(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記含水溶液を一部の含水溶液と残部の含水容器とに分岐させ、前記一部の含水溶液に対して前記第2正浸透工程を行い、前記残部の含水溶液に対して前記正浸透工程を行う
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の水処理方法。
外部から供給される前記含水溶液が、前記含水溶液の流れ方向に沿った上流側において、一部の含水溶液と残部の含水容器とに分岐されるように構成され、前記一部の含水溶液が前記第2正浸透手段に導入し、前記残部の含水溶液が前記正浸透手段に導入するように構成される
ことを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の水処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術による水処理装置においては、水の膜透過速度であるろ過速度などの性能は、膜モジュールなどの浸透手段に供給されるフィード溶液である含水溶液およびドロー溶液の濃度によって変化する。そのため、水の回収率を向上させるために、フィード溶液とドロー溶液との濃度について、ろ過速度を向上できるさらなる技術が求められていた。
【0007】
また、従来技術による水処理装置においては、導入されるドロー溶液の使用量が多くなると、ドロー溶液を加熱する際に必要なエネルギーも大きくなるという問題があった。そのため、浸透手段におけるろ過速度を増加させて水の回収率を増加させ、導入するドロー溶液の使用量を低減することで、ドロー溶液の流量を低減させて、加熱に消費するエネルギーを低減できる技術の開発が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、水の回収率を増加させ、浸透手段に供給するドロー溶液の流量を低減させて、消費するエネルギーを低減できる水処理方法および水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る水処理方法は、曇点を有するドロー溶液に、溶媒として水を含む含水溶液から半透膜を介して水を移動させて希釈ドロー溶液とする正浸透工程と、前記希釈ドロー溶液を前記曇点以上の温度に加熱する加熱工程と、前記加熱工程において加熱された前記希釈ドロー溶液を、水リッチ溶液と前記水リッチ溶液より含水率が低い水分離ドロー溶液とに分離する水分離工程と、前記水リッチ溶液を生成水と分離処理ドロー溶液とに分離する分離処理工程と、を含む水処理方法であって、前記分離処理ドロー溶液を、前記加熱工程の前の前記希釈ドロー溶液に導入することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る水処理方法は、上記の発明において、前記水分離工程において分離された前記水分離ドロー溶液を、前記正浸透工程における前記ドロー溶液とすることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る水処理方法は、上記の発明において、前記分離処理工程を、コアレッサー、活性炭、限外ろ過膜、ナノろ過膜、または逆浸透膜を用いて行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る水処理方法は、上記の発明において、前記ドロー溶液は、少なくとも1つの曇点を有する温度感応性吸水剤を主体とする溶液であることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る水処理方法は、上記の発明において、前記含水溶液は、海水、かん水、汽水、工業排水、随伴水、または下水であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る水処理装置は、曇点を有するドロー溶液に、溶媒として水を含む含水溶液から半透膜を介して水を移動させて希釈ドロー溶液とする正浸透手段と、前記希釈ドロー溶液を前記曇点以上の温度に加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって加熱された前記希釈ドロー溶液を、水リッチ溶液と前記水リッチ溶液より含水率が低い水分離ドロー溶液とに分離する水分離手段と、前記水リッチ溶液を生成水と分離処理ドロー溶液とに分離する分離処理手段と、を備え、前記分離処理ドロー溶液は、前記加熱手段または前記希釈ドロー溶液の流れ方向に沿った前記加熱手段の上流側に導入されることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記水分離手段によって分離された前記水分離ドロー溶液を、前記正浸透手段に前記ドロー溶液として供給することを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記分離処理手段が、コアレッサー、活性炭、限外ろ過膜、ナノろ過膜、または逆浸透膜からなることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記ドロー溶液は、少なくとも1つの曇点を有する温度感応性吸水剤を主体とする溶液であることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る水処理装置は、上記の発明において、前記含水溶液は、海水、かん水、汽水、工業排水、随伴水、または下水であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る水処理方法および水処理装置によれば、水の回収率を増加させ、浸透手段に供給するドロー溶液の流量を低減させて、消費するエネルギーを低減することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0022】
(第1の実施形態)
(水処理装置)
まず、本発明の第1の実施形態による水処理装置について説明する。
図1は、この第1の実施形態による水処理装置1を模式的に示すブロック図である。
図1に示すように、この第1の実施形態による水処理装置1は、膜モジュール11、加熱器12、分離槽13、および最終処理ユニット14を備えて構成される。
【0023】
膜モジュール11は、内部に半透膜11aが設けられている。半透膜11aは、水を選択的に透過できるものが好ましく、正浸透(FO:Forward Osmosis)膜が用いられるが、逆浸透(RO:Reverse Osmosis)膜を用いてもよい。半透膜11aの分離層の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、酢酸セルロース系、ポリアミド系、ポリエチレンイミン系、ポリスルホン系、またはポリベンゾイミダゾール系などの材質を挙げることができる。半透膜11aの構成は、分離層に用いられる材質を1種類(1層)のみから構成してもよく、分離層を物理的に支持して実質的に分離に寄与しない支持層を有する2層以上から構成してもよい。支持層としてはポリスルホン系、ポリケトン系、ポリエチレン系、ポリエチレンテレフタラート系、一般的な不織布などの材質を挙げることができる。半透膜11aの形態についても限定されるものではなく、平膜、管状膜、または中空糸など種々の形態の膜を用いることができる。膜モジュール11は、例えば円筒形または箱形の容器であって、内部に半透膜11aが設置されることによって、内部が半透膜11aによって2つの室に仕切られる。膜モジュール11の形態は、例えばスパイラルモジュール型、積層モジュール型、中空糸モジュール型などの種々の形態を挙げることができる。膜モジュール11としては、公知の半透膜装置を用いることができ、市販品を用いることもできる。
【0024】
膜モジュール11においては、半透膜11aによって仕切られた一方の室に、含水溶液を流すことができ、他方の室に吸水溶液であるドロー溶液を流すことができる。ドロー溶液の膜モジュール11への導入圧力は、0.1MPa以上0.5MPa以下、第1の実施形態においては例えば0.2MPaである。含水溶液は、例えば海水、かん水、汽水、工業排水、随伴水、または下水、もしくは必要に応じてこれらの水に対してろ過処理を施した、溶媒として水を含む含水溶液である。含水溶液は前段の処理によって例えば50℃程度の所定温度に温度制御される。
【0025】
ドロー溶液としては、少なくとも1つの曇点を有する温度感応性吸水剤(ポリマー)を主体とする溶液が用いられる。温度感応性吸水剤とは、低温においては親水性で水によく溶けて吸水量が多くなる一方、温度の上昇にしたがって吸水量が低下して、所定温度以上になると疎水性化し溶解度が低下する物質である。この第1の実施形態においてポリマーは、少なくとも疎水部および親水部が含まれ、基本骨格にエチレンオキシド群とプロピレンオキシドおよびブチレンオキシドからなる少なくとも一方の群とを含む、ブロックまたはランダム共重合体が好ましい。基本骨格は例えば、グリセリン骨格や炭化水素骨格などが挙げられる。具体的には、例えば、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの重合体を有する薬剤(GE1000−BBPP(A3)、特許文献3参照)を用いた。このようなポリマーにおいて、水溶性と水不溶性とが変化する温度は、曇点と呼ばれる。ドロー溶液の温度が曇点に達すると疎水性化した温度感応性吸水剤が凝集して白濁が生じる。温度感応性吸水剤は、各種界面活性剤、分散剤、乳化剤などとして利用される。この第1の実施形態において、ドロー溶液は含水溶液から水を誘引する誘引物質として用いられる。
【0026】
ドロー溶液の加熱手段としての加熱器12は、ドロー溶液の流れ方向に沿って分離槽13の上流側に設けられる。加熱器12は、膜モジュール11において希釈されて流出したドロー溶液(希釈ドロー溶液)を曇点の温度以上に加熱する。
【0027】
水分離手段としての分離槽13は、希釈ドロー溶液を、加熱器12において加熱によって相分離された、水を主体とする水リッチ溶液とポリマーを主体として水リッチ溶液より含水率が低い水分離ドロー溶液とに相分離させる。
【0028】
分離処理手段としての最終処理ユニット14は、例えばコアレッサー、活性炭吸着ユニット、限外ろ過膜(UF膜)ユニット、ナノろ過膜(NF膜)ユニット、または逆浸透膜(RO膜)ユニットから構成される。最終処理ユニット14は、分離槽13から流出した水リッチ溶液において、残存するポリマーを水リッチ溶液から分離させて、生成水としての淡水を生成する。最終処理ユニット14によって分離されたポリマーを含むポリマー溶液は、最終処理ユニット14から加熱器12の少なくとも上流側に導入される導入経路に沿って、分離処理ドロー溶液として希釈ドロー溶液とともに加熱器12に導入される。
【0029】
(水処理方法)
次に、第1の実施形態による水処理装置1を用いた水処理方法について説明する。
【0030】
正浸透工程
正浸透手段としての膜モジュール11においては、正浸透工程が行われる。すなわち、膜モジュール11において、含水溶液とドロー溶液とを半透膜11aを介して接触させることによって、浸透圧差により含水溶液中の水が半透膜11aを通過してドロー溶液に移動する。含水溶液が流入する一方の室からは、水が移動して濃縮された濃縮含水溶液が流出する。ドロー溶液が流入した他方の室からは水が移動して希釈された希釈ドロー溶液が流出する。なお、ドロー溶液は、含水溶液に対する温度制御、および含水溶液との接触時の熱伝導によって温度が調整される。この第1の実施形態において、希釈ドロー溶液の温度は30℃以上50℃以下、具体的には例えば40℃程度の温度に調整される。
【0031】
加熱工程
加熱器12においては、加熱工程が行われる。すなわち、正浸透工程によって含水溶液から水が移動して希釈された希釈ドロー溶液に、後述する最終処理工程において得られた分離処理ドロー溶液が導入された分離前ドロー溶液を、加熱器12によって曇点以上の温度まで加熱することにより、ポリマーの少なくとも一部を凝集させて、相分離する。加熱工程における加熱温度は、加熱器12を制御することによって調整可能である。なお、加熱温度は、100℃以下が好ましく、この第1の実施形態において加熱温度は、曇点以上100℃以下の例えば88℃である。
【0032】
水分離工程
分離槽13においては、水分離工程が行われる。すなわち、分離槽13において、希釈ドロー溶液は、水分を多く含有する水リッチ溶液と、ポリマーを高濃度に含む濃縮されたドロー溶液としての水分離ドロー溶液とに分離される。なお、分離槽13における圧力は大気圧である。水リッチ溶液と水分離ドロー溶液との相分離は、曇点以上の液温で静置することによって行うことができる。希釈ドロー溶液から分離された水分離ドロー溶液は、ドロー溶液として膜モジュール11に供給される。水分離ドロー溶液のドロー濃度は、例えば60〜95%である。一方、希釈ドロー溶液から分離された水リッチ溶液は、最終処理ユニット14に供給される。水リッチ溶液は例えば、水が99%、ドロー濃度が1%である。
【0033】
最終処理工程
最終処理ユニット14においては、分離処理工程としての最終処理工程が行われる。すなわち、分離槽13において分離された水リッチ溶液においては、ポリマーが残存している可能性がある。そこで、最終処理ユニット14において、水リッチ溶液から分離処理ドロー溶液となるポリマー溶液を分離することによって、淡水などの生成水を生成する。ここで、最終処理ユニット14における処理温度は、例えば20℃以上50℃以下、好適には35℃以上45℃以下、この第1の実施形態においては、例えば45℃である。水リッチ溶液から分離された生成水は、含水溶液から得られた最終生成物として、外部に放出される。分離処理ドロー溶液は、ドロー濃度が0.5〜25%程度のポリマー溶液であり、加熱器12の上流側における希釈ドロー溶液に導入されて、加熱器12に供給される。
【0034】
(実施例および比較例)
次に、以上のように構成された水処理装置1の第1実施例および従来技術による比較例について説明する。
【0035】
(第1実施例)
第1実施例は、第1の実施形態による水処理装置1を用いて、塩分濃度が4%の海水から、1時間あたり300Lの淡水を生成する実施例である。
【0036】
第1の実施形態に基づく第1実施例と比較するために、分離処理ドロー溶液を廃棄する水処理装置の例(特許文献1参照)を第1比較例とする。
図2は、第1比較例による水処理装置100を模式的に示すブロック図である。また、分離処理ドロー溶液を分離槽の後段の水分離ドロー溶液に導入する例(特許文献2参照)を第2比較例とする。
図3は、第2比較例による水処理装置200を模式的に示すブロック図である。
【0037】
(第1比較例)
図2に示すように、第1比較例による水処理装置100は、第1の実施形態による水処理装置1と同様に、半透膜101aが内部に設けられた膜モジュール101、加熱器102、分離槽103、および最終処理ユニット104を備えて構成される。膜モジュール101、加熱器102、分離槽103、および最終処理ユニット104はそれぞれ、膜モジュール11、加熱器12、分離槽13、および最終処理ユニット14と同様である。一方、水処理装置1と異なり、水処理装置100においては、最終処理ユニット104において水リッチ溶液から分離された後の分離処理ドロー溶液は、廃棄される。
【0038】
(第2比較例)
図3に示すように、第2比較例による水処理装置200は、第1の実施形態による水処理装置1と同様に、半透膜201aが内部に設けられた膜モジュール201、加熱器202、分離槽203、および最終処理ユニット204を備えて構成される。膜モジュール201、加熱器202、分離槽203、および最終処理ユニット204はそれぞれ、膜モジュール11、加熱器12、分離槽13、および最終処理ユニット14と同様である。一方、水処理装置1と異なり、水処理装置200においては、最終処理ユニット204において水リッチ溶液から分離された分離処理ドロー溶液は、分離槽203の下流側において水分離ドロー溶液に導入されて混合ドロー溶液として膜モジュール201に供給される。
【0039】
表1は、第1実施例、第1比較例、および第2比較例において、含水溶液および濃縮含水溶液、並びに、希釈ドロー溶液、水分離ドロー溶液、分離前ドロー溶液、分離処理ドロー溶液、および混合ドロー溶液のそれぞれの流量および濃度の実験結果を示す。なお、第1実施例、第1比較例、および第2比較例において、含水溶液の種類、および最終的に生成される淡水などの生成水の単位時間当たりの造水量は互いに等しいものとする。具体的に、膜モジュール11への導入圧力を海水の浸透圧(約25atm)以上の34atm、水リッチ溶液のドロー濃度を1%として流量を375L/hとし、最終処理ユニット14における回収率を80%として、最終的に生成される淡水の単位時間当たりの造水量を300L/hにする。
【0041】
第1比較例においては、最終処理ユニット104によって分離された分離処理ドロー溶液を廃棄している。そのため、処理コストが高くなるのみならず、ドロー溶液を随時追加する必要があるため、低コスト化が極めて困難になるという問題がある。
【0042】
第2比較例においては、分離処理ドロー溶液を分離槽203の下流側の水分離ドロー溶液に導入している。これにより、分離処理ドロー溶液を再利用できる反面、膜モジュール201に供給される混合ドロー溶液のドロー濃度は、分離槽203から流出した水分離ドロー溶液に比して低下している。そのため、混合ドロー溶液が供給される膜モジュール201におけるろ過速度は、水分離ドロー溶液が供給された場合の膜モジュール201のろ過速度よりも低くなる。これに伴って、膜モジュール201に供給する混合ドロー溶液の流量は大きくなり、膜モジュール201から流出する希釈ドロー溶液の流量も大きくなる。そのため、加熱器202における加熱に要するエネルギーが大きくなるという問題がある。
【0043】
表1から、上述した第1比較例に対して第1実施例においては、最終的な造水量が同量である場合、水処理装置1に供給する含水溶液の流量を低減できることが分かる。換言すると、第1比較例による水処理装置100に供給する含水溶液の流量と、第1実施例による水処理装置1に供給する含水溶液の流量とを同流量にした場合、造水量は、水処理装置100に比して水処理装置1の方が多いことが分かる。すなわち、第1の実施形態による水処理装置1においては、従来に比して、淡水の回収率を向上できることが分かる。
【0044】
また、上述した第1,第2比較例に対し、第1実施例においては、
図1に示すように、分離処理ドロー溶液を加熱器12の上流側の希釈ドロー溶液に導入している。これにより、膜モジュール11に供給する水分離ドロー溶液のドロー濃度の低下を抑制でき、表1から、水分離ドロー溶液のドロー濃度を従来技術(第1,第2比較例)と同様の濃度に維持できることが分かる。
【0045】
さらに、表1から、第1実施例においては、第1比較例に比して、膜モジュール11におけるろ過速度を増加できることが分かる。すなわち、第1実施例においては、水分離ドロー溶液の流量が第1,第2比較例に比して低減されていることが分かる。具体的に、表1から、第1実施例は、第1比較例に比して、膜モジュール11に供給される水分離ドロー溶液の流量が、1249L/hから997L/hに低減できることが分かる。同様に、第1実施例は、第2比較例に比して、膜モジュール11に供給される水分離ドロー溶液(第2比較例では混合ドロー溶液)の流量が、2075L/hから997L/hに低減できることが分かる。水分離ドロー溶液の流量の低減は、ドロー溶液に含まれるポリマーの使用量の低減に寄与するため、ポリマーのコストの低減が可能になる。
【0046】
また、表1から、第1比較例においては、希釈ドロー溶液が1624L/hの流量で加熱器102内を流動し、第2比較例においては、希釈ドロー溶液が2375L/hの流量で加熱器202内を流動している。これに対し、第1実施例においては、分離前ドロー溶液が1372L/hの流量で加熱器12内を流動している。すなわち、表1から、第1実施例においては、加熱器内に流動させるドロー溶液の流量が低減されていることが分かる。ここで、第1実施例、および第1,第2比較例において用いられるポリマー水溶液の比熱および密度はそれぞれ、3.2kJ/kg・Kおよび1.05kg/Lであることから、ドロー溶液を40℃から曇点以上の88℃まで加熱する場合に必要なエネルギーは、以下の通りである。なお、比熱については、ポリマー水溶液として40〜88℃における平均比熱を使用しているため、ドロー溶液の濃度に依存しない。また、密度については、ドロー溶液の濃度および温度の寄与が極めて小さいことから、濃度および温度の影響は無視できるほど小さい。
第1実施例:(3.2kJ/kg・K×1.05kg/L×1372L/h×(88℃−40℃)=)2.21×10
5kJ/h
第1比較例:(3.2kJ/kg・K×1.05kg/L×1624L/h×(88℃−40℃)=)2.62×10
5kJ/h
第2比較例:(3.2kJ/kg・K×1.05kg/L×2375L/h×(88℃−40℃)=)3.83×10
5kJ/h
すなわち、第1実施例においては、第1比較例に比して、約16%のエネルギーを低減でき、第2比較例に比して、約42%のエネルギーを低減できることが分かる。
【0047】
以上説明したように第1の実施形態によれば、膜モジュール11のろ過速度を従来に比して増加させることができるので、膜モジュール11に供給するドロー溶液の流量を低減でき、これに伴って加熱器12内を流動させるドロー溶液を低減できるので、水処理装置1においては、従来に比して、ドロー溶液に要するコストを低減できるとともに、加熱に消費するエネルギーを低減できる。
【0048】
(第2の実施形態)
(水処理装置)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は、第2の実施形態による水処理装置2を示す。
図4に示すように、第2の実施形態による水処理装置2は、内部に半透膜21aが設けられた第1膜モジュール21、内部に半透膜22aが設けられた第2膜モジュール22、加熱器23、分離槽24、および最終処理ユニット25を備えて構成される。水処理装置2における第1膜モジュール21、半透膜21a、加熱器23、分離槽24、および最終処理ユニット25はそれぞれ、水処理装置1における膜モジュール11、半透膜11a、加熱器12、分離槽13、および最終処理ユニット14と同様である。
【0049】
第2膜モジュール22および半透膜22aはそれぞれ、水処理装置1における膜モジュール11および半透膜11aと同様の構成を採用できる。すなわち、第2膜モジュール22は、内部が半透膜22aによって2つの室に仕切られる。ここで、水処理装置2において、第1正浸透手段としての第1膜モジュール21と第2正浸透手段としての第2膜モジュール22とは、同様の構造の膜モジュールであってもよく、互いに異なる構成の膜モジュールであってもよい。また、半透膜21a,22aは、互いに同様の構成や種類の半透膜を採用してもよく、互いに異なる構成や種類の半透膜を採用してもよい。
【0050】
第2の実施形態による水処理装置2においては、第1の実施形態と異なり、第2膜モジュール22は、ドロー溶液および含水溶液の流れ方向に沿って、第1膜モジュール21の上流側に設けられる。これにより、水処理装置2に対して外部から供給される含水溶液は、第2膜モジュール22の一方の室に供給される。第2膜モジュール22の他方の室には、最終処理ユニット25において分離させた分離処理ドロー溶液が供給される。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0051】
(水処理方法)
(第2正浸透工程)
次に、第2の実施形態による水処理装置2を用いた水処理方法について説明する。第2の実施形態においては、第1の実施形態と異なり、第2正浸透手段としての第2膜モジュール22において、第2正浸透工程が行われる。すなわち、第2膜モジュール22において、含水溶液と、含水溶液より浸透圧が低い分離処理ドロー溶液とを、半透膜22aを介して接触させる。ここで、分離処理ドロー溶液の浸透圧は含水溶液の浸透圧より低くされているため、浸透圧差により分離処理ドロー溶液中の水は半透膜22aを通過して含水溶液に移動する。これにより、含水溶液が流入する一方の室からは、分離処理ドロー溶液から水が移動して希釈された、希釈含水溶液が流出する。分離処理ドロー溶液が流入する他方の室からは、水が移動して濃縮された濃縮分離処理ドロー溶液が流出する。なお、第2膜モジュール22に供給する分離処理ドロー溶液において、温度を30℃以上50℃以下の例えば40℃とし、圧力は0.05MPa以上0.3MPa以下の例えば0.1MPaとする。
【0052】
(第1正浸透工程)
第2膜モジュール22の一方の室から流出した希釈含水溶液は、第1膜モジュール21の一方の室に供給される。第1膜モジュール21において水分離ドロー溶液と希釈含水溶液とが半透膜21aを介して接触して、第1正浸透工程が行われる。第2膜モジュール22の他方の室から流出した濃縮分離処理ドロー溶液は、希釈ドロー溶液の流れ方向に沿って加熱器23の上流側に導入される。濃縮分離処理ドロー溶液が導入された希釈ドロー溶液は、分離前ドロー溶液として加熱器23に供給される。その他の加熱工程、水分離工程、および最終処理工程については、第1の実施形態と同様である。第2の実施形態に基づく第2実施例については、後述する。
【0053】
(第3の実施形態)
(水処理装置)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図5は、第3の実施形態による水処理装置3を示す。
図5に示すように、第3の実施形態による水処理装置3は、第2の実施形態による水処理装置2と同様に、半透膜21aを有する第1膜モジュール21、半透膜22aを有する第2膜モジュール22、加熱器23、分離槽24、および最終処理ユニット25を備えて構成される。一方、水処理装置3は、第2の実施形態による水処理装置2と異なり、第2膜モジュール22から流出する濃縮分離処理ドロー溶液が、水分離ドロー溶液の流れ方向に沿って分離槽24の下流側に導入するように構成される。その他の構成は、第2の実施形態と同様である。
【0054】
(水処理方法)
次に、第3の実施形態による水処理装置3を用いた水処理方法について説明する。第3の実施形態においては、第2膜モジュール22によって第2正浸透工程が行われ、分離処理ドロー溶液中の水が半透膜22aを通過して含水溶液に移動する。第2膜モジュール22において含水溶液が流入する一方の室からは、希釈含水溶液が流出して、第1膜モジュール21の一方の室に供給される。第2膜モジュール22において分離処理ドロー溶液が流入する他方の室からは、濃縮分離処理ドロー溶液が流出する。濃縮分離処理ドロー溶液は、分離槽24から流出した水分離ドロー溶液に導入される。水分離ドロー溶液に濃縮分離処理ドロー溶液が導入された混合ドロー溶液は、第1膜モジュール21の他方の室に供給される。第1膜モジュール21においては、希釈含水溶液と混合ドロー溶液との間で第1正浸透工程が行われ、希釈含水溶液から混合ドロー溶液に水が移動する。その他の加熱工程、水分離工程、および最終処理工程については、第1および第2の実施形態と同様である。第3の実施形態に基づく第3実施例については、後述する。
【0055】
(第4の実施形態)
(水処理装置)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図6は、第4の実施形態による水処理装置4を示す。
図6に示すように、第4の実施形態による水処理装置4は、第2の実施形態による水処理装置2と同様に、半透膜21aを有する第1膜モジュール21、半透膜22aを有する第2膜モジュール22、加熱器23、分離槽24、および最終処理ユニット25を備えて構成される。一方、水処理装置4は、第2の実施形態による水処理装置2と異なり、外部から水処理装置4に供給される含水溶液が、含水溶液の流れ方向に沿った上流側において分岐されるように構成される。水処理装置4においては、分岐された含水溶液の一部が第2膜モジュール22の一方の室に供給され、含水溶液の残部が第2膜モジュール22の下流側、かつ第1膜モジュール21の上流側に導入するように構成される。その他の構成は、第2の実施形態と同様である。
【0056】
(水処理方法)
次に、第4の実施形態による水処理装置4を用いた水処理方法について説明する。第4の実施形態による水処理装置4においては、含水溶液の流れ方向に沿って供給される上流側に分岐部が設けられる。分岐部において、水処理装置4に供給される含水溶液が、一部の含水溶液と残部の含水溶液とに分岐される。ここで、第2膜モジュール22に供給される一部の含水溶液の流量を調整することによって、残部の含水溶液の流量が調整される。一部の含水溶液は、第2膜モジュール22の一方の室に供給されて第2正浸透工程が行われる。第2膜モジュール22においては、分離処理ドロー溶液中の水が半透膜22aを通過して一部の含水溶液に移動する。第2膜モジュール22において含水溶液が流入する一方の室からは、希釈含水溶液が流出し、分岐された含水溶液の残部が導入された後に、希釈含水溶液として第1膜モジュール21の一方の室に供給される。第2膜モジュール22における他方の室からは、濃縮分離処理ドロー溶液が流出して、加熱器23の上流側において、第1膜モジュール21から流出した希釈ドロー溶液に導入される。その他の第1正浸透工程、加熱工程、水分離工程、および最終処理工程については、第1および第2の実施形態と同様である。第4の実施形態に基づく第4実施例については、後述する。
【0057】
(第2,第3,第4実施例、および第1,第2比較例)
次に、それぞれの第2〜第4の実施形態に基づく、第2〜第4実施例について説明する。第2,第3,第4実施例はそれぞれ、水処理装置2,3,4を用いた実施例である。なお、第1比較例は、上述した
図2に示す水処理装置100を用いた比較例であり、第2比較例は、上述した
図3に示す水処理装置200を用いた比較例である。
【0058】
表2は、第2〜第4実施例および第1,第2比較例における、含水溶液、希釈含水溶液、および濃縮含水溶液の流量および塩分濃度、並びに、水分離ドロー溶液、混合ドロー溶液、希釈ドロー溶液、分離前ドロー溶液、分離処理ドロー溶液、および濃縮分離処理ドロー溶液のそれぞれの流量および濃度の実験結果を示す。なお、第2〜第4実施例、第1,第2比較例において、含水溶液の種類、および最終的に生成される淡水などの生成水の単位時間当たりの造水量は互いに等しいものとする。具体的に、水リッチ溶液のドロー濃度を1%として流量を375L/hとし、最終処理ユニット25における回収率を80%として、最終的に生成される淡水の単位時間当たりの造水量を300L/hにする。なお、第4実施例においては、第2膜モジュール22に供給する一部の含水溶液の流量を75L/h、残部の含水溶液の流量を922L/hとする。これにより、第4実施例においては、第2膜モジュール22から流出して、残部の含水溶液が導入される前の希釈含水溶液の塩分濃度は2.2%、流量は135L/hとなる。表2において第4実施例の希釈含水溶液の塩分濃度および流量は、残部の含水溶液が導入された後の希釈含水溶液の塩分濃度および流量である。
【0060】
表2から、上述した第1比較例に対して第2〜第4実施例においては、最終的な淡水の造水量が同量である場合、水処理装置に供給する含水溶液の流量を低減できることが分かる。換言すると、第1比較例による水処理装置100に供給する含水溶液の流量と、第2〜第4実施例による水処理装置2〜4に供給する含水溶液の流量とを同じ流量にした場合、造水量は、水処理装置100に比して水処理装置2〜4の方が多いことが分かる。すなわち、第2〜第4の実施形態による水処理装置2〜4においては、従来に比して、淡水の回収率を向上できることが分かる。
【0061】
また、
図4および
図5に示すように、第2,第3実施例による水処理装置2,3においては、第1膜モジュール21の上流側に配置された第2膜モジュール22によって、分離処理ドロー溶液から含水溶液に水を移動させている。そのため、第1比較例による水処理装置100における膜モジュール101に供給される含水溶液の濃度に比して、第1膜モジュール21に供給される含水溶液の濃度が低くなる。これにより、第1膜モジュール21における希釈含水溶液とドロー溶液との浸透圧差が大きくなる。第1膜モジュール21において希釈含水溶液とドロー溶液との浸透圧差を大きくすることによって、従来に比してろ過速度および水の回収率を増加でき、供給されるドロー溶液の流量を低減できる。具体的に、表2から、第2実施例は、第1比較例に比して、第1膜モジュール21に供給される水分離ドロー溶液の流量が、1249L/hから700L/hに低減できることが分かる。同様に、第3実施例は、第1膜モジュール21に供給される混合ドロー溶液の流量が、第1比較例において膜モジュール101に供給される水分離ドロー溶液の流量に比して、1249L/hから1100L/hに低減できることが分かる。水分離ドロー溶液や混合ドロー溶液の流量の低減は、ドロー溶液に含まれるポリマーの使用量の低減に寄与するため、ポリマーのコストの低減が可能になる。
【0062】
また、表2から、第1比較例においては、希釈ドロー溶液が1624L/hの流量で加熱器102内を流動し、第2比較例においては、希釈ドロー溶液が2375L/hの流量で加熱器202内を流動している。これに対し、表2および
図4に示すように、第2実施例においては、分離前ドロー溶液が1075L/hの流量で加熱器23内を流動している。また、表2および
図5に示すように、第3実施例においては、希釈ドロー溶液が1460L/hの流量で加熱器23内を流動している。すなわち、表2から、第2,第3実施例においては、加熱器23内に流動させるドロー溶液の流量が、従来(第1,第2比較例)に比して低減されていることが分かる。ここで、第2,第3実施例および第1,第2比較例において用いられるポリマー水溶液の比熱および密度はそれぞれ、3.2kJ/kg・Kおよび1.05kg/Lであることから、ドロー溶液を40℃から曇点以上の88℃まで加熱する場合に必要なエネルギーは、以下の通りである。
第2実施例:(3.2kJ/kg・K×1.05kg/L×1075L/h×(88℃−40℃)=)1.73×10
5kJ/h
第3実施例:(3.2kJ/kg・K×1.05kg/L×1460L/h×(88℃−40℃)=)2.35×10
5kJ/h
第1比較例:(3.2kJ/kg・K×1.05kg/L×1624L/h×(88℃−40℃)=)2.62×10
5kJ/h
第2比較例:(3.2kJ/kg・K×1.05kg/L×2375L/h×(88℃−40℃)=)3.83×10
5kJ/h
すなわち、第2実施例においては、第1比較例に比して、約34%のエネルギーを低減でき、第2比較例に比して、約55%のエネルギーを低減できることが分かる。同様に、第3実施例においては、第1比較例に比して、約10%のエネルギーを低減でき、第2比較例に比して、約39%のエネルギーを低減できることが分かる。
【0063】
表2において、第2実施例および第4実施例を比較すると、第4実施例においては、第2実施例と同様の効果を得られることが分かる。さらに、水処理装置2,4に供給される含水溶液はいずれも997L/hであるが、
図6に示すように、供給される含水溶液を分岐部によって分岐させて、第2膜モジュール22に供給する含水溶液の流量を、第4実施例においては75L/hとし、第2実施例に比して大幅に低減させている。これにより、第2膜モジュール22における圧力損失を低減することができるので、第4の実施例においては第2の実施例に比して、水処理装置4において消費するエネルギーを低減できる。
【0064】
以上説明したように第2,第3,第4の実施形態によれば、第1膜モジュール21のろ過速度を従来に比して増加させることができるので、第1膜モジュール21に供給するドロー溶液の流量を低減でき、これに伴って加熱器23内を流動させるドロー溶液を低減できるので、水処理装置2,3,4においては、従来に比して、ドロー溶液に要するコストを低減できるとともに、加熱に消費するエネルギーを低減可能となる。さらに、水処理装置4においては、第2膜モジュール22において消費するエネルギーをより一層低減できる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよく、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。