【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高温超電導実用化促進技術開発/高磁場マグネットシステム開発/高温超電導高安定磁場マグネットシステム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る超電導マグネットを示す断面図である。超電導マグネットは、円筒形状の超電導コイル1と、超電導コイル1を囲む輻射シールド2と、輻射シールド2を囲む真空容器3とを備えている。また、超電導マグネットは、超電導コイル1、輻射シールド2および真空容器3に渡って設けられた二段冷凍機4と、超電導コイル1と輻射シールド2とに接続された熱スイッチ5とを備えている。
【0010】
この例で、軸方向とは、超電導コイル1の中心軸線に沿った方向であり、径方向とは、超電導コイル1の中心軸線を中心とした径方向であり、周方向とは、超電導コイル1の中心軸線を中心とした周方向である。
【0011】
超電導コイル1は、超電導線が周方向に巻かれることによって形成されている。超電導線には、熱伝導部材が含まれている。熱伝導部材としては、銅、アルミニウムなどが挙げられる。超電導コイル1は、超電導コイル1の温度が10K以下になるまで冷却される。超電導コイル1は、図示しない断熱支持部材を介して、輻射シールド2に支持されている。超電導コイル1を支持する断熱支持部材は、超電導コイル1の熱伝導率よりも熱伝導率が小さい材料から構成されている。超電導コイル1を支持する断熱支持部材を構成する材料としては、ガラスファイバ強化プラスチック(GFRP;Glass Fiber Reinforced Plastic)、セラミックなどが挙げられる。
【0012】
輻射シールド2は、輻射シールド2の内部空間の形状が円筒形状となるように形成されている。輻射シールド2の内部空間には、超電導コイル1が配置されている。輻射シールド2は、輻射シールド2の温度が約50Kになるまで冷却される。輻射シールド2は、図示しない断熱支持部材を介して、真空容器3に支持されている。輻射シールド2を支持する断熱支持部材は、輻射シールド2の熱伝導率よりも熱伝導率が小さい材料から構成されている。輻射シールド2を支持する断熱支持部材を構成する材料としては、ガラスファイバ強化プラスチック、セラミックなどが挙げられる。
【0013】
真空容器3は、真空容器3の内部空間の形状が円筒形状となるように形成されている。真空容器3の内部空間には、超電導コイル1および輻射シールド2が配置されている。
【0014】
二段冷凍機4は、低温ステージ41と、高温ステージ42と、冷凍機本体43とを有している。低温ステージ41は、超電導コイル1に接続されている。低温ステージ41は、超電導コイル1の外周面であって、軸方向について中央部分に接続されている。高温ステージ42は、輻射シールド2に接続されている。高温ステージ42は、輻射シールド2の外周面であって、軸方向について中央部分に接続されている。冷凍機本体43は、ギフォード・マクマホン冷凍機、パルスチューブ冷凍機などから構成されている。冷凍機本体43が駆動することによって、低温ステージ41および高温ステージ42が冷却される。冷凍機本体43は、真空容器3に設けられている。
【0015】
冷凍機本体43が駆動することによって、低温ステージ41は、低温ステージ41の温度が10K以下になるまで冷却され、高温ステージ42は、高温ステージ42の温度が約50Kになるまで冷却される。
【0016】
熱スイッチ5の一端部は、超電導コイル1に接続されている。熱スイッチ5の他端部は、輻射シールド2に接続されている。熱スイッチ5は、複数の炭素繊維を含む炭素繊維構造体51を有している。この例では、熱スイッチ5は、炭素繊維構造体51のみから構成されている。炭素繊維構造体51は、カーボンファイバ強化プラスチック(CFRP;Cabon Fiber Reinforced Plastic)から構成されている。炭素繊維構造体51の形状は、板形状となっている。熱スイッチ5は、径方向に延びるように配置されている。
【0017】
次に、超電導マグネットの動作について説明する。冷凍機本体43の駆動が開始されることによって、低温ステージ41および高温ステージ42が冷却される。低温ステージ41が冷却されることによって、超電導コイル1が冷却される。高温ステージ42が冷却されることによって、輻射シールド2が冷却される。
【0018】
冷凍機本体43の駆動が開始された時から超電導コイル1の温度が約10Kになる時までの時間を初期冷却時間とする。冷凍機本体43の駆動が開始された時から超電導コイル1の温度が第1設定温度である約50Kになる時までの時間を第1冷却時間とする。超電導コイル1の温度が約50Kになった時から超電導コイル1の温度が第2設定温度である約10Kになる時までの時間を第2冷却時間とする。
【0019】
超電導コイル1の温度が変化することによって、炭素繊維の熱伝導率が変化する。具体的には、超電導コイル1の温度が室温である約293Kから約50Kに変化するにつれて、炭素繊維の熱伝導率が小さくなる。超電導コイル1の温度が約50Kよりも高い場合には、超電導コイル1と輻射シールド2とは、熱スイッチを介して、熱的に短絡される。したがって、この場合には、超電導コイル1の温度および輻射シールド2の温度は、互いに一致する。その結果、超電導コイル1の冷却が開始され、超電導コイル1の温度が約293Kから約50Kになるまでは、超電導コイル1および輻射シールド2は、同時に互いに同じ温度に冷却される。
【0020】
超電導コイル1の温度が約50Kである場合には、炭素繊維の熱伝導率は、約0.4W/mKとなる。超電導コイル1の温度が約50Kである場合の炭素繊維の熱伝導率は、超電導コイル1の温度が約293Kである場合の炭素繊維の熱伝導率と比較して、約1/10倍の値となる。したがって、超電導コイル1の温度が約50K以下である場合には、熱スイッチ5は、断熱材として機能する。
【0021】
超電導コイル1の温度が約50Kと約10Kとの間である場合には、超電導コイル1は、低温ステージ41によって冷却される。
【0022】
超電導コイル1の温度が約10Kになった後には、超電導マグネットの運転は、定常運転となる。超電導マグネットの運転が定常運転である場合には、輻射シールド2から熱スイッチ5を介して超電導コイル1に伝達される単位時間当たりの熱量は、数mW程度であり、一方、低温ステージ41による超電導コイル1の冷凍能力は、数W程度である。したがって、超電導コイル1の温度は上昇しない。
【0023】
次に、炭素繊維構造体51に含まれた炭素繊維の配向について説明する。
図2は、
図1の炭素繊維構造体51における温度と熱伝導率との関係を示すグラフである。炭素繊維構造体51に含まれる一対の炭素繊維は、互いに交差する2軸に沿って配置されている。この例では、炭素繊維構造体51に含まれる一対の炭素繊維は、互いに直交している。
図2では、周方向について視た場合に、2軸のそれぞれが超電導コイル1の径方向に延びた直線に対して45度傾斜している炭素繊維構造体51がAとして示されている。また、
図2では、周方向について視た場合に、2軸のそれぞれと超電導コイル1の径方向に延びた直線との間の角度が0度、90度である炭素繊維構造体51がBとして示されている。
【0024】
実施の形態1に係る超電導マグネットにおける炭素繊維構造体51では、周方向について視た場合に、径方向に延びた直線に対する2軸のそれぞれの傾斜角度が45度となっている。一方、比較例の超電導マグネットにおける炭素繊維構造体51では、周方向について視た場合に、2軸のそれぞれと超電導コイル1の径方向に延びた直線との間の角度が0度、90度である。
【0025】
比較例の超電導マグネットにおける炭素繊維構造体51では、温度が約293Kである場合の炭素繊維構造体51の熱伝導率は、温度が20Kである場合の炭素繊維構造体51の熱伝導率の80倍となっている。一方、実施の形態1に係る超電導マグネットにおける炭素繊維構造体51では、温度が約293Kである場合の炭素繊維構造体51の熱伝導率は、温度が20Kである場合の炭素繊維構造体51の熱伝導率の130倍となっている。
【0026】
実施の形態1に係る超電導マグネットにおける炭素繊維構造体51は、比較例の超電導マグネットにおける炭素繊維構造体51と比較して、温度が約50K以上である場合の熱伝導率が高い。したがって、実施の形態1に係る超電導マグネットは、比較例の超電導マグネットと比較して、超電導コイル1の温度が約293Kから約50Kになるまでの超電導コイル1の冷却時間が短い。
【0027】
超電導コイル1の温度が50K以下である場合には、超電導コイル1を構成する銅の比熱は、銅の温度が低くなるにつれて小さくなる。具体的には、温度が50Kである場合の銅の比熱は、温度が約293Kである場合の銅の比熱と比較して、約1/4倍の値となり、温度が20Kである場合の銅の比熱は、温度が約293Kである場合の銅の比熱と比較して、約1/50倍の値となる。したがって、超電導コイル1の初期冷却時間を短縮するためには、第1冷却時間を短縮することが重要である。
【0028】
炭素繊維構造体51における熱流束と同一方向の辺の長さをaとし、炭素繊維構造体51における熱流束に対する垂直方向の辺の長さをbとする。長さaに対する長さbの割合が大きくなるにつれて、炭素繊維構造体51において、超電導コイル1に接続される領域および輻射シールド2に接続される領域のそれぞれが大きくなる。したがって、長さaに対する長さbの割合を大きくすることによって、第1冷却時間が短縮される。
【0029】
熱スイッチ5は、超電導コイル1の温度が約293Kから約50Kになるまでの間では、超電導コイル1と輻射シールド2とを互いに熱的に短絡させ、超電導コイル1の温度が約50K以下では、超電導コイル1と輻射シールド2との間を互いに断熱する。
【0030】
以上説明したように、実施の形態1に係る超電導マグネットでは、炭素繊維構造体51を有する熱スイッチ5が超電導コイル1と輻射シールド2とに接続されている。これにより、熱スイッチ5は、超電導コイル1に接触する位置と超電導コイル1から離れる位置との間で移動する必要がない。したがって、超電導マグネットの構造を簡素化することができる。また、炭素繊維構造体51を有する熱スイッチ5が超電導コイル1と輻射シールド2とに接続されている。これにより、超電導コイル1の初期冷却時間を短縮することができる。
【0031】
また、実施の形態1に係る超電導マグネットでは、炭素繊維構造体51を構成する一対の炭素繊維のそれぞれは、互いに交差する2軸に沿って配置されており、2軸のそれぞれは、超電導コイル1の径方向に延びた直線に対して傾斜している。これにより、第1冷却時間を短縮して、超電導コイル1の初期冷却時間をより短縮することができる。
【0032】
また、実施の形態1に係る超電導マグネットでは、炭素繊維構造体51に含まれる一対の炭素繊維において、周方向に視た場合に、径方向に延びた直線に対する2軸のそれぞれの傾斜角度は、45度となっている。これにより、第1冷却時間を短縮して、超電導コイル1の初期冷却時間をより短縮することができる。
【0033】
また、実施の形態1に係る超電導マグネットでは、熱スイッチ5は、超電導コイル1および輻射シールド2に接続されている。これにより、熱スイッチ5は、超電導コイル1の温度に対応して、超電導コイル1と輻射シールド2とを互いに熱的に短絡させ、または、超電導コイル1と輻射シールド2との間を互いに断熱することができる。
【0034】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係る超電導マグネットにおける炭素繊維構造体を示す断面図である。炭素繊維構造体51を構成する一対の炭素繊維のそれぞれは、互いに交差する2軸に沿って配置されている。2軸のうちの一方の軸に沿って配置された炭素繊維を第1炭素繊維511とし、他方の軸に沿って配置された炭素繊維を第2炭素繊維512とする。
図3では、第1炭素繊維511が実線で示されており、第2炭素繊維512が破線で示されている。
図3では、周方向に対して垂直な面に沿って切った場合の炭素繊維構造体51の断面が示されている。
【0035】
第1炭素繊維511および第2炭素繊維512のそれぞれは、炭素繊維構造体51の側面において折り返されている。この例では、軸方向についての炭素繊維構造体51の側面において、第1炭素繊維511および第2炭素繊維512のそれぞれが折り返されている。したがって、第1炭素繊維511および第2炭素繊維512のそれぞれは、超電導コイル1と輻射シールド2とに渡って連続して配置されている。第1炭素繊維511および第2炭素繊維512のそれぞれは、超電導コイル1および輻射シールド2の両方に接続されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0036】
実施の形態1に記載したように、長さaに対する長さbの割合が大きくなるにつれて、炭素繊維構造体51において、超電導コイル1に接続される領域および輻射シールド2に接続される領域のそれぞれが大きくなる。言い換えれば、炭素繊維構造体51のアスペクト比が大きくなることによって、炭素繊維構造体51において、超電導コイル1に接続される領域および輻射シールド2に接続される領域のそれぞれが大きくなる。これにより、炭素繊維構造体51において、超電導コイル1および輻射シールド2の両方に接続される炭素繊維の数が増える。
【0037】
実施の形態2に係る超電導マグネットでは、軸方向についての炭素繊維構造体51の側面において、第1炭素繊維511および第2炭素繊維512のそれぞれが折り返されている。これにより、炭素繊維構造体51のアスペクト比を大きくすることができない場合であっても、超電導コイル1および輻射シールド2の両方に接続される第1炭素繊維511および第2炭素繊維512の数が増える。この例では、炭素繊維構造体51に含まれるすべての炭素繊維が超電導コイル1および輻射シールド2の両方に接続されている。
【0038】
以上説明したように、実施の形態2に係る超電導マグネットでは、炭素繊維は、炭素繊維構造体51の側面において折り返されている。これにより、炭素繊維構造体51において、超電導コイル1および輻射シールド2の両方に接続されている炭素繊維の割合を大きくすることができる。その結果、第1冷却時間を短縮して、超電導コイル1の初期冷却時間をより短縮することができる。
【0039】
実施の形態3.
図4は、実施の形態3に係る超電導マグネットにおける炭素繊維構造体を示す斜視図である。炭素繊維構造体51を構成する一対の炭素繊維のそれぞれは、互いに交差するように配置されている。一対の炭素繊維のうちの一方を第1炭素繊維511とし、他方の炭素繊維を第2炭素繊維512とする。
図4では、第1炭素繊維511が実線で示されており、第2炭素繊維512が破線で示されている。
【0040】
第1炭素繊維511および第2炭素繊維512のそれぞれは、径方向に延びた直線を螺旋中心線とした螺旋状に配置されている。第1炭素繊維511および第2炭素繊維512の螺旋中心線は、熱流束の方向を向いている。炭素繊維構造体51の形状は、円筒形状となっている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0041】
第1炭素繊維511および第2炭素繊維512のそれぞれは、熱流束の方向を向いた中心軸線を有する円筒面上に配置されている。第1炭素繊維511および第2炭素繊維512のそれぞれは、超電導コイル1と輻射シールド2とに渡って連続して配置されている。炭素繊維構造体51において、すべての第1炭素繊維511およびすべての第2炭素繊維512が超電導コイル1および輻射シールド2の両方に接続されている。言い換えれば、炭素繊維構造体51に含まれるすべての炭素繊維が超電導コイル1および輻射シールド2の両方に接続されている。
【0042】
以上説明したように、実施の形態3に係る超電導マグネットでは、炭素繊維は、径方向に延びた直線を螺旋中心線とした螺旋状に配置されている。これにより、実施の形態2と同様に、炭素繊維構造体51における超電導コイル1および輻射シールド2の両方に接続されている炭素繊維の割合を大きくすることができる。その結果、第1冷却時間を短縮して、超電導コイル1の初期冷却時間をより短縮することができる。
【0043】
また、実施の形態3に係る超電導マグネットでは、炭素繊維は、径方向に延びた直線を螺旋中心線とした螺旋状に配置されている。これにより、炭素繊維が熱流束の方向に延びた場合の超電導マグネットを比較して、炭素繊維の長さを大きくすることができる。したがって、超電導マグネットの定常運転時において、熱スイッチ5による超電導コイル1と輻射シールド2との間の断熱性能を向上させることができる。その結果、超電導マグネットの定常運転時において、熱スイッチ5を介して輻射シールド2から超電導コイル1への熱の伝達量を低減させることができ、超電導コイル1を効率的に冷却することができる。
【0044】
実施の形態4.
図5は、実施の形態4に係る超電導マグネットの要部を示す断面図である。
図5では、超電導マグネットにおける上側半分のみが示されている。低温ステージ41は、超電導コイル1の外周面であって、軸方向について端部側の部分に接続されている。高温ステージ42は、輻射シールド2の外周面であって、軸方向について端部側の部分に接続されている。熱スイッチ5は、輻射シールド2の内周面であって、軸方向について中央側の部分に接続されている。また、熱スイッチ5は、超電導コイル1の外周面であって、軸方向について中央側の部分に接続されている。熱スイッチ5は、炭素繊維構造体51と、第1連結具52と、第2連結具53とを有している。
【0045】
図6は、
図5の熱スイッチ5を示す断面図である。
図7は、
図6の熱スイッチ5を示す平面図である。
図6では、軸方向に対して垂直な面に沿って切った場合の熱スイッチ5の断面が示されている。熱スイッチ5は、複数の炭素繊維構造体51を有している。第1連結具52は、超電導コイル1と複数の炭素繊維構造体51とに接続されている。第1連結具52は、熱伝導率が比較的高い金属から構成されている。第1連結具52を構成する金属としては、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
【0046】
第2連結具53は、輻射シールド2と複数の炭素繊維構造体51とに接続されている。第2連結具53は、熱伝導率が比較的高い金属から構成されている。第2連結具53を構成する金属としては、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
【0047】
第1連結具52と炭素繊維構造体51との間の接触熱抵抗を小さくするためには、第1連結具52と炭素繊維構造体51との間の接触面積を大きくする必要がある。第1連結具52は、複数の炭素繊維構造体51のそれぞれを炭素繊維構造体51の厚さ方向について挟んでいる。第1連結具52と炭素繊維構造体51との間の接続の方法は、接着剤を用いる方法、ボルトを用いる方法などが挙げられる。
【0048】
第2連結具53と炭素繊維構造体51との間の接触熱抵抗を小さくするためには、第2連結具53と炭素繊維構造体51との間の接触面積を大きくする必要がある。第2連結具53は、複数の炭素繊維構造体51のそれぞれを炭素繊維構造体51の厚さ方向について挟んでいる。第2連結具53と炭素繊維構造体51との間の接続の方法は、接着剤を用いる方法、ボルトを用いる方法などが挙げられる。その他の構成は、実施の形態1から実施の形態3までと同様である。
【0049】
以上説明したように、実施の形態4に係る超電導マグネットでは、第1連結具52が超電導コイル1と炭素繊維構造体51とに接続され、第2連結具53が輻射シールド2と炭素繊維構造体51とに接続されている。これにより、熱スイッチ5と超電導コイル1との間の接触熱抵抗および熱スイッチ5と輻射シールド2との間の接触熱抵抗を小さくすることができる。
【0050】
実施の形態5.
図8は、実施の形態5に係る超電導マグネットの要部を示す断面図である。
図8では、超電導マグネットにおける上側半分のみが示されている。実施の形態1から実施の形態4では、熱スイッチ5が超電導コイル1および輻射シールド2のそれぞれに接続されている。一方、実施の形態5では、熱スイッチ5が低温ステージ41および高温ステージ42のそれぞれに接続されている。低温ステージ41および高温ステージ42を介して、熱スイッチ5は、超電導コイル1の温度に対応して、超電導コイル1と輻射シールド2とを互いに熱的に短絡させ、または、超電導コイル1と輻射シールド2との間を互いに断熱する。その他の構成は、実施の形態1から実施の形態4までと同様である。
【0051】
以上説明したように、実施の形態5に係る超電導マグネットでは、熱スイッチ5が低温ステージ41および高温ステージ42のそれぞれに接続されている。これにより、実施の形態1と同様に、超電導コイル1の初期冷却時間を短縮することができ、また、超電導マグネットの構造を簡素化することができる。
【0052】
なお、各実施の形態では、炭素繊維構造体51に含まれる一対の炭素繊維において、周方向に視た場合に、径方向に延びた直線に対する2軸のそれぞれの傾斜角度は、45度となっている構成について説明した。炭素繊維構造体51に含まれる一対の炭素繊維において、周方向に視た場合に、径方向に延びた直線に対する2軸のそれぞれの傾斜角度は、45度以外の角度であってもよい。
【0053】
また、各実施の形態では、炭素繊維構造体51に含まれる一対の炭素繊維において、周方向に視た場合に、径方向に延びた直線に対して2軸のそれぞれが傾斜する構成について説明した。炭素繊維構造体51に含まれる一対の炭素繊維において、軸方向に視た場合に、径方向に延びた直線に対して2軸のそれぞれが傾斜する構成であってもよい。
超電導マグネットの構造を簡素化することができる超電導マグネットを得る。この超電導マグネットは、超電導コイルと、超電導コイルを囲む輻射シールドと、輻射シールドを囲む真空容器と、超電導コイルと輻射シールドとに接続され、炭素繊維を含む炭素繊維構造体を有する熱スイッチとを備え、炭素繊維構造体は、互いに直交する2軸に沿って配置された一対の炭素繊維を含み、2軸のそれぞれは、超電導コイルの周方向について視た場合に、超電導コイルの径方向に延びた直線に対して傾斜している。