特許第6980692号(P6980692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980692絶縁ゲートパワー半導体デバイスおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980692
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】絶縁ゲートパワー半導体デバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20211202BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20211202BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   H01L29/78 652J
   H01L29/78 652M
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 652K
   H01L29/78 655A
   H01L29/78 655D
   H01L29/78 655B
   H01L29/78 658A
   H01L29/78 652F
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-553185(P2018-553185)
(86)(22)【出願日】2017年4月11日
(65)【公表番号】特表2019-514215(P2019-514215A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2017058697
(87)【国際公開番号】WO2017178494
(87)【国際公開日】20171019
【審査請求日】2019年10月15日
(31)【優先権主張番号】16164709.4
(32)【優先日】2016年4月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ−ミキエリス,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】コルバシェ,キアラ
【審査官】 杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−242852(JP,A)
【文献】 特開2008−205015(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0233728(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/054121(WO,A1)
【文献】 特開2010−219361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板を主な材料とする絶縁ゲートパワー半導体デバイス(1)であって、
エミッタ側(22)のエミッタ電極(2)と前記エミッタ側(22)の反対側に配置されたコレクタ側(27)のコレクタ電極(25)と、
前記エミッタ側(22)と前記コレクタ側(27)との間に配置された、第1の導電型のドリフト層(5)と、
前記ドリフト層(5)と前記エミッタ側(22)との間に配置され、前記エミッタ電極(2)に接触する、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型のベース層(4)と、
前記エミッタ側(22)に配置され、前記ベース層(4)によって前記ドリフト層(5)から分離され、前記エミッタ電極(2)に接触するソース層(3)と、
導電ゲート層(70)と、前記導電ゲート層(70)を取り囲んで前記ドリフト層(5)、前記ベース層(4)、および前記ソース層(3)から前記導電ゲート層(70)を分離し、トレンチ底部(76)を有するトレンチゲート電極(7、7’)と、
前記ベース層(4)を前記ドリフト層(5)から分離し、エンハンス層深さ(97)に最大エンハンス層ドーピング濃度を有する、前記ドリフト層(5)のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有する前記第1の導電型のエンハンス層(95)と、
前記トレンチ底部(76)を覆う前記第2の導電型の保護ピロー(8)とを備え、
前記保護ピロー(8)と前記トレンチゲート電極(7、7’)との間のエッジ領域を覆い、最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度を有する、前記ドリフト層(5)のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有する前記第1の導電型のプラズマエンハンス層(9、9’)を備え、
前記第1の導電型のドーピング濃度は前記エンハンス層(95)と前記プラズマエンハンス層(9、9’)との間の局所的なドーピング濃度最小値から前記エミッタ側(22)に向けて前記最大エンハンス層ドーピング濃度まで、および、前記最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度まで上昇し、前記プラズマエンハンス層は前記保護ピロー(8)への接合部において前記最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度を有し、
前記最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度は、前記保護ピロー(8)の最大ドーピング濃度よりも低い、ことを特徴とする、絶縁ゲートパワー半導体デバイス。
【請求項2】
前記最大エンハンス層ドーピング濃度は前記最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の絶縁ゲートパワー半導体デバイス。
【請求項3】
前記最大エンハンス層ドーピング濃度は前記最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度よりも少なくとも2倍高いことを特徴とする、請求項2に記載の絶縁ゲートパワー半導体デバイス。
【請求項4】
前記エンハンス層(95)は、3*1016cm−3よりも低い、2.5*1016cm−3よりも低い、または2*1016cm−3よりも低い最大ドーピング濃度を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の絶縁ゲートパワー半導体デバイス。
【請求項5】
前記局所的なドーピング濃度最小値は前記最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度の半分以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の絶縁ゲートパワー半導体デバイス。
【請求項6】
前記エンハンス層(95)の厚さは3μmよりも小さい、2μmよりも小さい、または1.5μmよりも小さいことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の絶縁ゲートパワー半導体デバイス。
【請求項7】
前記プラズマエンハンス層(9、9’)は、前記保護ピロー(8)が前記ドリフト層(5)から分離されるように前記保護ピロー(8)を取り囲むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の絶縁ゲートパワー半導体デバイス。
【請求項8】
前記プラズマエンハンス層(9、9’)は前記保護ピロー(8)と前記エンハンス層(95)との間のエッジを取り囲むだけであり、前記保護ピロー(8)は前記トレンチ底部(76)下方の前記ドリフト層(5)に接触することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の絶縁ゲートパワー半導体デバイス。
【請求項9】
複数のトレンチゲート電極(7、7’)を備え、各エンハンス層ドーピング濃度プロファイルについての局所的な最大ドーピング濃度が2つの隣接するトレンチゲート電極(7、7’)間の全領域にわたって同じ深さで存在することを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の絶縁ゲートパワー半導体デバイス。
【請求項10】
複数のトレンチゲート電極(7、7’)を備え、前記トレンチゲート電極(7、7’)の各々において、前記トレンチ底部(76)を覆う保護ピロー(8)と、前記保護ピロー(8)と前記トレンチゲート電極(7、7’)との間の前記エッジ領域を取り囲むプラズマエンハンス層(9)とが配置され、2つの隣接するトレンチゲート電極(7、7’)間に配置され互いに対向する前記プラズマエンハンス層(9,9’)は、前記ドリフト層(5)によって互いに分離されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の絶縁ゲートパワー半導体デバイス。
【請求項11】
複数のトレンチゲート電極(7、7’)を備え、前記トレンチ底部(76)を覆う保護ピロー(8)と、前記保護ピロー(8)と前記トレンチゲート電極(7、7’)との間の前記エッジ領域を取り囲むプラズマエンハンス層(9)とが前記トレンチゲート電極(7、7’)の各々において配置され、2つの隣接するトレンチゲート電極(7、7’)に配置され互いに対向する前記プラズマエンハンス層(9,9’)は互いに接触することを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の絶縁ゲートパワー半導体デバイス。
【請求項12】
絶縁ゲートパワー半導体デバイス(1)の製造方法であって、
(a)第1の側(23)と前記第1の側(23)と反対側の第2の側(28)とを有する、第1の導電型のシリコンを主な材料とする基板(10)を設けるステップを備え、完成したデバイスにおいて未修正のドーピング濃度を有する前記基板(10)の一部がドリフト層(5)を形成し、完成したデバイスにおいて、前記第1の側(23)がエミッタ側(22)を形成し、前記第2の側(28)がコレクタ側(27)を形成し、前記製造方法はさらに、
(b)前記第1の側(23)に、前記第1の導電型のエンハンス層(95)と、前記ドリフト層(5)と前記エミッタ側(22)との間に配置される、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型のベース層(4)と、前記エミッタ側(22)に配置され前記ベース層(4)によって前記ドリフト層(5)から分離される、前記第1の導電型のソース層(3)とを形成するステップを備え、
前記エンハンス層(95)は、前記ドリフト層(5)のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有し、前記ベース層(4)を前記ドリフト層〈5)から分離し、前記エンハンス層(95)はエンハンス層深さ(97)において最大エンハンス層ドーピング濃度を有し、前記製造方法はさらに、
(c)凹部底部(84)を有するトレンチ凹部(80)を前記基板(10)にトレンチ深さ(90)まで形成するステップと、
(d)ステップ(c)の後に、前記凹部底部(84)において前記第2の導電型のドーパントを添加するステップと、
(e)前記凹部底部(84)を覆うように、前記第2の導電型の前記ドーパントを拡散することによって保護ピロー(8)を形成するステップと、
(f)ステップ(e)の後に前記トレンチ凹部(80)に第1の絶縁ゲート層(72)を形成し、前記トレンチ凹部(80)に導電材料を充填してゲート層(70)を形成するステップとを備え、トレンチゲート電極(7、7’)は前記ゲート層(70)と前記第1の絶縁ゲート層(72)とを含み、前記製造方法はさらに、
(g)前記ベース層(4)および前記ソース層(3)と接触するエミッタ電極(2)を前記第1の側(23)に、コレクタ電極(25)を前記第2の側(28)に形成するステップを備え、
(h)ステップ(c)の後でステップ(d)の前に、前記凹部底部(84)において前記第1の導電型のドーパントを添加するステップと、
(i)ステップ(h)の後でステップ(d)の前に、前記第1の導電型の前記ドーパントを前記基板(10)に拡散することによって、最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度を有するプラズマエンハンス層(9、9’)を形成するステップとを備え、
前記プラズマエンハンス層(9、9’)が前記保護ピロー(8)と前記トレンチゲート電極(7、7’)との間のエッジを覆うように、かつ、前記プラズマエンハンス層が前記保護ピロー(8)との接合部において前記最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度を有するように、前記第1の導電型のドーパントは前記第2の導電型のドーパントよりもトレンチ底部(76)から遠くまで拡散され、
前記第1の導電型のドーピング濃度が前記最大エンハンス層ドーピング濃度から前記プラズマエンハンス層(9、9’)に向けて減少するように前記エンハンス層(95)および前記プラズマエンハンス層(9、9’)が形成され、前記第1の導電型の前記ドーピング濃度が前記エンハンス層(95)と前記プラズマエンハンス層(9、9’)との間で局所的なドーピング濃度最小値を有するように前記第1の導電型のドーピング濃度が前記最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度から前記エンハンス層(95)に向けて減少し、
前記最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度は、前記保護ピロー(8)の最大ドーピング濃度よりも低い、ことを特徴とする、絶縁ゲートパワー半導体デバイスの製造方法。
【請求項13】
ステップ(b)における前記エンハンス層(95)の形成とステップ(h)およびステップ(i)における前記プラズマエンハンス層(9、9’)の形成とは、前記最大エンハンス層ドーピング濃度が完成したデバイスにおける前記最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度よりも高くなるように行なわれることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記最大エンハンス層ドーピング濃度は、完成したデバイスにおける前記最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度よりも少なくとも2倍高いことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(b)における前記エンハンス層(95)の形成とステップ(h)およびステップ(i)における前記プラズマエンハンス層(9、9’)の形成とは、前記局所的なドーピング濃度最小値が完成したデバイスにおける前記プラズマエンハンス層(9、9’)の前記最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度の半分以下であることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
技術分野
本発明は、パワーエレクトロニクス分野に関し、特に、独立請求項1のプリアンブルに記載のデバイス、または、独立請求項12に記載の絶縁ゲートパワー半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図18では、EP 0 795 911 A2で知られている従来技術の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が示されている。従来技術のデバイスは、エミッタ側22のエミッタ電極2とエミッタ側22の反対に位置するコレクタ側27のコレクタ電極25との間に、次に述べるような順番で、すなわち、(n+)ドープソース層3、エミッタ電極2と接触するpドープベース層4、nドープエンハンス層95、(n−)ドープドリフト層5、(n+)ドープバッファ層55、およびpドープコレクタ層6の順番で、異なる導電型の層を有するアクティブセルを備える。
【0003】
トレンチゲート電極7はエミッタ側22に配置され、ゲート層70と、ゲート電極70を取り囲んで、ゲート電極70をドリフト層5、ベース層4、およびソース層3から分離する第1の絶縁層72とを含む。第2の絶縁層74が、ゲート層70とエミッタ電極2との間に配置されている。トレンチゲート電極7は、エミッタ側22からトレンチ深さ77まで延在し、トレンチ深さ77で、トレンチゲート電極7はトレンチ底部76を有する。トレンチゲート電極7は、トレンチ底部76からエミッタ側22まで延在するトレンチ側面75を有する。pドープ保護ピロー8が、トレンチ底部76を覆う。
【0004】
EP 0 795 911 A2に記載されているように、従来技術のデバイスは、エンハンス層95を形成するために、最初にNドーパントの注入および拡散を行なうことによって形成される。エンハンス層95は、ドリフト層5のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有する。その後、pドープベース層4を形成するために、Pドーパントの注入および拡散が行なわれる。その後、レジストマスクを用いてNドーパントの注入および拡散を行なうことによって、n+ソース層3が形成される。次に、トレンチゲート電極7のための開口部をエッチングするために、酸化膜をソース層3の上および部分的にベース層4の上に形成する。トレンチゲート電極7は、深さ方向にドリフト層5まで延在する。ここで、Pドーパントをトレンチの底部に注入する。その後、酸化膜をエッチング除去し、トレンチの表面に、(たとえば、第1の絶縁層72を形成するための)熱酸化膜を形成する。その後、導電ゲート層70を形成するために、N不純物でドープされたポリシリコンをトレンチに充填する。ポリシリコンをトレンチの開口部までエッチバックして、トレンチにポリシリコンが埋められた状態にする。その後、表面を第2の絶縁層74で覆い、その後、別のマスクとしてのレジスト層によって覆う。レジスト層は、トレンチの上部の領域、ソース領域3、および、同様に覆われていないベース層4に直接隣接する小さな開口領域を覆う。その後、第2の絶縁層74は覆われていないレジストマスク領域においてエッチング除去されて、ゲート層70上部およびソース層3の隣接部分に第2の絶縁層74を残す。その後、AlSiが第2の絶縁層74の覆われていない領域に添加され、エミッタ電極2を形成するAlSi層によって、ベース層4およびソース層3を短絡させる。
【0005】
n型エンハンス層95は、PIN効果を改善し、プラズマ濃度を増加させ、オン状態損失を低下させる。しかしながら、高濃度にドープされたエンハンス層95を有するこのような従来技術のデバイスには、標準的なトレンチIGBTと比較してSOAおよび耐圧が悪いという問題がある。アクティブセル付近のキャリア濃度がそのようなエンハンス層95によって高くなるため、そのようなエンハンス層95を有するIGBTは、安全動作領域(SOA)がより高くオン状態損失がより少ないという観点から、エンハンス層を有さない従来技術のIGBTよりも優れている。
【0006】
しかしながら、n−エンハンス層95/p−ベース層4接合部における電界も増加する。それゆえ、実用的なエンハンス層ドーピング濃度を2.5*1016cm−3より小さい値に制限して、過剰な電界を防ぎ、それによって、遮断性能およびターンオフSOAの低下を防ぐ。図19に示すように、ドーピング濃度がより高い場合、オン状態電圧VCE,onは有利に低下する。これは、耐圧についてはエンハンス層のドーピング濃度が低いほど好ましく、オン状態電圧については逆であることを意味し、ドーピング濃度の上限は耐圧が崩壊する地点である。
【0007】
エンハンス層95によって、オン状態(VCE,on)が著しく減少する。その利点は、エンハンス層95のドーピング濃度(ND,enh)が高い場合により一層重要である。しかしながら、エンハンスドーピング濃度が高いほど、IGBTが耐えられる耐圧(VBD)は低くなる。
【0008】
図20は、従来技術の異なるデバイスに関するデータを示す。デバイス1は、2*1016cm−3のエンハンス層95において最大ドーピング濃度を有し、保護ピローを有さないトレンチIGBTである。デバイス2は、第1のpドープ保護ピロー8を有する点でデバイス1と異なる。デバイス3は、1*1017cmのエンハンス層95において最大ドーピング濃度を有し、保護ピローを有さないトレンチIGBTである。デバイス4は、第1のpドープ保護ピロー8を有する点でデバイス3と異なる。
【0009】
IGBTデバイスの有害な劣化の原因である衝突電離効果は、通常、トレンチ底部において発生する。しかしながら、エンハンスドーピング濃度が高い(2.5*1016cm−3より大きい)デバイスでは、アバランシェがp−ベース層4とn−エンハンス層95との間の界面で発生する。逆阻止安全動作領域(reverse blocking safe operating area: RBSOA)の欠点に悩まされることなく高ドープエンハンス層95のオン状態の利点を利用できるようにするために、第1のpドープ保護ピロー8がEP 0 795 911 A2で導入されている。保護ピロー8は、エンハンス層95の導入によって形成された、トレンチ底部における高電界を低下させて、RBSOAおよび耐圧VBDは改善される。これは図20に示されており、図20では、保護ピロー8を有する2つのデバイスのVBDが改良されているが、VCE,onは悪化している。それでもやはり、トレンチ底部76におけるpドープ保護ピロー8の導入によってデバイスのロバスト性は改善され、破壊メカニズムの開始を遅らせることができるが、エンハンスドーピング濃度の増加によって衝突電離が生じるトレンチIGBTデバイス固有の欠点を十分補うことはできない。
【0010】
この場合、高エンハンスドーピング濃度レベルを有するデバイスについては、破壊条件が満たされると、n−エンハンス層/p−ベース層境界においてアバランシェが依然として発生し、関連する量の生成されたキャリアがシリコン/ゲート酸化膜(第1の絶縁層72)境界付近に存在する。これは、閾値電圧を不安定にすることになる、ゲート酸化膜におけるホットキャリア注入などの望ましくない欠点を潜在的に意味する。結局、このデバイスの動的なアバランシェのロバスト性も低下し、この現象は困難なスイッチング条件の下ではさらに悪化する。
【0011】
エンハンス層を有する従来技術のトレンチIGBTでは、エンハンス層によってデバイスが早期に故障(破壊)することがある。この影響は、エンハンス層のドーピング濃度が高い場合、またはエンハンス層が厚い場合に増大する。このようなデバイスの早期破壊は、そのような厚いエンハンス層に逆のドーパント型の層が水平方向に積層されていると減少する場合があり(EP 2 602 826 A1)、そのような逆のドーパント型の層は、電界を緩和可能な領域をもたらす。しかしながら、そのような層構造は形成するのが大変である。
【0012】
保護ピロー8を最大ドーピング濃度が増加した(すなわち、2.5または3*1016cm−3よりも大きい)従来技術のデバイスに導入することによって耐圧が大幅に改善されるが、この値は、保護ピローおよびより低い(すなわち、2.5*1016cm−3より低い)エンハンスドーピング濃度を有さないデバイスの場合の値と比較すると、依然としてはるかに低い。
【0013】
p保護ピローによって、オン状態の増大を犠牲にして破壊ロバスト性が改善される。しかしながら、エンハンス/チャネル界面におけるアバランシェの生成の欠点は、ND,enhが増加した従来技術のデバイス4において存在する。デバイス4は、ハードスイッチング条件下でのより大きな曲げ傾向に示されるように、ダイナミックアバランシェが大きくなる欠点がある。
【0014】
JP 2010 232627 Aは、トレンチIGBTの形成方法に関する。まず、トレンチが基板にエッチングされ、その後nドーパントとしてヒ素エピタキシャル層で充填される。熱処理が行なわれて、深さ方向にトレンチの側面に沿って一定のドーピング濃度を有する拡散エピタキシャル層が形成される。その後、トレンチ深さが増加し、深くなったトレンチ底部においてホウ素の注入および拡散が行なわれる。
【0015】
US 2011/233728 A1では、IGBTの製造方法について記載されている。この方法では、トレンチ凹部がドリフト層にエッチングされ、トレンチ底部において、nドーパントの注入および拡散が行なわれて、1つのnドーパント層として連続層を形成する。マスクが除去され、その後、pドーパントが同じトレンチ凹部内で基板の表面に注入されて、トレンチ底部において保護領域が形成される。保護領域はエンハンス層およびpベース層に埋め込まれる。この方法では、2つのトレンチ間の領域におけるnバックグラウンドドーピングを避けようとしている。バックグラウンドドーピングとしていかなる高nドーピング濃度も有さない純粋なベース層を有することによって、閾値電圧は改善される。
【0016】
US 2014/264564 A1はSiC半導体デバイスに関し、このデバイスでは、トレンチゲート電極はエピタキシャルnドープエンハンス層に完全に埋め込まれている。トレンチ底部とエンハンス層との間のpドープ保護層は、トレンチ底部を保護する。トレンチゲート電極を取り囲むエンハンス層のドーピング濃度と同じドーピング濃度の、連続した他のエピタキシャルエンハンス層は、pベース層をドリフト層から分離する。MOSチャネルがトレンチゲート電極において形成されることがないように、連続するnドープソース層によって、トレンチゲートおよび連続するエンハンス層におけるnドープエンハンス層を介してドリフト層まで直接電気経路が設けられる。さらに、連続するnソース層はエミッタ電極までコンタクト領域を完全に覆って、pベース層のエミッタ電極との接触を防ぐ。したがって、そのような半導体デバイスは、MOS機能もIGBT機能も発揮しない。SiCはドーパントをほとんど拡散しないため、デバイスは、各々が均一のドーピング濃度を有するエピタキシャル層で形成される。
【0017】
Hwang, SJらによる "Use of the p-floating shielding layer for improving electric field concentration of the recessed gate", ICICDT 2008, pp 13-16では、プレーナゲート電極を有するプレーナIGBTがアクティブゲートとして示されており、このプレーナゲート電極は、トレンチ底部においてpドープ層によって保護されている別の凹部ゲートに接続されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の開示
本発明の目的は、パワー半導体デバイスを提供することである。パワー半導体デバイスは、従来技術のデバイスと比較して低いオン状態損失および高い耐圧の双方を有しており、精密な製造ステップを避けた簡単で速い製造方法によって製造される。
【0019】
この目的は、請求項1に記載の本発明のパワー半導体デバイスを提供することによって達成される。
【0020】
nドーププラズマエンハンス層は、ある種のエンハンス層として機能し、エンハンス層においてドーピング濃度が増加したデバイスでは起こりがちな早期アバランシェの生成およびゲート酸化膜(第1の絶縁層)におけるホットキャリア注入という欠点を有さない、プラズマエンハンスの利点をもたらす。
【0021】
pドープ保護ピローの役割は、流入する電界からプラズマエンハンス層を保護して、衝突電離の開始を遅らせ、かつ、デバイスのロバスト性をこのように増大させることである。
【0022】
本発明の半導体デバイスの場合、局所的なドーピング濃度最小値を有する領域の存在は、電界を緩和可能な地点を意味する。エンハンス層およびプラズマエンハンス層の高濃度にドーピングされた部分と比較してn型ドーピングが低い領域では、高ドーピングレベルの拡大されたより大きな領域に対してより緩和された電界条件が、領域に設けられる。
【0023】
本発明の半導体デバイスは、より低いオン状態および増大されたRBSOAの利点と、ゲート酸化膜(第1の絶縁層)におけるホットキャリア注入のリスク軽減とを組み合わせることができる。エンハンス層/チャネル界面におけるチャネルゲート酸化膜のホットキャリア注入のリスクが軽減される結果、デバイスの信頼性が改善される。
【0024】
さらに、プラズマ濃度は本発明のデバイスにおいて増加可能であり、これは、ドーピング濃度が増加したエンハンス層の欠点がない状態でオン状態損失が減少することを示し、より低い耐圧を示す。図15に示すように、オン状態電圧VCE,onは同じ耐圧の場合は約10%低くすることができる。図15図17の従来技術のデバイスとして、pベース層とドリフト層との間にエンハンス層を有するトレンチIGBTが使用されてきた(すなわち、p保護ピローも別のプラズマエンハンス層もない)。
【0025】
図15にも示すように、本発明のデバイスは、オン状態損失を有さない、すなわち、従来技術のデバイスと比較して改善されたオン状態損失(すなわち、より低いVCE,on)を有する耐圧アバランシェに対してロバスト性が増大する利点を組み合わせることができる。耐圧のわずかな低下によって、より積極的にオン状態損失を低減させることもできる。アバランシェ耐圧メカニズムは、エンハンスドーピング濃度が増加したデバイスで起こるため、この場合も敏感なエンハンス層/ベース層界面ではなくトレンチ底部において依然として発生する。したがって、p−ベース層領域付近のゲート酸化領域においてホットエレクトロンが注入がされないため、本発明のデバイスでは耐圧が低下する。
【0026】
図16では、オン状態電圧VCE,onに対するターンオフエネルギーEoffが示されている。オン状態損失の減少に加えて、本発明のデバイスを用いてターンオフエネルギーを減らすことが可能である。これは、熱の発生がデバイスにおいて大幅に減少することを意味する。
【0027】
図17では、デバイスのターンオフ時のコレクタ過電圧が示されている。この特徴も、過電圧の生成が少なくなるため、本発明のデバイスの優位性を確認するものである。
【0028】
さらに、本発明のデバイスは、繊細な製造ステップを追加することなく製造可能である。これは簡潔で、安価な、かつ速い製造方法である。なぜなら、新しく導入された保護ピローおよびプラズマエンハンス層は、双方の層のための同じマスクとしてトレンチ開口部を使用するからである。
【0029】
本発明の主題は、添付の図面を参照して以下の本文でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】pドープ保護ピローをトレンチゲート電極の底部に、nドープエンハンス層およびnドーププラズマエンハンス層を保護ピローとトレンチゲート電極との間のエッジに有する、本発明の絶縁ゲート半導体デバイスのエミッタ側の構造を示す図である。
図2図1に示すエミッタ側の構造を有する、本発明のノンパンチスルーIGBTを示す図である。
図3】保護ピローをドリフト層から分離しているプラズマエンハンス層を有する、本発明のノンパンチスルーIGBTを示す図である。
図4】2つの隣接するプラズマエンハンス層が互いに接触している、図3に示す本発明のノンパンチスルーIGBTを示す図である。
図5】保護ピローをドリフト層から分離しているプラズマエンハンス層を有する、本発明のパンチスルーIGBTを示す図である。
図6】保護ピローをドリフト層から分離しているプラズマエンハンス層を有する、本発明の逆導電IGBTを示す図である。
図7】保護ピローをドリフト層から分離しているプラズマエンハンス層を有する、本発明のMOSFETを示す図である。
図8】本発明のデバイスの製造方法のある製造ステップを示す図である。
図9】本発明のデバイスの製造方法のある製造ステップを示す図である。
図10】本発明のデバイスの製造方法のある製造ステップを示す図である。
図11】本発明のデバイスの製造方法のある製造ステップを示す図である。
図12】本発明のデバイスの製造方法のある製造ステップを示す図である。
図13】本発明のデバイスの製造方法のある製造ステップを示す図である。
図14図3の線A−Aに沿った本発明のデバイスのドーピング濃度プロファイルを示す図である。
図15】本発明のIGBTおよび従来技術のIGBTに関して、コレクタエミッタ飽和電圧Vce,onに対する耐圧Vbdを示す図である。
図16】本発明のIGBTおよび従来技術のIGBTに関して、Vce,onに対するターンオフエネルギーEoffを示す図である。
図17】本発明のIGBTおよび従来技術のIGBTに関して、ターンオフスイッチング条件におけるVce,onに対する最大コレクタ‐エミッタ過電圧Vce,maxを示す図である。
図18】エンハンス層および保護ピローを有するトレンチゲート電極を有する、従来技術の絶縁ゲート半導体デバイスを示す図である。
図19】エンハンス層の最大ドーピング濃度に依存するエンハンス層を有する従来技術のデバイスに関して、Nドーピング濃度に対する耐圧Vbdおよびコレクタ‐エミッタ過電圧Vce,onを示す図である。
図20】異なる従来技術のデバイスに関して、コレクタ‐エミッタ過電圧Vce,onに対する耐圧Vbdを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面で用いられている参照記号およびそれらの意味は、参照記号のリストに要約されている。一般に、同様のまたは同様に機能する部分には同じ参照記号が付されている。説明される実施形態は例示であり、発明を制限するものではない。
【0032】
発明を行なうための態様
図1では、本発明の絶縁ゲートパワー半導体デバイスの場合のエミッタ側22の構造が示されている。デバイスは、エミッタ側22のエミッタ電極2とコレクタ側27のコレクタ電極25とを備える。コレクタ側27はエミッタ側22の反対側に配置されている。(n−)ドープドリフト層5が、エミッタ側22とコレクタ側27との間に配置されている。pドープベース層4が、ドリフト層5とエミッタ側22との間に配置されている。ベース層4は、エミッタ電極2に接触する。また、ドリフト層のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有するnドープソース層3もエミッタ側22に配置されている。ベース層4によってドリフト層5から分離されるソース層3は、エミッタ電極2に接触する。ソース層3は、各ゲート電極7、7’の両側に配置されるように配置可能である。
【0033】
ベース層4およびドリフト層5のドーピング濃度は、上述のドーピング濃度に関する適用の必要性および規則によって自由に選択可能である。例示的に、ドリフト層5は常に低い(エンハンス層95またはプラズマエンハンス層9などの他の層の例示的なドーピング濃度と比較して低い)ドーピング濃度を有する。ここで、ドリフト層5のドーピング濃度が実質的に一定であることは、ドーピング濃度がドリフト層5にわたって実質的に均一であるということを意味するが、1〜5倍というドリフト層5内のドーピング濃度の変動が製造上の理由によって生じる可能性を排除するものではない。最終的なドリフト層の厚さおよびドーピング濃度は、適用の必要性によって選択される。600Vより低いデバイスの場合、ドリフト層のドーピング濃度は例示的に5*1014cm−3より低い。パワーデバイス(600Vより大きい電圧)の場合、ドリフト層5の例示的なドーピング濃度は、1*1012cm−3と5*1014cm−3との間である。
【0034】
ソース層3のドーピング濃度は、ベース層4のドーピング濃度よりも高く、ドリフト層5のドーピング濃度よりも高い。ソース層3の例示的なドーピング濃度は、1*1018cm−3よりも高く1*1021cm−3よりも小さい、例示的に、1*1019cm−3と1*1020cm−3との間である。
【0035】
上述の構造によってアクティブセルが形成される。本発明のデバイスは、先に開示されされたように、1つのアクティブセルのみを含む場合があるが、デバイスは少なくとも2つ以上のそのようなアクティブセルを備える場合もある、すなわち、以下の図面に関して説明されるように、アクティブセルは1つの基板に繰り返し配置される場合もある。
【0036】
ゲート電極7、7’は、ストリップデザインのような異なるデザインも有し得る、すなわち、エミッタ側22に平行な平面において、短い側とこの短い側に垂直な長い側とを有し得る。ソース層3は、ゲート電極7、7’の長い側に沿って配置されている。トレンチゲート電極7に関する他のデザインも、正方形のデザイン、円形のデザイン、リングのデザイン、六角形のデザインなどでもよい。デバイスは1つのトレンチゲート電極7、7’を有し得る、または、複数の(すなわち、2つ以上の)ゲート電極7、7’を備え得る。例示的に、後者の場合、ゲート電極7、7’は略幾何学デザインで配置されている。
【0037】
本発明のデバイスの各々は、導電ゲート70と第1の絶縁層72とを有する少なくとも1つのトレンチゲート電極7、7’を備える。第1の絶縁層72は、ゲート電極70を取り囲んで、ゲート電極70をドリフト層5、ベース層4、およびソース層3から分離する。例示的に、第2の絶縁層74がゲート層70とエミッタ電極2との間に配置され、これらの電極70、2を互いに絶縁する。トレンチゲート電極7、7’はエミッタ側22からドリフト層5まで延在する。トレンチゲート電極7、7’は、エミッタ側22に平行な平面においてベース層4に横方向に配置されている。トレンチゲート電極7、7’は、トレンチゲート電極7、7’のそのような側において、エミッタ電極22の反対側に位置するトレンチ底部76と、トレンチ底部76からエミッタ側22まで、例示的にエミッタ電極22に垂直に延在するトレンチ側面75とを有する。トレンチゲート電極7、7’は、エミッタ側22からトレンチ深さ77まで延在する。例示的な実施形態では、トレンチ深さ77は5〜9μmの深さであり、例示的に6〜8μmの深さである。
【0038】
ベース層4をドリフト層5から分離するように、ドリフト層5のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有するnドープエンハンス層95が、pドープベース層4の下方に配置されている。エンハンス層95は、3*1016cm−3よりも小さい、2.5*1016cm−3よりも小さい、または2.*1016cm−3よりも小さい最大ドーピング濃度を有し得る。エンハンス層95は、エンハンス層深さ97に最大エンハンス層ドーピング濃度を有する。エンハンス層深さ97はエミッタ側22から、半導体層(すなわち、ドープ層)が配置されるような最も外側の平面から、すなわち、上述のベース層4の上方に突出するnソース層3の場合はソース層3(すなわち、エミッタ電極2に向かう側)の表面から測定可能である。
【0039】
製造プロセスによっては、エンハンス層のドーピング濃度は深さ方向において一定であり得る(たとえば、エピタキシャル成長層の場合)、または、エンハンス層95はベース層4の最大ドーピング濃度に近い最大ドーピング濃度を有し得る。このドーピング濃度は、コレクタ側27に向かって低下し、より低いドーピング濃度まで、ドリフト層5のドーピング濃度まで低下する。最大エンハンス層ドーピング濃度は、ドリフト層5の(最大)ドーピング濃度の少なくとも20倍であり得る。
【0040】
エンハンス層95は、3μmよりも小さい、2μmよりも小さい、または1.5μmよりも小さい厚さ(エミッタ側22に垂直な方向でエンハンス層95の延長である)を有し得る。
【0041】
トレンチ底部76において、保護ピロー8の形状のpドープ保護層が、トレンチ底部76を覆うように配置されている。これは、トレンチ底部76が保護ピロー8によってドリフト層5から分離されていることを意味する。トレンチ底部76とトレンチ側面75との間のエッジも、保護ピロー8によって覆うことが可能である。保護ピロー8は、ドリフト層5の最大ドーピング濃度よりも高い最大ドーピング濃度を有する。保護ピロー8は、深さ方向において、すなわち、保護ピロー8がトレンチゲート電極7、7’に接触する側と反対側で、低ドープドリフト層5と接触している。保護ピロー8の最大ドーピング濃度は、1*1017cm−3であり得る。
【0042】
ドリフト層5のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有するnドーププラズマエンハンス層9、9’は、保護ピロー8とトレンチゲート電極7、7’との間のエッジ領域を覆う。プラズマエンハンス層は、最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度を有する。Nドーピング濃度は、最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度からエンハンス層95に向けて低下し、nドーピング濃度は、Nドーピング濃度がエンハンス層95とプラズマエンハンス層9、9’との間の局所的なドーピング濃度最小値を有するように、最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度からプラズマエンハンス層9、9’に向けて低下する。エンハンス層95とプラズマエンハンス層9、9’とは、これらの層間の局所的なドーピング濃度最小値によって互いに区別可能である。エンハンス層9、9’、95は、ドリフト層5の低ドーピング濃度と、エンハンス層95およびプラズマエンハンス層9、9’の高ドーピング濃度とによって区別可能である。
【0043】
図1に示すデバイスでは、プラズマエンハンス層9は、保護ピロー8とエンハンス層95との間のエッジを覆っているだけである。保護ピロー8は、トレンチ底部76下方のドリフト層5に接触する。これによって、エンハンス層95のドーピング濃度が高くなり過ぎるという欠点がなく、エンハンス層95の下方でプラズマが増加する。
【0044】
最大エンハンス層ドーピング濃度は、最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度と同じであり得る。他の実施形態では、最大エンハンス層ドーピング濃度は、最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度よりも高く、2倍、さらには2.5倍以上高くてもよい。代替的に、エンハンス層95の最大ドーピング濃度よりも高い最大ドーピング濃度を有するプラズマエンハンス層9、9’を有することも可能である。
【0045】
図14では、図3の線A−Aに沿った深さ方向(エミッタ側22に垂直な方向)におけるドーピングプロファイルとして、層のドーピング濃度が示されている。線は、ドナーN‐N(nドーピング)の正味ドーピング濃度とアクセプタN‐Nの正味ドーピング濃度とを示す。
【0046】
エンハンス層95およびプラズマエンハンス層9、9’は、2つの層間の局所的なNドーピング濃度最小値によって区別可能である。したがって、エンハンス層95およびプラズマエンハンス層9、9’は、これらの2つの層間の(深さ方向における)ドーピング濃度の局所的な最小値によって区別可能である。Nドーピング濃度は極小値からエミッタ側22に向けて上昇し、エンハンス層95の最大ドーピング濃度に、およびさらに深くプラズマエンハンス層9、9’の最大ドーピング濃度まで達する。例示的な実施形態では、局所的なドーピング濃度極小値は、最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度の半分以下である。プラズマエンハンス層9、9’は、保護ピロー8との接合部において(トレンチゲート電極7、7’において)ドーピング濃度最大値を有する。保護ピローは、保護ピロー8の最も外側の表面がトレンチゲート電極7、7’まで境界線を形成するように、トレンチゲート電極7、7’を覆う。この境界線において、プラズマエンハンス層9、9’は、ドーピング濃度最大値を有する。
【0047】
図2図1に示す本発明の構造を示すが、この構造は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ1(IGBT)において実現されている。図2では、2つのトレンチゲート電極7、7’が示されており、各々の下方に、トレンチ底部76を覆う保護ピロー8が配置されており、各々の保護ピロー8とトレンチゲート電極7、7’との間のエッジにおいて、プラズマエンハンス層9、9’が配置されている。当然のことながら、本発明の構造は1つのトレンチゲート電極7のみを有するIGBTにも適用可能であるが(図1に例示的に示すように)、コレクタ側27にコレクタ層6をさらに有している。
【0048】
図2では、各プラズマエンハンス層9、9’は保護ピロー8とトレンチゲート電極7、7’との間のエッジを覆い、そこに、プラズマエンハンス層9、9’が配置されている。隣接するトレンチゲート電極7、7’に配置され互いに対向するプラズマエンハンス層9、9’は、ドリフト層5によって互いに分離されている。これは、エミッタ側22に平行な方向において、Nドーピング濃度が一方のプラズマエンハンス層9の最大エンハンス層ドーピング濃度からドリフト層5のドーピング濃度まで低下し、他方のプラズマエンハンス層9に対向する、隣接したプラズマエンハンス層9’の最大エンハンス層ドーピング濃度まで再び上昇することを意味する。
【0049】
図2において、IGBT1はコレクタ側27に、ドリフト層5のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有するpドープコレクタ層6を備える。専門家にはよく知られているように、コレクタ層6に直接隣接して配置されたドリフト層5を有するそのようなデバイスは、ノンパンチスルーパワー半導体デバイスと呼ばれる。そのため、(n−)ドープドリフト層5は、間に第1の導電型の高ドープ層(バッファ層とも呼ばれる)を有することなくコレクタ層6と接触している。ノンパンチスルーデバイスのブロック状態における電界は三角形であり、ドリフト層5内で停止する。そのようなノンパンチスルーデバイスに関して、空間電荷領域はコレクタ層6に達していない。
【0050】
図2に示す本発明のIGBTは、複数のトレンチゲート電極7、7’を備える。2つの隣接するトレンチゲート電極7、7’の間で、pベース層4はエミッタ側22から一定の深さまで延在する。これは、pベース層4がエンハンス層95との接合部において平面を形成することを意味する。また、エンハンス層95も、ドリフト層5に対する界面において平面を形成する。また、最大エンハンス層ドーピング濃度は、2つの隣接するトレンチゲート電極7、7’間の全領域にわたって同じ深さで位置する、すなわち、エミッタ側22に垂直な方向におけるドーピングプロファイルは、2つのトレンチゲート電極7、7’間のエンハンス層95の全領域にわたって同一である。そのため、各エンハンス層ドーピング濃度プロファイルに関する局所的な最大ドーピング濃度は、2つの隣接するトレンチゲート電極7、7’間の全領域にわたって同じ深さで存在する。拡散エンハンス層95について、最大エンハンス層ドーピング濃度が、ベース層4との接合部付近に、かつ、ベース層4とのpn接合部まで一定の距離で存在している。
【0051】
図3では、本発明のIGBTが示されている。このIGBTは、保護ピロー8がドリフト層5から分離されるように保護ピロー8を取り囲むプラズマエンハンス層9、9’によって、図2に示すデバイスから区別される。したがって、1つのトレンチゲート電極7、7’におけるプラズマエンハンス層9、9’は、保護ピロー8を覆う連続した層である。pドープ保護ピロー8のどの部分も低ドープドリフト層5に直接接触していない。
【0052】
図2に関してすでに説明されたように、図4では、複数のトレンチゲート電極7、7’(図では2つ示されている)と複数の保護ピロー8および複数のプラズマエンハンス層9、9’とを有するIGBTが示されている。各プラズマエンハンス層9、9’は、保護ピロー8とトレンチゲート電極7、7’との間のエッジを覆い、そこに、プラズマエンハンス層9、9’が配置されている。2つの隣接するトレンチゲート電極7、7’に配置され互いに対向するプラズマエンハンス層9、9’は、互いに接続されている。これは、エミッタ側22に平行な方向において、Nドーピング濃度が一方のプラズマエンハンス層9の最大エンハンス層ドーピング濃度からドリフト層5のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度まで減少し、他方のプラズマエンハンス層9に対向する隣接プラズマエンハンス層9’の最大エンハンス層ドーピング濃度まで再び増加することを意味する。したがって、エミッタ側22に平行な方向における2つの隣接するプラズマエンハンス層9、9’のドーピング濃度が局所的な最小ドーピング濃度まで低下するように、プラズマエンハンス層9、9’は重なっている(そのため、重なっているプラズマエンハンス層9、9’のドーピング濃度は、ドリフト層5のドーピング濃度よりも依然として高い)。局所的な最小ドーピング濃度は、2つの隣接するトレンチゲート電極7、7’間の中間点に位置する。
【0053】
このように接続されたプラズマエンハンス層9、9’は、保護ピロー8の周囲にNドーパントをより深く拡散することによって、および/または、2つの隣接するトレンチゲート電極7、7’の距離を減らすことによって、すなわち、セルサイズを小さくすることによって形成可能である。
【0054】
図5では、図3に示すデバイスに対してさらに、ドリフト層6のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有するバッファ層55を有するIGBTが示されている。バッファ層55は、コレクタ側27に向けてドリフト層5上に配置されている。そのようなバッファ層55(バッファ層55は、常に低濃度にドープされたドリフト層5のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有しており、着実に高濃度にドープされ次第に増加するドーピング濃度、または、コレクタ側27に向けて着実に連続して増加する濃度を有する)を備えるデバイスは、パンチスルーIGBTと呼ばれる。阻止電圧が高い場合、ドリフト層5とバッファ層55との間の境界における電界はゼロに達していない。バッファ層55における短い距離に沿って、電界は、高ドーピング濃度によって急激にゼロまで低下する。
【0055】
保護ピロー構造8、プラズマエンハンス層9、9’、およびエンハンス層95を有する本発明の構造は、逆導電IGBT(図6)のようなあらゆる種類のIGBTの変形物に組み込むことが可能であり、コレクタ側27にコレクタ層6が配置され、コレクタ層6に横方向の同じ平面にnドープ層57が配置されている。したがって、nドープ層57はコレクタ層6と交互に並ぶ。そのようなデバイスは、当業者によく知られている。コレクタ層6およびnドープ層57は、互いに交互に並ぶ複数のp領域およびn領域を含み得る。
【0056】
他の実施形態では、本発明の構造は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)において組み込むことが可能である。本発明のMOSFETでは、nドープ層55(MOSFETの場合、ドレイン層とも呼ばれる)がコレクタ電極25に隣接する(図7)。
【0057】
全ての本発明のデバイスに関して、第1の絶縁層72および第2の絶縁層74は絶縁材料で形成可能であり、金属酸化物のような誘電体、例示的に二酸化ケイ素が絶縁層として検討される。被覆する第2の絶縁層74は、異なる絶縁層の積層体としても形成可能である。絶縁層が金属酸化層の場合、上述のチャネルはMOSチャネル(metal oxide semiconductor)と呼ばれ、他の場合(絶縁層72、74が他の絶縁材料で形成されている場合)、チャネルはMISチャネル(metal insulator semiconductor)とも呼ばれる。ゲート層70の材料としては、金属またはポリシリコンのような適切な導電材料を使用可能である。本特許出願の適用のために、MISFETをMOSFETであると理解することができ、これは、MOSFETおよびMISFETの一般名であると解釈可能である。
【0058】
MOSチャネルは、ソース層3からベース層4を介してドリフト層5まで、トレンチゲート電極7、7’の側面に沿って形成可能である。ベース層4は、チャネルを形成可能にするために、側面においてトレンチゲート電極の絶縁層72まで延在する、かつ、延在しなければならない。デバイスのスイッチを入れると、ゲート電極が印加され、それによって、ベース層はトレンチゲート電極の側面に沿って逆転層を形成する。トレンチゲート電極7、7’はアクティブゲートであり、そこで、MOSチャネルはスイッチオンの間に形成可能である。
【0059】
本発明の絶縁ゲートパワー半導体デバイスを製造するために、エミッタ側22において複数の層を形成するために次のステップが行なわれる。
【0060】
ステップ(a)で、第1の側23および第1の側23と反対側の第2の側28を有する(n−)ドープ基板10が設けられる(図8)。基板10は、シリコンを主な材料として形成可能である。完成したデバイスにおいて未修正ドーピング濃度を有する基板のそのような部分によって、ドリフト層5が形成される。第1の側23が完成したデバイスのエミッタ側22を形成し、第2の側28がコレクタ側27を形成する。
【0061】
ステップ(b)で、完成したデバイスにおいてベース層4をドリフト層5から分離するnドープエンハンス層95が形成される。エンハンス層95を形成するために、nドーパントが第1の側23において添加される。nドーパントは、基板10に拡散される。エンハンス層95は、ベース層4を形成する前に形成可能である、または、ベース層4と同時にまたはその後で、(たとえば、pドーパントよりも早く拡散するnドーパントを用いて)形成可能である。例示的に、エンハンス層95は連続層として形成される。エンハンス層95は、ベース層4をドリフト層5から分離するように、ベース層4の真下に配置される。
【0062】
ステップ(b)で、(ドリフト層5のドーピング濃度よりも高いドーピング濃度を有する)pドープベース層4およびnドープソース層3が第1の側23に形成される。ベース層4を形成するために、pドーパントが第1の側23で添加される。pドーパントは基板10に拡散される。その後、ソース層3を形成するために、n型ドーパントが第1の側23で基板10に注入され、アニーリングが施される。その後、エッチングステップを行なうことが可能であり、これによって、2つのゲート電極7の間の中央領域で、ベース層4のpドーパントが支配的になってエミッタ電極2からベース層4まで接触する深さまで除去される。
【0063】
このステップは、ステップ(d)、(e)、(h)および(i)、すなわち、保護ピロー8およびプラズマエンハンス層9、9’を形成した後に行なうことができるが、他の適切な製造ステップで、たとえば、ステップ(c)で凹部を形成する前に、ベース層4、ソース層3、およびエンハンス層95を形成することも可能である。例示的に、ソース層3はベース層4の後で形成される。
【0064】
次の図に示す製造方法のステップにおいてはソース層3、ベース層4、およびエンハンス層95のいずれも示されていないが、既に形成していることが可能である(図1図7に示すように)。
【0065】
図9に示すように、ステップ(c)において、完成したデバイスにおいてトレンチ深さ77に対応する凹部深さまで、凹部80が基板10において第1の側23に形成される。例示的に、ハードマスクが第1の側23において形成され、マスクを通して凹部がエッチングされてトレンチ凹部を形成する。酸化ステップをエッチングの後に行なうことができる。凹部80は、第1の側23に垂直な側面83と、第1の側23に平行な凹部底部84とを有する。
【0066】
ステップ(h)で、nドーパントが、凹部底部84において添加されるように、第1の側23において注入される(図10)。マスクおよび酸化層が既に形成されている場合、これらの層は、ドーパントが第1の側の表面において(すなわち、凹部80における領域の傍らで)半導体材料内へ入ることを防ぐ。マスクおよび酸化層は、第1の側23でエミッタ電極2を形成する前に除去される。
【0067】
その後、プラズマエンハンス層9、9’を形成するステップ(i)で、加熱ステップが行なわれて、nドーパントが基板10内に拡散する(図11)。最大ドーピング濃度(凹部底部において)から第1の側23に向けて(および、当然のことながら、第1の側28および側面に向けて)減少するNドーピングプロファイルが形成される。
【0068】
例示的に、凹部80の側方から、すなわち、エミッタ側22に平行な平面において、たとえばエミッタ側22でのドーパントの添加、たとえば注入によるエンハンス層95の形成によって、エンハンス層95のドーピング濃度は例示的に一定になる一方で(第1の側23に平行な平面については一定だが、第1の側23から深さが増大するにつれて減少する)、プラズマエンハンス層9、9’は、保護ピロー8との接合部付近で最大になるドーピング濃度を有する。このドーピング濃度は、nドーパントがトレンチ凹部80において添加されるために、および、nドーピング濃度の拡散によって、側面まで減少して、Nドーピング濃度は、nドーパントソースからの距離が増加するにつれて減少する。
【0069】
したがって、Nドーピング濃度が最大エンハンス層ドーピング濃度からプラズマエンハンス層9、9’に向けて減少するように、エンハンス層95およびプラズマエンハンス層9、9’が形成され、かつ、Nドーピング濃度がエンハンス層95とプラズマエンハンス層9、9’との間の局所的なドーピング濃度最小値を有するように、Nドーピング濃度が最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度からエンハンス層95に向けて減少する。
【0070】
その後ステップ(d)において、ステップ(h)および(i)の後で、pドーパントが凹部底部84において注入される(図12)。
【0071】
ステップ(e)において、保護ピロー8が凹部底部84(図13)を、かつ例示的にトレンチ底部76とトレンチ側面75との間のトレンチのエッジをも覆うようにpドーパントを拡散するが、プラズマエンハンス層9、9’のnドーパントを保護ピロー8とトレンチゲート電極7、7’との間のエッジ領域に保つことによって、保護ピロー8が形成される。凹部底部84を覆うことは、保護ピローが第2の側28から凹部底部80を覆うことを意味する。
【0072】
ステップ(e)の後のステップ(f)で、第1の絶縁ゲート層72が凹部80に形成される。その後、凹部80には導電材料が充填されて、第1の絶縁ゲート層72がドリフト層5、ベース層4、ソース層3、エンハンス層95、およびプラズマエンハンス層9、9’からゲート層70を分離するように、ゲート層70を形成する。そのため、ゲート層70および第1の絶縁層72を含むトレンチゲート電極7、7’が形成される。トレンチゲート電極7は、エミッタ側22に平行な平面においてベース層4に対して側方に配置される。トレンチゲート電極7、7’は、トレンチ底部76およびトレンチ側面75を有する。このステップ(f)は、ステップ(b)の前または後に行なわれてもよい。ゲート電極を部分的にのみ形成することも可能である(すなわち、(たとえば、酸化層の形状の)第1の絶縁層72を形成し、その後、プラズマエンハンス層9、9’および/または保護ピロー8を形成するためのステップを行ない(ステップ(d)/(e)および/または(h)/(i))、その後、ゲート層70を形成する。これは、ステップ(f)を、第1の絶縁層72の形成とゲート層70の形成との間で行なわれる他の製造ステップ(ステップ(b))および/またはステップ(d)/(e)および/または(h)/(i))を有する2つのステップに分割できることを意味する。
【0073】
その後、ステップ(g)において、ベース層4およびソース層3に接触するエミッタ電極2が第1の側23に形成される。
【0074】
第2の側28で、IGBTを形成するために、コレクタ層6の形成のためのp型ドーパントの形成(たとえば、注入)およびアニーリングが可能であり、任意に、バッファ層55を形成するためのnドーパントの形成およびアニーリングが行なわれる。これらのステップも、適切な製造ステップにおいて行なうことが可能である。
【0075】
MOSFETを形成するために、ドレイン層55を形成するためのNドーパントの添加(たとえば、注入)が可能である。
【0076】
その後、第2の側28において、第2の側28でドープされた層(すなわち、IGBTの場合はコレクタ層、または、MOSFETの場合はドレイン層)に接触するコレクタ電極25が形成される。
【0077】
ステップ(b)においてエンハンス層95を形成し、ステップ(h)および(i)においてプラズマエンハンス層9、9’を形成するために、最大エンハンス層ドーピング濃度が完成したデバイスにおける最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度よりも高くなるように(たとえば、層の形成のための露光量および/または拡散パラメータの選択によって)、プロセスを行なうことができる。最大エンハンス層ドーピング濃度は、完成したデバイスにおける最大プラズマエンハンス層ドーピング濃度と比べて少なくとも2倍以上高くてもよい。
【0078】
他の代替実施形態では、エンハンス層8およびプラズマエンハンス層9、9’の最大ドーピング濃度は同じでもよい。
【0079】
局所的なドーピング濃度最小値が完成したデバイスのプラズマエンハンス層9、9’の最大ドーピング濃度のほぼ半分になるように、エンハンス層9をステップ(b)において形成することができ、プラズマエンハンス層9、9’をステップ(h)と(i)において形成することができる。
【0080】
デバイスのコレクタ側27の層およびトレンチゲート電極7は、専門家によく知られている方法で形成可能であり(たとえば、EP 0 795 911 A2の場合、従来技術のセクションで本出願において説明されているように)、最終的に、基板10に全ての層が形成された後に、電極2、25が基板の両側に金属層として形成される。
【0081】
これらの例は、本発明の範囲を制限するものではない。上述のデザインおよび配置は、1つまたは複数の保護ピローに関するあらゆる可能なデザインおよび配置の例に過ぎない。
【0082】
他の実施形態では、導電型は切り替えられる、すなわち、第1の導電型の全ての層はp型であり(たとえば、ドリフト層5、ソース層3)、第2の導電型の全ての層はn型である(たとえば、ベース層4、コレクタ層6)。
【0083】
なお、”comprising(含む)”という用語は他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞”a”または”an”は複数を排除するものではない。また、異なる実施形態に関連して説明された要素は組み合わせることが可能である。また、請求項の参照符号は、請求項の範囲を制限すると解釈されてはならない。
【0084】
当業者であれば、本発明の精神または本質的な特徴から逸脱することなく、本発明を他の特定の形態に具体化できると理解するであろう。したがって、ここで開示された実施形態は、あらゆる点において制限的ではなく例示的なものとして考えられる。本発明の範囲は、上述の説明ではなく添付の請求項によって示されており、その意味および範囲内の変更物およびその均等物は、それに含まれていると意図されている。
【符号の説明】
【0085】
参照符号のリスト
1 本発明のIGBT、10 基板、2 エミッタ電極、22エミッタ側、23 第1の側、25 コレクタ電極、27 コレクタ側、28 第2の側、3 ソース層、4 ベース層、5 ドリフト層、55 バッファ層、6 コレクタ層、7、7’ トレンチゲート電極、70 ゲート層、72 第1の絶縁層、74 第2の絶縁層、75 トレンチ側面、76 トレンチ底部、77 トレンチ深さ、 78 保護ピロー、80 トレンチ凹部、83 側面、84 凹部底面、9、9’ 保護ピロー、95 エンハンス層、97 エンハンス層深さ。
図1
図2
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