(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、適宜図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
[半導体封止用樹脂組成物]
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、クリストバライトを含む(C)無機充填材と、を含むものである。本実施形態において、α線カウンターを用いて測定された当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物におけるα線量は、0.005cph/cm
2以下とすることができる。
【0012】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、基板上に搭載された半導体素子(半導体チップ等)を封止する封止樹脂層を形成するために用いられる。当該封止樹脂層は、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の硬化体(封止材)で構成される。
【0013】
ここで、半導体素子の薄型化や微細化・高集積化に応じて、制御安定性の要求水準が高まってきている。
これに対して、本発明者が検討した結果、不純物の含有量を低減させたクリストバライトを用いることにより、封止材から放出されるα線量を所定値以下に制御することができることが判明した。また、当該クリストバライトの分散性を高めることにより、封止材中におけるα線量放出量のバラツキが低減されることが判明した。以上により、薄型化した半導体素子の制御安定性に優れた封止材を提供することができる。
【0014】
ここで、半導体素子の微細化・高集積化に応じて、メモリ素子に蓄積され電荷の大きさも小さくなるため、外部か放出されるα線による予期しない影響(例えばデータ変化等)が生じやすくなってきている。同様に、半導体素子に流れる電流の大きさも小さくなるため、α線により生じるノイズが相対的に大きくなり誤作動を生じやすくなってきている。これに対して、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物によれば、このような微細化・高集積化した半導体素子(とくにメモリ素子)に対して、優れた制御安定性を実現することができる。
【0015】
また、半導体素子の薄層化に応じて、半導体装置の反りによる信頼性への影響が生じやすくなっている。これに対して、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、後述するように、半導体装置の反りを十分抑制することができる。
なお、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、半導体素子以外の各種の電子部品にも適用できる。
【0016】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の組成について説明する。
【0017】
[(A)エポキシ樹脂]
本実施形態における(A)エポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。本実施形態においては、(A)エポキシ樹脂として、とくに非ハロゲン化エポキシ樹脂を採用することが好ましい。
【0018】
本実施形態において、(A)エポキシ樹脂は、たとえばビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂から選択される一種類または二種類以上を含むものである。
これらのうち、耐湿信頼性と成形性のバランスを向上させる観点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、およびトリフェノールメタン型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一つを含むことがより好ましい。また、半導体装置の反りを抑制する観点からは、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂およびノボラック型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一つを含むことがとくに好ましい。さらに流動性を向上させるためにはビフェニル型エポキシ樹脂がとくに好ましく、高温の弾性率を制御するためにはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂がとくに好ましい。
【0019】
(A)エポキシ樹脂としては、たとえば下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂、下記式(3)で表されるエポキシ樹脂、下記式(4)で表されるエポキシ樹脂、および下記式(5)で表されるエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものを用いることができる。これらの中でも、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、および下記式(4)で表されるエポキシ樹脂から選択される一種以上を含むものがより好ましい態様の一つとして挙げられる。
【0020】
【化1】
(上記式(1)中、Ar
1はフェニレン基またはナフチレン基を表し、Ar
1がナフチレン基の場合、グリシジルエーテル基はα位、β位のいずれに結合していてもよい。Ar
2はフェニレン基、ビフェニレン基またはナフチレン基のうちのいずれか1つの基を表す。R
aおよびR
bは、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を表す。gは0〜5の整数であり、hは0〜8の整数である。n
3は重合度を表し、その平均値は1〜3である。)
【0021】
【化2】
(式(2)中、複数存在するR
cは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基を表す。n
5は重合度を表し、その平均値は0〜4である。)
【0022】
【化3】
(式(3)中、複数存在するR
dおよびR
eは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。n
6は重合度を表し、その平均値は0〜4である。)
【0023】
【化4】
(式(4)中、複数存在するR
fは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。n
7は重合度を表し、その平均値は0〜4である。)
【0024】
【化5】
(式(5)中、複数存在するR
gは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。n
8は重合度を表し、その平均値は0〜4である。)
【0025】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物中における(A)エポキシ樹脂の含有量の下限値は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して、例えば8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上とすることが特に好ましい。(A)エポキシ樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、半導体封止用樹脂組成物の流動性を向上させ、成形性のさらなる向上を図ることができる。
一方で、(A)エポキシ樹脂の含有量の上限値は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して、例えば50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。(A)エポキシ樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、半導体封止用樹脂組成物を用いて形成される封止樹脂を備える半導体装置について、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。
【0026】
[(B)硬化剤]
本実施形態における(B)硬化剤は、半導体封止用樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はないが、例えば、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、メルカプタン系硬化剤、が挙げられる。これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点からフェノール系硬化剤が好ましい。
【0027】
<フェノール系硬化剤>
フェノール系硬化剤としては、半導体封止用樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒドやケトン類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂、上記したフェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂などのフェノールアラルキル樹脂、トリスフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂、などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
<アミン系硬化剤>
アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン(DETA)やトリエチレンテトラミン(TETA)やメタキシリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)やm−フェニレンジアミン(MPDA)やジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)や有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
<酸無水物系硬化剤>
酸無水物系硬化剤としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)やメチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)や無水マレイン酸などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)や無水ピロメリット酸(PMDA)やベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)、無水フタル酸などの芳香族酸無水物などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
<メルカプタン系硬化剤>
メルカプタン系硬化剤としては、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
<その他硬化剤>
その他の硬化剤としては、イソシアネートプレポリマーやブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物、カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記のうち異なる系の硬化剤の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(B)硬化剤がフェノール系硬化剤の場合、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との当量比、すなわち、エポキシ樹脂中のエポキシ基モル数/フェノール系硬化剤中のフェノール性水酸基モル数の比は、特に制限はないが、成形性と耐リフロー性に優れる半導体封止用樹脂組成物を得るために、例えば0.5以上2以下の範囲が好ましく、0.6以上1.8以下の範囲がより好ましく、0.8以上1.5以下の範囲が最も好ましい。
【0033】
[(C)無機充填材]
本実施形態の(C)無機充填材は、少なくともクリストバライトを含むものである。
【0034】
本実施形態に用いることのできるクリストバライトは、特に形状は制限されるものではなく、球状のもの、破砕状のもの、どちらでも使用することができる。本実施形態の半導体封止用樹脂組成物への充填性や分散性を高める観点から、球状クリストバライトを用いてもよい。
【0035】
本実施形態のクリストバライトは、不純物の含有量が低減されたものを用いることが好ましい。当該不純物としては、ウラン、トリウム等が挙げられる。
本実施形態において、低不純物濃度であるクリストバライトとしては、ウランおよびトリウムの不純物濃度の合計量の上限値が、例えば、10ppb以下であることが好ましく、8ppb以下であることがより好ましく、5ppb以下であることが特に好ましい。これにより、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物からなる硬化物におけるα線放出量を非常に低減することができる。一方、ウランおよびトリウムの不純物濃度の合計量の下限値は、例えば、1ppbより大きくする。
【0036】
本実施形態において、不純物濃度の定量方法としては、弗酸等の適切な処理液を用いてクリストバライトを溶解、除去した残渣水溶液をICP−MS(高周波誘導結合プラズマ質量分析)を用いて測定する手法を採用してもよい。
本明細書において、不純物濃度の含有量は、金属元素質量換算された値を指す。
なお、(C)無機充填材として、クリストバライトとシリカを併用する場合には、これらの不純物濃度の合計量を、所定値以下としてもよい。
【0037】
本実施形態におけるクリストバライトは、例えば、シリカ粒子をクリストバライト化することにより得られる。具体的には、所定のシリカ粒子を1000〜1600℃、特に好ましくは1200〜1500℃の高温で1〜50時間、特に好ましくは5〜40時間加熱し、結晶を確実に成長させた後、ゆっくりと冷却することでクリストバライト化させることができる。また、不純物が低減されたシリカ粒子を用いることにより、上述のような低不純物濃度のクリストバライトを得ることができる。具体的には、精製工程を追加することによりシリカ粒子を得てもよいし、低不純物濃度のケイ素化合物(原料)からシリカ粒子を製造してもよい。
【0038】
また、本実施形態におけるクリストバライトは、高純度非晶質のシリカを高速混合装置に入れ、高速で混合しながら、アルミニウム、チタン又はマグネシウム化合物溶液をスプレーで塗布し、当該化合物溶液のゾルもしくはスラリーでシリカの表面処理を行った後、表面処理したシリカを乾燥させ、1次粒子に解砕し、解砕した1次粒子を、例えば、1,000〜1,600℃で加熱処理することにより製造することができる。加熱処理後ゆっくりと室温まで自然放冷してもよい。また、使用する容器は不純物の少ない高純度の容器が好ましい。
【0039】
上記クリストバライトの比表面積の上限値は、窒素吸着法(BET法)により測定した比表面積が、例えば1.0m
2/g以下としてもよく、0.8m
2/g以下であることがより好ましい。これにより熱伝導率が比較的高くなる。また、クリストバライトの上記比表面積の下限値は、例えば0.05m
2/g以上であることが好ましく、0.1m
2/g以上であることがより好ましく、0.2m
2/g以上であることがさらに好ましい。これにより、半導体封止用樹脂組成物の流動性が良好であり、その成形性にボイドやバリが発生しにくくなり、パッケージの成形性が優れる。
【0040】
本実施形態のクリストバライトの平均粒径の上限値は、例えば、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、13μm以下がさらに好ましく、10μm以下が一層好ましい。これにより、半導体封止用樹脂組成物全体に偏りなくクリストバライトを分散させることができ、半導体封止用樹脂組成物の硬化物に対して、熱伝導性や耐吸湿性を効率的に付与することができる。また、クリストバライトの平均粒径の下限値は、特に限定されないが、例えば、3μm以上としてもよく、5μm以上としてもよい。これにより、半導体封止用樹脂組成物の流動性を向上させることができる。
なお、本明細書において、「平均粒径」とは体積50%平均粒子径(D
50)を指し、たとえば、(株)島津製作所製レーザー回折散乱式粒度分布計SALD−7000を使用して測定することができる。
【0041】
上記クリストバライトの含有量の下限値は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上とすることが特に好ましい。クリストバライトの含有量を上記下限値以上とすることにより、半導体封止用樹脂組成物を用いて形成される封止樹脂層を備える半導体装置について、耐熱性や耐吸湿性をより一層向上させることができる。
一方で、上記クリストバライトの含有量の上限値は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。クリストバライトの含有量を上記上限値以下とすることにより、半導体封止用樹脂組成物の高い流動性を確保することができる。また、クリストバライトの分散性を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態において、(C)無機充填材の構成材料としては、クリストバライト以外の他の無機充填材を併用することができる。併用できる無機充填材の種類は、とくに限定されないが、たとえば溶融シリカ、結晶シリカ、微粉シリカ等のシリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられ、これらのうちいずれか1種以上を使用できる。これらの中でも、汎用性に優れている観点から、シリカを併用してもよい。また、(C)無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の難燃性を付与できる成分を含有してもよい。
【0043】
(C)無機充填材として、シリカを併用する場合、たとえば異なる平均粒径(D
50)の球状シリカを二種以上併用することができる。これにより、半導体封止用樹脂組成物の硬化物の線膨張係数α
1、α
2、25℃における曲げ弾性率E
(25)や、260℃における曲げ弾性率E
(260)、収縮率S
1等の調整をさらに容易とすることができる。このため、半導体装置の反りの抑制に寄与することも可能となる。
【0044】
また、本実施形態においては、上記シリカとして、平均粒径1μm以下の微粉シリカ(ナノシリカ)を含むことが、半導体封止用樹脂組成物の充填性を向上させる観点や、半導体装置の反りを抑制する観点から、好ましい態様の一つとして挙げられる。
【0045】
(C)無機充填材全体の含有量の下限値は、例えば、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して30質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。(C)無機充填材の含有量を上記下限値以上とすることにより、半導体封止用樹脂組成物を用いて形成される封止材層の低吸湿性および低熱膨張性を向上させ、耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させることができる。一方で、(C)無機充填材の含有量の上限値は、例えば、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して88質量%以下であることが好ましく、85質量%以下とすることがより好ましく、82質量%以下とすることが特に好ましい。(C)無機充填材の含有量を上記上限値以下とすることにより、半導体封止用樹脂組成物の流動性の低下に伴う成形性の低下や、高粘度化に起因したボンディングワイヤ流れ等を抑制することが可能となる。また半導体装置の制御安定性を高めることができる。なお、(C)無機充填材の上記上限値については、上記に限られず、有機基板の線膨張係数等の物性や厚み等に合わせて適宜選択することが可能である。このような観点から、(C)無機充填材の含有量は、有機基板の種類にあわせて80質量%以下、または70質量%以下とすることが可能である。
また、(C)無機充填材全体の含有量をこのような範囲に制御することにより、硬化物の線膨張係数α
1、α
2、25℃における曲げ弾性率E
(25)や、260℃における曲げ弾性率E
(260)、収縮率S
1等の物性値を所望の範囲とすることがより容易となる。このため、半導体装置の反りの抑制に寄与することも可能となる。
【0046】
本実施形態において、(C)無機充填材として、クリストバライトとその他の無機充填材を併用した場合、併用時のクリストバライトの含有量の下限値は、(C)無機充填材全体に対して、例えば、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。これにより、半導体封止用樹脂組成物の硬化物の熱時線膨張係数を高めつつも、熱時弾性率を向上させることができる。併用時のフッ化カルシウムの含有量の上限値は、(C)無機充填材全体に対して、例えば、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。これにより、例えば、シリカ併用の効果を十分得ることができる。また半導体装置の制御安定性を高めることができる。
【0047】
[(D)硬化促進剤]
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえば(D)硬化促進剤をさらに含むことができる。(D)硬化促進剤は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、の架橋反応を促進させるものであればよく、一般の半導体封止用樹脂組成物に使用するものを用いることができる。
【0048】
本実施形態において、(D)硬化促進剤は、たとえば有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、前記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。
【0049】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0050】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0051】
【化6】
(上記一般式(6)において、Pはリン原子を表す。R
4、R
5、R
6およびR
7は芳香族基またはアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1〜3の数、zは0〜3の数であり、かつx=yである。)
【0052】
一般式(6)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(6)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR
4、R
5、R
6およびR
7がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。上記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどの単環式フェノール類、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、アントラキノールなどの縮合多環式フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類、フェニルフェノール、ビフェノールなどの多環式フェノール類などが例示される。
【0053】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば、下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0054】
【化7】
(上記一般式(7)において、Pはリン原子を表す。R
8は炭素数1〜3のアルキル基、R
9はヒドロキシル基を表す。fは0〜5の数であり、gは0〜3の数である。)
【0055】
一般式(7)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0056】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば、下記一般式(8)で表される化合物等が挙げられる。
【0057】
【化8】
(上記一般式(8)において、Pはリン原子を表す。R
10、R
11およびR
12は炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R
13、R
14およびR
15は水素原子または炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R
14とR
15が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0058】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換またはアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0059】
また、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0060】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0061】
一般式(8)で表される化合物において、リン原子に結合するR
10、R
11およびR
12がフェニル基であり、かつR
13、R
14およびR
15が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が半導体封止用樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0062】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。
【0063】
【化9】
(上記一般式(9)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R
16、R
17、R
18およびR
19は、それぞれ、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中R
20は、基Y
2およびY
3と結合する有機基である。式中R
21は、基Y
4およびY
5と結合する有機基である。Y
2およびY
3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y
2およびY
3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y
4およびY
5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y
4およびY
5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。R
20、およびR
21は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y
2、Y
3、Y
4およびY
5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z
1は芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。)
【0064】
一般式(9)において、R
16、R
17、R
18およびR
19としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基およびシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等のアルキル基、アルコキシ基、水酸基などの置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0065】
また、一般式(9)において、R
20は、Y
2およびY
3と結合する有機基である。同様に、R
21は、基Y
4およびY
5と結合する有機基である。Y
2およびY
3はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y
2およびY
3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY
4およびY
5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y
4およびY
5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基R
20およびR
21は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y
2、Y
3、Y
4、およびY
5は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(9)中の−Y
2−R
20−Y
3−、およびY
4−R
21−Y
5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、分子内にカルボキシル基、または水酸基を少なくとも2個有する有機酸が好ましく、さらには芳香環を構成する隣接する炭素にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物が好ましく、芳香環を構成する隣接する炭素に水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物がより好ましく、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオールおよびグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0066】
また、一般式(9)中のZ
1は、芳香環または複素環を有する有機基または脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基およびオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基およびビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基等のグリシジルオキシ基、メルカプト基、アミノ基を有するアルキル基およびビニル基等の反応性置換基等が挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0067】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0068】
本実施形態において、(D)硬化促進剤の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して0.05質量%以上であることが好ましく、0.15質量%以上であることがより好ましく、0.25質量%以上であることがとくに好ましい。(D)硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、封止成形時における硬化性を効果的に向上させることができる。
一方で、(D)硬化促進剤の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。(D)硬化促進剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止成形時における流動性の向上を図ることができる。
【0069】
[(E)カップリング剤]
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえば(E)カップリング剤を含むことができる。(E)カップリング剤としては、たとえばエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を用いることができる。これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンの加水分解物等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシランまたはビニルシランのシラン系化合物がより好ましい。また、充填性や成形性をより効果的に向上させる観点からは、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランに代表される2級アミノシランを用いることが特に好ましい。
【0070】
(E)カップリング剤の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.15質量%以上であることがより好ましい。(E)カップリング剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、(C)無機充填材の分散性を良好なものとすることができる。一方で、(E)カップリング剤の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。(E)カップリング剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止成形時における半導体封止用樹脂組成物の流動性を向上させ、充填性や成形性の向上を図ることができる。
【0071】
[(F)その他の成分]
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物には、さらに必要に応じて、ハイドロタルサイト等のイオン捕捉剤;カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤;カルナバワックス等の天然ワックス、モンタン酸エステルワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤;酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
【0072】
また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえば低応力剤を含むことができる。低応力剤は、たとえばシリコーンオイル、シリコーンゴム、ポリイソプレン、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン等のポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ−ε−カプロラクトン等の熱可塑性エラストマー、ポリスルフィドゴム、およびフッ素ゴムから選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、シリコーンゴム、シリコーンオイル、およびアクリロニトリル−ブタジエンゴムのうちの少なくとも一方を含むことが、曲げ弾性率や収縮率を所望の範囲に制御して、得られる半導体パッケージの反りの発生を抑える観点から、とくに好ましい態様として選択し得る。
【0073】
この低応力剤を用いる場合、低応力剤全体の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して0.05質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましい。一方で、低応力剤の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。低応力剤の含有量をこのような範囲に制御することにより、得られる半導体パッケージの反りをより確実に抑制することができる。
【0074】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の製造方法について説明する。たとえば、まず、前述の各原料成分を、公知の手段で混合することにより混合物を得る。さらに、混合物を溶融混練することにより、混練物を得る。混練方法としては、例えば、1軸型混練押出機、2軸型混練押出機等の押出混練機や、ミキシングロール等のロール式混練機を用いることができるが、2軸型混練押出機を用いることが好ましい。冷却した後、混練物を粉粒状、顆粒状、またはタブレット状とすることができる。
【0075】
粉粒状の樹脂組成物を得る方法としては、例えば、粉砕装置により、混練物を粉砕する方法が挙げられる。混練物をシートに成形したものを粉砕してもよい。粉砕装置としては、例えば、ハンマーミル、石臼式磨砕機、ロールクラッシャー等を用いることができる。
【0076】
顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得る方法としては、例えば、混練装置の出口に小径を有するダイスを設置して、ダイスから吐出される溶融状態の混練物を、カッター等で所定の長さに切断するというホットカット法に代表される造粒法等を用いることもできる。この場合、ホットカット法等の造粒法により顆粒状または粉末状の樹脂組成物を得た後、樹脂組成物の温度があまり下がらないうちに脱気を行うことが好ましい。
【0077】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の特性について説明する。
【0078】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の硬化物におけるα線量は、0.005cph/cm
2以下であり、0.003cph/cm
2以下がより好ましく、0.001cph/cm
2以下がさらに好ましい。これにより、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の硬化物で封止された半導体素子を備える半導体装置は、長期使用においても半導体素子の誤作動を抑制することができる。このため、制御安定性に優れた半導体装置を実現することができる。上記硬化物におけるα線量は、α線カウンターを用いて測定することができる。
【0079】
また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物において、クリストバライトの含有量が、半導体封止用樹脂組成物全体に対して、5質量%以上60質量%以下であり、かつ、半導体封止用樹脂組成物の硬化物におけるα線量が、0.001cph/cm
2以下とすることができる。このように、本実施形態によれば、クリストバライトを高含有量することと、半導体封止用樹脂組成物の硬化物におけるα線量を低減することを両立することができる。このため、半導体装置の反りを抑制しつつも、α線による動作不良等の影響を抑制できるので、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、とくに薄型の半導体装置に好適に用いることができる。
【0080】
本実施形態において、上記α線量はα線カウンターを用いて測定する。例えば、測定方法として、120mm×140mm×2mmの試験片(半導体封止用樹脂組成物の硬化物)をα線カウンターで、所定の測定時間において、カウント数を計測して、単位時間あたりのカウント数の変化量(cph/cm
2)を算出できる。測定時間としては、例えば、60時間から100時間を採用してもよい。
【0081】
本実施形態では、たとえば半導体封止用樹脂組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、半導体封止用樹脂組成物の調製方法等を適切に選択することにより、上記硬化物(封止材)のα線量やそのバラツキを制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、クリストバライトの上記不純物濃度やその粒径、併用フィラーの不純物濃度やその粒径、およびこれらの含有量や含有割合、またフィラーの分散性を向上させること等が、上記α線量を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0082】
本実施形態によれば、封止材のα線量を低減することができ、さらにはそのバラツキを抑制することができる。このため、制御安定性に優れた半導体装置を実現できるとともに、その製造安定性を高めることができる。
【0083】
また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を用いることにより、半導体素子の制御安定性を向上できるとともに、半導体装置の反りを十分抑制できるため、薄層化した半導体装置において高度な信頼性を実現することができる。
【0084】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理して得られる硬化物の、ガラス転移温度以上での線膨張係数α
2の下限値は、例えば、30ppm/K以上が好ましく、35ppm/K以上がより好ましく、40ppm/K以上がさらに好ましく、50ppm/K以上がとくに好ましい。これにより、熱時における基板の線膨張係数に近づけることができる。一方、上記硬化物の線膨張係数α
2の上限値は、例えば、200ppm/K以下としてもよく、100ppm/K以下が好ましく、80ppm/K以下がよりこのましく、70ppm/K以下がさらに好ましい。これにより、熱時において、基板の線膨張係数と硬化物の線膨張係数との差が広がることを抑制できる。
【0085】
先に述べたように、昨今、特に薄型の半導体装置について、反りの発生を抑制することへの要求が高まってきている。また、半導体装置の適用範囲を拡大する観点から、熱時における反りを抑制する要求も高い。
このような要求に対し、本発明者らが鋭意検討した結果、半導体封止用樹脂組成物の硬化物について、上記線膨張係数α
2を上記特定の範囲に調整することにより、半導体素子を搭載する基板との熱膨張係数の差を緩和することができ、半導体装置全体としての反りを抑制するということを知見した。
【0086】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理することにより得られる硬化物の、260℃における曲げ弾性率E
(260)の下限値は、例えば、100MPa以上が好ましく、200MPa以上がより好ましく、300MPa以上がさらに好ましい。260℃における曲げ弾性率E
(260)を上記下限値以上とすることにより、安定的に半導体装置の反りを制御することができる。
一方、260℃における曲げ弾性率E
(260)の上限値は、特に制限されないが、たとえば1Gpa以下としてもよく、950MPa以下が好ましく、900MPa以下がより好ましい。260℃における曲げ弾性率E
(260)を上記上限値以下とすることにより、封止樹脂としての適度な柔軟性を付与することができ、外部からの応力や、熱応力を効果的に緩和し、リフロー時の耐半田信頼性等を向上させることができる。
【0087】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を用いてなる硬化物においては、上記線膨張係数α
2と260℃における曲げ弾性率E
(260)とを同時に満たすことができる。これにより、高温環境下における半導体装置全体の反りをよく低減することが可能になる。
【0088】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を、たとえば175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理することにより得られる硬化物の、ガラス転移温度未満における線膨張係数α
1の下限値は、例えば、5ppm/K以上が好ましく、10ppm/K以上がより好ましく、15ppm/K以上がさらに好ましい。一方、ガラス転移温度未満における線膨張係数α
1の上限値は、例えば、40ppm/K以下が好ましく、35ppm/K以下がより好ましく、30ppm/K以下がさらに好ましい。上記線膨張係数α
1を上記数値範囲内とすることにより、比較的低温条件下においても基板と封止樹脂との線膨張係数の差に起因した半導体パッケージにおける反りの発生を抑制することが可能となる。
【0089】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を、たとえば175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理して得られる硬化物の、25℃における曲げ弾性率E
(25)の下限値は、例えば、1.0GPa以上が好ましく、3.0GPa以上がより好ましく、5.0GPa以上がさらに好ましい。25℃における曲げ弾性率E
(25)を上記下限値以上とすることにより、室温における半導体装置の反りをより効果的に抑制することが可能となる。
一方で、上記硬化物の25℃における曲げ弾性率E
(25)の上限値は、特に限定されないが、例えば、40GPa以下が好ましく、30GPa以下が好ましく、20GPa以下がさらに好ましい。硬化物の25℃における曲げ弾性率E
(25)を上記上限値以下とすることにより、外部からの応力を効果的に緩和して、半導体装置の信頼性向上を図ることができる。
【0090】
また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理することにより得られる硬化物のガラス転移温度の下限値は、例えば、130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。ガラス転移温度を上記温度以上とすることで、熱時であっても半導体素子を安定的に封止することができる。一方、当該硬化物のガラス転移温度の上限値は、特に限定されないが、たとえば、250℃以下としてもよく、230℃以下としてもよい。
【0091】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を硬化してなる硬化物の線膨張係数α
1、α
2およびガラス転移温度は、たとえば熱機械分析装置(セイコー電子工業株式会社製、TMA100)を用い、測定温度範囲0℃〜320℃、昇温速度5℃/分の条件下にて測定することができる。260℃および25℃での曲げ弾性率の測定は、JIS K 6911に準拠して行うことができる。
【0092】
また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物において、175℃、3分で熱処理した際の収縮率S
1の下限値は、例えば、0.1%以上が好ましく、0.2%以上がより好ましく、0.3%以上がさらに好ましい。一方、上記収縮率S
1の上限値は、例えば、2.0%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましい。このように半導体封止用樹脂組成物の成形時における収縮率を特定の範囲とすることによって、有機基板等の基板の収縮量と樹脂組成物の硬化時の収縮量との整合がとれて半導体パッケージの反りが抑制された形状に安定させることができる。
【0093】
上記収縮率S
1は、たとえば次のように測定することができる。まず、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間3分の条件下で半導体封止用樹脂組成物を金型キャビティ内に注入成形して円盤状の試験片を作製する。次いで、当該試験片を25℃まで冷却する。ここで、175℃における金型キャビティの内径寸法と、25℃における試験片の外形寸法と、から以下のようにして収縮率S
1(%)を算出する。
S
1={(175℃における金型キャビティの内径寸法)−(25℃における試験片の外径寸法)}/(175℃における金型キャビティの内径寸法)×100
【0094】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物において、スパイラルフローの流動長は、例えば、135cm以上であることが好ましく、140cm以上であることがより好ましく、150cm以上であることがとくに好ましい。これにより、半導体封止用樹脂組成物を基板と半導体素子との間に充填する際の充填性をより効果的に向上させることができる。スパイラルフローの流動長の上限値は、とくに限定されないが、たとえば230cm以下としてもよく、210cm以下としてもよく、200cm以下としてもよい。上記スパイラルフローの測定は、たとえば低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS−15」)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分の条件で半導体封止用樹脂組成物を注入し、流動長を測定することにより行うことができる。本実施の形態においては、例えば、無機充填材として溶融球状シリカを用いる、エポキシ樹脂、硬化剤の軟化点を下げる、硬化促進剤の量を減らすなどにより、上記スパイラルフローを増加することができる。
【0095】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の粘度の上限値は、例えば、0.5MPa以下であることが好ましく、0.3MPa以下であることがより好ましく、0.2MPa以下であることがとくに好ましい。これにより、半導体封止用樹脂組成物を基板と半導体素子との間に充填する際の充填性をより効果的に向上させることができる。また、上記粘度の下限値は、0.03MPa以上であることが好ましく、0.04MPa以上であることがより好ましく、0.05MPaであることがとくに好ましい。これにより成形時における金型隙間からの樹脂漏れを防ぐことができる。本実施形態において、上記粘度は、たとえば矩形圧を用いて測定することができる。具体的には、低圧トランスファー成形機(日本電気(株)製40tマニュアルプレス)を用いて、金型温度175℃、注入速度177cm
3/秒の条件にて、幅13mm、厚さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に、半導体封止用樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、樹脂組成物の流動時における最低圧力を測定する。
【0096】
本実施形態の半導体装置について説明する。
本実施形態の半導体装置は、基板、半導体素子、封止樹脂層を備えるものである。
本実施形態において、基板としては、たとえばインターポーザ等の有機基板を用いることができる。半導体素子(半導体チップ)は、基板の一面上の搭載されている。半導体素子は、例えば、ワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基板と電気的に接続される。複数の半導体素子が実装されていてもよい。例えば、複数の半導体素子は、互いに離間して基板の実装面に配置されてもよいが、互いに積層して配置されていてもよい。複数の半導体素子は、異なる種類を用いてもよい。
【0097】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、基板上に搭載された半導体素子を封止する封止樹脂層を形成するために用いられる。半導体封止用樹脂組成物を用いた封止成形は、とくに限定されないが、たとえばトランスファー成形法、または圧縮成形法等が挙げられる。
【0098】
本実施形態の半導体装置としては、とくに限定されないが、たとえばQFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non−leaded Package)、SON(Small Outline Non−leaded Package)、LF−BGA(Lead Flame BGA)が挙げられる。また、BGAやCSPについては、半導体素子の上面(実装面とは反対側の天面)が封止樹脂層に覆われているオーバーモールドタイプでもよく、半導体素子の上面が封止樹脂から露出したエクスポーズドタイプのパッケージであってもよい。
【0099】
また、本実施形態に係る半導体封止用樹脂組成物は、上記のパッケージの成形に多く適用されるMAP(Mold Array Package)成形により形成される構造体にも利用することができる。当該構造体は、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を用いて、基板上に搭載される複数の半導体素子を一括して封止することにより得られる。
【0100】
本実施形態における半導体装置の反りを抑制する効果は、BGAやCSPの中でも、封止樹脂の厚さが基板の厚さよりも薄いタイプのBGAやCSP、半導体素子の上面が封止樹脂から露出したエクスポーズドタイプのBGAやCSP等の、封止樹脂が基板の膨張収縮による変形を抑制する力が十分に及ばないパッケージにおいて特に顕著となる。
【0101】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえばモールドアンダーフィル材料として用いることができる。モールドアンダーフィル材料は、基板上に配置された半導体素子の封止と、基板と半導体素子との間の隙間の充填と、を一括して行う材料である。これにより、半導体装置の製造における工数の削減を図ることができる。また、本実施形態に係る半導体封止用樹脂組成物を基板と半導体素子の間にも充填できることから、半導体装置の反りをより効果的に抑制することも可能となる。
【0102】
本実施形態においては、半導体封止用樹脂組成物を用いて形成される半導体装置の一例として、有機基板の一面上に半導体素子を搭載した半導体パッケージが挙げられる。この場合、有機基板のうちの上記一面と、半導体素子と、が半導体封止用樹脂組成物によって封止されることとなる。すなわち、片面封止型のパッケージとなる。また、有機基板の上記一面とは反対の他面には、たとえば外部接続端子として複数の半田ボールが形成される。なお、このような半導体パッケージにおいては、半導体素子の上面が封止樹脂により封止されていてもよく、封止樹脂から露出していてもよい。
【0103】
このような半導体パッケージにおいては、たとえば封止樹脂の厚さを0.4mm以下としてもよく、0.3mm以下としてもよい。これにより、半導体パッケージの薄型化を図ることができる。また、このような薄型の半導体パッケージであっても、本実施形態に係る半導体封止用樹脂組成物を用いることによって、パッケージ反りの発生を抑制することが可能となる。ここで、封止樹脂の厚さとは、有機基板の上記一面の法線方向における、上記一面を基準とした封止樹脂の厚さを指す。また、本実施形態においては、たとえば封止樹脂の厚さを、有機基板の厚さ以下とすることができる。これにより、半導体パッケージをより効率的に薄型化することができる。
【0104】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえば粉末状、顆粒状またはタブレット状である。これにより、トランスファー成形法や圧縮成形法等を用いて封止成形を行うことが可能となる。本実施形態において、粉粒体とは、粉末状または顆粒状のいずれかを指すものである。また、タブレット状の半導体封止用樹脂組成物は、Bステージ状態としてもよい。
【0105】
次に、
図1を用いて、半導体装置100について説明する。
図1は、半導体装置100の一例を示す断面図である。
【0106】
半導体装置100は、基板10と、基板10の一面上に搭載された半導体素子20と、基板10のうちの上記一面および半導体素子20とを封止する封止樹脂層30と、を備えた半導体パッケージである。すなわち、半導体装置100は、基板10のうちの上記一面とは反対の他面が封止樹脂層30によって封止されない、片面封止型の半導体パッケージである。封止樹脂層30は、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。これにより、熱時における封止樹脂層30の線膨張係数を大きくできるので、封止樹脂層30と基板10との熱時線膨張係数の差を小さくできる。そのため、高温環境での使用時において、半導体装置100の全体の反りを抑制することができる。
【0107】
本実施形態において、半導体素子20の上面は、封止樹脂層30により覆われていてもよく(
図1)、封止樹脂層30から露出していてもよい(不図示)。
【0108】
図1に示す例では、基板10には有機基板が用いられる。基板10のうち半導体素子20を搭載する表面(搭載面)とは反対側の裏面には、たとえば複数の半田ボール12が設けられる。また、半導体素子20は、たとえば基板10上にフリップチップ実装される。半導体素子20は、たとえば複数のバンプ22を介して基板10へ電気的に接続される。変形例として、半導体素子20は、ボンディングワイヤを介して基板10へ電気的に接続されていてもよい。
【0109】
図1に示す例では、半導体素子20と基板10との間の隙間は、たとえばアンダーフィル32によって充填される。アンダーフィル32としては、たとえばフィルム状または液状のアンダーフィル材料を使用することができる。アンダーフィル32と封止樹脂層30とは異なる材料で構成されていてもよいが、同一の材料で構成されていてもよい。本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、モールドアンダーフィル材料として用いることができる。このため、アンダーフィル32と封止樹脂層30とを同一材料で構成できるとともに同一工程で形成することも可能にある。具体的には、半導体素子20を半導体封止用樹脂組成物で封止する封止工程と、基板10と半導体素子20との間の隙間に半導体封止用樹脂組成物を充填する充填工程とを同一工程(一括)で実施することができる。
【0110】
本実施形態において、封止樹脂層30の厚さは、例えば、基板10の実装面(外部接続用のバンプ12が形成された面とは反対側の一面)から、封止樹脂層30の天面までの最短距離とする。なお、封止樹脂層30の厚さとは、基板10のうちの半導体素子20を搭載する一面の法線方向における、上記一面を基準とした封止樹脂層30の厚さを指す。この場合、封止樹脂層30の厚さの上限値は、たとえば、0.4mm以下としてもよく、0.3mm以下としてもよく、0.2mm以下としてもよい。一方、封止樹脂層30の厚さの下限値は、特に限定されないが、例えば、0mm以上としてもよく(エクスポーズドタイプ)、0.01mm以上としてもよい。
また、基板10の厚さの上限値は、例えば、0.8mm以下としてもよく、0.4mm以下としてもよい。一方、基板10の厚さの下限値は、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上としてもよい。
本実施形態によれば、このように半導体パッケージの薄型化を図ることができる。また、薄型の半導体パッケージであっても、本実施形態に係る半導体封止用樹脂組成物を用いて封止樹脂層30を形成することにより、半導体装置100の反りを抑制することが可能となる。また、本実施形態においては、たとえば封止樹脂層30の厚さを、基板10の厚さ以下とすることができる。これにより、半導体装置100をより効率的に薄型化することができる。
【0111】
次に、構造体102について説明する。
図2は、構造体102の一例を示す断面図である。構造体102は、MAP成形により形成された成形品である。このため、構造体102を半導体素子20毎に個片化することにより、複数の半導体パッケージが得られることとなる。
【0112】
構造体102は、基板10と、複数の半導体素子20と、封止樹脂層30と、を備えている。複数の半導体素子20は、基板10の一面上に配列されている。
図2においては、各半導体素子20が、基板10に対してフリップチップ実装される場合が例示されている。この場合、各半導体素子20は、複数のバンプ22を介して基板10へ電気的に接続される。一方で、各半導体素子20は、ボンディングワイヤを介して基板10に電気的に接続されていてもよい。なお、基板10および半導体素子20は、半導体装置100において例示したものと同様のものを用いることができる。
【0113】
図2に示す例では、各半導体素子20と基板10との間の隙間は、たとえばアンダーフィル32によって充填される。アンダーフィル32としては、たとえばフィルム状または液状のアンダーフィル材料を使用することができる。一方で、前述の半導体封止用樹脂組成物を、モールドアンダーフィル材料として用いることもできる。この場合、半導体素子20の封止と、基板10と半導体素子20との間の隙間の充填と、が一括して行われる。
【0114】
封止樹脂層30は、複数の半導体素子20と、基板10のうちの上記一面と、を封止している。この場合、基板10のうちの上記一面とは反対の他面は、封止樹脂層30により封止されない。また、封止樹脂層30は、上述した半導体封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。これにより、構造体102や、構造体102を個片化して得られる半導体パッケージの反りを抑制することができる。封止樹脂層30は、たとえば半導体封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成される。また、本実施形態において、各半導体素子20の上面は、
図2に示すように封止樹脂層30により封止されていてもよく、封止樹脂層30から露出していてもよい。
【0115】
以上、実施形態に基づき、本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0117】
各実施例、各比較例で用いた成分について、以下に示す。
(半導体封止用樹脂組成物の調製)
まず、表1に従い配合された各原材料を常温でミキサーを用いて混合した後、70〜100℃でロール混練した。次いで、得られた混練物を冷却した後、これを粉砕して半導体封止用樹脂組成物を得た。表1中における各成分の詳細は下記のとおりである。また、表1中の単位は、質量%である。
【0118】
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC−3000)
エポキシ樹脂2:トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、JER 1032H−60)
【0119】
(B)硬化剤
硬化剤1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(日本化薬(株)製、GPH−65)
硬化剤2:トリスフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7500)
【0120】
(C)無機充填材
無機充填材1:球状溶融シリカ(デンカ(株)社製、商品名「FB560」、平均粒径(D
50)30μm)
無機充填材2:クリストバライト(東海ミネラル(株)製、CR−1、平均粒径(D
50)5μm)
無機充填材3:下記の製造方法により得られた高純度の球状クリストバライト(平均粒径(D
50)7.5μm、ウラン量2.3ppb、トリウム量1ppb未満)
[無機充填材3:上記高純度の球状クリストバライトの製造方法]
シリカを高速混合装置に入れ、高速で混合しながらアルミニウム化合物溶液をスプレーで塗布し、シリカの表面処理を10分間行った。表面処理したシリカを100℃で5時間乾燥させた後、1次粒子に解砕した。解砕した1次粒子を常温から1,400℃まで6時間かけて昇温し、1,400℃で6時間維持、その後1,400℃から600℃まで6時間、600℃から200℃まで4時間かけて温度を下げた。200℃から室温までは自然放冷した。
無機充填材4:球状溶融シリカ(微粉)((株)アドマテックス製、SO−C2、平均粒径(D
50)0.5μm)
無機充填材5:球状溶融シリカ((株)アドマテックス製、SO−C5、平均粒径(D
50)1.6μm)
無機充填材6:高純度球状溶融シリカ(デンカ(株)製、FB−105X、平均粒径(D
50)10.4μm、ウラン量1ppb未満、トリウム量1ppb未満)
無機充填材7:高純度球状溶融シリカ((株)アドマテックス製、SO−E2、平均粒径(D
50)0.5μm、ウラン量1ppb未満、トリウム量1ppb未満)
無機充填材8:高純度水酸化アルミニウム(日本軽金属(株)製、BE043、平均粒径(D
50)3.0μm、ウラン量1ppb、トリウム量1ppb未満)
なお、本実施例における無機充填材の平均粒径は(株)島津製作所製レーザー回折散乱式粒度分布計SALD−7000を使用して測定した。
【0121】
(D)硬化促進剤
硬化促進剤1:下記式で表される硬化促進剤
【化10】
[硬化促進剤1の合成方法]
メタノール1800gを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン249.5g、2,3−ジヒドロキシナフタレン384.0gを加えて溶かし、次に室温攪拌下28%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液231.5gを滴下した。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド503.0gをメタノール600gに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥し、桃白色結晶の上記硬化促進剤1を得た。
【0122】
硬化促進剤2:下記式で表される硬化促進剤
【0123】
【化11】
【0124】
[硬化促進剤2の合成方法]
撹拌装置付きのセパラブルフラスコに4,4’−ビスフェノールS37.5g(0.15モル)、メタノール100mlを仕込み、室温で撹拌溶解し、更に攪拌しながら予め50mlのメタノールに水酸化ナトリウム4.0g(0.1モル)を溶解した溶液を添加した。次いで予め150mlのメタノールにテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9g(0.1モル)を溶解した溶液を加えた。しばらく攪拌を継続し、300mlのメタノールを追加した後、フラスコ内の溶液を大量の水に撹拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。沈殿を濾過、乾燥し、白色結晶の上記硬化促進剤2を得た。
【0125】
(E)カップリング剤
カップリング剤:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、CF4083)
【0126】
(F)その他の成分
離型剤:モンタン酸エステルワックス(WE―4(クラリアントジャパン(株)製))
イオンキャッチャー:ハイドロタルサイト(DHT−4H(協和化学工業(株)製))
着色剤:カーボンブラック(カーボン#5(三菱化学(株)製))
低応力剤1:シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング(株)製、FZ―3730)
低応力剤2:アクリロニトリル−ブタジエンゴム(宇部興産(株)製、CTBN1008SP)
【0127】
[評価項目]
(収縮率)
各実施例および各比較例のそれぞれについて、得られた半導体封止用樹脂組成物の収縮率を次のように測定した。まず、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間3分の条件下で半導体封止用樹脂組成物を金型キャビティ内に注入成形して円盤状の試験片を作製した。次いで、試験片を25℃まで冷却した。ここで、175℃における金型キャビティの内径寸法と、25℃における試験片の外形寸法と、から以下のようにして収縮率S
1(%)を算出した。
S
1={(175℃における金型キャビティの内径寸法)−(25℃における試験片の外径寸法)}/(175℃における金型キャビティの内径寸法)×100
結果を表1に示す。
【0128】
(ガラス転移温度、線膨張係数(α
1、α
2))
各実施例および各比較例について、得られた半導体封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度および線膨張係数を、次のように測定した。まず、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分で半導体封止用樹脂組成物を注入成形し、15mm×4mm×4mmの試験片を得た。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業(株)製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃〜320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行った。この測定結果から、ガラス転移温度、ガラス転移温度以下における線膨張係数(α
1)、ガラス転移温度以上における線膨張係数(α
2)を算出した。表1中、α
1とα
2の単位はppm/Kであり、ガラス転移温度の単位は℃である。結果を表1に示す。
【0129】
(曲げ弾性率、曲げ強度)
各実施例および各比較例について、得られた半導体封止用樹脂組成物の硬化物の曲げ弾性率および曲げ強度を、次のように測定した。まず、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分で半導体封止用樹脂組成物を注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの試験片を得た。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した。次いで、試験片の、25℃における曲げ弾性率E
(25)と、260℃におけるおよび曲げ弾性率E
(260)と、をJIS K 6911に準じて測定した。曲げ弾性率の単位はMPaである。結果を表1に示す。
【0130】
(封止材のα線量)
コンプレッション成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間2分で、上記で得られた半導体封止用樹脂組成物から試験片(140mm×120mm、厚さ0.2mm)を成形した。得られた試験片6枚を並べて試験サンプルとし(表面積の合計1008cm
2)、この試験サンプルを用いて低レベルα線測定装置(住友化学工業(株)製、LACS−4000M、印加電圧1.9KV、PR−10ガス(アルゴン:メタン=9:1)100m/分、有効計数時間88h)で、試験片のα線量を測定した。表1中「0.000」cph/cm
2は検出限界以下であった事を示す。
【0131】
(ウラン量、トリウム量)
[(高純度)無機充填材中のウラン量、トリウム量の測定]
(高純度)無機充填材をフッ化水素に溶解して主成分を揮発させた後、残存物を硝酸に溶解し、遠心分離機で処理した上澄み液をセイコーインスツル(株)製の誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)装置SPQ−9000を用いて測定した。
【0132】
(スパイラルフロー)
低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製KTS−15)を用いて、ANSI/ASTM D 3123−72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件にて、上記で得られた半導体封止用樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcmである。
【0133】
(粘度(矩形圧))
低圧トランスファー成形機(日本電気(株)製40tマニュアルプレス)を用いて、金型温度175℃、注入速度177cm
3/秒の条件にて、幅13mm、厚さ1mm、長さ175mmの矩形状の流路に、上記で得られた半導体封止用樹脂組成物を注入し、流路の上流先端から25mmの位置に埋設した圧力センサーにて圧力の経時変化を測定し、半導体封止用樹脂組成物の流動時における最低圧力を測定した。矩形圧は、溶融粘度のパラメータであり、数値が小さい方が、溶融粘度が低く良好である。矩形圧の値は、6MPa以下であれば問題はなく、5MPa以下であれば、良好な粘度を得ることができる。
【0134】
(半導体装置の反り)
MAP成形用のトランスファー成形機(TOWA株式会社製、Yシリーズ)を用い、10×10×0.2mmのSiチップをマウントした基板(基板厚み0.28mm)に、得られた半導体封止用樹脂組成物を使用して、パッケージサイズが13×13×0.68mmとなるよう成形した(成形温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間2分)。次にそのパッケージを175℃、4時間で後硬化することにより、サンプルを得た。得られたサンプル5個をシャドーモアレ式反り測定装置(akrometrix製)を用いて、25℃から260℃へ昇温して、25℃、260℃でのパッケージ高さ方向の最大値最小値の差を測定し、その平均値を表1に示した。単位はμm。表1中、絶対値が小さい方が半導体装置の反りが小さいことを示す。
【0135】
【表1】
【0136】
表1に示されるように、実施例1,2の半導体封止用樹脂組成物は、硬化した際に比較的高い線膨張係数α
2の値を示す。このことから、半導体パッケージを作製した際であっても、その反りを抑制できるものであった。また、実施例1,2の半導体封止用樹脂組成物は、硬化した封止材において低いα線量を示す。このことから、α線による動作不良等の影響を受けやすい半導体装置に適用できることが分かった。