(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態は、油を脱瀝するためのプロセスに関する。より具体的には、本開示の実施形態は、外部パラフィン溶剤および外部水素などの外部溶剤に対する必要性を除去するかまたは低減しながら、超臨界水を利用して炭化水素系組成物を改良し分離して脱瀝油を製造するためのプロセスに関する。
【0012】
具体的な実施形態を、図面を参照して説明する。可能な限り、図面全体を通して、同じ参照番号を使用して、同じまたは類似する部分を参照する。
【0013】
図1は、超臨界水を使用して重質油留分中のアスファルテン含有量を除去するかまたは低減する脱瀝プロセス101を概略的に示す。本開示を通して使用されるように、「超臨界」とは異なる相が存在せず、かつ液体のような材料を溶解しながら物質が気体の拡散を示すことができるように、臨界圧力および臨界温度より高い圧力および温度にある物質を指す。従って、超臨界水は、水の臨界温度より高い温度および臨界圧力より高い圧力を有する水である。臨界温度より高い温度および臨界圧力より高い圧力で、水の液相と気相との境界が消え、流体は液体と気体状物質の両方の特性を有する。超臨界水は有機溶剤のように有機化合物を溶解することができ、かつ気体のように拡散性に優れる。温度および圧力を調節することにより、超臨界水の性質をより液体状またはより気体状に継続的に「調整」することができる。超臨界水は、液相亜臨界水と比較して密度が低く極性が小さいため、水中で行うことができる化学の可能な範囲を大幅に拡大する。
【0014】
超臨界境界に達した超臨界水は、様々な予期せぬ性質を有する。超臨界水は、有機化合物に対する非常に高い溶解性を有し、気体との無限の混和性を有する。さらに、ラジカル種はかご効果(すなわち、一つ以上の水分子がラジカル種を取り囲み、またラジカル種の相互作用を防止する状態)を通して超臨界水により安定化させることができる。理論に制限されることなく、ラジカル種の安定化は、ラジカル間縮合の防止を助け、それによって本実施形態における全体的なコークス生成を減少させる。例えば、コークス生成はラジカル間縮合の結果である可能性がある。特定の実施形態では、超臨界水は水蒸気改質反応および水ガスシフト反応を通して水素ガスを生成し、次いでこれを改良反応に利用可能である。
【0015】
また、超臨界水の高温高圧により、27MPaおよび450℃で水の密度を1ミリリットル当たり0.123グラム(g/mL)にすることができる。これに対して、圧力を低下させて過熱蒸気を生成した場合、例えば20MPa及び450℃で蒸気の密度は0.079g/mLになる。より炭化水素に近い密度を有する流体は、より優れた溶解能力を有することができる。なお、その密度で、炭化水素は過熱蒸気と相互作用して蒸発し、液相に混合し、加熱時にコークスを生成する可能性のある重質留分を残す。コークスまたはコークス前駆体の形成はラインを閉塞するおそれがあるため、除去されなければならない。従って、超臨界水は、いくつかの用途において蒸気より優れている。
【0016】
図1は、超臨界水流126を利用することによって脱瀝油252を製造するための脱瀝プロセス101を示す。簡単に概説すると、脱瀝プロセス101は、混合装置130内で超臨界水流126を加圧加熱された炭化水素系組成物124と化合させて化合供給流132を生成するものである。化合供給流132を、水の臨界温度より高い温度と水の臨界圧力より高い圧力とで作動する超臨界改良反応器150に導入する。超臨界改良反応器150は、減圧されて軽質留分184と重質留分182とに分離された改良反応器生成物152を製造する。軽質留分184をガス/油/水分離器190に送って、軽質留分184をガス留分194、パラフィン留分192、および水留分196に分離する。パラフィン留分192を重質留分182と化合させて重質留分182からアスファルテンを除去し、それによって脱瀝油252を製造する。
【0017】
本開示を通して使用されるように、「アスファルテン」とは、微量のバナジウムおよびニッケルを有する、主に炭素、炭化水素、窒素、酸素および硫黄からなる炭化水素組成物を指す。理論に縛られることなく、アスファルテンとは、パラフィン溶剤に溶解しない石油の部分を指す(溶解する部分はマルテンと呼ばれる)。減圧残油のような高沸点留分は一般的に高濃度のアスファルテンを有する。上述のように、いくつかの実施形態では、化合供給流132は、減圧残油、常圧残油、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、減圧残油留分は、留分の10%が1050°F以上の温度で蒸発する真沸点(TBP)を有してもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、化合供給流132は0.1重量パーセント(重量%)より多いn−ヘプタンを使用して測定されるアスファルテン含有量を有してもよい。全てがアスファルテンを構成するものに関して様々な定義があるが、n−ヘプタンが大部分のアスファルテン留分を構成する不溶性材料であることの考え方が業界では一般的である。従って、アスファルテンまたはn−ヘプタン不溶性物質含有量は、アメリカ標準試験法(ASTM)標準D3279を用いて測定される。いくつかの実施形態では、アスファルテン含有量は1重量%より多くてもよく、5重量%より多くてもよいかまたは10重量%より多くてもよい。例えば、化合供給流132中のアスファルテン含有量は0.1重量%〜1重量%、または0.1重量%〜3重量%、または0.1重量%〜5重量%であってもよい。化合供給流132中のアスファルテン含有量は1重量%〜3重量%、または1重量%〜5重量%、または3重量%〜5重量%であってもよい。いくつかの実施形態では、超臨界水流126と加圧加熱された炭化水素系組成物124との比を操作して5重量%未満の化合供給流132中のアスファルテン含有量を生じさせることができる。いくつかの実施形態では、コークス形成の可能性を低減するために、化合供給流132中のアスファルテン含有量をアスファルテン5重量%以下に低減することが望ましい場合がある。
【0019】
いかなる特定の理論にも縛られることを意図しないが、アスファルテンは、原油生産パイプライン中に沈殿し、パイプライン内の流れを妨げるので、処理問題を引き起こすおそれがある。さらに、アスファルテンはまた、高温を受けると容易にコークスに転化されるおそれがあり、これは望ましくない問題となるおそれがある。アスファルテンは、ピッチおよびビチューメンと同義によく用いられ、しかしながら、ピッチおよびビチューメンはアスファルテンを含有するが、それらは他の留分汚染物質(例えば、マルテン、非アスファルテン留分)をも含み得る。
【0020】
アスファルテンは通常、脂肪族炭素側鎖に結合した芳香族コアを含む。いかなる特定の理論にも縛られることを意図しないが、アスファルテンの芳香族性の増大は、多環化合物を含む他の芳香族化合物との相互作用を引き起こすおそれがある。芳香族結合は、脂肪族炭素−炭素結合より大きな結合エネルギーを示し、従って破壊されにくい。超臨界水の使用は、かご効果を通して分子間反応を抑制するのを助けるが、芳香族部分は、反応温度の制約によって制限されるおそれがある。従って、アスファルテン中に存在する側鎖が芳香族コアから離れる可能性があるが、芳香族部分は変化しない。芳香族部分が積層を開始して、コークスに転化され得る多層芳香族シートを形成するおそれがある。上述のように、コークスは望ましいものではなく、パイプライン内の流れを妨げるかまたは他の処理問題を引き起こすおそれがある。
【0021】
再び
図1を参照すると、いくつかの実施形態では、炭化水素系組成物105は、あらゆる種類の原油、抜頭原油、常圧留出物、常圧残油、減圧留出物、減圧残油、分解生成物(軽質サイクル油またはコーカ軽油など)または他の製油所流を含み得る。炭化水素系組成物105は、石油、液化石炭、または生体材料から誘導された任意の炭化水素源であってもよい。炭化水素系組成物105の可能性のある炭化水素源は、あらゆる種類の原油、蒸留原油、抜頭原油、残滓油、トップド原油、製油所からの生成物流、水蒸気分解プロセスからの生成物流、液化石炭、石油またはタールサンドから回収された液体生成物、ビチューメン、オイルシェール、アスファルテン、バイオマス炭化水素などを含み得る。特定の実施形態では、炭化水素系組成物105は、常圧残油、常圧留出物、減圧軽油(VGO)、減圧留出物、または減圧残油を含み得る。いくつかの実施形態では、炭化水素系組成物105は、製油所からの化合流、生産油、または上流操作からの他の炭化水素流を含み得る。炭化水素系組成物105は、デカンテッド油、10個以上の炭素を含有する油(C10+油)、またはエチレンプラントからの炭素流であってもよい。炭化水素系組成物105は、いくつかの実施形態では、バイオ燃料油などの液化石炭または生体材料誘導体であってもよい。
【0022】
炭化水素系組成物105をポンプ112で加圧して加圧された炭化水素系組成物116を生成することができる。加圧された炭化水素系組成物116の圧力は、ほぼ水の臨界圧力である少なくとも22.1メガパスカル(MPa)であってもよい。あるいは、加圧された炭化水素系組成物116の圧力は23MPa〜35MPaまたは24MPa〜30MPaのような22.1MPa〜35MPaであってもよい。いくつかの実施形態では、加圧された炭化水素系組成物116の圧力は24MPa〜28MPa、または26MPa〜30MPa、または25MPa〜27MPaであってもよい。
【0023】
図1に示すように、加圧された炭化水素系組成物116を一つ以上の石油予熱器120中で加熱して、加圧加熱された炭化水素系組成物124を形成することができる。いくつかの実施形態では、加圧加熱された炭化水素系組成物124を前述のように水の臨界圧力より高い圧力と150℃以下の温度にしてもよい。加圧加熱された炭化水素系組成物124の温度は10℃〜150℃、または50℃〜150℃、または100℃〜150℃、または75℃〜150℃、または50℃〜100℃であってもよい。石油予熱器120は、天然ガス燃焼加熱器、熱交換器、電気加熱器、または当技術分野で知られる任意の種類の加熱器であってもよい。いくつかの実施形態では、加圧加熱された炭化水素系組成物124は、プロセスの後半で、二重管熱交換器内で加熱されてもよい。
【0024】
図1に示すように、水流110は、1マイクロジーメンス(μS)/センチメートル(cm)未満の導電率を有する水流110などの任意の水源であってもよい。いくつかの実施形態では、水流110の導電率を0.1μS/cm未満または0.05μS/cm未満にしてもよい。水流110はさらに脱塩水、蒸留水、ボイラー給水、および脱イオン水を含み得る。少なくとも一つの実施形態では、水流110はボイラー給水(BFW)流である。
図1において、水流110をポンプ114で加圧して加圧水流118を生成する。加圧水流118の圧力は少なくとも22.1MPaであり、それはほぼ水の臨界圧力である。加圧水流118の圧力は22.1MPa〜35MPaであってもよい。例えば、23MPa〜35MPaまたは24MPa〜30MPaである。いくつかの実施形態では、加圧水流118の圧力は、24MPa〜28MPa、または26MPa〜30MPa、または25MPa〜27MPaであってもよい。
【0025】
図1において、その後加圧水流118を水予熱器122内で加熱して超臨界水流126を生成する。超臨界水流126の温度は、ほぼ水の臨界温度である374℃より高い。あるいは、超臨界水流126の温度は、380℃より高くてもよい。いくつかの実施形態では、温度は380℃〜600℃、または400℃〜550℃、または380℃〜500℃、または400℃〜500℃、または380℃〜450℃であってもよい。
【0026】
石油予熱器120と同様に、適切な水予熱器122は、天然ガス燃焼加熱器、熱交換器、および電気加熱器を含み得る。水予熱器122は、石油予熱器120とは別個の独立した装置であってもよい。
【0027】
再び
図1を参照すると、供給混合機の混合装置130内で超臨界水流126を加圧加熱された炭化水素系組成物124と化合させて化合供給流132を生成することができる。混合装置130は、超臨界水流126と加圧加熱された炭化水素系組成物124とを混合することができる任意の種類の混合装置であってもよい。一実施形態では、混合装置130は、混合T字部であってもよい。供給混合機に供給される炭化水素に対する超臨界水の体積流量比は変化し得る。一実施形態では、体積流量比は標準環境温度および圧力(SATP)で10:1〜1:10、または5:1〜1:5、または1:1〜4:1であってもよい。
【0028】
図1において、その後、化合供給流132を、化合供給流132を改良するように構成された超臨界改良反応器150に導入することができる。超臨界改良反応器150は上昇流、下降流、または水平流反応器であってもよい。上昇流、下降流または水平反応器とは、超臨界水および石油系組成物が超臨界改良反応器150を通って流れる方向を指す。所望の用途およびシステム構成に基づいて、上昇流、下降流、または水平流反応器を選択することができる。いかなる理論にも縛られることを意図しないが、下降流超臨界反応器では、より大きな密度を有するため重質炭化水素留分が非常に高速で流れるおそれがあり、滞留時間の短縮(チャネリングとして知られる)をもたらす。反応が起こる時間が少ないので、改良を妨げるおそれがある。上昇流超臨界反応器は滞留時間が長くなるが、重質留分中の炭素含有化合物のような大きな粒子が反応器の底部に蓄積するので支障が生じるおそれがある。この蓄積は、改良プロセスを妨げ、反応器を閉塞するおそれがある。上昇流反応器は、一般的に触媒を利用して反応物との接触を増大させ、しかしながら、触媒は、超臨界水の過酷な条件に起因して分解し、コークスを生成するおそれがある不溶性凝集物を形成するおそれがある。水平反応器は、相分離を望むかまたは圧力降下を低減しようとする用途において有用であり得るが、達成される分離は、限られるおそれがある。各種類の反応器流は、適用可能なプロセスに基づいて変化する積極的および消極的な属性を有する。
【0029】
図1において、化合供給流132は、超臨界改良反応器150の導入口を通して導入される。いくつかの実施形態では、前述のように、化合供給流132は、流れ方向に応じて、超臨界改良反応器150の頂部、底部、または超臨界改良反応器150の側壁の導入口を通して導入されてもよい。
【0030】
超臨界改良反応器150は、いくつかの実施形態では、等温または非等温反応器であってもよい。反応器は、管形垂直反応器、管形水平反応器、槽型反応器、撹拌機などの内部混合装置を有するタンク型反応器、またはこれらの反応器のいずれかの組み合わせであってもよい。さらに、撹拌棒または撹拌装置などの追加の構成要素も超臨界改良反応器150に含むことができる。
【0031】
超臨界改良反応器150は、水の臨界温度より高い温度と水の臨界圧力より高い圧力とで作動することができる。一つ以上の実施形態では、超臨界改良反応器150を380℃〜480℃または390℃〜450℃の温度にしてもよい。
【0032】
超臨界改良反応器150は、式L/Dによって定義される寸法を有することができ、ここで、Lは超臨界改良反応器150の長さであり、Dは超臨界改良反応器150の直径である。一つ以上の実施態様において、超臨界改良反応器150のL/D値は、0.5メートル(m)/分(min)より速い流体の空塔速度を達成するのに十分であってもよいか、または1m/min〜5m/minの間の流体の空塔速度を達成するのに十分なL/D値であってもよい。流体の流れは、5000より大きいレイノルズ数によって定義することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、超臨界改良反応器150内の内部流体の滞留時間は5秒より長くてもよく、例えば1分より長くてもよい。いくつかの実施形態では、超臨界改良反応器150内の内部流体の滞留時間は2〜30分であってもよい。例えば、2〜20分、5〜15分、または5〜10分である。
【0034】
図1を参照すると、反応器から出ると、超臨界改良反応器150の改良反応器生成物152の圧力を低減して0.05MPa〜2.2MPaの圧力を有し得る減圧流172を生成することができる。減圧は、
図1に示すような弁170のような多くの装置によって達成することができる。任意選択で、改良反応器生成物152を、弁170の上流にある冷却器(図示せず)内で200℃未満の温度に冷却することができる。冷却器は熱交換器のような様々な冷却装置が考えられる。
【0035】
減圧流172は、次いで、軽重質分離器180に供給されて、減圧流172は重質留分182と軽質留分184に分離される。様々な軽重質分離器180が考えられ、例えば、いくつかの実施形態では、軽重質分離器180はフラッシュドラムまたは蒸留装置とすることができる。いくつかの実施形態では、軽重質分離器180は、減圧流172を含む内部流体の温度を制御するための温度制御装置を有してもよい。いくつかの実施形態では、温度制御装置は既製の制御装置とすることができる。いくつかの実施形態では、軽重質分離器180は、200℃〜250℃の温度および約1気圧(ATM)の圧力を有し得るフラッシュドラムとすることができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、軽質留分184中の炭化水素は、重質留分182のものより大きいアメリカ石油協会(API)の比重を有してもよい。API比重は、水に対する密度(比重としても知られる)に基づいて、石油液体が水と比較したときにどれだけ重いかまたは軽いかの尺度である。API比重は式1に従って計算することができる:
API比重=141.5/((60°Fでの比重)−131.5) 式1
API比重は、度数で表される無次元量であり、ほとんどの石油液体は10°から70°の間にある。いくつかの実施形態では、軽質留分184中の炭化水素は、30°以上のAPI比重を有することができる。軽質留分184中の炭化水素は、30°〜40°、30°〜45°、または30°〜50°または30°〜70°のAPI比重を有してもよい。いくつかの実施形態では、軽質留分184中の炭化水素は、31.1°などの31°以上のAPI値を有することができる。いくつかの実施形態では、軽質留分184中の炭化水素は、40°〜45°のAPI値を有することができ、これは非常に商品価値が高い。いくつかの実施形態では、API値が45°より大きくなると分子鎖が短くなり、軽質留分184中の炭化水素の商品価値が低くなるため、軽質留分184中の炭化水素は45°未満のAPI値を有することが望ましい。
【0037】
重質留分182中の炭化水素は、30°以下のAPI比重を有してもよい。例えば、重質留分182中の炭化水素は30°未満かつ20°以上のAPI比重を有してもよい。重質留分182中の炭化水素は、22.3°〜30°のAPI比重を有するか、または22.3°未満、例えば10°〜22.3°、または10°〜30°などのAPI比重を有してもよい。いくつかの実施形態では、重質留分182中の炭化水素は5°〜30°または1°〜30°など、10°未満のAPI比重を有してもよく、API比重が10°未満の油が水に沈むので、これは「余分な」重さとみなすことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、軽質留分184中の80%の炭化水素の真沸点(TBP)は、100℃〜250℃のように、250℃未満としてよい。この沸点範囲は、軽質留分184中の炭化水素中により高いパラフィン濃度が存在することを可能にする。いくつかの実施形態では、軽質留分184中の90%の炭化水素のTBPは、100℃〜250℃、または150℃〜250℃など、250℃未満とすることができる。
【0039】
重質留分182中の炭化水素は、軽質留分184中のものより高いアスファルテン濃度を有してもよい。いくつかの実施形態では、重質留分182中の炭化水素は、軽質留分184中のものより少なくとも25%多いアスファルテンを有してもよく、または軽質留分184中のものより少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも75%多いアスファルテンを有してもよい。重質留分182中の炭化水素は、軽質留分184中のものより少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも300%、またはさらに少なくとも500%多いアスファルテンを有してもよい。軽質留分184中の炭化水素中のアスファルテンおよび重質留分182中の炭化水素の量は、化合供給流132の含有量に依存する。一般に、化合供給流132中のn‐ヘプタン不溶性留分の含有量によって測定されるアスファルテン含有量は、前述のように、0.1重量%より多く、または1重量%より多く、または5重量%より多いべきである。一般に、化合供給流132中の炭化水素中のアスファルテン含有量は、アラビアンライト原油を使用する場合は約1重量%とし、マヤ原油からの減圧残油を使用する場合は約26重量%としてよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、重質留分182は、5重量%以下、例えば3重量%以下、または1重量%以下、または0.1重量%以下の含水量を有してもよい。いくつかの実施形態では、重質留分182を脱水してもよい。
【0041】
再び
図1を参照すると、軽質留分184を、ガス/油/水分離器190に送ってもよい。ガス/油/水分離器190は、軽質留分184をガス留分194、パラフィン留分192、および水留分196に分離することができる。いくつかの実施形態では、パラフィン留分192を重質留分182と化合させてアスファルテン256を除去し、それによって脱瀝油252を生成してもよい。
【0042】
ガス留分194をさらに苛性処理装置(図示せず)に送って、硫化水素(H
2S)またはメルカプタン(R‐SH)などの汚染物質を除去してもよい。いくつかの実施形態では、ガス留分194を苛性処理装置によって処理して燃料ガス(図示せず)を生成してもよい。いくつかの実施形態では、苛性処理装置は、水酸化ナトリウムなどのアルカリ液を使用して、ガス留分194中に存在する硫黄および他の望ましくない汚染物質の含有量を減らすことができる。本開示を通して使用されるように、「アルカリ液」とは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの強アルカリ性溶液を指す。硫化水素は、脱瀝プロセス101などの脱瀝プロセス中に発生するおそれがある致命的な臭気ガスである。いかなる特定の理論にも縛られることなく、硫化水素は、10以上、または10〜12のpHなどの高pH条件での溶解性により、苛性溶液に容易に溶解することができる。
【0043】
図1に示すように、パラフィン留分192は抽出器250に送られてもよい。抽出器250は、パラフィン留分192を利用して、重質留分182から脱瀝油252およびアスファルテン256を分離することができる。いくつかの実施形態では、プロセスは、毎時14キログラム(kg/hr)の速度でアスファルテン256を生成することができる。アスファルテンは、10〜15kg/時、または12〜15kg/時、または15〜20kg/時、または15〜30kg/時の速度で生成してもよい。
【0044】
抽出器250は、業界で知られている任意の適切な抽出器であってもよい。いくつかの実施形態では、抽出器250は、内部流体の温度を制御するための温度制御装置を有してもよい。いくつかの実施形態では、抽出器250は、パラフィン留分192が液相に存在するように内部流体の温度を維持するための温度制御装置を有してもよい。いくつかの実施形態では、抽出器250は、50℃〜250℃の内部流体温度を有してもよい。抽出器250は、50℃〜120℃、または75℃〜120℃、または100℃〜200℃、または50℃〜200℃の内部流体温度を有してもよい。上述のように、温度制御装置を使用して内部流体温度を適切な範囲内、例えば50℃〜250℃に維持してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、抽出器250は内部混合装置を有してもよい。内部混合装置は、任意の適切な混合装置であってもよい。いくつかの実施形態では、内部混合装置は、アンカー式ブレードを有する回転撹拌機などの回転撹拌機であってもよい。撹拌機は、パラフィン留分192と重質留分182との間の反応をさらに促進して、脱瀝油252およびアスファルテン256を生成することができる。
【0046】
さらに、反応を促進するために、いくつかの実施形態では、パラフィン留分192および重質留分182は、抽出器250内で1分〜8時間の滞留時間を有してもよい。いくつかの実施形態では、パラフィン留分192および重質留分182は、パラフィン留分192が溶剤として作用し、重質留分182と反応して脱瀝油252を生成するのを可能にするように、抽出器250内で少なくとも10分の滞留時間を有してもよい。重質留分182中のアスファルテンが軽質‐重質分離ステップ(軽質留分184中の高パラフィン濃度により引き起こされ得る)の後にすでに沈殿している場合、パラフィン留分192が重質留分182を改良し、脱瀝油252を生成することを可能にするように、抽出器内での滞留時間は少なくとも10分である必要がある。いくつかの実施形態では、滞留時間は10分〜30分または10分〜60分であってもよい。いくつかの実施形態では、抽出器250は、10分〜45分、または10分〜8時間の滞留時間を有してもよい。抽出器250は、少なくとも15分、少なくとも20分、30分、少なくとも45分、または少なくとも1時間の滞留時間を有してもよい。
【0047】
理論に縛られることなく、超臨界改良反応器150は、化合供給流132中に存在する芳香族化合物に結合した長いパラフィン鎖を分解して短いパラフィン鎖および芳香族化合物を生成することができる。全体を通して使用されるように、「長いパラフィン鎖」は、12個以上の炭素を含む炭化水素鎖を指す。全体を通して使用されるように、「短いパラフィン鎖」は、11個以下の炭素を含む炭化水素鎖を指す。長いパラフィン鎖化合物は210℃より高い沸点(例えば、約212℃の沸点を有するC
12H
26)を有してもよく、また、0℃未満の融点を有してもよい(C
12H
26は約−10℃の融点を有する)。
【0048】
いくつかの実施形態では、パラフィン留分192は、少なくとも50体積パーセント(vol%)の短鎖パラフィンの濃度を含み得る。いくつかの実施形態では、パラフィン留分192は、少なくとも50体積%より多いパラフィンを含み得る。いくつかの実施形態では、パラフィン留分192は、60体積%より多く、例えば70体積%より多く、75体積%より多く、80体積%より多く、または90体積%より多いパラフィンを含み得る。パラフィン留分192は、60体積%〜100体積%のパラフィン、または50体積%〜100体積%のパラフィンを含み得る。パラフィン留分192は、重質留分182からアスファルテンを除去するための溶剤として使用することができる。従って、いくつかの実施形態では、パラフィン留分192中の高パラフィン濃度は、より良好なアスファルテン分離をもたらす可能性がある。パラフィン留分192中の高パラフィン濃度は、重質留分182からの脱瀝油252の生成をよりもたらし、より効率的なプロセスをもたらす可能性がある。
【0049】
続いて
図2を参照すると、他の脱瀝プロセス102が示されている。
図2において、パラフィン留分192は蒸留装置210によってさらに処理される。
図2のプロセスは、
図1を参照して先に説明された実施形態のうちのいずれかに従ってもよいことを理解されたい。
図1と同様に、
図2は、超臨界改良反応器150に供給されて改良反応器生成物152を製造する化合供給流132を生成するために混合装置130内で加圧された超臨界水流126と化合する加圧加熱された炭化水素系組成物124を示す。生成物を、弁170を介して減圧して、軽重質分離器180によって少なくとも重質留分182と軽質留分184に分離される減圧流172を生成することができる。軽質留分184をガス/油/水分離器190に送って、軽質留分184をガス留分194、パラフィン留分192、および水留分196に分離してもよい。ガス/油/水分離器190は、業界で知られている任意の分離器であってもよい。いくつかの実施形態では、ガス/油/水分離器190は、より多くの分離を可能にするように入力流体の滞留時間を長くすることを可能にする複数の出口を有する長いチャンバを有してもよい。いくつかの実施形態では、解乳化剤は、分離を促進するためにガス/油/水分離器190に添加されてもよい。
【0050】
図2において、パラフィン留分192は蒸留装置210に送られて、少なくとも軽質パラフィン留分212と重質パラフィン系留分216とを生成することができる。次いで、軽質パラフィン留分212は、前述のように、抽出器250内で重質留分182と化合して、脱瀝油252およびアスファルテン256を生成することができる。軽質パラフィン留分212は、パラフィンの濃度を高めることができ、これにより、軽質パラフィン留分212を脱瀝溶剤としてより効果的なものにすることができる。軽質パラフィン留分212は、少なくとも80体積%のパラフィン、少なくとも85体積%のパラフィン、少なくとも90体積%のパラフィン、または少なくとも95体積%のパラフィンを含んでもよい。軽質パラフィン留分212は、例えば200℃未満、150℃未満、または100℃未満など、250℃未満の軽質パラフィン留分212の80%のTBPを有してもよい。理論に縛られることなく、軽質パラフィン留分212から芳香族化合物を除去することにより、軽質パラフィン留分212をより多くの重質留分182を脱瀝油252に変換するためのより効率的な溶剤にすることができる。蒸留装置210は業界で知られている任意の蒸留装置に基づいてよい。
【0051】
図3は、脱瀝プロセス103の別の実施形態を示し、このプロセスは、軽質留分184を処理するための油/水分離器220および水処理装置200をさらに含む。
図3のプロセスは、
図1及び
図2を参照して先に説明された実施形態のうちのいずれかに従ってもよいことを理解されたい。
図1及び
図2と同様に、
図3は、超臨界改良反応器150に供給されて改良反応器生成物152を製造する化合供給流132を生成するために混合装置130内で加圧された超臨界水流126と化合する加圧加熱された炭化水素系組成物124を示す。生成物を、弁170を介して減圧して、軽重質分離器180によって少なくとも重質留分182と軽質留分184に分離される減圧流172を生成することができる。
【0052】
図3において、脱瀝プロセス102は油/水分離器220を含む。
図3において、軽質留分184は、軽質留分184から水を除去して脱水軽質留分224と水留分222を生成する油/水分離器220に送られる。水留分222は水処理装置200に送られ、脱水軽質留分224は分離装置240に送られる。
【0053】
水処理装置は、任意の既知の水処理方法によって水留分222を処理することができる。水処理装置200は、濾過、脱油、脱塩、および水留分222のpHの調整を含む、任意の従来の水処理ステップに従って水留分222を処理することができる。いくつかの実施形態では、水処理装置200は、沈殿および濾過などの物理的プロセス、消毒および凝固などの化学的プロセス、緩速砂濾過などの生物学的プロセス、またはこれらの任意の組み合わせを使用して水留分222を処理してよい。さらに、水処理装置200は、塩素化、曝気、凝集、高分子電解質、沈降、または他の既知の技術を利用して水を浄化して水留分222を処理することができる。いくつかの実施形態では、水留分222は、給水を生成するための処理を受けてもよい。給水を再循環させて他のプロセスで使用しても、または超臨界水流126を生成するのに使用してもよい。水処理装置200は、業界で知られている任意の既知の水処理装置に基づいてよい。
【0054】
脱水軽質留分224は、0.5重量%以下の水または0.1重量%以下の水など、1重量%以下の水の含水量を有してもよい。いくつかの実施形態では、脱水軽質留分224は、脱水軽質留分224の粘度が380センチストークス(cSt)以下、例えば180cSt以下となるような含水量を有してもよい。
【0055】
図3に示すように、脱水軽質留分224は分離装置240に送られてもよい。分離装置240は、いくつかの実施形態では、蒸留装置または芳香族分離器としてもよい。いくつかの実施形態では、分離装置240は脱水軽質留分224をガス留分244、脱水重質油留分242および脱水パラフィン留分246に分離することができる。分離装置240は、分離装置240内の内部流体温度を制御するための温度制御装置を有してもよい。
【0056】
脱水パラフィン留分246は、重質留分182と化合してもよい。いくつかの実施形態では、脱水パラフィン留分246は、抽出器250内で重質留分182と化合してもよい。抽出器250は、脱水パラフィン留分246と重質留分182とを化合させて、脱瀝油252およびアスファルテン256を生成することができる。脱瀝油252は製品タンク260に送られてもよい。さらに、脱水重油242は、
図3に示される製品タンク260内等で、脱瀝油252と化合してもよい。
【0057】
理論に縛られることなく、極性化合物としての水はアスファルテン256の凝集に影響を与えるおそれがある。いくつかの実施形態では、アスファルテン256の条件および特性に応じて、水は凝集を促進または防止することができる。アスファルテン256は、脱水パラフィン留分246およびパラフィン留分192などのパラフィン溶剤の存在下で、凝集してマルテンから完全に分離する必要がある。重質留分182は、前述のように、2000重量ppm未満などの微量の水のみを含有してもよい。いくつかの実施形態では、重質留分182は、1000重量ppm未満の水、または800重量ppm未満の水、または500重量ppm未満の水、または100重量ppm未満の水を含有してもよい。この最小濃度の水はアスファルテン256の分離に悪影響を及ぼさない可能性がある。
【0058】
図4は、摂氏度(℃)での留分の切断終点と比較したパラフィン系体積百分率のグラフである。全体を通して使用されるように、「切断終点」は、累積真沸点曲線から決定された始点および終点に基づく留分の温度限界を指す。
【0059】
図4に示すように、100℃未満の真沸点は68体積%〜70体積%のパラフィン体積%を生成し、250℃未満の真沸点は60体積%を超えるパラフィン体積%を生成することができる。前述のように、パラフィン留分192および軽質パラフィン留分212は重質留分182からのアスファルテン256の適切な溶解度を確保するために、250℃未満の真沸点を有し60体積%を超えるパラフィン体積%を有してもよい。
【0060】
以下の実施例は、前述のように本開示の一つ以上の実施形態を例示する。実施形態の説明は、本質的に例示的なものであり、その用途または使用の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0061】
以下のシミュレーション例は前述した本開示の一つ以上の実施形態を例示する。具体的には、シミュレーション、例1は、特に
図3に示される脱瀝プロセス103の実施形態に関し、前述した実施形態に従って実行された。この方法で使用された反応条件および成分特性は、
図3で使用された名称および付番の両方によって記載されている表1に記載される。
【0062】
実施例1は油を脱瀝するプロセスであり、炭化水素系(HC系)組成物(組成物)105をポンプで加圧して、3901ポンド/平方インチゲージ(psig)の圧力で加圧(圧力)された炭化水素系組成物116を製造した。水流110も加圧して、3901psigの圧力に加圧水流118を形成した。加圧された炭化水素系組成物116を24℃から150℃の温度に予熱した。加圧水流118も20℃の温度から450℃の温度に予熱して超臨界水流126を形成した。超臨界水流126および加圧加熱された炭化水素系組成物124を供給混合機内で混合して、超臨界改良反応器に導入されて改良反応器生成物152を生成した化合供給流132を生成した。改良反応器生成物152(圧力3901psig)を減圧流172(圧力2psig)内にバルブによって減圧した。減圧流172を軽重質分離器180、フラッシュドラムに供給して、減圧流172を重質留分182と軽質留分184とに分離した。
【0063】
次いで、軽質留分184を油/水分離器に送って、軽質留分184を脱水軽質留分224と水留分222に分離した。脱水軽質留分224を分離装置に送ってガス留分194、脱水パラフィン留分246および脱水重質油留分242を生成した。脱水パラフィン留分246を抽出器内で重質留分182と化合させて、脱瀝油留分252およびアスファルテン256を生成した。
【0064】
特に、実施例1は、外部エネルギーをシステムに供給することなく、外部溶剤(外部パラフィンなど)をシステムに供給することなく、また構成成分を冷却し再加熱する必要なしに、脱瀝油を生成することができた。実施例1は、最小濃度の水を消費し、水留分222を再利用することができた。化合供給流132の非常に多くの、改良され分離された構成要素を利用することによって、実施例1は、より効率的な自立式システムにおいてより多くの燃料を生成することができ、時間と費用を節約した。
【0065】
【表1-1】
【0066】
表1は、脱瀝プロセス103において表記された構成要素の各条件、特性、および構成成分を示す。一部の特性はすべての留分に適用されず、例えば、APIおよび他の石油の特性は水留分222、および大部分の水(約56.5%)を含む軽質留分184には適用されないことを理解するべきである。
【0067】
【表1-2】
【0068】
表1の見出しに記載されているように、いくつかの構成要素は、さらなる処理または化合後にサンプリングされ試験された。例えば、脱水重油流242の一部は、軽油流内で脱パラフィンされた。同様に、脱水重油流242の一部は、脱瀝油流252と化合して化合生成物を生成した。軽油および化合生成物の特性は表1に示すとおりである。
【0069】
本開示の第1の態様は脱瀝油を製造するプロセスに関し、該プロセスは以下を含む:混合装置で超臨界水流を加圧加熱された炭化水素系組成物と化合させて化合供給流を生成する;水の臨界温度より高い温度および水の臨界圧力より高い圧力で作動する超臨界反応器に化合供給流を導入して改良生成物を生成する;改良生成物を減圧する;減圧された改良生成物を少なくとも一つの軽質留分および軽質留分より高いアスファルテン濃度を有する少なくとも一つの重質留分に分離する;軽質留分を分離器に送って少なくとも一つのガス留分、一つのパラフィン留分、および一つの水留分に分離する;パラフィン留分を重質留分と化合させてアスファルテンを除去することによって脱瀝油を製造する。
【0070】
本開示の第2の態様は第1の態様を含み、ここで、軽質留分中の炭化水素は重質留分中の炭化水素より大きいアメリカ石油協会(API)比重を有する。
【0071】
本開示の第3の態様は第1の態様または第2の態様を含み、ここで、重質留分は軽質留分より少なくとも25%高いアスファルテン濃度を有する。
【0072】
本開示の第4の態様は第1の態様〜第3の態様のいずれかを含み、ここで、重質留分は軽質留分より少なくとも75%高いアスファルテン濃度を有する。
【0073】
本開示の第5の態様は第1の態様〜第4の態様のいずれかを含み、ここで、重質留分は軽質留分より高い沸点を有する。
【0074】
本開示の第6の態様は第1の態様〜第5の態様のいずれかを含み、減圧ステップの前に改良生成物を冷却することをさらに含む。
【0075】
本開示の第7の態様は、軽質留分中の炭化水素が30°以上のAPI比重を有し、重質留分中の炭化水素が30°未満のAPI比重を有する、第1の態様〜第6の態様のいずれかを含む。
【0076】
本開示の第8の態様は、重質留分中の炭化水素が20°以上かつ30°未満のAPI比重を有する、第1の態様〜第7の態様のいずれかを含む。
【0077】
本開示の第9の態様は第1の態様〜第8の態様のいずれかを含み、水留分を水処理装置に送って供給水留分を製造することをさらに含む。
【0078】
本開示の第10の態様は第1の態様〜第9の態様のいずれかを含み、ここで、減圧された改良生成物を分離することは減圧された改良生成物を少なくとも一つの蒸留装置に送ることを含む。
【0079】
本開示の第11の態様は第1の態様〜第10の態様のいずれかを含み、ここで、減圧された改良生成物を分離することは減圧された改良生成物をフラッシュドラムに送ることを含む。
【0080】
本開示の第12の態様は第1の態様〜第11の態様のいずれかを含み、ここで、パラフィン留分を重質留分と化合させることは抽出器を用いて実行される。
【0081】
本開示の第13の態様は第12の態様を含み、ここで、抽出器は内部流体の温度を制御する温度制御装置を含む。
【0082】
本開示の第14の態様は第12の態様〜第13の態様のいずれかを含み、ここで、抽出器は50℃〜250℃の内部流体温度を有する。
【0083】
本開示の第15の態様は第12の態様〜第14の態様のいずれかを含み、ここで、抽出器は内部混合装置を含む。
【0084】
本開示の第16の態様は第15の態様を含み、ここで、内部混合装置はアンカー式ブレードを有する回転撹拌機である。
【0085】
本開示の第17の態様は第12の態様〜第16の態様のいずれかを含み、ここで、パラフィン留分と重質留分は抽出器内で1分〜8時間の滞留時間で化合する。
【0086】
本開示の第18の態様は第12の態様〜第17の態様のいずれかを含み、ここで、パラフィン留分と重質留分は抽出器内で少なくとも10分〜30分の滞留時間で化合する。
【0087】
本開示の第19の態様は第1の態様〜第18の態様のいずれかを含み、ここで、ガス留分を苛性処理装置に送って燃料ガスを生成する。
【0088】
本開示の第20の態様は第1の態様〜第19の態様のいずれかを含み、ここで、炭化水素系組成物は常圧残油、減圧残油、またはそれらの組み合わせを含む。
【0089】
本開示の第21の態様は第1の態様〜第20の態様のいずれかによるプロセスに関し、パラフィン留分を蒸留装置に送って少なくとも軽質パラフィン留分および重質パラフィン留分を製造すること、および軽質パラフィン留分を重質留分と化合させて脱瀝油留分を製造することをさらに含む。
【0090】
本開示の第22の態様は第21の態様を含み、ここで、軽質パラフィン留分は抽出器内で重質留分と化合する。
【0091】
本開示の第23の態様は第22の態様を含み、ここで、抽出器は内部流体の温度を制御する温度制御装置を含む。
【0092】
本開示の第24の態様は第22の態様または第23の態様を含み、ここで、抽出器は50℃〜250℃の内部流体温度を有する。
【0093】
本開示の第25の態様は第22の態様〜第24の態様のいずれかを含み、ここで、抽出器は内部混合装置を含む。
【0094】
本開示の第26の態様は第25の態様を含み、ここで、内部混合装置はアンカー式ブレードを有する回転撹拌機である。
【0095】
本開示の第27の態様は第22の態様〜第26の態様のいずれかを含み、ここで、パラフィン留分と重質留分は抽出器内で1分〜8時間の滞留時間で化合する。
【0096】
本開示の第28の態様は第22の態様〜第27の態様のいずれかを含み、ここで、パラフィン留分と重質留分は抽出器内で少なくとも10分〜30分の滞留時間で化合する。
【0097】
本開示の第29の態様は脱瀝油を製造するプロセスに関し、該プロセスは以下を含む:混合装置で超臨界水流を加圧加熱された炭化水素系組成物と化合させて化合供給流を生成する;水の臨界温度より高い温度および水の臨界圧力より高い圧力で作動する超臨界反応器に化合供給流を導入して改良生成物を生成する;改良生成物を減圧する;減圧された改良生成物を少なくとも一つの軽質留分および軽質留分より高いアスファルテン濃度を有する少なくとも一つの重質留分に分離する;軽質留分を油/水分離器に送って脱水軽質留分および水留分を製造する;脱水軽質留分を蒸留装置に送って脱水軽質留分を少なくとも一つのガス留分、一つの脱水パラフィン留分、および一つの脱水重油留分に分離する;脱水パラフィン留分を重質留分と化合させて少なくとも一つの脱瀝油留分を製造する。
【0098】
本開示の第30の態様は第29の態様を含み、ここで、軽質留分中の炭化水素は重質留分中の炭化水素より大きいAPI比重を有する。
【0099】
本開示の第31の態様は第29の態様〜第30の態様のいずれかを含み、ここで、重質留分は軽質留分より25%高いアスファルテン濃度を有する。
【0100】
本開示の第32の態様は第29の態様〜第31の態様のいずれかを含み、ここで、重質留分は軽質留分より75%高いアスファルテン濃度を有する。
【0101】
本開示の第33の態様は第29の態様〜第32の態様のいずれかを含み、ここで、重質留分は軽質留分より高い沸点を有する。
【0102】
本開示の第34の態様は、軽質留分中の炭化水素が30°以上のAPI比重を有し、重質留分中の炭化水素が30°未満のAPI比重を有する、第29の態様〜第33の態様のいずれかを含む。
【0103】
本開示の第35の態様は、重質留分中の炭化水素が20°以上かつ30°未満のAPI比重を有する第29の態様〜第34の態様のいずれかを含む。
【0104】
本開示の第36の態様は、脱水軽質留分の含水量が1重量%以下である第29の態様〜第35の態様のいずれかを含む。
【0105】
本開示の第37の態様は、脱水軽質留分の含水量が0.5重量%以下である第29の態様〜第36の態様のいずれかを含む。
【0106】
本開示の第38の態様は、脱水軽質留分の含水量が0.1重量%以下である第29の態様〜第37の態様のいずれかを含む。
【0107】
本開示の第39の態様は、脱水軽質留分の粘度が380センチストークス(cSt)以下である第29の態様〜第38の態様のいずれかを含む。
【0108】
本開示の第40の態様は、脱水軽質留分の粘度が180cSt以下である第29の態様〜第39の態様のいずれかを含む。
【0109】
本開示の第41の態様は第29の態様〜第40の態様のいずれかを含み、減圧ステップの前に改良生成物を冷却することをさらに含む。
【0110】
本開示の第42の態様は第29の態様〜第41の態様のいずれかを含み、水留分を水処理装置に送って供給水留分を製造することをさらに含む。
【0111】
本開示の第43の態様は第29の態様〜第42の態様のいずれかを含み、ここで、減圧された改良生成物を分離することは減圧された改良生成物を少なくとも一つの蒸留装置に送ることを含む。
【0112】
本開示の第44の態様は、減圧された改良生成物を分離することが、減圧された改良生成物をフラッシュドラムに送ることを含む、第29の態様〜第43の態様のいずれかを含む。
【0113】
本開示の第45の態様は、脱水パラフィン留分と重質留分とが抽出器において化合する、第29の態様〜第44の態様のいずれかを含む。
【0114】
本開示の第46の態様は、抽出器が内部流体の温度を制御する温度制御装置を含む第45の態様を含む。
【0115】
本開示の第47の態様は、抽出器が50℃〜250℃の内部流体温度を有する、第45の態様または第46の態様のいずれかを含む。
【0116】
本開示の第48の態様は、抽出器が内部混合装置を含む、第45の態様〜第47の態様のいずれかを含む。
【0117】
本開示の第49の態様は、内部混合装置がアンカー式ブレードを有する回転撹拌機である第48の態様を含む。
【0118】
本開示の第50の態様は、脱水パラフィン留分と重質留分とが抽出器内で1分間〜8時間の滞留時間で化合する、第29の態様〜第49の態様のいずれかを含む。
【0119】
本開示の第51の態様は、脱水パラフィン留分と重質留分とが抽出器において10分間〜30分間の滞留時間だけ化合する、第29の態様〜第50の態様のいずれかを含む。
【0120】
本開示の第52の態様は、脱瀝留分が生成物タンクに送られて脱水重油留分と化合してオイル生成物を生成する、第29の態様〜第51の態様のいずれかを含む。
【0121】
本開示の第53の態様は、ガス留分が苛性処理装置に送られて燃料ガスを生成する、第29の態様〜第52の態様のいずれかを含む。
【0122】
特許請求される主題の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に対して様々な修正および変更がなされ得ることが当業者には明らかであろう。従って、本明細書に記載される様々な実施形態の修正および変更が添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内に入る場合、本明細書は、このような修正および変更にまで及ぶことが意図される。
【0123】
全体を通して使用されるように、単数形「a(一つ)」、「an(一つ)」及び「the(前記)」は、その内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「一つ」の構成要素への言及は、その内容が明確に指示しない限り、2つ以上のこのような構成要素を有する態様を含む。
【0124】
本開示の主題をその特定の実施形態を参照して詳細に説明したが、本明細書に開示された様々な詳細は、本明細書に付随する図面の各々に特定の要素が示されている場合であっても、これらの詳細が本明細書に記載された様々な実施形態の必須構成要素である要素に関係することを意味するものではないことに留意すべきである。また、添付の特許請求の範囲で定義される実施形態を含むが、これらに限定されない本開示の範囲から逸脱することなく、修正および変更が可能であることは明らかである。より具体的には、本開示のいくつかの態様が特に有利であると特定されるが、本開示は必ずしもこれらの態様に限定されないことが考えられる。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
脱瀝油を製造するプロセスであって、
混合装置内で超臨界水流を加圧加熱された炭化水素系組成物と化合させて化合供給流を生成することと、
水の臨界温度より高い温度と水の臨界圧力より高い圧力とで作動する超臨界反応器に前記化合供給流を導入して改良生成物を生成することと、
前記改良生成物を減圧することと、
前記減圧された改良生成物を、少なくとも一つの軽質留分と、前記軽質留分より高いアスファルテン濃度を有する少なくとも一つの重質留分とに分離することと、
前記軽質留分を分離器に送って、前記軽質留分を少なくとも一つのガス留分、一つのパラフィン留分、および一つの水留分に分離することと、
前記パラフィン留分を前記重質留分と化合させてアスファルテンを除去することによって、脱瀝油を製造することと、
を含む脱瀝油を製造するプロセス。
実施形態2
前記重質留分が前記軽質留分より少なくとも25%〜75%高いアスファルテン濃度を有する、実施形態1に記載のプロセス。
実施形態3
前記軽質留分中の炭化水素が30°以上のアメリカ石油協会(API)比重を有し、前記重質留分中の炭化水素が30°未満のAPI比重を有する、実施形態1に記載のプロセス。
実施形態4
前記水留分を水処理装置に送って供給水留分を製造することをさらに含む、実施形態1に記載のプロセス。
実施形態5
前記減圧された改良生成物を分離することは、前記減圧された改良生成物を少なくとも一つの蒸留装置またはフラッシュドラムに送ることを含む、実施形態1に記載のプロセス。
実施形態6
前記パラフィン留分を前記重質留分と化合させることは抽出器を用いて実行される、実施形態1に記載のプロセス。
実施形態7
前記抽出器は内部流体の温度を50℃〜250℃に制御する温度制御装置を含む、実施形態6に記載のプロセス。
実施形態8
前記ガス留分は苛性処理装置に送られて燃料ガスを生成する、実施形態1に記載のプロセス。
実施形態9
前記パラフィン留分を蒸留装置に送って少なくとも軽質パラフィン留分および重質パラフィン留分を製造することと、
前記軽質パラフィン留分を前記重質留分と化合させて前記脱瀝油留分を製造することと、をさらに含む、実施形態1に記載のプロセス。
実施形態10
脱瀝油を製造するプロセスであって、以下を含む:
混合装置内で超臨界水流を加圧加熱された炭化水素系組成物と化合させて化合供給流を生成することと、
水の臨界温度より高い温度と水の臨界圧力より高い圧力とで作動する超臨界反応器に前記化合供給流を導入して改良生成物を生成することと、
前記改良生成物を減圧することと、
前記減圧された改良生成物を少なくとも一つの軽質留分および前記軽質留分より高いアスファルテン濃度を有する少なくとも一つの重質留分に分離することと、
前記軽質留分を油/水分離器に送って脱水軽質留分および水留分を製造することと、
前記脱水軽質留分を蒸留装置に送って前記脱水軽質留分を少なくとも一つのガス留分、一つの脱水パラフィン留分、および一つの脱水重油留分に分離することと、
前記脱水パラフィン留分を前記重質留分と化合させて少なくとも一つの脱瀝油留分を製造すること。
実施形態11
前記軽質留分中の炭化水素が前記重質留分中の炭化水素より大きいAPI比重を有する、実施形態10に記載のプロセス。
実施形態12
前記重質留分が前記軽質留分より少なくとも25%〜75%高いアスファルテン濃度を有する、実施形態10に記載のプロセス。
実施形態13
前記軽質留分中の炭化水素が30°以上のAPI比重を有し、前記重質留分中の炭化水素が30°未満のAPI比重を有する、実施形態10に記載のプロセス。
実施形態14
前記脱水軽質留分の含水量が1重量%以下である、実施形態10に記載のプロセス。
実施形態15
前記脱水軽質留分の粘度が380センチストークス(cSt)以下である、実施形態10に記載のプロセス。
実施形態16
前記水留分を水処理装置に送って供給水留分を製造することをさらに含む、実施形態10に記載のプロセス。
実施形態17
前記減圧された改良生成物を分離することが前記減圧された改良生成物を少なくとも一つの蒸留装置またはフラッシュドラムに送ることを含む、実施形態10に記載のプロセス。
実施形態18
前記脱水パラフィン留分と前記重質留分は抽出器で化合する、実施形態10に記載のプロセス。
実施形態19
前記抽出器は内部流体の温度を50℃〜250℃に制御する温度制御装置を含む、実施形態18に記載のプロセス。
実施形態20
前記脱瀝留分を生成物タンクに送って前記脱水重油留分と化合させてオイル生成物を生成する、実施形態10に記載のプロセス。
実施形態21
前記ガス留分を苛性処理装置に送って燃料ガスを生成する、実施形態10に記載のプロセス。