特許第6980703号(P6980703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980703
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】反転する血栓除去装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   A61B17/22 528
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-562633(P2018-562633)
(86)(22)【出願日】2017年6月1日
(65)【公表番号】特表2019-518540(P2019-518540A)
(43)【公表日】2019年7月4日
(86)【国際出願番号】US2017035543
(87)【国際公開番号】WO2017210487
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2020年4月10日
(31)【優先権主張番号】62/345,152
(32)【優先日】2016年6月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518102414
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ウォレス,マイケル,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】グリーンハウシュ,イー.,スコット
【審査官】 家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第2498349(GB,A)
【文献】 国際公開第2012/009675(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管から血栓を除去するための機械的な血栓除去装置であって、
遠位端および遠位端開口を有する細長い反転支持カテーテルと、
前記細長い反転支持カテーテル内に延びる細長いプラーと、
自由な第1の端部と、前記細長いプラーの遠位端領域に連結された第2の端部とを有する可撓性トラクタチューブであって、潰れた第1の構成において、前記細長い反転支持カテーテル上で反転されて、前記細長い反転支持カテーテル内に保持される可撓性トラクタチューブと、
前記可撓性トラクタチューブの自由な第1の端部の周りに少なくとも部分的に配置された環状バイアスとを備え、
前記可撓性トラクタチューブは、前記細長い反転支持カテーテルの遠位端開口から延出して、拡張した第2の構成に拡張するように構成されており、
前記環状バイアスは、前記潰れた第1の構成から前記拡張した第2の構成へと、前記可撓性トラクタチューブとともに拡張するように構成されており、前記可撓性トラクタチューブが前記拡張した第2の構成にあるときに、前記環状バイアスが、前記細長い反転支持カテーテルの外径よりも大きい直径を有することを特徴とする血栓除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記環状バイアスがリングを含むことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、
前記環状バイアスが、ジグザグなストラットパターンを有するステントを含むことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の装置において、
前記可撓性トラクタチューブが前記拡張した第2の構成にあるときに、前記環状バイアスが、前記細長い反転支持カテーテルの外径の1.1倍〜5倍の直径を有することを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の装置において、
前記環状バイアスが、予め設定された複数の潰れ位置を有し、その周囲で、前記環状バイアスが潰れ又は拡張するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の装置において、
前記環状バイアスが、複数のローブを備え、前記複数のローブが、前記環状バイアス上にそれぞれの複数の潰れ位置を含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置において、
前記環状バイアスが、前記可撓性トラクタチューブの内側および外側のうちの1または複数に結合されていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の装置において、
前記環状バイアスが、前記可撓性トラクタチューブの長軸に沿う方向に向けられた複数のリードインアームを含むことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の装置において、
反転していない構成にある可撓性トラクタチューブが、前記細長い反転支持カテーテルの外径の1.1倍〜4倍に拡張するように付勢され、前記可撓性トラクタチューブが、反転した構成において、前記細長い反転支持カテーテルの内径の0.5倍よりも大きくなるようにさらに付勢されることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の装置において、
前記細長い反転支持カテーテルは、前記可撓性トラクタチューブが前記拡張した第2の構成にあるときに、前記環状バイアスを通って、前記可撓性トラクタチューブと前記細長いプラーの外壁との間に押し込まれるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の装置において、
前記可撓性トラクタチューブが、織られた材料、編組み材料、メッシュ材料または編まれた材料を含むことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の装置において、
前記可撓性トラクタチューブが、200gの力未満の軸方向圧縮下で半径方向に潰れるように十分に柔軟であることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載の装置において、
前記細長いプラーを通って延びるガイドワイヤルーメンをさらに備え、前記ガイドワイヤルーメンが、ガイドワイヤを通過させるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項11に記載の装置において、
前記可撓性トラクタチューブが編まれていることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか一項に記載の装置において、
前記可撓性トラクタチューブが、鋼、ポリエステル、ナイロン、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ニチノールおよび布のうちの1または複数を含むことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の装置は、体内からの対象物の機械的除去に関する。より具体的には、機械的な血栓除去装置が本明細書に記載されている。
【背景技術】
【0002】
多くの血管に係る問題は、血管を通る不十分な血流に起因する。不十分または不規則な血流の原因の1つは、血栓または塞栓と呼ばれる血管内の閉塞である。血栓は多くの理由により生じ、それには外科手術のような外傷の後や他の原因によるものが含まれる。例えば、米国における120万を超える心臓発作の大部分は、冠状動脈内に形成される血栓(塞栓)によって引き起こされる。多くの場合、他の組織に損傷を与えないように、できるだけ低侵襲的な方法で身体から組織を除去することが望ましい。例えば、患者の血管系からの血栓などの組織の除去は、患者の病気および生活の質を改善し得る。
【0003】
血栓が形成されると、形成領域を通る血液の流れが事実上止まり得る。血栓が動脈の内径部を横切って延在する場合、動脈を通る血流を遮断してしまう。1つの冠状動脈が100%の血栓症となった場合、その動脈内での血流は止まり、例えば心臓壁の筋肉(心筋)へ酸素を運ぶ赤血球の供給が足りなくなる。そのような血栓症は、血液の損失を防止するためには不要であるが、アテローム性動脈硬化症による動脈壁の損傷によって動脈内で引き起こされてしまう可能性がある。このため、アテローム性動脈硬化症の原因となる疾患は、急性酸素欠乏(虚血)を引き起こさないが、誘発された血栓症を介して急性虚血を誘発し得る。同様に、頸動脈の1つの血栓症は、頭蓋内の重要な神経中枢への酸素供給が不十分となるために脳卒中を引き起こすことがある。酸素欠乏は筋肉活動を減少させるか妨げ、胸痛(狭心症)を引き起こし、ひいては心筋が壊死し、心臓がある程度恒久的に機能しなくなる可能性がある。心筋細胞の壊死が広範囲に及ぶ場合、心臓は、身体の生命維持に必要な血液を十分に送ることができなくなる。虚血の程度は、必要な酸素を提供できる側副血管および側副血行の存在を含む多くの要因によって影響される。
【0004】
臨床データは、血栓の除去は有益であり、結果の改善のために必要でさえあることを示している。例えば、末梢血管系において、発見と処置により、切断の必要性を80%低減することができる。動脈または静脈系のこれらの疾患を治療する物理療法の最終的な目標は、迅速、安全かつ費用対効果よく、閉塞を除去するか開通性を回復させることである。これは、血栓の溶解、細片化、血栓吸引またはこれらの方法の組み合わせによって達成され得る。
【0005】
機械的な血栓除去装置が特に有利となる可能性がある。また、血栓の大きさ、位置および程度に応じて、安全かつ効果的な方法で、血栓を機械的に回収し分離することが特に有利となる場合もある。血栓除去装置、特に、体内から血栓のような組織を除去するのにより有効な機械的な血栓除去装置が必要とされている。本明細書では、上述した必要性および問題に対処することができる装置(デバイス、システムおよびキット)およびそれらの例示的な使用方法を説明する。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、機械的な血栓除去装置(装置、システムなど)およびそれらを使用および製造する例示的な方法を説明する。これらの装置は、末梢血管および神経血管領域を含む、特に身体の狭い領域において信頼性の高い動作を行うように構成することができる。典型的には、本明細書に記載の機械的な血栓除去装置は、トラクタ(例えば、トラクタ領域、トラクタ部分など)を含む反転するトラクタの血栓除去装置であり、トラクタが、細長い反転支持体の遠位端開口で回り込んで折り返す(ローリングする)際にそれ自体が反転する材料の可撓性チューブを含む。細長い反転支持体は、典型的にはトラクタが中に反転する遠位端開口を有するカテーテルを含む。可撓性トラクタは、反転してそれ自体の中に折り返して、コンベアのような動きで細長い反転支持体内に引き込まれるものであってもよく、外向き領域が、例えば細長い反転支持体のルーメン内で、内向き領域になるように回り込むようになる。このように、ローリング運動によって、血管内の血栓または他の対象物を細長い反転支持体内に引き込むことができる。
【0007】
本装置は、体内での展開を使用して、潰れた構成から展開することができ、トラクタは細長いプラー/プッシャ部材(中空のチューブ、ワイヤなど)上で折り畳まれ、血管内に配置するためのコンパクトな形態へと押し潰される。トラクタの遠位端が血管内の定位置に達すると、トラクタは拡張されて開き、トラクタが折り返されて反転されるカテーテルの遠位端が、トラクタとプラー/プッシャ部材との間で遠位方向に前進し、その結果、プラー/プッシャが近位方向に引っ張られると、カテーテルの遠位端開口が遠位側に配置され、トラクタが遠位端で折り返して反転することができる。
【0008】
実際には、遠位端での折り返しおよび反転を容易にするために非常に高い柔軟性を維持しながらも、半径方向に大きく(例えば、直径の0.7倍未満、直径の0.6倍、直径の0.5倍、直径の0.4倍、直径の0.3倍、直径の0.2倍、直径の0.1倍などに)容易に圧縮することができるトラクタを提供することが有益である。さらに、トラクタは、カテーテル内で潰れたとき(カテーテル内へと折り返されて反転した後)に、カテーテルの内径の0.7倍(例えば、0.7倍、0.75倍、0.8倍、0.85倍、0.9倍、0.95倍など)よりも大きい外径を有するように、有利には付勢される。いくつかの変形例では、カテーテルの外径部に沿って延びるトラクタの部分の外径が、カテーテルの外径の1.1倍〜2倍(例えば、1.1倍〜1.9倍、1.1倍〜1.8倍、1.1倍〜1.7倍、1.1倍〜1.6倍、1.1倍〜1.5倍など)の内径を有するように付勢されることが特に有益となる場合がある。
【0009】
残念ながら、体内で展開を行うときに、カテーテルの遠位端が、拡張したトラクタと内側プラー/プラーとの間に容易に、確実に、かつロバストに挿入される開放端領域を有するトラクタを提供することは、特に困難であることが判明しており、特に、装置が湾曲し、屈曲し、または曲がりくねった身体部分内に展開されるときは尚更である。カテーテルの遠位端がトラクタの外側端部とプラー/プッシャとの間にハッキリときれいに入っていない場合、それがトラクタに引っ掛かり、正常な動作を妨げる可能性がある。
【0010】
本明細書には、カテーテルの遠位端(先端)がトラクタの自由端とプラー/プッシャとの間に遠位方向に展開され、トラクタの他端がプラー/プッシャに取り付けられて反転することができるように、装置の展開、特に体内展開を改善および促進するための装置が記載されている。
【0011】
例えば、本明細書には、血管から血栓を除去するために使用される機械的な血栓除去装置が記載されている。これらの装置の何れかは、環状バイアスを含むことができ、この環状バイアスは、可撓性トラクタチューブが細長い反転支持カテーテル内の潰れた構成から拡張する場合においても、細長い反転支持カテーテルが環状バイアスを通って可撓性トラクタチューブと細長いプラー/プッシャ(「細長いプラー」)との間に挿入されて、細長い反転支持カテーテルの遠位端開口で可撓性トラクタチューブを反転させるための装置が準備されるように、可撓性トラクタチューブを開いた状態に保持する。
【0012】
例えば、本明細書に記載の装置は、遠位端および遠位端開口を有する細長い反転支持カテーテルと、細長い反転支持カテーテル内に延びる細長いプラーと、自由な第1の端部と、細長いプラーの遠位端領域に連結された第2の端部とを有する可撓性トラクタチューブであって、細長いプラー上で反転されるとともに、潰れた第1の構成において細長い反転支持カテーテル内に保持される可撓性トラクタチューブと、可撓性トラクタチューブの自由な第1の端部の周りに配置された環状バイアスとを含むことができ、可撓性トラクタチューブは、細長い反転支持カテーテルの遠位端開口から延出して、拡張した第2の構成に拡張するように構成されており、拡張した第2の構成にあるときに、環状バイアスは、細長い反転支持カテーテルの外径よりも大きい直径(例えば、拡張した第2の構成にいて細長い反転支持カテーテルのODの1.1倍〜10倍、1.1倍〜10倍など)を有する。
【0013】
例えば、血管から血栓を除去するための機械的な血栓除去装置は、遠位端および遠位端開口を有する細長い反転支持カテーテルと、細長い反転支持カテーテル内に延びる細長いプラーであって、中央ルーメンを有する細長いプラーと、自由な第1の端部と、細長いプラーの遠位端領域に連結された第2の端部とを有する可撓性トラクタチューブであって、可撓性トラクタチューブが、織られた材料、編組み材料、メッシュ材料および/または編まれた材料を含み、細長いプラー上で反転され、かつ、潰れた第1の構成において細長い反転支持カテーテル内に保持され、可撓性トラクタチューブが、反転していない構成において、細長い反転支持カテーテルの外径の1.1倍〜4倍に拡張するように付勢され、反転した構成において、細長い反転支持カテーテルの内径の0.5倍よりも大きくなるようにさらに付勢される、可撓性トラクタチューブと、可撓性トラクタチューブの自由な第1の端部の周りに配置された環状バイアスとを含むことができ、可撓性トラクタチューブは、細長い反転支持カテーテルの遠位端開口から延出して、拡張した第2の構成に拡張するように構成されており、細長い反転支持カテーテルが環状バイアスを通って、可撓性トラクタチューブと細長いプラーの外径部との間に押し込まれるように、環状バイアスは、拡張した第2の構成において、細長い反転支持カテーテルの外径よりも大きい(例えば、細長い反転支持カテーテルの外径の1.1倍より大きい)直径を有する。
【0014】
環状バイアスは、リング、ステント(例えば、ジグザグなストラットパターンを有するステント)、ローブバイアスなどを含む任意の適切なバイアスとすることができる。環状バイアスは、可撓性トラクタチューブの自由開放端に取り付けることができる。環状バイアスは、縫い合わせ、接着剤などによって取り付けることができる。代替的または追加的には、環状バイアスは、可撓性トラクタチューブの開放端を形状固定することによって形成されるようにしてもよい。
【0015】
特に、可撓性トラクタチューブは、反転していない構成において、細長い反転支持カテーテルの外径の1.1倍〜4倍に拡張するように付勢され、反転した構成において、細長い反転支持カテーテルの内径の0.5倍よりも大きく拡張するようにさらに付勢されるようにしてもよい。
【0016】
細長い反転支持カテーテルは、可撓性トラクタチューブが拡張した第2の構成にあるときに、環状バイアスを通って、可撓性トラクタチューブと細長いプラーの外径部との間に押し込まれるように構成されるようにしてもよい。
【0017】
一般に、可撓性トラクタチューブは、織られた材料、編組み材料、メッシュ材料または編まれた材料を含むことができる。例えば、可撓性トラクタチューブは、編まれた材料であってもよい。可撓性トラクタチューブは、典型的には、細長い反転支持カテーテルの遠位開口端で容易に折り返すことができる軟質材料で形成される。例えば、可撓性トラクタチューブは、支持が無い状態で200gの力未満の軸方向圧縮下で半径方向に潰れる程度に十分に柔らかくてもよい。可撓性トラクタチューブは、鋼、ポリエステル、ナイロン、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ニチノールまたは布を含むことができる。
【0018】
これらの装置の何れかは、ガイドワイヤとともに使用するように構成することができる。例えば、これらの装置の何れかは、ガイドワイヤを通すように構成された細長いプラーを通って延びるガイドワイヤルーメンを含むように構成されるものであってもよい。
【0019】
任意の適切な細長い反転支持カテーテルを使用することができるが、特に、細長い反転支持カテーテルは、その遠位端が、より近位側の領域よりも硬い最遠位端まで、概して軟質であるような硬度プロファイルを有するようにしてもよい(例えば、最も遠位側5mm、最も遠位側4mm、最も遠位側3mm、最も遠位側2mm、最も遠位側1mm等が、遠位の長さ方向に沿って徐々に柔らかくなることはなく、直ぐ近位側の領域よりも硬度が高い)。例えば、細長い反転支持カテーテルの材料硬度は、遠位端開口まで、カテーテルの遠位端にわたって概して減少させることができ、遠位端開口は、遠位端の直ぐ近位側の領域の材料硬度よりも高い材料硬度を有することができ、さらに、遠位端開口は、丸みを帯びたリップ状の外形を有する。
【0020】
細長いプラーにはハイポチューブが含まれる。可撓性トラクタチューブは、任意の適切な長さとすることができる。例えば、可撓性トラクタチューブは、3cm〜50cmの長さを有することができる。
【0021】
本明細書に記載の装置の何れかの細長い反転支持カテーテルは、身体の管(例えば、血管)内に挿入することができる(特に遠位端が)任意の適切なカテーテル、例えば、可撓性チューブであるか、またはそれを含むことができ、その中には、より柔軟なトラクタ部分を、細長い反転支持体に対して引っ張ることによって、引き込むことができる。細長い反転支持カテーテルは、いくつかの変形例では、外側カテーテル(例えば、トラクタのためのプラーが内側カテーテルと呼ばれる場合)および/または反転カテーテルとも呼ばれ、また、その遠位端開口の周りでトラクタの反転を支持することができるため、支持カテーテルとも呼ばれる。細長い反転支持カテーテルは、編まれた部分または織られた部分、螺旋状部分またはコイル状部分など(例えば、編組されたシャフトを有するもの)を含むことができ、単層または多層を有することができ、ポリマー、金属など(例えば、PTFE)を含む生体適合性材料で形成することができる。細長い反転支持体を構成し得る血管カテーテルの例には、マイクロカテーテルが含まれる。
【0022】
可撓性トラクタチューブは単にトラクタまたはトラクタ領域と呼ばれることがあり、それらは、血管内から血栓を効率的に「捕らえる」ことができる一方で、引っ掛かりを防止するように構成されている。例えば、本明細書には、除去のために装置内に機械的に引き込まれる際に、血栓を捕らえ、または捕捉するように構成された機械的な血栓除去装置が記載されている。血栓の機械的捕捉に加えて吸引を使用することもできるが、いくつかの変形例では、吸引は使用されない。
【0023】
可撓性トラクタチューブは、特に(例えば、装置の遠位端で)反転中に曲がる際に、またはその際のみに、トラクタ領域から延出する突起を含むことができる。それらの突起は、トラクタが細長い反転支持体と平行に保持されているときに、フラット、あるいは非延出のままであってもよい。代替的には、突起は常に延出していてもよい。一般に、トラクタは、織られた材料、編まれた材料またはレーザカットされた材料シートから形成することができる。編まれた材料および/または織られた材料は、繊維状材料(天然繊維、合成繊維などを含む)、ポリマー材料などであってもよい。例えば、織られた材料または編まれた材料を形成する材料(例えば、ストランド)は、モノフィラメントポリマー、マルチフィラメントポリマー、NiTiフィラメント、放射線不透過性金属中心を有するNiTiチューブ、コバルトクロム合金フィラメント、放射線不透過性金属中心を有するコバルトクロム合金チューブ、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートおよびポリプロピレンのうちの1または複数であってもよい。トラクタ領域内に形成された材料シート(例えば、固体の材料シート)は、ポリマー材料(例えば、PTFE)、シリコーン材料、ポリウレタン、形状記憶合金、ステンレス鋼などのうちの1または複数であってもよい。シートは、押出成形、接着されるもの等であってもよい。シートは、孔および/または突起を形成するように切断することができる。例えば、シートは、1または複数のレーザカット突起を含むことができる。これらの装置の何れかは、親水性および/または疎水性コーティングが施されるようにしてもよく、かつ/または孔を含むようにしてもよい。トラクタの気孔率は60%超(70%超、75%超、80%超、85%超など、60〜95%、65〜95%、70〜95%など)であってもよい。
【0024】
本明細書に記載の装置の何れかにおいては、細長い反転支持カテーテルが、遠位端でトラクタ領域のローリング(反転)を促進するように構成されるようにしてもよい。例えば、本明細書に記載の装置の何れかにおいては、カテーテルの材料硬度が、遠位端開口までカテーテルの遠位端部にわたって減少するように、カテーテルが構成され、遠位端開口が、遠位端の直ぐ近位側の領域の材料硬度よりも高い材料硬度を有することができ、さらに、遠位端開口が、丸みを帯びたリップ状の外形を有することができる。カテーテルの遠位端は、より厚いことから、より硬くてもよく(例えば、カテーテルの遠位端を二重に折り返すことによって形成されるようにしてもよく)、かつ/または、隣接するより近位側の領域よりも硬い材料(補強材料を有することを含む)から形成されるようにしてもよい。
【0025】
本明細書に記載の装置の何れかにおいては、可撓性トラクタチューブが、潤滑性コーティング、金属コーティング、ヘパリンコーティング、接着性コーティングおよび薬物コーティングからなる群のうちの1または複数のコーティングを含むことができる。特に、トラクタは、均一または不均一な潤滑性(例えば、親水性)コーティングを含むことができる。
【0026】
上述したように、これらの装置の何れかは、トラクタの遠位端に連結された細長いプラーなどのプラーを含むことができる。それらの装置の何れかは、トラクタの遠位端に連結されたカテーテル内の細長いプラーを含むことができる。細長いプラーは、可撓性チューブを介してガイドワイヤのルーメンと連続する内側ルーメンを有するハイポチューブを含むことができる。
【0027】
一般に、トラクタは任意の適切な長さであってもよい。例えば、トラクタの長さを、3〜100cm(例えば、3〜50cm、3〜40cm、3〜30cm、3〜20cm、10〜100cm、10〜50cm、20〜100cm、20〜50cmなど)とすることができる。
【0028】
これらの装置の何れかにおいて、例えば細長いプラーを引っ張ることにより、可撓性チューブの遠位端に300グラム未満の力(例えば、400g未満の力、300g未満の力、200g未満の力、100g未満の力、90g未満の力、80g未満の力、70g未満の力、60g未満の力、50g未満の力、10g未満の力など)を加えることによって、トラクタが反転してカテーテル内に折り返されるように、装置を構成することができる。例えば、上述したように、装置は、親水性コーティング、カテーテルおよび/またはトラクタ上の潤滑剤、トラクタとカテーテルとの間のスリーブなどを含むことができる。このトラクタをカテーテル内に引き込むのに必要な力は、典型的には、トラクタの遠位端でトラクタが回り込んで折り返すのに必要とされる力を指している。
【0029】
トラクタは非常に柔らかいため、引っ掛かることなく、かつ/または、カテーテルの遠位端開口でトラクタが回り込んで折り返すのに大きな力を必要とすることなく、細長い反転支持体を形成するカテーテルの遠位端の周りでトラクタが容易に折り返すように、本明細書に記載の装置の何れかを構成することができる。特に、細長い反転支持体に対して、典型的には曲がることとなる軸方向の圧縮強度の低いトラクタは、反転する際に細長い反転支持体の引っ掛かり防止することが見出されている。特に、約500gの力よりも小さい(例えば、約500gの力、約400gの力、約300gの力、約200gの力、約150gの力、約100gの力、約50gの力などよりも小さい)軸方向の圧縮下で半径方向に潰れるように構成された、支持されていないトラクタ(例えば、カテーテルに支持された環状開口部で折り返していないトラクタ)は、引っ掛かりを防止するのに特に有用となることがある。本明細書に記載されているものを含む、殆どの編まれたトラクタ、織られたトラクタおよび編組みトラクタについては、トラクタがこれよりも大きい軸方向の圧縮力に耐えるように構成されている場合、トラクタが引っ掛かり、かつ/または反転に過度の力を必要とすることがある。このため、本明細書に記載の装置および方法の何れかにおいて、トラクタは、カテーテルからの支持なしに、反転時に200g未満の力の軸方向圧縮下で半径方向に潰れる程度に、十分に柔らかい(かつ代わりに曲がる)ものであってもよい。
【0030】
さらに、本明細書に記載の装置の何れかにおいて、トラクタは、カテーテルの外径部上に延在している(第1の構成に対して反転した)第2の構成において、カテーテルの外径部よりも大きく拡張するように付勢されるものであってもよい。このトラクタはさらに、トラクタが細長い反転支持体のカテーテル内にある第1の(例えば、反転していない)構成において、細長い反転支持体のカテーテルの内径部よりも大きく拡張するように付勢されるものであってもよい。このように、弛緩した構成では、細長い反転支持体を用いて組み立てる前に、細長い反転支持体のカテーテルと比較してトラクタを大きくすることができる。「反転していない」とされる細長い反転支持体のカテーテル内に延びるトラクタの部分は、カテーテルの内径よりも大きい内径を有するかもしれないが、その場合、カテーテル内で押し潰れることなく、カテーテルの内径部の壁に向けてトラクタが押し付けられる傾向がある。さらに、「反転した」構成、例えば、細長い反転支持体のカテーテル上に折り返されてそれに沿った部分の構成におけるトラクタの内径は、細長い反転支持体のカテーテルの外径より大きくてもよい。この配置構成により、引っ掛かりを防止することができるとともに、トラクタと細長い反転支持体のカテーテルの外側との間の抵抗の増加を防止することができる。カテーテルは、例えば熱固定によって、反転した構成と反転していない構成の両方で拡張するように付勢されるものであってもよい。トラクタは、カテーテルの遠位端で回り込んで折り返すことによって、第1の構成と第2の構成との間を移行するように反転されるものであってもよい。すなわち、「反転した」および「反転していない」という用語は相対的な用語である。
【0031】
環状バイアスは、可撓性トラクタチューブの拡張した直径よりも僅かに(例えば、5%超、10%超、15%超、20%超、25%超など)大きい拡張した開いた構成を有するように付勢されるものであってもよい。さらに、環状バイアスは、座屈、潰れなどを防止するために、可撓性トラクタチューブの開いた(自由)端よりも相対的に「硬い」ものであってもよい。いくつかの変形例では、環状バイアスは、環状バイアス内に挿入されたときに細長い反転支持カテーテルに引っ掛かることを防止するために、滑らかな縁部および/または湾曲した縁部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の実施形態の新規な特徴は、特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって得られるであろう。
図1図1A図1Hは、身体領域から血栓といった対象物を機械的に除去するための装置の一例を示している。図1Aは、装置の細長い反転支持カテーテル部分の一例を示している。細長い反転支持体の少なくとも遠位端は、カテーテルとして構成されている。図1Bは、遠位端開口により形成される開口部を示している図1Aの細長い反転支持体のカテーテルの遠位端(開口)の部分的セクションの拡大図を示し、図1Cは、プラー(この例のプラーはカテーテルとして構成されている)上に取り付けられた可撓性トラクタチューブの一例を示している。トラクタは、第1の構成で示されている。いくつかの変形例では、図1Dに示すように、可撓性トラクタチューブは、例えばヒートセットにより、開口するように付勢されて、細長い反転支持体のカテーテルの内径よりも大きい外径を有する。図1Dは、図1Cと同じ遠位トラクタ領域を示しており、拡張可能な第1の端部領域が拡張している。この第1の構成は、図1Eに示すように、細長い反転支持体内に圧縮され、遠位端が、細長い反転支持体のカテーテル部分で裏返されている。図1Eにおいて、組み立てられた機械的血栓除去装置は、遠位端および遠位端開口を有する細長い反転支持カテーテルを含み、細長いプラーが細長い反転支持カテーテル内に延び、可撓性トラクタチューブの一端が細長いプラーに連結されている。可撓性トラクタチューブおよびプラーは、(例えば、細長い反転支持カテーテルを近位方向に引っ張ることによって、かつ/または細長いプラーを遠位方向に押すことによって)、遠位端の外に延びるものも含み、細長い反転支持カテーテルを通って延びることができる。可撓性トラクタチューブは、血管内に配置するために(図1Eに示すような)潰れた第1の構成に最初は保持されていてもよく、細長い反転支持カテーテルが可撓性トラクタチューブと細長いプラーとの間に配置された状態で、図1Fに示すように展開および拡張されるようにしてもよい。可撓性トラクタチューブは、(カテーテルの遠位端で反転した)第2の構成において、トラクタが細長い反転支持体のカテーテルの外径よりも大きい「弛緩した」外径を有するように、付勢されるものであってもよい。 図1Gおよび図1Hは、図1Eおよび図1Fに示すような装置を使用して、カテーテルの遠位端内に引っ張られるときに拡張可能な第1の端部領域が反転してカテーテル内に血栓を引き込むように、可撓性トラクタチューブを近位方向に引っ張り、かつ/またはカテーテルを血栓に向かって遠位方向に前進させることにより、血栓を除去することを示している。 図1Iは、トラクタとプラーの代替的な変形例を示している。図1Iにおいては、トラクタが、先細のまたは細いプラーの遠位端に取り付けられた状態で示されており、遠位端領域にテーパが付けられており、トラクタへの取付部位またはその近傍に放射線不透過性マーカを含み、トラクタが、例えば、編まれ、編組され、織られている。このため、いくつかの変形例では、プラーの遠位端領域が、プラーの近位端よりも大きい可撓性を有することができる。プラーは、中空(例えば、カテーテルまたはハイポチューブ)でも、中実(例えば、ワイヤのようなもの)であってもよい。
図2図2A図2Fは、開示の実施形態に従って設計された機械的な血栓除去装置を(体内で)展開する例示的な方法を示している。図2Aに示すように、細長い反転支持カテーテルは、(単独で、またはガイドワイヤにより)血栓近傍の血管内に配置されている。いくつかの変形例では、可撓性トラクタチューブおよび細長いプラーは、細長い反転支持カテーテル内、例えば、遠位端の近傍に予め配置してもよく、あるいは、図2Bに示すように、後で定位置に移動されるようにしてもよい。図2Cに示すように、可撓性トラクタチューブは、細長い反転支持カテーテルから外に展開されて、拡張することが可能となる。その後、細長い反転支持カテーテルは、図2Dに示すように、可撓性トラクタチューブと細長いプラーとの間を遠位方向に移動される。図2Eに示すように、細長い反転支持カテーテルが可撓性トラクタチューブと細長いプラーとの間を遠位方向に配置されると、可撓性トラクタチューブは、図2Fに示すように、細長い反転支持カテーテル内へと折り返されて反転される。この例では、反転する可撓性トラクタチューブが、細長い反転支持カテーテル内へと反転される際に、血栓を捕らえるものとして示されている。可撓性トラクタチューブは、細長い反転支持カテーテルの遠位端開口から延び、拡張した第2の構成に拡張する。可撓性トラクタチューブは、反転していない構成(例えば、図2D)において、細長い反転支持カテーテルの外径の1.1倍〜4倍に拡張するように付勢され、さらに、反転した構成において(図2Fに示すようにカテーテル内に引き込まれたとき)、細長い反転支持カテーテルの内径の0.5倍より大きく拡張されるように付勢されている。
図3図3Aおよび図3Bは、内部に可撓性トラクタチューブを圧縮することができる、段付きの外径部を有する細長いプラーを備えた装置の第1変形例を示している。この構成により、細長い反転支持カテーテル内における移動性を改善することができる。この変形例は、中空の細長いプラーを介した真空への適用に容易に適合させることができる。図3Aでは、可撓性トラクタチューブが潰れている。図3Bでは、可撓性トラクタチューブが、図示のように拡張している。
図4図4A図4Cは、図3Aおよび図3Bに示す段付き外径部を有する細長いプラーの展開を示している。図4Aでは、細長いプラーは、細長い反転支持カテーテルの遠位端に配置され、図4Bに示すように、潰れた可撓性トラクタチューブが少なくとも僅かに拡張されるまで、カテーテルの遠位端開口から延出している。後述する環状バイアスを、この変形例においても使用することができる。その後、図4Cに示すように、細長い反転支持カテーテルが可撓性トラクタチューブと細長プラーとの間に配置され、その結果、細長いプラーを引っ張ることにより可撓性トラクタチューブを近位方向に引っ張って細長い反転支持カテーテル内に反転させるまで、可撓性トラクタチューブが細長い反転支持カテーテルによって支持される。
図5図5A図5Fは、環状のバイアスを含む図3Aおよび図3Bの装置を使用して血管内から塞栓(血栓)を除去することを示している。図5Aにおいて、細長い反転支持カテーテルは、血管内の血栓の近傍に配置されている。可撓性トラクタチューブは、図5Bに示すように、第1の端部で細長いプッシャに取り付けられ、開いた自由な第2の端部に環状バイアスを有する。細長いプッシャは、カテーテルを通って遠位方向に延び、細長い反転支持カテーテルの遠位端から外へ延びている。図5Cでは、環状バイアスが、可撓性トラクタチューブの自由端を開いた状態に保持する。いくつかの変形例では、可撓性トラクタチューブが、カテーテルの外径より僅かに大きい(例えば、細長い反転支持カテーテルの外径の1.1倍よりも大きい)直径に拡張するように付勢されるが、環状バイアスは、さらに僅かに開いており、図示のように、拡張して開いた状態では、剛性がさらに高くなるようにしてもよい。その後、細長い反転支持カテーテルは、図5Dおよび図5Eに示すように、環状バイアスを通って、可撓性トラクタチューブと細長いプラーとの間に遠位方向に挿入される。図5Eに示すように、細長いプラーおよび/または細長い反転支持カテーテルを介して真空を与えることができる。図5Fでは、(真空を用いて、または用いず)細長いプラーを近位方向に引き寄せて、可撓性トラクタを細長い反転支持カテーテルの遠位端で折り返して細長い反転支持カテーテル内へと反転させることにより、図示のように、細長い反転支持カテーテル内に血栓を引き込むことができる。
図6図6A図6Fは、可撓性トラクタチューブの開いた自由端に環状バイアスを含む装置の別の変形例を示している。図6Aには、ガイドワイヤの任意選択的な使用により、細長い反転支持カテーテルが血管の管腔内に配置されることが示されている。図6Bでは、細長いプラーおよび可撓性トラクタチューブが、ここでもガイドワイヤを介して、細長い反転支持カテーテル内で遠位側に配置され、可撓性トラクタチューブが、可撓性トラクタチューブの一端に取り付けられ、可撓性トラクタチューブの他端が、自由な(拘束されていない)端部で環状バイアスに取り付けられている。ガイドワイヤは、細長い反転支持カテーテルの遠位端から可撓性トラクタチューブを展開するときに、取り外されるようにしても、あるいは所定の位置に残されるようにしてもよい。図6Cでは、可撓性トラクタチューブ全体を含むプラーの遠位端が、細長い反転支持カテーテルから遠位方向に延び、環状のバイアスが、細長い反転支持カテーテルの外径よりも大きな直径に拡張している。図6Dおよび図6Eでは、細長い反転支持カテーテルが、環状バイアス内を通って、可撓性トラクタチューブと細長プラーとの間を遠位方向に前進する。このため、可撓性トラクタチューブが細長プラーにより近位方向に引っ張られて細長い反転支持カテーテルの遠位端開口で反転する際に、細長い反転支持カテーテルが可撓性トラクタチューブを支持することができる。装置は、図6Eに示すように、(例えば、細長いプラーを近位方向に引っ張っている間に)前進し、それにより、血管から血栓を捕捉して除去することができる。
図7図7A図7Dは、本明細書に記載の変形例の何れかにおいて、可撓性トラクタチューブの拡張した開放(自由)端を支持するために使用することができる環状バイアスの4つの変形例を示している。縦の欄は、左から右に向かって、拡張したときの端面図、拡張したときの側面図、(例えば、細長い反転支持カテーテル内で)潰れたときの端面図、および側面図を、可撓性トラクタチューブに取り付けられた状態でそれぞれ示している。図7Aには、リング状の環状バイアスが示されている。図7Bでは、環状バイアスが、ローブまたはペタルを有する部材であり、圧縮されたときに予測通りに潰れることができる(例えば、潰れたときの端面図を参照)。図7Cでは、環状バイアスが、複数のジグザグ状のストラット(部材)を有するステントのような構造となっている。
図8図8A図8Cは、(144端部、0.00075インチのNiTi編組み可撓性トラクタチューブの開放端に取り付けられた、0.002インチの厚さを有する正弦波状に配置されたストラットのループから形成される)ステントのような環状バイアスを有する可撓性トラクタチューブを含む装置の一例を示している。図8Aは、図8Bの可撓性トラクタチューブに取り付けられた、拡張した環状バイアスを示している。図8Cには、図8Aの環状バイアスを有する可撓性トラクタチューブが細長いプラーに取り付けられた状態で示されている。
図9図9Aは、環状バイアスを有する可撓性トラクタチューブ(144端部、0.00075インチのNiTi)の別の例を示している。図9Bは、細長い反転支持カテーテルの開いた遠位端で反転する可撓性トラクタチューブの開放端を示している。図9Cは、細長い反転支持カテーテルでの反転を助けることができるリードインアームを含むステント状の環状バイアスの概略図を示している。
図10図10は、細長い反転支持カテーテルの挿入を容易にするために、反転した形状を有するように開放端で熱固定された可撓性トラクタチューブの一例を示している。図10では、可撓性トラクタチューブの開放端(拘束されていない端部)が二重に折り返されており、それにより、可撓性トラクタチューブと細長いプラーとの間の空間に細長い反転支持カテーテルを案内するのを助けることができる。この例では、可撓性トラクタチューブが追加の環状バイアスを必要としないこともある。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書には、概して、引っ掛かることなく体内(例えば、カテーテル内)で展開されるように構成された反転可能な可撓性トラクタチューブを有する機械的な血栓除去装置が記載されている。これらの装置は何れかは、細長い反転支持カテーテルを含むことができ、その遠位端で可撓性トラクタチューブが反転する。展開形態では、可撓性トラクタチューブは、近位方向に引っ張られたときに当該トラクタチューブが細長い反転支持カテーテルの開口部内に延びるように、細長い反転支持カテーテルの遠位端開口で二重に折り返す(例えば、反転する)可撓性チューブを含む。トラクタチューブは、一端が細長いプラーに取り付けられるものであってもよい。細長いプラーを近位方向に引っ張ると、トラクタが細長い反転支持カテーテルの遠位端開口で折り返して反転し、それにより、血栓を捕捉して細長い反転支持カテーテル内に引き込むことができる。
【0034】
本明細書に記載の装置の何れかは、例えば、遠位端におけるトラクタのスライドおよび反転を促進するためのコーティング(例えば、親水性、潤滑性コーティング等)などを含むことができる。さらに、これらの装置の何れかは、血栓の捕捉および/または解離を促進するように構成された1または複数の突起を含むことができる。
【0035】
一般に、血管から血栓を除去するための機械的な血栓除去装置は、遠位端および遠位環状部(遠位端開口)を有する細長い反転支持カテーテルと、細長いプラーに連結された可撓性トラクタチューブを含む可撓性トラクタアセンブリとを有するシステム、アセンブリまたはデバイスとすることができる。可撓性トラクタチューブは、細長い反転支持カテーテルの遠位端開口で折り返して反転するように構成されている。
【0036】
本明細書に記載の多くの実施例では、トラクタアセンブリが、展開されたときに、細長い反転支持カテーテル内に延びるように構成されている。これらの装置の何れかは、例えば、トラクタアセンブリ全体が展開前に細長い反転支持カテーテル内に保持される送達構成と、例えば、可撓性トラクタチューブが細長い反転支持カテーテルの遠位端開口内に引き込まれて細長い反転支持カテーテル内へと折り返して反転するときに、細長い反転支持カテーテルが可撓性トラクタチューブと細長いプッシャとの間に位置して、可撓性トラクタチューブを支持する展開構成との間で切り替わることができる。特に、この装置は、送達構成と展開構成との間の移行がロバストであるように構成することができる。例えば、本明細書中でより詳細に説明するように、本明細書に記載の装置の何れかは、可撓性トラクタチューブと細長いプラーとの間に挿入される細長い反転支持カテーテルの性能を向上させる環状バイアスを含むことができる。
【0037】
図1A図1Iは、本明細書に記載の特徴の何れかを含むことができる機械的な血栓除去装置の様々な構成要素を示している。例えば、図1Aは、本明細書に記載の装置の一部を構成し得るカテーテル(例えば、細長い反転支持カテーテル)を示している。この例では、細長い反転支持カテーテルが、遠位端開口105を含む遠位端領域103を有するカテーテル本体100を含む。この遠位端領域は柔軟性(デュロメータ、例えばショアデュロメータで測定される柔軟性)が高いが、最も遠位の先端(遠位端開口を含む遠位端105)は、その直ぐ近位側の領域よりも実質的に柔らかくなくてもよい。このため、カテーテルの遠位先端領域(例えば、最も遠位の線形寸法x、ここでxは10cm、7cm、5cm、4cm、3cm、2cm、1cm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm)は、近位端から遠位端へと柔軟性が高く/硬度が低くなるが、最も遠位の端部領域107(例えば最も遠位の線形寸法zとして測定、ここでzは1cm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、0.8mm、0.5mm、0.3mm、0.2mm等であり、zは常にxの少なくとも1/3未満)はそのすぐ近位側の領域より硬度が高く、それは遠位先端領域の最も近位側の領域と同じ硬度かより硬くてもよい。
【0038】
図1Aに示すように、細長い反転支持カテーテルは、カテーテルが遠位環状部(遠位端開口)を越えて引っ張られたときに座屈を防止するのに十分な柱強度を有する細長い中空カテーテルである。このため、神経血管用途において、500gまたはそれ未満の圧縮力(例えば、少なくとも約700g、600g、500g、400g、300gなどの圧縮力)が加えられたときに、崩壊(例えば、座屈)しないように、細長い反転支持体を構成することができる。末梢血管用途では、細長い反転支持体が、少なくとも1500gの圧縮力(例えば、少なくとも約2000g、1900g、1800g、1700g、1600g、1500g、1400gなどの圧縮力)に耐えるように選択または構成されるようにしてもよい。一般に、本明細書に記載の装置の何れかは、全長カテーテルではない細長い反転支持カテーテルを含むことができるが、典型的には遠位端において、ロッド、ワイヤまたはハイポチューブなどに連結されたカテーテルの一部を含むことができる。図1Aでは、細長い反転支持カテーテルのカテーテル100を、任意の適切なタイプのカテーテルまたはカテーテルの一部とすることができ、それには、神経血管への使用に適したマイクロカテーテルが含まれる。
【0039】
いくつかの変形例では、細長い反転支持体の遠位端105が、捕捉される(拘束される、引っ掛かる)ことなく、または実質的な摩擦なしに、トラクタがスライドし、またはカテーテルの遠位端で折り返して反転するように適合される。例えば、いくつかの変形例では、遠位先端(端部)が、図1Bに示すように、特に外面(例えば、外径部から内径部への移行部)において、湾曲していてもよいし、またはアール部109としてもよい。
【0040】
図1Cは、引張り可能なトラクタアセンブリ140を形成する、細長いプラー146に連結された可撓性トラクタチューブ144の一例を示している。この例では、トラクタチューブが、プラーと一体化されて、プラーの上を後方に延び、アセンブリを形成することが示されている。可撓性トラクタチューブ147の反対側の端部は開いており、自由となっている(例えば、プラーまたはカテーテルに連結されていない)。以下でより詳細に説明するように、この開いた自由端は、展開および可撓性トラクタチューブとプラーとの間のカテーテルの配置を改善するために、例えば、トラクタチューブ自体の上に戻る形状固定によって、かつ/または環状バイアスを含むことによって、拡張して開いた状態に保持されるように構成されるものであってもよい。図1Cでは、トラクタチューブが、可撓性を有し細長い材料(例えば、織られた、編まれた、あるいは編組された材料など)から形成されている。トラクタは、第1の構成では、プラーから延びるものとして示されている。この第1の構成の可撓性トラクタの弛緩した外径部が、細長い反転支持体のカテーテルの外径部より大きい外径を有し、反転前にトラクタがその中に配置されることが、特に有益となる場合がある。可撓性で管状のトラクタ144は、細長い反転支持体の遠位開口で容易に折り返して、折り畳むことができるように、十分に柔らかく可撓性を有する(例えば、潰れ強度が低い)ものとすることができる。プラー146は、典型的には、より拡張性が低い(または非拡張性の)構造(チューブ、プラーなど)であってもよい。例えば、トラクタ144は、形状固定(熱固定など)により、弛緩した第1の構成では、拘束されていないときの細長い反転支持体のカテーテルの内径の直径の1.1倍〜10倍(例えば、1.1倍〜5倍、1.1倍〜4倍など)の半径方向直径に拡張するように構成されるものであってもよい。図1Dでは、トラクタチューブが、弛緩構成にある図1Cに示す変形例よりも大きな拡張直径を有する。これらの変形例の何れかにおいては、拡張可能なトラクタが、開くように付勢されるようにしてもよい。トラクタは、メッシュ材料、織られた材料、編まれた材料、編組された材料、またはシートの材料から形成することができ、通常は、除去される対象物(例えば、血栓)を捕らえるように構成される。
【0041】
図1Cおよび図1Dでは、トラクタおよびプラーが、2つの部分、すなわちトラクタチューブ144と、細長いプラー146を含む、拡張の小さい(または拡張不可能な)近位部分とを有する。プラーは、ワイヤ、カテーテルまたはハイポチューブなどの別個の領域とすることができ、例えば、遠位端またはその近傍で、トラクタ(例えば、可撓性メッシュ、織物、編組みなど)の端部領域に連結されている。カテーテルの遠位端開口で折り返されて反転するトラクタの反転領域は、遠位方向を向くトラクタの領域を指し、折り返し時に血栓を能動的に捕らえることができる。
【0042】
図1Eでは、細長い反転支持カテーテル100内に、トラクタアセンブリ(図1Dの可撓性トラクタチューブ144およびプラー146)が示されている。トラクタは、例えばプラー上へと、押し潰された状態101となっており、細長い反転支持カテーテル内で潰れた状態で保持されるようにしてもよい。すなわち、図1Eは、展開前(例えば、送達)構成を示している。トラクタアセンブリは、カテーテル内および血管内に配置できるように、カテーテル内で軸方向に移動可能(スライド可能)であってもよい。
【0043】
図1Fは、完全に展開した装置を示している。図1Fでは、トラクタチューブが、拘束されていない構成または展開構成であり、細長い反転支持カテーテルが、トラクタチューブとプラーの間に配置され、その結果、プラーを引っ張ってトラクタチューブを反転させるように細長い反転支持カテーテル内に折り返す(ローリングする)ことにより、トラクタチューブを近位方向に引っ張ることができる。図1Fに示すように、この展開構成のトラクタ(例えば、カテーテルの遠位端で反転した部分)は、細長い反転支持体のカテーテルの外径よりも大きな外径を有する。このため、トラクタ144は、細長い反転支持カテーテルの外径(OD)よりも大きい直径を有する弛緩した拡張形状を有するように付勢されるようにしてもよい。加えて、図1Gおよび図1Hに関連して説明するように、トラクタチューブを反転させて細長い反転支持カテーテル内に引き込んだときに、反転トラクタチューブの外径が、細長い反転支持カテーテルの内径(ID)の0.5倍よりも大きい(例えば、0.6倍よりも大きい、0.7倍よりも大きい、0.75倍よりも大きい、0.8倍よりも大きい、0.9倍よりも大きい、1倍よりも大きい)外径を有するように、(例えば、熱固定などにより)トラクタチューブが構成されるようにしてもよい。こうした細長い反転支持カテーテルのODの直径よりも大きいトラクタチューブの非反転直径と、細長い反転支持カテーテルのIDの0.7倍よりも大きいトラクタチューブの反転直径との組合せは、装置の展開時と、トラクタを細長い反転支持カテーテルの遠位端開口でローリングさせて血栓を捕らえる時の両方において、装置の引っ掛かりを防止するのに驚くほど有用である。トラクタは、拡張可能であり、図示のようにプラーに連結されるものであってもよい。いくつかの変形例では、可撓性トラクタとプラーは同じ材料を含むことができるが、トラクタはより可撓性および/または拡張性があり、あるいは細長いプラー(例えば、プッシュ/プルワイヤまたはカテーテル)に接続されるものであってもよい。
【0044】
図1Gおよび図1Hは、図1Aおよび図1Eの装置コンポーネントのような装置を使用して血栓を除去することを示している。この装置10は展開状態で示されている。この例では、血栓除去装置10が、細長い反転支持カテーテル100と、当該カテーテルの遠位端領域上に延びてカテーテルの遠位端でそれ自体が二重に折り返されて反転する可撓性トラクタチューブ144とを含む血栓除去装置として構成され、外部トラクタの端部領域が、カテーテル内で近位方向に延びてガイドワイヤを通す内部ルーメンを形成する内部の拡張の少ない(この例では、まったく拡張しないものも、拡張の少ないものに含まれる)第2の遠位端領域146(プラー)と連続している。プッシャ/プラー部材は、トラクタの遠位端領域に連続するロッドまたは他の部材であってもよい。図1Gには、装置が、血管160内の血栓155の近くに配置および展開されることが示されている。血栓は、矢印180で示すように、トラクタ140を近位方向にカテーテル101内へと引っ張ることによって、カテーテル内へと引き込まれ、これは、(例えば、図示省略のハンドルを使用して)可撓性トラクタの内側部分を引っ張ることにより、カテーテルの端部開口でトラクタがカテーテルの遠位端内へと折り返されて拡張可能な遠位端領域が反転し、矢印182で示すように、カテーテル内に引き込まれることを示している。カテーテルの外側のトラクタの端部は、カテーテルの外壁から「解放された」ものであってもよい。図1Iは、プラー156に連結されたトラクタチューブ144を含むトラクタアセンブリ154の別の例を示している。この例のプラーは、テーパが付けられており(先細り領域161を有し)、その結果、近位端領域とは異なる可撓性を有する遠位端領域を備えることができる。例えば、トラクタが連結される細い直径の遠位端領域195よりも、近位端領域の可撓性を低くすることができる。アセンブリは、放射線不透過性マーカ165を含む。トラクタは、任意の適切な手段によってプラーに取り付けることができる。例えば、トラクタは、プラーに対して、典型的には永久的に、圧着し、接着し、融合し、または他の方法で取り付けることができる。
【0045】
一般に、本明細書に記載の機械的な血栓除去装置は、作動前および作動中の両方において、可撓性が非常に高いものであってもよい。例えば、一般に、可撓性トラクタは、特に神経血管系の曲がりくねった血管内での操作性に影響を及ぼさないように、細長い反転支持体のカテーテル、特にカテーテルの遠位端領域の剛性/柔軟性を過度に大きくしないようにしてもよい。本明細書には、カテーテルの最後のycm(例えば、最も遠位の20cm、18cm、15cm、12cm、10cm、9cm、8cm、7cm、6cm、5cm、4cm、3cm、2cm、1cmなど)の剛性の増加が所定のパーセンテージ未満(例えば、10%、12%、15%、18%、20%、25%、30%未満など)である可撓性トラクタチューブ部分が記載されている。例えば、本明細書には、カテーテルを通ってカテーテルの遠位端で二重に折り返される可撓性トラクタチューブ部分が記載されているが、そのカテーテルの遠位側5cmの剛性の増加は、カテーテルを通ってカテーテルの遠位端で二重に折り返される可撓性チューブがない場合のカテーテルの遠位側5cmの剛性の15%未満である。
【0046】
トラクタは、織られた材料、編まれた材料、および/または編組み材料であってもよい。反転チューブを形成するために織られた複数の繊維または編まれた複数の繊維を含むことができる織られた材料および編まれた材料については、これらの構造を調整して、引っ掛かりを防止し、かつ/またはトラクタを引いてカテーテル先端で反転させるのに必要な力を低減することができる。例えば、機械式アテローム切除装置は、編組み構造の1または複数を調整すること、編組み角度の最小化すること、カテーテルの外径部(OD)または編組み(例えば、トラクタ)の内径部(ID)の遠位側面に親水性コーティングを含むこと、カテーテルにアール壁を含むこと、および/または隣接する近位領域に対する遠位先端領域の剛性を増加させることによって、曲がりくねった解剖学的構造であっても、血栓を捕らえるときに、カテーテルの先端の周りで自由に折り返すことができる編組み型トラクタを含むことができる。
【0047】
前述したように、トラクタ(例えば、編んだもの、編んだもの、編組みなど)は、カテーテルの内径部(ID)になるべく小さく押し潰されるように構成することができる。例えば、トラクタがカテーテル内径(ID)/カテーテル先端のODの90%、85%、75%、70%、65%、60%または50%以上または未満のIDに潰れることができる。何故なら、トラクタがカテーテル先端の周りに引っ張られると、トラクタ(例えば、組み紐、編組みなど)に軸方向の張力が生じ、トラクタが不用意にカテーテル上で引っ掛かる可能性があるからである。トラクタがカテーテル先端の周りに引っ張られると、トラクタがカテーテルIDを通って引っ張られる際に、トラクタが軸方向に引っ張られて、トラクタ構造に軸方向の張力を生じさせる。カテーテルID(またはいくつかの変形例では、OD)の90%、85%、75%、70%、65%、60%または50%以上のIDでトラクタ要素を詰め込むことにより、軸方向に張力が加えられるときに、トラクタがカテーテル先端を捕らえ/同期する可能性が低くなり、ユーザにより加えられる小さい軸方向の力で、編組みがカテーテル先端の周りで折り返すのを補助することができる。ユーザがトラクタ構造体を先端の周りに引っ張るのに必要な軸方向の力がより小さい場合、カテーテル先端が、トラクタを引き込む際に座屈したり撓んだりする可能性が低くなる。カテーテル先端が座屈する可能性を最小限に抑えることが有利となる場合がある。トラクタは、特定の数の編組み端を選択すること、編組み端のサイズ/直径を選択すること、編組み材料(例えば、マルチフィラメントまたはモノフィラメント)を選択すること、編組み上でバイアス(例えば、編組みの直径)を熱固定すること、編組みパターン、例えば1×2、1×1または他の任意のパターンを選択すること、のうちの何れかの変数を任意の組合せで制御することによって、特定のIDで「詰め込む」ように調整することができる。
【0048】
編組み角度は、カテーテルの端部開口でのトラクタのローリングのロックアップを防止するために最小化される。典型的には、編組み角度が低いほど(例えば、45度以下、40度以下、35度以下、30度以下、25度以下、20度以下など)、編組みの交差部分がカテーテル先端に引っ掛かる可能性が低くなる。
【0049】
本明細書に記載の変形例の何れかにおいては、カテーテルの遠位端領域でのローリングを促進するために、カテーテルおよび/またはトラクタの表面をコーティングすることができる。トラクタがカテーテルの内部を通って引っ張られるときにカテーテルの遠位端を越えてカテーテルの先端の周りをより容易にスライドできるように、カテーテルODまたはトラクタIDの遠位側面に親水性コーティングを有することが有用となることがある。
【0050】
カテーテル先端のアール壁は、スライドを可能とする範囲内に選択/設定することができる。例えば、カテーテルの先端がカテーテル上に、可能な限り最大のアール壁、少なくとも0.0025インチのアール壁、理想的には約0.005インチのアール壁を有することが有用となる場合がある。
【0051】
カテーテルの遠位部の剛性は、トラクタが引っ張られるときに、潰れるのを防止するのに十分な剛性であり、(例えば、コーティングまたは材料の特性によって)カテーテルの遠位部を滑らかなものとすることもできる。カテーテル先端の最も遠位の部分(例えば、最後の5mm)は、編組み構造体がカテーテル先端の周りでローリングしているときに、カテーテルの遠位先端が潰れたり内向きに座屈したりしないように、十分に剛性がありかつ滑らかな材料で製造することができる。このため、遠位先端は、カテーテルの遠位端部におけるより近位側の領域よりも大きい剛性を有するようにしてもよい。
【0052】
以下により詳細に説明するように、トラクタに孔を有することが有用であり、あるいは望ましい場合がある。隙間の欠如または小さな孔の大きさは、編組みの血栓を捕らえる能力を制限し得る。代替的または追加的には、テクスチャを有する編組み構造を形成することが望ましい場合がある。一例としては、2以上の異なる直径の編組み端部を同じ構造に編組することが挙げられ、編組み端部の直径の違いは、編組み構造の外側面にテクスチャを形成するのを助け、カテーテル先端の周りで編組みドーザがローリングする際に血栓を捕らえるのを助ける。
【0053】
代替的には(または追加的には)、トラクタは、所望の直径で編組みにコーティング、ラミネートまたは接着剤を加えることによって、軸方向負荷の間に直径が圧縮されないよう、固定するように構成することができる。薄いコーティング、ラミネートまたは接着剤を加えることにより、編組み要素が互いにスライドするのを抑制し、それによって編組みを特定の直径に固定することができる。大部分の孔および孔領域を実質的に開いたままで、コーティングを施すことが可能である。薄いコーティングの例には、親水性コーティングを伴うまたは伴わないウレタンおよびシリコーン、並びに結合層を伴わない親水性コーティングが含まれる。
【0054】
また、外側カテーテル壁に対するトラクタのスライド摩擦の低減、トラクタの先端ローリングの改善、および/またはトラクタの内側カテーテルのスライドの促進は、スライドスキンまたはスリーブを含むことによっても達成される。例えば、薄い(例えば、超薄型の)スリーブを使用することができる。スリーブは、編組み、編み、織り、押出し、メルトブロー、メルトスピニングなどにより、低摩擦ポリマー(PET、PE、PP、PTFE、ePTFE、ペバックス、ウレタン)から作られる。スリーブは、レーザスロットチュービング、化学エッチング、マイクロマシニングにより作ることができる。スリーブは、親水性コーティングのような潤滑性コーティングで被覆することもできる。潤滑性コーティングは、外側面および/または内側面に配置することができる。スリーブは、ドーザ要素とカテーテル壁との間に配置され、プラー要素に取り付けられる。スリーブは、厚さが0.002インチ未満であってもよく、理想的には、壁の厚さが0.001インチ未満であってもよい。スリーブは、トラクタ血栓捕捉システムをカテーテル壁、先端ローリングおよび内側カテーテル引き抜き摩擦から切り離すことができる。スリーブは、トラクタから完全に解放されてもよく、別個の位置でトラクタに接続されてもよく、またはトラクタに全体が接続されてもよい。これにより、血栓(より大きなワイヤの場合、神経については0.001〜0.002インチ、その他の適用については0.002〜0.007インチ)を捕らえるようにトラクタを設計することができるとともに、スキンの厚さと構造を最小化して摩擦とスキンの曲げ剛性を低減することができる。
【0055】
いくつかの変形例では、トラクタ領域は、混合構造またはハイブリッド構造で形成されるものであってもよく、1または複数の織り合わされたまたは編組されたポリマーフィラメントを金属フィラメントと組み合わせるようにしてもよい。混合構造(ハイブリッド構造)は低摩擦ポリマー要素と織り合わされた金属要素の両方を利用することができる。金属フィラメントは、血栓を掴み/捕らえることができる剛性要素を構成することができる。ポリマーフィラメントは、血栓を捕らえるのに役立つが、先端の周りで、外側カテーテル壁、カテーテル先端および内側カテーテル壁の表面摩擦を低減することができる。
【0056】
本明細書に記載の装置の何れかは、カテーテルの外側と接触する編組み/織物の(カテーテルの外径部と内径部に接触する)内側面上に、例えば編組み/織物トラクタについて、内側面上に親水性/潤滑性コーティングを有するトラクタを含むようにしてもよい。潤滑性コーティングの例には、親水性コーティング(例えば、ヒドロゲル)および疎水性コーティング(例えば、PTFEおよびFEPなどのフッ素コーティング、パリレン、シリコーン、任意の材料をより滑らかにするためにペバックスを含む様々なポリマーに添加されるシロキサン(シリコーン添加剤)、ポリエチレン、ポリプロピレン、FEP)が含まれる。
【0057】
上述したように、これらの装置の何れかは、遠位先端のより近位側の領域よりも剛性が低い(例えば、「より柔らかい」)遠位先端を含むことができる。これは、遠位先端を補強する構造支持部材を有することによって、または遠位先端を形成する材料を変更することによって達成することができる。
【0058】
本明細書に記載のトラクタの何れかは、1または複数のマーカー(例えば、金、プラチナなどの放射線不透過性マーカーなど)を含むことができる。
【0059】
開示の装置の説明とより良い理解のために、図2A−2Fは、本発明の実施形態に従って構成された機械的な血栓除去装置の体内展開方法を示している。図2Aでは、細長い反転支持カテーテル201が、例えば、細長い反転支持カテーテルを血栓に向かって遠位方向210に動かすことによって、血栓239近傍の血管内に配置されている。細長い反転支持カテーテルは、ガイドワイヤ(図示せず)により、またはガイドワイヤなしで配置することができる。装置のトラクタアセンブリ部分、例えば、可撓性トラクタチューブ244および細長いプラー245は、カテーテルとともに配置されるようにしても、あるいはカテーテルが血管内の所定の位置に配置された後に、カテーテルを通って移動されるようにしてもよい。図2Bに示すように、トラクタアセンブリ240は、遠位端近くで細長い反転支持カテーテル内に配置される。近い位置(例えば、血栓239の近傍)に来ると、可撓性トラクタチューブ244は、図2Cに示すように、細長い反転支持カテーテルの遠位端から延出される(212)。可撓性トラクタチューブは、細長い反転支持カテーテルを近位方向に引っ張ること(214)および/または可撓性トラクタチューブを遠位方向に押すことによって、細長い反転支持カテーテルから展開することができ、一旦細長い反転支持カテーテルから出ると、可撓性トラクタチューブは、細長い反転支持カテーテルの外側で第2の(拡張した)構成に拡張することができる。上述したように、可撓性トラクタチューブは、この反転していない構成では、可撓性トラクタチューブの直径が、細長い反転支持カテーテルのODの1.1倍〜5倍(例えば、典型的には細長い反転支持カテーテルのODの1.1倍〜3倍など)となるように付勢されている。細長い反転支持カテーテルは、図2Dに示すように、可撓性トラクタチューブ244と細長いプラー245との間を遠位方向に戻すように移動させることができる。
【0060】
実際には、カテーテルは、可撓性トラクタ部分の開放(自由)端内に嵌入する必要がある。この装置は、例えば、可撓性トラクタ部分の開放端またはその近傍に環状バイアスを含むように変更することができる。代替的または追加的には、開放端がそれ自体の上または下に反転するように、付勢(例えば、熱固定、形状固定)されるようにしてもよい。
【0061】
図2Eに示すように、細長い反転支持カテーテルが可撓性トラクタチューブと細長いプラーとの間に遠位方向に配置されると、可撓性トラクタチューブは、図2Fに示すように、細長い反転支持カテーテル内に回り込んで反転する(266)。この例では、細長いプラー245を細長い反転支持カテーテルを通って近位方向218に引っ張ることにより、可撓性トラクタチューブを細長い反転支持カテーテル内へと近位方向に引っ張ることができる。図2Fに示すように、ローリングするトラクタは血栓239を捕らえ、血栓を細長い反転支持カテーテル内に引き込みながら、細長い反転支持カテーテル内に反転する。この実施例の可撓性トラクタチューブは、反転していない構成(例えば、図2D)において、細長い反転支持カテーテルの外径の1.1倍〜4倍に拡張されるように付勢され、反転され構成において(図2Fに示すようにカテーテル内に引き込まれたときに)、細長い反転支持カテーテルの内径の0.5倍よりも大きく拡張されるようにさらに付勢されている。
【0062】
図3Aおよび図3Bは、一端が細長いプラー345に取り付けられた可撓性トラクタチューブ344を含むトラクタアセンブリの別の例を示している。この例では、図1Iと同様に、細長いプラーが段付きの外形を有する。段付きの外形により細長いプラーに形成されたより細い直径の領域は、トラクタアセンブリ334の可撓性トラクタチューブが細長い反転支持カテーテル内でより小さな外形で圧縮されることを可能にする。図3Aでは、可撓性トラクタチューブ344が細長いプラーに対して潰れている(圧縮されている)様子が示されている。この構成により、細長い反転支持カテーテル内の移動性を改善することができる。また、この変形例は、中空の細長いプラーを介した真空の適用に容易に適合させることができる。図3Aでは、可撓性トラクタチューブが圧縮された状態または潰れた状態で示されている。図3Bは、拡張構成の可撓性トラクタチューブを示している。この例では、可撓性トラクタチューブ244がプラーから外側に拡張している。この構成では、トラクタチューブを付勢(例えば、熱固定、形状固定など)することができる。代替的または追加的には、装置が圧縮されて、細長い反転支持カテーテル内に保持されるようにしてもよい。
【0063】
図4A図4Cは、図3Aおよび図3Bに示す変形例のような段付き外径部を有する細長いプラーの送達構成から展開構成への展開を示している。図4Aでは、細長いプラー445が細長い反転支持カテーテル401の遠位端に配置され、可撓性トラクタチューブ444の一端がプラーに取り付けられている。図4Bに示すように、可撓性トラクタチューブ444は、細長い反転支持カテーテルの遠位端開口から延出し、少なくとも僅かに拡張している(449)。この実施例では、細長い反転支持カテーテル401を近位方向410に引き込むことができる。この変形例においても、トラクタチューブ444の自由開放端433を開放状態に保持するために、以下に詳細に説明する環状バイアスを使用することができる。その後、図4Cに示すように、細長い反転支持カテーテル401は、可撓性トラクタチューブ444と細長プラー445との間に配置されるようにしてもよく(412)、それにより、細長い支持反転カテーテル401は、遠位端で可撓性トラクタチューブを支持することができ、それにより、例えば、細長いプラーを引っ張って細長い反転支持カテーテル内に反転させることによって、可撓性トラクタチューブを細長い反転支持カテーテル内に折り返して反転させることができる。
【0064】
図5A図5Fは、環状のバイアスを含む図3Aおよび図3Bの装置を使用して血管内から塞栓(血栓)を除去する様子を示している。図5Aに示すように、細長い反転支持カテーテル501は、血管550内の血栓539の近くに配置される。可撓性トラクタチューブ544が取り付けられてトラクタアセンブリを形成する細長いプッシャ545は、遠位端で細長い反転支持カテーテル内に配置することができる。図5Bに示すように、細長いプッシャは、第1の端部でトラクタチューブ544の第1の端部に取り付けられ、環状のバイアスは、開放され、第2の端部で固定されていない(例えば、自由である)。第2の開放端または自由端533は、1または複数の環状バイアス525を含むことができ、この環状バイアスは、図5Bに示すように、カテーテルを通って遠位方向に延在し、細長い反転支持カテーテル501の遠位端から外に出ることができる。図5Cに示すように、環状バイアス525は、可撓性トラクタチューブの自由端533を開いた状態に保持する。代替的または追加的には、可撓性トラクタチューブを、カテーテル501の外径より僅かに大きい(例えば、細長い反転支持カテーテルの外径の1.1倍を超える)直径に拡張するように付勢することができるが、環状バイアス525は、図5Cに示すように、さらにもう少し開いていてもよく、拡張して開いたときは、より硬く(例えば、剛性がより高く)なるようにしてもよい。その後、図5Dおよび図5Eに示すように、細長い反転支持カテーテル501を、環状バイアス525を通って、可撓性トラクタチューブ544と細長いプラー545との間に遠位方向に挿入することができる。トラクタを細長い反転支持カテーテル501内に折り返す前またはその間に、装置全体を遠位方向552に前進させることができる。図5Eに示すように、細長いプラー544および/または細長い反転支持カテーテルを介して真空560(任意)を供給することができ、かつ/または、プラーを近位方向554に引っ張ることができる。図5Fでは、(真空の有無にかかわらず)細長いプラーを近位方向に引っ張って(556)、可撓性トラクタを細長い反転支持カテーテルの遠位端で折り返して細長い反転支持カテーテル内に反転させることによって、図示のように、血栓を反転支持カテーテル内に引き込むことができる。
【0065】
プラーに段付き外径部を有する図3A図3B図4A図4Cおよび図5A図5Fに示す変形例は、トラクタアセンブリの内径を最大にすることができ、(機械的または真空による)吸引を助けることができる。これらの変形例の何れかにおいては、装置(例えば、トラクタアセンブリ)および/または細長い反転支持カテーテルに真空を供給することができる。いくつかの変形例では、(例えば、トラクタチューブの自由端よりも近位側の)プラーの長さの少なくとも一部に沿うODが、細長い反転支持カテーテルのIDとほぼ同じであってもよい。これは、細長いプラーを介して加えられる真空が、細長い反転支持カテーテルおよび/またはプラーの遠位端部に維持されるようにシールを形成するのを助けることができ、それにより血栓の捕捉を補助することができる。
【0066】
図6A図6Fは、可撓性トラクタチューブ644の開放自由端638に環状バイアス625を含む装置の別の変形例を示している。図6Aに示すように、細長い反転支持カテーテル601が血管内に配置される。図6Aには、ガイドワイヤ671が示されている。カテーテルは、血栓639に近付くようにガイドワイヤを介して前進させることができる。図6Bに示すように、細長いプラー645および可撓性トラクタチューブ644は、細長い反転支持カテーテル601内を、ガイドワイヤ671を介して遠位方向に配置される。トラクタアセンブリは、一端が細長いプラー645に取り付けられた可撓性トラクタチューブ644を含み、可撓性トラクタチューブの他端が開放され、拘束されていない(プラーまたはカテーテルには取り付けられない)が、環状バイアス625に結合されている。可撓性トラクタチューブを細長い反転支持カテーテルの遠位端から展開するとき、ガイドワイヤ671を取り除くことができ、あるいは定位置に残すことができる。図6Cに示すように、細長いプラー645の遠位端および可撓性トラクタチューブ644の全体を含むトラクタアセンブリは、細長い反転支持カテーテル601から遠位方向に延出する。環状バイアス625は、細長い反転支持カテーテル601の外径よりも大きな(例えば、細長い反転支持カテーテルの直径の1.1倍を超える)直径に拡張する(674)。また、環状バイアスは、(このトラクタチューブの開放端またはその近傍にある)トラクタチューブの端部領域を補強または安定化するように機能し、図6Dに示すように、この環状バイアスを通して細長い反転支持カテーテル601を挿入することを可能とする。
【0067】
図6Dおよび図6Eに示すように、細長い反転支持カテーテル601は、環状バイアス内を通って、可撓性トラクタチューブ644と細長いプラー645との間を遠位方向671に前進し、(図6Fに示すように)可撓性トラクタチューブが細長いプラー645により近位方向に引っ張られて(678)細長い反転支持カテーテルの遠位端開口で折り返して反転するときに(663)、細長い反転支持カテーテルは可撓性トラクタチューブ644を支持することが可能となっている。この装置は、図6Eに示すように、血管から血栓639を捕らえて除去するために(例えば、細長いプラーを近位方向に引っ張りながら)前進させることができる。
【0068】
これらの変形例の何れかにおいて、環状バイアスは、展開時にトラクタチューブの自由端を開いた状態に保つように構成することができる。環状バイアスは、トラクタチューブに溶接、編組、接合、接着および/または一体化することができる。環状バイアスは、外側、内側または両方に取り付けられるものであってもよい(例えば、トラクタチューブの開放端上に折り畳まれるか、あるいはトラクタチューブの何れかの側に取り付けられるものであってもよい)。
【0069】
図7A図7Dは、本明細書に記載の変形例の何れかにおける可撓性トラクタチューブの拡張した開放(自由)端を支持するために使用される環状バイアスの4つの変形例を示している。例えば、図7Aは、拡張したときの端面図において円形ループを形成する環状バイアスを示している。ループは、ニチノールのような形状記憶材料またはポリマー材料により形成することができる。このループは、トラクタチューブの編組みまたは織物に直交するようにしてもよく、それにより、細長い反転支持カテーテルの遠位端開口で折り返すときに圧縮を助けることができる。いくつかの変形例では、環状バイアスが、折り曲げを助けるために不規則な円形形状に熱固定されるようにしてもよく、あるいは環状バイアスの外周の周りに座屈点を含むようにしてもよい。図7Aに示す環状バイアスの側面図では、環状バイアスが、トラクタチューブの長軸に対して傾斜しているか、代替的には、(図7Bと同様に)環状バイアスを長軸に対して垂直に取り付けることができる。
【0070】
本明細書に記載の変形例の何れかにおいて、環状バイアスは、予め設定された1または複数の潰れ位置/拡張位置とを含むように構成されて、その周囲で、拡張した構成と潰れた構成との間で移行する際に環状バイアスが潰れ又は拡張するように構成されるようにしてもよい。例えば、予め設定された位置は、環状バイアスを形成する1または複数のローブまたは頂点によって規定されるものであってもよい。図7Bは、潰れた構成を制御することができる折り目または湾曲部を環状バイアスが含む実施例を示している。この実施例では、環状バイアスがローブまたはペタルを有し、それらが圧縮されたときに予定通りに潰れる(例えば、潰れた状態の端面図を参照)。環状バイアスは、トラクタチューブが細長い反転支持カテーテルの先端の周りで折り返すときに小さな直径に圧縮するような形状にすることができる。正午、3時、6時および9時の位置にU字型の形態(ローブ、ペタルなど)を有するものは一例である。他の例には、それよりも少なく(例えば、2つのローブ、3つのローブ)または多く(例えば、5つのローブ、6つのローブなど)使用したものが含まれる。
【0071】
一般に、環状バイアスは、可撓性トラクタチューブの剛性よりも高い剛性(例えば、1.5倍より大きい剛性、2倍より大きい剛性等)を有する。
【0072】
図7Cでは、環状バイアスが、複数のジグザグ状のストラット(部材)を有するステントのような構造となっている。ステントのような環状バイアスは、カテーテル先端の周りで折り返すときに容易に反転することができる。ジグザグの長さは、約5〜10mm未満に制限することができる。いくつかの変形例では、複数列のジグザグを使用することができる。
【0073】
図7Dは、漏斗状の環状バイアスの一例を示している。動作中、この構造は、トラクタチューブと細長いプラーとの間に細長い反転支持カテーテルを挿入するのを助けることができ、トラクタチューブの端部を反転させて細長い反転支持カテーテル内に引き込むのを助けることもできる。
【0074】
ステント状の環状バイアスの一例を図8A図8Cに示す。この例では、環状のバイアスが、0.002インチの厚さを有する正弦曲線状に配置されたワイヤのループ(複数のワイヤ/ストラットを使用することもできる)で形成され、これが144端部の0.00075インチのNiTi編組み可撓性トラクタチューブの開口端領域に取り付けられている。また、図8Aは、図8Bの可撓性トラクタチューブ801に取り付けられた、拡張した環状バイアス803を示している。図8Aの環状バイアス803を有する可撓性トラクタチューブ801は、図8Cにおいて、細長いプラー805に取り付けられた状態で示されている。図8に示す実施例では、環状バイアスが、遠位端領域においてトラクタチューブの開放(自由)端の近傍に取り付けられるが、端から僅かに遠位側にある。いくつかの変形例では、環状バイアスが、可撓性トラクタチューブの開放端の最も端(または縁)に取り付けられている。
【0075】
本明細書に記載の環状バイアスの何れかは、細長い反転支持カテーテルの先端での装置の遠位端のローリングを促進するように構成されるようにしてもよい。例えば、図9Aは、環状バイアスを有する可撓性トラクタチューブ(144端部、0.00075インチのNiTi)の別の例を示し、トラクタチューブを近位方向に引っ張ることによって細長い反転支持カテーテル内に折り返されている(961)。図9Bには、細長い反転支持カテーテルの開放遠位端でローリングする(ステント状の環状バイアス903が取り付けられた)可撓性トラクタチューブの開放端が示されている。このローリングを促進するために、いくつかの変形例では、環状バイアスが、可撓性トラクタチューブの長軸(長さ方向)に沿って延びる1または複数の延長部(例えば、リードインアーム)も含むことができる。この構成の概略を図9Cに示す。図9Cに示すように、ステント状の環状バイアスは、細長い反転支持カテーテルで折り返すのを助けることができるリードインアームを含む。リードインアームは、環状バイアスがカテーテル先端の周りで回り込んで、細長い反転支持カテーテルのID内に入るのを助けることができる。1または複数(例えば、1,2,3,4,5,6,7,8などの)のリードインアームを使用することができ、これらのリードインアームは、すべて同じ長さまたは異なる長さであってもよい。
【0076】
図10は、細長い反転支持カテーテルの挿入を容易にするために、反転形状1003を有するように開放端で熱固定された可撓性トラクタチューブ1001の一例を示している。図10に示すように、可撓性トラクタチューブの開放(拘束されていない)端部は、それ自体の下に折り返され、可撓性トラクタチューブ1001と細長いプラー1005との間の空間に細長い反転支持カテーテルを案内するのを助けることができる。この例では、可撓性トラクタチューブが追加の環状バイアスを必要としない。
【0077】
ある構成または要素が別の構成または要素の「上に(on)」あると言及される場合、それは他の構成または要素上に直接存在してもよいし、介在する構成および/または要素が存在してもよい。対照的に、ある構成または要素が別の構成または要素の「上に直接ある」と言及された場合、介在する構成または要素は存在しない。ある構成または要素が他の構成または要素に「接続された」、「取り付けられた」または「結合された」と言及される場合、それは他の構成または要素に直接的に接続、取り付けまたは結合されてもよいし、介在する構成または要素が存在してもよい。対照的に、ある構成または要素が別の構成または要素に「直接的に接続された」、「直接的に接続された」または「直接的に結合された」と言及される場合、介在する構成または要素は存在しない。一実施形態に関して説明または図示された構成および要素は、他の実施形態にも適用することができる。当業者であれば、別の構成に「隣接して」配置された構造または構成への言及は、隣接する構成に重なったり下にある部分を有してもよいことも理解されよう。
【0078】
本明細書で使用する用語は、特定の実施例のみを説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。例えば、本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明示しない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用される「備える(comprises)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、記載された構成、ステップ、動作、要素および/または構成要素の存在を特定するが、他のステップ、動作、要素、構成要素および/またはそれらのグループのうちの1または複数の存在や追加を除外するものではない。本明細書で使用される「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の1または複数の任意のおよびすべての組み合わせを含み、「/」と省略することができる。
【0079】
本明細書では、「下方(under)」、「下(below)」、「より下(lower)」、「上(over)」、「より上(upper)」などのような空間的に相対的な用語は、図示するように、1つの要素や構成の他の要素や構成との関係の説明を容易にするために用いられる。これらの空間的に相対的な用語は、図面に示されている向きに加えて、使用または動作における装置の様々な向きを包含することが意図されていることが理解されよう。例えば、図面内の装置が反転されている場合、他の要素または構成の「下方(under)」や「下(beneath)」と記載された要素は、他の要素または構成の「上に」位置づけられる。したがって、例示的な用語「下方(under)」は、上方および下方の向きの両方を含み得る。装置は他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。同様に、特に断りのない限り、「上向き」、「下向き」、「垂直」、「水平」などの用語は説明の目的でのみ使用される。
【0080】
「第1の」および「第2の」という用語は、様々な構成/要素(ステップを含む)を説明するために本書で使用されるが、文脈上別段の記載がない限り、これらの構成/要素はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある構成/要素を別の構成/要素と区別するために使用される。したがって、以下に説明する第1の構成/要素は第2の構成/要素とも呼ぶことができ、同様に、以下に説明する第2の構成/要素は本発明の教示から逸脱することなく第1の構成/要素と名付けることができる。
【0081】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、文脈上他の意味を要求しない限り、「備える(comprise)」という語および「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」などの変形は、様々な構成要素が、請求項に係る物品(デバイスやシステムを含む要素および装置)においてともに使用され得ることを意味する。例えば、「備えている(comprising)」という用語は、すべての記載された要素を含むことを意味するが、他の要素の除外を意味するものではないと理解される。
【0082】
一般に、本明細書に記載された装置は何れも包括的であると理解すべきであるが、構成要素および/またはステップのすべてまたはサブセットが代わりに排他的であってもよく、あるいは、様々な構成要素、ステップ、サブコンポーネントまたはサブステップから「なる」または「本質的になる」と表現されるものであってもよい。
【0083】
本明細書および特許請求の範囲で使用されているように、実施例で使用されているものを含み、そうでないと明記していなければ、特に明記しなくても、すべての数字は、「約」または「およそ」が前にあるものとして解釈される。記載された値および/または位置が、合理的な予想される範囲内の値および/または位置であることを示すために、大きさおよび/または位置を記述するときに、「約」または「およそ」という語句を使用することがある。たとえば、ある数値は、記載された値(または値の範囲)の+/−0.1%、記載された値(または値の範囲)の+/−1%、記載された値(または値の範囲)の+/−2%、記載された値(または値の範囲)の+/−5%、記載された値(または値の範囲)の+/−10%などの値を有しうる。本明細書に記載の様々な値も、文脈が他の意味を示さない限り、約またはおよその値を含むと理解されるべきである。例えば、「10」という値が開示されている場合、「約10」も開示されている。本明細書に列挙された任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての下位範囲を含むことが意図される。ある値が開示された場合、当業者によって適切に理解されるように、当該値「以下」、「以上」、および可能性のある値の範囲もまた開示されているものとする。例えば、「X」という値が開示された場合、「X以下」および「X以上」(例えば、Xは数値である)も開示される。また、出願全体を通して、データはいくつかの異なるフォーマットで提供され、このデータはエンドポイントとスタートポイント、およびデータポイントの任意の組み合わせの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータポイント「10」および特定のデータポイント「15」が開示されている場合、10と15、それ以上、それ以下と同様に、10〜15の間も開示されていると考えられる。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されると理解される。例えば、10と15が開示されている場合、11、12、13、および14もまた開示されている。
【0084】
様々な例示的な実施形態を記載してきたが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に対して多くの変更が可能である。例えば、様々な装置およびシステムの実施形態の任意の構成は、いくつかの実施形態に含まれてもよく、他の実施形態に含まれなくてもよい。したがって、上記の説明は、主に例示的な目的のために提供され、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0085】
本明細書に含まれる実施例および図面は、本発明を実施することができる特定の実施例を図示するものであり、限定するものではない。上述したように、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な置換および変更を行うことができるように、他の実施形態を利用してそこから誘導することができる。本発明の主題のそのような実施形態は、実際に1より多くが開示されていても、本出願の範囲を任意の単一の発明または発明の概念に自発的に限定しようとするものではなく、単に「発明」という用語によって個々にまたは集合的に言及されてもよい。したがって、特定の実施形態を本明細書で図示および説明したが、同じ目的を達成するために計算された任意の構成を、示された特定の実施形態に置き換えることができる。本開示は、様々な実施形態の任意のおよびすべての適合または変形を網羅することを意図している。上記実施形態の組み合わせ、および本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態は、上記の説明を検討すると当業者には明らかであろう。
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図1-3】
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図2-2】
図3
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図5-2】
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