法では、直線状の遠位先端を有する取り付けられたカテーテルから始まって、ユーザーはまず、ポジションノブ60を回転させて、カム16をカテーテルの遠位先端の所望の屈曲方向に対応する選択された周方向位置まで(例えば指定された基準ポイントから時計回りに270度)回転させることができる。次に、ユーザーは、フレックスノブ42を十分な量だけ回転させて、カテーテルの遠位先端を、所望の方向に、真っ直ぐな位置の長手方向軸線から所望の角度まで(例えば真っ直ぐな状態から30°の屈曲角度まで)半径方向に屈曲させることができる。この屈曲は、周方向の動きがない(例えば遠位先端が270度の固定された周方向角度にある間にゼロから30度までの半径方向屈曲が生じてもよい)、完全な半径方向のものであってもよい。さらに、所望の周方向角度がポジションノブ60によって設定された後、フレックスノブ42を用いて遠位先端の半径方向屈曲を可能としながら、クラッチノブ34を係合させて周方向角度を固定することができる。
【0020】
図1および図2に示すように、ハンドル10は、遠位ノーズコーン12と、フレックスノブ41およびネジ付きボディ44を含むことができるフレックスコンポーネント14と、カム16と、ピン18と、遠位ボディおよびスライダー溝52を有する近位ボディ50を含む静止スライダーガイド20と、それぞれ外側に突出するピン54を有するスライダー22と、ディスク部分56および近位シャフト58を有するバックプラグ25と、位置決めノブ60およびスロット/溝68を有する近位シリンダー64を含む位置決めコンポーネント26と、ワッシャ28と、スペーサ30と、外側シース32と、クラッチノブ34と、近位ガスケット36と、近位端部41を形成する近位端部キャップ38とを含む。さまざまなリテーナー/ファスナー(例えば保持リング70)を含むこともできる。図1に示すように、スライダー22は、そのスライダーピン54がカム16の半径方向寸法まで突出している間に溝52に沿って軸方向にスライドすることができる。カム16は、近位ボディ50と近位シリンダー64との間に配置され、スライダーピン54はカム16の傾斜した近位端面46に接触する。カム16は、位置決めノブ60の回転がカムを回転させ、同時に近位シリンダー64が固定スライダーガイド20と位置決めコンポーネント26との間でカムが軸方向にスライドすることを可能とするように位置決めコンポーネント26に結合させることができる。
【0021】
フレックスコンポーネント14の回転が静止スライダーガイド20および位置決めコンポーネント26のシリンダー64に対して軸方向にカムを駆動するように、フレックスコンポーネント14のネジ付きボディ44を静止スライダーガイド20の遠位ボディ48の周囲に配置し、そしてまたカム16に対して係合させることができる。
【0022】
クラッチノブ34は、係合位置と係合解除位置とを有することができる。係合位置にあるとき、フレックスノブ42がカム16を軸方向に駆動すると共に遠位先端の半径方向屈曲の程度を変化させることを可能としながら遠位先端の周方向角度が固定されるようにポジションノブ60をロックすることができる。クラッチノブ34が係合解除位置にあるとき、フレックスノブおよびポジションノブの両方が機能し得る。
【0023】
スライダー22のそれぞれは、ハンドル10を通って、遠位端部40から、取り付けられたカテーテルに沿って遠位方向に延びるプルワイヤの一端に取り付けることができる。ハンドル10は、二つ、三つ、四つまたはそれ以上のスライダーおよび関連するプルワイヤを含むことができる。四つのスライダー22が図示された実施形態には含まれ、各スライダー22は円周方向に互いに約90度離間して配置される。
【0024】
カム16の傾斜した近位端面46は、屈曲角度の精密制御と、屈曲角度を調整するために必要なノブ回転の最小量との間の所望のバランスを提供するように構成することができる。例えば、カムの傾斜が急であると、フレックスノブの回転度数当たりの半径方向屈曲の変化がより大きくなり、一方、傾斜の緩やかなカム面は、正確な屈曲角度のより精密な制御を実現する。
【0025】
傾斜端面46は、ハンドルの長手方向軸線周りの周方向位置の関数として軸方向位置が変化する傾斜を有するスライダー接触面を備える。接触面の傾斜は、カムがハンドルの長手方向軸線の周りを回転させられるときスライダーが近位方向および遠位方向に漸進的に移動するように、接触面の周りを周方向に移動する軸方向位置が漸進的に変化し得る。接触面は、ハンドルの中心シャフトおよび/または中心管腔の周りに周方向に延びる環状表面を備えることができる。接触面は、ハンドルの長手方向軸線と平行でもなく垂直でもない斜面を画定する平面などの平面または非平面輪郭を含むことができる。
【0026】
フレックスノブ42およびポジションノブ60は同時にまたは個別に回転させることができる。例えば、例示的な方法では、二つのノブを同時に(同じ回転方向または反対の回転方向に)回転させることができる。二つのノブの同時回転は、カム16を軸方向にスライドさせると共に同時に周方向に回転させることができ、これによってカテーテルの遠位先端は、その半径方向屈曲角度を変化させる共に屈曲の周方向の向きを変化させる。
【0027】
ハンドル10は、片手または両手で手動操作することができる。ノブ42および60が互いに近接しているので、ユーザーは、ハンドル10を保持したまま、片手で両方のノブを操作することができる。
【0028】
開示された制御ハンドルにおけるカム機構を使用することにより、カム機構はアナログ調整機構を提供できるために、取り付けられたカテーテルの遠位先端の所望の屈曲位置を選択する際に無限の選択度を提供することができる(図21参照)。さらに、制御ハンドル10に関して、スライダー22の数の増大および/またはスライダー22に組み込まれかつ結合される異なるプルワイヤの数の増大は、本明細書に記載されたアナログ制御システムの滑らかさを改善することができる。
【0029】
図21を参照すると、フレックスノブ42を回転させることによって、図21に示す四つの例示的な半径方向R1,R2,R3,R4のいずれか、あるいは図示された方向間の方向といった半径方向にカテーテル520は屈曲させられる。カム部材16がその遠位位置にあるとき、図21に位置P1によって示されるように、カテーテルを弛緩させることおよび/または弛緩させないことが可能である。カム部材が近位方向に駆動されて、スライドをそれと共に近位方向に移動させるとき、プルワイヤが引っ張られ、カテーテルを半径方向に、例えば図21においてP1,P2,P3,P4が付された屈曲位置のいずれかまで屈曲させる。カテーテルが屈曲する周方向角度はポジションノブ42の位置によって決定される。ポジションノブの回転位置は、Cが付された方向への屈曲カテーテルの周方向動作に対応することができる。例えば、カテーテルが、現在、屈曲位置P4にある場合、(フレックスノブが静止している間)60度のポジションノブの回転は、(カテーテルがその中心の長手方向軸線の周りを回転しない間)カテーテルを破線に沿って位置P3または位置P5へと動作させることができる。カテーテルが、現在、非屈曲位置P1にある場合、ポジションノブの回転はカテーテルのいかなる動作も(その中心長手方向軸線周りのカテーテルの回転さえも)引き起こさないが、フレックスノブが続いて回転させられるときにカテーテルが屈曲する半径方向(例えば、R1,R2,R3,R4)を決定することができる。フレックスノブ42とポジションノブ60とを組み合わせて(同時にまたは一度に一つずつ)調節することにより、患者の身体内でその中心長手方向軸線の周りにカテーテルを回転させることなく、(破線円が最大屈曲度を表すと仮定して)カテーテル520を図21の破線円内の任意の屈曲位置へと操向することができる(例えば血管内でのカテーテルの回転は血管の内層を損傷させる可能性がある)。
【0030】
図3は、遠位端部104および近位端部106を有する中心管状シャフト102,103と、シャフトに固定された遠位コンポーネント110と、ソケット112と、ソケット内のシャフトに取り付けられたボール120とを備えた別の例示的な制御ハンドル100を示している。遠位コンポーネント110は、フレックスノブ114と、ソケット112の遠位係合面124と接触する近位方向に延びるカムフィンガー118を備えたカム本体116とを含む。カムフィンガー118に対するソケット112の回転方向(例えばソケットを回転させることによって選択される)は、どの程度、ボール120に対してソケットが傾斜するかを決定し、これはカテーテルの遠位先端の周方向屈曲角度を決定する。ソケット112に対するカムフィンガー118の軸方向位置(例えばフレックスノブ114の回転によって選択される)は、カテーテルの遠位先端の軸方向屈曲の大きさを決定する。ソケット112は、その外周の周りにノッチ126および溝128,130を有する。複数のガイドワイヤは、その外周の周りでソケットに結合されかつ遠位方向にカテーテル内へと延びている。
【0031】
図4ないし図12は、いくつかの異なるプルワイヤの張力を制御するためにジンバル機構とインターフェースするカム部材を含む別の例示的な制御ハンドル200を示している。ハンドル200は、遠位端部212と、外側ジンバルリング216および内側ジンバルプレート218を含むジンバル機構を収容する近位内部キャビティ214とを有するハウジング210を備える。リング216はピボットジョイント250においてハウジング210に対して回動可能に取り付けられ、これによってリングは、ハンドルの長手方向軸線に垂直なジョイント250を通るリング軸線の周りでハウジングに対して回転することができる。プレート218は、リング軸線に対して垂直なジョイント252を通るプレート軸線の周りでプレートがリングに対して回転することができるように、ピボットポイント252においてリング216に対して回動可能に取り付けられる。プレート軸線およびリング軸線はハウジング軸線の周りで回転方向に固定されるが、プレートは、リングがジョイント250によってハウジングに対して回動するとき、そしてプレートがジョイント252によってリングに対して回動するとき、ハウジングに対して多方向に回動することができる。
【0032】
ジンバルプレート218は、ハンドルの各プルワイヤ222のためのワイヤ係合部220を含む。2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本またはそれ以上のプルワイヤ222が存在してもよい。4本のプルワイヤ222が例として示されている。各ワイヤ222はハンドル内の通路226を通り、遠位開口228から、取り付けられたカテーテルまたはその他の同様の操向可能なデバイス内へと延在する。図21は例示的なカテーテルを示している。図示されているように、ワイヤ222は、ワイヤの端部224がハウジング上の固定取り付けポイントまで遠位方向へと戻るように延在するように、ジンバルプレート218内のそれぞれのワイヤ係合部220の周りに任意選択的に巻き付けることができる。そのような実施形態では、ワイヤ係合部220は、丸いペグ、プーリーまたはプレートが関節運動する際に最小限の摩擦および捩れしか伴わずにワイヤがワイヤ係合部の周りをスライドするのを容易にするためのその他の機構を含むことができる。この構成は、カテーテル内のワイヤの遠位端部をプレート内のワイヤ係合部が移動する速度の2倍で移動させながら、ワイヤに加えられる引っ張り力を効果的に半分にする機械的な利点を提供することができる。代替実施形態では、ワイヤは、機械的な利点を伴わずにジンバルプレート内のワイヤ係合部220において終端することができるが、これはワイヤの屈曲を防止することができる。
【0033】
ハンドル200は、ハウジング210に結合された遠位端部232と、ジンバルプレート218の開口219を通りかつカム部材234を通過する中間部分と、近位フレックスノブに固定的に結合された近位部分とを有する中心シャフト230を含む。遠位端部232は、ハウジングおよびジンバル機構に対するシャフト230およびノブ240の回転を可能にするがハウジングおよびジンバル機構に対するシャフト230およびノブの長手方向の動きを防止する回転ベアリングを介して、ハウジングに対して結合される。図示されていないが、中心シャフト230およびフレックスノブ240は、それらの全長にわたって延びる中央管腔を含むことができる。ハウジング210はまた、シャフト230の遠位端部からハンドルの遠位端部212まで延びる中央管腔を含むことができる。組み合わされて、ハンドル200の中央管腔は、ハンドルを通りかつ取り付けられたカテーテル内の接続管腔を通って患者に出入りするその他のデバイスおよび/または流体のためのアクセスを提供することができる。
【0034】
ハンドル200はまた、カム部材234に対して固定的に結合されかつフレックスノブ240に対して遠位で中心シャフト230の周りに配置されるインジケータナブ242を有するポジションノブ242を含む。カム部材234および/またはポジションノブ242は、中心シャフト230の外面にネジ方式または螺旋方式で係合させることができる。図7に示すように、ポジションノブ242およびカム部材234に対して(例えばポジションノブをハウジング210に対して静止状態で保持しながらフレックスノブを回転させることによって)フレックスノブ240および中心シャフト230を回転させるとき(矢印1)、ポジションノブおよびカム部材はハウジングおよびジンバル機構に対して遠位方向(矢印2)または近位方向に駆動され、ジンバルプレートを回動させ(矢印3)、全てのプルワイヤの張力を変化させる。
【0035】
フレックスノブ240を使用してカム部材を遠位方向または近位方向に駆動することによって、カテーテルの屈曲の程度が調整される。カムの遠位動作は、ジンバルプレートをより傾けて屈曲の程度を増大させ、カム部材の近位動作は、ジンバルプレートがハンドルの長手方向軸線に垂直なその自然な位置のより近くまで戻ることを可能とし、カテーテルの屈曲を低減する。図21の下側部分を参照すると、フレックスノブ240を回転させることによってカテーテルは半径方向に、例えば図21に示す4つの例示的な半径方向R1,R2,R3,R4に屈曲させられる。カム部材が近位位置にあり、ジンバルプレートがその直立した自然位置にあることを可能にする場合、図21の位置P1によって示されるように、カテーテルを弛緩させることがかつ/または弛緩させないことが可能である。カム部材が遠位方向に駆動されるとき、ジンバルプレートが回転して一方側のプルワイヤが引っ張られ、カテーテルが半径方向へと、例えば図21においてP1,P2,P3,P4が付された屈曲位置のいずれかへと屈曲させられる。カテーテルが屈曲する周方向角度は、ポジションノブ244の位置によって決定される。
【0036】
カム部材234の傾斜端面は、ハンドルの長手方向軸線の周りの周方向位置の関数として軸方向位置が変化する傾斜を有するジンバルプレート接触面を備える。接触面の勾配は、接触面の周りを円周方向に移動する軸方向位置に関して漸進的に変化することができ、この結果、ジンバルプレート218は、カムがハンドルの長手方向軸線の周りを回転させられるにつれて漸進的に関節動作する。いくつかの実施形態では、カム部材234の端部のみがジンバルプレートに接触し、カム部材の同じ端部は、カム部材の動作の回転範囲を通してジンバルプレートと接触したままであり、カム部材の傾斜した接触面の正確な形状はあまり重要ではない。しかしながら、いくつかの実施形態では、接触面は、中心シャフトおよび/またはハンドルの中央管腔の周りに円周方向に延びる環状面を備えることができ、かつ、接触面は、平面輪郭あるいは非平面輪郭、例えばハンドルの長手方向の軸線に対して平行でも垂直でもない傾斜面を画定する平面を備えることができる。
【0037】
図示された例では、カム部材234は、ジンバルプレート218に接触する卵形または楕円形の遠位面を形成する、ほぼ円筒形の半径方向外面および傾斜した平坦遠位面を有する。図示の例では、カム部材の外面は円筒形であり、かつ、カム部材の遠位面は平坦であり、これは遠位面の楕円形の周囲を形成するが、代替実施形態では、カム部材は非円筒形の外面および/または非平坦な遠位面を含むことができ、これは遠位面の非楕円形状をもたらす。さらに、遠位面の輪郭を調整するために、円筒形外面の半径および/または遠位面の勾配を変更することができる。例えば、カム部材の遠位端部における急斜面またはさほど急でない斜面は、ジンバルプレートの動作の程度をより大きくまたはより小さくすることができ、したがってプルワイヤの動作の範囲をより大きくまたはより小さくすることができる。
【0038】
図10ないし図12は、カテーテルが半径方向に屈曲する周方向角度を変化させるためのポジションノブ242の回転を示している。ポジションノブ242の回転位置は、ナブ244またはその他のインジケータによって、視覚的および/または触覚的に指し示すことができる。ポジションノブ242および取り付けられたカム部材234は、ジンバル機構に対して、中心シャフトの周りで360度回転させることができる。ポジションノブの回転位置は、カム部材の遠位エッジがジンバルプレートに接触する場所、したがってカム部材をジンバルプレート内へと駆動するためにフレックスノブが使用されるときにジンバルプレートが傾く方向を決定する。
【0039】
ジンバルリング216およびジンバルプレート218は、プレートが任意の方向へ傾斜することを可能とするように協働し、したがってカテーテルを任意の半径方向に屈曲させる。図10において、リング216は静止しており、かつ、プレート218はプレート軸線を中心に傾いており、ワイヤAは引っ張られ、ワイヤBは緩む。これによりカテーテルはワイヤAの方向に撓む。図11において、リング218はリング軸線を中心として回転し、かつ、プレート216はプレート軸線を中心として回転し、ワイヤAおよびCの両方が引っ張られ、ワイヤBおよびDは緩む。これにより、ワイヤAおよびC間の方向にカテーテルが屈曲する。図12において、プレート218はリング216に対して静止しており、かつ、リングおよびプレートはリング軸線を中心として一斉に回転し、ワイヤCは引っ張られ、ワイヤDは緩む。これによりカテーテルはワイヤCの方向に屈曲する。
【0040】
図21の下側部分を参照すると、ポジションノブの回転位置は、Cを付した方向の屈曲したカテーテルの周方向動作に対応し得る。例えば、カテーテルが、現在、屈曲位置P4にある場合、(フレックスノブがポジションノブに対して静止している間)ポジションノブの90度回転は、(カテーテルがその中心長手方向軸線の周りで回転しない間)破線に沿って位置P3へとあるいは位置P5へとカテーテルを移動させることができる。カテーテルが、現在、非屈曲位置P1にある場合、ポジションノブの回転はカテーテルのいかなる動作も(カテーテルのその中心長手方向軸線周りの回転さえも)引き起こさないが、フレックスノブが続いて回転させられるときにカテーテルが屈曲する半径方向(例えば、R1,R2,R3,R4)を決定できる。
【0041】
フレックスノブとポジションノブとを組み合わせて(同時にまたは一度に一つずつ)調整することにより、カテーテルは、患者の体内でその中心長手方向軸線の周りでカテーテルを回転させることなく(例えば血管内でのカテーテルの回転は血管の内層を損傷する可能性がある)、(破線円が最大屈曲度を表すと仮定して)図21の破線円内の任意の屈曲位置へと操向することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ジンバルプレートは、ジンバルプレート上で円周方向および/または半径方向に高さが変化するバンプおよび/または谷部を備えた非平坦接触面を有することができる。これらは、プレートの周囲で無数のプルワイヤを使用しない離散化効果を補償することができる。例えば、カム部材が2本のワイヤの間でジンバルプレートを押すとき、カテーテルの遠位端部で同じ量の屈曲を得るために、プルワイヤを少し余分に引っ張る必要があるかもしれない。これらのバンプまたは谷部は、ある周方向および半径方向のカム接触位置で、プレートを少しだけ傾斜させることによって、その余分な引っ張りを達成することができる。例えば、完全に平らなジンバルプレートが使用される場合、ポジションノブが2本のプルワイヤ間に屈曲方向が存在するようなときには僅かな非屈曲が発生することがある。(一例として)プルワイヤ係合部間の位置においてジンバルプレート上に漸進的なバンプを設けることで、カムがこのバンプと接触するときにジンバルプレートを少し傾けることによって、この予期される非屈曲を補償することができ、これによって2本のプルワイヤ間の方向における一定の屈曲の程度を維持するために必要とされる付加的なプルワイヤ動作が実現される。
【0043】
図13ないし図19は、いくつかの異なるプルワイヤの張力を制御するためにジンバル機構とインターフェースするカム部材を含む別の例示的な制御ハンドル300を示す。制御ハンドル300は制御ハンドル200と同様に機能するが、主要な相違点は、カテーテルがハンドルの反対側の長手方向端部に接続されると共にプルワイヤが折り返されてハンドルの反対側の長手方向端部から突出し、ハンドル200と比較して近位方向および遠位方向を逆転させることである。
【0044】
ハンドル300は、近位端部314を形成するハウジング310を備え、ハンドルはフレックスノブ322にまたはその近くに遠位端部312を有する。フレックスノブ322は中心シャフト320に対して軸方向に固定され、かつ、ポジションノブ324は、フレックスノブの回転がハウジング内でジンバル機構に対して軸方向にポジションノブおよび固定されたカム部材326を駆動するように、フレックスノブの周囲および/またはその中に、ネジ式係合または螺旋接続状態で配置される。ジンバル機構は、リング軸線の周りでハウジング内に回動可能に取り付けられたジンバルリング316と、ハンドル200と同様にリング軸線に垂直なプレート軸線に沿ったピボットを介してリング内に回動可能に取り付けられたジンバルプレート318とを含む。ハンドル300はまた、ジンバル機構に近接してハウジング310の内部に取り付けられたワイヤガイドプレート330を含む。
【0045】
ハンドル300の各プルワイヤは、ワイヤガイドプレート330に固定された自由端部340と、自由端部340からジンバルプレート318まで遠位方向に、そしてジンバルプレート内でプーリーまたはその他のガイド342の周りで延びる第1の部分と、ジンバルプレートからワイヤガイドプレート330のセカンダリプーリーまたはガイド344へと近位方向に戻るように延び、続いてプーリーまたはガイド344の周りでハンドルの長さに沿って中心シャフト320を通って遠位方向に延びる第3の部分まで延び、ハンドルの遠位端部312を通ってハンドルに結合されたカテーテル内へと延びる第2の部分とを有する。
【0046】
図15は、フレックスノブ322の回転(矢印1)が、どのようにして、カム部材326を軸方向(矢印2)に移動させ、カム部材の遠位縁部がジンバルプレート318および/またはリング316を傾ける(矢印3)かを示している(これが取り付けられたカテーテルの屈曲の程度を調整する)。
【0047】
図16は、ジンバルリング316およびプレート318を備えたハンドル300を、カム部材がそれらを傾けていないときに弛緩位置で示している。この状態では、取り付けられたカテーテルは、弛緩した非屈曲中立位置に存在することができる。図17は、ジンバルリング316が静止したままである間に近位方向に前進させられてジンバルプレート318を傾斜させたカム部材326を示している。これは、選択された半径方向への、取り付けられたカテーテルの屈曲を引き起こす。図18は、ジンバルプレートおよびリングの両方が回動させられるように、カム部材326が図17から数度回転させられたことを示している。これにより、取り付けられたカテーテルは、ほぼ同じ程度だけ、但し図17と比較して対応する異なる半径方向に屈曲させられる。図19において、ジンバルリングはハウジング310に対して回動させられるがジンバルプレートはジンバルリングに対して回動させられないように、カム部材は図17から約90度回転させられている。この位置では、取り付けられたカテーテルは、図17および図18とほぼ同じ程度半径方向に屈曲させられるが、それは図17の位置に対応する方向から約90度の方向に屈曲させられる。
【0048】
ジンバルプレート318がワイヤガイドプレート330に対して動くとき、プルワイヤは二つのプレートのワイヤガイド342および344の周りで関節動作し、カテーテルに所望の屈曲を提供するために、カム部材およびジンバルプレートの相対的に小さな動きを拡大する機械的利点を提供する。ハンドル200と同様、ノブ322および324をプルワイヤに結合する機構システムは、カテーテル屈曲の動作の精密な制御および範囲の所望のバランスを提供するように構成しかつ/または較正することができる。ジンバル機構はまた、カテーテルを患者の体内で回転させることを要さずに、カテーテル屈曲のためのアナログ的で完全な360度の調整範囲を提供する。
【0049】
図20は、プルワイヤを巻き付けるかまたはカールさせることなくワイヤを引っ張るためにジンバル機構を結合するための代替的ハンドルシステム400を示す概略図である。システム400は、その中にジンバルリング412およびジンバルプレート414が取り付けられたハウジング410と、ハウジングに対して固定的に取り付けられた固定ラックギア416と、各固定ラックギア416に対向してプルワイヤ424に結合された可動ラックギア422と、固定ラックギアと可動ラックギアとの間に係合されたローリングピニオンギア418と、ジンバルプレート414から各ピニオンギア418の中心に結合された剛体コネクター部材420とを含む。カム部材(図示せず)はジンバル機構の動作を引き起こすが、これによって剛体コネクター部材420は引っ張られるか押圧され、ピニオンギア418を固定ラックギア416に沿って相応に回転させる。ピニオンギア418が回転する距離の単位ごとに、可動ラックギア422は同じ方向に、ただし2倍遠くへ移動するが、プルワイヤが鋭角の周りで曲がるか屈曲することを必要とするプーリーまたはその他のデバイスを必要とせずに(これは時間が経つにつれてワイヤに損傷を与える可能性がある)、カム部材の動作をプルワイヤのより大きな動作へと拡大する機械的な利点を生み出す。
【0050】
開示された実施形態は、心臓の本来の環(例えば、肺、僧帽弁および三尖環)のいずれかにプロテーゼデバイスを送達し、移植するように適合させることができ、さまざまなアプローチ(例えば、逆行性、順行性、経中隔、経心室、経心房など)と共に使用することができる。開示された実施形態はまた、身体のその他の管腔内にプロテーゼを移植するために使用することもできる。さらに、本明細書に記載されたデリバリアセンブリの実施形態は、人工弁に加えて、ステントおよび/またはその他のプロテーゼ修復デバイスといったさまざまなその他のプロテーゼデバイスを送り込んで移植するように構成することができる。別な実施形態では、開示されたデバイスは、プロテーゼデバイスを移植する以外のさまざまなその他の経血管外科処置を実施するために使用することができる。
【0051】
本明細書の目的のために、本開示の実施形態の特定の態様、利点および新規な特徴が本明細書に記載される。開示された方法、装置およびシステムは、決して限定的であると解釈されるべきではない。むしろ、本開示は、単独でかつ相互のさまざまな組み合わせおよび下位組み合わせで、開示されたさまざまな実施形態の全ての新規かつ自明でない特徴および態様に向けられている。方法、装置およびシステムは、特定の態様または特徴またはその組み合わせに限定されず、開示された実施形態は一つ以上の特定の利点が存在することまたは問題が解決されることを要求しない。
【0052】
開示された実施形態のいくつかの動作は便宜的な提示のために特定の連続した順序で記載されているが、以下で説明する特定の記述によって特定の順序が要求されない限り、この説明の仕方は再構成を包含することを理解されたい。例えば、順次記述された動作は、場合によっては、再構成すなわち並行して実施されてもよい。さらに、簡略化のために、添付図面は、開示された方法を他の方法と共に使用することができるさまざまな方法を示していないことがある。さらに、説明は、ときおり、開示された方法を説明するために「提供する」または「達成する」といった用語を使用することがある。これらの用語は、実施される実際の動作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装形態に応じて変化し、当業者によって容易に認識される。
【0053】
本出願および特許請求の範囲において使用される場合、「ある」、「一つの」および「その」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り複数形を含む。さらに、「含む」との用語は「備える」を意味する。さらに、「結合される」との用語は、一般に、物理的、電気的、磁気的および/または化学的な結合または連係を意味し、具体的な相容れない記載がない限り、結合または関連付けられた物品間の中間要素の存在を排除しない。
【0054】
本明細書で使用される場合、「近位」との用語は、デバイスのユーザー/オペレーターのより近くにありかつ患者の身体(例えば心臓)内のデバイスの端部または行き先からさらに遠く離れたデバイスの位置、方向または部分を指す。本明細書で使用される場合、「遠位」との用語は、デバイスのユーザー/オペレーターからさらに遠く離れておりかつ患者の体内のデバイスの端部または行き先により近いデバイスの位置、方向または部分を指す。したがって、例えば、カテーテルの近位動作は身体からのかつ/またはオペレーターに向かうカテーテルの動作(例えば患者の身体からのカテーテルの引き戻し)であり、一方、カテーテルの遠位動作はオペレーターから離れると共にさらに身体内に向かうカテーテルの動作(例えば心臓に向かう身体内へのカテーテルの挿入)である。「長手方向」および「軸方向」との用語は、特に断らない限り、近位および遠位方向に延びる軸線を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「一体的に成形される」および「一体構造」との用語は、溶接部、ファスナーまたは別個に形成された材料片を互いに固定するためのその他の手段を含まない一体構造を意味する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「同時に」または「共に」生じる動作は、概ね互いに同時に生じるが、例えば、ネジやギヤ等の機械的リンケージにおけるコンポーネント間の間隔、遊びまたはバックラッシュに起因する、他方に対する一方の動作の発生に関する遅延は、特に断らない限り、明らかに上記の用語の範囲内にある。
【0057】
本開示の原理が適用され得る多くの可能な実施形態に鑑みて、例示された実施形態は好ましい例であり、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、開示される技術の範囲は少なくとも以下の特許請求の範囲と同様に広範囲である。したがって特許請求の範囲内にある全ておよびその等価物を発明として請求する。
【符号の説明】
【0058】
10 カテーテル制御ハンドル
12 遠位ノーズコーン
14 フレックスコンポーネント
16 カム部材
18 ピン
20 静止スライダーガイド
22 スライダー
25 バックプラグ
26 位置決めコンポーネント
28 ワッシャ
30 スペーサ
32 外側シース
34 クラッチノブ
36 近位ガスケット
38 近位端部キャップ
40 遠位端部
41 近位端部
42 フレックスノブ
44 ボディ
46 近位端面
48 遠位ボディ
50 近位ボディ
52 スライダー溝
54 スライダーピン
56 ディスク部分
58 近位シャフト
60 ポジションノブ
64 近位シリンダー
68 スロット
70 保持リング
100 制御ハンドル
102,103 中心管状シャフト
104 遠位端部
106 近位端部
110 遠位コンポーネント
112 ソケット
114 フレックスノブ
116 カム本体
118 カムフィンガー
120 ボール
124 遠位係合面
126 ノッチ
128,130 溝
200 制御ハンドル
210 ハウジング
212 遠位端部
214 近位内部キャビティ
216 外側ジンバルリング
218 内側ジンバルプレート
219 開口
220 ワイヤ係合部
222 プルワイヤ
224 端部
226 通路
228 遠位開口
230 中心シャフト
232 遠位端部
234 カム部材
240 フレックスノブ
242 ポジションノブ
250 ピボットジョイント
252 ピボットポイント
300 制御ハンドル
310 ハウジング
312 遠位端部
314 近位端部
316 ジンバルリング
318 ジンバルプレート
320 中心シャフト
322 フレックスノブ
324 ポジションノブ
326 カム部材
330 ワイヤガイドプレート
340 自由端部
342,344 ワイヤガイド
400 ハンドルシステム
410 ハウジング
412 ジンバルリング
414 ジンバルプレート
416 固定ラックギア
418 ローリングピニオンギア
420 剛体コネクター部材
422 可動ラックギア
424 プルワイヤ
520 カテーテル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21