特許第6980806号(P6980806)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6980806コーティング材組成物、コンポーネント、および、侵食防止用コーティングの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980806
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】コーティング材組成物、コンポーネント、および、侵食防止用コーティングの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/06 20060101AFI20211202BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20211202BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20211202BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20211202BHJP
【FI】
   C09D175/06
   C09D5/08
   C09D7/41
   C09D7/61
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-553054(P2019-553054)
(86)(22)【出願日】2018年3月19日
(65)【公表番号】特表2020-515679(P2020-515679A)
(43)【公表日】2020年5月28日
(86)【国際出願番号】DE2018100239
(87)【国際公開番号】WO2018177466
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年10月23日
(31)【優先権主張番号】102017003034.0
(32)【優先日】2017年3月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】308033696
【氏名又は名称】マンキービック ゲブリュダー ウント コー(ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コー カゲー)
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインホルト,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】フライ,アンジェ−ズィビレ
(72)【発明者】
【氏名】コスタ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーナー,ヨーヒェン
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/120941(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/116376(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/103719(WO,A1)
【文献】 特開平06−017001(JP,A)
【文献】 特開2013−053235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤成分及び硬化剤成分を含む侵食防止用のコーティング材を製造するためのコーティング材組成物であって、
前記結合剤成分は、少なくとも一つの三官能性ポリカプロラクトンポリオール又は少なくとも一つのポリカーボネートジオール又は少なくとも一つの三官能性ポリカプロラクトンポリオール及び一つのポリカーボネートジオールを有し、
前記硬化剤成分は、1,5−ジイソシアナトペンタン及び/又は1,6−ジイソシアナトヘキサンと、平均官能性が1.9〜2.3であり、平均モル質量が300〜3000g/モルである少なくとも一つのポリエステルポリオール(A)、及び平均官能性が2.0〜3.0であり、平均モル質量が176〜2000g/モルである少なくとも一つのポリカプロラクトンポリエステルポリオール(B)との反応によって得られる少なくとも一つの結晶化安定性イソシアネート官能性プレポリマーを有し、
少なくとも前記結合剤成分は、針状フィラー及びケイ酸塩をフィラーとして前記コーティング材の総重量の最大45重量%含有するとともに、顔料を前記総重量の0〜35重量%、および、モレキュラーシーブを前記総重量の0.1〜15重量%さらに含有し、
未硬化の前記コーティング材組成物中に存在する不溶性固体が前記コーティング材組成物の総重量の5〜50%である
ことを特徴とするコーティング材組成物。
【請求項2】
前記結合剤成分は、更に少なくとも一つの二級ジアミンを有する
ことを特徴とする請求項1記載のコーティング材組成物。
【請求項3】
前記結合剤成分は、0.55〜1.75モル/kgのOH含有量を有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のコーティング材組成物。
【請求項4】
前記結合剤成分は、1.15モル/kgのOH含有量を有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のコーティング材組成物。
【請求項5】
前記結合剤成分は、0.42〜1.25モル/kgのNH含有量を有する
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載のコーティング材組成物。
【請求項6】
前記結合剤成分は、0.83モル/kgのNH含有量を有する
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載のコーティング材組成物。
【請求項7】
前記結合剤成分は、0.8:1〜1:1.2の、ポリアスパラギン酸エステルとポリオールとの質量比を有する
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一記載のコーティング材組成物。
【請求項8】
前記ポリエステルポリオール(A)は、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸又はその無水物と、2〜18個の炭素原子を有する多価脂肪族又は脂環式アルコールとの反応によって調製され、
前記ポリカプロラクトンポリエステルポリオール(B)は、ε−カプロラクトンと開始剤分子としての2〜18個の炭素原子を有する多価脂肪族又は脂環式アルコールとの開環重合によって調製される
ことを特徴とする請求項1ないし7いずれか一記載のコーティング材組成物。
【請求項9】
前記硬化剤成分は、1.5〜6モル/kgのNCO含有量を有する
ことを特徴とする請求項1ないし8いずれか一記載のコーティング材組成物。
【請求項10】
前記硬化剤成分は、HDI及び/又はPDIオリゴマーを更に含有する
ことを特徴とする請求項1ないし9いずれか一記載のコーティング材組成物。
【請求項11】
前記結合剤成分と前記硬化剤成分との体積混合比が0.9:1〜1:1.2である
ことを特徴とする請求項1ないし10いずれか一記載のコーティング材組成物。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一記載のコーティング材組成物を含むコーティング材を有する
ことを特徴とするコンポーネント。
【請求項13】
風力発電所若しくはヘリコプターのローターブレード、航空機の翼、又は船舶用スクリュープロペラである
ことを特徴とする請求項12記載のコンポーネント。
【請求項14】
前記コーティング材は、縁部を覆って配置される
ことを特徴とする請求項12又は13記載のコンポーネント。
【請求項15】
請求項1ないし11いずれか一記載のコーティング材組成物を使用して侵食防止用コーティングを製造する
ことを特徴とする侵食防止用コーティングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に侵食に対して安定性を有するコーティングの製造に使用するためのコーティング材組成物、これを備えるコンポーネント、および、侵食防止用コーティングの製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
侵食によって機械的ストレスに曝される物体表面は、通常、侵食防止剤でコーティングされる。用語「侵食」は、以後、気体又は液体媒体内で液滴又は粒子の形態で移動する液体又は固体物質によって生じる材料の損傷、特にその表面における損傷として定義される。侵食の周知の例は、風力発電所のローターブレード、ヘリコプター、航空機の翼及び船舶用スクリュープロペラに影響する雨、雹、塵埃及び砂である。
【0003】
侵食に対する表面の耐性は、コーティングの塗布によって達成され、当該コーティングは、一方では、衝撃力を緩衝するのに十分な弾性であり、他方では、十分な硬度及び耐摩耗性を示す。例えば、ローターブレードの様なコンポーネントの表面全体を、これらの侵食防止用コーティングでコーティングすることができる。例えば、ローターブレードの前縁の様な、コンポーネントのうち特に露出した表面領域のみをコーティングすることも可能である。
【0004】
特許文献1は、一つの結合剤及び一つの硬化剤成分を有し、侵食に対して安定性を有するコーティング材を開示しており、上記結合剤成分は、ポリカーボネートジオールとポリアスパラギン酸エステルとの組み合わせを含み、上記硬化剤成分は、脂肪族ポリエステル基を含有し、かつ5%〜23%のイソシアネート含有量を有する、一つのヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレートプレポリマーを含む。ただし、耐侵食性に悪影響を及ぼさないためには、これらのコーティング材には、オルガノシラン変性顔料及びフィラーしか使用できない。したがって、顔料及びフィラーの選択肢が限られることから、侵食防止に悪影響を与えることなくあらゆる色合いを作ることは不可能である。更に、吸水剤として通常用いられるモレキュラーシーブは、耐侵食性に重大な悪影響を及ぼすことは留意すべきである。しかし、モレキュラーシーブを使用しなければ、イソシアネート基と水との副反応による水分がある場合、コーティング材の塗布は、かなり困難である。
【0005】
特許文献2は、2成分コーティング材を開示しており、その結合剤成分は、ポリカーボネートポリオール及び窒素原子間に少なくとも一つの脂肪族基を含有する脂肪族二級アミンを含み、硬化剤成分はイソシアネート含有量が4%〜15%であるポリイソシアネート変性ポリエステルを含む。
【0006】
これらのコーティング材で作製されたコーティングは、十分な耐風化性(耐候性)を示さないことが認められた。
【0007】
用語「風化」は、以後、自然界で天候によって、及び実験室で定義された湿度条件に従うUV放射による人工的条件下において、の両方で、UV放射、温度及び湿度によって生じるコーティングへのストレスとして定義される。更に、特許文献2で定義されたコーティングは、温度の影響下で軟化し、コーティングの耐侵食性が失われる。
【0008】
風力発電所のローターブレードの表面温度は、運転中に最高で80℃に達することがあり、これは、コーティングによって達成しようとする侵食防止に著しい悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2015/120941号
【特許文献2】国際公開第2016/000845号
【特許文献3】国際公開第2016/116376号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、改善された侵食防止用コーティング、特に縁部保護コーティングの製造のためのコーティング材組成物を提供することであり、当該コーティングは、とりわけ、改善された加工性及び、より高い耐候性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、結合剤成分及び硬化剤成分を含む侵食防止用のコーティング材を製造するためのコーティング材組成物であって、前記結合剤成分は、少なくとも一つの三官能性ポリカプロラクトンポリオール又は少なくとも一つのポリカーボネートジオール又は少なくとも一つの三官能性ポリカプロラクトンポリオール及び一つのポリカーボネートジオールを有し、前記硬化剤成分は、1,5−ジイソシアナトペンタン及び/又は1,6−ジイソシアナトヘキサンと、平均官能性が1.9〜2.3であり、平均モル質量が300〜3000g/モルである少なくとも一つのポリエステルポリオール(A)、及び平均官能性が2.0〜3.0であり、平均モル質量が176〜2000g/モルである少なくとも一つのポリカプロラクトンポリエステルポリオール(B)との反応によって得られる少なくとも一つの結晶化安定性イソシアネート官能性プレポリマーを有し、少なくとも前記結合剤成分は、針状フィラー及びケイ酸塩をフィラーとしてコーティング材の総重量の最大45重量%含有するとともに、顔料を総重量の0〜35重量%、および、モレキュラーシーブを総重量の0.1〜15重量%さらに含有し、未硬化のコーティング材組成物中に存在する不溶性固体がコーティング材組成物の総重量の5〜50%であるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
用語「コーティング材」は、以後、基材上への塗布後に硬化によってコーティングを発揮する液体又はペースト状組成物として定義される。硬化プロセスは、溶媒の蒸発による乾燥及び組成物成分の化学反応の両方を含む。
【0013】
本発明によるコーティング材組成物は、結合剤成分及び硬化剤成分の2つの成分を含む。結合剤成分は、少なくとも一つの三官能性ポリカプロラクトンポリオール又は少なくとも一つのポリカーボネートジオール又は少なくとも一つのポリカプロラクトンポリオール及び一つのポリカーボネートジオールを含む。結合剤成分は、0.55〜1.75モル/kg、好ましくは0.8〜1.5モル/kg、より好ましくは約1.15モル/kgのOH含有量を有する。
【0014】
塗布されたポリカプロラクトンポリオール及びポリカーボネートジオールの物理化学的特性は、耐侵食性だけでなく良好な耐候性も達成するために重要である。本発明による好適なポリカプロラクトンポリオールは、二官能性以上、好ましくは三官能性以上の官能性を示し、この官能性は、分子が他の反応物質との間に形成できる共有結合の数を示す。ポリカプロラクトンポリオールは、数平均に基づく平均モル質量(以後、平均モル質量と呼ぶ)が、250〜2000g/モル、好ましくは300〜1500g/モル、より好ましくは330〜1000g/モルの範囲である。更に、150〜650mgKOH/g、好ましくは160〜620mgKOH/g、より好ましくは170〜590mgKOH/gの範囲のヒドロキシル数を有する。ヒドロキシル数は、以後、ミリグラム単位の水酸化カリウムの量を表し、これは物質1グラムをアセチル化したときに結合される酢酸の量に等しい。
【0015】
本発明による好適なポリカーボネートジオールは、300〜3000g/モル、好ましくは350〜2000g/モル、より好ましくは400〜1000g/モルの範囲の平均モル質量を有する。更に、35〜300mgKOH/g、好ましくは50〜280mgKOH/g、より好ましくは75〜250mgKOH/gの範囲のヒドロキシル数を有する。
【0016】
更に、結合剤成分は、少なくとも一つの二級ジアミン、好ましくは脂肪族二級アミンを含有し得る。本発明による好ましい結合剤成分は、0.42〜1.25モル/kg、より好ましくは0.6〜1.0モル/kg、最も好ましくは0.85モル/kgのNH含有量を有する。
【0017】
特に好ましい実施形態では、用いられるジアミンは、ポリアスパラギン酸エステルである。コーティング材へのポリアスパラギン酸エステルの使用は既知である。用いられるポリアスパラギン酸エステルは、二級アミノ基、特に2個の二級アミノ基を有する、ポリアミンである。上記成分は、当業者に既知又は周知の調製方法によって得ることができ、例えば、一級の、好ましくは脂肪族ジアミンを、マレイン酸若しくはフマル酸のジアルキルエステルに付加することによって、あるいは、一級の、好ましくは脂肪族アミンを、不飽和ポリエステルに付加することによって、得ることができる。アルキル基は、線状、分枝状、又は環状であってよい。
【0018】
好適なポリアスパラギン酸エステルは、以下の式(I)によって記載される。
【0019】
【化1】
(I)
【0020】
式中、R1、R2、R3及びR4は、互いに独立して1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R5は、6〜24個の炭素原子、好ましくは6〜16個の炭素原子を有する二価のアルキレン基である。
【0021】
本発明によると、非芳香族、脂肪族の使用が好ましく、飽和−ポリアスパラギン酸エステルが特に好ましい。
【0022】
特に好ましい実施形態では、R1、R2、R3及びR4はエチル基である。特に好ましいアルキレン基R5は、式(II)、(III)又は(IV)の基である。
【0023】
【化2】
(II)
【0024】
【化3】
(III)
【0025】
【化4】
(IV)
【0026】
好適なポリアスパラギン酸エステルは、例えば、Covestro Deutschland AG社(ドイツ国レーバークーゼン)のDesmophen NH製品群において入手可能である。
【0027】
本発明に従って用いられるポリアスパラギン酸エステルは、120〜300mgKOH/g、好ましくは140〜260mgKOH/gのアミン値を示し、このアミン値は、ミリグラム単位のKOHの量を示し、物質1gのアミン含有量に等しい。アミン値は、電位差滴定によって決定される。
【0028】
ポリオールとアミンとの質量比は、0.1:1〜5:1、好ましくは0.5:1〜2:1、より好ましくは0.8:1〜1.2:1、最も好ましくは0.9:1〜1.1:1にあり、特に約1:1である。本発明の定義によるポリオールとアミンとの組み合わせにより、5〜10分の範囲の特に長い可使時間が得られる一方で、温度23℃で2〜4時間という硬化時間はきわめて短い。
【0029】
特許文献3の開示のように、硬化剤成分は、少なくとも一つの結晶化安定性イソシアネート官能性ポリエステルプレポリマーを含有する。これらのプレポリマーは、2.8〜18重量%のNCO含有量、及び1.9〜3.0の平均イソシアネート官能性を有するHDIポリエステルプレポリマーである。上記プレポリマーは、1,5−ジイソシアナトペンタン及び/又は1,6−ジイソシアナトヘキサンと、平均官能性が1.9〜2.3であり、平均モル質量が300〜3000g/モルである少なくとも一つのポリエステルポリオール(A)、及び平均官能性が2.0〜3.0であり、平均モル質量が176〜2000g/モルである少なくとも一つのポリカプロラクトンポリエステルポリオール(B)との、温度20〜200℃における反応によって、イソシアネート基とヒドロキシル基との当量比4:1〜200:1に従って、得られる。ポリエステルポリオール(A)は、脂肪族ジカルボン酸及び/又はその無水物と過剰量の多官能性アルコールから調製され、その際多官能性アルコールは、多官能性アルコールの総量を基準にして少なくとも30重量%までの範囲で分枝状脂肪族ジオールである。プレポリマーに組み込まれるポリエステル成分(A)及び(B)の総量中のポリエステルポリオール(A)の割合は、15〜70重量%である。
【0030】
用いられるポリエステルポリオール(A)の調整には、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族の飽和及び不飽和ジカルボン酸又はその無水物、並びに2〜18個の炭素原子を有する多価脂肪族又は脂環式アルコールが使用される。
【0031】
好適なジカルボン酸又は無水物は、例えば、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸及びテトラヒドロフタル酸無水物であり、個別に又は互いの任意の混合物の形態いずれかで使用できる。好適な多官能性アルコールは、例えば、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ヘプタン−1,7−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ノナン−1,9−ジオール、デカン−1,10−ジオール、ドデカン−1,12−ジオール、シクロヘキサン−1,2−及び−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスシクロヘキサノール、プロパン−1,2,3−トリオール(グリセロール)、1,1,1−トリメチロールエタン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、1,1,1−トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール、低分子量ポリエーテルジオール、例えば、ジエチレングリコール及びジプロピレングリコール、並びに分枝状脂肪族ジオール、例えば、プロパン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、2−メチルプロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、ヘキサン−1,2−ジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、オクタン−1,2−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,5−ジオール、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、2,2,4−及び/又は2,4,4−トリメチルヘキサンジオール、デカン−1,2−ジオール並びにこれらの混合物である。同時に、多官能性アルコールは、使用する多官能性アルコールの総量を基準にして、少なくとも30重量%の分枝状脂肪族ジオール含有量を有する。
【0032】
好ましいポリエステルポリオール(A)は、コハク酸及び/又はアジピン酸と、エタン−1,2−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン並びに分枝状脂肪族ジオールのブタン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,5−ジオール及び2,2,4−及び/又は2,4,4−トリメチルヘキサンジオールとの反応生成物に基づくものであり、使用される多官能性アルコールの総量中の分枝状脂肪族ジオールの割合は、少なくとも30重量%に達する。
【0033】
用いられるポリカプロラクトンポリエステルポリオール(B)は、平均官能性が2.0〜3.0であり、数平均分子量が176〜2200g/モルである少なくとも一つのポリエステルポリオールからなり、それ自体が既知の方法で、ε−カプロラクトン及び開始剤分子としての単純な多価アルコールから開環により得ることができる。開環重合に使用される開始剤分子は、例えば、ポリエステルポリオール(A)の調製に好適な開始化合物の例として上に記載した二官能性若しくは三官能性アルコール、又はこれらのアルコールの任意のその他の混合物であり得る。開環重合によるε−カプロラクトンポリエステルポリオール(B)の調製は、一般的に、触媒(例えば、ルイス酸又はブレンステッド酸、有機スズ又はチタン化合物)の存在下、20〜200℃の温度で実施される。好ましいポリカプロラクトンポリエステルポリオール(B)は、ブタン−1,4−ジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、グリセロール及び/又は1,1,1−トリメチロールプロパンを開始剤分子として使用して調製されたものである。
【0034】
好適な結晶化安定性イソシアネート官能性ポリエステルプレポリマーは、800〜2500mPas、好ましくは1000〜2000mPas、より好ましくは1200〜1800mPasの動的粘度を示し、この粘度は、市販の粘度計又はレオメーターで、剪断速度100/sで、25℃において剪断粘度として決定される。更に、結晶化安定性イソシアネート官能性ポリエステルプレポリマーは、1.5〜6モル/kg、好ましくは1.8〜5.5モル/kg、より好ましくは1.9〜3.5モル/kg、最も好ましくは2〜3モル/kgのNCO含有量を有する。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、硬化剤成分は、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、及びイミノオキサジアジンジオンのような更なるHDI及び/又はPDIオリゴマーを含有する。好ましいオリゴマーは、ウレトジオン及び/又はイソシアヌレートである。
【0036】
本発明により定義されるコーティング材組成物は、コーティングをもたらし、その侵食防止特性は、配合物に含有される顔料及びフィラーのような固体による悪影響を受けない。したがって、様々な着色で所望の色合いの侵食防止用コーティングを得ることができる。更に、モレキュラーシーブのような固体添加剤を、耐侵食性に悪影響を及ぼすことなく、本発明によるコーティング材組成物に添加できることが認められた。それどころか、既知の配合物と比較して耐侵食性の改善が認められた。モレキュラーシーブは、ポリウレタンシステム(PURシステム)において吸水剤として通常使用され、その使用により、コーティング材組成物の加工特性が改善される。本発明により定義される組成物は、したがって、大気湿度が高いとき及び雨のときにも、硬化コーティングの特性に悪影響を及ぼすことなく、塗布できる。
【0037】
本発明により定義されるコーティング材組成物は、高い耐候性を有し、特に感水性が低い又は非感水性の、コーティングをもたらす。更に、上記組成物は温度に対して安定性を有し、風力発電所のローターブレードの表面が運転中に容易に到達し得る最高80℃という高温の場合でも軟化しない。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、結合剤成分及び硬化剤成分は、10:1〜0.1:1、より良好には5:1〜0.2:1、好ましくは4:1〜0.25:1、より好ましくは2:1〜0.5:1、最も好ましくは約1:1の体積混合比で用いられる。
【0039】
等体積の材料のフラックスの混合は、きわめて有効であることから、コーティング材は、カートリッジから非常に容易に塗布できる。コーティング材の均一硬化及びその結果としてコーティング特性の均一な形成のために、均質混合は重要である。
【0040】
本発明による更なる実施形態では、結合剤成分のNH基とOH基の合計と、硬化剤成分のイソシアネート基とのモル比[OH+NH]:NCOは、1:0.5〜1:2、好ましくは1:0.7〜1:1.3、より好ましくは1:0.8〜1:1.2の範囲にある。特に好ましい実施形態によると、比[OH+NH]:NCOは、化学量論的モル比の1:1に近く、例えば1:0.9〜1:1.1、好ましくは1:0.95〜1:1.05の範囲、より好ましくは約1:1である。特に好ましい実施形態に関して、結合剤成分と硬化剤成分の相対量は、ヒドロキシル基とNH基の合計とイソシアネート基とのモル比が、ほぼ等モルであるように選択される。
【0041】
結合剤成分中の低モル質量のポリカプロラクトンポリオールと高モル質量のポリカプロラクトンポリオールとの質量比を変えることで、硬化剤と結合剤成分の所望の[OH+NH]:NCO比を維持することによって、体積混合比を、約1:1という好ましい値に容易に調節することが可能となる。
【0042】
更なる実施形態では、本発明によるコーティング材は、顔料を含有し得る。好適な顔料は、当業者に既知であって一般的に使用されている有機顔料、例えば、アリールアミドイエロー、ジアリーライドイエロー、ニッケルアゾイエロー、アントラピリミジンイエロー、ピラントロンイエロー、イソインドリノンイエロー、アリールアミドオレンジ、ジアリーライドオレンジ、アゾ縮合オレンジ、アントアントロンオレンジ、ピラントロン(pyrenthrone)オレンジ、トランスペリノンオレンジ、キナクリドンオレンジ、イソインドリノンオレンジ、トルイジンレッド、リソールレッド、ナフトールASレッド、アゾ縮合レッド、ペリレンレッド、チオインジゴレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノンレッド、イソビオラントロンバイオレット、インダスレンバイオレット、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー、フタロシアニングリーン、骨炭及びアニリンブラックなどである。本発明によると、好適な顔料はまた、当業者に既知であって一般的に使用されている無機顔料、例えば、二酸化チタン、硫化亜鉛、リトポン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化鉄黄、ニッケルチタンイエロー、モリブデンオレンジ、赤酸化鉄、酸化銅、モリブデンレッド、ウルトラマリンレッド、混相赤、ミネラルバイオレット、マンガンバイオレット、ウルトラマリンバイオレット、アイアンブルー、ウルトラマリンブルー、コバルトブルー、酸化クロムグリーン、酸化クロム水和物グリーン、ウルトラマリングリーン、混相緑顔料、酸化鉄茶、混相茶、酸化鉄黒、硫化アンチモン、グラファイト、ガスブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック又はアセチレンブラックなどである。好ましいのは無機顔料、特に、二酸化チタン、硫化亜鉛、リトポン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化鉄黄、ニッケルチタンイエロー、モリブデンオレンジ、赤酸化鉄、酸化銅、モリブデンレッド、ウルトラマリンレッド、混相赤、ミネラルバイオレット、マンガンバイオレット、ウルトラマリンバイオレット、アイアンブルー、ウルトラマリンブルー、コバルトブルー、酸化クロムグリーン、酸化クロム水和物グリーン、ウルトラマリングリーン、混相緑顔料、酸化鉄茶、混相茶、酸化鉄黒、硫化アンチモン、グラファイト、ガスブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びアセチレンブラックである。とりわけ好ましい顔料は、二酸化チタン、硫化亜鉛、リトポン、酸化亜鉛、赤酸化鉄、酸化銅、モリブデンレッド、ウルトラマリンレッド、混相赤、酸化黒、ガスブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びアセチレンブラックである。顔料は、コーティング材の総重量を基準にして0〜35重量%、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは1.5〜15重量%、最も好ましくは2〜10重量%の量で使用される。
【0043】
更なる実施形態では、本発明によるコーティング材は、フィラーを含有し得る。フィラーは異なる物質と理解され、顆粒又は粉末形態で使用され、例えば、コーティング材において特定の物理的特性を達成する目的で用いられ、それぞれの塗布媒体に不溶性である。好ましいフィラーは、無機フィラー、特に、炭酸カルシウム、ドロマイト又は炭酸バリウムなどの炭酸塩、硫酸カルシウム及び硫酸バリウムなどの硫酸塩、ケイ酸塩及びフィロケイ酸塩、例えば、ウォラストナイト、タルカム、パイロフィライト、マイカ、チャイナクレー、長石、沈降ケイ酸カルシウム、沈降ケイ酸アルミニウム、沈降ケイ酸カルシウムアルミニウム、沈降ケイ酸アルミニウムナトリウム、及びムライト、ウォラストナイト、二酸化ケイ素、石英、及びクリストバライトである。本発明の文脈において、二酸化ケイ素は、ケイ酸塩群に従属する。更なる無機フィラーは、沈降シリカ又はヒュームドシリカ、並びに水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムなどの金属酸化物である。本発明による更なる実施形態では、コーティング材は、各事例において、コーティング材の総重量を基準にして、最大で45重量%、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは1〜30重量%、最も好ましくは5〜25重量%のフィラーを含有し得る。
【0044】
好ましい無機フィラーは、針状フィラー及びケイ酸塩、好ましくは針状ケイ酸塩、特にウォラストナイトである。ウォラストナイトは、周知のとおり、メタケイ酸カルシウムの一般名であり、天然のウォラストナイトでは、カルシウムイオンの最大2重量%がマグネシウム、鉄及び/又はマンガンイオンで置換されている場合がある。ウォラストナイトは、各事例において、コーティング材の総重量を基準にして、好ましくは0.1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%、最も好ましくは10〜15重量%の量で用いられる。
【0045】
更なる好ましい実施形態では、本発明により定義されるコーティング組成物は、モレキュラーシーブを含有する。モレキュラーシーブは、比較的高い内部表面及び均一な孔径を有する天然又は合成ゼオライトの名称である。その結果は、比較的高い吸着力である。したがって、モレキュラーシーブは、とりわけ、吸着剤、例えば、吸水剤として用いられる。本発明による好適なモレキュラーシーブは、2〜10オングストローム、好ましくは2.5〜4オングストローム、より好ましくは約3オングストロームの孔径を有する。本発明によるコーティング材組成物は、各事例において、コーティング材の総重量を基準にして、0.1〜15重量%、好ましくは1〜10%、より好ましくは2〜8重量%の量のモレキュラーシーブを含有する。
【0046】
本発明によるコーティング材組成物に用いられる顔料及びフィラーは、必ずしも表面処理する必要はない。未処理の固体も使用できる。
【0047】
更なる実施形態では、本発明により定義されるコーティング材は、5〜50%の範囲の充填率を有する。用語「充填率」は、以後、未硬化コーティング材組成物中に存在する不溶性固体の、コーティング材組成物の総重量を基準にした質量百分率と定義される。コーティング材は、好ましく10〜40%、より好ましくは15〜35%、最も好ましくは20〜30%の範囲の充填率を有する。特に有利なのは、約25%の充填率である。
【0048】
本発明によるコーティング材組成物の更に好ましい実施形態では、光安定剤を、各事例において、コーティング材の総重量を基準にして、最大10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは1〜3重量%の量で用いることができる。好適な光安定剤は、例えば、UV吸収剤及びラジカルスカベンジャー、例えば、置換2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−ヒドロキシフェニル−トリアジン、2−ヒドロキシベンゾフェノン及びこれらの混合物である。
【0049】
本発明によるコーティング材組成物は、ヒドロキシル基及びアミノ基とイソシアネート基との反応を触媒するための触媒も含んでもよい。
【0050】
コーティング材は、各事例において、組成物の総重量を基準にして、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.02〜1重量%の少なくとも一つの触媒を含む。好適な触媒は、既知の金属触媒、例えば、スズ、モリブデン、ジルコニウム又は亜鉛触媒並びに三級アミンなどである。特に好適な触媒は、モリブデン、ジルコニウム又は亜鉛触媒である。
【0051】
更に、本発明によるコーティング材組成物は、当業者に既知及び周知の通常の助剤、及び添加剤、例えば、湿潤剤、レオロジー添加剤又はボンディング剤、流動性改良添加剤、消泡剤及び脱気剤などを含有してもよい。添加剤及び助剤は、各事例において、コーティング材の総重量を基準にして0.1〜15重量%、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.3〜8重量%の量で用いられてもよい。
【0052】
一つの好ましい実施形態では、コーティング材組成物の成分は、無溶媒形態で配合される。結合剤及び硬化剤成分は、あるいは、一般的な溶媒で希釈され得る。非プロトン性溶媒は特に好適である。用語「非プロトン性溶媒」は、以後、分子内にイオン化可能なプロトンを持たない溶媒として定義される。本発明による好適な溶媒は、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、エーテルエステル、特に酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、n−ブタノン、メチルイソブチルケトン、メトキシプロピルアセテート、並びにキシロールである。好ましくは、使用する溶媒は、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、n−ブタノン、メチルイソブチルケトン、メトキシプロピルアセテート及びこれらの混合物である。
【0053】
上記の顔料、フィラー、モレキュラーシーブ、添加剤及び溶媒は、コーティング材組成物の結合剤成分及び硬化剤成分の両方に用いることができる。本発明によると、固体、特に顔料、フィラー及びモレキュラーシーブは、好ましくは結合剤成分中に用いられる。
【0054】
結合剤成分と硬化剤成分を混合した後、発明の定義によるコーティング材は、垂直面上に塗布された後、400μmを超えるたわみに対して抵抗を示す。
【実施例】
【0055】
表1は、本発明の実施例(E1〜E6)並びに比較例(V1〜V4)のコーティング材組成物を示す。用いた量は、重量部で示されている。
【0056】
【表1】
【0057】
使用原材料:
硬化剤成分に用いた結晶化安定性イソシアネート官能性ポリエステルプレポリマーは、特許文献3に記載されている。
【0058】
硬化剤1:
特許文献3の実施例1に記載されている結晶化安定性プレポリマーに相当し、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とポリエステルポリオール混合物との反応によって調製され、上記混合物はアジピン酸並びにジエチレングリコール及びグリセロールで開始される、ネオペンチルグリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3−ジオールとε−カプロラクトンポリエステルとの反応生成物である。
【0059】
硬化剤混合物2:
特許文献3の実施例18に記載されている、80重量部の硬化剤1と20重量部のDesmodur N 3600との混合物に相当する。
【0060】
硬化剤混合物3:
特許文献3の実施例19に記載されている、85重量部の硬化剤1と15重量部のDesmodur N 3400との混合物に相当する。
【0061】
Desmodur N 3400(Covestro Deutschland AG社):ウレトジオンを含む低粘度HDIポリイソシアネート(納入形態100%、NCO含有量:21.8%、当量:193g/val NCO、粘度(23℃):175mPas)
Desmodur N 3600(Covestro Deutschland AG社):低粘度HDI三量体(納入形態100%、NCO含有量:23.0%、当量:183g/val NCO、粘度:(23℃)1200mPas)
Desmodur N 3800(Covestro Deutschland AG社):イソシアネート末端HDIイソシアヌレートポリカプロラクトンプレポリマー(納入形態100%、NCO含有量:11.0%、当量:382g/val NCO、粘度(23℃):6000mPas)
Adiprene LFH2840(Chemtura Corp.社):イソシアネート末端HDIポリカプロラクトンプレポリマー(納入形態100%、NCO含有量:8.4%、当量:500g/val NCO、粘度(22℃):1890mPas)
Desmophen NH 1420(Covestro Deutschland AG社):ポリアスパラギン酸エステル、二官能性(納入形態100%、当量:276g/val NH)
Capa 3031(Perstorp Holding AB社):ポリカプロラクトンポリオール、三官能性(納入形態100%、OH含有量:5.56%、当量:約300g/val OH)
Ethernacoll PH 50(UBE Chemical Europe SA社):ポリカーボネートポリオール、二官能性(納入形態100%、OH含有量:6.8%、当量:約250g/val OH)
Sylosiv A3(Grace GmbH&Co.KG社):モレキュラーシーブ 3A
Kronos 2310(Kronos Titan GmbH社):二酸化チタン顔料
Tremin 939(Quarzwerke Frechen社):ウォラストナイト、粒子長対粒子直径:約8:1
合剤成分及び硬化剤成分は、相当する成分を一緒に合わせることによって、及び分散器(溶解器)内で均質に混合することによって、調製されたものである。
【0062】
.試験
硬化したコーティングを評価するため、耐侵食性及び耐候性に関する試験を、実施例E1〜E6のコーティング材及び比較例V1〜V4のコーティング材でコーティングした試験片について実施する。試験片を調製するため、試料組成物の結合剤成分と硬化剤成分を均一に混合する。このために、結合剤成分と硬化剤成分の量は、ヒドロキシル基とNH基の合計と、イソシアネート基とのモル比が、約1:1であるように選択される。
【0063】
こうして得られたコーティング材を試験片上に塗布する。試験片は、既知のポリ尿素系の細孔フィラーでプレコートされた通常の繊維ガラス強化エポキシ樹脂基材からなる。塗布したコーティング材を、温度20〜25℃及び相対湿度50%で2週間硬化する。得られる乾燥厚さは400μmである。
【0064】
.1 試験方法
耐侵食性を評価するため、コーティングした試験片に降雨侵食試験を実施する。このために、社内試験スタンドが立てられている。試験片をローター上に固定する。ローターは、降雨場を模した降雨の中で、ローターの回転軸に面した試験片端部における94m/sから、回転軸から遠い試験片端部における157m/sまでの間の規定接線速度で動く。風力エネルギーの分野でも適用される一般的な試験シナリオでは、速度140m/s及び強度30mm/hの降雨が使用される。降雨強度は、単位時間及び単位面積当たりに降る雨の体積として定義される。通常、試験中の降雨強度は試験時間に反比例する。試験時間を短くするため、140m/sの速度に対して、より大きい降雨強度が選択されている。
【0065】
水の流量は一定に保たれる。試験片のコーティング面上における回転運動中の流量は、475mm/hの降水量に相当する。平均液滴サイズは2〜3mmである。試験片は、基材が見える状態になるまで、20〜25℃の温度で、模擬降雨に曝される。加えて、試験片は、15分間隔で目視検査される。
【0066】
耐候性を評価するため、試験片は、放射、湿度及び高温の周期的適用によって自然の風化を模した人工的風化に曝される。このために、乾燥期間と凝結期間からなる試験サイクルを、1,500時間繰り返す。試験サイクルの乾燥期間中に、試験片は、60℃のブラックパネル温度において、QUV−Bランプ(313nmで最大発光)で4時間の照射に曝露される。その後の水蒸気中での4時間の凝結期間の間に、水蒸気は50℃のブラックパネル温度において、試験片上に凝結する。
【0067】
試験の分析を実行できるように、試験片に、以下の基準による目視検査を実施する:
非常に良い 眼に見える変化なし
良い わずかに膨潤、顕著な軟化なし
悪い 顕著な膨潤又は軟化、たるみはまだなし
非常に悪い たるみを伴う著しい軟化又は膨潤
【0068】
.2 結果
表2に、本発明の実施例の結果を示す。
【0069】
【表2】
【0070】
表3に、比較例の結果を示す。
【0071】
【表3】
【0072】
本発明による実施例(E1〜E6)の耐降雨侵食性及び耐候性は、比較例(V1〜V4)よりもかなり高い。