特許第6980771号(P6980771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許69807711−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをベースにした組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980771
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをベースにした組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20211202BHJP
   C10M 105/38 20060101ALI20211202BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20211202BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20211202BHJP
   C10N 40/30 20060101ALN20211202BHJP
【FI】
   C09K5/04 C
   C09K5/04 B
   C10M105/38
   F25B1/00 396Z
   C10N30:12
   C10N40:30
【請求項の数】19
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-515333(P2019-515333)
(86)(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公表番号】特表2019-535841(P2019-535841A)
(43)【公表日】2019年12月12日
(86)【国際出願番号】FR2017052473
(87)【国際公開番号】WO2018051036
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2020年9月14日
(31)【優先権主張番号】1658751
(32)【優先日】2016年9月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ラシェド,ウィザム
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−005418(JP,A)
【文献】 特表2010−531927(JP,A)
【文献】 特開2017−149943(JP,A)
【文献】 特開2015−196702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00−5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒Fと少なくとも1種のポリオールエステルをベースにした潤滑剤とを含む組成物であって、冷媒Fが1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、少なくとも一種の二重結合を一つしか有していないC3−C6アルケン安定化剤化合物とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
安定剤化合物が1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、シス−2−ペンテン、トランス−2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテンおよびこれらの混合物からなる群の中から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
安定剤化合物が2−メチル−2−ブテンおよび3−メチル−1−ブテンから選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのトランス形態の重量割合が高く、90%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのトランス形態の重量割合が95%以上である請求項4に記載の組成物
【請求項6】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのトランス形態の重量割合が99%以上である請求項5に記載の組成物
【請求項7】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのトランス形態の重量割合が99.5%以上である請求項6に記載の組成物
【請求項8】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのトランス形態の重量割合が99.9%以上である請求項7に記載の組成物
【請求項9】
ポリオールエステルが下記の式(I)を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物:
1[OC(O)R2]n (I)
(ここで、
1は直鎖または分枝鎖の炭化水素基で、必要に応じて少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されていてもよく、および/または、−O−、−N−および−S−からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
各R2は互いに独立して下記i)〜iv)からなる群から選択され:
i) H、
ii) 脂肪族炭化水素基、
iii) 分枝鎖の炭化水素基、
iv)ii)および/またはiii)の基と8〜14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基との混合物、
nは2以上の整数)
【請求項10】
ポリオールエステルが、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールおよびこれらの混合物からなる群から選択されるポリオールから得られる請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ポリオールエステルが、5〜8個の炭素原子を有する少なくとも一種の分枝鎖カルボン酸から得られる請求項1〜8,10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ポリオールエステルが下記の(i)と(ii)により得られたポリ(ネオペンチルポリオール)エステルである請求項1〜のいずれかに記載の組成物:
(i) 下記式(V)を有するネオペンチルポリオール:
(ここで、
各Rは互いに独立してCH3、C25またはCH2OHであり、
pは1〜4の範囲の整数)
を2〜15個の炭素原子を有する少なくとも一種のモノカルボン酸と、酸触媒の存在下で、カルボキシル基とヒドロキシル基との間のモル比を1:1にして反応させて、部分的にエステル化したポリ(ネオペンチル)ポリオールの組成物を形成し、
(ii) (i)で得られた部分的にエステル化したポリ(ネオペンチル)ポリオールの組成物を2〜15個の炭素原子を有する他のカルボン酸と反応させて、ポリ(ネオペンチルポリオール)エステルの組成物を形成する。
【請求項13】
ポリオールエステルが下記の式(VIII)または(IX)を有する請求項1〜のいずれかに記載の組成物:
(ここで、
7、R8、R9、R10、R11およびR12は互いに独立してHまたはCH3であり、
a、b、c、y、xおよびzは互いに独立して整数であり、
a+x、b+yおよびc+zは互いに独立して1〜20の範囲の整数であり、
13、R14およびR15は互いに独立して脂肪族または分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリールシクロアルキル基、シクロアルキルアリール基、アルキルシクロアルキルアリール基、アルキルアリールシクロアルキル基、アリールシクロアルキルアルキル基、アリールアルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキルアリール基およびシクロアルキルアリールアルキル基から選択され、
13、R14およびR15は1〜17個の炭素原子を有し、必要に応じて置換されていてもよい)、または、
(ここで、
17およびR18のそれぞれは互いに独立してHまたはCH3であり、
mおよびnの各々は互いに独立して整数であり、m+nは1〜10の範囲の整数であり、
16およびR19は互いに独立して脂肪族または分枝鎖のアルキル基、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリールおよびシクロアルキルアリールアルキルからなる群から選択され、
16およびR19は1〜17個の炭素原子を有し、必要に応じて置換されていてもよい)
【請求項14】
潤滑剤の含有量が組成物の10重量%〜50重量%である請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物の、蒸気圧縮システムまたは熱機関における伝熱組成物としての使用。
【請求項16】
請求項1〜1のいずれか一項に記載の組成物を伝熱組成物として収容した回路を有する伝熱設備。
【請求項17】
ヒートポンプ、空調、冷蔵、冷凍および熱機関から選択される可動式または固定式の請求項1に記載の設備。
【請求項18】
組成物の蒸発、電気を生成するタービン内での熱伝達組成物の膨張、熱伝達組成物の凝縮および熱伝達組成物の圧縮を連続して行う、熱機関を使用して電気を発生させる方法であって、伝達組成物熱が請求項1〜1のいずれか一項に記載の組成物であることを特徴とする方法。
【請求項19】
熱伝達組成物の蒸発、熱伝達組成物の圧縮、熱伝達組成物の凝縮、熱伝達組成物の膨張を連続して含む、伝熱組成物を収容した蒸気圧縮システムによって流体または物体を加熱または冷却する方法であって、伝熱組成物が請求項1〜1のいずれか一項に記載の組成物であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍、空調およびヒートポンプでの使用に適した1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと少なくとも一種の潤滑剤とを含む組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大気中のオゾン層を破壊する物質に関する問題がモントリオールで議論され、クロロフルオロカーボン(CFC)の製造と使用を削減するための議定書が署名された。この議定書がさらに改正されてフロンの放棄とヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)を含む他の製品に対する規制が行なわれた。
【0003】
冷媒および冷凍空調の業界はこれら冷媒の代替に多額の投資をしており、ハイドロフルオロカーボン(HFC)が販売されている。
【0004】
自動車業界では多くの国で車両の空調システムがクロロフルオロカーボン冷媒(CFC−12)からオゾン層に対して有害性の低いハイドロフルオロカーボン(1、1、1、2−テトラフルオロエタン:HFC−134a)に移行した。しかし、このHFC−134a(GWP=1430)は京都議定書で規定された目標に対して地球温暖化係数が高いものと考えられている。流体の温室効果への寄与は二酸化炭素の場合を基準値1として加熱能力をまとめたGWP(地球温暖化係数)を基準にして定量化される。
【0005】
ハイドロフルオロオレフィン(HFO)は地球温暖化係数が低く、京都議定書で設定された目標を達成できるものとされている。
【0006】
[特許文献1](特開平4−110388号公報)には熱伝達材料としてのヒドロフルオロプロペンが開示されている。
【0007】
工業的に最も一般的に使用されている冷凍機械は液体冷媒の蒸発による冷却をべースにしたものである、この流体は蒸発後に圧縮され、冷却に使用されて液体状態に戻り、このサイクルを繰り返す。
【0008】
冷凍圧縮機(コンプレッサー)としてはレシプロ型、スクロール型、遠心型またはスクリュー型が使用されている。一般にはコンプレッサーの可動部品の摩耗と発熱とを減らし、シールを完全にし、腐食から保護するために内部潤滑剤を使用することが不可欠である。
【0009】
熱伝達材料が冷媒として商業的に受け入れられるためには、特性が優れていることに加えて、特に熱安定性に優れ且つ潤滑剤との相溶性が良くなければならない。実際には、ほとんどの冷凍システムに存在する圧縮機で使用されている潤滑剤と相溶性があることが冷媒には強く望まれている。この冷媒と潤滑剤との組み合わせは冷凍システムの運転および効率において重要であり、特に、潤滑剤は全ての動作温度範囲において冷媒中に十分に可溶性または混和性でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−110388号公報
【特許文献2】国際公開WO2012/177742号公報
【特許文献3】国際公開WO2012/177742公報
【特許文献4】米国特許第US5065990号明細書
【特許文献5】米国特許第US5363674号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、冷凍、エアコン、ヒートポンプでの使用に適し、特に熱的に安定した冷媒と潤滑液との新規な組み合わせを見つけるというニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)を含む冷媒Fと、ポリオールエステル(POE)をベースにした少なくとも1種の潤滑剤とから成る組成物にある。
【0013】
本明細書で「HCFO−1233zd」とは、シスかトランスかの形とは無関係に、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを意味する。「HCFO−1233zdZ」および「HCFO−1233zdE」という用語は1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのそれぞれシスおよびトランス形態を意味する。従って、「HCFO−1233zd」という用語はHCFO−1233zdZ、HCFO−1233zdEおよびこれら2つの異性体形態の任意比率の全ての混合物をカバーする。
【0014】
特に明記しない限り、本明細書全体で、化合物の割合は重量パーセントで表される。
【0015】
本発明組成物は熱的に安定であるという有利な利点があることを本発明者は見出した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
冷媒
本発明の一つの実施形態では、冷媒Fは少なくとも一種の安定剤化合物を含む。
【0017】
本発明の安定剤化合物は冷媒の分野で公知の任意の安定剤化合物にすることができる。
【0018】
安定剤の中では特にニトロメタン、アスコルビン酸、テレフタル酸、アゾール類(azoles)、例えばトリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール、フェノール化合物、例えばトコフェロール、ハイドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、(フッ素化または過フッ素化されていてもよいアルキルまたはアルケニルまたは芳香族)エポキシド、例えばn−ブチルグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、ホスファイト、ホスホネート、チオールおよびラクトン等を挙げることができる。
【0019】
好ましい実施形態では、安定剤化合物はハロゲンを含まず、好ましくはフッ素を含まない。
【0020】
好ましい実施形態では、安定剤化合物は二重結合を一つだけ有するC3−C6アルケンである。
【0021】
本発明は、下記(1)と(2)を含む組成物に関するものである:
(1)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)と、二重結合を一つしか有しないC3−C6アルケンの安定剤化合物とを含む少なくとも一種の冷媒F、
(2)ポリオールエステル(POE)をベースにした少なくとも1種の潤滑剤。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、C3−C6アルケンの安定化化合物は二重結合を一つだけ有し、ハロゲンを含まず、好ましくはフッ素を含まない。
【0023】
安定剤化合物は、プロペン、ブテン、ペンテンおよびヘキセンから成る群から選択され、これらプロペン、ブテン、ペンテンはハロゲン原子、例えばフッ素原子を含まないのが好ましい。ブテンおよびペンテンが好ましく、ペンテンがさらに好ましい。
【0024】
安定剤化合物はC5分枝鎖アルケン化合物であるのが好ましい。
【0025】
C3−C6アルケン安定剤化合物は直鎖または分枝鎖でよいが、好ましくは分枝鎖である。
【0026】
安定剤化合物の沸点は100℃以下、好ましく75℃以下、より好ましくは50℃以下である。
【0027】
本明細書で「沸点」とは2008年4月のDIN EN規格378−1に従って決定される101.325kPaの圧力下での沸騰温度を意味する。
【0028】
また、安定剤化合物の固化温度は0℃以下、好ましくは−25℃以下、より好ましくは−50℃以下である。
【0029】
この固化温度は化学製品のOECDガイドライン、試験番号102:融点/融解範囲(Lignes directrices de l'OCDE pour les essais de produits chimiques, Section 1, Editions OCDE, Paris, 1995、http://dx.doi.org/10.1787/9789264069534-frから入手可能)で決定される。
【0030】
本発明の好ましい安定剤化合物は以下の群から選択される:
− 1−ブテン(but-1-ene)
− シス−2−ブテン(cis-but-2-ene)
− トランス−2−ブテン
− 2−メチル−1−プロペン(2-methylprop-1-ene)
− 1−ペンテン
− シス−2−ペンテン
− トランス−2−ペンテン
− 2−メチル−1−ブテン(2-methylbut-1-ene)
− 2−メチル−2−ブテン
− 3−メチル−1−ブテン
【0031】
好ましい化合物の中では下記の式の2−メチル−2−ブテンと3−メチル−1−ブテン式のエンとを挙げることができる:
(CH32C=CH−CH3(沸点39℃)
CH3−CH(CH3)−CH=CH2(沸点25℃)
【0032】
上記化合物の2つ以上を組み合わせて使用することもできる。
【0033】
冷媒F中の上記のように安定剤化合物の質量割合は、冷媒Fの総質量に対して、0.01〜0.05%または0.05〜0.1%または0.1〜0.2%または0.2〜0.3%または0.3%〜0.4%または0.4%〜0.5%または0.5%〜0.6%または0.6%0.7%または0.7%〜0.8%または0.8%〜0.9%または0.9〜1%または1%〜1.2%または1.2%〜1.5%または1.5%〜2%または2%〜3%または3%〜4%または4%から5%にすることかできる。
【0034】
好ましい実施形態では、冷媒Fは1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)と、少なくとも1種の二重結合を1つだけ有するC3−C6アルケンの安定剤化合物とから成り、安定剤化合物は2−メチル2−ブテンであるのが好ましい。
【0035】
冷媒F中のHCFO−1233zdはHCFO−1233zdEの形態か、HCFO−1233zdEとHCFO−1233zdZとの混合物にすることができる。
【0036】
好ましい実施形態では、HCFO−1233zdEの質量割合は、HCFO−1233zdの全質量に対して、90%以上または91%以上または92%以上または93%以上または94%以上または95%以上または96%以上または97%以上または98%以上または99%以上または99.1%以上または99.2%以上または99.3%以上または99.4%以上または99.5%以上または99.6%以上または99.7%以上または99.8%以上または99.9%以上または99.91%以上または99.92%以上または99.93%以上または99.94%以上または99.95%以上または99.96%以上または99.97%以上または99.98%以上または99.99%以上である。
【0037】
冷媒F中に安定剤化合物が存在することによって、経時的な、および/または、用途温度が相対的に高い場合の、組成物中のHCFO−1233zdZの割合の増加を防止することができる。
【0038】
本発明の組成物において、HCFO−1233zdの質量割合は組成物の1〜5%または組成物の5〜10%または組成物の10〜15%または組成物の15〜20%または組成物の20〜25%または組成物の25〜30%または組成物の30〜35%または組成物の35〜40%または組成物の40〜45%または組成物の45〜50%または組成物の50〜55%または組成物の55〜60%または組成物の60〜65%または組成物の65〜70%または組成物の70〜75%または組成物の75〜80%または組成物の80〜85%または組成物の85〜90%または組成物の90〜95%または組成物の95〜99%または組成物の99〜99.5%または組成物の99.5〜99.9%または組成物の99.9%以上にすることができる。HCFO−1233zdの含有量は上記範囲内、例えば50〜55%と55〜60%で変えることができ、すなわち50〜60%にすることができる。
【0039】
本発明の組成物は、HCFO−1233zdを50重量%以上、好ましくは50%〜99%含むのが好ましい。
【0040】
滑沢剤
本発明では、潤滑剤は一種または複数のポリオールのエステルで較正できる。一つの実施形態では、このポリオールエステルは少なくとも1種のポリオールとカルボン酸またはカルボン酸混合物とを反応させて得られる。
【0041】
特に明記しない限り、本発明で「ポリオール」という用語は、少なくとも2つのヒドロキシル基(−OH)を有する化合物を意味する。
【0042】
ポリオールエステルド(A)
一つの実施形態では、本発明のポリオールエステルは下記式(I)に対応する:
1[OC(O)R2n (I)
(ここで、
1は直鎖または分枝鎖の炭化水素基で、必要に応じて少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されていてもよく、および/または、−O−、−N−および−S−からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
各R2は下記i)〜iv)からなる群から互いに独立して選択され:
i) H、
ii) 脂肪族炭化水素基、
iii) 分岐鎖の炭化水素基、
iv) ii)および/またはiii)の基と8〜14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基との混合物、
nは少なくとも2の整数である)
【0043】
本発明で炭化水素基とは炭素原子と水素とからなる基を意味する。
【0044】
一つの実施形態では、ポリオールは下記一般式(II)を有する:
1(OH)n (II)
(ここで、
1は直鎖または分枝鎖の炭化水素基で、必要に応じて少なくとも1つ個のヒドロキシル基、好ましくは2つのヒドロキシル基で置換されていてもよく、および/または、−O−、−N−および−S−からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むことができ、
nは2以上の整数である)
【0045】
1は4〜40個の炭素原子、好ましくは4〜20個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の炭化水素基であるのが好ましい。
【0046】
好ましくは、R1は少なくとも1つの酸素原子を含む直鎖または分枝鎖の炭化水素基である。
【0047】
好ましくは、R1は4〜10個の炭素原子、好ましくは5個の炭素原子を有する2つのヒドロキシル基で置換された分枝鎖の炭化水素基である。
【0048】
好ましい実施形態では、ポリオールは2〜10個のヒドロキシル基、好ましくは2〜6個のヒドロキシル基を含む。
【0049】
本発明のポリオールは一つまたは複数のオキシアルキレン基を含むことができ、この特定のケースがポリエーテルポリオールである。
【0050】
本発明のポリオールはさらに、1つまたは複数の窒素原子を含むことができる。例えば、ポリオールは3〜6のOH基を有するアルカノールアミンにすることができる。ポリオールは少なくとも2つのOH基、好ましくは少なくとも3つのOH基を有するアルカノールアミンであるのが好ましい。
【0051】
本発明で好ましいポリオールはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリグリセロール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ヘキサグリセロールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0052】
本発明では、カルボン酸は下記一般式(III)に対応させることができる:
2COOH (III)
(ここで、
2は下記i)〜iv)からなる群から選択される:
i) H、
ii) 脂肪族炭化水素基、
iii) 分岐鎖の炭化水素基、
iv) ii)および/またはiii)の基と8〜14個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基との混合物)
【0053】
2は1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜7個の炭素原炭素原子、特に1〜6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であるのが好ましい、
好ましくは、R2は4〜20個、好ましくは5〜14個、好ましくは6〜8個の炭素原子を有する分岐鎖を有する炭化水素基である。
【0054】
好ましい実施形態では、分岐鎖を有する炭化水素基は下記式(IV)を有する:
−C(R3)R4)(R5) (IV)
(ここで、
3、R4およびR5は互いに独立してアルキル基であり、アルキル基の少なくとも一つは少なくとも2個の炭素原子を含む。これらの分枝鎖アルキル基はカルボキシル基と結合したときに「ネオ基、groupe neo」の名称で知られ、対応する酸はネオ酸(acide neo)とよばれる。R3およびR4はメチルで、R5少なくとも2個の炭素原子を含むアルキル基であるのが好ましい。
【0055】
本発明では、基R2は一つまたは複数のカルボキシまたはエステル基、例えば−COOR6含むことができ、このR6基はアルキル、ヒドロキシアルキルまたはヒドロキシアルキルオキシアルキル基を表す。
【0056】
好ましくは、式(III)のR2COOH酸はモノカルボン酸である。
【0057】
炭化水素基が脂肪族であるカルボン酸の例はギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸およびヘプタン酸である。
【0058】
炭化水素基が分岐鎖を有するカルボン酸の例は2−エチル−n−酪酸、2−ヘキシルデカン酸、イソステアリン酸、2−メチルヘキサン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオヘプタン酸およびネオデカン酸である。
【0059】
式(I)のポリオールエステルの製造に使用できるカルボン酸の第三のタイプは8〜14個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基を含むカルボン酸である。その例としてはデカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸が挙げられる。ジカルボン酸の中ではマレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸が挙げられる。
【0060】
好ましい実施形態では、式(I)のポリオールのエステルを製造するのに使用されるカルボン酸はモノカルボン酸とジカルボン酸の混合物で、モノカルボン酸が主要割合を占める。ジカルボン酸が存在すると、高粘度のポリオールエステルが形成される。
【0061】
カルボン酸とポリオールとの反応によって式(I)のポリオールエステルを生成する反応は酸によって触媒される反応である。これは可逆反応で、多量の酸を使用するか、反応中に形成される水を除去することで反応を進める。
【0062】
このエステル化反応は有機または無機の酸、例えば硫酸、リン酸の存在下で行うことができる。
【0063】
反応は触媒の不存在下で行うのが好ましい。
【0064】
カルボン酸とポリオールの量は所望結果に応じて混合物毎に変えることができる。全てのヒドロキシル基をエステル化する特殊ケースでは、全ての水酸基と反応させるために十分な量のカルボン酸を添加する。
【0065】
一つの実施形態では、カルボン酸の混合物を使用し、この場合にはカルボン酸をポリオールと順次反応させることができる。
【0066】
好ましい一つの実施形態では、カルボン酸の混合物を使用し、この場合には、ポリオールを最初に一つのカルボン酸、典型的には分子量が高い方のルボン酸と反応させ、続いて脂肪族炭化水素鎖を有するカルボン酸と反応させる。
【0067】
一つの実施形態では、酸の存在下、高温でポリオールとカルボン酸(またはその無水物またはエステル誘導体)との反応によってステルを形成し、形成された水は反応中に除去する。反応は一般に75〜200℃の温度で行うことができる。
【0068】
別の実施形態では、形成されたポリオールエステルが未反応のヒドロキシル基を含んでもよい。この場合は部分エステル化したポリオールエステルである。
【0069】
好ましい実施形態では、ポリオールエステルがペンタエリスリトールアルコールとカルボン酸混合物:イソノナン酸、8〜10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を有する少なくとも一つの酸およびヘプタン酸とから得られる。好ましいポリオールエステルはペンタエリトリトールと、70%イソノナン酸と15%の少なくとも1つのカルボン酸との混合物と、15%のヘプタン酸とから得られる。例としては、CPI Engineering Services Inc社からSolest68の名称で市販のオイルを挙げることができる。
【0070】
ポリオールエステル(B)
別の実施形態では、本発明のポリオールエステルは、最大で8個の炭素原子を有する1つまたは複数の分枝鎖カルボン酸の少なくとも一種のエステルを含む。このエステルは分枝鎖カルボン酸と1種または複数のポリオールとの反応で得られる。
【0071】
好ましくは、分枝鎖カルボン酸は少なくとも5個の炭素原子を含む。具体的には、分枝鎖カルボン酸は5〜8個の炭素原子を含み、好ましくは5個の炭素原子を含む。
【0072】
好ましくは、上記分枝鎖カルボン酸は9個の炭素原子を含まない。具体的には、カルボン酸は3,5,5−トリメチルヘキサン酸ではない。
【0073】
好ましい実施形態では、上記分枝鎖カルボン酸は2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸およびこれらの混合物から選択される。
【0074】
好ましい実施形態では、ポリオールはネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0075】
好ましい実施形態では、ポリオールエステルは下記のi)とii)から得られる:
i) 2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸およびこれらの混合物から選択されるカルボン酸、
ii)ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールおよびこれらの混合物からなる群から選択されるポリオール。
【0076】
ポリオールエステルは2−メチルブタン酸とペンタエリスリトールとから得るのが好ましい。
ポリオールエステルは2−メチルブタン酸とジペンタエリスリトールとから得るのが好ましい。
ポリオールエステルは3−メチルブタン酸とペンタエリスリトールとから得るのが好ましい。
ポリオールエステルは3−メチルブタン酸とジペンタエリスリトールとから得るのが好ましい。
ポリオールエステルは2−メチルブタン酸とネオペンチルグリコールとから得るのが好ましい。
【0077】
ポリオールエステル(C)
別の実施形態では、本発明のポリオールエステルは下記のi)とii)で得られるポリ(ネオペンチルポリオール)エステルである:
i) 下記式(V)を有するネオペンチルポリオール:
(ここで、
各Rは互いに独立してCH3、C25またはCH2OHであり、
pは1〜4の整数)
と、2〜15個の炭素原子を有する少なくとも一種のモノカルボン酸とを、酸触媒の存在下で、カルボキシル基とヒドロキシル基とのモル比を1:1以下にして反応させて、部分的にエステル化されたポリ(ネオペンチル)ポリオール組成物を形成し、
ii)i)の工程で得られたと部分的にエステル化されたポリ(ネオペンチル)ポリオール組成物を、2〜15個の炭素原子を有する他のカルボン酸と反応させて、最終的なポリ(ネオペンチルポリオール)エステルを得る。
【0078】
i)の反応は1:4〜1:2のモル比で行うのが好ましい。
【0079】
好ましくは、ネオペンチルポリオールは下記の式(VI)を有する:
(ここで、
各Rは互いに独立してCH3、C25またはCH2OHである)
【0080】
好ましいネオペンチルポリオールはペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコールから選択される。特に、ネオペンチルポリオールはペンタエリトリトールである。
【0081】
POEベースの潤滑油を製造するには単一のネオペンチルポリオールを使用するのが好ましい。いくつかのケースでは2つ以上のネオペンチルポリオールが使用される。これはペンタエリトリトールの市販製品の中でジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールおよびテトラエリトリトールの含有量の少ないものである。
【0082】
好ましい実施形態では、上記のモノカルボン酸は5〜11の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子を含む。
【0083】
モノカルボン酸は特に下記一般式(VII)のモノカルボン酸である:
R'C(O)OH (VII)
(ここで、
R'は直鎖または分枝鎖のC1−C12アルキル基、C6−C12アリール、C6−C30アラルキル基であり、好ましくは、R'はC4−C10アルキル基、好ましくはC5−C9アルキル基である。
【0084】
特に、モノカルボン酸はブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、3−メチルブタン酸、2−メチルブタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3、1,3,5−トリメチルヘキサン酸、安息香酸およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0085】
好ましい実施形態では、モノカルボン酸はn−ヘプタン酸またはn−ヘプタン酸と他の直鎖モノカルボン酸、特にn−オクタン酸および/またはn−デカン酸との混合物である。このモノカルボン酸の混合物は15〜100モル%のヘプタン酸と、85〜0モル%の他のモノカルボン酸とからなる。特に、この混合物は75〜100モル%のヘプタン酸と、25〜0モル%のオクタン酸とデカン酸との混合物(モル比3:2)とからなる。
【0086】
好ましい実施形態では、ポリオールエステルは下記からなる:
i)45重量%〜55重量%のモノペンタエリスリトールのエステルと、2〜15個の炭素原子を有する少なくとも一種のモノカルボン酸、
ii)最大で13重量%のジペンタエリスリトールのエステルと、2〜15個の炭素原子を有する少なくとも1種のモノカルボン酸、
iii)最大で10重量%のトリペンタエリスリトールのエステルと、2〜15個の炭素原子を有する少なくとも1種のモノカルボン酸、
iv) 最大で25重量%のテトラエリトリトールおよび他のペンタエリスリトールオリゴマーのエステルと、2〜15個の炭素原子を有する少なくとも1種のモノカルボン酸。
【0087】
ポリオールエステル(D)
別の実施形態では、本発明のポリオールエステルは下記の式(VIII)を有する:
【0088】
(ここで、
7、R8、R9、R10、R11およびR12は互いに独立してHまたはCH3であり、
a、b、c、y、xおよびzは互いに独立して整数であり、
a+x、b+yおよびc+zは互いに独立して1〜20の範囲の整数であり、
13、R14およびR15は、互いに独立して、脂肪族または分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールシクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキルアルキル基、シクロアルキルアリール基、アルキルシクロアルキルアリール基、アルキルアリールシクロアルキル基、アリールシクロアルキルアルキル基、アリールアルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキルアリール基およびシクロアルキルアリールアルキル基からなる群の中から選択され、
13、R14およびR15は1〜17個の炭素原子を有し、必要に応じて置換されていてもよい)
【0089】
好ましい実施形態では、各R13、R14およびR15は互いに独立して直鎖または分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基を表し、これらのアルキル、アルケニルまたはシクロアルキル基はN、O、Si、FまたはSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子含んでいてもよく、各R13、R14およびR15は、互いに独立して、3〜8個の炭素原子、好ましくは5〜7個の炭素原子を有する。
【0090】
好ましくは、a+x、b+yおよびc+zは互いに独立して1〜10の範囲の整数、好ましくは2〜8の整数、さらに好ましくは2〜4の整数である。
【0091】
好ましくは、R7、R8、R9、R10、R11およびR12はHである。
【0092】
上記の式(VIII)のポリオールエステルは一般に[特許文献2](国際公開WO2012/177742号公報)の[0027]〜[0030]に記載の方法で製造できる。
【0093】
特に、式(VIII)のポリオールエステルはグリセロールと2〜18個の炭素原子を有する一種または複数のモノカルボン酸とのアルコキシレートエステル化によって得られる(例えば[特許文献3](国際公開WO2012/177742公報)の[0027]に記載)。
【0094】
好ましい実施形態では、モノカルボン酸は以下の式の中の1つを有する:
13COOH
14COOH
15COOH
(ここで、R13、R14およびR15は上記定義のもの)
さらに、カルボン酸の誘導体、例えば無水物、エステルおよびアシルハライドを使用することもできる。
【0095】
エステル化は一種または複数のモノカルボン酸を用いて行うことができる。好ましいモノカルボン酸は酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソブタン酸、ピバル酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,3,5−トリメチル酸、ノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、シトロネル酸、アビエチン酸、ウンデセン酸、ラウリン酸、ウンデシレン酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、テトラヒドロ安息香酸、2−エチルヘキサン、フッ素酸、安息香酸、4−アセチル安息香酸、ピルビン酸、4−tert−ブチル安息香酸、ナフテン酸、2−メチル安息香酸、サリチル酸、これらの異性体、メチルエステルおよびこれらの混合物からなる群から選択できる。
【0096】
エステル化はペンタン酸、2−メチルブタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、3,3、5−トリメチル酸、2−エチルヘキサン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸およびイソノナン酸からなる群から選択される1種または複数のモノカルボン酸を用いて行うのが好ましい。
【0097】
エステル化は酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,3,5−トリメチル酸、n−ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ウンデカン酸、ウンデセレン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される1種または複数のモノカルボン酸を用いて行うのが好ましい。
【0098】
別の実施形態では、本発明のポリオールエステルは下記の式(IX)を有する:
(ここで、
17とR18は、互いに独立して、HまたはCH3であり、
mおよびnの各々は互いに独立して整数であり、m+nは1〜10の範囲の整数であり、
16とR19は互いに独立して、脂肪族または分枝鎖のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アリールシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリールおよびシクロアルキルアリールアルキルなる群から選択され、
16およびR19は1〜17個の炭素原子を有し、必要に応じて置換されていてもよい)
【0099】
好ましい実施形態では、R16およびR19のそれぞれは、互いに独立して、直鎖または分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基を表し、これらのアルキル、アルケニルまたはシクロアルキルはN、O、Si、FまたはSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよい。好ましくは、R16およびR19のそれぞれは互いに独立して3〜8個の炭素原子、好ましくは5〜7個の炭素原子を有する。
【0100】
好ましい実施形態では、R17およびR18のそれぞれはHであり、および/または、m+nは2〜8、4〜10、2〜5または3〜5の整数であり、特に、m+nは2,3または4である。
【0101】
好ましい実施形態では、上記式(IX)のポリオールエステルはテトラエチレングリコールのジエステル、トリエチレングリコールのジエステル、特に4〜9個の炭素原子を有する一つまたは2種のモノカルボン酸とのジエステルである。
【0102】
上記の式(IX)のポリオールエステルは、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはオリゴ−またはポリアルキレングリコール(これはオリゴ−またはポリエチレングリコール、オリゴ−またはポリプロピレングリコールまたはエチレングリコール−プロピレングリコールのブロックコポリマーにすることができる)と、2〜18個の炭素原子を有する一種または2種のモノカルボン酸とのエステル化で製造できる。このエステル化反応は上記一般式(VIII)のポリオールエステルを製造ためのエステル化反応と同じ方法で行うことができる。
【0103】
特に、上記式(VIII)のポリオールエステルを製造するのに使用したものと同一のモノカルボン酸を式(IX)のポリオールエステルの製造にも使用することができる。
【0104】
一つの実施形態では、本発明のポリオールエステルをベースにした潤滑剤は式(VIII)の少なくとも一種のポリオールエステルの20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%と、式(IX)の少なくとも1種のポリオールエステルの80〜20重量%、好ましくは70〜30重量%、好ましくは60〜40重量%とを含む。
【0105】
一般的に、エステル化反応時には一定のアルコール官能基はエステル化されないが、その割合は低い。従って、PEOは−CH2−O−C(=O)−単位に対して0〜5相対モル%のCH2OH単位を含むことができる。
【0106】
本発明の好ましいPOE潤滑剤の粘度は、40℃で1〜1000センチストークス(cSt)、好ましくは10〜200cSt、より好ましくは20〜100cSt、有利には30〜80cStである。
【0107】
オイルの国際分類はIS0規格3448(NF T60−141)で与えられ、そこではオイルは40℃の温度で測定した平均粘度クラスで指定される。
【0108】
組成物
本発明の組成物における冷媒Fの質量割合は組成物の1〜5%、または組成物の5〜10%、または組成物の10〜15%、または組成物の15〜20%、または組成物の20〜25%。または組成物の25〜30%、または組成物の30〜35%、または組成物の35〜40%、または組成物の40〜45%、または組成物の45〜50%、または組成物の50〜55%、または組成物の55〜60%、または組成物の60〜65%、または組成物の65〜70%、または組成物の70〜75%、または組成物の75〜80%、または組成物の80〜85%、または組成物の85〜90%、または組成物の90〜95%、または組成物の95〜99%、または組成物の99〜99.5%、または組成物の99.5〜99.9%、または組成物の99.9%以上にすることができる。冷媒量Fの含有量は上記の複数の範囲内で変えることができ、例えば50〜55%と55〜60%で50〜60%にすることができる。
【0109】
好ましい実施形態では、本発明組成物は冷媒Fを組成物の総重量に対して50重量%以上、特に50重量%〜99重量含む。
【0110】
本発明組成物では、ポリオールエステル系潤滑油(POE)の重量比率は組成物の1〜5%、または組成物の5〜10%、または組成物の10〜15%、または組成物の15〜20%、または組成物の20〜25%。または組成物の25〜30%、または組成物の30〜35%、または組成物の35〜40%、または組成物の40〜45%、または組成物の45〜50%、または組成物の50〜55%、または組成物の55〜60%、または組成物の60〜65%、または組成物の65〜70%、または組成物の70〜75%、または組成物の75〜80%、または組成物の80〜85%、または組成物の85〜90%、または組成物の90〜95%、または組成物の95〜99%、または組成物の99〜99.5%、または組成物の99.5〜99.9%、さらには組成物の99.9%以上にすることができる。潤滑剤の含有量はの含有量は上記の複数の範囲内で変えることができ、例えば50〜55%と55〜60%で50〜60%等にすることができる。例えば、潤滑剤の含有量は組成物の10〜50重量%にすることができる。
【0111】
一つの実施形態では、本発明組成物は下記の(1)と(2)から成る:
(1)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)を含み、必要に応じて一つの二重結合のみを有する上記のC3−C6アルケン安定剤化合物をさらに含む冷媒F、
(2)少なくとも1種のポリオールエステル(POE)をベースにした潤滑剤、特に、上記(A)、(B)、(C)または(D)のポリオールエステル、特に、上記の式(I)、(VIII)または(XI)のポリオールエステルから選択される潤滑剤
【0112】
好ましい実施形態では、本発明組成物は下記の(1)と(2)から成る:
(1)特にHCFO−1233zdの総重量に対してHCFO−1233zdEの質量割合が95%以上または99%以上または99.9%以上である、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)と、2−メチル−2−エンブテン−および3−メチル−2−ブテンから選択される安定剤化合物とを含む冷媒F、
(2)上記式(I)のポリオールエステルをベースにしたて少なくとも一種の潤滑剤。
【0113】
本発明組成物は1種または複数の添加剤(所望用途に対して本質的に熱伝達化合物ではないもの)を含むことができる。
【0114】
この添加剤は特に、ナノ粒子、安定剤(本発明の安定剤化合物とは異なるもの)、界面活性剤、トレーサー剤、蛍光剤、臭化剤および可溶化剤から選択することができる。
【0115】
添加剤は潤滑剤でないのが好ましい。
【0116】
一つの実施形態では、本発明組成物は熱伝達組成物である。
【0117】
好ましい実施形態では、本発明は下記(1)〜(3)を含む熱伝達組成物に関するものである:
(1)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zdの)を含む冷媒F、
(2)ポリオールエステル(POE)をベースにした少なくとも一種の潤滑剤、
(3)ナノ粒子、安定剤(本発明の安定剤化合物とは異なるもの)、界面活性剤、トレーサー剤、蛍光剤、臭化剤および可溶化剤から選択される少なくとも一種の添加剤。
【0118】
上記安定剤は、それが存在する場合、熱伝達組成物中に最大で5質量%含むのが好ましい。安定剤の中ではニトロメタン、アスコルビン酸、テレフタル酸、アゾール類、例えばトリルトリアゾールまたはベンゾトリアゾール、フェノール化合物、例えばトコフェロール、ヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、(フッ素化またはパーフッ素化されていてもよいアルキルまたはアルケニルまたは芳香族)エポキシド、例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、ホスファイト、ホスホネート、チオールおよびラクトンを挙げることができる。
【0119】
ナノ粒子としては特に、カーボンナノ粒子、金属酸化物(銅、アルミニウム)、ΤiΟ2、のAl23、MoS2を使用することができる。
【0120】
トレーサー剤(検出を可能にする)としては重水素化ハイドロフルオロカーボン、重水素化炭化水素、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化物、ヨウ素化物、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、亜酸化窒素およびこれらの組み合わせが挙げられる。トレーサー薬剤は熱伝達流体(冷媒F)に含まれる熱伝達化合物特許は異なるものである。
【0121】
可溶化剤としては炭化水素、ジメチルエーテル、ポリオキシアルキレンエーテル、アミド、ケトン、ニトリル、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテル、1,1,1−トリフルオロアルカンを挙げることができる。可溶化剤は伝熱流体(冷媒F)に含まれる伝熱成分とは異なる化合物である。
【0122】
蛍光剤としてはナフタルイミド、ペリレン、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン、フルオレセインおよびこれらの誘導体およびこれらの組合せを挙げることができる。
【0123】
臭化剤しては、アルキルアクリレート、アリルアクリレート、アクリル酸、アクリルエステル、アルキルエーテル、アルキルエステル、アルキン、アルデヒド、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、アリルイソチオシアネート、アルカン酸、アミン類、ノルボルネン誘導体、ノルボルネン、シクロヘキセン、複素環式芳香族化合物、アスカリドール、o−メトキシ(メチル)フェノールおよびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0124】
本発明組成物はさらに、HCFO−1233zdに加えて、少なくとも1種の他の熱伝達化合物を含むことができる。この任意成分としての他の伝熱化合物は炭化水素化合物、エーテル、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロオレフィンまたはハイドロクロロフルオロオレフィンにすることができる。
【0125】
例えば、上記の他の熱伝達化合物は下記の中から選択できる:1、1、1、4,4,4−ヘキサフルオロ−2−エン(HFO−1336mmz、EまたはZ異性体)、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン(HFO−1345fz)、2,4,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン(HFO−1354mfy)、1、1、1、3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1、3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、ジフルオロメタン(HFC−32)、1,1,1、2−テトラフルオロエタン(HFC−134A)、1、1、2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152A)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、メトキシノナフルオロブタン(HFE7100)、ブタン(HC−600)、2−メチルブタン(HC−601)、ペンタン(HC−601)、エチルエーテル、酢酸メチルおよびこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0126】
「熱伝達化合物」「伝熱流体」または「冷媒」とは、蒸気圧縮回路中で低温低圧で蒸発することによって熱を吸収し、高温高圧で凝縮によって熱を放出する流体となる化合物を意味する。一般に、熱伝達流体は1種、2種、3種またはそれ以上の熱伝達化合物を含むことができる。特に、冷媒Fは熱伝達流体である。
【0127】
「熱伝達組成物」とは熱伝達流体と、意図した用途では熱伝達化合物ではない任意成分の1種または複数の添加剤とを含む組成物を意味する。特に、本発明組成物は熱伝達組成物である。
【0128】
用途
本発明はさらに、蒸気圧縮回路中での熱伝達組成物としての上記組成物の使用にも関するものである。
本発明はさらに、熱伝達組成物として本発明組成物を収容した蒸気圧縮システムを含む設備(installation)の使用をベースにした熱伝達方法にも関するものである。この熱伝達方法は流体または物体の加熱または冷却方法にすることができる。
【0129】
一つの実施形態では、上記蒸気圧縮システムは下記である:
− 空調システム、または
− 冷凍システム、または、
− 冷凍システム、または、
− ヒートポンプシステム。
【0130】
本発明組成物はさらに、機械作業または電気を製造するプロセス、特にランキンサイクルで使用することもできる。
【0131】
本発明はさらに、伝熱組成物として上記組成物を収容した蒸気圧縮回路を有する熱伝達設備にも関するものである。
【0132】
一つの実施形態では、上記設備は可動式または固定式の冷凍施設、加熱施設(ヒートポンプ)、エアコン、冷凍設備および内燃機関の中から選択される。
【0133】
特に、ヒートポンプ設備の場合には、加熱される流体または物体(一般には空気、場合によっては1つまたは複数の製品、物品または器官)は室内または車内(可動設備の場合)にある。好ましい実施形態では上記設備は空調システムであり、この場合には冷却される流体または物体(一般には空気、場合によっては1つまたは複数の製品、物品または器官)が室内または車内(可動設備の場合)にある。上記設備は冷凍システムまたは冷凍プラント(または極低温プラント)であり、この場合には、上記流体または物体は一般に空気で、一定場所またはコンテナに配置された製品、物品または器官を冷却する。
【0134】
本発明の他の対象は、熱伝達組成物を収容した蒸気圧縮システムを用いて流体または物体を加熱または冷却する方法にある。この方法は熱伝達組成物の蒸発、熱伝達組成物の圧縮、熱伝達組成物の凝縮、熱伝達組成物の減圧を連続的に含む。この熱伝達組成物は上記組成物である。
【0135】
本発明の他の対象は内燃エンジンを使用して電気を製造する方法にある。この方法は熱伝達組成物の蒸発、電気を発生させタービン内での熱伝達組成物の放圧、熱伝達組成物の凝縮、熱伝達組成物の圧縮を連続的に含み、この熱伝達組成物は上記組成物である。
【0136】
伝熱組成物を収容した蒸気圧縮回路は少なくとも一つの蒸発器、圧縮機、凝縮器および膨張弁と、これらの要素間の伝熱流体の移送ラインとを含む。蒸発器および凝縮器は熱伝達組成物と他の流体または物体との間で熱交換をするための熱交換器を備えている。
【0137】
圧縮機としては1段または多段の遠心圧縮機またはミニ遠心圧縮機を使用することができる。ピストンまたはスクリューのロータリー圧縮機を用いることもできる。圧縮機は電動機またはガスタービン(例えば、可動用途では車両の排気ガス駆動のガスタービン)で駆動するか、伝動装置によって駆動することもできる。
【0138】
遠心圧縮機は熱伝達組成物を半径方向に加速させる回転要素を使用する点に特徴がある。一般的には、これは少なくとも一つのローターと、エンクロージャ中に収容されたディフューザとを含む。伝熱組成物はローターの中心に導入され、加速度を受けてローターの外周部に流れる。従って、静圧の一部はローター中で上昇し、他の一部はディフューザの所で上昇する。速度が静圧の増加に変換される。ローター/ディフューザの各セットが圧縮機の段になる。遠心圧縮機は処理すべき流体の所望最終圧力と容積に応じて1〜12段の圧縮機段を有することができる。
【0139】
圧縮比は伝熱組成物の入口における絶対圧に対するその組成物の出力における絶対圧の比として定義される。
【0140】
大型遠心圧縮機の回転速度は3000〜7000回転/分である。小型遠心圧縮機(またはミニ遠心圧縮機)は一般に40,000〜70,000回転/分の範囲の回転速度で運転され、小さなローター(一般に0.15m以下)を有している。
【0141】
圧縮機の効率を改善し且つエネルギーコストを削減する(1段ローターとの比較)ために複数段のローターを使用することができる。2段システムでは、ローターの第1段の出力からローターの第2段の入力へ供給される。2つのローターは単一シャフトに取付けできる。各段で流体の圧縮率を1に対して約4にすることができる。換言すれば、出力の絶対圧力は吸引側の絶対圧力の約4倍になる。特に、自動車用途の2段遠心圧縮機の例は[特許文献4](米国特許第US5065990号明細書)および[特許文献5](米国特許第US5363674号明細書)に記載されている。
【0142】
遠心圧縮機は電動機またはガスタービン(例えば、可動用途では車両の排気ガス駆動のガスタービン)で駆動するか、伝動装置によって駆動することができる。
【0143】
上記設備は電気を発生させるタービンとの膨張カップリングを含婿とができる(ランキンサイクル)。
【0144】
上記設備はさらに、熱伝達組成物と加熱または冷却される流体または物体との間で(状態変化有り又は無しで)熱を伝達するのに使用される伝熱流体の少なくとも1つの回路を必要に応じて含むことができる。
【0145】
上記設備はさらに、同一または異なる伝熱組成物を含む2つ(またはそれ以上)の蒸気圧縮回路を必要に応じて含むことができる。例えば、複数の蒸気圧縮回路を互いに結合できる。
【0146】
上記蒸気圧縮回路は従来の蒸気圧縮サイクルに従って運転される。このサイクルは相対的に低い圧力での熱伝達組成物の液相(または液体/蒸気の2相)から気相への状態変化と、その後の相対的に高い圧力での気相での組成物の圧縮と、相対的に高い圧力での気相から液相への状態変化(凝縮)と、圧力降下とを含み、上記サイクルが繰り返される。
【0147】
冷却プロセスの場合には、冷却される流体または物体からの熱が熱伝達組成物によって吸収され(直接的または熱交換流体を介した間接的に)、それが蒸発して周囲環境に比べて相対的に低温になる。この冷却プロセスには空調プロセス(例えば車両の場合の可動設備または固定設備)、冷凍プロセスおよび凍結プロセスまたは極低温プロセスが含まれる。
【0148】
加熱プロセスの場合には、熱は熱伝達組成物の凝縮時に熱伝達組成物から加熱すべき液体または物体へ(直接的または熱伝達流体を介して間接的に)送られ、これは環境に対して相対的に高い温度で行われる。熱の伝達を行う事ができるこの場合の設備は「ヒートポンプ」と呼ばれる、
【0149】
本発明の熱伝達組成物を用いる場合、任意タイプの熱交換器、特に並流式(co-courant)熱交換器または向流式(contre-courant)熱交換器を使用することができる。
【0150】
しかし、好ましい実施形態では、本発明は冷却プロセスおよび加熱プロセスと、凝縮器または蒸発器の所に向流式の熱交換器を含むこれらプロセスに対応する設備とを提供する。すなわち、本発明の熱伝達組成物は向流式の熱交換器に特に有効であり、蒸発器と凝縮器の両方の所に向流式の熱交換器を備えているのが好ましい。
【0151】
本発明で「向流式熱交換器」とは、第1流体と第2流体との間で熱が交換される熱交換器であって、熱交換器に入る第1流体が熱交換器から出る第2流体と熱交換し、熱交換器から出る第1流体が熱交換器に入る第2流体と熱交換する熱交換器を意味する。
【0152】
例えば、向流式熱交換器は第1流体の流れと第2流体の流れが反対方向であるか、ほぼ反対方向である。本出願の意味では、向流傾向で動作する交差モード(en mode courant croise)の交換器も向流式熱交換器に含まれる。
【0153】
「低温冷凍(refrigeration a basse temperature)」プロセスでは、蒸発器の所の伝熱組成物の入口温度は−45℃〜−15℃、特に−40℃〜−20℃、好ましくは−35℃〜−25℃、例えば約−30℃で、凝縮器の所の熱伝達組成物の凝縮開始温度は好ましくは25℃〜80℃、特に30℃〜60℃、より好ましくは35℃〜55℃、例えば約40℃である。
【0154】
「中程度の温度の冷却(refroidissement a temp饅ochrature moderee)」プロセスでは、蒸発器の所の伝熱組成物の入口温度は好ましくは−20℃〜10℃、特に−15℃〜5℃、より好ましくは−10℃〜0℃、例えば約−5であり、凝縮器の所の熱伝達組成物の凝縮開始温度は好ましくは25℃〜80℃、特に30℃〜60℃、より好ましくは35℃〜55℃、例えば約50℃である。このプロセスは冷却または空調プロセスであってもよい。
【0155】
「中程度の温度の加熱(chauffage a temperature moderee)」プロセスでは、蒸発器の所の伝熱組成物の入口温度は好ましくは−20C°〜10℃に、特に−15℃〜5℃、より好ましくは−10℃〜0℃、例えば約−5℃であり、凝縮器の所の熱伝達組成物の凝縮開始温度は好ましくは25℃〜80℃、特に30℃〜60℃、より好ましくは35℃〜55℃、例えば約50℃である。
【0156】
「高温加熱」プロセスでは、蒸発器の伝熱組成物の入口温度は好ましくは−20〜90℃、特に10℃〜90℃、より好ましくは50℃〜90℃、例えば約80℃であり、凝縮器の熱伝達組成物の凝縮開始温度は好ましくは70℃〜160℃、特に90℃〜150℃、より好ましくは110℃〜140℃、例えば約135℃である。
【0157】
本発明組成物は冷蔵輸送に特に有利である。これは生鮮品を冷蔵空間中に入れて冷蔵輸送するもので、食品と医薬品は生鮮品の重要な部分である。冷蔵輸送はトラック、鉄道、船、さらには、トラック、鉄道、船に適合させたマルチプラットフォームのコンテナを使用して行われる。
【0158】
冷蔵輸送での冷蔵空間の温度は−30℃〜16℃の間である。トラック、鉄道またはマルチプラットフォームコンテナによる輸送での冷媒の量は4〜8kgである。船舶施設では100〜500kgになる。
【0159】
現在最も使用されている冷媒はR404Aである。
【0160】
冷凍システムの運転温度は要求される冷凍温度と外部気候条件との関数である。同一冷凍システムで16℃〜30℃の間の広範囲の温度をカバーすることができ、熱帯でも寒冷地でも動作しなければならない。
【0161】
最も厳しい条件での蒸発温度は−30℃である。
【0162】
本発明の設備では、伝熱組成物として使用する組成物の温度は上記の安定剤化合物の固化温度以上に維持されるので、回路中に固体材料が堆積するのを回避することができるという好ましい利点もある。
【0163】
上記の全ての実施形態は互いに組み合わせることができる。従って、組成物の好ましい各化合物を上記と異なる割合で各ポリオールエステル(エステルA、B、CまたはD)と組み合わせることができる。好ましい別の組成物を上記の種々の用途で使用することができる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0164】
実施例1
熱安定性試験をASHRAE規格97−2007「冷媒システムで使用する材料の化学的安定性をテストするための密封ガラス管法(sealed glass tube method to test the chemical stability of materials for use within r饅ochfrig饅ochrant Systems)」に従って行った。
【0165】
試験条件は以下の通り:
流体の質量(安定剤を含む):2g
潤滑剤の質量:5g
空気乾燥:0.2ミリモル
温度:180℃
期間:14日
下記の2つの商業用潤滑剤を試験した:
− PVE Bitzer32オイル(Bitzer/出光)、
− Solest 68オイル(CPI Engineering services inc)
冷媒Fは下記から成る:
2−メチル−2−ブテン 0.5重量%
HCFO−1233zd 99.5重量%
【0166】
潤滑剤を16ミリリットルのガラス管に入れる。その後、ガラス管を真空にし、その後に流体Fおよび空気を入れる。次いで、ガラス管を溶融密封し、180℃のオーブン中に14日間入れた。
試験終了時に、気相を収集し、ガスクロマトグラフィーで分析した。主たる不純物はGC/MS(ガスクロマトグラフィーに質量分析を連結したもの)で同定した。
【0167】
【0168】
このGC分析の結果は、PVEオイルの場合にはPOEオイルの場合と比べて、新たな不純物が非常に高い割合で形成されることを示している。POEオイルでは0.5モル%未満であるのに対して、PVEオイルでは8モル%以上と高い。
従って、この試験結果は、HFO−1233zd/POEオイル混合物の方がHFO−1233zd/PVEオイル混合物よりも熱的により安定であることを示している。