(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0010】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって
図1の左右方向とする。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。
【0011】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側,一方側)を「上側」と呼び、Z軸方向の負の側(−Z側,他方側)を「下側」と呼ぶ。なお、上側および下側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。さらに、以下の説明において、「平面視」とは、軸方向から見た状態を意味する。
【0012】
(モータ)
図1は、本実施形態のモータ1の断面図である。
図2は、本実施形態のモータ1におけるモータ本体3の平面図である。
図3は、モータ1の部分断面図である。
【0013】
図1に示すように、モータ1は、モータ本体3と、制御部5と、カバー90と、を備える。モータ本体3は、上下方向に延びる中心軸Jを中心として回転するロータ20を有する。制御部5は、モータ本体3の上側に位置する。制御部5は、ロータ20の回転を制御する。カバー90は、制御部5を径方向外側および上側から囲む。
【0014】
<モータ本体>
モータ本体3は、モータハウジング11と、シャフト21を有するロータ20と、ステータ30と、上側ベアリング24と、下側ベアリング25と、センサマグネット63と、ベアリングホルダ(ヒートシンク)40と、蓋体70と、放熱グリス(放熱材)Gと、を備える。
【0015】
[モータハウジング]
モータハウジング11は、上側(+Z側)に開口する筒状である。モータハウジング11は、モータ本体3の各部材を収納する。
モータハウジング11は、第1の筒状部14と、第1の底部13と、下側ベアリング保持部18と、を有する。第1の筒状部14は、ステータ30の径方向外側を囲む筒状である。本実施形態において第1の筒状部14は、例えば、円筒状である。第1の筒状部14は、上端においてベアリングホルダ40の周縁に設けられた段差部40bに嵌め込まれている。第1の筒状部14の内側面には、ステータ30が固定されている。
【0016】
第1の底部13は、第1の筒状部14の下側(−Z側)の端部に設けられている。第1の底部13には、第1の底部13を軸方向(Z軸方向)に貫通する出力軸孔部13aが設けられている。下側ベアリング保持部18は、第1の底部13の上側(+Z側)の面に設けられている。下側ベアリング保持部18は、下側ベアリング25を保持する。
【0017】
[ロータ]
ロータ20は、シャフト21と、ロータコア22と、ロータマグネット23と、を有する。シャフト21は、上下方向(Z軸方向)に延びる中心軸Jを中心とする。シャフト21は、下側ベアリング25と上側ベアリング24とによって、中心軸Jの軸周りに回転可能に支持されている。シャフト21の下側(−Z側)の端部は、出力軸孔部13aを介してモータハウジング11の外部に突出している。シャフト21の下側の端部には、例えば、出力対象に接続するためのカプラー(図示略)が圧入される。シャフト21の上端面21aには穴が設けられている。シャフト21の穴には、取付部材62が嵌め合わされている。取付部材62は、軸方向に延びる棒状部材である。
【0018】
ロータコア22は、シャフト21に固定されている。ロータコア22は、シャフト21を周方向に囲んでいる。ロータマグネット23は、ロータコア22に固定されている。より詳細には、ロータマグネット23は、ロータコア22の周方向に沿った外側面に固定されている。ロータコア22およびロータマグネット23は、シャフト21とともに回転する。
【0019】
[ステータ]
ステータ30は、ロータ20の径方向外側を囲んでいる。ステータ30は、ステータコア31と、ボビン32と、コイル33と、を有する。ボビン32は、絶縁性を有する材料から構成される。ボビン32は、ステータコア31の少なくとも一部を覆う。モータ1の駆動時において、コイル33は、ステータコア31を励磁する。コイル33は、コイル線33aが巻き回されて構成される。コイル線33aは、ボビン32を介してステータに巻き回されている。コイル線33aの端部は、上側に引き出されている。引き出されたコイル線33aは、ベアリングホルダ40を貫通して、後述する第1の基板66の上側まで延びて第1の基板66に接続されている。
【0020】
[上側ベアリングおよび下側ベアリング]
上側ベアリング24は、シャフト21の上端部を回転可能に支持する。上側ベアリング24は、ステータ30の上側(+Z側)に位置する。上側ベアリング24は、ベアリングホルダ40に保持されている。
下側ベアリング25は、シャフト21の下端部を回転可能に支持する。下側ベアリング25は、ステータ30の下側(−Z側)に位置する。下側ベアリング25は、モータハウジング11の下側ベアリング保持部18に保持されている。
【0021】
本実施形態において、上側ベアリング24および下側ベアリング25は、ボールベアリングである。しかしながら、上側ベアリング24および下側ベアリング25の種類は、特に限定されず、他の種類のベアリングであってもよい。
【0022】
[センサマグネット]
センサマグネット63は、シャフト21の上側で取付部材62を介してシャフト21に固定されている。本実施形態において、センサマグネット63は、円環状である。センサマグネット63は、シャフト21に固定された取付部材62の外周面に嵌め合わされている。センサマグネット63は、シャフト21とともに中心軸Jを中心として回転する。なお、センサマグネット63の形状および取付構造は本実施形態に限定されない。例えば、センサマグネット63は、接着剤などによりシャフト21の先端に直接取り付けられてもよい。
【0023】
[ベアリングホルダ]
ベアリングホルダ40は、ステータ30の上側(+Z側)に位置している。ベアリングホルダ40は、上側ベアリング24を保持する。ベアリングホルダ40の平面視(XY面視)形状は、例えば、中心軸Jと同心の円形状である。ベアリングホルダ40は、金属製である。ベアリングホルダ40は、モータハウジング11とカバー90との間に挟み込まれている。
【0024】
ベアリングホルダ40には、上下方向に貫通する貫通孔45が設けられている。貫通孔45は、平面視においてベアリングホルダ40の略中央に位置する。貫通孔45の内側には、シャフト21の上端部およびセンサマグネット63が配置される。
【0025】
貫通孔45の内周面には、下向き段差面45aと、上向き段差面45bと、下側内周面45cと、中間内周面45dと、上側内周面45eと、が設けられている。
下向き段差面45aは、下側を向く段差面である。下向き段差面45aは、貫通孔45の下側寄りに位置する。上向き段差面45bは、上側を向く段差面である。上向き段差面45bは、貫通孔45の上側寄りに位置する。下側内周面45cは、下向き段差面45aより下側に位置する。中間内周面45dは、下向き段差面45aと上向き段差面45bの間に位置する。上側内周面45eは、上向き段差面45bより上側に位置する。下側内周面45c、中間内周面45dおよび上側内周面45eは、軸方向から見て同心の円形状である。また、下側内周面45cおよび上側内周面45eの内径は、中間内周面45dの直径より大きい。
【0026】
貫通孔45は、下向き段差面45aより下側の領域(下側内周面45cに囲まれる領域)において上側ベアリング24を収容する。貫通孔45は、下向き段差面45aと上向き段差面45bの間の領域(中間内周面45dに囲まれる領域)において、センサマグネット63を収容する。また、貫通孔45は、上向き段差面45bより上側の領域(上側内周面45eに囲まれる領域)において、蓋体70を収容する。
【0027】
下向き段差面45aには、ウェーブワッシャ46を介して上側ベアリング24の外輪の上面が接触する。また、下側内周面45cは、上側ベアリング24の外輪と嵌合する。下向き段差面45aが設けられていることで、ベアリングホルダ40に対して上側ベアリング24を容易に位置決めすることができる。また、下向き段差面45aと上側ベアリング24の外輪との間にウェーブワッシャ46を介在させることで、上側ベアリング24に予圧を付与させることができる。
【0028】
ベアリングホルダ40は、第1の上面40aと、第2の上面(封止面)3aと、第3の上面(第1の接触面)3bと、を有する。すなわち、モータ本体3は、第1の上面40a、第2の上面3aおよび第3の上面3bを有する。第1の上面40a、第2の上面3aおよび第3の上面3bは、上側を向く面である。
【0029】
収容凹部41は、上側に開口する。収容凹部41には、スペーサ80が挿入されている。スペーサ80は、収容凹部41の内側面に沿う側壁部81と、収容凹部41の底面に沿う底壁部82と、側壁部81の上端に位置するフランジ部83と、を有する。スペーサ80は、絶縁材料からなる。
【0030】
図2に示すように、第1の上面40aには、4つの凸部40dが設けられている。4つの凸部40dは、周方向に沿って等間隔に配置されている。ベアリングホルダ40は、凸部40dの上面(第4の上面)40cにおいて第1の基板66と接触する。凸部40dの上面40cは、モータ本体3の上側を向く面(すなわち、上面)の一つである。以下の説明において、凸部40dの上面40cをモータ本体3又はベアリングホルダ40の第4の上面40cとして説明する場合がある。
【0031】
平面視において、第2の上面3aは、第1の上面40aを径方向外側から囲む環状に設けられている。第2の上面3aには、上側に開口する溝部4が設けられている。溝部4は、平面視で環状に延び、周方向に沿って中心軸Jを囲む。後段において説明するように、溝部4には、カバー90の下端部91が挿入されている。また、溝部4の内部には、接着剤(封止部材)ADが充填されている。これにより、モータ本体3とカバー90とが互いに固定される。
【0032】
第3の上面3bは、平面視で第1の上面40aの内側に位置する。
図3に示すように、第3の上面3bは、第1の上面40aから上側に突出する円柱状の凸部3hの上側の面である。
【0033】
[放熱グリス(放熱材)]
図1に示すように、放熱グリスGは、ベアリングホルダ40の第1の上面40aと第1の基板66の下面66aとの間に位置する。放熱グリスGは、第1の基板66および第1の基板66に実装された実装部品において生じた熱を、ベアリングホルダ40に伝える。ベアリングホルダ40は、放熱グリスGから伝わる熱を外部に放熱する。すなわち、本実施形態によれば、ベアリングホルダ40をヒートシンクとして機能させることができる。
【0034】
[蓋体]
蓋体70は、ベアリングホルダ40の貫通孔45に取り付けられている。蓋体70は、貫通孔45の上側の開口を覆い閉塞する。蓋体70は、放熱グリスGが貫通孔45内に侵入することを抑制する。蓋体70は、円盤形状である。蓋体70は、貫通孔45の上側内周面45eに嵌合される。
【0035】
<制御部>
図1に示すように、制御部5は、第1の基板66と、第2の基板67と、第1および第2の基板66、67を接続する複数のプレスフィットピン51と、プレスフィットピン51を支持する一対のサポート部材52と、を有する。
なお、モータ1において用いられる基板の枚数は、2枚に限られず、1枚でもよく、3枚以上であってもよい。
【0036】
[第1の基板、第2の基板]
第1および第2の基板66、67は、モータ1を制御する。第1および第2の基板66、67には、電子部品が実装されている。第1および第2の基板66、67に実装される電子部品は、回転センサ61、電解コンデンサ、チョークコイル等である。また、第1の基板66には、ステータ30から引き出されて上側に延びるコイル線33aが接続されている。
電子部品のうち発熱素子は、第1の基板66に実装することが好ましい。これにより、発熱素子から生じた熱を、ベアリングホルダ40を介して効率的に放熱できる。この場合、ベアリングホルダ40は、ヒートシンクとして機能する。なお、本明細書において発熱素子は、基板に実装される電子部品のうち熱を発して高温となる素子を意味する。発熱素子としては、電界効果トランジスタ、コンデンサ、電界効果トランジスタ駆動用ドライバ集積回路、電源用集積回路、スイッチング素子、半導体スイッチ素子などが例示されるが、高温となる素子であればその種類は限定されない。
【0037】
第1および第2の基板66、67には、同等の機能の2つの実装部品が実装されている。また、第1および第2の基板66、67には、各実装部品を繋ぐ同等な2つの回路が構成されている。実装部品と回路とは、制御回路を構成する。すなわち、制御部5は、同等な機能の2つの制御回路を有する。これにより、制御部5は、冗長性が高められている。制御部5は、一方の系統の制御回路に何らかの不具合が生じた場合であっても、他方の系統の制御回路によりモータ1の駆動を継続することができる。
【0038】
第1の基板66は、ベアリングホルダ40の上側(+Z側)に配置されている。第1および第2の基板66、67は、軸方向から見て互いに全体が重なり合う相似形状である(
図4参照)。第2の基板67は、第1の基板66の上側かつカバー90の第2の底部99の下側に配置されている。第1および第2の基板66、67の板面方向は、ともに軸方向に対して垂直である。すなわち、第1および第2の基板66、67は、中心軸Jに直交する方向に沿って配置されている。第1および第2の基板66、67は、軸方向からみて互いに重なり合って配置されている。第1の基板66と第2の基板67との間には、軸方向に沿う隙間が設けられている。
【0039】
第1の基板66は、下面66aと上面66bとを有する。同様に、第2の基板67は、下面67aと上面67bとを有する。第1の基板66の上面66bと第2の基板67の下面67aは、隙間を介して上下方向に対向している。第1の基板66の下面66aとベアリングホルダ40の第4の上面40cは、直接的に接触している。すなわち、第1の基板66は、モータ本体3の第4の上面に接触する。第1の基板66の下面66aとベアリングホルダ40の第1の上面40aとの間の隙間には、放熱グリスGが充填されている。また、第2の基板67の上面67bは、カバー90の下面97aと直接的に接触する。
なお、本明細書において、2つの部材が「接触する」とは、2つの部材同士の位置が、接触する方向において一意的に決まるものであれば、別途用意した他の部材を「介して接触する」場合も含む概念であるとする。したがって、第1の基板66は、モータ本体3の第1の上面40aに接触する。また、本明細書において、2つの部材が共通する接触面において接触する場合は、「直接的に接触する」と表現する。
【0040】
第1の基板66の下面66aには、回転センサ61が実装されている。また、回転センサ61は、軸方向から見て、第1の基板66のセンサマグネット63と重なるように配置されている。回転センサ61は、センサマグネット63の回転を検出する。本実施形態において回転センサ61は、磁気抵抗素子である。回転センサ61は、例えば、ホール素子であってもよい。
【0041】
第1および第2の基板66、67には、それぞれ上下方向に貫通する複数の孔66c、67cが設けられている。第1の基板66の複数の孔66cと第2の基板67の複数の孔67cは、軸方向からみて互いに重なりあって配置されている。孔66c、67cには、それぞれプレスフィットピン51の先端部51a、51bが挿入される。
【0042】
[プレスフィットピン]
図1に示すように、プレスフィットピン51は、上下方向に沿って延びる。プレスフィットピン51は、下側に位置する第1の先端部51aと、上側に位置する第2の先端部51bと、を有する。第1および第2の先端部51a、51bの直径は、第1および第2の基板66、67に設けられた孔66c、67cの直径より若干大きい。第1の先端部51aは、上面66b側から第1の基板66の孔66cに圧入されている。また、第2の先端部51bは、下面67a側から第2の基板67の孔67cに圧入されている。これにより、プレスフィットピン51は、第1および第2の基板66、67と電気的に導通する。すなわち、プレスフィットピン51の両端(第1の先端部51aおよび第2の先端部51b)は、それぞれ異なる基板66、67に設けられた孔66c、67cに挿入されて電気的に導通する。
【0043】
なお、先端部51a、51bの形状は、本実施形態に限定されない。例えば、先端部51a、51bは、先細りのテーパ形状であってもよく、上下方向を長手方向とする板状であってもよい。先端部51a、51bが先細りのテーパ形状とする場合、第1および第2の基板66、67に挿入された深さにおける先端部51aの直径が、孔66c、67cの直径より大きければよい。また、先端部51a、51bを板状とする場合、先端部51a、51bの上下方向と直交する断面内での最大長さが、孔66c、67cの直径より大きければよい。これにより、孔66c、67cの内周面と、先端部51a、51bとの接触部分に接触圧を生じさせて、電気的に接続することができる。
同様に、第1および第の2の基板66、67の孔66c、67cの平面視形状は、円形に限らず、例えば、上下方向と直交する方向に延びる長孔であってもよい。孔66c、67cを長孔であり、先端部51a、51bが、円柱状である場合、長孔状の孔66c、67cの短手方向の寸法が、先端部51a、51bの直径より小さければよい。
【0044】
[サポート部材]
サポート部材52は、第1の基板66と第2の基板67の上下方向の間に位置する。一対のサポート部材52は、それぞれ複数のプレスフィットピン51を支持する。すなわち、プレスフィットピン51は、サポート部材52に対して固定されている。サポート部材52の構成材料は、樹脂等の絶縁材料である。サポート部材52が、複数のプレスフィットピン51を支持することで、プレスフィットピン51同士が導通することを抑制できる。
図3に示すように、サポート部材52は、サポート部材本体部52aと、一対の第1の突起部53と、一対の第2の突起部54と、を有する。
【0045】
サポート部材本体部52aは、第1の基板66と第2の基板67との間に位置し、プレスフィットピン51を保持する。
【0046】
第1の突起部53は、サポート部材本体部52aから上側に突出する。第1の突起部53は、第1の基板66に設けられた第1の貫通孔66hを通過する。第1の突起部53の下端面は、モータ本体3の第3の上面3bと接触する。
第2の突起部54は、サポート部材本体部52aから下側に突出する。第2の突起部54は、第2の基板67に設けられた第2の貫通孔67hを通過する。第2の突起部54の下端面は、カバー90の下面97aと接触する。
【0047】
本実施形態によれば、サポート部材52は、第1の突起部53においてモータ本体3の第3の上面3bと接触し、第2の突起部54においてカバー90の下面97aと接触する。したがって、サポート部材52は、上下方向において、モータ本体3とカバー90とに、接触した状態で挟み込まれている。サポート部材52は、第1の突起部53の下面および第2の突起部54の上面との距離によって、モータ本体3とカバー90との上下方向の相対的な位置決めを行う。すなわち、本実施形態によれば、第1の突起部53と第2の突起部54との上下方向の精密な寸法管理を行うことで、モータ本体3に対するカバー90の上下方向の位置精度を高めることができる。
【0048】
本実施形態によれば、第1の基板66の第1の貫通孔66hに挿入される第1の突起部53が、サポート部材52に2つ以上設けられている。プレスフィットピン51は、サポート部材52によりを支持された状態で第1の基板66に圧入される。第1の突起部53の下面は、プレスフィットピン51の下側の先端より下側に位置する。したがって、圧入工程において、サポート部材52を下側に移動させると、圧入が開始されるより前に、第1の突起部53が第1の貫通孔66hに挿入される。2つ以上の第1の突起部53をそれぞれ第1の貫通孔66に挿入すると、サポート部材52を第1の基板66に対し水平方向に位置決めできる。加えて、第1の基板66に対してサポート部材52が傾くことを抑制できる。このため、水平方向に位置決めした状態で、第1の基板66にプレスフィットピン51の圧入を行うことができる。本実施形態によれば、第1の基板66に対するプレスフィットピン51の圧入を安定的に行うことが可能となる。なお、第2の突起部54についても同様の効果を奏する。すなわち、本実施形態によれば、第2の突起部54が、サポート部材52に2つ以上設けられていることで、第2の基板67に対するプレスフィットピン51の圧入を安定的に行うことが可能となる。
【0049】
図4は、モータ1の制御部5の斜視図である。なお、
図4において、説明の便宜上、第2の基板67を二点鎖線で示す。
図4に示すように、一対のサポート部材52は、中心軸Jを挟んで、径方向の反対側にそれぞれ位置する。一対のサポート部材52は、平面視において、第1の基板66の径方向両側の端部66e、66fにそれぞれ配置されている。同様に、一対のサポート部材52は、平面視において、第2の基板67の径方向両側の端部67e、67fにそれぞれ配置されている。すなわち、一対のサポート部材52は、平面視において、第1および第2の基板66、67の径方向一方側の第1の端部66e、67eおよび径方向他方側の第2の端部66f、67fにそれぞれ位置する。
【0050】
第1および第2の基板66、67において、サポート部材52が配置される領域は、実装領域として使用することが困難となる。サポート部材52を端部66e、66f、67e、67fに配置することで、第1および第2の基板66、67の中央近傍の領域を実装領域として使用することができる。これにより、第1および第2の基板66、67の導体パターンおよび実装部品の配置の自由度を高めることができる。
【0051】
一対のサポート部材52は、第1および第2の基板66、67のうち、いずれか一方の第1の端部66e、67eと、何れか一方の第2の端部66f、67fに配置されていればよい。第1および第2の基板66、67が、軸方向から見て、互いにずれて配置されている場合を例に挙げる。この場合、一対のサポート部材52は、例えば第1の基板66の第1の端部66eと、第2の基板67の第2の端部67fと、にそれぞれ配置されていてもよい。
【0052】
本明細書において、基板の端部とは、平面視において、基板の端面より内側に位置し端面の近傍の領域である。より具体的には、端面から径方向内側に向かって、端面と中心線との距離の30%以内に位置する領域を意味する。ここで、端面とは、基板の径方向外側を向く面である。
【0053】
一対のサポート部材52は、それぞれ28本のプレスフィットピン51を支持する。複数のプレスフィットピン51は、一方のサポート部材52に支持される第1のピン群58Aと、他方のサポート部材52に支持される第2のピン群58Bとに分類される。第1および第2のピン群58A、58Bにおいて、プレスフィットピン51は、2列に並んで水平面内(すなわち、X−Y平面内)の一方向に沿って配列されている。上述したように、制御部5は、2系統の制御回路を有する。第1のピン群58Aは、2系統の制御回路のうち一方の制御回路の一部を担い、第2のピン群58Bは、他方の制御回路の一部を担う。
【0054】
サポート部材52のサポート部材本体部52aは、プレスフィットピン51の先端部51a、51bの間に位置する部分を保持している。第1および第2の突起部53、54は、平面視で、プレスフィットピン51の配列方向の両側にそれぞれ位置している。したがって、第1および第2の突起部53、54は、1つのサポート部材52対して2つずつ設けられている。したがって、制御部5には、第1および第2の突起部53、54が、それぞれ4つずつ設けられている。
【0055】
本実施形態によれば、第1および第2の突起部53、54が、それぞれ制御部5に3以上設けられている。これにより、モータ本体3に対しカバー90を3点以上で支持することが可能となる。したがって、モータ本体3およびカバー90を、相対的な傾きを生じることなく軸方向に位置決めすることができる。
【0056】
本実施形態のサポート部材52は、第1および第2の突起部53、54において、それぞれモータ本体3およびカバー90と接触する。しかしながら、サポート部材52は、下側を向く面でモータ本体3と接触し、上側を向く面でモータ本体3と接触するものであれば、第1および第2の突起部53、54を有していなくてもよい。一例として、モータ本体およびカバーからサポート部材に向かって突出する突起部が設けられ、当該突起部において、モータ本体およびカバーとサポート部材が接触してもよい。
【0057】
<カバー>
図1に示すように、カバー90は、モータ本体3の上側に(+Z側)に位置する。カバー90は、下側(−Z側)に開口する筒状である。カバー90は、制御部5を収容する。カバー90の下側の開口は、モータ本体3により覆われている。
【0058】
カバー90は、第2の筒状部98と、第2の底部99と、を有する。
第2の底部99は、第2の筒状部98の上側(+Z側)の端部に設けられている。第2の底部99は、第2の筒状部98の上側の開口を覆う。
【0059】
図3に示すように、第2の底部99は、底本体部99aと、底本体部99aに対して下側に凹む段差部97と、を有する。段差部97は、下面(第2の接触面)97aを有する。下面97aは、下側を向く面である。下面97aは、第2の基板67の上面67bと上下方向に対向して接触する。また、下面97aは、サポート部材52の第2の突起部54と上下方向に対向して接触する。
【0060】
図1に示すように、第2の筒状部98は、制御部5の径方向外側を囲む。第2の筒状部98は、円筒状の筒本体98aと、筒本体98aの下側に位置する下端部91と、筒本体98aと下端部91との間に位置する外側フランジ部94および内側フランジ部96と、を有する。すなわち、カバー90は、下端部91、外側フランジ部94および内側フランジ部96を有する。
【0061】
下端部91は、接着剤ADが充填された溝部4に挿入されている。モータ本体3とカバー90とは、接着剤ADによって固定されている。また、接着剤ADは、封止部材として機能する。すなわち、モータ本体3の第2の上面3aと、カバー90の下端部91とは、封止部材(接着剤AD)によって封止されている。
なお、本実施形態では、封止部材として接着剤ADを採用する場合を例示した。しかしながら、モータ本体3とカバー90との隙間を塞ぐ封止部材として、パッキンなどを採用することができる。
【0062】
<組み付け工程>
次に、本実施形態のモータ本体3に対して、制御部5およびカバー90を組み付ける手順について、主に
図3を基に説明する。
まず、モータ本体3の第1の上面40aに設けられた収容凹部41に、スペーサ80を挿入する。
次いで、第1の上面40aにスペーサ80を介して第1の基板66を搭載する。
次いで、スペーサ80と第1の基板66をモータ本体3にネジ止めする。
次いで、複数のプレスフィットピン51を保持する一対のサポート部材52を第1の基板66の上側に配置する。さらに、第1の突起部53が、モータ本体3の第3の上面3bに接触するまで、サポート部材52を下側に移動させる。サポート部材52の下側への移動に伴って、プレスフィットピン51が、第1の基板66の孔66cに圧入される。
次いで、溝部4の内部に接着剤ADを充填する。
ここで、別途、カバー90に第2の基板67を固定した部分組み立て品を用意する。部分組み立て品は、カバー90に第2の基板67をネジ止めすることで、組み立てられている。
次いで、第2の突起部54がカバー90の下面97aに接触するまで部分組み立て品を下側に移動させる。この段階で、モータ本体3とカバー90とにスナップフィット部6(
図6参照、後段において説明)が作用する。スナップフィット部6は、接着剤ADが硬化するまでの間、モータ本体3とカバー90とを仮固定する。
次いで、接着剤ADの表面が硬化するまで待機する。
【0063】
本実施形態によれば、第1の突起部53が、モータ本体3の第3の上面3bに接触する位置まで、サポート部材52を下側に移動させることで、第1の基板66に対するプレスフィットピン51の圧入が完了する。このため、プレスフィットピン51の第1の先端部51aの圧入深さを容易に制御できる。言い換えると、第1の基板66に対するプレスフィットピン51の軸方向の位置のばらつきを抑制できる。なお、第2の突起部54についても、同様の効果を奏する。すなわち、本実施形態によれば、第2の突起部54が、カバー90の下面97aに接触する位置まで、カバー90を下側に移動させることで、第2の基板67に対するプレスフィットピン51の圧入が完了する。したがって、第2の基板67に対するプレスフィットピン51の軸方向の位置のばらつきを抑制できる。
【0064】
また、本実施形態によれば、プレスフィットピン51がサポート部材52に支持されるため、プレスフィットピン51の圧入時の荷重は、サポート部材52に加わる。これにより、プレスフィットピン51の座屈などの破損を抑制できる。
【0065】
本実施形態によれば、複数のプレスフィットピン51を一括してサポート部材52に支持させることで、複数のプレスフィットピン51の圧入を同時に行うことが可能となり、圧入作業を簡素化できる。
【0066】
本実施形態によれば、上下方向において、モータ本体3とカバー90との間にサポート部材52が介在する。これにより、上下方向において、モータ本体3とカバー90との間に隙間を設けることができる。また、本実施形態によれば、モータ本体3とカバー90とは、接着剤(封止部材)ADにより封止されている。言い換えると、サポート部材52が上側および下側において接触する2部材と、互いに封止される2部材と、が同じ部材である。すなわち本実施形態によれば、サポート部材52が上側および下側で接触する部材同士の間に隙間を設けるため、当該隙間に封止部材を配置することでカバー90の内外を封止できる。
【0067】
上述の実施形態において、モータ本体3の上側を向く面として、第1、第2および第3の上面40a、3a、3bが設けられている。また、第1の上面40aには、スペーサ80を介して第1の基板66の下面66aが接触する。第3の上面3bには、サポート部材52の第1の突起部53が接触する。しかしながら、第1、第2および第3の上面40a、3a、3bは、上下方向の位置が同じ、同一平面であってもよい。すなわち、スペーサ80と第1の突起部53が接触する面が、同一面であってもよい。
また、上述の実施形態において、カバー90の下面97aには、サポート部材52の第2の突起部54および第2の基板67の上面67bが接触する。しかしながら、カバー90が、それぞれ軸方向の位置が異なる2つの下面を有し、一方に第2の突起部54が接触し、他方に第2の基板67の上面67bが接触する構造であってもよい。
【0068】
[封止構造]
次に、モータ本体3とカバー90との間の接着剤ADによる封止構造についてより詳細に説明する。
図5は、
図1の領域Vの拡大図である。
図5に示すように、下端部91、外側フランジ部94および内側フランジ部96と、モータ本体3との間には、第1〜第5の空間A、B、C、D、Eが設けられている。第2の空間B、第5の空間E、第3の空間C、第4の空間D、第1の空間Aは、この順で径方向内側から径方向外側に向かって並んでいる。第1〜第5の空間A、B、C、D、Eには、接着剤ADが充填されている。
【0069】
本実施形態の接着剤ADは、湿気硬化型の接着剤である。湿気硬化型の接着剤は、空気中の水分により硬化する。接着剤ADとして湿気硬化型の接着剤を用いることで、水分による接着剤の劣化を抑制することができ、カバー90とモータ本体3との間の防水の信頼性を高めることができる。
【0070】
下端部91は、上下方向に沿って延びる。また、下端部91は、周方向に沿って延びる。下端部91は、モータ本体3の第2の上面(以下、封止面と呼ぶ)3aに設けられた溝部4に挿入される。
図2に示すように、溝部4は、中心軸Jを囲む環状に延びている。下端部91は、平面視で溝部4と重なる様に環状に延びる。下端部91は、溝部4の全長に亘って溝部4に挿入される。
【0071】
図5に示すように、下端部91は、下側を向く面である下面91aと、径方向外側を向く第1の側面91bと、径方向内側を向く第2の側面91cと、を有する。一方で、溝部4は、上側を向く底面4aと、径方向内側を向く第1の内壁面4bと、径方向外側を向く第2の内壁面4cと、を有する。
【0072】
下端部91の下面91aは、第3の空間Cを介して溝部4の底面4aと上下方向に対向する。下端部91の第1の側面91bは、第4の空間Dを介して溝部4の第1の内壁面4bと径方向に対向する。また、下端部91の第2の側面91cは、第5の空間Eを介して溝部4の第2の内壁面4cと径方向に対向する。第3〜第5の空間C、D、Eには、接着剤ADが充填されている。すなわち、溝部4には、接着剤ADが充填されている。
【0073】
下端部91の第1の側面91bと、溝部4の第1の内壁面4bと、は、第1の水平距離(距離)d1で水平方向に離間している。また、下端部91の第2の側面91cと、溝部4の第2の内壁面4cと、は、第2の水平距離(距離)d2で水平方向に離間している。第1の水平距離(距離)d1は、第2の水平距離(距離)d2と、等しい。すなわち、第4の空間Dの径方向に沿う寸法は、第5の空間Eの径方向に沿う寸法と等しい。
【0074】
外側フランジ部94は、下端部91の上側に位置する。外側フランジ部94は、下端部91の上端から径方向外側に延びる。
外側フランジ部94は、下面94bを有する。下面94bは、下側を向く面である。外側フランジ部94は、下面94bにおいて、第1の空間Aを介して封止面3aと上下方向に対向する。第1の空間Aには、接着剤ADが充填されている。
【0075】
外側フランジ部94の下面94bは、水平部94cと、傾斜部94dと、を有する。水平部94cは、下端部91の上端から軸方向と直交する方向(X軸方向)に沿って径方向外側に延びる。傾斜部94dは、水平部94cの径方向外側に位置し径方向外側に向かうに従い上側に向かって傾斜する。
【0076】
外側フランジ部94は、径方向外端94aにおいて、封止面3aと第1の鉛直距離(距離)h1で上下方向に離間している。また、外側フランジ部94は、径方向外端94aより径方向内側の部分において、封止面3aと第2の鉛直距離(距離)h2で上下方向に離間している。第1の鉛直距離h1は、第2の鉛直距離h2より、大きい。
【0077】
内側フランジ部96は、下端部91の上側に位置する。内側フランジ部96は、下端部91の上端から径方向内側に延びる。
本実施形態において、内側フランジ部96は、筒本体98aの下端部から径方向外側に延びる。すなわち、内側フランジ部96は、筒本体98aの下端部より径方向外側に位置する。しかしながら、筒本体98aの下端部と内側フランジ部96および外側フランジ部94の径方向に沿う位置関係は本実施形態に限定されない。一例として、内側フランジ部96は、筒本体98aの下端部から径方向内側に延びていてもよい。
本実施形態において、内側フランジ部96の上下方向の位置は、外側フランジ部94の上下方向の位置と一致する。しかしながら、内側フランジ部96と外側フランジ部94とは、上下方向の異なる位置に設けられていてもよい。
【0078】
内側フランジ部96は、下面96bを有する。下面96bは、下側を向く面である。内側フランジ部96は、下面96bにおいて、第2の空間Bを介して封止面3aと上下方向に対向する。第2の空間Bには、接着剤ADが充填されている。
【0079】
内側フランジ部96の下面96bは、水平部96cと、傾斜部96dと、を有する。水平部96cは、下端部91の上端から軸方向と直交する方向(X軸方向)に沿って径方向内側延びる。傾斜部96dは、水平部96cの径方向内側に位置し径方向内側に向かうに従い上側に向かって傾斜する。
【0080】
内側フランジ部96は、径方向内端96aにおいて、封止面3aと第3の鉛直距離(距離)h3で上下方向に離間している。また、内側フランジ部96は、径方向内端96aより径方向外側の部分において、封止面3aと第4の鉛直距離(距離)h4で上下方向に離間している。第3の鉛直距離h3は、第4の鉛直距離h4より、大きい。
【0081】
なお、外側フランジ部94および内側フランジ部96の水平部94c、96cは、省略されていてもよい。また、水平部94c、96cに相当する部分に、傾斜部94d、96dの傾斜方向と反対側に傾斜する面が設けられていてもよい。
【0082】
次に、モータ本体3とカバー90とを接着固定する手順について説明する。
まず、モータ本体3の溝部4の内部に未硬化の接着剤ADを充填する。
次いで、モータ本体3に対してカバー90を上側から近づけて溝部4に下端部91を挿入する。これにより、未硬化の接着剤ADが溝部4の開口から溢れ出る。これにより、外側フランジ部94および内側フランジ部96と封止面3aとの間(すなわち、第1および第2の空間A、B)に接着剤ADが流入し、第1および第2の空間A、Bが接着剤ADにより満たされる。
次いで、接着剤ADを硬化させる。
以上の工程を経ることで、モータ本体3とカバー90とが接着固定される。
【0083】
本実施形態によれば、外側フランジ部94は、接着剤ADが充填された第1の空間Aを介して封止面3aと対向している。接着剤ADは、径方向外側に向かって露出している。したがって、接着剤ADとして、湿気硬化型の接着剤を用いる場合などにおいては、接着剤ADの硬化時間を短くすることができる。また、湿気硬化型の接着剤は、空気に曝露される表面部分において空気中の水分と反応して表面から深部に向かって徐々に硬化する。接着剤ADとして湿気硬化型の接着剤を用いることで、モータ1の組立てラインにおいて、第1の空間Aの露出部分が硬化した時点で、次工程を行うことが可能となる。本実施形態によれば、工程中の接着剤ADの硬化のための待機時間を飛躍的に短くできる。
【0084】
本実施形態によれば、外側フランジ部94と封止面3aとの間の距離が、外側フランジ部94の下面94bの傾斜部94dにおいて径方向外側に向かうに従い大きくなっている。したがって、第1の空間Aに充填された接着剤ADの径方向外側を向く露出部分を広く確保することができる。これにより、空気に曝露される接着剤ADの面積を広く確保して接着剤の硬化を促進できる。この効果は、内側フランジ部96と封止面3aとの間(第2の空間B)の接着剤ADに対しても期待できる効果である。
【0085】
本実施形態によれば、第1の空間Aにおいて、接着剤ADが径方向外側に向かって露出している。したがって、接着剤ADが第1の空間Aに充填状態および硬化状態などを外観から確認することができる。このため、製造ラインにおける製品の品質確保が容易となる。
【0086】
本実施形態によれば、第1の空間Aは、外側フランジ部94の径方向外端94aの近傍において、軸方向に広くなっており、径方向外側に向かうに従いより多くの接着剤ADを溜めることができる。したがって、接着剤ADの充填量がばらついた場合であっても、接着剤ADを第1の空間Aにおいて傾斜部94dの下側で溜めることができる。これにより、接着剤ADが、外側フランジ部94の径方向外端94aより径方向外側にはみ出すことを抑制できる。また、外観の意匠性が高いモータ1を提供できる。
【0087】
本実施形態によれば、第2の空間Bは、内側フランジ部96の径方向内端96aの近傍において、軸方向に広くなっており、径方向内側に向かうに従いより多くの接着剤ADを溜めることができる。したがって、接着剤ADの充填量がばらついた場合であっても、接着剤ADを第2の空間Bにおいて、傾斜部96dの下側で溜めることができる。これにより、接着剤ADが、内側フランジ部96の径方向内端96aより径方向内側にはみ出すことを抑制できる。また、カバー90の内部において、接着剤ADが電子部品に付着することを抑制でき、信頼性を高めたモータ1を提供できる。
【0088】
本実施形態によれば、内側フランジ部96は、接着剤ADが充填された第2の空間Bを介して封止面3aと対向している。すなわち、カバー90は、外側フランジ部94のみならず、内側フランジ部96において、モータ本体3の封止面3aと接着固定されている。これにより、カバー90とモータ本体3との間の接着面積を広く確保して、接着強度を高めることができる。
【0089】
また、本実施形態によれば、外側フランジ部94および内側フランジ部96と封止面3aとの間には、上下方向に延びる第1および第2の空間A、Bが設けられている。また、下端部91の下面91aと溝部4の底面4aとの間には、上下方向に延びる第3の空間Cが設けられている。すなわち、モータ本体3とカバー90は、上下方向において直接的に接触しない。このため、他の部分においてモータ本体3とカバー90とを接触さて、他の部分で上下方向の位置決めを行うことができる。より具体的には、
図3に示すように、上下方向において、サポート部材52をモータ本体3とカバー90との間に挟み込ませることで、モータ本体3とカバー90との上下方向の相対的な位置決めを行うことができる。したがって、寸法管理が容易な他の部材(本実施形態におけるサポート部材52)の上下寸法の精度を高めることで、モータ本体3に対するカバー90の上下方向の位置のばらつきを抑制できる。
【0090】
本実施形態によれば、
図2に示すように、溝部4は、周方向に沿って延びて中心軸Jを囲む環状に設けられている。したがって、溝部4に接着剤ADを充填してモータ本体3とカバー90とを固定することで、溝部4の内側を確実に封止でき、モータ1の防水性能および防塵性能を高めることができる。加えて、接着剤ADを周方向に沿って一様に設けることができるため、各方向からの応力に対して安定した接着強度で、モータ本体3とカバー90とを互いに固定できる。
【0091】
本実施形態によれば、下端部91の外面と溝部4の内面との間に接着剤ADで満たされた第3〜第5の空間C、D、Eが設けられている。これにより、下端部91と溝部4との接触面積が増加して、カバー90とモータ本体3とを強固に固定することができる。
【0092】
モータ本体3およびカバー90に互いに反対向きの応力が加わった場合を想定する。この場合、第3の空間Cに満たされた接着剤ADには、底面4aおよび下面91aの法線方向の剥離力が付与される。一方で、第4および第5の空間D、Eには、せん断方向の剥離力が付与される。一般的に接着剤は、面の法線方向に対する剥離力が強い。本実施形態によれば、下端部91の下面91aと溝部4の底面4aとの間に接着剤ADが満たされた第3の空間が設けられていることによって、軸方向の応力に対してモータ本体3とカバー90とを強固に接着できる。
【0093】
モータ本体3およびカバー90に対して互いに反対側の径方向の応力が加わった場合を想定する。この場合、第4および第5の空間D、Eに満たされた接着剤ADのうち一方には引張方向の剥離力が付与され他方には圧縮力が付与される。接着剤ADは、引張方向の剥離力に対して剥離する場合があるが、圧縮力に対して剥がれることはない。本実施形態によれば、下端部91を介して、第4および第5の空間D、Eにそれぞれ接着剤ADが満たされることによって、径方向の応力に対してモータ本体3とカバー90とを強固に接着できる。
【0094】
本実施形態によれば、第1の水平距離d1と、第2の水平距離d2とが等しいことで、径方向における接着剤ADの厚さを均一とすることができ、各方向からの応力に対する接着強度を安定させることができる。
本実施形態によれば、第4の空間Dの第1の水平距離d1と、第5の空間Eの第2の水平距離d2とが等しい。未硬化の接着剤ADで満たされた溝部4に下端部91を挿入する際に、第4の空間Dおよび第5の空間Eにおいて流動する接着剤ADの状態を互いに近い状態にすることができる。溝部4の開口からあふれ出す接着剤ADの量を径方向内側および外側で略同じとすることができる。これにより、外側フランジ部94と封止面3aとの間(第1の空間A)と、内側フランジ部96と封止面3aとの間(第2の空間B)と、の接着剤ADの量を略同じとすることができる。また、第1および第2の空間A、Bの両方に、接着剤ADを十分に行き渡らせることができ、安定した固定が可能となる。
【0095】
溝部4の第1および第2の内壁面4b、4cは、底面4aから開口側に向かうに従い互いに離れる方向に傾斜している。すなわち、溝部4は、径方向に沿う寸法が上側に向かうに従い大きくなっている。実施形態によれば、未硬化の接着剤ADで満たされた溝部4に下端部91を挿入する際に、溝部4の第1および第2の内壁面4b、4cに沿って接着剤ADを円滑に流動させることができる。これにより、第1および第2の空間A、Bの両方に、接着剤ADを十分に行き渡らせることができ、安定した固定が可能となる。
なお、本実施形態において、第1および第2の水平距離d1、d2は、それぞれ軸方向に沿ってほぼ一様な距離である。しかしながら、第1および第2の水平距離d1、d2が、軸方向に沿って一様でない場合には、上下方向において同じ位置において、第1および第2の水平距離d1、d2が等しければ上述の効果を奏することができる。
【0096】
図6は、モータ本体3とカバー90との境界部分におけるモータ1の外観図である。
モータ本体3とカバー90とは、スナップフィット部6により、互いに固定されている。スナップフィット部6は、周方向に沿ってモータ1に複数設けられている。
【0097】
スナップフィット部6は、カバー90に設けられたかかり部93と、モータ本体3に設けられた爪部48と、から構成されている。
カバー90のかかり部93は、外側フランジ部94から径方向外側に延びる一対の延出部93aと、一対の延出部93aの径方向側の端部から下側に延びるU字部93bと、を有する。
爪部48は、モータ本体3のベアリングホルダ40において封止面3aから連なる外周面47に位置する。爪部48は、外周面47から径方向外側に突出する。爪部48は、上側傾斜面48aと、上側傾斜面48aより下側に位置するかかり面48bと、を有する。上側傾斜面48aは、下側に向かうに従い径方向外側に向かって傾く。かかり面48bは、下側を向く平面である。
【0098】
組み立て工程において、作業者がカバー90を軸方向に沿ってモータ本体3に近づけるに従い、かかり部93のU字部93bは、爪部48のかかり面48bの下側まで移動する。これにより、かかり部93が爪部48に引っかかる。スナップフィット部6は、モータ本体3に対しカバー90が上側に移動することを抑制し、モータ本体3とカバー90とを固定する。スナップフィット部6は、モータ本体3にカバー90が組み付けられてから接着剤ADが硬化するまでの間、モータ本体3に対しカバー90を保持する為に設けられている。
【0099】
<変形例>
図7に、上述の実施形態の変形例のモータ101の断面模式図を示す。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0100】
本変形例のモータ101は、モータ本体3と、モータ本体3の上側に位置する制御部105と、制御部105を径方向外側および上側から囲むカバー190と、を備える。
【0101】
カバー190は、モータ本体3の上側に(+Z側)に位置する。カバー190は、下側(−Z側)に開口する筒状である。カバー190は、制御部105を収容する。カバー190の下側の開口は、モータ本体3により覆われている。
【0102】
カバー190は、筒状部198と、底部199と、コネクタホルダ部107と、を有する。筒状部198は、制御部105を径方向外側から囲む。底部199は、筒状部198の上側の開口を覆う。
【0103】
コネクタホルダ部107は、底部199と連結されている。コネクタホルダ部107は、底部199の上面199bから上側に延びるコネクタ保持部107aと、コネクタ保持部107aの上側に位置するコネクタケース部107bと、を有する。コネクタ保持部107aは、コネクタ部108を保持する。コネクタケース部107bは、コネクタ部108の周囲を囲んでコネクタ部108を保護する。
【0104】
制御部105は、モータ本体3のロータ20の回転を制御する。制御部105は、基板166と、コネクタ部108と、サポート部材152と、を有する。
【0105】
基板166は、中心軸Jに直交する方向に沿って配置されている。基板166には、ステータ30から引き出されたコイル線33aの端部が接続されている。また、基板166には、サポート部材152の突起部153が通過する貫通孔166hと、コネクタ部108のプレスフィットピン108aが挿入される孔166cと、が設けられている。貫通孔166hおよび孔166cは、上下方向に基板166を貫通する。
【0106】
コネクタ部108は、基板166に構成された制御回路と外部機器9とを接続する為に設けられている。コネクタ部108は、導線性の金属材料からなる。コネクタ部108は、プレスフィットピン108aと、屈曲部108bと、外部接続端子108cと、を有する。すなわち、制御部105は、プレスフィットピン108aを有する。
【0107】
プレスフィットピン108aは、上下方向に沿って延びる。プレスフィットピン108aの下側先端部108dは、基板166の上面166b側から基板166に設けられた孔166cに圧入されている。これにより、プレスフィットピン108aは、基板166と電気的に導通する。すなわち、プレスフィットピン108aは、基板166に設けられた孔166cに挿入されて電気的に導通する。
【0108】
外部接続端子108cは、上下方向に沿って延びる。外部接続端子108cの下側寄りの部分は、カバー190のコネクタ保持部107aに埋め込まれている。外部接続端子108cのコネクタ保持部107aに埋め込まれた部分より上側の部分は、カバー190の外側に突出する。すなわち、外部接続端子108cは、コネクタ保持部107aに一部埋めこまれ、カバー190の外側に突出する。コネクタ部108は、外部接続端子108cの先端で、外部機器9と接続される。
なお、本変形例では、外部接続端子108cがモータ本体3に対し上側に沿って延びて、モータ1の上側に位置する外部機器9に接続される場合を例示する。しかしながら、外部接続端子108cが延びる方向は、本変形例に限定されない。例えば、モータ本体3の中心軸Jに対し直交する方向に延びて、モータ1の横側に位置する外部機器9に接続する構成を採用してもよい。
【0109】
屈曲部108bは、プレスフィットピン108aの上端と外部接続端子108cの下端とを連結する。
図7に示すように、プレスフィットピン108aと、外部接続端子108cとは、軸方向と直交する方向(本変形例では、径方向)にずれて配置されている。したがって、屈曲部108bは、軸方向と直交する方向に沿って延びる。また、屈曲部108bは、カバー190の下面190aに沿って延びる。屈曲部108bは、カバー190の下面190aと上下方向に対向し接触する。これにより、プレスフィットピン108aを基板166に圧入する際の応力を、カバー190の下面190aにおいて受けることができる。このため、インサート成型などにより、カバー190にコネクタ部108を組み込んだ状態で、カバー190をモータ本体3に対し下側に移動させることで、プレスフィットピン108aを基板166に容易に圧入できる。
【0110】
サポート部材152は、サポート部材本体部152aと突起部153とを有する。サポート部材本体部152aは、カバー190の下側を向く面である底部199の下面199aと、基板166の上面166bとの間に位置する。サポート部材本体部152aは、下端面において、基板166の上面166bと接触する。サポート部材本体部152aは、上端面においてカバー190の下面199aと接触する。突起部153は、基板166に設けられた貫通孔166hを通過する。突起部153は、モータ本体3の上側を向く面である上面103bと接触する。
【0111】
本変形例によれば、コネクタ部108が基板166に圧入されるプレスフィットピン108aを有する。このため、コネクタ部108と基板166との電気的な接続に半田などをもちいる必要がなく、組み立て工程を簡素化できる。
【0112】
本変形例によれば、サポート部材152が、カバー190の底部199およびモータ本体3と接触して挟み込まれている。このため、サポート部材152の上下方向の精密な寸法管理を行うことで、モータ本体3に対するカバー190の上下方向の位置精度を高めることができる。また、これに伴い、プレスフィットピン108aの圧入深さのばらつきを抑制することができる。
なお、本変形例においては、コネクタ部108が、カバー190と一体となっている。しかしながら、コネクタ部108とカバー190とは別体となっている。
【0113】
<<電動パワーステアリング装置>>
次に、本実施形態のモータ1(又は、変形例のモータ101)を搭載する装置の実施形態について説明する。本実施形態においては、モータ1を電動パワーステアリング装置に搭載した例について説明する。
図8は、本実施形態の電動パワーステアリング装置2を示す模式図である。
【0114】
電動パワーステアリング装置2は、自動車の車輪の操舵機構に搭載される。本実施形態の電動パワーステアリング装置2は、モータ1の動力により操舵力を直接的に軽減するラック式のパワーステアリング装置である。電動パワーステアリング装置2は、モータ1と、操舵軸914と、車軸913と、を備える。
【0115】
操舵軸914は、ステアリング911からの入力を、車輪912を有する車軸913に伝える。モータ1の動力は、図示略のボールねじを介して、車軸913に伝えられる。ラック式のパワーステアリング装置2に採用されるモータ1は、車軸913に取り付けられ外部に露出しているため、防水構造を必要とする。
【0116】
本実施形態の電動パワーステアリング装置2は、本実施形態のモータ1を備える。このため、本実施形態と同様の効果を奏する電動パワーステアリング装置2が得られる。
なお、ここでは、本実施形態のモータ1の使用方法の一例としてパワーステアリング装置2を挙げたが、モータ1の使用方法は限定されない。
【0117】
以上に、本発明の実施形態および変形例を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0118】
なお、上述の実施形態においては、基板同士を接続するための圧入端子を「プレスフィットピン」と呼んで説明した。しかしながら、採用される端子は、基板との接続に圧入機構を備えた圧入端子であれば、「プレスフィットピン」の名称に限定されることなく、代替可能な如何なる端子を用いてもよい。例えば、一方の先端部が、圧入によって接続され、他方の先端部が溶接や半田によって接続されるものであってもよい。
【0119】
また、上述の実施形態において、プレスフィットピンと、プレスフィットピンを支持するサポート部材は、一体であってもよい。一例として、プレスフィットピンを樹脂でモールドしたサポート部材を採用してもよい。