特許第6980877号(P6980877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6980877
(24)【登録日】2021年11月19日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20211202BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   H02K33/16 A
   B06B1/04 Z
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-158579(P2020-158579)
(22)【出願日】2020年9月23日
(62)【分割の表示】特願2017-247546(P2017-247546)の分割
【原出願日】2017年12月25日
(65)【公開番号】特開2020-199506(P2020-199506A)
(43)【公開日】2020年12月17日
【審査請求日】2020年9月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 義一
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥川 孝史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 雄介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 元
(72)【発明者】
【氏名】原 晃
(72)【発明者】
【氏名】山上 憲
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 起史
【審査官】 大島 等志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−200364(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0123499(US,A1)
【文献】 特開2000−050609(JP,A)
【文献】 特開2012−042017(JP,A)
【文献】 特開2009−240138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のケースと、
前記ケースの開口側を塞ぐように取り付けられたダンパカバーと、
該ケースに設けられたコイルと、
該コイルにより前記ケースの振動軸線に沿って振動する可動子と、
内周部が前記可動子に取り付けられ、外周部が前記ケースに取り付けられたダンパと、
前記ケースの開口部の端面において、前記ダンパの外周に沿って振動軸線O方向に突出する凸部と、
を有し、
前記ケースの開口部の端面と前記ダンパカバーの周縁部の端面との間で前記ダンパの外周部が挟持されている
ことを特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記凸部は、前記ダンパカバーの外周に沿って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記凸部の端面が前記ダンパカバーの端面と対向して設けられ、両者の端面の間には隙間が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記ケースが、筒状のケース本体とその開口側の端面に設けられた筒状のカバーケースとから構成され、
前記カバーケースの開口部の外周には前記凸部が設けられ、
前記カバーケースの開口部の端面と前記ダンパカバーの周縁部の端面との間で前記ダンパの外周部が挟持されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記ダンパカバーは、ケースの開口部を塞ぐ底部と、前記底部の周縁部分において前記ケースの開口部端面側に向かって設けられた周壁部とを備え、
前記ダンパの外周部は、前記周壁部の端面と前記ケースの開口部の端面との間で挟持されている
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記ダンパが、前記可動子が取り付けられる環状の支持部、前記ケースに取り付けられる円環部、前記支持部と前記円環部とを接続する複数の渦巻き状の腕部とを備えた板ばねから構成され、
前記円環部は、前記ケースの開口部の端面と前記ダンパカバーの周縁部の端面との間で挟持されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
前記ダンパカバーに貫通穴が設けられ、前記ケースにはめねじ穴が設けられ、
前記貫通穴を挿通し、前記めねじ穴に螺合するねじにより、前記ダンパの外周部が前記ダンパカバーと前記ケースとに挟持された状態で、前記ダンパカバー及び前記ダンパは、前記ケースの開口側に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項8】
前記円環部の外周縁における前記ダンパカバーの貫通穴に対応した位置には、前記ダンパの中心側に向かって形成された切り欠きが設けられ、前記ねじが前記切り欠き部分を貫通している
ことを特徴とする請求項7に記載の振動アクチュエータ。
【請求項9】
前記可動子が、マグネット、ポールピース及び錘を備えていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【請求項10】
前記ケース本体は、前記ケース本体と別部材で構成され、前記コイルを位置決めする突起を有する請求項1から請求項9のいずれかに記載の振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータに関し、更に詳しくは、可動子が重い振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
可動磁石型や可動コイル型の可動子を有した振動アクチュエータでは、往復運動をする可動子を支持するのに複数の板ばねが用いられている。
また、振動力を大きくするために、可動子に錘を付加する場合がある。この場合、可動子の質量が重く、板ばねだけでは、可動子を支持できない場合がある。特に、可動子が水平方向に振動する場合、板ばねで支持される可動子が下がり、ケースと接触し、異音が発生したり、ケースや可動子が破損したりする。
【0003】
このような場合、可動子に振動軸線に沿った方向に延出する軸を設け、この軸を軸受けで支持する場合もある(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4567409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した軸受けを用いた振動アクチュエータにおいて、以下のような問題点がある。
(1) 可動子が振動すると、軸受けと軸との摺動音(異音)が発生する。
(2) 軸受けの構造が必要となり、構造が複雑で、コストもかかる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、異音が発生しにくく、構造が簡単で、低コストの振動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決する請求項1に係る発明の振動アクチュエータは、円筒状のケースと、前記ケースの開口側を塞ぐように取り付けられたダンパカバーと、該ケースに設けられたコイルと、該コイルにより前記ケースの振動軸線に沿って振動する可動子と、内周部が前記可動子に取り付けられ、外周部が前記ケースに取り付けられたダンパと、を有し、前記ケースの開口部の端面と前記ダンパカバーの周縁部の端面との間で前記ダンパの外周部が挟持されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の特徴は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0009】
第1及び第2板ばねを、渦巻き状の腕部の渦巻き方向が同一となるように配置して用いる場合、板ばねの支持部は、板厚方向の変位につれて、その平面内で回転しようとする。このため、可動子は、振動軸線方向の変位に応じて回転する。
本発明の振動アクチュエータによれば、前記第1及び第2板ばねの渦巻き状の腕部の渦巻き方向が逆になるように、前記第1及び第2板ばねは配置されることにより、可動子は双方の板ばねから逆方向のトルクを受けることになるために、振動軸線方向に変位しても回転しない。
【0010】
次に、前記第1及び第2板ばねの複数の腕部は、力が負荷されると局所的に応力が増大する応力集中部を有し、前記各腕部の応力集中部は、前記振動軸線と直交する複数の直線上に位置している。一方、各腕部の応力集中部と隣接する部分は、発生する応力が応力集中部に比べて小さな低応力部となり、この低応力部は、応力集中部が位置する同一直線とは別の振動軸線と直交する複数の直線上に位置している。よって、可動子は、振動軸線と直交する複数の直線上に位置する低応力部により支持され、可動子が振動軸線方向に変位しても、振動軸線に対して傾かない。
【0011】
よって、可動子が振動軸線方向に変位しても、回転せず、振動軸線に対して傾かないので、異音が発生しにくく、構造が簡単で、低コストの振動アクチュエータを実現できる。
本発明の他の効果は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の振動アクチュエータの実施形態を説明する分解斜視図である。
図2図1を組み付けた際の平面図である。
図3図2の正面図である。
図4図2の背面図である。
図5図2の下面図である。
図6図3の左側面図である。
図7図2の切断線VII−VIIにおける断面図である。
図8】ケースに分割ヨークを取り付ける方法を説明する図である。
図9】分割ヨークが取り付けられたケースにコイルを取り付ける方法を説明する図である。
図10】分割ヨークとコイルとが取り付けられたケースを説明する図である。
図11図1の第1ダンパの平面図である。
図12】第1ダンパのみに荷重を加えた際、各部に発生する応力の分布を示す平面図である。
図13】第1ダンパのみに荷重を加えた際、各部に発生する応力の分布と各部の変位を示す斜視図である。
図14】第1及び第2ダンパの渦巻き状の腕部の渦巻き方向が同じになるように配置された第1及び第2ダンパに荷重を加えた際、各部に発生する応力の分布を示す平面図である。
図15】第1及び第2ダンパの渦巻き状の腕部の渦巻き方向が同じになるように配置された第1及び第2ダンパに荷重を加えた際、各部に発生する応力の分布と各部の変位を示す斜視図である。
図16】第1及び第2ダンパの渦巻き状の腕部の渦巻き方向が逆になるように配置された第1及び第2ダンパに荷重を加えた際、各部に発生する応力の分布を示す平面図である。
図17】第1及び第2ダンパの渦巻き状の腕部の渦巻き方向が逆になるように配置された第1及び第2ダンパに荷重を加えた際、各部に発生する応力の分布と各部の変位を示す斜視図である。
図18図1に示す振動アクチュエータの作動を説明する図である。
図19】他の実施形態の振動アクチュエータの作動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図を用いて実施形態を説明する。図1は本発明の振動アクチュエータの実施形態を説明する分解斜視図、図2図1を組み付けた際の平面図、図3図2の正面図、図4図2の背面図、図5図2の下面図、図6図3の左側面図、図7図2の切断線VII−VIIにおける断面図、図8はケースに分割ヨークを取り付ける方法を説明する図、図9は分割ヨークが取り付けられたケースにコイルを取り付ける方法を説明する図、図10は分割ヨークとコイルとが取り付けられたケースを説明する図、図18図1に示す振動アクチュエータの作動を説明する図、図19は他の実施形態の振動アクチュエータの作動を説明する図である。尚、図3の右側面は、図6の左側面と同一である。
(全体構成)
図1図7を用いて振動アクチュエータの全体構成を説明する。
【0014】
両端に開口を有する円筒状でABS等の樹脂でなるケース1の内部には円筒状の軟磁性材料でなるヨーク11が設けられている。ヨーク11の内周面には、ヨーク11と電気的に絶縁された状態でコイル21が取り付けられている。
ケース1の一方の開口側の端面には、ABS等の樹脂でなる円筒状の第1カバーケース31が配置される。ケース1の他方の開口側の端面には、ABS等の樹脂でなる円筒状の第2カバーケース41が配置されている。
【0015】
第1カバーケース31のケース1と反対側の開口側の端面には、ステンレスの薄板を加工してなり、ケース1の振動軸線Oに沿って可撓可能な板ばねである第1ダンパ51が配置されている。第2カバーケース41のケース1と反対側の開口側の端面には、ステンレスの薄板を加工してなり、ケース1の振動軸線Oに沿って可撓可能な板ばねである第2ダンパ61が配置されている。
【0016】
第1カバーケース31と協働して第1ダンパ51を挟むように第1ダンパカバー71が配置されている。第2カバーケース41と協働して第2ダンパ61を挟むように第2ダンパカバー81が配置されている。
第1ダンパカバー71の縁部に沿って120°ピッチで3つの貫通した穴71aが形成されている。第1カバーケース31には、第1ダンパカバー71の穴71aに対向する3つの貫通した穴31aが形成されている。ケース1の一方の開口側の端面には、第1カバーケース31の3つの穴31aに対向する3つのめねじ穴1aが形成されている。
【0017】
そして、第1ダンパカバー71の穴71a、第1カバーケース31の穴31aを挿通し、ケース1のめねじ穴1aに螺合する3本のねじ91により、第1ダンパ51の周縁部が第1ダンパカバー71と第1カバーケース31とに挟持された状態で、第1ダンパカバー71、第1ダンパ51、第1カバーケース31は、ケース1の一方の開口側に取り付けられている。即ち、第1ダンパ51は、ケース1の内面に取り付けられている。
【0018】
第2ダンパカバー81の縁部に沿って120°ピッチで3つの貫通した穴81aが形成されている。第2カバーケース41には、第2ダンパカバー81の穴81aに対向する3つの貫通した穴41aが形成されている。ケース1の他方の開口側の端面には、第2カバーケース41の3つの穴41aに対向する3つのめねじ穴(図示せず)が形成されている。
【0019】
そして、第2ダンパカバー81の穴81a、第2カバーケース41の穴41aを挿通し、ケース1の他方の開口側の端面に形成されためねじ穴に螺合する3本のねじ101により、第2ダンパ61は、第2ダンパカバー81と第2カバーケース41とに挟持された状態で、第2ダンパカバー81、第2ダンパ61、第2カバーケース41は、ケース1の他方の開口側に取り付けられている。即ち、第2ダンパ61は、ケース1の内面に取り付けられている。
【0020】
第1ダンパ51と第2ダンパ61との間には、コイル21に包囲され、振動軸線Oに沿って振動する可動子111が配置される。可動子111は、円板状のマグネット113と、マグネット113を挟むように配置された円板状の第1ポールピース115、第2ポールピース117と、マグネット113、第1ポールピース115、第2ポールピース117を挟むように配置される第1マス(錘)119、第2マス(錘)121からなっている。
【0021】
マグネット113は着磁方向が振動軸線O方向である。第1ポールピース115、第2ポールピース117は、難磁性材料でなり、マグネット113の磁気吸着力及び接着剤等により、マグネット113に取り付けられている。第1マス119、第2マス121は、非磁性体でなり、接着剤等により、第1ポールピース115、第2ポールピース117に取り付けられている。このため、可動子111を構成するマグネット113、第1ポールピース115、第2ポールピース117、第1マス119、第2マス121は一体化されている。
【0022】
第1マス119、第2マス121には、中心軸に沿って貫通した穴119a、貫通した穴121aが形成されている。また、第1ダンパ51の中心には、第1マス119の穴119aに対向し、貫通した穴51aが形成されている。同様に、第2ダンパ61の中心には、第2マス121の穴121aに対向し、貫通した穴61aが形成されている。
【0023】
そして、ピン131が第1ダンパ51の穴51aを挿通し、第1マス119の穴119aに圧入され、ピン141が第2ダンパ61の穴61aを挿通し、第2マス121の穴121aに圧入されることにより、可動子111はケース1の振動軸線Oに沿って振動可能に支持されている。
前記可動子が取り付けられる支持部、ケースの内面に取り付けられる円環部、前記支持部と前記円環部とを接続する複数の渦巻き状の腕部とからなる第1板ばね、ケース1の周面には、リード線が接続され、コイル21に電流を供給するターミナル3が形成されている。
(ケース1、ヨーク11、コイル21)
図8図10を用いて説明する
本実施形態のヨーク11は、円筒を異なる母線に沿って切断された短冊状の複数(本実施形態では3つ)の分割ヨーク13で構成されている。
【0024】
また、本実施形態のコイル21は、振動軸線Oに沿って配置され、第1コイル23、第2コイル25からなっている。第1コイル23、第2コイル25は、ヨーク11の内周面に沿って巻回されている。
ケース1の内周面には、振動軸線O方向に突出し、振動軸線O方向に延びるリブ5が等ピッチ間隔で3か所形成されている。
【0025】
各リブ5の振動軸線O方向の2つの端面には、分割ヨーク13の母線に沿った端面が当接する分割ヨーク当接面5aが形成されている。本実施形態では、リブ5は樹脂でなっているので、弾性を有している。よって、分割ヨーク13の母線に沿った2つの端面が当接する。
【0026】
分割ヨーク13の母線に沿った端面が、リブ5の分割ヨーク当接面5aに当接することで、分割ヨーク13のケース1の周方向の位置決めが成される。
また、各リブ5の可動子111のマグネット113と対向する面5bには可動子111方向に突出する突起7が形成されている。突起7のケース1の一方の開口側には、第1コイル23の開口側の端部が当接する第1コイル当接面7aが形成されている。突起7のケース1の他方の開口側には、第2コイル25の開口側の端部が当接する第2コイル当接面7bが形成されている。
【0027】
第1コイル23の開口側の端部が、リブ5の突起7の第1コイル当接面7aに当接し、第1コイル23のケース1の振動軸線O方向の位置決めがなされた状態で、接着剤等を用いて第1コイル23のヨーク11への取り付けがなされる。第2コイル25の開口側の端部が、リブ5の突起7の第2コイル当接面7bに当接し、第2コイル25のケース1の振動軸線O方向の位置決めがなされた状態で、接着剤等を用いて第2コイル25のヨーク11への取り付けがなされる。
(第1ダンパ51、第2ダンパ61)
図11を用いて、本実施形態の第1ダンパ51、第2ダンパ61について、更に詳しく説明する。尚、第1ダンパ51と第2ダンパ61とは同一形状で、取り付け方が異なるだけであるので、ここでは第1ダンパ51で説明を行い、第2ダンパ61の説明は省略する。そして、第2ダンパ61の第1ダンパ51と同一部分には、第1ダンパ51の各部分の符号に10加えた符号で説明を行う。例えば、第1ダンパ51の第1腕部が符号53である場合、第2ダンパ61の第1腕部の符号は63である。
【0028】
第1ダンパ51の中央部には、穴51aを挿通するピン131を用いて可動子111に取り付けられる支持部51bが形成されている。
第1ダンパカバー71と第1カバーケース31とに挟持され、ケース1の内面に取り付けられる第1ダンパ51の円環部51cには、ねじ91との干渉を防ぐために、3つの切り欠き51dが形成されている。
【0029】
そして、支持部51bと円環部51cとは、3つの同一形状の渦巻き状の第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57で接続されている。第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57は振動軸線Oの回りに120°ピッチで設けられている。
第1腕部53は、他の部分に比べて曲率が大きく、力が負荷されると局所的に応力が増大する第1応力集中部53a、第2応力集中部53b、第3応力集中部53cを有している。同様に、第2腕部55は、他の部分に比べて曲率が大きく、力が負荷されると局所的に応力が増大する第1応力集中部55a、第2応力集中部55b、第3応力集中部55cを有し、第3腕部57は、他の部分に比べて曲率が大きく、力が負荷されると局所的に応力が増大する第1応力集中部57a、第2応力集中部57b、第3応力集中部57cを有している。
【0030】
そして、第1腕部53の第1応力集中部53aと、第3腕部57の第2応力集中部57bと、第2腕部55の第3応力集中部55cとは、振動軸線Oと直交する第1直線L1上に位置している。また、第2腕部55の第1応力集中部55aと、第1腕部53の第2応力集中部53bと、第3腕部57の第3応力集中部57cとは、振動軸線Oと直交する第2直線L2上に位置している。更に、第3腕部57の第1応力集中部57aと、第2腕部55の第2応力集中部55bと、第1腕部55の第3応力集中部53cとは、振動軸線Oと直交する第3直線L3上に位置している。尚、第1直線L1、第2直線L2、第3直線L3は、振動軸線Oの回りに120°ピッチで位置している。
【0031】
この構成は、第2ダンパ61も有している。
そして、図1に示すように、第1ダンパ51の第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57の渦巻き方向と、第2ダンパ61の第1腕部63、第2腕部65、第3腕部67の渦巻き方向とが、逆になるように第1ダンパ51と第2ダンパ61とは配置されている。
【0032】
(作動)
図18を用いて、本実施形態の振動アクチュエータの作動を説明する。
第1コイル23、第2コイル25に通電していない状態では、第1ダンパ51、第2ダンパ61で支持される可動子111は、コイル21の中央に位置している。
【0033】
第1コイル23、第2コイル25には、交互に逆極性の磁界を発生する向きに交流を通電させる。即ち、第1コイル23、第2コイル25の隣り合う部分に同極が発生するようになっている。
図18の極性では、可動子111には下方(矢印A方向)への推力が発生し、第1コイル23、第2コイル25へ流す電流を反転させれば、可動子111には上方向(矢印B方向)への推力が発生する。
【0034】
このように、第1コイル23、第2コイル25に交流を通電させれば、可動子111はケース1、第1ダンパ51、第2ダンパ61よる付勢力を両側から受けながら、振動軸線Oに沿って振動する。
ところで、可動子111に発生する推力は、基本的にはフレミングの左手の法則に基づいて与えられる推力に準じられる。本実施形態では、第1コイル23、第2コイル25が固定されているので、可動子111に第1コイル23、第2コイル25に発生する力の反力としての推力が発生する。
【0035】
よって、推力に寄与するのは、可動子111のマグネット113の磁束の水平成分(マグネット113の軸方向に直交する成分)である。そして、ヨーク11はマグネット113の磁束の水平成分を増大するものである。
上記構成によれば、以下のような効果が得られる。
【0036】
(1) 第1ダンパ51の第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57の渦巻き方向と、第2ダンパ61の第1腕部63、第2腕部65、第3腕部67の渦巻き方向とが、同一となるように配置して用いる場合、第1ダンパ51の支持部51b、第2ダンパ61の支持部61bは、板厚方向の変位につれて、その平面内で回転しようとする。このため、可動子11は、振動軸線O方向の変位に応じて回転する。
【0037】
本実施形態では、第1ダンパ51の第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57の渦巻き方向と、第2ダンパ61の第1腕部63、第2腕部65、第3腕部67の渦巻く方向とが、逆になるように第1ダンパ51と第2ダンパ61とは配置されているので、可動子111は第1ダンパ51、第2ダンパ61から逆方向のトルクを受けることになるために、振動軸線O方向に変位しても回転しない。
【0038】
また、第1腕部53は、他の部分に比べて曲率が大きく、力が負荷されると局所的に応力が増大する第1応力集中部53a、第2応力集中部53b、第3応力集中部53cを有している。同様に、第2腕部55は、他の部分に比べて曲率が大きく、力が負荷されると局所的に応力が増大する第1応力集中部55a、第2応力集中部55b、第3応力集中部55cを有し、第3腕部57は、他の部分に比べて曲率が大きく、力が負荷されると局所的に応力が増大する第1応力集中部57a、第2応力集中部57b、第3応力集中部57cを有している。
【0039】
そして、第1腕部53の第1応力集中部53aと、第3腕部57の第2応力集中部57bと、第2腕部55の第3応力集中部55cとは、振動軸線Oと直交する第1直線L1上に位置している。また、第2腕部55の第1応力集中部55aと、第1腕部53の第2応力集中部53bと、第3腕部57の第3応力集中部57cとは、振動軸線Oと直交する第2直線L2上に位置している。更に、第3腕部57の第1応力集中部57aと、第2腕部55の第2応力集中部55bと、第1腕部55の第3応力集中部53cとは、振動軸線Oと直交する第3直線L3上に位置している。
【0040】
一方、各腕部の応力集中部と隣接する部分は、発生する応力が応力集中部に比べて小さな低応力部となり、この低応力部は、応力集中部が位置する同一直線L1、L2、L3とは別の振動軸線Oと直交し、振動軸線Oの回りに120°ピッチで位置する複数の直線L4、L5、L6上に位置している(図11の破線で示す直線L4、L5、L6参照)。よって、可動子111は、振動軸線Oと直交する直線L4、L5、L6上に位置する低応力部により支持され、可動子111が振動軸線O方向に変位しても、振動軸線Oに対して傾かない。
【0041】
よって、可動子111が振動軸線O方向に変位しても、可動子111は回転せず、振動軸線Oに対して傾かないので、異音が発生しにくく、構造が簡単で、低コストの振動アクチュエータを実現できる。
尚、本発明は上記実施形態に限定するものではない。
【0042】
上記実施形態では、応力集中部を腕部の曲率を他の部分より大きくすることで形成したが、曲率に限定するものではない。例えば、腕部に孔や切り欠きを設けても応力集中部を形成できる。
また、上記実施形態では、各腕に3つの応力集中部を形成したが、3つにするものではなく、複数、即ち2または4つ以上であってもよい。
【0043】
更に、上記実施形態では、コイル21は第1コイル23、第2コイル25の2つからなった例で説明をしたが、図19に示すように、1つのコイル221でもよい。この場合、可動子311のマグネットはラジアル方向に着磁されている。
【実施例】
【0044】
出願人は、本願発明の効果を確認するために、第1ダンパ51、第2ダンパ61に荷重を加えたときの変位、応力を有限要素法を用いて解析を行った。
尚、第1ダンパ51、第2ダンパ61を材質SUS304、厚さは0.3mm、重さ100gとし、シェル要素で解析を行った。
【0045】
(1) 第1ダンパ51のみに荷重を加えた際の解析
2.1Nの荷重を第1ダンパ51の支持部51b加えた場合、最大変位が1.981mm、最大応力が318MPaであった。
解析結果を図12図13に示す。図12は第1ダンパのみに荷重を加えた際、各部に発生する応力の分布を示す平面図、図13は第1ダンパのみに荷重を加えた際、各部に発生する応力の分布と各部の変位を示す斜視図である。
【0046】
尚、応力分布は、黒の濃度が高い箇所ほど、応力が高いことを示している。また、メッシュが切られていない部分は、初期の状態(無荷重状態)を示している。
図12に示すように、第1ダンパ51の第1腕部53の第2応力集中部53b、第3応力集中部53c、第2腕部55の第2応力集中部55b、第3応力集中部55c、第3腕部57の第2応力集中部57b、第3応力集中部57cは、濃い色で、高い応力が発生していることが分かる。一方、各腕部の応力集中部と隣接する部分は、色が薄く、発生する応力が応力集中部に比べて小さな低応力部となっていることが分かる。
【0047】
また、図13に示すように、支持部51bの変位が一番大きいことがわかる。
更に、図12図13に示すように、荷重が加えられると、第1ダンパ51の支持部51b、第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57は、固定された円環部51cに対して無荷重状態から変位していることが分かる。
【0048】
(2) 第1及び第2ダンパの渦巻き状の腕部の渦巻き方向が同じになるように配置された第1及び第2ダンパに荷重を加えた際の解析
解析結果を図14図15を用いて説明する。図14は、第1及び第2ダンパの渦巻き状の腕部の渦巻き方向が同じになるように配置された第1及び第2ダンパに荷重を加えた際、各部に発生する応力の分布を示す平面図、図15は第1及び第2ダンパの渦巻き状の腕部の渦巻き方向が同じになるように配置された第1及び第2ダンパに荷重を加えた際、各部に発生する応力の分布と各部の変位を示す斜視図である。
【0049】
尚、応力分布は、黒の濃度が高い箇所ほど、応力が高いことを示している。また、メッシュが切られていない部分は、初期の状態(無荷重状態)を示している。
本解析では、第1ダンパ51、第2ダンパ61を垂直線に沿って配置し、水平線に沿って位置する可動子111の質量を100g、重力を1Gと設定し、4.4Nの荷重を第1ダンパ51の支持部51b加えた。すると、第1ダンパ51、第2ダンパ61の最大変位が1.988mm、最大応力が329MPaであった。
【0050】
図14に示すように、第1ダンパ51の第1腕部53の第2応力集中部53b、第3応力集中部53c、第2腕部55の第2応力集中部55b、第3応力集中部55c、第3腕部57の第2応力集中部57b、第3応力集中部57cは、濃い色で、高い応力が発生していることが分かる。同様に、第2ダンパ61の第1腕部63の第2応力集中部63b、第3応力集中部63c、第2腕部65の第2応力集中部65b、第3応力集中部65c、第3腕部67の第2応力集中部67b、第3応力集中部67cは、濃い色で、高い応力が発生していることが分かる。一方、各腕部の応力集中部と隣接する部分は、色が薄く、発生する応力が応力集中部に比べて小さな低応力部となっていることが分かる。
【0051】
また、図15に示すように、支持部51b、支持部61bの変位が一番大きいことがわかる。
更に、図14に示すように、無荷重時の第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57の側部と、荷重時の第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57の側部との間には、平行な部分がない隙間S1が発生している。この隙間S1は、第1ダンパ51に荷重を加えると、各腕部の低応力部が支持部51b(中心)に向かって移動することにより発生する。その際、支持部51b、第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57が、固定された円環部51cに対して、回転しているので、平行な部分がない隙間S1となる。
【0052】
即ち、第1ダンパ51に荷重を加えると、支持部51b、第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57は、固定された円環部51cに対して、回転していることが分かる。
同様に、第2ダンパ61の支持部61b、第1腕部63、第2腕部65、第3腕部67も、固定された円環部61cに対して無荷重状態から回転していることが分かる。
【0053】
(3) 第1及び第2ダンパの渦巻き状の腕部の渦巻き方向が逆になるように配置された第1及び第2ダンパに荷重を加えた際の解析(実施形態に相当する)
解析結果を図16図17を用いて説明する。図16は第1及び第2ダンパの渦巻き状の腕部の渦巻き方向が逆になるように配置された第1及び第2ダンパに荷重を加えた際、各部に発生する応力の分布を示す平面図、図17は第1及び第2ダンパの渦巻き状の腕部の渦巻き方向が逆になるように配置された第1及び第2ダンパに荷重を加えた際、各部に発生する応力の分布と各部の変位を示す斜視図である。
【0054】
尚、応力分布は、黒の濃度が高い箇所ほど、応力が高いことを示している。また、メッシュが切られていない部分は、初期の状態(無荷重状態)を示している。
本解析では、第1ダンパ51、第2ダンパ61を垂直線に沿って配置し、水平線に沿って位置する可動子111の質量を100g、重力を1Gと設定し、4.7Nの荷重を第1ダンパ51の支持部51b加えた。すると、第1ダンパ51、第2ダンパ61の最大変位が1.985mm、最大応力が444MPaであった。
【0055】
図16に示すように、第1ダンパ51の第1腕部53の第2応力集中部53b、第3応力集中部53c、第2腕部55の第2応力集中部55b、第3応力集中部55c、第3腕部57の第2応力集中部57b、第3応力集中部57cは、濃い色で、高い応力が発生していることが分かる。同様に、第2ダンパ61の第1腕部63の第2応力集中部63b、第3応力集中部63c、第2腕部65の第2応力集中部65b、第3応力集中部65c、第3腕部67の第2応力集中部67b、第3応力集中部67cは、濃い色で、高い応力が発生していることが分かる。一方、各腕部の応力集中部と隣接する部分は、色が薄く、発生する応力が応力集中部に比べて小さな低応力部となっていることが分かる。
【0056】
また、図17に示すように、支持部51b、支持部61b変位が一番大きいことがわかる。
更に、図16に示すように、無荷重時の第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57の側部と、荷重時の第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57の側部との間には、中間部に略平行な部分を有する隙間S2が発生している。この隙間S2は、第1ダンパ51に荷重を加えると、各腕部の低応力部が支持部51b(中心)に向かって移動することにより発生する。その際、支持部51b、第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57が、固定された円環部51cに対して、回転しないので、中間部に略平行な部分を有する隙間S2となる。
【0057】
即ち、第1ダンパ51に荷重を加えると、支持部51b、第1腕部53、第2腕部55、第3腕部57は、固定された円環部51cに対して、回転しないことが分かる。
同様に、第2ダンパ61の支持部61b、第1腕部63、第2腕部65、第3腕部67も、固定された円環部61cに対して無荷重状態から回転しないことが分かる。
【符号の説明】
【0058】
1 ケース
11 ヨーク
13 分割ヨーク
21 コイル
51 第1ダンパ(板ばね)
53、63 第1腕部
55、65 第2腕部
57、67 第3腕部
61 第2ダンパ(板ばね)
111 可動子
113 マグネット
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