(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
a.以下の特性すなわち、(i)シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の後退接触角が最大60度であること、および、(ii)前記シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の10秒動的接触角(DCA)が最大108度であること、のうちの少なくとも1つを満足するよう十分な親水性を示す前記シリコーン系剥離層表面を含む中間転写部材(ITM)を提供することと、
b.以下:
i.摂氏25度において少なくとも5%の水溶解度を有する少なくとも1.5重量%の第四級アンモニウム塩、
ii.摂氏25度において少なくとも5%の水溶解度を有する少なくとも1重量%の少なくとも1つの水溶性ポリマー、および、
iii.水を含むキャリア液体であって、前記水は、水性処理調合物の少なくとも65重量%を占める、キャリア液体、
を含む前記水性処理調合物を提供することであって、前記水性処理調合物は以下の特性:
i.摂氏25度において20〜40ダイン/cmの範囲内の静的表面張力、
ii.少なくとも10cPである摂氏25度動粘性係数、および、
iii.重量で最大8:1の摂氏60度蒸発負荷、
を有する、前記水性処理調合物を提供することと、
c.前記水性処理調合物を前記ITMの前記シリコーン系剥離層表面に塗布して、最大0.8μmの厚さを有する湿潤処理層を前記シリコーン系剥離層表面上に形成することと、
d.前記湿潤処理層に乾燥処理を施して、前記湿潤処理層から、前記シリコーン系剥離層表面上に乾燥処理薄膜を形成することと、
e.水性インクの液滴を前記乾燥処理薄膜上に堆積して、前記シリコーン系剥離層表面の前記剥離層表面上にインク画像を形成することと、
f.前記インク画像を乾燥させて前記シリコーン系剥離層表面上に残留インク画像を残すことと、
g.前記ITMと印刷基板との間の加圧接触により、前記残留インク画像を前記印刷基板上に転送することと
を含む、印刷方法。
前記提供される水性処理調合物内における前記第四級アンモニウム塩の濃度は1.5〜15%の範囲内、前記水溶性ポリマーの濃度は2.5〜10%または2.5〜8%の範囲内、摂氏60度蒸発負荷は2.5:1〜4:1の範囲内であり、前記粘度は少なくとも12cPである、請求項1または請求項2に記載の方法。
前記シリコーン系剥離層表面は、以下の特性、すなわち、前記シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の後退接触角が最大60度であることのうちの少なくとも1つを満足するにあたり十分な親水性を示す、請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の方法。
前記シリコーン系剥離層表面は、以下の特性、すなわち、前記シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の10秒動的接触角(DCA)が最大108度であることのうちの少なくとも1つを満足するにあたり十分な親水性を示す、請求項1〜請求項5のうちのいずれか1項に記載の方法。
前記提供されるITMは、支持層、および前記シリコーン系剥離層表面を有する剥離層と、(i)前記シリコーン系剥離層表面に対向し、(ii)前記支持層に取り付けられ、かつ、前記剥離層は付加硬化型シリコーン物質で形成される、第2表面と、を含む、請求項1〜請求項6のうちのいずれか1項に記載の方法。
前記水性処理調合物は、前記湿潤処理層の厚さが最大0.5μm、または最大0.4μmとなるよう、前記シリコーン系剥離層表面に塗布される、請求項1〜請求項8のうちのいずれか1項に記載の方法。
前記水性インク液滴が堆積される前記乾燥処理薄膜の厚さは最大200nm、または最大120nm、または最大100nm、または最大80nmである、請求項1〜請求項11のうちのいずれか1項に記載の方法。
前記水性インク液滴が堆積される前記乾燥処理薄膜の厚さは少なくとも15nm、または少なくとも20nm、または少なくとも30nmである、請求項1〜請求項12のうちのいずれか1項に記載の方法。
前記乾燥処理薄膜は、前記ITMの前記剥離表面の長方形全体にわたり連続的であり、前記長方形は少なくとも10cmの幅および少なくとも10メートルの長さを有する、請求項1〜請求項13のうちのいずれか1項に記載の方法。
前記乾燥処理薄膜は、前記残留インク画像の転送の間、印刷エリアおよび非印刷エリアの両方において前記乾燥処理薄膜が完全に前記ITMから分離して、前記乾燥インク画像とともに前記印刷基板に転送されるよう、十分な凝集性を有する、請求項1〜請求項16のうちのいずれか1項に記載の方法。
a.以下の特性すなわち、(i)シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の後退接触角が最大60度であること、および、(ii)前記シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の10秒動的接触角(DCA)が最大108度であること、のうちの少なくとも1つを満足するよう十分な親水性を示す前記シリコーン系剥離層表面を含む中間転写部材(ITM)と、
b.以下:
i.摂氏25度において少なくとも5%の水溶解度を有する少なくとも1.5重量%の第四級アンモニウム塩、
ii.摂氏25度において少なくとも5%の水溶解度を有する少なくとも1重量%の少なくとも1つの水溶性ポリマー、および、
iii.水を含むキャリア液体であって、前記水は、水性処理調合物の少なくとも65重量%を占める、キャリア液体、
を含む前記水性処理調合物を提供することであって、前記水性処理調合物は以下の特性:
i.摂氏25度において20〜40ダイン/cmの範囲内の静的表面張力、
ii.少なくとも10cPである摂氏25度動粘性係数、および、
iii.重量で最大8:1の摂氏60度蒸発負荷、
を有する、前記水性処理調合物と、
c.前記水性処理調合物を前記ITMの前記シリコーン系剥離層表面に塗布して、最大0.8μmの厚さを有する湿潤処理層を前記シリコーン系剥離層表面上に形成するための処理ステーションと、
d.前記湿潤処理層に乾燥処理を施して、前記湿潤処理層から、前記シリコーン系剥離層表面上に乾燥処理薄膜を形成するための手段と、
e.水性インクの液滴を前記乾燥処理薄膜上に堆積して、前記シリコーン系剥離層表面の前記剥離層表面上にインク画像を形成するための画像形成ステーションと、
f.前記インク画像を乾燥させて前記シリコーン系剥離層表面上に残留インク画像を残すための乾燥ステーションと、
g.前記ITMと印刷基板との間の加圧接触により、前記残留インク画像を前記印刷基板上に転送するための印圧ステーションと、
を含む、印刷システム。
【発明の概要】
【0006】
本発明の様々な態様は、a.以下の特性すなわち、(i)シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の後退接触角が最大60度であること、および、(ii)シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の10秒動的接触角(DCA)が最大108度であること、のうちの少なくとも1つを満足するよう十分な親水性を示すシリコーン系剥離層表面を含む中間転写部材(ITM)を提供することと、b.i.摂氏25度において少なくとも5%の水溶解度を有する少なくとも3重量%の第四級アンモニウム塩、ii.摂氏25度において少なくとも5%の水溶解度を有する少なくとも1重量%の少なくとも1つの水溶性ポリマー、および、iii.水を含むキャリア液体であって、該水は、水性処理調合物の少なくとも65重量%を占める、キャリア液体、を含む水性処理調合物であって、下の特性、すなわち、i.摂氏25度において20〜40ダイン/cmの範囲内の静的表面張力、ii.少なくとも10cPである摂氏25度粘性係数、および、iii.重量で最大8:1の摂氏60
度蒸発負荷、を有する、水性処理調合物を提供することと、c.水性処理調合物をITMのシリコーン系剥離層表面に塗布して、最大0.8μmの厚さを有する湿潤処理層を前述のシリコーン系剥離層表面上に形成することと、d.湿潤処理層に乾燥処理を施して、湿潤処理層から、シリコーン系剥離層表面上に乾燥処理薄膜を形成することと、e.水性インクの液滴を乾燥処理薄膜上に堆積して、シリコーン系剥離層表面の剥離層表面上にインク画像を形成することと、f.インク画像を乾燥させてシリコーン系剥離層表面上に残留インク画像を残すことと、g.ITMと印刷基板との間の加圧接触により、残留インク画像を印刷基板上に転送することと、を含む、印刷方法に関する。
【0007】
本発明の様々な態様は、a.以下の特性すなわち、(i)シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の後退接触角が最大60度であること、および、(ii)シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の10秒動的接触角(DCA)が最大108度であること、のうちの少なくとも1つを満足するよう十分な親水性を示すシリコーン系剥離層表面を含む中間転写部材(ITM)を提供することと、b.i.摂氏25度において少なくとも5%の水溶解度を有する少なくとも3重量%の第四級アンモニウム塩、ii.摂氏25度において少なくとも5%の水溶解度を有する少なくとも1重量%の少なくとも1つの水溶性ポリマー、および、iii.水を含むキャリア液体であって、該水は、水性処理調合物の少なくとも65重量%を占める、キャリア液体、を含む水性処理調合物であって、下の特性、すなわち、i.摂氏25度において20〜40ダイン/cmの範囲内の静的表面張力、ii.少なくとも10cPである摂氏25度粘性係数、および、iii.重量で最大8:1の摂氏60
度蒸発負荷、を有する、水性処理調合物を提供することと、c.水性処理調合物をITMのシリコーン系剥離層表面に塗布して、シリコーン系剥離層表面上に湿潤処理層を形成することと、d.湿潤処理層に乾燥処理を施して、湿潤処理層から、シリコーン系剥離層表面上に乾燥処理薄膜を形成することと、e.水性インクの液滴を乾燥処理薄膜上に堆積して、シリコーン系剥離層表面の剥離層表面上にインク画像を形成することと、f.インク画像を乾燥させてシリコーン系剥離層表面上に残留インク画像を残すことと、g.ITMと印刷基板との間の加圧接触により、残留インク画像を60°基板上に転送することと、を含む、印刷方法に関する。
【0008】
いくつかの実施形態では、提供される水性処理調合物の摂氏60度蒸発負荷は、最大で6:1、最大で5:1、最大で4:1、最大で3.5:1、または最大で3:1、および所望により、少なくとも2:1、少なくとも2.2:1、または少なくとも2.5:1である。
【0009】
いくつかの実施形態では、提供される水性処理調合物内における該第四級アンモニウム塩の濃度は3〜15%の範囲内、該水溶性ポリマーの濃度は2.5〜10%または2.5〜8%の範囲内、摂氏60度蒸発負荷は2.5:1〜4:1の範囲内であり、該粘度は少なくとも12cPであり、所望により少なくとも14cPまたは少なくとも16cPである。
【0010】
いくつかの実施形態では、提供される水性処理調合物は、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%、および所望により、6〜40%、6〜30%、6〜20%、7〜30%、7〜20%、7〜15%、8〜25%、8〜20%、8〜15%、または8〜13%の範囲内の総界面活性剤濃度を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、提供される水性処理調合物内の有機溶媒の合計濃度は、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、または最大0.5重量%であるか、または調合物は有機溶媒を含まない。
【0012】
いくつかの実施形態では、提供される水性処理調合物内の液体吸湿剤の濃度は、最大1.5重量%、最大1重量%、最大0.5重量%、最大0.3重量%、または最大0.1重量%であるか、または水性処理調合物は液体吸湿剤を含まない。
【0013】
いくつかの実施形態では、提供される水性処理調合物内における第四級アンモニウム塩は有機第四級アンモニウム塩である。
【0014】
いくつかの実施形態では、該有機第四級アンモニウム塩の第1炭素鎖は少なくとも6炭素原子の長さを、および所望により、6〜20、6〜18、8〜20、または8〜18炭素原子の範囲内の長さを、有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、該有機第四級アンモニウム塩の第2炭素鎖は、最大3炭素原子、または最大2炭素原子の長さを有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、該有機第四級アンモニウム塩の第3炭素鎖は、最大3炭素原子、最大2炭素原子、または1炭素原子の長さを有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、該有機第四級アンモニウム塩は、所望により硫酸アニオンまたはリン酸アニオンを有するカチオン有機第四級アンモニウム塩である。
【0018】
いくつかの実施形態では、シリコーン系の剥離層表面は、以下の特性、すなわち、シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の後退接触角が最大60度であることのうちの少なくとも1つを満足するにあたり十分な親水性を示す。
【0019】
いくつかの実施形態では、シリコーン系剥離層表面は、以下の特性、すなわち、シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の10秒動的接触角(DCA)が最大108度であることのうちの少なくとも1つを満足するにあたり十分な親水性を示す。
【0020】
いくつかの実施形態では、提供されるITMは、支持層と、該シリコーン系剥離層表面、および、(i)該シリコーン系剥離層表面に対向し、かつ(ii)該支持造に付着された、第2表面を有する剥離層と、を含み、該剥離層は付加硬化型シリコーン物質で形成され、該剥離層の厚さは最大500マイクロメートル(μm)である。
【0021】
いくつかの実施形態では、提供されるITMの剥離層は、実質的に付加硬化型シリコーンからなるか、または少なくとも95重量%の付加硬化型シリコーンを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、提供されるITMの該シリコーン系剥離層表面内の官能基は、該付加硬化型シリコーン物質の最大3重量%を構成する。
【0023】
いくつかの実施形態では、ポリエーテルグリコール官能化ポリジメチルシロキサンが、提供されるITMの該付加硬化型シリコーン物質に充填される。
【0024】
いくつかの実施形態では、提供されるITMの剥離層は、インク受容表面の極性基が、第2表面から離間する方向または第2表面と逆の方向を有するよう、適応される。
【0025】
いくつかの実施形態では、提供されるITMのシリコーン系剥離層表面の表面疎水性は、剥離層内の硬化シリコーン物質のバルク疎水性よりも小さい。なお、表面疎水性はインク受容表面上における蒸留水液滴の後退接触角により特徴付けられ、バルク疎水性は、露出エリアを形成するために剥離層内の硬化シリコーン物質のエリアを露出させることにより形成された内側表面上に堆積された蒸留水液滴の後退接触角により特徴付けられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物は、湿潤処理層の厚さが最大0.5μm、または最大0.4μmとなるよう、シリコーン系剥離層表面に塗布される。
【0027】
いくつかの実施形態では、湿潤処理層は、丸みを帯びた表面をITMに向かって、またはその逆方向に、付勢することにより、形成され、および/または、薄くされる。ここで、i.丸みを帯びた表面は最大2mm、または最大1.5mm、または最大1.25mm、または最大1mmの曲率半径を有し、および/または、ii.付勢は、少なくとも250g/cm、または少なくとも350g/cm、または少なくとも400gm/cm、および/または、最大1kg/cm、または最大750g/cm、または最大600g/cmの交差印刷方向における力密度で行われ、および/または、iii.付勢は、ITMとの間に圧力を印加することにより行われ、圧力の大きさは、少なくとも0.1バール、または少なくとも0.25バール、または少なくとも0.35バール、または少なくとも0.5バール、および所望により最大2バール、または最大1.5バール、または最大1バールである。
【0028】
いくつかの実施形態では、湿潤処理層は、移動中のITMに対して力を直接的または間接的に印加し、それにより(i)ITMを変形させてITMに凹部を生じさせ、かつ、(ii)流れる水性処理調合物の速度勾配を確立するする、静止アプリケータおよび/または丸みを帯びた表面により、形成され、および/または薄くされる。なお、この速度勾配は、ITMに対して垂直であり、ITMと静止アプリケータとの間の間隙領域に形成される。
【0029】
いくつかの実施形態では、速度勾配の大きさは、少なくとも10
6/秒または少なくとも2×10
6/秒である。
【0030】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物は、その上に湿潤処理層を形成するために少なくとも1メートル/秒、または少なくとも1.5メートル/秒、または少なくとも2メートル/秒の速度で移動中のITMの少なくとも1部分(単数または複数)に塗布される。
【0031】
いくつかの実施形態では、湿潤処理層の形成、または湿潤処理層を薄くすることは、ITMに対して垂直な速度勾配が確立され、速度勾配の大きさが少なくとも10
6/秒または少なくとも2×10
6/秒となるよう、水性処理調合物を強制的に流すことを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、ITMの剥離表面は、最大50、または最大45、または最大40、または最大35、または最大30、または最大25、または最大20、または最大15のショアA硬度を有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、湿潤処理層の乾燥処理は、表面張力により誘導されるビーディングが阻害されて、乾燥された処理薄膜が滑らかな上方表面を有するように、水性処理調合物の粘度が十分迅速に大きくなるよう、十分迅速に行われる。
【0034】
いくつかの実施形態では、乾燥された処理薄膜の滑らかな上方表面は、最大12ナノメートル、または最大10ナノメートル、または最大9ナノメートル、または最大8ナノメートル、または最大7ナノメートル、または最大5ナノメートルの平均粗度R
aにより特徴付けられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、処理溶液の乾燥は、ビーディングが防止され、かつ、最大200nm、または最大150nm、または最大120nm、または最大100nm、または最大80nm、または最大70nm、または最大60nm、または最大50nm、または最大40nm、または最大30nmの厚さを有する親水性および凝集性を有する連続的なポリマー処理薄膜が残されるよう、十分迅速に行われる。
【0036】
いくつかの実施形態では、水性インク液滴が堆積される乾燥処理薄膜の厚さは最大200nm、または最大120nm、または最大100nm、または最大80nmである。
【0037】
いくつかの実施形態では、水性インク液滴が堆積される乾燥処理薄膜の厚さは少なくとも15nm、または少なくとも20nm、または少なくとも30nmである。
【0038】
いくつかの実施形態では、乾燥処理薄膜は、ITMの剥離表面の長方形全体にわたり連続的である。なお該長方形は少なくとも10cmの幅および少なくとも10メートルの長さを有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、長方形の面積の少なくとも50%、または少なくとも75%、または少なくとも90%、または少なくとも95% 少なくとも95%、または少なくとも99%、または100%に対して、乾燥処理薄膜の厚さは、50%、または40%、または30%を越えて長方形内の平均厚さ値から逸脱しない。
【0040】
いくつかの実施形態では、湿潤処理層の乾燥処理の間、湿潤処理層の動的粘度は、最大250ミリ秒の期間内で、少なくとも1000倍増加する。
【0041】
いくつかの実施形態では、乾燥処理薄膜の液体含有量は、最大10重量/重量%、または最大7.5重量/重量%、または最大5重量/重量%、または最大2.5重量/重量%、または最大1.5重量/重量%、または最大1重量/重量%である。
【0042】
いくつかの実施形態では、水性インクの液滴はインクジェットにより乾燥処理薄膜上に堆積される。
【0043】
いくつかの実施形態では、残留インク画像は、乾燥処理薄膜の非印刷エリアとともに、印刷基板上に転送される。
【0044】
いくつかの実施形態では、乾燥処理薄膜の厚さは最大120nmである。
【0045】
いくつかの実施形態では、乾燥処理薄膜は、残留インク画像の転送の間、印刷エリアおよび非印刷エリアの両方において乾燥処理薄膜が完全にITMから分離して、乾燥インク画像とともに印刷基板に転送されるよう、十分な凝集性を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、残留インク画像の転送は、最大摂氏100度または最大摂氏90度の転送温度で行われる。
【0047】
いくつかの実施形態では、水性インクの固形物(例えばナノ色素および/または樹脂)は乾燥処理薄膜のバルク中へと流動し、乾燥処理薄膜内に存在する第四級アンモニウム塩と反応(例えば結合)する(それにより、例えば液滴の展開が助長される)。
【0048】
いくつかの実施形態では、水性インクの固形物は乾燥処理薄膜のバルク中に流動し、乾燥処理薄膜内に存在する第四級アンモニウム塩と反応し、それにより液滴の展開が助長される。
【0049】
いくつかの実施形態では、この方法は、i.インク基板上に存在するインクドットのインクドットセットIDSが形成され、ii.ITM上に存在する乾燥処理薄膜上に堆積された水性インク液滴の液滴複数性(droplet plurality)DPが、所与の液滴が所与の基板上に存在するインクドットを生じさせ、および/または基板上に存在するインクドットに進化するように、A.液滴複数性DPの各所与の液滴と、B.インクドットセットのそれぞれの所与の基板上に存在するインクドットと、の間に対応関係が存在するよう、インク基板上に存在するインクドットのインクドットセットIDSを形成し、iii.堆積の間、液滴複数性の液滴がITM上の乾燥処理薄膜と衝突するときはつねに、衝突する液滴の運動エネルギーが液滴を変化させ、iv.ITMの表面の上方で変形した液滴のうちの各液滴の最大衝突半径が最大衝突半径値R
MAX_IMPACTを有し、v.衝突の後、基板上に存在するインクドットセットIDSの各インクドットが乾燥ドット半径R
DRIED_DOT_ON_SUBSTRATEを有するよう、物理化学的な力が変形された液滴を展開させ、vi.液滴複数性の各液滴およびインクドットセットIDSの対応するインクドットに対して、A.基板上に存在する乾燥ドット半径R
DRIED_DOT_ON_SUBSTRATEと、B.変形された液滴最大衝突半径値R
MAX_IMPACTと、の比が少なくとも1.1となるよう、実行される。
【0050】
いくつかの実施形態では、この方法は、i.ITM上に存在する乾燥処理薄膜上に堆積された液滴の液滴複数性DPが基板上に存在するインクドットのインクドットセットIDS(すなわち、上部基板表面に固定的に付着された)を生成し、液滴複数性DPの各液滴はインクドットセットIDSの異なるそれぞれの基板上に存在するインクドットに対応し、ii.液滴複数性DPの各インク液滴が、噴出パラメータにしたがって、基板上に堆積され、iii.液滴複数性DPのインク液滴の物理化学的特性とともに噴出パラメータが共同的にインクジェット紙ドット半径R
DIRECT−JETTING−ONTO−INK−JET−PAPER−THEORETICALを定義し、なお、インクジェット紙ドット半径R
DIRECT−JETTING−ONTO−INK−JET−PAPER−THEORETICALは、インク液滴が乾燥処理薄膜上にではなく直接的にインクジェット紙にインクジェットされた場合に取得されるインクドットの半径であり、iv.(A)インクドットセットIDSのドットの乾燥ドット半径R
DRIED_DOT_ON_SUBSTRATEと、(B)インクジェット紙ドット半径R
DIRECT−JETTING−ONTO−INK−JET−PAPER−THEORETICALと、の間の比が少なくとも1.1となるよう、実行される。
【0051】
いくつかの実施形態では、インクドットセットの濃度は、少なくとも5、または少なくとも10、または少なくとも20、または少なくとも50、または少なくとも100であり、インクドットセットの各インクドットは基板上で明確に区別される。
【0052】
いくつかの実施形態では、インクドットセットのインクドットは、印刷基板上で突起する正方形幾何学的突起物内に含まれる。インクドットセットの各インクドットは、印刷基板の表面に固定的に付着され、該正方形幾何学的突起物内の全部の該インクドットはインクドットセットIDSの個々の部材としてみなされる。
【0053】
いくつかの実施形態では、この方法は、i.インク基板上に存在するインクドットのインクドットセットIDSが形成され、ii.インクドットセットの濃度が、少なくとも5、または少なくとも10、または少なくとも20、または少なくとも50、または少なくとも100となり、インクドットセットの各インクドットは基板上で明確に区別され、iii.インクドットセットのインクドットは、印刷基板上で突起する正方形幾何学的突起物内に含まれ、インクドットセットの各インクドットは、印刷基板の表面に固定的に付着され、該正方形幾何学的突起物内の全部の該インクドットはインクドットセットIDSの個々の部材としてみなされ、iv.該インクドットの各インクドットは、有機ポリマー樹脂中に分散された少なくとも1つの着色剤を含み、該ドットの各ドットは、2,000nmより小さい平均厚さ、および5〜300マイクロメートルの直径を有し、v.該インクドットの各インクドットは、略凸形状を有し、ここで凸形状からの偏差(DC
dot)は、DC
dot=1−AA/CSAにより定義され、式中、AAは該ドットの計算された投影エリアであり、該投影エリアは該印刷基板に対して略平行であり、CSAは該投影エリアの輪郭を最小に閉ざす凸形状の表面積であり、vi.該インクドットセットの凸性からの平均偏差(DC
dot mean)が最大0.05、最大0.04、最大0.03、最大0.025、最大0.022、最大0.02、最大0.018、最大0.017、最大0.016、最大0.015、または最大0.014となるよう、実行される。
【0054】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物は、その上に湿潤処理層を形成するために少なくとも1メートル/秒、または少なくとも1.5メートル/秒、または少なくとも2メートル/秒の速度で移動中のITMの少なくとも1部分(単数または複数)に塗布される。
【0055】
いくつかの実施形態では、この方法は、水性処理調合物内の水溶性ポリマーの水溶性ポリマー濃度が最大10重量%、または最大8重量%、または最大6重量%、または最大5重量%となるよう実行される。
【0056】
印刷システムの中間転写部材とともに使用するための水性処理調合物であって、(a)第1界面活性剤を含む第1界面活性剤組成物であって、該第1界面活性剤は、摂氏25度において少なくとも5%の水溶解度を有する第四級アンモニウム塩を含む、第1界面活性剤組成物と、(b)摂氏25度において少なくとも5%の水溶解度を有する少なくとも1重量%の少なくとも1つの水溶性ポリマーと、(c)水を含むキャリア液体であって、該水は処理調合物の少なくとも65重量%を占める、キャリア液体と、を含み、水性処理調合物内の該第四級アンモニウム塩の濃度は少なくとも3重量%であり、処理調合物は、(i)摂氏25度において20〜40ダイン/cmの範囲内の静的表面張力、(ii)重量で最大8:1の摂氏60度蒸発負荷、および、(iii)10cP〜100cPの範囲内の摂氏25度粘度を有する、水性処理調合物。
【0057】
いくつかの実施形態では、該第四級アンモニウム塩の該溶解度は少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも15%、もしくは少なくとも20%、所望により最大50%、最大40%、もしくは最大35%、または、さらに所望により、5〜40%、5〜30%、5〜25%、7〜35%、10〜35%、12〜35%、または15〜35%の範囲内である。
【0058】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物内の該第四級アンモニウム塩の濃度は、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、もしくは少なくとも7%、所望により、最大30%、最大25%、もしくは最大20%、またはさらに所望により、2〜30%、3〜30%、4〜30%、4〜20%、5〜25%、6〜25%、6〜20%、もしくは7〜20%の範囲内である。
【0059】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物内の該水溶性ポリマーの濃度は、少なくとも1.5重量%、もしくは少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、少なくとも3重量%、もしくは少なくとも3.5重量%、所望により、最大10%、もしくは最大9%、もしくは最大8%、もしくは最大7%、もしくは最大6%、またはさらに所望により、1.5〜20%、もしくは2〜10%、2〜8%、2〜7%、2.5〜10%、2.5〜8%、2.5〜7%、2.5〜6%、3〜8%、3〜7%、3〜6%、3〜6%、3.5〜10%、3.5〜8%、3.5〜7%、3.5〜6%、もしくは4〜6%の範囲内である。
【0060】
いくつかの実施形態では、該水溶性ポリマーの該水溶解度は少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも12%、または少なくとも15%である。
【0061】
いくつかの実施形態では、該水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコール、水溶性セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、および水溶性アクリラートからなる群より選択される。
【0062】
いくつかの実施形態では、摂氏60度蒸発負荷は、最大で6:1、最大で5:1、最大で4:1、最大で3.5:1、または最大で3:1、および所望により、少なくとも2:1、少なくとも2.2:1、または少なくとも2.5:1である。
【0063】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物の静的表面張力を低下させるよう選択された第2界面活性剤をさらに含み、該第2界面活性剤は所望によりシリコンポリエーテルであり、該第2界面活性剤は所望により調合物内で少なくとも1重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、もしくは、少なくとも3重量%、所望により、最大15%、最大12%、最大10%、最大8%、もしくは最大7%、または、さらに所望により、1.5〜13%、1.5〜10%、2〜13%、2〜10%、2.5〜13%、2.5〜10%、もしくは3〜10%の範囲内の濃度を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、処理調合物は、少なくとも摂氏25度〜摂氏60度の範囲内の該キャリア液体内に配置された吸水剤をさらに含む。それにより、水性処理溶液は蒸発されて、固体膜を形成する。該吸水剤は吸水体として機能する。
【0065】
いくつかの実施形態では、該キャリア液体内に配置された吸水剤をさらに含む。該吸水剤は、純粋状態において、少なくとも摂氏25度〜摂氏60度の範囲内において固体であり、水性処理溶液が蒸発して固体膜が形成されるとき該吸水剤は吸水体として作用する。
【0066】
いくつかの実施形態では、該吸水剤は、1〜25%、1〜15%、1〜10%、2.5〜20%、2.5〜12%、3〜15%、3〜12%、3〜10%、または3.5〜12%の濃度を有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、該第四級アンモニウム塩の該濃度は3〜15%の範囲内であり、該水溶性ポリマーの濃度は2.5〜10%、2.5〜8%、または2.5〜7%、または2.5〜6%の範囲内であり、摂氏560度蒸発負荷は2.5:1〜4:1の範囲内であり、該粘度は少なくとも12cPであり、所望より少なくとも14cPまたは少なくとも16cPである。
【0068】
いくつかの実施形態では、該静的表面張力は25〜36ダイン/cmの範囲内である。
【0069】
いくつかの実施形態では、該吸水剤は2.5〜10%の濃度を有する。
【0070】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物は、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%、および所望により6〜40%、6〜30%、6〜20%、7〜30%、7〜20%、7〜15%、8〜25%、8〜20%、8〜15%、または8〜13%の範囲内、の合計界面活性剤濃度を有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物の全成分は完全に溶解される。
【0072】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物内の有機溶媒の合計濃度は最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、または最大0.5重量%であるか、または調合物は有機溶媒を含まない。
【0073】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物内の液体吸湿剤の濃度は、最大1.5重量%、最大1重量%、最大0.5重量%、最大0.3重量%、または最大0.1重量%であるか、または水性処理調合物は液体吸湿剤を含まない。
【0074】
いくつかの実施形態では、該第四級アンモニウム塩は有機第四級アンモニウム塩である。
【0075】
いくつかの実施形態では、該有機第四級アンモニウム塩の第1炭素鎖は少なくとも6炭素原子の長さを、および所望により、6〜20、6〜18、8〜20、または8〜18炭素原子の範囲内の長さを、有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、該有機第四級アンモニウム塩の第2炭素鎖は、最大3炭素原子、または最大2炭素原子の長さを有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、該有機第四級アンモニウム塩の第3炭素鎖は、最大3炭素原子、最大2炭素原子、または1炭素原子の長さを有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、該有機第四級アンモニウム塩は、所望により硫酸アニオンまたはリン酸アニオンを有するカチオン有機第四級アンモニウム塩である。
【0079】
いくつかの実施形態では、該ポリエチレンイミンは、調合物の最大0.8重量%、0.6重量%、0.4重量%、または0.3重量%、または0.2重量%、または0.1重量%を占めるか、またはポリエチレンイミンは該水溶性ポリマー最大30重量%、最大20重量%、最大15重量%、最大10重量%、または最大5重量%を占める。
【0080】
いくつかの実施形態では、該粘度は少なくとも12cP、少なくとも14cP、または少なくとも16cP、所望により、最大90cP、最大80cP、最大70cP、最大60cP、最大55cP、または最大50cP、およびさらに所望により、10〜80cP、12〜80cP、12〜60cP、12〜55cP、または14〜60cPの範囲内である。
【0081】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物内の水溶性ポリマーの水溶性ポリマー濃度は最大10重量%または最大8重量%または最大6重量%または最大5重量%である。
【0082】
いくつかの実施形態では、提供されるITMは、(a)支持層と、(b)インク画像を受容するためのインク受容表面および該インク受容表面に対向する第2表面を有する剥離層と、を含み、該第2表面は該支持層に付着され、該剥離層は付加硬化型シリコーン物質から形成され、該剥離層は最大500マイクロメートル(μm)の厚さを有し、ITMは以下の構造特性、すなわち、(1)該インク受容表面の全表面エネルギーが、対応剥離層のインク受容表面に標準的エージング手順を施すことにより生産された変更されたインク受容表面の全表面エネルギーよりも、少なくとも2mN/m、少なくとも3mN/m、少なくとも4mN/m、少なくとも5mN/m、少なくとも6mN/m、少なくとも8mN/m、または少なくとも10mN/m高いこと、(2)該インク受容表面の全表面エネルギーが、該硬化されたシリコーン物質のシリコーン前駆体の標準的空気硬化により準備された対応剥離層の疎水性インク受容表面の全表面エネルギーよりも、少なくとも4mN/m、少なくとも6mN/m、少なくとも8mN/m、少なくとも10mN/m、少なくとも12mN/m、少なくとも14mN/m、または少なくとも16mN/m高いことと、(3)該インク受容表面上の蒸留水液滴の後退接触角が、該硬化されたシリコーン物質のシリコーン前駆体の標準的空気硬化により準備された対応剥離層のインク受容表面上の蒸留水液滴の後退接触角よりも、少なくとも7度、少なくとも8度、少なくとも10度、少なくとも12度、少なくとも14度、少なくとも16度、少なくとも18度、または、少なくとも20度低いことと、(4)該インク受容表面上の蒸留水液滴の後退接触角が、該インク受容表面に標準的なエージング手順を施すことにより生産されたエージングされた表面上の蒸留水液滴の後退接触角よりも少なくとも5度、少なくとも6度、少なくとも7度、または、少なくとも8度小さいことと、(5)該インク受容表面の表面疎水性が該剥離層内の該硬化されたシリコーン物質のバルク疎水性よりも小さく、該表面疎水性は該インク受容表面上の蒸留水液滴の後退接触角により特徴付けられ、該バルク疎水性は、露出エリアを形成するために該剥離層内の該硬化されたシリコーン物質のエリアを露出させることにより形成された内側表面上に配置された蒸留水液滴の後退接触角により特徴付けられ、該インク受容表面上で測定された該後退接触角は、該露出エリアで測定された該後退接触角よりも、少なくとも7度、少なくとも8度、少なくとも10度、少なくとも12度、少なくとも14度、少なくとも16度、少なくとも18度であるか、または、少なくとも20度低いことと、(6)該インク受容表面上の蒸留水液滴の後退接触角は最大60度、最大58度、最大56度、最大54度、最大52度、最大50度、最大48度、最大46度、最大44度、最大42度、最大40度、最大38度、または最大36度であることと、のうちの少なくとも1つを含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、該付加硬化型シリコーン物質は、実質的に付加硬化型シリコーンからなるか、または、少なくとも95重量%の該付加硬化型シリコーンを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、官能基は該付加硬化型シリコーン物質の最大5重量%、最大3重量%、最大2重量%、または最大1重量%を占めるか、または該付加硬化型シリコーン物質は実質的に該官能基を含まない。
【0085】
いくつかの実施形態では、ポリエーテルグリコール官能化ポリジメチルシロキサンが、該付加硬化型シリコーン物質に充填される。
【0086】
いくつかの実施形態では、ポリエーテルグリコール官能化シロキサンが該付加硬化型シリコーン物質に充填されるが、該付加硬化型シリコーン物質の共有構造の一部を形成しない。
【0087】
印刷システムとともに使用するための中間転写部材(ITM)(例えば、これは「提供されるITM」であるITMであり得る)であって、(a)支持層と、(b)インク画像を受容するためのインク受容表面、および、該インク受容表面に対向する第2表面を有する、剥離層であって、該第2表面は該支持層に付着されている、剥離層と、を含み、該剥離層は付加硬化型シリコーン物質から形成され、該剥離層は最大500マイクロメートル(μm)の厚さを有し、該インク受容表面は、以下の構造特性、すなわち、(i)該インク受容表面上の蒸留水液滴の後退接触角が最大60度であることと、(ii)該インク受容表面上に堆積された蒸留水液滴について、10秒動的接触角(DCA)が最大108度であること、のうちの少なくとも一方を含み、該剥離層は以下の構造特性、すなわち、(1)該付加硬化型シリコーン物質は、実質的に付加硬化型シリコーンからなるか、または、少なくとも95重量%の該付加硬化型シリコーンを含むことと、(2)官能基は、該付加硬化型シリコーン物質の最大3重量%を占めることと、のうちの少なくとも一方を有するITM。
【0088】
いくつかの実施形態では、該後退接触角は最大58度、最大56度、最大54度、最大52度、最大50度、最大48度、最大46度、最大44度、最大42度、最大40度、最大38度、または最大37度である。
【0089】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(例えばこの印刷方法のITM)は、次の特徴を有する。すなわち、該官能基は、該付加硬化型シリコーン物質の最大2重量%、最大1重量%、最大0.5重量%、最大0.2重量%、または最大0.1重量%を占めるか、または、該付加硬化型シリコーン物質は実質的に該官能基を含まない。いくつかの実施形態では、ポリエーテルグリコール官能化ポリジメチルシロキサンが、該付加硬化型シリコーン物質に充填される。
【0090】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(すなわち、この印刷方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、ポリエーテルグリコール官能化シロキサンが該付加硬化型シリコーン物質に充填されるが、該付加硬化型シリコーン物質の共有構造の一部を形成しない。
【0091】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(例えばこの印刷方法のITM)は、次の特徴を有する。すなわち、該剥離層の厚さは、最大500μm、最大100μm、最大50μm、最大25μm、または最大15μである。
【0092】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(例えばこの印刷方法のITM)は、次の特徴を有する。すなわち、該剥離層の厚さは、1〜100μm、5〜100μm、8〜100μm、10〜100μm、または10〜80μmの範囲内である。
【0093】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(例えばこの印刷方法のITM)は、次の特徴を有する。すなわち、該支持層の厚さは、約50〜1000マイクロメートル(μ)、100〜1000μ、100〜800μ、または100〜500μの範囲内である。
【0094】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(すなわちこの方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、インク受容表面の全表面エネルギーは、対応剥離層のインク受容表面に標準的なエージング手順を施すことにより生産された変更されたインク受容表面の全表面エネルギーよりも、少なくとも2J/m
2、少なくとも3J/m
2、少なくとも4J/m
2、少なくとも5J/m
2、少なくとも6J/m
2、少なくとも8J/m
2、または、少なくとも10J/m
2高い。
【0095】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(すなわちこの方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、インク受容表面の全表面エネルギーは、硬化されたシリコーン物質のシリコーン前駆体の標準的空気硬化により準備された対応剥離層の疎水性インク受容表面の全表面エネルギーよりも、少なくとも4J/m
2、少なくとも6J/m
2、少なくとも8J/m
2、少なくとも10J/m
2、少なくとも12J/m
2、少なくとも14J/m
2、または、少なくとも16J/m
2大きい。
【0096】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(すなわち、この印刷方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、インク受容表面上の蒸留水液滴の後退接触角が、硬化されたシリコーン物質のシリコーン前駆体の標準的空気硬化により準備された対応剥離層のインク受容表面上の蒸留水液滴の後退接触角よりも、少なくとも7度、少なくとも8度、少なくとも10度、少なくとも12度、少なくとも15度、少なくとも18度、または、少なくとも20度低い。
【0097】
いくつかの実施形態では、インク受容表面上の蒸留水液滴の後退接触角は、インク受容表面に標準的エージング手順を施すことにより生産されたエージングされた表面上の蒸留水液滴の後退接触角よりも、少なくとも5度、少なくとも6度、少なくとも7度、または、少なくとも8度低い。
【0098】
いくつかの実施形態では、インク受容表面の表面疎水性は剥離層内の硬化されたシリコーン物質のバルク疎水性よりも小さい。なお、表面疎水性はインク受容表面上における蒸留水液滴の後退接触角により特徴付けられ、バルク疎水性は、露出エリアを形成するために剥離層内の硬化シリコーン物質のエリアを露出させることにより形成された内側表面上に堆積された蒸留水液滴の後退接触角により特徴付けられる。
【0099】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(すなわち、この印刷方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、インク受容表面上で測定された後退接触角は、露出エリアで測定された後退接触角よりも、少なくとも7度、少なくとも8度、少なくとも10度、少なくとも12度、少なくとも14度、少なくとも16度、少なくとも18度、または、少なくとも20度低い。
【0100】
いくつかの実施形態では、インク受容表面上の該蒸留水液滴の該後退接触角は、少なくとも25度、少なくとも28度、少なくとも30度、少なくとも32度、少なくとも34度、または少なくとも36度、および、さらに所望により、25度〜60度、28度〜60度、30度〜60度、30度〜60度、30度〜55度、30度〜50度、32度〜60度、32度〜55度、32度〜44度、35度〜60度、35度〜55度、36度〜44度、または38度〜50度の範囲内である。
【0101】
いくつかの実施形態では、剥離層は、インク受容表面の極性基が離間する方向または第2表面と逆の方向を有するよう、適応される。
【0102】
いくつかの実施形態では、剥離層は、該インク受容表面が周囲環境に曝露される動作モードにITMがあるとき、インク受容表面の該極性基が該周囲環境に向かう方向または対向する方向を有するよう、適応される。
【0103】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(例えばこの印刷方法のITM)は、次の特徴を有する。すなわち、ITMがデジタル印刷システムにおける構成要素を形成する。
【0104】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(すなわち、この印刷方法のITM)は、次の特徴を有する。すなわち、該支持層は該剥離層の該第2表面に付着された弾性コンプライアンス層を含み、該弾性コンプライアンス層は、該インク画像が印圧される印刷基板の表面輪郭に近接して追随するよう適応される。
【0105】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(すなわち、この印刷方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、支持層は該コンプライアンス層に付着された補強層を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(例えばこの印刷方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、該剥離層は、そのシリコーンポリマーマトリックス内に、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、最大0.5重量%、最大0.2重量%、または実質的に0重量%の合計量の官能基を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(例えばこの印刷方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、該剥離層は、そのシリコーンポリマーマトリックス内に、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、最大0.5重量%、最大0.2重量%、または実質的に0重量%の合計量の、C=O、S=O、O−H、およびCOOを含む部分の群から選択される官能基を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(例えばこの印刷方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、該剥離層は、そのシリコーンポリマーマトリックス内に、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、最大0.5重量%、最大0.2重量%、または実質的に0重量%の合計量の、シラン部分、アルコキシ部分、アミド部分、およびアミド・アルコキシ部分からなる群より選択される官能基を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(例えばこの印刷方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、該剥離層は、そのシリコーンポリマーマトリックス内に、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、最大0.5重量%、最大0.2重量%、または実質的に0重量%の合計量の、アミン、アンモニウム、アルデヒド、SO
2、SO
3、SO
4、PO
3、PO
4、およびC−O−Cからなる群より選択される官能基を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(すなわち、この印刷方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、該付加硬化型シリコーン物質はビニル官能シリコーンから構築された構造を有する。
【0111】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(すなわち、この印刷方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、該付加硬化型シリコーン物質は「MQ」型の極性基を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(例えばこの印刷方法のITM)は、次の特徴を有する。すなわち、該インク受容表面の全表面エネルギーは、Owens−Wendt表面エネルギーモデルを使用して評価される。
【0113】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(すなわち、この印刷方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、該10秒DCAは、最大108度、最大106度、最大103度、最大100度、最大96度、最大92度、または最大88度、所望により、少なくとも60度、少なくとも65度、少なくとも70度、少なくとも75度、少なくとも78度、少なくとも80度、少なくとも82度、少なくとも84度、または少なくとも86度、およびさらに所望により、60〜108度、65〜105度、70〜105度、70〜100度、70〜96度、70〜92度、75〜105度、75〜100度、80〜105度、80〜100度、85〜105度、または85〜100度の範囲内である。
【0114】
いくつかの実施形態では、提供されるITM(すなわち、この印刷方法のITM)は次の特徴を有する。すなわち、該インク受容表面は、該インク受容表面上に堆積された該蒸留水液滴に対して、該70秒動的接触角(DCA)と該10秒DCAとの間の差異が、少なくとも7度、少なくとも8度、少なくとも10度,または少なくとも12度、所望により、最大25度、最大22度、最大20度、最大18度,または最大17度、および、さらに所望により、6〜25度、6〜22度、6〜20度、6〜18度、6〜17度、7〜25度、7〜20度、7〜17度、8〜25度、8〜22度、18〜20度、8〜18度、8〜17度、10〜25度、10〜22度、10〜20度、10〜18度、または10〜17度の範囲内となるよう、適応されている。
【0115】
いくつかの実施形態では、該インク受容表面は、該インク受容表面上に堆積された該蒸留水液滴に対して、該70秒DCAが、最大92度、最大90度、最大88度、最大85度、最大82度、最大80度、最大78度、最大76度、最大74度、または最大72度、所望により、少なくとも55度、少なくとも60度、少なくとも65度、または、少なくとも68度、およびさらに所望により、55〜92度、55〜90度、55〜85度、55〜80度、65〜92度、65〜90度、65〜85度、65〜80度、68〜85度、68〜80度、70〜92度、70〜90度、70〜85度、または70〜80度の範囲内となるよう適応されている。
【0116】
a.複数のガイドローラ上に搭載された可撓性エンドレスベルトを含む中間転写部材(ITM)と、b.ITMの表面上にインク画像を形成するよう構成された画像形成ステーションであって、ガイドローラの第1および第2が、画像形成ステーションを通過する上方行程と、下方行程と、を画成するために、画像形成ステーションの上流および下流に配置されている、画像形成ステーションと、b.ITMの下方行程が通過する印圧ステーションであって、画像形成ステーションの下流に配置され、かつ、インク画像をITM表面から基板に転送するよう構成された、印圧ステーションと、d.印圧ステーションの下流に配置され、かつ、画像形成ステーションの上流に配置された、液体処理調合物の均一な薄層をITMの下方行程においてITM表面上に形成するための処理ステーションであって、i.液体処理調合物を用いてITMを被覆するための被覆器を、および、ii.処理調合物の所望の均一な薄層のみが残されるよう過剰液体を除去するための被覆厚さ調節組立体であって、下方行程においてITM表面に対向する丸みを帯びた先端部を含む、被覆厚さ調節組立体を、含む、処理ステーションと、を含む印刷システム。
【0117】
いくつかの実施形態では、丸みを帯びた先端部はドクターブレードの先端部である。
【0118】
いくつかの実施形態では、ドクターブレードはITM表面に対して垂直方向に向けられている。
【0119】
いくつかの実施形態では、丸みを帯びた先端部はITM表面に向って付勢され、および/または、ITM表面は丸みを帯びた先端部に向かって付勢される。
【0120】
いくつかの実施形態では、柔らかい外側表面を有するバッキングローラにより、丸みを帯びた先端部はITM表面に向って付勢され、および/またはITM表面は丸みを帯びた先端部に向かって付勢される。
【0121】
いくつかの実施形態では、(i)バッキングローラはエンドレスベルトの閉じたループの内側に配置され、かつ、ブレードの反対側に配置され、および/または、(ii)バッキングローラおよび丸みを帯びた先端部はITMの下方行程の対向側面上に配置される。
【0122】
いくつかの実施形態では、バッキングローラの外側表面は、以下の特性、すなわち、(i)弾性、(ii)ゼロメモリ、(iii)一定範囲の温度全域においてその柔らかい外側表面を保持する、(iv)ポリウレタンから構築される、のうちの1つまたは複数を有する。
【0123】
いくつかの実施形態では、温度範囲の最大と最小との間の差異は、少なくとも摂氏10度、または少なくとも摂氏20度、または少なくとも摂氏50度であり、および/または温度範囲の平均値は摂氏50度〜摂氏120度の範囲内である。
【0124】
いくつかの実施形態では、バッキングローラは、丸みを帯びた先端部がITM表面に向かって、および/または、ITM表面が丸みを帯びた先端部に向かって、付勢されたときに、丸みを帯びた先端部が貫入深さにおいてITMに貫入するよう圧縮される圧縮性表面を有する。
【0125】
いくつかの実施形態では、丸みを帯びた先端部がITM表面に向って、および/またはITM表面が丸みを帯びた先端部に向かって、付勢されたとき、丸みを帯びた先端部は貫入深さにおいてITMに貫入する。
【0126】
いくつかの実施形態では、貫入深さの大きさは、少なくとも1mまたは少なくとも2mm、および/または最大5mmまたは最大4mmまたは最大3mmである。
【0127】
いくつかの実施形態では、丸みを帯びた先端部は、ITMに向かって、および/または、ITMが丸みを帯びた先端部に向かって、丸みを帯びた先端部と、丸みを帯びた先端部に対向するIMT表面の部分との間の間隙に配置された液体溶液に抗して、釣り合った力で付勢され、それにより間隙は一定に維持される。
【0128】
いくつかの実施形態では、間隙の大きさは、処理調合物の所望の均一薄層の厚さを調整する。
【0129】
いくつかの実施形態では、間隙と、所望の均一薄層の厚さと、の間の比は少なくとも0.1、または少なくとも0.25、または少なくとも0.5、および/または、最大10、または最大4、または最大2である。
【0130】
いくつかの実施形態では、(i)間隙の大きさは、最大2ミクロン、または最大1ミクロン、または最大0.8ミクロン、または最大0.6ミクロンであり、および/または、(ii)間隙の大きさと、丸みを帯びた先端部がITM表面に貫入する貫入深さと、の間の比は、最大0.01、または最大0.005、または最大0.001、または最大0.0005である。
【0131】
いくつかの実施形態では、貫入深さは設定値に設定され、付勢の力の大きさは、貫入深さが設定値に維持されるよう、調節される。
【0132】
いくつかの実施形態では、丸みを帯びたドクターブレードの曲率半径は最大2mm、または最大1.5mm、または最大1.25mm、または最大1mmである。
【0133】
いくつかの実施形態では、ITMを被覆するための被覆器は、(i)スプレー装置と、(ii)ITM下方行程の下方に配置された、その内部に液体処理調合物が配置される湿潤トレイと、からなる群より選択される。
【0134】
いくつかの実施形態では、このシステムは、印圧ステーションの下流、かつコンディショニング・ステーションの上流に配置された、洗浄ステーションを含む。この洗浄ステーションは、インク画像が基板に転送された後にITM表面上に残る残留物質を除去するためのものである。
【0135】
いくつかの実施形態では、このドクターブレードは、表面に向って付勢されるドクターブレードの交換を支援するために、回転可能なタレットの周縁部上に搭載された複数のドクターブレードのうちの1つである。
【0136】
いくつかの実施形態では、タレット周縁部上のブレードの間隔は、ドクターブレードを交換するためにタレットを回転させる間、交換ブレードが機能を開始するまで、交換されるブレードが機能を停止しないよう、設定される。
【0137】
いくつかの実施形態では、現在機能しないドクターブレードに付着するあらゆる付着物を除去するために、ブレード洗浄装置がタレットの近傍に提供される。
【0138】
いくつかの実施形態では、現在機能しないドクターブレードに付着するあらゆる付着物を除去するために、ブレード洗浄装置がタレットの近傍に提供される。
【0139】
いくつかの実施形態では、洗浄装置は回転ブラシである。
【0140】
印刷方法は、a.水性インク、水性処理調合物、および、剥離表面を有する中間転写部材(ITM)を提供することと、b.水性処理調合物をITMの剥離表面に塗布して、剥離表面上に湿潤処理層を形成することと、c.湿潤処理層に乾燥処理を施して、湿潤処理層からITM上に乾燥処理薄膜を形成することと、d.水性インクの液滴を乾燥処理薄膜上に堆積して、乾燥処理薄膜上にインク画像を形成することと、e.インク画像を乾燥させてITMの剥離表面上に残留インク画像を残すことと、f.ITMと印刷基板との間の加圧接触により、残留インク画像を印刷基板上に転送することと、を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、残留インク画像は、乾燥処理薄膜の非印刷エリアとともに、印刷基板上に転送される。
【0142】
いくつかの実施形態では、転送の間、および/または転送の直後、乾燥処理薄膜は非印刷エリアを残留インク画像に機械的に接触および/または結合させる。
【0143】
いくつかの実施形態では、残留インク画像の直後、乾燥処理薄膜は、複数の別個の基板上に存在するインクドットにわたり連続的である。
【0144】
いくつかの実施形態では、ITMの少なくとも剥離表面は、最大50、または最大45、または最大40、または最大35、または最大30、または最大25、または最大20、または最大15のショアA硬度を有する。
【0145】
いくつかの実施形態では、ITMは、複数のローラ上に搭載されたエンドレスベルトの形状を有する。湿潤処理層は、上流ローラと下流ローラとの間のローラ間位置においてITMの表面に圧力を(法線方向に)印加することにより形成される。
【0146】
いくつかの実施形態では、ITM上に湿潤処理層を形成するために、(i)少なくとも部分(1つまたは複数)が少なくとも0.5メートル/秒、または少なくとも1メートル/秒、または少なくとも1.5メートル/秒、または少なくとも2メートル/秒、または少なくとも2.5メートル/秒、または少なくとも3メートル/秒の速度で移動するよう、水性処理調合物はITMが移動する間にITMに塗布され、(ii)水性処理調合物はITMの移動部分(単数または複数)に塗布される。
【0147】
いくつかの実施形態では、湿潤処理層は、最大5mm、または最大3mm、または最大2.5mm、または最大2mm、または最大1.75mm、または最大1.5mm、または最大1.25mm、または最大1mmの曲率半径を有する非常に丸みを帯びた表面からITMに力を印加することにより形成される。
【0148】
いくつかの実施形態では、非常に丸みを帯びた表面はドクターブレードの表面である。
【0149】
いくつかの実施形態では、ドクターブレードは交差印刷方向に向けられ、交差印刷方向において、少なくとも250g/cm、または少なくとも350g/cm、または少なくとも400gm/cm、および/または最大1kg/cm、または最大750g/cm、または最大600g/cmの力密度でITMに抗して付勢される。
【0150】
いくつかの実施形態では、ドクターブレードは100を越えるブリネル硬度を有する耐摩耗性物質で形成される。
【0151】
いくつかの実施形態では、ドクターブレードは滑らかで、および/または規則的な円筒形表面を有する。
【0152】
いくつかの実施形態では、ドクターブレードの表面粗さRAは、最大で数ミクロン、または最大1ミクロン、または最大0.5ミクロンである。
【0153】
いくつかの実施形態では、このドクターブレードは、ITMの表面と相互作用しているドクターブレードの素早い交換が可能となるよう回転可能なタレット上に搭載された複数のドクターブレードのうちの1つである。
【0154】
いくつかの実施形態では、タレット周縁部上のブレードの間隔は、ドクターブレードを交換するためにタレットを回転させる間、交換ブレードがITMとの相互作用を停止するまで、交換されるブレードがITMとの相互作用を停止させないよう、設定される。
【0155】
いくつかの実施形態では、回転ブラシなどの洗浄装置が、現在ITMと相互作用しないドクターブレードのうちの少なくとも1つのドクターブレードの丸みを帯びた縁部に対してタレットの近傍に提供される。
【0156】
いくつかの実施形態では、ITMの剥離表面に水性処理溶液を塗布する前に、先行する印刷サイクルの完了後に剥離表面上に残るあらゆる処理薄膜を除去するために、ITMの剥離表面は洗浄される。
【0157】
いくつかの実施形態では、ITMの剥離表面の洗浄は、剥離表面上のあらゆる乾燥処理薄膜を溶解するための水性処理溶液を使用して実施される。
【0158】
いくつかの実施形態では、湿潤処理層の厚さは、最大2μ、または最大1.5μ、または最大1μ、または最大0.9μ、または最大0.8μ、または最大0.7μ、または最大0.6μ、または最大0.5μ、または最大0.5μ、または最大0.4μ、または最大0.3μ、または最大0.2μ、または最大0.15μである。
【0159】
いくつかの実施形態では、湿潤処理層は均一な厚さを有する。
【0160】
いくつかの実施形態では、少なくともwcmの幅および少なくともlcmの長さを有する長方形上で、長方形の全体は、湿潤処理薄膜の厚さが、長方形内の平均厚さ値から、50%を越えて、または40%を越えて、または30%を越えて、または20%を越えて、または10%を越えて、または5%を越えて、または2.5%を越えて、または1%を越えて逸脱しないよう、湿潤処理薄膜により覆われる。なお(i)wの値は、少なくとも10、または少なくとも20、または少なくとも30、および/または最大100、または最大80、または最大60であり、(ii)lの値は、少なくとも50、または少なくとも100、または少なくとも250、または少なくとも500、または少なくとも1000である。
【0161】
いくつかの実施形態では、i.薄い湿潤処理層の形成は、(A)ITMの剥離表面から垂直方向に(例えば、最大3ミクロン、または最大2ミクロン、または最大1ミクロンだけ)離間し、および/または、(B)アプリケータと、アプリケータの剥離表面と、の間に位置する、強力速度勾配(IVG)位置において、水性処理溶液の速度勾配を作ることを含み、ii.IVG位置において、速度勾配の大きさは、VG値に等しいかまたはVG値を越え、VG値は少なくとも10
6/秒、または少なくとも2×10
6/秒、または少なくとも4×10
6/秒、または少なくとも5×10
6/秒、または少なくとも7.5×10
6/秒、または少なくとも10
7/秒、または少なくとも2×10
7/秒、または少なくとも4×10
7/秒、または少なくとも5×10
7/秒、または少なくとも7.5×10
7/秒である。
【0162】
いくつかの実施形態では、速度勾配は、i.IVG位置の上流である上流位置において、最大速度勾配はIVG位置における速度勾配の値の最大x%となり、ii.IVG位置の下流である下流位置において、最大速度勾配はIVG位置における速度勾配の値の最大x%となり、iii.xの値は、最大50、または最大30、または最大20、または最大10となり、および/または、iv.上流位置および下流位置はそれぞれ、最大2cm、または最大1.5cm、または最大1.25cm、または最大1cm、または最大9mm、または最大8mm、または最大7.5mm、または最大7mm、または最大6mm、または最大5mmだけ、印刷方向に沿ってIVG位置から離間されるよう、印刷方向に沿って局在化される。
【0163】
いくつかの実施形態では、処理溶液の乾燥は、ビーディングが防止され、かつ、最大200nm、または最大150nm、または最大120nm、または最大100nm、または最大80nm、または最大70nm、または最大60nm、または最大50nm、または最大40nm、または最大30nmの厚さ(例えば、実質的に均一な厚さ)を有する親水性および凝集性を有する連続的なポリマー処理薄膜が残されるよう、十分迅速に行われる。
【0164】
それにも関わらず、異なる実施形態では、たとえ乾燥処理薄膜が極度に薄い場合でさえも、単層または単層型の構成体よりも厚い。したがって、異なる実施形態では、乾燥処理層の厚さは、少なくとも20ナノメートル、または少なくとも30ナノメートル、または少なくとも40ナノメートル、または少なくとも50ナノメートルであり得る。いくつかの実施形態では、この多くの「バルク」(すなわち、最小厚さ特徴−例えば、以下で説明する他の特徴(単数または複数)とともに)を提供することは凝集性および/または弾性を示す乾燥処理薄膜の形成を支援する。このことは、乾燥処理薄膜がITMから基板に転送される際に(すなわち、乾燥処理薄膜上に乾燥インク画像を保持する段階において)その構造的完全性を維持することが望ましいステップS117において、有用であり得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、水性インク液滴が堆積される乾燥処理薄膜の厚さは最大200nm、または最大100nm、または最大50nm、または最大30nmである。
【0166】
いくつかの実施形態では、水性インク液滴が堆積される乾燥処理薄膜の厚さは少なくとも15nm、または少なくとも20nm、または少なくとも30nm、または少なくとも50nm、または少なくとも75nmである。
【0167】
いくつかの実施形態では、乾燥処理薄膜は、ITMの剥離表面の長方形全体にわたり連続的である。なお該長方形は少なくともwcmの幅および少なくともlメートルの長さを有する。なお(i)wの値は、少なくとも10、または少なくとも20、または少なくとも30、および/または最大100、または最大80、または最大60であり、(ii)lの値は、少なくとも50、または少なくとも100、または少なくとも250、または少なくとも500、または少なくとも1000である。
【0168】
いくつかの実施形態では、長方形の面積の少なくとも50%、または少なくとも75%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも99%、または100%に対して、乾燥処理薄膜の厚さが長方形内において平均厚さ値から、50%を越えて、または40%を越えて、または30%を越えて、または20%を越えて、または10%を越えて、または5%を越えて、または2.5%を越えて、または1%を越えて逸脱しないよう、乾燥処理薄膜は連続的である。
【0169】
いくつかの実施形態では、湿潤処理層の乾燥処理の間、湿潤処理層の動粘性係数は、最大1秒、または最大500ミリ秒、または最大250ミリ秒、または最大150ミリ秒、または最大100ミリ秒、または最大75ミリ秒、または最大50ミリ秒、または最大25ミリ秒、または最大15ミリ秒、または最大10ミリ秒の時間的期間内に、少なくとも100倍、または少なくとも500倍、または少なくとも1000倍、または少なくとも2500倍、または少なくとも5000倍、または少なくとも10,000倍、または少なくとも25,000倍増加する。
【0170】
いくつかの実施形態では、乾燥処理薄膜の液体含有量は、最大10重量/重量%、または最大7.5重量/重量%、または最大5重量/重量%、または最大2.5重量/重量%、または最大1.5重量/重量%、または最大1重量/重量%である。
【0171】
いくつかの実施形態では、乾燥処理は、乾燥処理薄膜を形成するために、(例えば、少なくとも1秒、または少なくとも0.5秒、または少なくとも100ミリ秒、または少なくとも50ミリ秒、または少なくとも25ミリ秒、または少なくとも10ミリ秒の時間的期間内に)湿潤処理層中の水の少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%を除去する。
【0172】
いくつかの実施形態では、乾燥処理は、乾燥処理薄膜を形成するために、摂氏60度/1atmの液体の少なくとも80重量/重量%、少なくとも少なくとも90重量/重量%、少なくとも少なくとも95重量/重量%を湿潤処理層から除去する。
【0173】
いくつかの実施形態では、水性インク液滴が堆積される乾燥処理薄膜の表面(例えば乾燥処理薄膜の上方表面)は、最大30ナノメートル、または最大25ナノメートル、または最大20ナノメートル、または最大18ナノメートル、または最大16ナノメートル、または最大15ナノメートル、または最大14ナノメートル、または最大12ナノメートル、または最大10ナノメートル、または最大9ナノメートル、または最大8ナノメートル、または最大7ナノメートル、または最大5ナノメートル、および/または少なくとも3ナノメートル、または少なくとも5ナノメートルの平均粗度Ra(一般に使用される1次元平均粗度パラメータ)により特徴付けられる。
【0174】
いくつかの実施形態では、水性インク液滴が堆積される乾燥処理薄膜、および乾燥処理薄膜の表面(例えば乾燥処理薄膜の上方表面)は、(i)平均粗度Raと、(ii)乾燥処理層の厚さと、の間の寸法比により特徴付けられる。なお該寸法比は、少なくとも0.02、または少なくとも0.03、または少なくとも0.04、または少なくとも0.05、または少なくとも0.06、または少なくとも0.07、または少なくとも0.08、または少なくとも0.09、または少なくとも0.10、または少なくとも0.11、または少なくとも0.12、または少なくとも0.13、または少なくとも0.14、または少なくとも0.15、または少なくとも0.16、または少なくとも0.17、または少なくとも0.18、または少なくとも0.19、または少なくとも0.2である。
【0175】
いくつかの実施形態では、水性インク液滴が堆積される乾燥処理薄膜、および乾燥処理薄膜の表面(例えば乾燥処理薄膜の上方表面)は、(i)平均粗度Raと、(ii)乾燥処理層の厚さと、の間の寸法比により特徴付けられる。なお該無次元比は、少なくとも0.5、少なくとも0.4、少なくとも0.3、少なくとも0.25、少なくとも0.2、少なくとも0.15、または少なくとも0.1、および所望により、少なくとも0.02、または少なくとも0.03、または少なくとも0.04、または少なくとも0.05、または少なくとも0.06、または少なくとも0.07、または少なくとも0.08である。
【0176】
いくつかの実施形態では、乾燥時、乾燥処理薄膜は連続的である。
【0177】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物は溶液の形態で提供される。
【0178】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物は分散の形態で提供される。
【0179】
いくつかの実施形態では、水性インクの固形物(例えばナノ色素および/または樹脂)は乾燥処理薄膜のバルク中へと流動し、乾燥処理薄膜内に存在する第四級アンモニウム塩と反応(例えば結合)する(それにより、例えば液滴の展開が助長される)。
【0180】
いくつかの実施形態では、基板は、未被覆繊維性印刷基板、市販の被覆済み繊維性印刷基板、および、プラスチック印刷基板からなる群より選択される。
【0181】
いくつかの実施形態では、印刷基板は、所望により、ボンド紙、未被覆オフセット印刷用紙、被覆済みオフセット印刷用紙、複写用紙、更紙、被覆済み更紙、上級紙、被覆済み上級紙、およびレーザー用紙からなる紙の群より選択される紙である。
【0182】
いくつかの実施形態では、転送は、最大摂氏120度、または最大摂氏120度、または最大摂氏100度、または最大摂氏90度、または最大摂氏80度の転送温度で実行される。
【0183】
いくつかの実施形態では、水性インクの固形物(例えばナノ色素および/または樹脂)は乾燥処理薄膜のバルク中へと流動し、乾燥処理薄膜内に存在する第四級アンモニウム塩と反応(例えば結合)する。
【0184】
いくつかの実施形態では、この方法は、インク基板上に存在するインクドットのインクドットセットIDSが形成されるよう実行される。
【0185】
いくつかの実施形態では、この方法は、所与の液滴が所与の基板上に存在するインクドットを生じさせ、および/または基板上に存在するインクドットに進化するように、(i)液滴複数性DPの各所与の液滴と、(ii)インクドットセットのそれぞれの所与の基板上に存在するインクドットと、の間に対応関係が存在するように、ITM上に存在する乾燥処理薄膜上に堆積された水性インク液滴の液滴複数性DPが、インク基板上に存在するインクドットのインクトットセットIDSを形成するよう、実行される。
【0186】
いくつかの実施形態では、この方法は、堆積の間、液滴複数性の液滴がITM上の乾燥処理薄膜と衝突するときはつねに、衝突する液滴の運動エネルギーが液滴を変化させるよう、実行される。
【0187】
いくつかの実施形態では、この方法は、(i)ITMの表面の上方で変形した液滴のうちの各液滴の最大衝突半径が最大衝突半径値R
MAX_IMPACTを有し、(ii)衝突の後、および/または、転送の間、および/または転送後、基板上に存在するインクドットセットIDSの各インクドットが乾燥ドット半径R
DRIED_DOT_ON_SUBSTRATEを有するよう、物理化学的な力が、変形された液滴を、または係る液滴から誘導されるドットを、展開させ、
(iii)液滴複数性の各液滴およびインクドットセットIDSの対応するインクドットに対して、
i.基板上に存在する乾燥ドット半径R
DRIED_DOT_ON_SUBSTRATEと、
ii.変形された液滴最大衝突半径値R
MAX_IMPACTと、
の比が、少なくとも1、または少なくとも1.01、または少なくとも1.02、または少なくとも1.03、または少なくとも1.04、または少なくとも1.05、または少なくとも1.1、または少なくとも1.15、または少なくとも1.2、または少なくとも1.25、または少なくとも1.3、または少なくとも1.35、または少なくとも1.4、または少なくとも1.45、または少なくとも1.5、および所望により、最大2、最大1.8、最大1.7、最大1.6、または最大1.55となるよう、実行される。
【0188】
いくつかの実施形態では、この方法は、i.ITM上に存在する乾燥処理薄膜上に堆積された液滴の液滴複数性DPが基板上に存在するインクドット(すなわち、上部基板表面に固定的に付着された)を生成し、液滴複数性DPの各液滴はインクドットセットIDSの異なるそれぞれの基板上に存在するインクドットに対応し、ii.液滴複数性DPの各インク液滴が、噴出パラメータにしたがって、基板上に堆積され、iii.液滴複数性DPのインク液滴の物理化学的特性とともに噴出パラメータが共同的にインクジェット紙ドット半径R
DIRECT−JETTING−ONTO−INK−JET−PAPER−THEORETICALを定義し、なお、インクジェット紙ドット半径R
DIRECT−JETTING−ONTO−INK−JET−PAPER−THEORETICALは、インク液滴が乾燥処理薄膜上にではなく直接的にインクジェット紙にインクジェットされた場合に取得されるインクドットの半径であり、iv.(A)インクドットセットIDSのドットの乾燥ドット半径R
DRIED_DOT_ON_SUBSTRATEと、(B)インクジェット紙ドット半径R
DIRECT−JETTING−ONTO−INK−JET−PAPER−THEORETICALと、との間の比が少なくとも1、または少なくとも1.01、または少なくとも1.02、または少なくとも1.03、または少なくとも1.04、または少なくとも1.05、または少なくとも1.1、または少なくとも1.15、または少なくとも1.2、または少なくとも1.25、または少なくとも1.3、または少なくとも1.35、または少なくとも1.4、または少なくとも1.45、または少なくとも1.5、および所望により、最大2、最大1.8、最大1.7、最大1.6、または最大1.55となるよう、実行される。
【0189】
いくつかの実施形態では、インクドットセットの濃度は、少なくとも5、または少なくとも10、または少なくとも20、または少なくとも50、または少なくとも100であり、インクドットセットの各インクドットは基板上で明確に区別される。
【0190】
いくつかの実施形態では、この方法は、インクドットセットのインクドットが印刷基板上で突起する正方形幾何学的突起物内に含まれ、インクドットセットの各インクドットが印刷基板の表面に固定的に付着され、該正方形幾何学的突起物内の全部の該インクドットがインクドットセットIDSの個々の部材としてみなされるよう、実行される。
【0191】
いくつかの実施形態では、この方法は、該インクドットの各インクドットが、有機ポリマー樹脂中に分散された少なくとも1つの着色剤を含み、該ドットの各ドットが2,000nmより小さい平均厚さ、および5〜300マイクロメートルの直径を有するよう、実行される。
【0192】
いくつかの実施形態では、この方法は、該インクドットの各インクドットが略凸形状を有し、ここで凸形状からの偏差(DC
dot)が、DC
dot=1−AA/CSAにより定義され、式中、AAは該ドットの計算された投影エリアであり、この投影エリアは該印刷基板に対して略平行であり、CSAは該投影エリアの輪郭を最小に閉ざす凸形状の表面積であり、該インクドットセットの凸性からの平均偏差(DC
dot mean)が最大0.05、最大0.04、最大0.03、最大0.025、最大0.022、最大0.02、最大0.018、最大0.017、最大0.016、最大0.015、または最大0.014となるよう、実行される。
【0193】
いくつかの実施形態では、この方法は、各インクドットが、有機ポリマー樹脂中に分散された少なくとも1つの着色剤を含み、各該インクドットが基板の上部表面の連続エリアをカバーし、(i)該上部基板表面に向かって下方に延長する投影垂直線が、該連続エリアにおける各点において、該上部基板表面に遭遇する前に最初に該インクドットに遭遇し、および/または、(ii)各該インクドットが15〜300マイクロメートルの直径を有し、および/または、(iii)該インクドットの各インクドットが最大1,800nmの平均厚さを有し、該インクドットの各インクドットがR
aspect=D
dot/H
dotにより定義される無次元アスペクト比(R
aspect)により特徴付けられ、ただし式中D
dotは該直径であり、H
dotは該平均厚さであり、および/または、(iv)該アスペクト比が少なくとも50、または少なくとも60、または少なくとも75、または少なくとも95、または少なくとも110、または少なくとも120、または少なくとも135、または少なくとも150、または少なくとも170、または少なくとも180、または少なくとも190、または少なくとも200、または少なくとも220、または少なくとも240、または少なくとも260、または少なくとも280、または少なくとも300となるよう、各該インクドットが該連続エリア上の全体に配置されるよう、実行される。
【0194】
いくつかの実施形態では、この方法は、該アスペクト比が最大400、最大350、または最大325となるよう、実行される。
【0195】
いくつかの実施形態では、この方法は、各インクドットが、有機ポリマー樹脂中に分散された少なくとも1つの着色剤を含み、各該インクドットが基板の上部表面の連続エリアをカバーし、(i)該上部基板表面に向かって下方に延長する投影垂直線が、該連続エリアにおける各点において、該上部基板表面に遭遇する前に最初に該インクドットに遭遇し、および/または、(ii)各該インクドットが15〜300マイクロメートルの直径を有し、および/または、(iii)該インクドットの各インクドットが最大1,800nmの平均厚さを有し、該インクドットの各インクドットがR
aspect=D
dot/H
dotにより定義される無次元アスペクト比(R
aspect)により特徴付けられ、ただし式中、D
dotは該直径であり、H
dotは該平均厚さであり、および/または、(iv)該アスペクト比が140〜400、150〜300、160〜300、180〜300、200〜300、210〜300、220〜300、230〜300、240〜300の範囲内となるよう、各該インクドットが該連続エリア上の全体に配置されるよう、実行される。
【0196】
いくつかの実施形態では、この方法は、インクドットセットIDSの該インクドットの少なくとも1つ(または少なくとも大部分または全部)が電荷ダイレクタの2%未満を含むよう、実行される。
【0197】
いくつかの実施形態では、この方法は、インクドットセットIDSの該インクドットの少なくとも1つ(または少なくとも大部分または全部)が電荷ダイレクタを含まないよう、実行される。
【0198】
いくつかの実施形態では、この方法は、インクドットセットIDSの該インクドットの少なくとも1つ(または少なくとも大部分または全部)は、最大1,500nm、または最大1000nm、または最大800nm、または最大600nm、または最大400nm、または最大350nm、または最大300nm、または最大250nmである厚さを有するよう、実行される。
【0199】
いくつかの実施形態では、この方法は、インクドットセットIDSの該インクドットの少なくとも1つ(または少なくとも大部分または全部)が該着色剤の少なくとも1.2重量%を含むよう、実行される。
【0200】
いくつかの実施形態では、この方法は、インクドットセットIDSの該インクドットの少なくとも1つ(または少なくとも大部分または全部)が該樹脂の少なくとも5重量%を含むよう、実行される。
【0201】
いくつかの実施形態では、この方法は、該インクドット内の該着色剤および該樹脂の合計濃度が少なくとも40%となるように、インクドットセットIDSの該インクドットの少なくとも1つ(または少なくとも大部分または全部)が構成されるよう、実行される。
【0202】
いくつかの実施形態では、この方法は、該樹脂と該インクドット内の該色素との重量比が少なくとも1:1となるように、インクドットセットIDSの該インクドットの少なくとも1つ(または少なくとも大部分または全部)が構成されるよう、実行される。
【0203】
いくつかの実施形態では、この方法は、標準的なテープテストを施されたときに、インクドットセットIDSの該インクドットの少なくとも1つ(または少なくとも大部分または全部)が接着障害を有さないよう、実行される。
【0204】
いくつかの実施形態では、この方法は、各インクドットの上方薄膜表面における窒素の表面濃度が該薄膜内の窒素のバルク濃度を越え、該バルク濃度は該上方薄膜表面の少なくとも30ナノメートル下方の深さにおいて測定され、該表面濃度と該バルク濃度との比が少なくとも1.1〜1となる少なくとも1つ(または少なくとも大部分または全部)であるよう、実行される。
【0205】
いくつかの実施形態では、この方法は、少なくとも1つ(または少なくとも大部分または全部)の各該インクドットの上方薄膜表面が402.0±0.4eVにおいてX線光電子分光法(XPS)ピークを示すよう、実行される。
【0206】
いくつかの実施形態では、この方法は、少なくとも1つ(または少なくとも大部分または全部)の該インク滴セットの該インクドットが、摂氏90〜摂氏195度の範囲内の温度で、10
6cP〜3×10
8cPの範囲内の第1粘性係数を有するよう、実行される。
【0207】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1動粘性係数が最大7×10
7cPとなるよう、実行される。
【0208】
いくつかの実施形態では、この方法は、該第1動粘性係数が10
6cP〜10
8cPの範囲内となるよう、実行される。
【0209】
いくつかの実施形態では、この方法は、該第1粘性係数が少なくとも4×10
6cPとなるよう、実行される。
【0210】
いくつかの実施形態では、この方法は、少なくとも1つ(または少なくともダイブ分または全部)が複数の連続的インクドットとなるよう、実行される。
【0211】
いくつかの実施形態では、この方法は、少なくとも1つ(または少なくとも大部分または全部)に対して、厚さが最大1,200nm、または最大1,000nm、または最大800nm、または最大650nm、または最大500nm、または最大450nm、または最大400nmとなるよう、実行される。
【0212】
いくつかの実施形態では、この方法は、このITMが本明細書で記載の任意のITMであり、および/または、この水性処理溶液が本明細書で記載の任意の水性処理溶液であるよう、実行される。
【0213】
いくつかの実施形態では、水性インクは、色素、結合剤、分散剤、および少なくとも1つの添加剤を含む。
【0214】
印刷システムのいくつかの実施形態について、ここで添付の図面を参照して説明する。この説明は、図面と併せると、本開示の教示が、非限定的な実施例により、どのように実施され得るかを当業者に明らかにする。これらの図面は例示的な説明を目的とするものであり、本開示の根本的な理解のために必要となる以上に詳細に実施形態の構造的詳細を示すことは意図しない。明瞭性および簡素性のために、図面に示されるいくつかの物体は縮尺通りではない。
【発明を実施するための形態】
【0216】
ここで本発明について、添付の図面を参照しつつ、単に例示として説明する。ここで詳細な図面を特に参照して、本明細書で示す特定事項が、例として、および、本発明の好適な実施形態に関する例示的説明のためにのみ、本発明の原理および概念的側面に関する最も有用で容易に理解される説明であると考えられる内容を提供することを目的として提示されたものであることが、強調される。この点に関して、本発明を基本的に理解するにあたり要求される以上に本発明の構造的詳細を示すことはまったく意図するところではない。以下の図面と併せて説明を読むことにより、当業者には、本発明のいくつかの形態がどのように実際に実施され得るかが明らかになるであろう。これらの図面の全体を通して、同様の参考番号は全般に同様の要素を指すために使用される。
【0217】
定義
本願では、以下の用語は、以下の意味を有するものとして理解されたい。
a)「後退接触角」または「RCA」という用語は、Drop Shape Methodを使用することにより、Dataphysics OCA15 Pro Contact Angle measuring deviceまたは同等のVideo−Based Optical Contact Angle Measuring Systemを使用して測定された接触角を指す。類似した「前進接触角」または「ACA」と言う用語は、実質的に同一の方法で測定された前進接触角を指す。
b)「標準エージング手続き」という用語は、標準的な対流炉において摂氏160度において2時間にわたり各試験剥離層に対して行われる加速されたエージング手順を指す。
c)「標準的空気硬化」と言う用語は、剥離層を硬化するための従来の硬化処理を指し、この硬化処理では、剥離層を硬化させる間、剥離層表面(または「インク受容表面」)が空気に曝露される。
d)「バルク疎水性」という用語は、剥離層の内側表面上に堆積された蒸留水液滴の後退接触角により特徴付けられる。なお、内側表面は、剥離層内における硬化されたシリコーン物質のエリアを曝露することにより形成される。
e)「画像転送部材」または「中間転写部材」または「転送部材」という用語は、インクが印刷ヘッド部により(例えばインクジェットヘッド部により)最初に塗布される部材であって、その後、ジェットされた画像は当該部材から他の基板(単数または複数)(通常は最終的な印刷基板)に転送される、印刷システムの構成要素を指す。
f)「ブランケット」という用語は、2つ以上のローラ上にベルト状の構造体が形成されるよう、印刷装置内に搭載が可能である可撓性転送部材を指す。なお、これらのローラのうちの少なくとも1つは、ブランケットを回転および移動させて(例えばそのベルトを移動させることにより)、ローラの周り移動させることが可能である。
g)インク画像または残留インクなどの物体に対して「剥離表面上」という用語は、その剥離表面により、および/またはその剥離表面の上方で、支持されることを意味する。「剥離表面上」という用語は、インク画像または残留インクと剥離表面との間の直接的接触を必ずしも意味するものではない。
h)その調合物内の特定の界面活性剤に対して「水性処理調合物の該静的表面張力を増加させるために十分に高い静的表面張力を有する」などの用語は、その特定の界面活性剤の追加的な量または分量を調合物に加え、達成された調合物の静的表面張力と、これらの分量を追加する以前の調合物の静的表面張力と、を比較することにより、評価される。
i)「液体吸湿剤」という用語は、摂氏25度〜摂氏90度の範囲内の少なくとも1つの温度において液体であり、かつ、純粋状態において摂氏90度で、最大0.05ata、より典型的には最大0.02ata、最大0.01ata、または最大0.003ataの蒸気圧を有する、吸湿剤を指す。「液体吸湿剤」という用語はグリセロールなどの物質を指すことが特に意図される。
j)「疎水性」および「親水性」、その他の用語は、相対的な意味で使用され得、必ずしも絶対的な意味で使用されるものではない。
k)「(処理)調合物」という用語はまたは溶液または[dispersion]を指す。
l)摂氏x(xは正の整数)度蒸発負荷を、ここで定義する。溶液が摂氏x度においてy%固体(重量/重量)、およびz%液体(重量/重量)であるとき、当該溶液の「摂氏x度蒸発負荷」は比z/yである。「蒸発負荷」の単位は、「溶媒重量/全溶質重量」である。本開示に関して、蒸発負荷はつねに大気圧で定義される。本開示に関して、「x」のデフォルト値は摂氏60度である。すなわち温度を指定する接頭辞を有さない「蒸発負荷」という用語は大気圧における摂氏60度蒸発負荷を指す。
m)ITMの1部分がvメートル/秒の速さで運動中であるとき、このことは、ブランケットITMの当該部分が、その局所的位置表面/平面に対して平行な方向に、例えば静止するアプリケータに対して、少なくともvメートル/秒の速さで移動していることを意味する。
n)「静的表面張力」と言う用語は摂氏25度および大気圧における静的表面張力を指す。
o)濡れた層の「厚さ」という用語は、以下のように定義される。体積volの物質が、面積SAを有する表面の表面エリアを湿潤層で被覆するとき、湿潤層の厚さは、vol/SAとみなされる。
p)乾燥薄膜の「厚さ」は、以下のように定義される。x重量%が液体である体積volの物質が、表面積SAの表面を湿潤または被覆し、全液体が蒸発して湿潤層が乾燥薄膜に変換されたとき、乾燥薄膜の厚さは次の式として与えられるものとみなされる。
vol/ρ
wet layer(100−x)/()SA・ρ
dry layer)
式中、ρ
wet layerは湿潤層の比重、ρ
dry layerは乾燥層の比重である。
q)「連続湿潤層」という用語は、凸状領域の外辺部内において露出した小領域がまったく存在しない状態で凸状領域を被覆する連続的な湿潤層を指す。
r)「連続乾燥薄膜」という用語は、凹状領域の外辺部内において不連続箇所がまったく存在しない状態で凹状領域を被覆する連続的な乾燥薄膜を指す。
s)「凝集性薄膜/引っ張り強度」という用語は、付着していた表面から剥がされたときに一体化された状態を保つ構成体を指す。すなわち、表面から剥離されたとき、「凝集性薄膜」はその構造的完全性を保持し、小片に細分化されるのではなく、一枚の皮膜として剥離される。
t)「垂直に印加される力」という用語は、法線方向において少なくとも1つの成分を有する力を指す。所望により、「垂直方向に印加される」力は、他の方向(例えば力が印加される表面に沿った方向)における追加的な成分を有し得る。
u)特記なきかぎり、液体(例えば処理調合物)の物理的特性(例えば粘度および表面張力など)は摂氏25度における特性を指す。
v)特記なきかぎり「濃度」という用語は、重量/重量、すなわち(調合物の1成分の重量)/(当該調合物の全重量)を指す。
【0218】
図2に関する説明
図2は、水性インクを中間転写部材(ITM)のシリコーン系剥離層表面に間接印刷する方法のフローチャートである。いくつかの実施形態では、
図2の方法(または
図2の方法のステップの任意の組み合わせ)は
図3A〜
図3B、
図4A〜
図4B、
図5〜
図9、
図10A〜
図10D、および
図11A〜
図11Cに開示の装置(または係る装置の構成要素)を使用して実行され得る。特に、以下で説明するように、本発明の様々な実施形態は、均一なミクロン未満の厚さの湿潤処理層を、ITMの広い面積を覆って、および/または高い印刷スピードで、生産するにあたり有用である方法および装置に関する。
【0219】
異なる実施形態では、
図2は、以下の特徴(すなわち、均一かつ制御されたドットゲイン、良好かつ均一な印刷光沢、および、安定したドット凸部(dot convexity)および/または良好に画成された境界を有する高品質ドットに起因する良好な画像品質)の任意の組み合わせにより特徴付けられるインク画像を生産するために実行され得る。
【0220】
ステップS201〜S205は、
図2の印刷処理において使用される成分または構成要素または消耗品に関し、その一方で、ステップS209〜S225は処理自体に関する。
【0221】
簡略に述べると、
図2のステップは以下の通りである。すなわちステップS201およびステップS205では、ITM(すなわちシリコーン系剥離層表面を含む)、および水性処理調合物(例えば溶液)が提供され、これらの各構成要素は以下で説明する特定の特性を有する。ステップS209では、水性処理調合物がITMの剥離層表面に塗布されて、剥離層表面上に湿潤処理層が形成される。ステップS213では、湿潤処理層に乾燥処理が施され、湿潤処理層から乾燥処理薄膜がITM上に形成される。ステップS217では、水性インクの液滴がこの乾燥処理薄膜上に堆積されて、ITM表面上にインク画像が形成される。ステップS221では、このインク画像が乾燥されて、ITM表面上に残留インク画像が残され、ステップS225では、この残留インク画像は印刷基板に転送される。
【0222】
本発明の様々な実施形態は、好適には高い印刷スピードが最優先される生産環境において、ドットゲイン、画像光沢、およびドット品質の潜在的に競合する目的を達成するための方法、装置、およびキットに関する。いくつかの実施形態によれば、発明者らは、ステップS213において形成された乾燥処理薄膜が、非常に薄く(例えば最大150ナノメートル、または最大120ナノメートル、または最大100ナノメートル、または最大80ナノメートル、または最大70ナノメートル、または最大60ナノメートル、または最大50ナノメートル、および所望により少なくとも20ナノメートル、または少なくとも30ナノメートル)、および/または、広い面積にわたり連続的であり、および/または、非常に滑らかな上方表面により特徴付けられ、および/または、第四級アンモニウム塩を豊富に含み(例えばドットゲインを助長するために)、および/または、ITMから基板への良好な転送を助長する特性(すなわち、薄膜自体の特性、またはITM表面に対する薄膜の特性)を有するよう、
図2の方法を実行することが有用であることを見出した。
【0223】
例えば、転送後は乾燥残留インクが処理薄膜の下方に、および基板表面上に存在し得るため、処理薄膜が厚いほど、処理薄膜の光沢または均一性に悪影響が及ぶ。したがって、非常に薄い処理薄膜を生産することが好ましいものであり得る。
【0224】
例えば、処理薄膜の不連続性および/または変動する厚さの処理薄膜は、基板上に不均一な光沢の画像をもたらし得るか、または、基板に転送されたときにその機械的完全性を失う残留インク画像(ステップS113において)を生産し得る。したがって、広い面積にわたり連続的であり(好適には、印刷基板に構造的完全性が保持されるよう十分な凝集性を有し)、および/または、摂氏75度〜摂氏150度の転送温度において処理薄膜が粘着性を有するような熱レオロジー特性を有する、処理薄膜を産出することが好ましいものとなり得る。
【0225】
例えば、乾燥処理薄膜に第四級アンモニウム塩が存在すると、インク滴が拡がることを助長し得るが、必ずしもインク滴の拡がりは均一とはならない。しかし、(i)乾燥処理薄膜における高濃度の第四級アンモニウム塩と、(ii)非常に滑らかである上方表面を有する均一な厚さの処理薄膜と、の組み合わせは、均一なインク液の拡がりを助長し得る。
【0226】
本発明の様々な実施形態は、これらの結果を、たとえこれらの結果が潜在的に競合する目的を必然的に伴うものであったとしても、同時に達成するための技術に関する。例えば、処理薄膜が非常に薄いものとなることが要求されると、広い面積にわたり連続的であり、および/または、基板への良好な転送のために十分な凝集性を有し、および/または、非常に滑らかかつ均一な上方表面を有する、処理薄膜を形成することは困難となり得る。
【0227】
ステップS201に関する説明
ステップS201で提供されるITMはシリコーン系剥離層を有するが、その剥離表面は、多数の従来型シリコーン系剥離層よりも、疎水性が低いかまたは感知可能に低いものであり得る。この構造特性は、様々な方法で測定され、特徴付けられ得る。
【0228】
例えば
図2のステップS201で示されるように、中間転写部材(ITM)は、以下の特性、すなわち、(i)シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の後退接触角が最大60度であること、および、(ii)シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の10秒動的接触角(DCA)が最大108度であること、のうちの少なくとも一方を満足するよう十分な親水性を示すシリコーン系剥離層表面を含む。
【0229】
シリコーン系剥離層の疎水性を低下させるためのいくつかの技術のうちのいずれか1つが用いられ得る。
【0230】
いくつかの実施形態では、極性官能基が、シリコーン系剥離層に導入され、および/またはシリコーン系剥離層において生成される。1つの事例では、官能基がプレポリマーバッチ(例えば溶液中のモノマー)に追加され、これらの官能基は、硬化時に、シリコーンポリマー網状組織の一体化された部分となり得る。代替的または追加的に、シリコーン系剥離層は前処理が施され(例えば、コロナ放電により、または電子ビームにより)、それにより剥離層の表面エネルギーが増加される。
【0231】
代替的に、シリコーン系剥離層は、官能基を実質的に有さないときでさえも、低い疎水性を有するよう製造され得る。1つの事例では、剥離層のシリコーンポリマー骨格は、その極性基(例えばO−Si−O)が、ITM表面の局部的平面に対して略垂直であり、かつ、剥離層表面に向かって「上向き」に面する、方向に向けられるよう、構築され得る。
【0232】
現在、発明者らは、前段落の技術が卓越した画像転送を提供するもの(ステップS225)と考える。
【0233】
図2のステップS205に関する説明
ステップS205で提供される水性処理調合物の1つの特徴は、水性処理調合物の静的表面張力が20〜40ダイン/cmの範囲内であることである。例えば、水性処理調合物は1つまたは複数の界面活性剤を含む。
【0234】
したがってステップS205の水性処理調合物は、多くの従来型処理溶液よりも親水性が低く、水よりも親水性が顕著に低い。
【0235】
いくつかの実施形態では、(i)低い疎水性を有するシリコーン系剥離層(ステップS201)と、(ii)低い親水性を有する水性処理調合物と、の組み合わせは、従来型水性処理溶液のビーディングを助長する表面張力効果を低下させる(しかし、必ずしも解消しない)。
【0236】
20〜40ダイン/cmの範囲内の静的表面張力に加えて、ステップS205で提供される水性処理調合物は以下の特性を有する。
a.水性処理調合物は少なくとも3重量%の第四級アンモニウム塩を含む。このことは、乾燥処理薄膜(すなわちステップS217で生産される)が第四級アンモニウム塩を豊富に含むことを保証するにあたり有用である。
b.水性処理調合物は少なくとも1重量%(例えば少なくとも1.5%、または少なくとも2%、または少なくとも3%)の、少なくとも5%の少なくとも1つの水溶性ポリマー(摂氏25度において少なくとも5%の水溶解度を有する)を含む。このことは、ステップ225における良好な転送のために十分な凝集性を有する乾燥処理薄膜(ステップS217において生産される)におけるポリマー膜またはポリマーマトリックスの形成を助長するにあたり有用であり得る。
c.少なくとも10cPである摂氏25度粘性係数。以下で説明するように、高い粘度は、ビーディングに向かう表面張力に起因する任意の傾向を打ち消すにあたり有用である。
d.最大8:1(例えば最大7:1、または最大6:1、または最大5:1、または最大4:1)の重量による摂氏60度蒸発負荷。したがって、溶液は、より高い蒸発負荷を有する従来型処理調合物と比較して、低い比熱容量を有する。さらに、水性処理溶液に対する、および、水性処理溶液に送達される所与の熱出力に対する、特定の必要残留厚さに対して、水性処理調合物の粘度は、表面張力を効果的に打ち消す高い絶対粘度を達成するために、蒸発の関数として迅速に増加するであろう。
【0237】
物理的に、高い粘度を有する流体の流れを誘導することは、より低い粘度を有する流体よりも、困難である。すなわち、より高い粘度を有する流体の流れを誘導するためには、より大きい駆動力が必要とされる。少なくとも中程度の初期粘度(すなわち少なくとも10cPである摂氏25度粘性係数)と、ITM表面上における蒸発後の迅速な粘度上昇(例えば低い蒸発負荷による)と、の組み合わせは、水性処理調合物が比較的短い時間的期間(例えば最大1秒または最大0.5秒)で比較的「高い」(例えば少なくとも10,000cP)粘度を達成することを保証する。したがって、ビーディングに向かう何らかの熱力学的傾向が存在したとしても、乾燥処理薄膜(すなわちステップS213で形成される)の特性に悪影響を及ぼし得る実際のビーディングは、阻止されるか、または感知可能に緩和される。
【0238】
いくつかの実施形態では、初期水性処理調合物の摂氏25度粘性係数は少なくとも12cP、または少なくとも14cP、例えば10〜100cP、12〜100cP、14〜100cP、10〜60cP、または12〜40cPの範囲内であり得る。
【0239】
要約すると、(A)以下の特性、すなわち、(i)シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の後退接触角が最大60度であること、および、(ii)シリコーン系剥離層表面上に堆積された蒸留水滴の10秒動的接触角(DCA)が最大108度であること、のうちの少なくとも一方を満足するために十分な親水性を有する剥離層と、(B)20〜40ダイン/cmの範囲の水性処理調合物の静的表面張力と、の組み合わせは、ビーディングを生じさせ得る熱力学的駆動力の大きさを最小化するにあたり有用である。さらに、前述の粘度に関連する特徴は、この駆動力に対して抗するにあたり有用である。
【0240】
この傾向に対して抗するとともに、ビーディングを駆動する熱力学的力の大きさを減少させることは、ビーディングを生じさせるあらゆる傾向により、ステップS209において、均一な厚さを有する処理調合物の湿潤層の形成が妨げられないことを保証する。
【0241】
本発明の様々な実施形態では、水性処理調合物は水を含むキャリア液体を含み、該水は、水性処理調合物の少なくとも65重量%(例えば少なくとも70%または少なくとも75%)を構成する。
【0242】
ステップS209に関する説明
ステップS209では、水性処理調合物がITMのシリコーン系剥離層表面に塗布されて、0.8μm(例えば最大0.7μm、または最大0.6μm、または最大0.5μm)の厚さを有する湿潤処理層が当該剥離層表面上に形成される。
【0243】
「湿潤層の厚さ」は以下のように定義される。すなわち、体積volの物質が面積SAを有する表面の表面積を湿潤層で被覆するとき、湿潤層の厚さはvol/SAとみなされる。
【0244】
好適には、ステップS209は、湿潤処理層が、好適には広い面積にわたり(例えば剥離層の全面積にわたり)、均一な厚さを有し、かつ欠陥を有さないものとなるよう、実行される。このことは、湿潤処理層がミクロン未満の厚さであるとき、特に困難となり得る。
【0245】
上述のように、ビーディングを打ち消すためには、水性処理調合物が少なくとも「中程度の粘度」(例えば少なくとも10cPである摂氏25度粘性係数)を有すると有用である。それにも関わらず、係る粘度において、均一であり、かつミクロン未満の厚さの水性処理調合物を取得することに関連する難しい課題が存在し得る。
【0246】
ステップS209では、水性処理調合物がシリコーン系剥離層表面に塗布されると、最大0.8μmの厚さを有する湿潤処理層が形成される。
【0247】
本発明の様々な実施形態は、好適にはITMの広い面積にわたり厚さが均一となるよう、この湿潤処理層に塗布するための装置および方法に関する。
【0248】
いくつかの実施形態では、水性処理調合物の初期被覆でITM表面を被覆した後、過剰な処理調合物は、初期被覆から除去されてもよく、または最大0.8μmの均一な厚さを有する湿潤処理層を取得してもよい。
【0249】
いくつかの実施形態では、このことは、(例えばドクターブレードの)非常に丸みを帯びた表面をITMに向かって、またはその逆方向に、付勢することにより、達成され得る。例えば、非常に丸みを帯びた表面の曲率半径は、最大1.5mm、または最大1.25mm、または最大1mmであり得る。
【0250】
高い印刷スピードにおいて(例えば、ITMの表面速度が比較的大きい(例えば少なくとも1メートル/秒、または少なくとも1.25メートル/秒、または少なくとも1.5メートル/秒)場合)、過剰な液体を除去してミクロン未満の厚さを有する処理層を形成することは、高い表面(highly surface)とITMとの間の間隙領域(すなわち、速度勾配はITM表面に対して、法線である)において比較的大きい速度勾配(すなわち剪断)−例えば、少なくとも10
6/秒、または少なくとも2×10
6/秒の速度勾配を確立することを必然的に伴い得る。
【0251】
上述のように、処理調合物の摂氏25度粘性係数は少なくとも10cPであり得る。ステップS209がより高い圧力で実行されたとしても、これらのより高い温度における粘性係数は少なくとも3cP、または少なくとも5cP、または少なくとも10cPであり得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、必要な均一な0.8μm未満(好適には)の均一な厚さを達成するためには比較的大きい力(例えば、非常に丸みを帯びた表面をITMに向かって(またはその逆方向に)付勢するための力)が要求される。
【0252】
いくつかの実施形態では、少なくとも250g/cm、または少なくとも350g/cm、または少なくとも400gm/cm、および/または最大1kg/cm、または最大750g/cm、または最大600g/cmの交差印刷方向における力密度で、丸みを帯びた表面がITMに付勢されるか、またはITMが丸みを帯びた表面に付勢される。
【0253】
いくつかの実施形態では、湿潤処理層は、アプリケータとITMとの間に圧力を印加することにより形成され、その圧力の大きさは、少なくとも0.1バール、または少なくとも0.25バール、または少なくとも0.35バール、または少なくとも0.5バール、および所望により、最大2バール、または最大1.5バール、または最大1バールである。
【0254】
ステップS213に関する説明
ステップS213では、湿潤処理層に乾燥処理が施され、湿潤処理層から乾燥処理薄膜が形成される。
【0255】
例えば、湿潤処理層の乾燥処理の間、湿潤処理層の動的粘度は、最大0.5秒、または最大0.25秒の時間的期間内で、少なくとも1000倍増加する。
【0256】
いくつかの実施形態では、乾燥処理薄膜(例えば凝集性ポリマー処理薄膜)の厚さは、最大150ナノメートル、または最大120ナノメートル、または最大100ナノメートル、または最大80ナノメートル、または最大60ナノメートルである。
【0257】
いくつかの実施形態では、乾燥処理薄膜は滑らかな上方表面を有する。例えば、湿潤処理層の乾燥処理は、表面張力により誘導されるビーディングが阻害されて乾燥処理薄膜が滑らかな上方表面を有するように水性処理調合物の粘度が十分迅速に大きくなるよう、十分迅速に行われる。
【0258】
いくつかの実施形態では、乾燥された処理薄膜の滑らかな上方表面は、最大12ナノメートル、または最大10ナノメートル、または最大9ナノメートル、または最大8ナノメートル、または最大7ナノメートル、または最大5ナノメートルの平均粗度R
aにより特徴付けられる。当業者は
図13に、および、付随する説明に、誘導される。
【0259】
いくつかの実施形態では、乾燥処理薄膜は、ITMの剥離表面の長方形全体にわたり連続的である。なお該長方形は少なくとも10cmの幅および少なくとも10メートルの長さを有する。
【0260】
いくつかの実施形態では、処理薄膜は透明である。
【0261】
乾燥処理薄膜の目的の1つは、処理薄膜上に堆積された水性インク液滴に直接的に接触しないよう、ITM表面を保護することである。しかし、特に乾燥処理薄膜が薄い(例えば最大150、または最大120、または最大100、または最大80ナノメートル)場合には、水性インクの液滴は乾燥処理薄膜の厚さを「浸食貫通」し得る。したがっていくつかの実施形態では、(例えば
図2のステップS205または
図12のステップS95において)提供される水性処理調合物内の水溶性ポリマーの水溶性ポリマー濃度(重量による)は、最大10%、または最大8%、または最大6%、または最大5%である。
【0262】
ステップS217〜S221に関する説明
ステップS217では、水性インクの液滴が(例えばインク液滴堆積により)乾燥処理薄膜上に堆積されて、ITM表面上にインク画像が形成される。ステップS221では、インク画像は乾燥されて、ITM表面上に残留インク画像が残される。
【0263】
例えば、乾燥処理薄膜内に第四級アンモニウム塩が存在することは、液滴が堆積されたとき、または堆積直後に、ドット拡散および/またはドットゲイン(例えば均一なドット拡散および/またはドットゲイン)を助長するにあたり有用である。当業者は
図13A〜
図13Eを参照する以下の説明に誘導される。上述のように、均一な厚さを有し、および/または、欠陥を有さず、および/または非常に滑らかな上方表面を有する、乾燥処理薄膜の形成(ステップS213における)は、薄膜上方表面上における水性インクの均一な流れを助長し得る。
【0264】
ステップS225に関する説明
ステップSS25では、残留インク画像は基板に転送される。例えば、残留インク画像は、乾燥処理薄膜の非印刷エリアとともに、印刷基板上に転送される。
【0265】
いくつかの実施形態では、乾燥処理薄膜は、残留インク画像の転送の間、印刷エリアおよび非印刷エリアの両方において乾燥処理薄膜が完全にITMから分離して、乾燥インク画像とともに印刷基板に転送されるよう、十分な凝集性を有する。
【0266】
いくつかの実施形態では、転送時のITMの温度は摂氏80度〜摂氏120度の範囲内である。いくつかの実施形態では、ITM温度は最大摂氏100度、または最大摂氏90度である。いくつかの実施形態では、ITM温度は少なくとも摂氏100度、または少なくとも摂氏110度、または少なくとも摂氏120度である。
【0267】
いくつかの実施形態では、ステップS205で提供される水性処理溶液における水性処理溶液水溶性ポリマーの存在は、ステップS213において形成される乾燥処理薄膜が、転送の間、十分な凝集性を有することを保証する(例えばポリマー膜またはポリマーマトリックスを形成することにより)ことを支援する。
【0268】
いくつかの実施形態では、インク画像が存在する基板は、光沢紙(例えば光沢コート紙)である。
【0269】
この転送は完璧であり得る(すなわち残留インク画像および乾燥処理薄膜の全体が基板に転送される)。代替的に、転送が完璧に達しない場合がある。この目的に対して、洗浄ステーションが、S225の転送ステップの後にITM表面に残る物質を一掃する。
【0270】
図3A〜
図3Bに関する説明
図3Aでは、本発明のいくつかの実施形態に係る間接印刷のためのシステムの概略図が示されている。
図3Aのシステムは、複数の可ガイドローラ232、240、250、251、253、242上に搭載された撓性を有するエンドレスベルトを含む中間転写部材(ITM)210を含む。他の事例(図示せず)では、ITM220はドラムまたはドラムの周りに巻かれたベルトである。
【0271】
図3Aの事例では、ITM210(すなわち、ITM210のベルト)は時計方向に動く。ベルト移動方向は、上流方向および下流方向を画成する。ローラ242、240はそれぞれ、画像形成ステーション212の上流および下流に位置される。したがってローラ242は「上流ローラ」と呼ばれ、ローラ240は「下流ローラ」と呼ばれ得る。
【0272】
図3Aのシステムは
(a)ITM210の表面上にインク画像(図示せず)を形成する(例えば、乾燥処理薄膜上への液滴堆積により−例えば
図2のステップS217または
図12のステップS109参照)よう構成された画像形成ステーション212(例えば印刷バー222A〜222Dを含む。なお各印刷バーはインクジェットヘッド部(単数または複数)を含む)と、
(b)インク画像を乾燥させる(例えば
図2のステップS221または
図12のステップS113参照)ための乾燥ステーション214と、
(c)インク画像がITM210の表面からシート基板または織物基板に転送される(例えば
図2のステップS225または
図12のステップ117参照)または印圧ステーション216と、
図3Aの特定的な非限定的事例では、印圧ステーション216は印圧シリンダ220と、圧縮性ブランケット219を保持するブランケットシリンダ218と、を含む。いくつかの実施形態では、加熱器231が、基板(例えばシート基板または織物基板)への転送が助長されるようインク薄膜の粘着性を付与することを支援するために、画像転送ステーションのシリンダ218とシリンダ220との間のニップ部の直前に提供され得る。基板供給は概略的に図示されている。
(d)残留物質(例えば処理済みの処理薄膜および/またはインク画像またはその一部)がITM210の表面から洗浄される(
図2では洗浄ステップは図示されない)洗浄ステーション258(すなわち
図3Aでは概略的にブロックとして図示される)と、
(e)液体処理調合物(例えば水性処理調合物)の層(例えば均一な厚さを有する)がITM表面上に形成される(例えば
図2のステップS209または
図12のステップS101参照)処理ステーション260(すなわち
図3Aでは概略的にブロックとして図示される)と、
をさらに含む。
【0273】
当業者は
図3Aに図示される構成要素が必ずしもすべて要求されないことを理解するであろう。
【0274】
図3Bでは、空間において固定された複数の「位置」Loc
A〜Loc
Jが図示されている。Loc
Aはローラ242にあり、Loc
Bは画像ステーション212の「始点」、Loc
Cは画像ステーション212の「終点」、などである。したがって、インク画像は(例えば
図2のステップS217参照)ITM210の上方行程上の画像形成ステーション212において位置LocAと位置LocBとの間の領域で形成される。インク画像は、残留インク画像を形成するために位置Loc
Cと位置Loc
Eとの間の領域で乾燥される(例えば
図2のステップS221および
図12のステップS105参照)。この乾燥は、インク画像が乾燥ステーション214を通って移動する(例えばITMの時計方向回転により)につれて行われる。残留インク画像は、位置Loc
Eと位置Loc
Fとの間の印圧ステーション216においてITM表面から基板に転送される(
図2のステップS225および
図12のステップS117参照)。残留インク画像の転送後ITM210の表面上に残る物質は、位置Loc
Gと位置Loc
Hとの間の洗浄ステーション258においてITM210の表面から洗浄され得る。湿潤処理層は、位置Loc
Iと位置Loc
Jとの間にある処理ステーション260においてITM210の表面上で
図2のステップS209(または
図12のステップS101)において形成され得る(例えば
図2のステップS209または
図12のステップS101参照)。この湿潤処理層は、乾燥処理(すなわち湿潤処理層を乾燥処理薄膜に変換するために)が施される(例えば、
図2のステップS213または
図12のステップS105参照)。乾燥処理は右手側の位置Loc
Jと位置Loc
Aとの間で行われる。乾燥処理薄膜が画像形成ステーション212に(例えばITM 210の反時計方向の回転により)輸送された後、引き続きインク画像が乾燥処理薄膜に対する液滴堆積により形成され得る(例えば
図2のステップS217または
図2のステップS109参照)。
【0275】
図3A〜
図3Bに示されているように、位置Loc
Aと位置Loc
Dとの間のITMの部分はITM210(すなわちITM210のベルト)の上方行程である。この上方行程(
図3Cに図示)は、(i)画像形成ステーション212に対して上流にある上流ガイドローラ242と、(ii)画像形成ステーションに対して下流にある下流ガイドローラ240と、の間にある。上方行程は画像形成ステーション212を通過する。
【0276】
ITMの下方行程はITM210の位置Loc
Dと位置Loc
Aとの間にあり、
図3Dに示されている。この下方行程は印圧ステーション216、洗浄ステーション258、および処理ステーション260を通過する。
【0277】
処理ステーションの1例が
図4Aに示されている。
【0278】
図4Aの特定的な非限定的実施形態では、ITM210は矢印2012により表されるように、全体が参照番号2014で示され、かつ、好適にはタンク2016内に搭載されている、ドクターブレードの上方で、向かって右から左に移動される。
図4Aでは、ドクターブレード202014はドクターロッド型であり剛性棒材から形成されるか、または、ITM210の幅全体にわたり延長するホルダ2020である。ITM210の下面に対向するその上方表面において、棒材2020は流路または溝部24を有する状態で形成される。溝部24内に、石英ガラス製で粗度がわずか数ミクロン(好適には10ミクロン未満、特に0.5ミクロン未満)の滑らかでかつ規則的な円筒形表面を有する、棒状体2022が支持されている。
【0279】
ドクターブレード2014の上方を通過する以前に、ITM210(または下方行程)の下面は、過剰な処理調合物(例えば溶液)2030(例えば
図2のステップS205または
図12のステップS95で提供される)を用いて被覆される。この例示説明において、過剰な処理調合物(例えば溶液)がITM210(特にその下面)に塗布される様式は、
図5を参照して以下で説明されるが、本発明に対して本質的な重要性を有さない。ITM210は、例えば、単に液体を含むタンクに浸漬されてもよく、処理調合物(例えば溶液)の噴流の上方を通されてもよく、または
図5で示すように上向きのジェット1128を用いて噴霧されてもよい。
【0280】
本発明の一実施形態では、液体浸透性の布地は、液体が布地に浸透し、被覆されるべき表面に面する布地の側に層が形成されるよう、上向きの噴霧ヘッド部の上方に配置される。この場合、噴霧ヘッド部は、布地を表面に向って付勢するよう作用するであろうが、布地を浸透する液体が表面に接触することが防止され、この液体は、流体軸受における場合と同様に作用する。
【0281】
図面に示されているように、ITM210がドクターブレード2014に接近するにつれて、ITM210は、ITM210に塗布される薄膜の望ましい厚さよりも顕著に大きい液体の被覆2030を有する。
【0282】
ドクターブレード2014の機能は、過剰液体2030をITM210から除去すること、および、残った液体がITM210の表面全体にわたり均等かつ均一に拡がることを保証することである。これを達成するためにITM210はドクターブレード2014に向かって、例えば空気圧(図示せず)により、付勢される。代替的に、ITM210をドクターブレード2014に向かって付勢する力は、いくつかの実施形態では、織物の上方側面または反対側面に対して下方に押圧する(例えばそれ自体の重量により、またはバネの作用により)スポンジローラなどのバッキングローラ1141であり得る。さらなる代替例として、ドクターブレード2014自体がITM210に向かって付勢され、ITM210が張力下に維持されてもよい。
【0283】
円筒形の滑らかな棒状体2022からなるドクターブレード2014の先端部は、ITM210の幅全体にわたり均一な半径を有し、その滑らかさは、先端部とITM210の下面との間の間隙において液体の層流を保証する。この流れの性質は、流体軸受における液体潤滑剤の性質に類似し得、ITM210の下面(すなわちITMの「下方行程」の表面)に対する付着状態を維持する液体2030の薄膜を、ITMをドクターブレード2014に抗して付勢する力と、棒状体2022の曲率半径と、に依存する厚さに減少させる。半径および力の両方が織物の幅全体にわたり一定であるため、結果的に生成される薄膜は均一であり、その厚さは、印加される力および棒状体直径の適切な選択により設定が可能である。ドクターブレード2014により除去される過剰な液体は、タンク2016に落下する前に棒状体2022のすぐ上流において小さいプール2032を作る。
【0284】
本発明の代替的な実施形態では、液体で被覆されるべきITM210の表面は下向きに代わって上向きであってもよい。この場合、過剰な液体をITM210(すなわちITMの「下方行程」の表面)に塗布することに代わって、液体は、ワイパブレードと織物の上方側の表面との間の接触線において、同様に液体の小さいプールが成長および維持されるよう、計量しながら表面上に供給される。空気ナイフが、この場合、プールからの処理調合物(例えば溶液)がITM210の横方向縁部を越えて流出することを防止するために、提供され得る。
【0285】
本発明の様々な実施形態では、プール2032は、たとえ液体が、何らの理由で、ドクターブレード2014に到達する以前に、織物の表面の一部から反発(例えば「ビーディング」により)されたとしても、ITM210のエリア全体が被覆されるよう、ITM210の幅全体にわたって処理調合物(例えば溶液)の一定供給を提供する。
【0286】
余剰処理調合物(例えば溶液)が落下するタンク2016は、織物の下面を被覆するための液体がそこから吸い込まれる主要貯留タンクであってもよく、または、タンク2016は、主要貯留タンクにドレインされ、および/または好適な廃棄システムに注がれる、別のタンクであってもよい。
【0287】
棒状体2022は摩耗に対して耐性を示すために石英ガラスなどの固い物質で作られる。液体中には粗粒または粉塵などの小さい粒子が存在し得、係る粒子により、液体が流れる丸みを帯びた縁部が損傷され得る。石英ガラス以外の物質を使用することも可能であり得るが、使用する物質は好適には100を越える(例えば、200を越える、500を越える、または1000さえを越える)ブリネル硬度を有するべきである。本発明の様々な実施形態では、使用する物質は、均一な直径を有し、かつ、10ミクロン未満(特に0.5ミクロン未満)の表面粗さを有する、滑らかな棒状体に形成されることが可能であるべきである。
【0288】
6mmの半径を有してもよいが可能ならばわずか0.5mmの半径を有し得る棒状体2022は比較的脆弱であり、支持のために棒材2020を必要とし得る。棒状体2022を正確に定位置に保持するために棒材2020には溝部24が設けられており、溝部24内に棒状体2022が支えられる。棒状体2022は任意の好適な様式で溝部24内に保持され得る。例えば、接着剤を使用して、接着剤が固まるまで棒材2020を使用して棒状体2022を平坦表面、たとえばガラス板に押圧することも可能である。さらなる代替例として、溝部24は、棒状体2022の直径よりもわずかに狭くなるよう正確に機械加工され、熱収縮を使用して、棒状体2022が溝部24内の定位置に保持されてもよい。
【0289】
特定の調合物(例えば溶液)を塗布するために係るドクターブレードが使用される場合、溶液の堆積物34がドクターブレード2014の下流側に蓄積される。理論に拘束されることを望むものではないが、この現象は、調合物(例えば溶液)の静止薄膜がドクターブレードの下流側に付着し、係る静止薄膜が乾燥するために溶質が残されるという事実に起因するものであり得ると考えられる。係る堆積物およびその組成物の形成に関する理由の如何に関わらず、過剰に成長することが許された場合には、係る堆積物はITM210に塗布される処理調合物(例えば溶液)の層と次第に干渉することとなるであろう。
【0290】
本発明の様々な実施形態は、ドクターブレード2014が汚損したときにドクターブレード2014を切り替えるための装置および方法に関する。
図4Bでは、好適には織物被覆処理または、そのITMに調整剤が塗布されることを要求する印刷システムを中断することなくドクターブレードを容易に切り替えるための1例が、示されている。
【0291】
図4Bでは、12個のドクターブレード1122が、円筒形回転可能タレット1120の周縁部周りに配置された凹陥部に均等に搭載されている。軸方向に延長するドクターブレード1122は、
図4Aのドクターロッド1122と同様の挙動を示し、タレット1120はロッドホルダ2020と同一の目的を有する。円形断面の棒状体を使用することに代わり、ドクターブレード1122は、滑らかで丸みを帯び、かつ研磨された縁部を有する帯状細片として構築されている。均一な曲率半径の丸みを帯びた縁部を有する帯状細片は、例えば、円形断面の棒状体を平坦化することにより、生産され得る。ドクターブレード1122は好適にはステンレス鋼で作られ得るが、代替的に、摩耗に対して耐性を示す他の固い物質が使用され得る。
【0292】
タレット1120およびドクターブレード122がITM110と相互作用する様式が
図5に示されており、
図5では、洗浄ステーション258と、処理ステーション260(例えば処理調合物の湿潤層を塗布するためのステーション。
図2のステップS209または
図2のステップS101参照)と、の1例が示されている。
【0293】
図5の事例では、2つの別個のタンク1125、1127が示されている。一定量の処理溶液(例えば、
図2のステップS205または
図12のステップS95の特性(単数または複数)を有する)がタンク1125に格納されている。例えば、この処理溶液はITM210の表面に噴出(すなわち噴出装置774により)噴出され得る。ITM210の表面から物質を機械的に除去して、ITM表面を洗浄するためのブラシ1126Aおよびブラシ1126Bも
図5に示されている。例えば圧力が、ブラシ1126Aの逆側に配置されたバッキングローラ772Aとブラシ1126Bの逆側に配置されたバッキングローラ772Bとの間に印加され得る。
【0294】
いくつかの実施形態では、ITMの表面から除去された物質は、例えば、タンク1125に格納される液体処理調合物(例えば
図2のステップS205または
図12のステップS95の特定(1つまたは複数)を有する)に再溶解可能であり得る乾燥処理薄膜を含む。これは、処理調合物のリサイクルを可能にし得る。
【0295】
システムの機械的特性の如何に関わらず、本発明の様々な実施形態では、
図2のステップS205または
図12のステップS95で提供される水性処理調合物は、完全に再溶解可能である(例えば乾燥後、水性処理調合物に完全に溶解し得る)。
【0296】
処理調合物1128は噴出装置1128により噴出され得る。
図5の事例では、ドクターブレード1122のうちの1つが有効化されており、この有効化されたドクターブレードは1122
ACTIVEと標示される。比較的厚い層の処理調合物が塗布され(例えば、装置1128により)、過剰な処理調合物はドクターブレード1122
ACTIVEと、ドクターブレード1122
ACTIVEに向かって付勢されるバッキングローラ1141と、の組み合わせにより除去され得る。
【0297】
噴出装置1128は、処理調合物の被覆材をITM210の表面に塗布するための「被覆器」の1例である。被覆器の他の例は、プールの液体含有量がITM表面上に保持されたときのプール2032である。
【0298】
ドクターブレード1122
ACTIVE(またはドクターブレード1122
ACTIVEの丸みを帯びた先端部)およびバッキングローラ1141(または代替的に丸みを帯びた先端部1123に向かって空気圧を提供するための装置)が共同的に被覆厚さ調節組立体となり、
図10Aおよび
図11Aにおいて、処理調合物の「最終厚さ」は、先端部1123をITM210の対向部分に向かって(例えばバッキングローラ1141に向かって)またはその逆方向に付勢する力の量にしたがって調節され得る。
【0299】
図5の事例では、1つのみのドクターブレード122がITM110と任意の所与の時間において相互作用するが、ブレードが汚損されると、タレット120が回転されて、次の隣接するドクターブレードが、当該ブレードが機能する(すなわち、過剰な液体を除去し、所望の厚さの薄膜のみが装置の下流側表面に付着されることが可能となるよう表面に対して十分に接近する)動作位置に運ばれる。
【0300】
動作位置に戻る前に、タレット回転サイクルにおける何らかの後段段階において、汚損されたブレード1122は洗浄装置(例えばブラシ1130)を通過し、この洗浄装置により、あらゆる堆積物が除去され、およびブレードが洗浄され、その後、ブレードは機能を回復させる。
【0301】
タレット1120の回転は操作員による要求に基づいて行われてもよく、または規則的間隔で実施されてもよい。
【0302】
タレット1120上のドクターブレードの個数は必ずしも12である必要はないが、切り替え時に、
図8〜
図9に示されるように、2つのドクターブレード1122が同時に機能しかつITM110と相互作用する時間が存在するよう、十分な個数が存在することが望ましい。その結果、薄膜計量供給動作に中断がまったく発生せず、かつ、それにより印刷システムの中断なしにドクターブレードの切り替えが可能となるよう、ブレードの十分に連続的な交換が行われる。
【0303】
図8〜
図9はそれぞれ、タレット1120およびドクターブレード洗浄ブラシ1130の、より詳細な透視拡大断面図である。両方は、タンク1127に浸漬された金属フレーム1140において回転可能に支持されたアクスル上に搭載されている。タレット1120のアクスルおよびドクターブレード洗浄ブラシ1130は、タンク1127の外部に搭載された駆動モータ1412および駆動モータ1144に接続されている。
図7から見られ得るように、タレット1120は中空円筒から作られ、その円筒形表面は、その重量および慣性モーメントが低減される一方で、ドクターブレード1122を支持するにあたり依然として十分な強度が提供されるよう、穿孔され得る。
【0304】
タレット1120により支持されるドクターブレード1122が平坦な帯状細片として示されているが、ドクターブレード1122は代替的に
図4を参照して説明したように円形棒状体として形成されてもよいことが理解されるべきである。
【0305】
調整剤の溶液を激しく攪拌すると、特定の調整剤に対しては、気泡または泡沫が形成されることが知られている。超音波を使用して気泡を破壊することが可能であり、係る発泡防止装置がタンク1125に組み込まれ得る。
【0306】
図10Aに示されるように、ドクターブレード1122
ACTIVEがバッキングローラ1141に向かって(またはその逆方向に)付勢されると、ドクターブレードはITM210の下方行程に向かって進入し得る。
図10Aに示されているように、ITM210(すなわちITM210の下方行程)はローラ1141とドクターブレード1122
ACTIVEとの間に配置される。したがってローラ1141がドクターブレード1122
ACTIVEに向かって付勢されると、ローラ1141はITM210(すなわちITM210の下方行程)を押圧し、ITM210はドクターブレード1122
ACTIVEに向かって付勢される。その逆も成り立つ。
【0307】
図10A〜
図10Bの事例では、ドクターブレード1122
ACTIVEの中心軸1188が示されている。
図10A〜
図10Bでは、ドクターブレード1122
ACTIVEの丸みを帯びた先端部は1123として標示されている。
【0308】
図10Aの事例では、先端部1123はITM210の表面(すなわち局所的法線)に対向する。
図10Aの事例では、ドクターブレード1122
ACTIVEは、丸みを帯びた先端部1123に対向するITM210の局所的表面に対して実質的に垂直方向に向けられる。
【0309】
図10Aの事例では、下向きの力がローラ1141により(すなわちITMを介して)丸みを帯びた先端部1123に向かって印加される。代替例として、丸みを帯びた先端部1123に向かってITM210を付勢するために、空気圧が使用され得る。結果的に、ドクターブレード122
ACTIVEは、曲率半径および印加される圧力により決定される厚さを有する液体薄膜(例えば通常は1マイクロメートルより薄い)を残して全部を除去することとなる。
【0310】
噴出装置1128、または、ITM表面が浸され得る処理槽、または、初期被覆を塗布するための任意の他の装置が、液体処理調合物でITMを被覆するための「被覆器」と考えられ得る。さらに、(i)丸みを帯びた表面1123(例えば丸みを帯びた先端部)と、丸みを帯びた表面1112をITM210の対向表面に向かって付勢するための対向する力を印加するための装置(例えばローラ1141)と、の組み合わせが、処理調合物所望の均一の厚さ(例えばミクロン未満の厚さ)の層のみが残されるよう過剰な液体を除去するための厚さ調節組立体を形成する。
【0311】
本発明の様々な実施形態では、丸みを帯びた先端部1123が対向するITM表面に対して接触しない(例えば先端部とITM表面との間に間隙を維持するために)場合でも、アプリケータは依然として処理流体を介してITMに圧力を間接的に印加し得る。
【0312】
いくつかの実施形態では、丸みを帯びた先端部は少なくとも0.1バール、または少なくとも0.25バール、または少なくとも0.35バール、または少なくとも0.5バール、および所望により最大2バール、または最大1.5バール、または最大1バールの圧力を印加する。
【0313】
この圧力は、印刷方向に局所的であり得る。例えば、「圧力の帯状細片」(例えば、帯状細片は交差印刷方向に細長いものであり得る)(例えば少なくとも10cm、または少なくとも30cm、または少なくとも50cmの長さを有する)が、(i)帯状細片内においてITMに印加される最大圧力がP_STRIP_MAXであり、P_STRIP_MAXの値が、少なくとも0.1バール、または少なくとも0.25バール、または少なくとも0.35バール、または少なくとも0.5バール、および所望により最大2バール、または最大1.5バール、または最大1バールとなり、かつ、(ii)帯状細片内のすべての位置において、アプリケータによりITMに印加される局所的圧力が少なくとも0.5×P_STRIP_MAXとなり、かつ、(iii)帯状細片の交差印刷方向において反対側上のすべての位置(上流側側面および下流側側面−帯状細片から最大2cm、または最大1cm、または最大5mm、または最大3mm、または最大2mm、または最大1mm、または最大0.5mmだけ離間される)で、最大圧力が最大0.2×P_STRIP_MAXまたは最大0.1×P_STRIP_MAXとなるよう、アプリケータによりITMに印加され得る。
【0314】
図11Aで示すように、丸みを帯びた先端部1123(例えばドクターブレード)(例えば静止状態で保持される)が存在することにより剪断場または速度勾配が生じ得る(例えば
図11Bおよび
図11C参照)。ITM表面の位置において、処理流体の速度は、非粘着性境界状態により、非ゼロ(例えばITMの速度に実質的に等しい)であり得、アプリケータにおいて処理液体の速度はゼロであり得る。
【0315】
いくつかの実施形態では、i.薄い湿潤処理層の形成(例えば
図2のステップS209または
図12のステップS101における)は、(i)ITMの剥離表面から垂直方向に(例えば、最大3ミクロン、または最大2ミクロン、または最大1ミクロン)離間され、および/または、アプリケータとアプリケータの剥離表面との間である強力速度勾配IVG位置x=x
IVG_location位置において、水性処理溶液の速度勾配(例えばITM表面に対して垂直な方向における)を作ることを含み、ii.IVG位置において、速度勾配の大きさは、VG値に等しいかまたはVG値を越え、VG値は少なくとも10
6/秒、または少なくとも2×10
6/秒、または少なくとも4×10
6/秒、または少なくとも5×10
6/秒、または少なくとも7.5×10
6/秒、または少なくとも10
7/秒、または少なくとも2×10
7/秒、または少なくとも4×10
7/秒、または少なくとも5×10
7/秒、または少なくとも7.5×10
7/秒である。
【0316】
いくつかの実施形態では、速度勾配は、
i.IVG位置の上流である上流位置において、最大速度勾配はIVG位置における速度勾配の値の最大x%となり、
ii.IVG位置の下流である下流位置において、最大速度勾配はIVG位置における速度勾配の値の最大x%となり、
iii.xの値は、最大50、または最大30、または最大20、または最大10となり、および/または、
iv.上流位置および下流位置はIVG位置からそれぞれ最大2cm、または最大1.5cm、または最大1.25cm、または最大1cm、または最大9mm、または最大8mm、または最大7.5mm、または最大7mm、または最大6mm、または最大5mmだけ離間されるよう、
印刷方向に沿って局在化される。
【0317】
いくつかの実施形態では、少なくとも250g/cm、または少なくとも350g/cm、または少なくとも400gm/cm、および/または最大1kg/cm、または最大750g/cm、または最大600g/cmの交差印刷方向における力密度で、丸みを帯びた表面がITMに付勢されるか、またはITMが丸みを帯びた表面に付勢される。
【0318】
図12に関する説明
本発明の様々な態様は、
図12で説明する印刷処理に関する。いくつかの非限定的な実施形態では、
図3〜
図11で説明される装置、システム、およびデバイスは
図12の方法を実行するために用いられ得る。
図12におけるステップの順序は限定的であることを意図するものではなく、特にステップS91〜S99は任意の順序で実行され得る。いくつかの実施形態では、ステップS101〜S117は
図12に示す順序で実行される。
【0319】
いくつかの実施形態では、ステップS91は
図2のステップS201の任意の特徴または特徴の組み合わせを提供するために実行され得る。
【0320】
いくつかの実施形態では、ステップS95は
図2のステップS205の任意の特徴または特徴の組み合わせを提供するために実行され得る。
【0321】
いくつかの実施形態では、ステップS101は
図2のステップS209の任意の特徴または特徴の組み合わせを提供するために実行され得る。
【0322】
いくつかの実施形態では、ステップS105は
図2のステップS213の任意の特徴または特徴の組み合わせを提供するために実行され得る。
【0323】
いくつかの実施形態では、ステップS109は
図2のステップS217の任意の特徴または特徴の組み合わせを提供するために実行され得る。
【0324】
いくつかの実施形態では、ステップS113は
図2のステップS221の任意の特徴または特徴の組み合わせを提供するために実行され得る。
【0325】
いくつかの実施形態では、ステップS117は
図2のステップS225の任意の特徴または特徴の組み合わせを提供するために実行され得る。
【0326】
ステップS91〜S99は、
図12の処理において使用される成分または構成要素または消耗品に関し、その一方で、ステップS101〜S117は処理自体に関する。要約すると、(i)ステップS101において、湿潤処理調合物の薄い処理層が中間転写部材(ITM。疎水特性を有する剥離層を有する)に塗布され、(ii)ステップS105において、この処理層が、ITMの剥離表面上の薄い乾燥処理薄膜に乾燥(例えば高速乾燥)され、(iii)ステップS109において、水性インクの液滴が薄い乾燥処理薄膜上に堆積され(例えば噴出により)、(vi)ステップS113において、インク画像が乾燥されて、ITM上の乾燥処理薄膜上にインク画像が残され、(v)ステップS117において、インク画像が印刷基板上に転送される(例えば乾燥処理薄膜とともに)。
【0327】
ステップS91〜S99の含有物に関する詳細について、ならびに処理ステップS101〜S117について、以下で説明する。
【0328】
本発明の様々な実施形態では、ステップS91〜S117は、以下のように実行される。
(A)ステップS91において、ITMが提供される。なおこのITMは例えば、最大でも中程度の疎水性を有し、および/または、疎水特性を有し、および/または、シリコーン系であり、および/またはわずかに中程度の疎水性を有し、および/または、官能基を有さない、剥離層を有する。
(B)ステップS95において、例えば(i)低い蒸発負荷を有し、および/または(ii)界面活性剤を豊富に含み、および/または、(ii)中程度のみの親水性を示し、および/または、(iii)水溶性ポリマーを含み、および/または(iv)第四級アンモニウム塩を含み、および/または(v)溶液が均一な薄い層に拡がり得るよう十分に低い粘度を有し、(vi)吸湿性物質を含み、および/または(vii)有機溶媒を実質的に含まず、および/または(viii)最大で低濃度の凝集剤(多価カチオンを含む)を有する、水性処理溶液が提供される。
(C)ステップS99において水性インクが提供される。
(D)ステップS101において、水性処理調合物がITM(例えば移動中のITM)の剥離表面に塗布され、それにより、剥離表面上に薄い湿潤処理層(例えば厚さ≦0.8μ)が形成される。
(E)ステップS105では、薄い湿潤処理層にITM剥離表面上で乾燥処理(例えば高速乾燥)が施され、水溶性ポリマーの薄い乾燥処理薄膜(例えば厚さ≦0.08μ)がITM剥離表面上に残される。例えば、薄い乾燥処理薄膜は、次の特性、すなわち、(i)例えば処理薄膜が連続性および/または凝集性の薄膜であること、および(ii)乾燥処理薄膜の上方表面が非常に低い粗度により特徴付けられること、の一方または両方を有し得る。
(F)ステップS109において、水性インクの液滴が薄い乾燥処理薄膜上に堆積され(例えばインク噴出により)て、当該処理薄膜上にインク画像が形成される。
(G)ステップS119において、インク画像は乾燥処理薄膜上に残留インクを残す(例えば良好なインクドット拡散を達成するために)。
(H)ステップS119において、乾燥インク画像は(例えば比較的低い温度で)(例えば乾燥処理薄膜とともに)ITM表面から印刷基板(例えば紙系またはプラスチック系)に転送される。
【0329】
いくつかの実施形態では、
図12の処理は、水性処理溶液がステップS101においてITMに塗布されたとき、ビーディングがほとんど存在しないかまたはまったく存在せず、それにより、結果的に生成された薄い乾燥処理薄膜(すなわちステップS105において取得される)が連続的であり、および/または滑らか(例えば極めて滑らか)な上方表面を有するよう実行される。この滑らかな上方表面は、高品質な基板上に存在するインク画像を取得するにあたり重要であり得る。
【0330】
ITMに前処理が施され、前処理済みのITMの上部にインク画像が塗布される従来の処理に関連する1つの特徴は、基板への転送後、乾燥処理調合物が(例えば乾燥後)インク画像上に存在し、インク画像に望ましくない光沢を増加させ得ることである。この潜在的に望ましくない効果を克服または最小化するために、薄い乾燥処理薄膜がステップS105において取得される(例えば、最大400ナノメートル、または最大200ナノメートル、または最大100ナノメートル、またはさらに小さい厚さを有する)。さらに、いくつかの実施形態では、この薄い乾燥処理薄膜(すなわちステップS105で取得される)は連続的であり、このことは以下で説明するように、有利であり得る。
【0331】
限定ではないが、いくつかの実施形態では、
図12の処理は、ステップS117の画像転送が(例えば未被覆基板に対して)低温で実施されるよう、実行される。例えばその温度は最大摂氏90度、または最大摂氏85度、最大摂氏80度、または最大摂氏75度、最大摂氏70度、または最大摂氏65度、最大摂氏60度−例えば約摂氏60度である。
【0332】
図12のステップS91に関する説明
異なる実施形態では、ITM(すなわち
図12のステップS91または
図2のステップS201で提供されるITM)は以下の特徴A1〜A5のうちの1つまたは複数を提供し得る。
A1:いくつかの実施形態では、剥離層はシリコーン物質(例えば、付加硬化型)から形成される。このことにより、ITMはステップS117において有用である疎水特性を有する。
A2:
図12の方法における使用の前に、シリコーン系剥離層は、その疎水性が低減されるよう、生産される。例えば、剥離層に親水性を付与するにあたり官能反応性基の添加に依存することに代わり、極性基における極性原子(例えば極性Si−O−Si部分における酸素原子)が剥離層表面に対して外向きに整列されるかまたは別様に配向されるよう、シリコーン剥離層を硬化することが可能である。この事例では、「Si−O−Si」における酸素原子は、通常の処理状態下では、ステップS117において処理溶液中の物質に、乾燥インク画像に、および/または乾燥処理薄膜に、化学的に結合する能力を有さない。しかしステップS101〜S105では、外向きに配向された極性「O」の親水性は利点を提供することが可能である。
A3:ITMの剥離表面は中程度の疎水特性を有するが、過度の疎水性を示さない。しかがって、剥離表面は、少なくとも23ダイン/cm、より典型的には少なくとも25ダイン/cm、少なくとも28ダイン/cm、少なくとも30ダイン/cm、少なくとも32ダイン/cm、少なくとも34ダイン/cm、または少なくとも36ダイン/cm、および/または最大48ダイン/cm、最大46ダイン/cm、最大44ダイン/cm、最大42ダイン/cm、最大40ダイン/cm、最大38ダイン/cm、または最大37ダインの表面エネルギー(摂氏25度において)を有し得る。
A4:インク受容表面または剥離層表面上の蒸留水液滴の後退接触角は、典型的には少なくとも30度、およびより典型的には30度〜75度、30度〜65度、30度〜55度、または35度〜55度である。
A5:ITMの剥離層は、架橋ポリマー構造内で結合された官能基を有さないかまたは実質的に有さない。発明者らは、係る官能基は望ましい粘着を増加または促進し得るものと考える。
【0333】
図12のステップS95に関する説明
ステップS95において水性処理調合物が提供される。この処理調合物は少なくとも50%重量/重量、または少なくとも55%重量/重量、または少なくとも60%重量/重量、または少なくとも65%重量/重量の水キャリア液体を含む。
【0334】
異なる実施形態では、水性処理調合物(すなわち
図12のステップS101の塗布以前のその初期状態における水性処理調合物または
図1のステップS205の塗布以前のその初期状態における水性処理調合物)は以下の特徴のうちの1つまたは複数(すなわち任意の組み合わせ)を提供し得る。
B1.低い蒸発負荷−いくつかの実施形態では、初期の水性処理調合物は低い蒸発負荷を有し、摂氏60度(および大気圧)において固体である物質を比較的豊富に含む。以下で説明されるように、いくつかの実施形態では、このことは、ステップS105の実行中、粘度が非常に短い時間的期間において急速に増加し、それにより、水性処理調合物がITMの剥離表面(疎水特性を有する)上でビーディングを形成させるあらゆる傾向が抑制され得るため、有用であり得る。例えば摂氏60度蒸発負荷は、最大10:1、または最大9:1、または最大8:1、または最大6:1、または最大5:1、または最大4:1であり得る。いくつかの実施形態では、このことは、露出した部分を有さない連続的な乾燥処理薄膜を達成するにあたり好適である。
B2.界面活性剤を豊富に含む−いくつかの実施形態では、初期水性処理調合物は、少なくとも2%重量/重量、または少なくとも2.5%重量/重量、少なくとも3%重量/重量、または少なくとも4%重量/重量、または少なくとも5%重量/重量、または少なくとも6%重量/重量、または少なくとも7%重量/重量、または少なくとも8%重量/重量、または少なくとも9%重量/重量、または少なくとも10%重量/重量の界面活性剤(単数または複数)を含む。本発明の様々な実施形態では、初期水性処理調合物中に存在する界面活性剤(例えば、処理調合物において少なくとも50重量%、または少なくとも75重量%、または少なくとも90重量%の界面活性剤)は摂氏60度において固体であり得、それにより蒸発負荷が低くなることに貢献する。いくつかの実施形態では、初期水性処理調合物中に比較的高い濃度の界面活性剤が存在することは、水性処理調合物の親水性が低下することに貢献し、それにより、ステップS101および/またはステップS105において水性処理調合物がITMの剥離表面上でビーズ状に凝集する傾向が低減される。いくつかの実施形態では、界面活性剤が湿潤剤であるため、比較的高い濃度の界面活性剤は、ステップS109および/またはS113の実行時に乾燥インク薄膜の表面上で水性インク液滴を拡散させ(またはインク液滴が収縮しようとするあらゆる傾向を抑制し)、それにより、結果的に生成されるインクドットの被覆範囲が拡がり、次第に基板上に存在するようになることに対して有用であり得る。
B3.第四級アンモニウム塩が(例えば比較的高い濃度で)存在すること−いくつかの実施形態では、初期水性処理調合物は少なくとも1.5%重量/重量(例えば少なくとも2%、少なくとも2.5%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%)の第四級アンモニウム塩を含む。いくつかの実施形態では、水における第四級アンモニウム塩の溶解度は摂氏25度において少なくとも5%である。いくつかの実施形態では、アンモニウム第四級アンモニウム塩は脂肪族置換基を含む。
B4.中程度の親水性を有する初期水性処理調合物−いくつかの実施形態では、初期水性処理調合物は中程度にのみ親水性を示し、例えば、摂氏25度で最大32ダイン/cm(例えば20〜32ダイン/cm)または最大30ダイン/cm(例えば20〜32ダイン/cm)または最大28ダイン/cm(例えば20〜32ダイン/cm)の静的表面張力を有する。ITMの剥離表面が中程度の疎水性(または中程度の親水性)特性を示すため、ステップS101および/またはステップS105においてITMの表面上に水性処理調合物のビーディングを生じさせ得る高い親水性を有する初期水性処理調合物を用いないことは有用であり得る。このことは、特に、湿潤処理層の厚さが小さい状態に対して特に重要であり得、薄い乾燥処理薄膜が連続的となるよう露出した部分を防止することが望まれる。
B5.ポリマーマトリックスを形成する水溶性ポリマーの存在(例えば
図21のステップS105または
図2のステップS213における乾燥時における)−いくつかの実施形態では、初期水性調合物は、摂氏25度において少なくとも5%の水溶解度を有する、少なくとも1.5重量%(例えば少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、または少なくとも3重量%)の少なくとも1つの水溶性ポリマー、より詳細にはマトリックス形成ポリマーを含む。係るポリマー(単数または複数)は、ポリビニルアルコール(PVA)、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、PVP、ポリエチレンオキシド、およびアクリル樹脂などのその誘導体を含む水溶性セルロースを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスの形成により、薄膜の形成が助長され、および/または、乾燥処理薄膜がかなり薄い場合でさえも、所望の弾力性および/または凝集性、または引っ張り強度が乾燥処理薄膜に付与される。
B6.
図12のステップS101におけるITM上への塗布(または
図2のステップS209におけるITMへの塗布)以前における比較的低い粘度−以下で説明されるように、
図12のステップS101(または
図2のステップS209)において、発明者らは、水性処理調合物の薄いが比較的均一な湿潤層を塗布することが望ましいことを見出した。この目的のために、初期水性処理調合物の摂氏25度粘性係数は、最大100cP、または最大80cP、または最大40cP、または最大30cPであり得る。代替的または追加的に、初期水性処理調合物の摂氏25度粘性係数は、少なくとも8cP、または少なくとも10cP、または少なくとも12cP、または少なくとも14cP−例えば8〜100cP、10〜100cP、12〜100cP、14〜100cP、10〜60cP、または12〜40cPの範囲内であり得る。
【0335】
いくつかの実施形態では、この特徴は、(アプリケータ装置−例えば静止アプリケータ装置を通過する際に)高速移動するITMに処理調合物を塗布する場合に、特に有用であり得る。
B7.グリセロールなどの有機溶媒を有さないこと−いくつかの実施形態では、低い蒸気圧の有機溶媒が存在した場合、ステップS105におけるITMの表面上の処理調合物の乾燥が妨げられ、および/または処理薄膜が、転送ステップS117に対して望ましい所望の弾力性および/または凝集性、または、引っ張り強度を失い得る。いくつかの実施形態では、調合物は、純粋状態における蒸気圧に関わらず有機溶媒を含まず、および/または、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、または最大0.5重量%、または最大0.25重量%、または最大0.1重量%の有機溶媒を含む。特に、いくつかの実施形態では、調合物は、有機溶媒を含まず、および/または、最大3重量%、最大2重量%、最大1重量%、または最大0.5重量%、または最大0.25重量%、または最大0.1重量%のグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、調合物はグリセロール完全に含まない。
B8.吸水性物質を含む−いくつかの実施形態では、初期水性処理調合物は、吸水剤が固体の乾燥処理薄膜内に配置されたときにインクから水を吸収するよう選択された固体吸水剤を含む。例えば、係る固体吸水剤は最大摂氏60度、または最大摂氏50度、または最大摂氏40度、または最大摂氏30度、または最大摂氏25度−例えば少なくとも1.5%重量/重量、または少なくとも2%重量/重量、または少なくとも2.5%重量/重量、または少なくとも3%重量/重量の融点(すなわち純粋状態にあるとき)を有し得る。係る吸水剤の例としては、スクロース、尿素、ソルビトール、およびイソマルトースが挙げられるが、これらに限定されない。
B9.その表面張力が全体としての調合物の表面張力を越える少なくとも1つの界面活性剤を含む複数種類の界面活性剤の存在。−いくつかの実施形態では、初期水性処理調合物は、第1界面活性剤および第2界面活性剤を含む。なお第1界面活性剤は第2界面活性剤(例えば第四級アンモニウム塩)よりも大きい疎水性(およびより低い表面張力)を有する。1つの事例では、第1界面活性剤はシリコンポリエーテルを含み、および/または第2界面活性剤は第四級アンモニウム塩である。例えば、第1界面活性剤と第2界面活性剤との間のそれぞれの表面張力における差異の絶対値は、少なくとも5ダイン/cm、または少なくとも7.5ダイン/cm、または少なくとも10ダイン/cmであり得る。例えば、(i)第1界面活性剤の表面張力は初期水性処理調合物の表面張力よりも小さい(その差異は例えば、少なくとも1ダイン/cm、または少なくとも2ダイン/cm、または少なくとも3ダイン/cm、または少なくとも4ダイン/cm、または少なくとも5ダイン/cm、または少なくとも7ダイン/cmである)、および/または、(ii)第2界面活性剤の表面張力は初期水性処理調合物の表面張力よりも大きい(その差異は例えば、少なくとも1ダイン/cm、または少なくとも2ダイン/cm、または少なくとも3ダイン/cm、または少なくとも4ダイン/cm、または少なくとも5ダイン/cm、または少なくとも7ダイン/cmである)。
【0336】
いくつかの実施形態では、第1界面活性剤の主要目的は、例えば処理調合物がステップS101および/またはS105においてビーズ状に凝集することがないよう、初期水性処理調合物の親水性を低下させる(例えば上記の「特徴A4」説明した値に)ことである。代替的または追加的に、第2界面活性剤の主要目的は上記のB3で説明したあらゆる特徴を提供することである。
【0337】
異なる実施形態では、初期水性処理調合物は、少なくとも2%(重量/重量)、または少なくとも2.5%(重量/重量)、少なくとも3%(重量/重量)、または少なくとも4%(重量/重量)、または少なくとも5%(重量/重量)の第1界面活性剤、および/または、少なくとも2%(重量/重量)、または少なくとも2.5%(重量/重量)、または少なくとも3%(重量/重量)、または少なくとも4%(重量/重量)、または少なくとも5%(重量/重量)の第2界面活性剤を含む。例えば、第1界面活性剤の濃度(重量/重量)と第2界面活性剤の濃度重量/重量との間の比は、少なくとも0.1、または少なくとも0.2、またはat0.25、または少なくとも0.33、または少なくとも0.5、または少なくとも0.75、および/または最大10、または最大4、または最大3最大2、または最大4/3である。
B10.最大でも低い濃度の、多価カチオン(例えば塩化カルシウムなど)を含む凝集剤を有すること。−いくつかの実施形態では、これらの化合物は画像品質に対して良好ではないと考えられる。
【0338】
図12のステップS99に関する説明
水性インクの潜在的特徴:
特徴C1:(例えば
図2または
図12の方法に関する)いくつかの実施形態では、インクは、PCT/IB13/51755、またはUS2015/0025179、PCT/IB14/02395、またはUS14/917461に記載の1つまたは複数の特徴(特徴の任意の組み合わせ)を提供する。以上の特許の全部は参照することにより本願に援用される。
【0339】
図12のステップS105に関する説明
特徴D1:ステップS105で形成される乾燥処理層は、薄いが単層(例えば単層よりも顕著に厚い)ではなく、例えば最大で100ナノメートルの厚さを有する。いくつかの実施形態では、乾燥処理層は極度に薄く、最大80ナノメートル、または最大75ナノメートル、または最大70ナノメートル、または最大65ナノメートル、または最大60ナノメートル、または最大55ナノメートル、または最大50ナノメートルの厚さを有する。それにも関わらず、異なる実施形態では、たとえ乾燥処理薄膜が極度に薄い場合でさえも、単層または単層型の構成体よりも厚い。したがって、異なる実施形態では、乾燥処理層の厚さは、少なくとも20ナノメートル、または少なくとも30ナノメートル、または少なくとも40ナノメートル、または少なくとも50ナノメートルであり得る。いくつかの実施形態では、この大きい「バルク」(すなわち最小厚さ特徴)を、例えば他の以下で説明する他の特徴(単数または複数)とともに提供することは、粘着性および/または弾性を示す乾燥処理薄膜の形成を支援する。このことは、乾燥処理薄膜がITMから基板に転送される際に(すなわち、乾燥処理薄膜上に乾燥インク画像を保持する段階において)その構造的完全性を維持することが望ましいステップS117において、有用であり得る。
【0340】
いくつかの実施形態では、乾燥処理調合物は、基板に転送され後に結果的に生成されるインク画像に望ましくない光沢を加え得る。したがって薄いが凝集性を有する乾燥処理層を形成する能力は、有用であり得る。薄い層は、蒸発、および層が乾燥して薄膜になることも、支援する。
特徴D2:ステップS105においてITM上に形成される乾燥処理薄膜は連続的であり、薄さまたは極度の薄さに関わらず、乾燥処理薄膜上に「露出部分」を有さない。以下で説明されるように、いくつかの実施形態では、この目的を達成するために(特に薄い層または非常に薄い層に対して)、以下の項目すなわち、(i)ステップS101において塗布された初期塗布湿潤層は、初期塗布湿潤層が比較的薄く、最大約1μ(または最大0.8μ、または最大0.6μ、または最大0.4μ、さらに典型的には最大0.3μ、最大0.25μ、または最大0.2μ、および/または少なくとも0.1μ)の厚さを有する場合でさえも、連続的であり露出部分を有さないこと、および、(ii)ステップS105の乾燥処理は非常に急速に実行され、乾燥処理調合物の粘度が非常に急速に増加する(例えば最大100ミリ秒以内、最大50ミリ秒以内、最大40ミリ秒以内、最大30ミリ秒以内、最大25ミリ秒以内、最大20ミリ秒以内、最大15ミリ秒以内、または最大10ミリ秒内に、少なくとも100倍、または少なくとも1000倍、または少なくとも10,000倍)こと、の両方が要求され得る。水性処理調合物がITM剥離層に塗布されるとき、ITM剥離層が疎水特性を有し、処理調合物が水性であり、かつ、より大きい親水性を有するため、水性処理調合物はビーディングを生じさせ得る。しかし、湿潤処理層の塗布後に粘度が急速に上昇するならば、より高い粘度の処理調合物は、より低い粘度の調合物よりも、ビーディングに対して、より良好に抗し得る。いくつかの実施形態では、上記の特徴「B1」で論じたように、水性処理調合物は、固体を豊富に含み、および/または、低い蒸発負荷を含む。このことは、粘度の急速な増加を支援し得る。
【0341】
連続的な乾燥処理薄膜を取得するにあたり有用である他の耐ビーディング特徴(すなわちステップS101〜S105の耐ビーディング)は、(i)いくつかの実施形態では疎水特性を有するが、過度の疎水性は示さないITMの剥離表面(特徴「BA」参照)、と、(ii)いくつかの実施形態では親水特性を有するが、過度の親水性は示さない水性処理調合物(特徴「B4」参照)と、の相対的特性に関し得る。水性処理調合物とITMの剥離層との間の静的表面張力が比較的小さい場合は、ビーディングに向かう駆動力は小さく、水性処理調合物の粘度は(例えば急速に増大するため)ビーディングを防止するにあたり十分であり得る。
【0342】
上記で論じるように、ITMの剥離層の疎水性が中程度にすぎないにも関わらず(特徴「A3」参照)、ITM剥離層は、ITM剥離層と乾燥処理薄膜との間の粘着を制限する特定的な特性を有し得る(特徴「A5」参照)。したがって、たとえ処理表面が、ステップS101および/またはS105において処理表面上での処理調合物のビーディングを回避するために中程度にのみ疎水性を示す場合でさえも、ITMの剥離層と乾燥処理薄膜との間の粘着力を最小化することが後に望まれるときに、ステップS117においてこの利点に対する「代償」を払うことを回避することが可能であり得る(例えば少なくとも部分的に特徴「B2」のために)。
【0343】
いくつかの実施形態では、このことは、適切な画像品質を有する基板に存在するインク画像を生産するために有用である(例えば
図15A〜
図15D参照)。
特徴D3:ステップS105においてITM上に形成される乾燥処理薄膜は極度に低い表面粗さにより特徴付けられる。いくつかの実施形態では、表面粗さは、最大20ナノメートル、または最大18ナノメートル、または最大16ナノメートル、または最大15ナノメートル、または最大14ナノメートル、または最大12ナノメートル、または最大10ナノメートル、または最大9ナノメートル、または最大8ナノメートル、または最大7ナノメートル、または最大6ナノメートルの粗さ平均R
a(一般的に使用される1次元粗度パラメータ)により特徴付けられる。ITM上に形成される乾燥処理薄膜は少なくとも3ナノメートルまたは少なくとも5ナノメートルのR
aを有し得る。
【0344】
いくつかの実施形態では、ステップS105において形成される薄いかまたは極度に薄い乾燥処理薄膜に対してさえも、例えば、粗さ平均Raと乾燥処理層の厚さとの間の比が、少なくとも0.02、または少なくとも0.03、または少なくとも0.04、または少なくとも0.05、または少なくとも0.06、または少なくとも0.07、または少なくとも0.08、または少なくとも0.9、または少なくとも0.1、または少なくとも0.11、または少なくとも0.12、または少なくとも0.13、または少なくとも0.14、または少なくとも0.15、または少なくとも0.16、または少なくとも0.17、または少なくとも0.18、または少なくとも0.19、または少なくとも0.2である場合でさえも、係る低い粗さ平均Raを達成することが可能であり得る。
【0345】
いくつかの実施形態では、水性インク液滴が堆積される乾燥処理薄膜および乾燥処理薄膜の表面(例えば乾燥処理薄膜の上方表面)は、(i)平均粗さR
aと、(ii)乾燥処理層の厚さと、の無次元比により特徴付けられる。なお該無次元比は、少なくとも0.5、少なくとも0.4、少なくとも0.3、少なくとも0.25、少なくとも0.2、少なくとも0.15、または少なくとも0.1、および所望により、少なくとも0.02、または少なくとも0.03、または少なくとも0.04、または少なくとも0.05、または少なくとも0.06、または少なくとも0.07、または少なくとも0.08である。
特徴D4:いくつかの実施形態では、少なくとも10cm×1メートル、または1m2、3m2、または10m2の全体の長方形の全体を覆う連続的な乾燥薄膜を取得することが可能である。この薄膜は、最大120nm、最大100nm、最大80nm、最大60nm、最大50nm、または最大40nm、および典型的には、少なくとも20nm、少なくとも25nm、または少なくとも30nmの厚さまたは平均厚さを有し得る。
【0346】
ステップS109〜S117に関する説明
異なる実施形態では、ステップS109および/またはS113および/またはS117が実行されると、以下の処理関連特徴のうちの1つまたは複数が提供され得る。
特徴E1:いくつかの実施形態では、たとえ画像が未被覆基板に転送される場合でさえも、ステップS117は低い転送温度(例えば最大摂氏90度、または摂氏80度、または摂氏75度、または摂氏70度、または摂氏65度、または摂氏60度−熱可塑性物質特性および/または引っ張り強度のために)で実行される。いくつかの実施形態では、低温転送ステップを提供することは、インクジェットヘッド部の目詰まりを低減または回避するにあたり有用であり得、および/または、印刷処理の全体を、環境に対する配慮の面でより良好なものとするにあたり有用であり得る。
いくつかの実施形態では、乾燥処理薄膜および乾燥インク画像の両方は、転送温度において粘着性を示し、したがって、比較的低い温度においてさえも、剥離層からきれいに剥離されやすい。この特性は、初期水性処理溶液の化学的性質に少なくとも部分的に寄与し得る。いくつかの実施形態では、剥離層の化学的性質および構造(例えば特徴「A5」参照)も、ステップS117において低温転送処理を提供するにあたり有用であり得る。
特徴E2:展開−液滴が薄膜上に堆積される様式(例えば濡れ角)および処理薄膜の物理的および/または化学的特性(A2および/またはA3および/またはA8−インク中のナノ粒子も寄与する)は、インクドットの半径が、乾燥処理薄膜上への衝突直後の前駆体液滴の半径を越える(例えば、各液滴のサイズが、液滴の衝突エネルギーにより生じる液滴の拡散に起因するサイズを超えて増加する)ものとなるよう、設定される。[Dmax=2・Rmax、またはDimpact−max=2・Rimpact−max]
【0347】
図13A〜
図13Eでは、インク液滴がITM(例えばITMの剥離表面)上に堆積されるプロセスが概略的に説明されている。
図13Aではインク液滴がITMに向かって移動する。
図13B〜
図13Cでは、(i)液滴と(ii)ITM(またはITMの乾燥処理薄膜)との間の衝突直後におけるインク液滴が説明されている。液滴の運動エネルギーにより液滴に変形が生じる。これについては
図13B〜
図13Cで示される。特に、液滴の運動エネルギーにより液滴は外向きに拡張する。
図13Cでは衝突時の液滴の最大半径(すなわち、液滴の運動エネルギーにより生じた変形に起因する半径の最大増加)が示されている。液滴が、運動エネルギーに駆動される液滴変形により、衝突の10ミリ秒内に、この最大半径(「R upon impact」または「R max impact」、これらは相互交換可能に使用される)に到達した後、液滴(または、液滴に取って代わるドット(なぜなら各液滴は次第に乾燥してインクドットになるため))は最初、
図13Dに示すようにITM上に存在し(例えば乾燥処理薄膜を介して)、転送後、インク液滴は
図13Eに示すように基板上に存在する。液滴または液滴に取って代わるドットは、物理化学的力または化学的相互作用により、さらに拡張し得る。これは、
図13Cまたは
図13Dと
図13Bとの比較により概略的に示される展開現象である。ここで再び、
図13A〜
図13Eが概略図であり、変形された液滴が
図13A〜
図13Eに示す特定的な形状を有することがまったく要求されないことに注意すべきである。
【0348】
図14A〜
図14Bでは、本発明の様々な実施形態にしたがって生産された乾燥処理薄膜の機械的にプロットされたトポグラフィー的プロファイルが提供される。
【0349】
図2および
図12に関する全般的コメント−いくつかの実施形態では、
図2のステップS201を実行すると、
図12のステップS91の特徴の任意の特徴または組み合わせが提供され得る。いくつかの実施形態では、
図2のステップS205を実行すると、
図12のステップS95の任意の特徴または特徴の組み合わせが提供され得る。いくつかの実施形態では、
図2のステップS209を実行すると、
図12のステップS101の任意の特徴または特徴の組み合わせが提供され得る。いくつかの実施形態では、
図2のステップS213を実行すると、
図12のステップS105の任意の特徴または特徴の組み合わせが提供され得る。いくつかの実施形態では、
図2のステップS217を実行すると、
図12のステップS109の任意の特徴または特徴の組み合わせが提供され得る。いくつかの実施形態では、
図2のステップS221を実行すると、
図12のステップS113の任意の特徴または特徴の組み合わせが提供され得る。いくつかの実施形態では、
図2のステップS225を実行すると、
図12のステップS117の任意の特徴または特徴の組み合わせが提供され得る。
【0350】
図14A〜
図14Bでは、本発明のいくつかの実施形態にしたがって生産された乾燥された連続的な処理薄膜の機械的にプロットされたトポグラフィー的プロファイルが提供される。Zygoレーザー干渉計により生産されたこれらのトポグラフィー的プロファイルは、およそ40〜50ナノメートル(
図14A)およびおよそ100ナノメートル(
図14B)の平均薄膜厚さを、それぞれ表示する。この薄膜表面は例外的に滑らかで、
図14Aでは約7ナノメートルの平均粗度(R
a)、および
図14Bでは7ナノメートルよりもやや小さい平均粗度(R
a)を示す。他のトポグラフィー的プロファイルでは、およそ40ナノメートルの平均薄膜厚さ、および約5ナノメートルのR
aが観察されている。
【0351】
薄膜の厚さ(典型的には最大120nm、最大100nm、最大80nm、最大70nm、最大60nm、最大50nm、または最大40nm、およびより典型的には30〜100nm、40〜100nm、40〜80nm、40〜70nm、または40〜60nm)にも関わらず、この薄膜は典型的には、20cm
2、50cm
2、もしくは200cm
2、またはそれ以上の大きい面積においてさえ、露出スポットを有さず、欠陥が存在しない。
【0352】
理論に拘束されることを望むものではないが、発明者らは、乾燥処理薄膜が極めて滑らかな表面を有することにより、インクドットの展開が、望ましくない細流(rivulet)などの形成が感知可能に緩和または回避されるよう、一様かつ制御された様式で発生し得るものと考える。結果的に生成されるインクドット形状が、Landa社の出願番号第PCT/IB2013/000840号において達成された卓越した形状(凸性、粗さ、縁部シャープネス)に品質において相当に類似する。なおPCT/IB2013/000840は、あたかも本明細書に完全に記載されるかのように、すべての目的のために、参照することにより援用される。このことは、本開示により利用される展開機構を鑑みると、当該出願において開示される表面張力により制御される落下固定および収縮(drop pinning and contraction)と比較して、特に愕くべきである。
【0353】
図15A〜
図15Dでは、紙基板上のインクドットのいくつかの例が示されている。特に、
図15Aでは、本発明のいくつかの実施形態にしたがって、ITM上にインクジェットされ、そこから転送された後の、被覆済み紙基板(130GSM)に付着された単一のインクドットの拡大画像の上面図が提供され、
図15Bでは、本発明のいくつかの実施形態にしたがって、被覆済み紙基板(130GSM)上の視野域内に配置された複数のインクジェットインクドットの拡大画像の上面図が提供され、
図15Cでは、本発明のいくつかの実施形態にしたがって、ITM上にインクジェットされ、ITMから転送された後の、未被覆の紙基板に付着する単一インクドットの拡大画像の上面図が提供され、
図15Dでは、本発明のいくつかの実施形態にしたがって、未被覆の紙基板上の視野域内に配置された複数のインクジェットインクドットの拡大画像の上面図が提供されている。
【0354】
ドットおよび凸性測定が、PCT/IB2013/000840により開示される手順にしたがって実行された。加えて、ドットおよび凸性測定は、実質的に以下で説明するように実行された。
【0355】
画像取得方法
ドット画像の取得がLEXT(Olympus)OLS3000顕微鏡を使用して実行された。画像はX100およびX20の光学ズームを用いて収集された。カラー画像が640×640ピクセルの解像度を有する非圧縮フォーマット(Tiff)で保存された。
【0356】
加えて、ドット厚さおよび直径を測定するためにX100レンズを有するZYGO顕微鏡が使用された。
【0357】
分析について
本願に含まれる、対象となる基本パラメータ(およびその単位)は以下の通りである。
・直径−円に適合する [Ddot] [mic]
・外周[P] [mic]
・測定面積[A] [pix^2]
・最小凸状形状面積[CSA] [pix^2]
・光学的均一性[STD] [8bit階調値]
・厚さ[Hdot] [mic]
【0358】
これらのパラメータから、以下が計算された。
・アスペクト比:Raspect=Ddot/Hdot [無次元]
・ドット真円度:ER=P2/(4π・A) [無次元]
・DRdot:ER−1 [無次元]
・凸性:CX=AA/CSA [無次元]
・非凸性:Dcdot=1−CX [無次元]
【0359】
分析は、可能である場合にはWO2013/132418で適用された上記の分析手順を利用して、MATLAB画像処理ツールを使用して行われた。
【0360】
ブランケット
ITMは、
図17〜
図22により説明される、本発明の様式で製造され得る。係るITMはLanda社のNanographic Printing(登録商標)技術に対して特に好適である。
【0361】
ここで
図16を参照すると、
図16では、担体10を通る断面が概略的に示されている。これら全部の図面では、仕上げられた物品の部分を形成する層から区別するために、担体10は中実の黒い線として示されている。担体10は担体接触表面12を有する。
【0362】
いくつかの実施形態では、担体接触表面12は、最大約50nm、最大30nm、最大20m、最大15nm、最大12nm、または、より典型的には、最大10nm、最大7nm、または最大5nmの粗度(R
a)を有する良好に研磨された平坦表面であり得る。いくつかの実施形態では、担体接触表面12は、1〜50nm、3〜25nm、3〜20nm、または5nm〜20nmである。
【0363】
担体接触表面12の親水特性については以下で説明する。
【0364】
いくつかの実施形態では、担体10は、可撓性を有さず、例えば1枚のガラスまたは厚い金属シートで形成され得る。
【0365】
いくつかの実施形態では、担体10は、可撓性を有する箔(例えば、主にアルミニウム、ニッケル、および/またはクロムからなるか、またはこれを含む可撓性箔)で形成されると有利であり得る。一実施形態では、この箔は、アルミニウム処理されたPET(ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル)、例えば蒸発されたアルミニウム金属で被覆されたPETのシートである。アルミニウムの上部被覆はポリマー被覆により保護され得る。なおこのシートは典型的には、可撓性を維持しつつもシワを回避するために小さい半径で曲がりにくいよう、0.05mm〜1.00mmの厚さを有する。
【0366】
いくつかの実施形態では、担体10は静電防止ポリマー薄膜(たばPETなどのポリエステル薄膜など)で形成されると有利であり得る。静電防止薄膜の静電防止特性は、様々な添加剤(例えばアンモニウム塩など)をポリマー組成物に添加することを含む当業者に周知の様々な手段により達成される。
【0367】
結果が
図17に示される本ITM製造方法のステップでは、流体第1硬化組成物(
図24Bにおいて36として示される)が提供され、層16が当該組成物から担体接触表面12上に形成される。層16は、外側のインク転送表面14を有する初期剥離層を構成する。
【0368】
層16の流体第1硬化可能組成物は、典型的にはシリコーンポリマー(例えばポリジメチルシロキサン(例えば、ビニル末端ポリジメチルシロキサンなど))からなるエラストマーを含み得る。
【0369】
いくつかの実施形態では、流体第1硬化可能物質は、ビニル官能シリコーンポリマー(例えば、例えばビニル官能ポリジメチルシロキサンなどの末端ビニル基に加えて少なくとも1つの側鎖ビニル基を含むビニールシリコーンポリマー)を含む。
【0370】
いくつかの例示的な実施形態では、流体第1硬化可能物質は、ビニル末端ポリジメチルシロキサンと、末端ビニル基に加えてポリシロキサン鎖上に少なくとも1つの側鎖ビニル基を含むビニル官能ポリジメチルシロキサンと、架橋剤と、付加硬化型触媒と、所望により、さらに硬化抑制剤と、を含む。
【0371】
当該技術分野で周知のように、硬化可能な接着剤組成物は、単位モルベースで任意の好適な量(典型的には1モルあたり最大0.01%のプレポリマー)の付加硬化型触媒を含み得る。
【0372】
流体第1硬化可能物質に対する代表的な配合は以下の事例において提供される。
【0373】
流体第1硬化可能組成物の層16が担体接触表面12に塗布され、その後、硬化される。層16は、例えばドクターブレード(ロール上に搭載されたナイフ)を使用して、ドクターブレードが、ITMのインク転送表面14として最終的に機能することになる表面に接触せず、それによりドクターブレードにおける欠陥が完成品の品質に影響を及ぼさないよう、所望の厚さに展開され得る。硬化後、「剥離」層16は、約2マイクロメートル〜約200マイクロメートルの厚さを有し得る。係るステップおよび方法が実装される装置が
図24Aおよび
図24Bで概略的に示されている。
【0374】
例えば、上記で詳述した剥離層調合物が、5〜200マイクロメートル(μ)の厚さに均一化され、摂氏120度〜摂氏130度でおよそ2〜10分間硬化された、PET保持体上に均一に塗布され得る。驚くべきことに、蒸留水の0.5〜5マイクロリットル(μl)液滴に関するその後退接触角(RCA)により推定される、そのように準備された剥離層のインク転送表面の疎水性は、およそ60度であり得る。その一方で、同一の剥離層の他の側部(空気界面を用いて従来準備された層の疎水性を近似する作用を有する)は顕著により高い(典型的にはおよそ90度)RCAを有し得る。インク転送表面14を生産するために使用されたPET担体は典型的におよそ40度以下のRCAを示し得る。接触角度測定は、接触角分析器−Kruss(登録商標)「Easy Drop」FM40Mk2および/またはDataphysics OCA15 Pro(オーストラリア、ニューサウスウェールズ州、ゴスフォードのParticle and Surface Sciences Pty社)を用いて実施された。
【0375】
その結果が
図18で示される、この方法の後続ステップにおいて、追加層18(コンプライアンス層と呼ばれる)が、インク転送表面14に対して逆側において層16に塗布される。コンプライアンス層18は、層16およびその最外部表面14が、インク画像が印圧されている基板の表面輪郭に近接して追随することを可能にするエラストマー層である。コンプライアンス層18をインク転送表面14の反対側の側部に取り付けることは、コンプライアンス層18の物質に加えて、接着または結合組成物の塗布を含み得る。通常、コンプライアンス層18は典型的には、約100マイクロメートル〜約300マイクロメートル以上の厚さを有する。
【0376】
コンプライアンス層18が剥離層16と同一の組成を有する一方で、物質および処理の経済性の観点からは、より安価な物質を使用することが是認され得る。さらに、コンプライアンス層18は典型的には、剥離層16とは異なる機械的特性(例えば張力に対する耐性がより大きい)を有するよう選択される。特性における係る所望の差異は、例えば剥離層16に対して異なる組成を利用することにより、剥離層16の調合物を準備するために使用された成分との間で割合を変化させることにより、さらなる成分を係る調合物に加えることにより、および/または、異なる硬化条件を選択することにより、達成され得る。例えば、充填剤粒子の添加により、剥離層16と比較してコンプライアンス層18の機械的強度は望ましく向上し得る。
【0377】
いくつかの実施形態では、コンプライアンス層18は多様なゴムを含み得る。好適には係るゴムは、少なくとも摂氏100度の温度で安定であり、アクリル酸アルキルコポリマーゴム(ACM)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)、フルオロエラストマポリマー、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンアクリルエラストマー(EAM)、および水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)などのゴムを含み得る。
【0378】
非限定的な例として、2つの成分が1:1の比で混合された2成分液体シリコーンゴムであるSilopren(登録商標)LSR2530(ニューヨーク州のMomentive Performance Materials社)が前述の硬化剥離層16に塗布された。シリコーンゴム混合物は、ナイフブレードを用いて、約250マイクロメートルの厚さを有する初期コンプライアンス層18を取得するために、計量しながら供給され/均一化され、次にコンプライアンス層18は摂氏150度〜摂氏160度でおよそ5分間にわたり硬化された。
【0379】
その結果が
図19において示される、この方法の後続ステップでは、補強層または支持層20がコンプライアンス層18上に構築される。支持層20は典型的には、ITMが印刷システムにおいて張力下で保持されたときに伸張に耐えるための十分な構造的完全性を有する支持層20を提供するために、織物または織地の形態にある繊維補強材を含む。支持層20は、後に硬化されかつ硬化後に可撓性を保持する樹脂で、繊維補強材を被覆することにより形成される。
【0380】
代替的に、支持層20は、補強層として別に形成され、独立的に硬化された樹脂内に埋め込まれ、および/または注入された係る繊維を含み得る。この場合、支持層20は、接着層を介してコンプライアンス層18に取り付けられ得、所望により、現場で支持層20を硬化する必要性が排除される。全般的に、支持層20は、現場でコンプライアンス層18上に形成された場合でも、または別個に形成された場合でも、約100マイクロメートル〜約500マイクロメートルの厚さを有し得、その一部は繊維または織地の厚さに寄与し、その厚さは通常約50マイクロメートル〜約300マイクロメートルで変動する。しかし支持層厚さは限定的ではない。高耐久性の用途に対しては、例えば支持層は、200マイクロメートル以上、500マイクロメートル以上、または1mm以上の厚さを有し得る。
【0381】
例えば、ビニル官能化された剥離被覆16および2成分シリコーンゴムコンプライアンス層18を含む本明細書で記載の多層化されたITM構造に対して、ガラス繊維の編み込み織地を含む支持層20が塗布された。約100マイクロメートルの厚さを有するガラス繊維織地は、垂直方向に16ヤーン/cmを有する平織物であった。ガラス繊維織地は、コンプライアンス層に対応する液体シリコーンゴムSilopren(登録商標)LSR2530を含む硬化可能流体に埋め込まれた。全体的に、結果的に生成された支持層20は、約200マイクロメートルの厚さを有し、およそ2〜5分間にわたり摂氏150度で硬化された。好適には、より高密度の織物(例えば24×23ヤーン/cmを有する)が使用され得る。
【0382】
支持層20を現場で形成した後、または支持層20を取り付けた後、必要に応じて追加層がその反対側に構築され得る。
図20では、支持層20の反対側に固定された(例えば硬化接着剤または樹脂により)所望によるフェルトブランケット22が示されており、
図21では、ブランケット22の反対側上に被覆された高摩擦層24が示されている。当業者に理解されるであろうように、様々な比較的柔らかいゴムが、高摩擦特性を有する層を準備するために用いられ得る。係るゴムの単なる一例としてシリコーンエラストマーが挙げられる。ブランケット22などの介在する層が存在しない状況では、高摩擦層24が支持層20に直接的に取り付けられ得る。
【0383】
上述のように、ITMの剥離層に加えられるすべての層(例えば、18、20、22、24、または任意の介在する接着層もしくは下塗り層、その他)は、
図23Cにおける基部200に対して示されるように、共同して構造体の基部を形成する。
【0384】
ITMが使用される前に、
図22に示すように、担体10を取り除いて、剥離層16のインク転送表面14を露出させることが必要である。通常は、完成品を単に担体10から引きはがすとよい。
【0385】
担体10が可撓性を有する箔である場合、ITMが印刷システムに据え付けられる等のときまでITM上の定位置に残されるほうが好適であり得る。この箔は、格納、輸送、および据え付けの際に、ITMのインク転送表面14を保護する作用を有するであろう。加えて担体10は、製造プロセスの完了後、保護膜として好適である代替的な箔と交換され得る。
【0386】
図24A〜
図24Dでは、ITMがその中で製造され得る装置90が概略的に示されている。
図24Aでは、可撓性を有するループコンベア100を移動させる巻き出しローラ40および巻き取りローラ42を有する係る装置90の概略が提供されている。コンベア100により追従される経路に沿って、所望のITMに対して好適である硬化可能な流体組成物を吐出することが可能な吐出ステーション52と、ステーションの下流方向に移動するにつれて硬化可能層の厚さを制御することが可能なレベリングステーション54と、後続ステップが存在する場合に後続ステップに対する初期層として機能することが可能となるよう、層を少なくとも部分的に硬化することが可能な硬化ステーション56と、が配置される。吐出ステーション52、レベリングステーション54、および硬化ステーション56は層形成ステーション50aを構成する。50bにより示されるように、装置90は所望により2個以上の層形成ステーションを含み得る。さらに、形成ステーション50は、ステーション50aにおいて吐出ローラ58により示される追加的な下位ステーションを含み得る。
【0387】
いくつかの実施形態では、ループコンベア100に対する必要性は省略され、担体10は直接的にローラ40とローラ42との間で張架される。未処理の担体10が巻き出しローラ40から巻き出され、ステーション50aおよび50bを通過した後、巻き取りローラ42に巻き取られる。
【0388】
図面には示されないが、この装置はさらに、吐出ステーションの上流側に「表面処理」ステーションを含み得る。この表面処理ステーションは、必要に応じて、硬化可能な組成物を後に塗布することを、または、場合によっては担体接触表面または初期層に硬化可能な組成物を取り付けることを、支援する。担体に関して上述したように、所望による表面処理ステーション(図示せず)は物理的処理(例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、その他)に対して好適であり得る。
【0389】
図24Bでは、装置90の形成ステーション50においてコンベア100上に配置された担体10が被覆される得る様子が概略的に示されている。吐出ステーション52において、剥離層16の硬化可能な組成物36が担体接触表面12に塗布される。担体10が矢印の方向に駆動されるにつれて、硬化可能な組成物36は、例えばドクターブレードを使用することにより、レベリングステーション54において所望の厚さに均一化される。均一化された層が下流方向に進行するにつれて、当該層は硬化ステーション56に進入する。硬化ステーション56は、硬化可能組成物36を少なくとも部分的に硬化させ、それにより初期層16が硬化ステーションの出口側で形成されることが可能となるよう、構成されている。係る代表的ステップについては、
図16および
図17に関連してすでに説明した。
【0390】
図24Cおよび
図24Dでは、追加的な層(基部を形成する)が塗布される様子が概略的に示されている。
図24Cでは、硬化可能組成物38が吐出ステーション52(
図9Bで示す剥離層16で担体を被覆するために使用されたステーションと同一であってもよく異なってもよい)において吐出される。硬化可能組成物38はレベリングステーション54において所望の厚さに均一化され、次に硬化ステーション56に入り、後続のステップなどのための初期層18として機能するよう十分に硬化された状態で、硬化ステーション56から出る。係る代表的ステップについては、
図18に関連してすでに説明した。ここで
図24Cを参照すると、
図24Cでは、硬化可能組成物39が吐出ステーション52において塗布される様子が概略的に示されている。支持層(例えば織地)の基幹は吐出ローラ58により供給され得る。代表的な織地は、硬化ステーション56に進入する前に、ステーション60において硬化可能組成物の下方に沈み込み得る。そのようにして、支持層20が硬化ステーションの出口側において形成され得る。
【0391】
図23Aおよび
図23Bでは、欠陥が、上記の方法にしたがって準備された外側層80(例えば剥離層)の断面に現れる様子が概略的に示されている。
図23Aでは、気泡が排除され(例えばガス抜きにより)得る前に硬化が生じた場合に、あらゆる硬化可能組成物に捕捉され得る気泡に関連する、異なる現象が示されている。図面において見られるように、泡沫82は製造の間、本体800の上方で、矢印で示される流動方向に空気界面に向かって層80の方向に流動する。したがってこれらの泡沫82は合併して、より大きい気泡になることができる。気泡は、そのサイズの大小に関わらず、層のバルク内に、またはその表面上に、捕捉された状態に留まり得る。気泡エンベロープの上方部分は突起84を形成する。層の硬化が進行中に表面に隣接する気泡が破裂すると、表面から突出する気泡エンベロープの区域が消失したとしても、クレータ86は残存し得る。これらの現象は、したがって典型的には、気泡の「勾配」を提供する。上方区域は、全般的に、下方区域と比較してより大きい気泡で占められ、および/または、断面積または堆積あたり、より高い密度の気泡を有する。なお、下方および上方は、その製造時における層の方向に関するものである。気泡に誘導される欠陥が表面に与える影響は自明であり、表面の不均質性は通常、例えばインク画像に対する、あらゆる後続の相互作用に対して悪影響を及ぼす。係るITMが通常、張力下および/または圧力下で動作する状況下では、時間とともに、クレータは拡がり、合併して、より顕著な亀裂が形成される。したがって、係る現象は、表面の構造的完全性および係る完全性がITMに付与したであろう任意の機械的特性に影響を及ぼし得る。
【0392】
図23Bでは、粉塵などの固体汚染物質に関する異なる現象が概略的に示されている。本例示説明では、粉塵が気泡に追加されるものとして表現されているが、このことは必ずしも真であるとは限らず、係る表面欠陥または層欠陥は独立的に発生することが可能である。図面において見られるように、固体汚染物質は表面上に留まり得る。外側層80が硬化された後に汚染物質が定着するならば、係る汚染物質92は、外側層を好適に洗浄するのみで、除去され得る。それでも、使用可能となる前に係るITMの追加的洗浄が必要となり得るため、係る現象は望ましくない。層がまだ未硬化状態にあるとき係る汚染物質が発生する場合、汚染物質は、層80の表面上に捕捉される(例えば、「浮かんで」いるように見受けられる汚染物質94)か、または、隔離層内に沈下していることさえ可能である(例えば汚染物質96)。容易に理解可能であるように、より大きい/より重い汚染物質は、小さい汚染物質よりも、より深く沈下し得る。
【0393】
当該技術分野で周知の方法とは異なり、本明細書で開示の方法は、層の一方の側部が担体接触表面に接触する状態で流体第1硬化可能物質の層を形成することを含む。なおこの層は初期剥離層を構成する。担体接触表面は、初期剥離層を保護する機能を有する。それにより、インク転送層に所望の特性が与えられる一方で、担体は、ITMが完成するまで他の層がその上に追加されてITMが形成される物理的に堅牢な支持構造体として機能する。その結果として、欠陥の多数の潜在的原因が回避される。さらに、インク転送表面の仕上げは、主に、排他的ではないとしても、担体接触表面により決定される。
【0394】
図23Cでは、本方法にしたがって準備された外側層16(たとえば剥離層)を通る断面が概略的に示されている。以前の図面と比較するために、この断面は、担体を示すことなく、
図23Aおよび
図23Bと同一の方向で示されているが、製造は矢印により示されるように逆方向に実行されている。基部200(後に詳述する)は、第1外側層16が少なくとも部分的に硬化された後、第1外側層16に取り付けられ、したがって、製造過程の間にすでに支持体として機能する本体800とは等価でない。単に例示目的のために、層16は、多数の気泡82を含むものとして表現されているが、これは必ずしも真実ではない。しかし、存在するならば、係る気泡は、以前に記述した気泡のパターンよりも、特異的パターンを示すであろう。第1に、層16のここでは最上方となっているインク転送表面14は、以前は担体と接触していたため、突起は観察されず、したがって剥離層は、表面から突出する気泡84により以前に示されたような現象が存在しない。同様に、キャビティ86として以前示されたクレータはほとんど存在しない。なぜなら、係るクレータは、相性の悪い硬化可能な層および担体の使用を意味するためである。本方法によれば、外側層を形成する硬化可能物質は好適に担体を湿潤させ、担体と、担体上に形成される初期層と、の間に捕捉され得る気泡が実質的にはまったくないと考えられる。したがって、たとえ存在したとしても、係る気泡は層のバルク内に配置されるであろう。しかし、製造が従来の方法と比較して反転方向で行われるため、気泡の勾配は、同一の理由のために、反転されるであろう。したがって、
図23Cに示されるように、小さい気泡は、より大きい気泡よりも外側表面により近接し、より大きい気泡は基部により近接するであろう。
【0395】
付加硬化型調合物から生産された本発明の独創的な剥離層構造は、ポリマーマトリックス内に共有結合した官能基を、実質的に全く含まないか、またはごく小数(ごく少数のOH基)しか含み得ない。係る官能基は、例えばC=O、S=O、およびOHなどの部分を含み得る。
【0396】
これらの剥離層構造は、最大でも、ごく少数しか係る官能基を含まないため、その剥離層が高い疎水性を示すであろうことは期待されるであろう。しかし発明者らは驚くべきことに、本方法により生産された剥離層表面が実際にいくらか親水性を示し、対応する剥離層(すなわち、同一の組成を有するが、剥離層が空気に曝露される従来の硬化技術(「標準的空気硬化」)を使用して製造された剥離層)よりも認知可能により大きい親水性を示すことを見出した。理論に拘束されることを望むものではないが、発明者らは、担体接触表面と初期剥離層表面との間の緊密な接触により、担体接触表面のいくらかの親水特性が剥離層表面に含まれるものと考える。
【0397】
上述のように、低い表面エネルギーを有するITM剥離層は、乾燥インク画像を印刷基板に転送することを支援し得る。しかし、インク受容段階の間、係る低エネルギーの疎水性剥離層に噴出された水性インク液滴は、初期衝突の後、ビーズ状に凝集し、それにより画像品質が損なわれる傾向がある。エネルギーが高く、より疎水性が低い剥離層は、この効果を緩和し得るが、画像転送品質に対して有害である。発明者らは、本発明の剥離層構造が通常は、蒸留水に対する最大80度、または最大70度、典型的には最大60度、または最大50度、およびより典型的に30度〜60度、35度〜60度、30度〜55度、30度〜50度、30度〜45度、または35度〜50度の後退接触角により表される特性的に中程度の疎水性の剥離表面を有することを見出した。しかし驚くべきことに、乾燥、加熱されたインク画像のインク受容およびインク転送の両方が良好な品質であり得る。より高い親水性を有する(蒸留水滴に対する接触角がより低い)担体表面を用いることにより、および/または、コロナ(または同様の)処理により、さらに低い値の後退接触角(および以下で論じられる動的接触角)が達成され得ることが強調されなければならない。
【0398】
理論に拘束されることを望むものではないが、発明者らは、上述の誘導された表面特性が、剥離層表面上の極性基(例えばO−Si−O)と、剥離層表面上に堆積された水性液体(例えば水性インクジェットインク)における対応する極性部分(例えば水の中のOH基)と、の間の相互作用を改善するものと考える。引き続き、インクを乾燥させ、インク薄膜を転送温度に加熱した後、これらの相互作用は弱められ、乾燥された、または実質的に乾燥されたインク画像の完全な転送が可能となる。したがって、本発明の独創的な剥離層構造の性能は、インク受容段階およびインク薄膜転送段階の両方において、中程度の疎水性を有するが、担体接触表面により誘導される特別な表面構造および特性を有さない剥離層に期待されるよりも、感知可能に良好である。
【0399】
実施例
ここで以下の実施例を参照する。上記の説明と併せて、これらの実施例は非限定的な様式で本発明を例示する。
【0401】
剥離層表面の生産において基板として使用された担体は、(1)静電防止ポリエステル薄膜(実施例1〜7)、(2)未処理ポリエステル薄膜、すなわち静電防止ではない(実施例11)、および、(3)アルミニウム処理済みポリエステル薄膜(実施例10)を含む。
【0402】
実施例1
実施例1のITM剥離層は以下の組成(重量/重量)を含む。
【表2】
【0403】
剥離層は、以下で提供される本ブランケット準備手順で実施的に説明されるように準備された。
【0404】
ブランケット準備手続き(担体表面に対して硬化された剥離層のための)
剥離層調合物の全成分は完全に混合された。所望の厚さの初期剥離層は、ロッド/ナイフを使用して(他の被覆方法が使用されてもよい)PETシート上に被覆された後、摂氏150度で3分間にわたり硬化された。引き続き、所望の厚さを達成するために、Siloprene LSR 2530がナイフを使用して剥離層の上部上に被覆された。次に硬化が3分間にわたり摂氏150度で行われた。Siloprene LSR2530の追加層が以前の(硬化された)シリコーン層の上部上に被覆され、湿潤化されたシリコーンが織物構造に貫入するよう、ガラス繊維織地がこの湿潤化された新鮮な層に組み込まれた。次に硬化が3分間にわたり摂氏150度で行われた。次に、Siloprene LSR 2530の最終層がガラス繊維織地上に被覆され、再び硬化が3分間にわたり摂氏150度で行われた。次に一体型ブランケット構造は室温まで冷却され、PETが除去された。
【0405】
実施例2
実施例2のITM剥離層は以下の組成を有する。
【表3】
【0406】
このブランケットは実質的に実施例1で説明したように準備された。
【0407】
実施例3
実施例3のITM剥離層は以下の組成を有する。
【表4】
【0408】
このブランケットは実質的に実施例1で説明したように準備された。
【0409】
実施例4
実施例4のITM剥離層は以下の組成を有する。
【表5】
【0410】
このブランケットは実質的に実施例1で説明したように準備された。
【0411】
実施例5
実施例5のITM剥離層は、2つの成分が1:1の比で混合された2成分液体シリコーンゴムであるSilopren(登録商標)LSR2530(ニューヨーク州ウォーターフォードのMomentive Performance Materials社)から準備された。このブランケットは実質的に実施例1で説明したように準備された。
【0412】
実施例6
実施例6のITM剥離層は、実施例4のITM剥離層と実質的に同一の組成を有するが、極性基を含む市販のシリコーン系樹脂であるSR545(ニューヨーク州、ウォーターフォードのMomentive Performance Materials社)を含む。極性基は「MQ」型であり、「M」はMe
3SiOを表し、「Q」はSiO
4を表す。全組成を以下に挙げる。
【表6】
【0413】
このブランケットは実質的に実施例1で説明したように準備された。
【0414】
実施例7
実施例7のITM剥離層は、実施例6のITM剥離層と実質的に同一の組成を有するが、上述のように高密度のビニル基を有するビニル官能ポリジメチルシロキサンを含むポリマーRV5000を含む。全組成を以下に挙げる。
【表7】
【0415】
このブランケットは実質的に実施例1で説明したように準備された。
【0416】
比較例1A〜1F
ITM剥離層は、対応剥離層(比較例1A〜1Fと指定される)がそれぞれ実施例1〜6と同一の組成を有するよう、実施例1〜6の組成に対する「対応剥離層」または「参照剥離層」として準備された。しかし剥離層の硬化の間、剥離層表面(または「インク受容表面」)は、以下で提供される従来の準備手順にしたがって空気に曝露された(「標準的空気硬化」)。
【0417】
比較ブランケット準備手続き(硬化の間、空気に曝露される剥離層のための)
SilopreneLSR2530の第1層がロッド/ナイフを使用してPETシート上に被覆された後、所望の厚さを達成するために摂氏150度で3分間にわたり硬化された。Siloprene LSR2530の追加層が以前の(硬化された)シリコーン層の上部上に被覆され、湿潤化されたシリコーンが織物構造に貫入するよう、ガラス繊維織地がこの湿潤化された新鮮な層に組み込まれた。次に、SilopreneLSR2530がガラス繊維織地の上部上に被覆され、引き続き、硬化が3分間にわたり摂氏150度で行われた。初期剥離層を形成する前に、剥離層調合物の全成分が一緒に完全に混合された。剥離層は、所望の厚さを達成するために、硬化されたSilopreneLSR2530の上部上に被覆され、引き続き、3分間にわたり摂氏150度で硬化され、その一方で、剥離層表面は空気に曝露された。
【0418】
実施例8
剥離層表面上蒸留水滴の接触角は、専用のDataphysics OCA15 Pro接触角測定装置(オーストラリア、ニューサウスウェールズ州、ゴスフォードのParticle and Surface Sciences Pty社)を使用して測定された。後退接触角(RCA)および前進接触角(ACA)測定を実施するために使用された手順は、Dr. Roger P. Woodward (“Contact Angle Measurements Using the Drop Shape Method”、とりわけwww.firsttenangstroms.com/pdfdocs/CAPaper.pdf)により詳述される従来の技術である。
【0419】
実施例1〜6の結果は、比較例1A〜1Fにしたがって準備された剥離層に対する結果とともに、以下に提供されている。
【0420】
実質的にすべての場合において、担体表面に対して生産された剥離表面は、空気中で硬化された同一の調合物よりも小さい後退接触角を示した。さらに詳細には、担体表面に対して生産された剥離表面は、少なくとも5度、少なくとも7度、少なくとも10度、少なくとも12度、または少なくとも15度の差異だけ低い後退接触角を、または、5度〜30度、7度〜30度、10度〜30度、5度〜25度、5度〜22度、7度〜25度、または10度〜25度の範囲内の差異だけ低い後退接触角を、表した。
【0421】
実施例9
実施例1〜6において生産された剥離層、および、比較例1A〜1Fにおいて生産されたそれぞれの剥離層は、長い動作条件下でのエージングをシミュレートするために、2時間にわたり摂氏160度においてエージングが施された。後退接触角が測定され、その結果を以下に挙げる。
【表8】
【0422】
比較例に関しては、後退接触角がエージング処理の実施後は実質的に維持されたことが明らかである。しかし本発明の実施例1〜6に関しては、後退接触角がエージング処理の実施後は典型的には4度〜15度だけ増加したことが明らかである。理論に拘束されることを望むものではないが、発明者らは、本発明の剥離層構造における接触角の増加の原因が、剥離層表面における極性基(例えばSi−O−Si)の位置における何らかの変化に起因する親水性挙動における損失(または増加された疎水性挙動)にあるものと考える。
【0423】
実施例10
実施例2の組成の剥離層を含むブランケットは、実質的に実施例1で説明したように準備されたが、アルミニウム処理されたPET担体表面に対して準備された。
【0424】
実施例11
実施例2の剥離層組成を有する剥離層が、実質的に実施例1で説明したように準備されたが、静電防止前処理が施されていない市販のPET担体表面に対して準備された。
【0425】
実施例12
本発明に係る実施例2、10、および11において生産された剥離層に対して接触角測定が実施され、前進接触角および後退接触角の両方が決定された。結果は以下に提供される。
【表9】
【0426】
実施例10および11は、剥離層が空気に曝露された状態で硬化された同一の組成物の後退接触角よりも約30度小さい後退接触角を示した。静電防止PET担体表面に対して準備された実施例2の剥離層表面は、空気に曝露されている間に準備された同一の組成物の後退接触角よりも約50度小さい後退接触角を示した。
【0427】
実施例13
実施例2、10、および11で利用された担体表面に対して接触角測定が実施され、前進接触角および後退接触角の両方が決定された。結果は以下に提供される。
【表10】
【0428】
3つの担体表面が親水性挙動を示したこと、および静電防止処理が施されたPETが最大度の親水性挙動を示したことが、取得された後退接触角から見られ得る。(20度RCA対40度RCA)
【0429】
重大なことに、担体表面の親水性挙動がそれぞれの剥離表面に少なくとも部分的に誘導され、空気に曝露される間に硬化された調合物は65度のRCAを有し、静電防止PET表面に対して準備された同一の調合物は45度のRCAを有し、使用された静電防止PET担体は20度のRCAを示す。したがって、本発明の剥離層構造は、その親水性/疎水性特性が空気中で硬化された同一の調合物の特性と、担体表面自体の特性と、の間に存在する剥離表面を有する。
【0430】
実施例14
剥離表面エネルギーが以下の実施例のインク受容表面に対して計算された。これらの実施例は、空気に対して曝露される状況下で硬化された実施例1A、静電防止PET表面に対して硬化された実施例1、および、静電防止PET表面に対して硬化された後、引き続き摂氏160度で2時間にわたり標準的なエージング手順が施された実施例1、である。これら3つの実施例は同一の化学的組成を有する。
【0431】
これら3つの実施例のうちの各実施例に対して、全表面エネルギー伝統的な「調和平均」法(Owens−Wendt表面エネルギーモデルとしても知られる。例えばKRUSS Technical Note TN306e参照)を使用して計算された。結果は以下に提供される。
【表11】
【0432】
空気に対して曝露される状況下で硬化された実施例1Aでは剥離層表面は極度の疎水性を示し、当該表面の全表面エネルギーは低く、期待されたように20.9J/m
2であった。これは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に関して表面エネルギーに対する文献値にかなり近い値である。重要なことに、静電防止PET表面に対して硬化された実施例1は、約26J/m
2の全表面エネルギーを示した。この実施例1は「空気硬化」された試料よりもやや小さい疎水性を示す。この調合物が標準的なエージング手順を施された後、全表面エネルギーは約26J/m
2から23J/m
2未満に減少した。この結果は、この代表的な配合の、様々なエージングが施され、および、エージングが施されていない物質に対して取得されたRCA結果を裏付けるように見受けられるであろう。
【0433】
実施例15
剥離層表面エネルギーが以下の実施例のインク受容表面に対して計算された。これらの実施例は、空気に対して曝露される状況下で硬化された実施例2A、静電防止PET表面に対して硬化された実施例2、および、静電防止PET表面に対して硬化された後、引き続き摂氏160度で2時間にわたり標準的なエージング手順が施された実施例2、である。これら3つの実施例は同一の化学的組成を有する。
【0434】
実施例14と同様に、全表面エネルギーは伝統的な「調和平均」法を使用して計算された。結果は以下に提供される。
【表12】
【0435】
空気に対して曝露される状況下で硬化された実施例2Aでは剥離層表面は実施例1Aの剥離層よりも疎水性が小さく、この表面の全表面エネルギーは約35J/m2である。静電防止PET表面に対して硬化された実施例2は、約49J/m2の全表面エネルギーを示した。この実施例2は「空気硬化」された試料よりも顕著に小さい疎水性を示す。この調合物が標準的なエージング手順を施された後、全表面エネルギーは約49J/m2から約40J/m2に減少した。この結果は、この代表的な配合の、様々なエージングが施され、および、エージングが施されていない物質に対して取得されたRCA結果を裏付けるように見受けられるであろう。
【0436】
実施例16
ブランケット表面上の温度は摂氏75度に保持される。画像(通常に10〜100%のカラーグラデーション)は1200dpiの解像度で1.7m/秒の速度でブランケット上に印刷される。未被覆紙(A4 Xeroxプレミアム・コピー用紙、80gsm)が加圧ローラとブランケットとの間にセットされ、圧力が3バールに設定されて、加圧ローラはブランケットに対して加圧される。加圧ローラは紙上で移動し、ブランケットと紙との間の接触線上に圧力を印加し、転送プロセスを促進させる。いくつかの場合では、不完全な転送(残留インクがブランケット表面上に残った状態)が観察され得る。残留インクの程度を評価するために、光沢紙(A4 Burgo光沢紙130gsm)が未被覆紙と同様にブランケット上に置かれ、転送プロセスが再び実施される。ブランケット上に残され、かつ未被覆紙に転送されないあらゆるインクは光沢紙に転送されるであろう。したがって、光沢紙は以下のスケール(画像表面エリアの%)にしたがって残留インクに対して評価され得る。
A−視認可能な残留なし
B−視認可能な残留は1〜5%
C−視認可能な残留は5%より大きい
評価の結果は以下に提供される。
【表13】
【0437】
実施例17
実施例16は実施例2および実施例3の剥離表面に対して反復された。ただし印刷速度はブランケット上で3.4m/秒であった。両方の剥離表面はAの転送等級を保持した。
【0438】
実施例18
実施例2および実施例3のITM剥離層組成物は実施例1で提供される手順にしたがってPET基板に対して硬化された。実施例2および実施例3のITM剥離層組成物は比較例1Bおよび比較例1Cで提供される手順にしたがって空気に対して硬化された。次に、これらの試料は、以下の手順にしたがって、10秒において、および引き続き70秒において、動的接触角(DCA)測定が施された。
【0439】
液滴は、運動エネルギーが液滴を展開させないよう、可能なかぎり小さい液滴が落下する状態で、滑らかなPTFE薄膜表面上に配置される。次に垂滴が形成される。引き続き、標本は液滴の底部に接触するまで上昇させられる。液滴が十分に大きい場合、表面に対する付着はニードルの先端部から液滴を引き離すであろう。ニードル先端部は、表面の上方において、成長する垂滴が表面に接触し、かつ、それ自体の重さにより自由落下する以前に分離する、高さに配置される。
【0440】
次に、動的接触角は10秒および70秒において測定される。結果は以下に提供される。
【表14】
【0441】
10秒における動的接触角の初期測定が剥離層表面の親水性の強力な指示を提供することが観察される。その後の70秒における測定は、剥離層内に配置された任意の液体(例えばポリエーテルグリコール官能化ポリジメチルシロキサンなど)が液滴に組み込まれる程度の指示を提供する。係る組み込みは、測定されたDCAをさらに減少させ得る。
【0442】
したがってPETに対して硬化された試料は、空気に対して硬化されたそれぞれの試料の親水性初期DCA測定(114度、113度)と比較して実質的に低い(親水性が大きい)初期DCA測定(105度、87度)を示した。表示された親水性に加えて、PETに対して硬化された試料は、第1測定と第2測定との間で8〜17度のDCAにおける低下を示した。
【0443】
図25A〜
図25Cでは、本発明のITMの剥離層上に印刷された様々なインクパターンの画像が提供されている。ここでは、実施例2の剥離層はPET担体表面に対して硬化された。
図26A〜
図26Cは、実施例2の剥離層上に印刷された同一インクパターンの画像である。なおここでは、この剥離層は空気に対して硬化された。
図25Aと
図26Aとの間を比較すると、本発明のITMがより高い光学濃度を示し、インク画像パターンをより正確に反映することは明らかである。
図25Cと
図26Cとの間の比較は同一の結論を呈する。ここで
図25Bと
図26Bとの間を比較すると、
図25Bにおける各インクドットが
図26Bにおける各インクドットよりも認知可能に大きいことは明らかである。
【0444】
本明細書、および添付の請求項で使用される「後退接触角」または「RCA」という用語は、Dataphysics OCA15 Pro Contact Angle measuring deviceを、または類似のVideo−Based Optical Contact Angle Measuring Systemを使用して、上述のDrop Shape Methodを使用して、大気温度で測定された後退接触角を指す。類似した「前進接触角」または「ACA」と言う用語は、実質的に同一の方法で測定された前進接触角を指す。
【0445】
本明細書、および添付の請求項で使用される「動的接触角」または「DCA」という用語は、Dataphysics OCA15 Pro Contact Angle measuring deviceまたは類似のVideo−Based Optical Contact Angle Measuring Systemを使用して、上記で参照した「Contact Angle Measurements Using the Drop Shape Method」においてDr. Roger P. Woodwardにより詳述され、上記の実施例17で詳述された方法を使用して、測定された動的接触角を指す。
【0446】
本明細書、および添付の請求項で使用される「標準エージング手続き」という用語は、標準的な対流炉において摂氏160度において2時間にわたり各試験剥離層に対して行われる加速されたエージング手順を指す。
【0447】
本明細書、および添付の請求項で使用される「標準的空気硬化」と言う用語は、比較例1A〜1Fに関して説明した剥離層を硬化するための従来の硬化処理を指し、この硬化処理では、剥離層を硬化させる間、剥離層表面(または「インク受容表面」)が空気に曝露される。
【0448】
明細書、および添付の請求項で使用される「バルク疎水性」という用語は、剥離層の内側表面上に配置された蒸留水液滴の後退接触角により特徴付けられる。なお、この内側表面は、剥離層内の硬化シリコーン物質のエリアを露出させることにより形成される。
【0449】
実施例C1〜C12
本発明のITM水性処理液体の代表的な組成が以下の表に提供されている。
【表15】
【0450】
実施例C13〜C22
ITM水性処理液体の組成およびその様々な特性が実施例組成C13〜C22として以下の表に提供されている。
【表16】
【0451】
実施例C1〜C12に関して、室温で測定された各試料の粘度を以下で提供する(すべての値の単位はcP)。
C1=19.2
C2=18.15
C3=22.3
C4=36.2
C5=19.8
C6=21.2
C7=28.1
C8=18.0
C9=50.0
C10=48.2
C11=20.2
C12=20.7
【0452】
これらの処理調合物に対する表面張力は、これらの12の代表的な調合物よりも、より均一であり、室温において全般的に26〜29mN/mまたは26〜28mN/mの範囲内であった。
【0453】
実施例C23
追加的な水性処理調合物が実施例C23において提供される。この調合物は、水性処理調合物の表面張力を十分に低減させるよう比較的高いパーセンテージ(8重量%)で存在する第四級アンモニウム塩(Larostate 264)以外の界面活性剤を有さない。この表面張力および粘度は室温においてそれぞれ32.3mN/mおよび17.8cPである。
【表17】
【0454】
色素の準備
以下で説明する実施例で使用される色素は全般的に、数マイクロメートルの初期粒子サイズが与えられている。係る色素は、分散剤が存在する中でサブミクロン範囲に粉砕された。2つの物質が水性混合物として粉砕装置に供給された。別記なきかぎり、30g色素が、以下の実施例で示される重量比を満足する重量の分散剤と混合された。脱イオン化水が200gの残余に加えられた。この液体スラリーは、Union Process社製の磨砕機HDDM−01/HD−01内で、100nm以下(D
V50≦100nm)の中央径(粒子体積あたりで分析された)を有する顔料粒子を含む練り顔料(millbase)を準備するにあたり十分な期間にわたり十分なエネルギー入力で、0.8mmの直径を有する4500gのクロム鋼ビーズ(米国、Glen Mills社)の存在する環境でサイズが低減された。典型的には、この磨砕機は少なくとも48時間にわたり約3000rpmで運転された。なお磨砕期間は初期粒径にも依存した。
【0455】
そのように準備された組成物における粒径および粒径分布は、DLS方法(Malvern Zetasizer Nano ZS)を使用して決定された。特記なきかぎり、一定分量が、対象となる組成物から取り出され、必要に応じて、約1重量%の固体濃度を有する試料が取得されるよう、再蒸留水(DDW)で希釈された。粒径および分布を推定する際に色素粒子が適切に分散されることが保証されるよう、DLS測定の実施以前に、液体試料は短く超音波分解された(Sonics Vibracell VCX 750(750ワット)において、最大出力の75%で、約7秒間)。結果は粒子の体積に基づいて分析された。
【0456】
色素・分散剤混合物が所望の粒径に到達すると、ただちに50gの水が粉砕装置のチャンバに加えられ、その結果的に生成された希釈済み分散物が当該混合物から抽出された。ビーズは好適なメッシュを通して希釈済み練り顔料を濾過することにより分離された。この時点での色素濃度は12重量%であった。
【0457】
色素・分散剤を含む練り顔料に対してドデカン酸ナトリウム(SDD)、および/または、以下の添加物、すなわち、ドデカン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタン酸カリウム、およびオクタン酸ナトリウムからの少なくとも1つの添加物が加えられた。必要に応じて、10重量%の色素濃度を有する組成物が得られるよう、加えられた。
【0458】
実施例I1−インク組成物
本実施例では、インク組成物の準備について説明する。Heliogen(登録商標)BlueD7079が前述のようにHDDM−01/HD−01磨砕機においてDisperbyk(登録商標)190を用いて粉砕された。これらの物質は以下の割合で混合された。
【表18】
磨砕された濃縮物は、現時点では100nmより小さいD
V50を有し、50gの水でさらに希釈され、12重量%色素濃度において粉砕装置から抽出された。練り顔料濃縮物は、インク組成物の準備のために以下で説明するように、さらに処理された。第1段階において、2.4gのドデカン酸ナトリウムが200gの練り顔料濃縮物に加えられ、それにより練り顔料が得られた。混合物は均質性に達するまで攪拌され(5分、50rpmにおいて磁力スターラー)、摂氏60度で1日間にわたり培養された。次に混合物は大気温度にまで冷却するよう、放置された。第2段階において、インク成分が以下のように練り顔料に加えられた。
【表19】
この混合物は大気温度において30分間にわたり攪拌され、その結果、10cPより小さい粘度を有するインクジェット可能なインク組成物が生成された。
【0459】
実施例I2〜I5−インク組成物
実施例I1のインクが調合されたが、TWEEN20が5、10、12、および15gがそれぞれ加えられた。
【0460】
ドットゲイン
ドットゲインとは、初期の球形滴径に対するドットサイズにおける増加を指す。ドットゲインは、最終ドット径と初期滴径との比により決定される。滴体積を増加させる必要なしにドットサイズを増加させる方法を見出すことは大いに好ましい。
【0461】
本明細書で記載の本発明の技術を利用して、発明者らは、少なくとも1.5、もしくは1.6、およびさらに典型的には少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも1.9、もしくは少なくとも2.0、または1.5〜2.2、1.5〜2.1、1.7〜2.1、もしくは1.8〜2.1の範囲内のドットゲインを達成した。
【0462】
例えば、6.3ピコリットル(D=22.9マイクロメートル)の体積を有する滴を使用して、および本発明の水性処理調合物を使用して、得られた乾燥済みインクドットは40〜48マイクロメートルの直径範囲内であった。
【0463】
本明細書で、および添付の請求項で使用される「疎水性」および「親水性」、その他の用語は、相対的な意味で使用され得、必ずしも絶対的な意味で使用されるものではない。
【0464】
本明細書および添付の請求項で使用される「官能基」という用語は、従来の付加硬化型シリコーンのO−Si−O基よりも高い極性を有する、剥離層のポリマー構造に結合された基または部分を指す。様々な例が本明細書で提供される。発明者らは、純粋な付加硬化型ポリジメチルシロキサンポリマーがO−Si−O、SiO
4、Si−CH
3、およびC−C基を含むこと、および、大部分の他の官能基がより高い双極子を有し、それにより係る官能基が「機能的」であるとみなされ得ること、を観察する。係る官能基が、摂氏120度までの処理温度で間接的インクジェット印刷において利用される水性インクに典型的に存在する成分と反応する傾向または強い傾向を有し得ることは、当業者に明らかとなるであろう。
【0465】
特記なき限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。矛盾する場合には、定義を含めた本明細書が優先する。
【0466】
本明細書および本開示の請求項において、「含む」、「包含する」、および「有する」という動詞およびその活用は、当該動詞の目的語(単数または複数)が、必ずしも、当該動詞の主題(単数または複数)の部材、構成要素、要素、ステップ、または部分の完全な一覧ではないことを示すために使用される。これらの用語は、「〜からなる」および「実質的に〜からなる」という用語を包含する。
【0467】
本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は複数形の参照を含み、特記なき限り、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味する。
【0468】
「上」、「下」、「右」、「左」、「底部」、「下方」、「低下」、「低」、「上部」、「上方」、「上昇」、「高」、「垂直」、「水平」、「逆方向」、「前方」、「上流」、および「下流」などの位置または運動関連の用語、およびにその文法的変形は、本明細書では、例示目的のために、特定構成要素の相対的位置、配置、移動を示すために、現在の例示における第1成分および第2成分を示すために、または、両方を示すために、使用され得る。係る用語は必ずしも、例えば「底部」構成要素が「上部」構成要素の下方にあることを示さず、係る方向、構成要素、またはその両方が空間において反転、回転、移動され、対角線方向または位置に配置され、垂直または水平に配置され、同様に変更され得る。
【0469】
特記なき限り、選択のための選択肢一覧の最後の2つの要素間における「および/または」という表現の使用は、一覧された選択肢の1つまたは複数の選択が可能であることを示す。
【0470】
本明細書で、および添付の請求項で使用される「%」という用語は、特記なき限り、重量%を指す。
【0471】
同様に、本明細書および添付の請求項において使用される「比」という用語は、特記なき限り、重量比を指す。
【0472】
本開示では、特記なき限り、本技術の一実施形態の特徴(単数または複数)の状態または関係特性を修飾する「実質的に」および「約」という形容詞は、状態または特性が、本技術が意図された応用に対する実施形態の動作に対して許容可能である誤差の範囲内で定められることを意味するものと理解すべきである。
【0473】
本開示については、特定の実施形態および全般的に関連する方法に関連して、説明してきたが、本発明の様々な実施形態および方法の改変および置換は当業者には明らかとなるであろう。本開示は、本明細書で説明した特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲によってのみ限定されることが理解されるべきである。