特許第6981007号(P6981007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981007樹脂組成物、樹脂シート及びプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981007
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂シート及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20211202BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 23/22 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20211202BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 7/22 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20211202BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C08L71/12
   C08G65/48
   C08L21/00
   C08L9/00
   C08L23/22
   C08L27/12
   C08L83/04
   C08K3/013
   C08K3/36
   C08K7/22
   C08K7/14
   C08L63/00 A
   C08L79/00 Z
   C08K5/3415
   C08K5/5399
   C08K5/29
   C08L53/02
   H05K1/03 610H
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-25603(P2017-25603)
(22)【出願日】2017年2月15日
(65)【公開番号】特開2018-131519(P2018-131519A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】若林 潤
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 恵一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥一
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−131866(JP,A)
【文献】 特開2018−095815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00− 101/14
C08K 3/00− 13/08
B32B 1/00− 43/00
C08J 5/12− 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に不飽和炭化水素含有基を有するポリフェニレンエーテル樹脂(A)、SP値が9(cal/cm31/2以下、重量平均分子量が80000以上でかつ、25℃で固体であるエラストマー(B)、SP値が9(cal/cm31/2以下、重量平均分子量40000以下でかつ、25℃で液体であるエラストマー(C)、および、シアン酸エステル化合物を含有し、
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対し、50〜95質量部である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(A)が重量平均分子量1000〜5000である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(A)が一般式(1)で表されるものである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式中、−(O−X−O)−は、一般式(2)又は一般式(3)で定義される構造からなる。−(Y−O)−は、一般式(4)で定義され、1種類の構造又は2種類以上の構造がランダムに配列している。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。)
【化2】
(R1,R2,R3,R7,R8は、同一又は異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。R4,R5,R6は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。)
【化3】
(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。−A−は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基である。)
【化4】
(R17,R18は、同一又は異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。R19,R20は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。)
【請求項4】
前記エラストマー(B)が、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、それらの水添化合物、それらのアルキル化合物、及びそれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エラストマー(C)が、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム及びシリコーンゴムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、無機充填材(D)を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記無機充填材(D)が、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ及びガラス短繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機充填材(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対し、10〜250質量部である、請求項6または7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、エポキシ樹脂、マレイミド化合物及びホスファゼン化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記エラストマー(B)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対し、0.5〜30質量部である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記エラストマー(C)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対し、0.5〜30質量部である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む樹脂シート。
【請求項13】
請求項12に記載の樹脂シートからなるプリント配線板のビルドアップ材。
【請求項14】
絶縁層と、該絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、該絶縁層が、請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピール強度、吸湿後の耐熱性、電気特性に優れた樹脂組成物、これを用いた樹脂シート及びプリント配線板に関する。得られた樹脂組成物は鉛フリーはんだリフロー対応、高周波,高多層用途のプリント配線板用として、マザーボード用、更には半導体チップを搭載した半導体プラスチックパッケージ用等に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューター、サーバーをはじめとする情報端末機器及びインターネットルーター、光通信などの通信機器は、大容量の情報を高速で処理することが要求され、電気信号の高速化・高周波化が進んでいる。それに伴い、これらに用いられるプリント配線板用の積層板は高周波への要求に対応するため、低誘電率・低誘電正接化、特に低誘電正接化が求められている。これら要求に対応するため、従来から高周波用途の積層板にはポリフェニレンエーテルを主成分とした熱硬化性の樹脂(例えば特許文献1参照)が用いられている。しかし、ポリフェニレンエーテルを主成分とする樹脂組成物からなるシートはハンドリング時の取り扱い性が悪く、樹脂組成物にクラックが容易に入り支持体から脱落してしまうため、可撓性を付与する成分としてポリブタジエンゴムやスチレン‐ブタジエンゴム(例えば特許文献2、3参照)やエポキシ樹脂、低分子量ビスマレイミド樹脂(例えば特許文献4参照)と合わせて使用される。
【0003】
しかしながら、耐クラック性を重視してこれらの成分を含むだけでは樹脂組成物からなるシートをビルドアップ材として使用するプリント配線板を製造する際に反りが大きく発生し以降のプロセスを実施することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−129319号公報
【特許文献2】特開2005−105061号公報
【特許文献3】特開2009−001787号公報
【特許文献4】特開2016−010964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、他の積層板と張り合わせて積層板を構成するプロセスにおける取り扱い性に優れ、反りやクラックが生じにくく、さらに電気特性、ピール強度などを低下させることのない高周波用多層プリント配線板に適した熱硬化変性ポリフェニレンエーテルをベースとした樹脂組成物及びこれを用いた金属箔張り積層板及び樹脂シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、この課題を解決するため、鋭意検討した結果、ポリフェニレンエーテル樹脂に常温で固体と液体のエラストマーを配合し、さらに必要に応じて無機充填材を併用することで、この組成物からなる樹脂シートを他の積層板に張り合わせる工程で反りやクラックが生じにくく、さらに電気特性、ピール強度などを低下させないことを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]
ポリフェニレンエーテル樹脂(A)、SP値が9(cal/cm1/2以下、重量平均分子量が80000以上でかつ、25℃で固体であるエラストマー(B)及びSP値が9(cal/cm1/2以下、重量平均分子量40000以下でかつ、25℃で液体であるエラストマー(C)を含有する、樹脂組成物。
[2]
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(A)が重量平均分子量1000〜5000である[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(A)が一般式(1)で表されるものである、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式中、−(O−X−O)−は、一般式(2)又は一般式(3)で定義される構造からなる。−(Y−O)−は、一般式(4)で定義され、1種類の構造又は2種類以上の構造がランダムに配列している。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。)
【化2】
(R,R,R,R,Rは、同一又は異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。R,R,Rは、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。)
【化3】
(R,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。−A−は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基である。)
【化4】
(R17,R18は、同一又は異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。R19,R20は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。)
[4]
前記エラストマー(B)が、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、それらの水添化合物、それらのアルキル化合物、及びそれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[5]
前記エラストマー(C)が、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム及びシリコーンゴムからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[6]
さらに、無機充填材(D)を含有する[1]〜[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[7]
前記無機充填材(D)が、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ及びガラス短繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、[6]に記載の樹脂組成物。
[8]
さらに、エポキシ樹脂、シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物及びホスファゼン化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[9]
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対し、50〜80質量部である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[10]
前記エラストマー(B)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対し、0.5〜30質量部である、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[11]
前記エラストマー(C)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対し、0.5〜30質量部である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[12]
前記無機充填材(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対し、10〜250質量部である、[6]〜[11]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[13]
[1]〜[12]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む樹脂シート。
[14]
[13]に記載の樹脂シートからなるプリント配線板のビルドアップ材。
[15]
絶縁層と、該絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、該絶縁層が、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、プリント配線板。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物と有機溶剤からなる溶液、すなわちワニスを金属箔又はフィルム上に塗工して得られる樹脂シートは他の積層板に張り合わせても反りやクラックを生じにくいため、工程を滞らせることなく、該樹脂組成物から得られるプリント配線板は、吸湿後の耐熱性、ピール強度、電気特性、寸法安定性、成形性などの特性が、高多層・高周波対応のプリント配線板材料に好適であり、工業的な実用性は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に使用されるポリフェニレンエーテル樹脂(A)は、一般式(5)で表される構造を有する。
【化5】
(R21,R22,R23,R24はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアルケニルカルボニル基を示す。mは1〜100の整数を示す。)
【0010】
上記の一般式(5)において、mの値は一般式(5)のポリフェニレンエーテルの数平均分子量が1000以上5000以下となるように調整される。つまり、mは固定値ではなく、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物に含まれるポリフェニレンエーテル全体の数平均分子量が1000以上5000以下となるような、ある一定の範囲内の変数であってもよい。数平均分子量がこの範囲内にあると、流動性、耐熱性、及び電気特性を得られる。
【0011】
また、上記の数平均分子量のポリフェニレンエーテルは数平均分子量が小さいほど混合物との相溶性が高くなる。したがって、相分離に起因した粘度上昇が起きにくく、低分子量である架橋型硬化剤の揮発が抑制される。その結果、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物のビアホール等への埋め込み性を向上させることができる。
【0012】
一般式(5)におけるアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、下記で説明するものを用いることが可能である。アルケニルカルボニル基としては、上記のアルケニル基により置換されたカルボニル基を用いることができる。具体的には、アクリロイル基、メタクリロイル基を用いることができる。
【0013】
ここで、一般式(5)は、置換基R21,R22,R23,R24としてビニル基、2−プロピレン基(アリル基)、メタクリロイル基、アクリロイル基、2−プロピン基(プロパルギル基)などの不飽和炭化水素含有基を有していてもよい。置換基R21,R22,R23,R24に上記の不飽和炭化水素含有基が備えられていることで、架橋型硬化剤のより顕著な効果を得ることができる。
【0014】
上記の基を末端に有するポリフェニレンエーテルは、架橋型硬化剤との相互作用が良好である。したがって、比較的少量の架橋型硬化剤を添加するだけで耐熱性を向上させることができ、低誘電率化を実現することができる。
【0015】
(アルキル基)
一般式(5)におけるアルキル基としては、飽和炭化水素基を用いることができる。上記のアルキル基としては、炭素数が1〜10のアルキル基を用いるとよい。好ましくは、上記のアルキル基として炭素数が1〜6のアルキル基を用いるとよい。さらに好ましくは、上記のアルキル基として炭素数が1〜4のアルキル基を用いるとよい。さらに好ましくは、上記のアルキル基として炭素数が1又は2のアルキル基を用いるとよい。具体的には、アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基を用いることができる。
【0016】
(アルケニル基)
一般式(5)におけるアルケニル基としては、構造中に少なくとも一つの炭素‐炭素二重結合を有する不飽和炭化水素基を用いることができる。上記のアルケニル基としては、炭素数が2〜10のアルケニル基を用いるとよい。好ましくは、上記のアルケニル基として炭素数が2〜6のアルケニル基を用いるとよい。さらに好ましくは、上記のアルケニル基として炭素数が2〜4のアルケニル基を用いるとよい。具体的には、アルケニル基として、エチレン基、1−プロピレン基、2−プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基を用いることができる。
【0017】
(アルキニル基)
一般式(5)におけるアルキニル基としては、構造中に少なくとも一つの炭素‐炭素三重結合を有する不飽和炭化水素基を用いることができる。上記のアルキニル基としては、炭素数が2〜10のアルキニル基を用いるとよい。好ましくは、上記のアルキニル基として炭素数が2〜6のアルキニル基を用いるとよい。さらに好ましくは、上記のアルキニル基として炭素数が2〜4のアルキニル基を用いるとよい。具体的には、アルキニル基として、エチン基、1−プロピン基、2−プロピン基、イソプロピン基、ブチン基、イソブチン基、ペンチン基、ヘキシン基を用いることができる。
【0018】
本発明に使用されるポリフェニレンエーテル樹脂(A)の好ましい形態は一般式(1)で表される。
【化6】
(式中、−(O−X−O)−は、一般式(2)又は一般式(3)で定義される構造からなる。−(Y−O)−は、一般式(4)
で定義され、1種類の構造又は2種類以上の構造がランダムに配列している。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。)
【化7】
(R,R,R,R,Rは、同一又は異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、R,R,Rは、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。)
【化8】
(R,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、−A−は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基である。)
【化9】
(R17,R18は、同一又は異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基であり、R19,R20は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。)
また、本発明の樹脂組成物には、構造の異なる2種類以上のポリフェニレンエーテル樹脂(A)が混合されていてもよい。
【0019】
一般式(3)における−A−としては、例えば、メチレン、エチリデン、1−メチルエチリデン、1,1‐プロピリデン、1,4‐フェニレンビス(1−メチルエチリデン)、1,3‐フェニレンビス(1−メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1−フェニルエチリデン等の2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明におけるポリフェニレンエーテル樹脂(A)のなかでは、R,R,R,R,R,R17,R18が炭素数3以下のアルキル基であり、R,R,R,R,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16,R19,R20が水素原子又は炭素数3以下のアルキル基である化合物が好ましく、特に一般式(2)又は一般式(3)で表される−(O−X−O)−が、式(6)あるいは一般式(7)又は一般式(8)であり、一般式(4)で表される−(Y−O)−が一般式(9)又は一般式(10)あるいは一般式(9)と一般式(10)がランダムに配列した構造を有する化合物であることがより好ましい。
【化10】
【化11】
(式中、R25,R26,R27,R28は、水素原子又はメチル基である。−A−は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基である。)
【化12】
(−A−は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基である。)
【化13】
【化14】
【0021】
ポリフェニレンエーテル樹脂(A)のGPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量は1000〜5000の範囲が好ましい。数平均分子量がこの範囲にあると、塗膜状にした際にべたつきが出にくく、また溶剤への溶解性が向上する。
【0022】
これらのビニル化合物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、2官能フェノール化合物と1官能フェノール化合物を酸化カップリングさせて得られる2官能フェニレンエーテルオリゴマーの末端フェノール性水酸基をビニルベンジルエーテル化することで製造することができる。
【0023】
2官能フェニレンエーテルオリゴマーは、例えば、2官能フェノール化合物、1官能フェノール化合物、触媒を溶剤に溶解させた後、加熱攪拌下で酸素を吹き込むことで製造することができる。2官能フェノール化合物としては、例えば、2,2’,3,3’,5,5’‐ヘキサメチル‐(1,1’‐ビフェノール)−4,4’‐ジオール、4,4’‐メチレンビス(2,6‐ジメチルフェノール)、4,4’‐ジヒドロキシフェニルメタン、4,4’‐ジヒドロキシ‐2,2’−ジフェニルプロパン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。1官能フェノールとしては、2,6‐ジメチルフェノール、2,3,6‐トリメチルフェノール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。触媒としては、例えば、CuCl、CuBr、CuI、CuCl、CuBr等の銅塩類とジn−ブチルアミン、n−ブチルジメチルアミン、N,N’‐ジt‐ブチルエチレンジアミン、ピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール等のアミン類を組合せたものが使用できるが、これらに限定されるものではない。溶剤としては、例えば、トルエン、メタノール、メチルエチルケトン、キシレン等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
2官能フェニレンエーテルオリゴマーの末端フェノール水酸基をビニルベンジルエーテル化する方法としては、例えば、2官能フェニレンエーテルオリゴマーとビニルベンジルクロライドを溶剤に溶解させ、加熱攪拌下で塩基を添加して反応させた後、樹脂を固形化することで製造できる。ビニルベンジルクロライドとしては、o‐ビニルベンジルクロライド、m‐ビニルベンジルクロライド、p‐ビニルベンジルクロライド、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。反応後に余った塩基を中和するために酸を使用することもできる。
【0026】
中和に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、りん酸、ホウ酸、硝酸、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記ビニルベンジルエーテル化の反応溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、クロロホルム等が使用できるが、これらに限定されるものではない。固形化の方法としては、溶剤をエバポレーションし乾固させる方法、反応液を貧溶剤と混合し再沈殿させる方法、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の樹脂組成物における含有量は、樹脂固形分100質量部に対し、30〜95質量部が好ましく、50〜80質量部が特に好ましい。この範囲内にあると、樹脂組成物の電気特性と反応性が向上する。
ここで、樹脂固形分とは、樹脂組成物中の無機充填材と溶剤を除いた各成分の合計質量をいうものとする。
【0029】
本発明に使用されるエラストマー(B)は、SP値が9(cal/cm1/2以下、重量平均分子量が80000以上でかつ、25℃で固体であれば特に制限はなく、公知のものを使用することができる。SP値とは、溶解パラメーターと呼ばれるもので、1cmの液体が蒸発するために必要な蒸発熱の平方根(cal/cm1/2から計算される。一般にこの値が小さいものほど極性が低く、この値が近いほど2成分間の親和性が高いとされ、エラストマー(B)のSP値が9(cal/cm1/2以下であると、高周波用途のプリント配線板に使用される樹脂組成物に適した電気特性が得られる。
【0030】
エラストマー(B)の構造として例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、それらの水添化合物、それらのアルキル化合物、及びそれらの共重合体などが挙げられる。
その中でも、電気特性の観点からスチレンブタジエン、それらの水添化合物、それらのアルキル化合物、及びそれらの共重合体が好ましい。
そのようなものとして例えば、スチレンブタジエンエチレン、スチレンブタジエンスチレン、スチレンイソプレンスチレン、スチレンエチレンブチレンスチレン、スチレンプロピレンスチレン、スチレンエチレンプロピレンスチレンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)や溶剤との相溶性、電気特性の観点からスチレンブタジエンスチレンが好ましい。
これらのエラストマー成分は、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用しても良い。
【0031】
エラストマー(B)のGPC法によるポリスチレン換算の重量平均分子量は80000以上である。重量平均分子量がこの範囲にあると、25℃で固体となり、耐クラック性が向上する。
【0032】
エラストマー(B)の樹脂組成物における含有量は、クラックの発生、他の積層板に張り合わせた時の反りの大きさ、耐熱性、弾性率の観点から樹脂組成物中の樹脂固形分の合計100質量部に対して、0.5〜30質量部の範囲が好ましい。このような範囲にあることで、耐クラック性、耐熱性、弾性率、外観及び成形性といった特性が良好な硬化物が得られる。その中でも1〜15質量部が特に好ましい。
【0033】
本発明に使用されるエラストマー(C)は、SP値が9(cal/cm1/2以下、重量平均分子量40000以下でかつ、25℃で液体であれば特に制限はなく、公知のものを使用することができる。SP値が9(cal/cm1/2以下であると高周波用途のプリント配線板に使用される樹脂組成物に適した電気特性が得られる。
【0034】
エラストマー(C)の構造として例えば、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。
これらの中でも、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)とエラストマー(B)との相溶性、電気特性の観点から、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴムを好適に用いることができる。これらのエラストマー成分は、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用しても良い。
【0035】
エラストマー(C)のGPC法によるポリスチレン換算の重量平均分子量は40000以下である。重量平均分子量がこの範囲にあると、25℃で液体となり、フィルムに塗布したものを基板に張り合わせた時の反りが小さくなるため、プリント配線板のビルドアップ材として好適である。
【0036】
本発明に使用されるエラストマー(C)の樹脂組成物における含有量は、クラックの発生、他の積層板に張り合わせた時の反りの大きさ、耐熱性、弾性率の観点から樹脂組成物中の樹脂固形分の合計100質量部に対して、0.5〜30質量部の範囲が好ましい。このような範囲にあることで、耐クラック性、耐熱性、弾性率、外観及び成形性といった特性が良好な硬化物が得られる。その中でも1〜15質量部が特に好ましい。
【0037】
本発明において使用される無機充填材(D)は積層板用途において一般に使用されるものであれば適用可能である。具体的には、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ等のシリカ類、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、ガラス短繊維(EガラスやDガラスなどのガラス微粉末類)、中空ガラスなどが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0038】
使用する無機充填材(D)の平均粒子径(D50)は特に限定されないが、分散性を考慮すると平均粒子径(D50)が0.1〜3μmのメソポーラスシリカ、球状溶融シリカ、球状合成シリカ、中空球状シリカ等が好ましい物として挙げられる。
平均粒径が0.1〜3μmの範囲内では、成形時の流れ特性がよく、小径ドリルビットの使用時の折損などの問題が生じない。
【0039】
本発明に使用される無機充填材(D)の樹脂組成物における含有量は、特に限定はないが、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、10〜250質量部の範囲が好ましく、20〜200質量部の範囲が特に好適である。成形性が向上することから、150質量部以下が特に好ましい。
【0040】
無機充填材に関して、シランカップリング剤や湿潤分散剤を併用することも可能である。これらのシランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐β‐(アミノエチル)‐γ‐アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ‐メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのビニルシラン系、N‐β‐(N‐ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系、フェニルシラン系などが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0041】
本発明の樹脂組成物には、エポキシ樹脂、シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、及び難燃性の化合物としてホスファゼン化合物を使用することも可能である。
【0042】
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のグリシジル基を有する一般に公知のエポキシ樹脂を使用することができる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの2重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられる。
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂は耐熱性を維持するとともに、吸水性や吸湿耐熱性等の特性に優れ、特にビフェニルアラルキル型ノボラック型エポキシ樹脂は誘電特性に優れる。これらのエポキシ樹脂は、単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0043】
シアン酸エステル化合物としては、分子内に2個以上のシアナト基を有する一般に公知のシアン酸エステル化合物を使用することができる。例えばナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ノボラック型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物、ジアリルビスフェノールA型シアン酸エステル化合物、1,3‐ジシアナトベンゼン、1,4‐ジシアナトベンゼン、1,3,5‐トリシアナトベンゼン、ビス(3,5‐ジメチル‐4‐シアナトフェニル)メタン、2,2’‐ビス(4‐シアナトフェニル)エタン、1,3‐ジシアナトナフタレン、1,4‐ジシアナトナフタレン、1,6‐ジシアナトナフタレン、1,8‐ジシアナトナフタレン、2,6‐ジシアナトナフタレン、2、7‐ジシアナトナフタレン、1,3,6‐トリシアナトナフタレン、4、4’‐ジシアナトビフェニル、2,2’‐ビス(4‐シアナトフェニル)メタン、2,2’‐ビス(4‐シアナトフェニル)プロパン、2,2’‐ビス(4‐シアナトフェニル)エーテル、ビス(4‐シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4‐シアナトフェニル)スルホン等が挙げられる。
この中でもナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ノボラック型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物、ジアリルビスフェノールA型シアン酸エステル化合物が難燃性に優れ、硬化性が高く、かつ硬化物の熱膨張係数が低いことから好ましい。
【0044】
マレイミド化合物としては、1分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、1,1’‐(メチレンジ‐4,1‐フェニレン)ビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、N,N’‐m‐フェニレンビスマレイミド、2,2’‐ビス‐[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3’‐ジメチル‐5,5’‐ジエチル‐4,4’‐ジフェニルメタンビスマレイミド、4‐メチル‐1,3‐フェニレンビスマレイミド、4,4’‐ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’‐ジフェニルスルホンビスマレイミド、1,3‐ビス(3‐マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3‐ビス(4‐マレイミドフェノキシ)ベンゼン、N,N’‐4,4’‐ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’‐4,4‐ジシクロヘキシルメタンビスマレイミド、N,N’‐エチレンビスマレイミド、N,N’‐ブチレンビスマレイミド、N,N’‐ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’‐ジフェニルシクロヘキサンビスマレイミド、1,6‐ビスマレイミド‐(2,2,4‐トリメチル)ヘキサン、1,6‐ビスマレイミドヘキサン、1,11‐ビスマレイミドジエチレングリコール、1,4‐ビス(4‐マレイミドフェノキシ)エタン、1,4‐ビス(4‐マレイミドフェノキシ)プロパン、1,4‐ビス(4‐マレイミドフェノキシ)ブタン、1,4‐ビス(4‐マレイミドフェノキシ)ヘキサン、トリス(4‐マレイミドフェニル)アミン、ビス(4‐マレイミドフェニル)メチルアミン、ビス(4‐マレイミドフェニル)フェニルアミン、N,N’−4,4’‐ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’‐4,4’‐ジフェニルスルフィドビスマレイミド、アニリン、ホルムアルデヒド及び無水マレイン酸の重縮合物等が挙げられる。これらのマレイミド化合物は単独又は2種類以上を混合して用いることができるが、ポリフェニレンエーテル樹脂との反応性、吸湿耐熱性の問題からビスマレイミドが好ましい。
【0045】
ホスファゼン化合物としては、一般式(11)で示される環状構造を有する。
【化15】
(式中、nは3〜15の整数を示し、R29及びR30は(a)炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、シアノ基及びヒドロキシル基から選ばれる少なくとも1種の基が置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、又は、(b)炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基及びアリール基から選ばれる少なくとも1種の基を示し、同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つは(a)である。これら置換基は、単一でなく混合されて置換しても良い。)
ホスファゼン化合物として具体的には、トリフェノキシトリス(4−メチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリフェノキシトリス(4−ヒドロキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリフェノキシトリス(4−シアノフェノキシ)シクロトリホスファゼン、フェノキシ基と4−メチルフェノキシ基が混合置換した環状ホスホニトリルの混合物、フェノキシ基と4−ヒドロキシフェノキシ基が混合置換した環状ホスホニトリルの混合物、フェノキシ基と4−シアノフェノキシ基が混合置換した環状ホスホニトリルの混合物が挙げられ、その中でもトリフェノキシトリス(4−メチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリフェノキシトリス(4−ヒドロキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン、トリフェノキシトリス(4−シアノフェノキシ)シクロトリホスファゼンが好ましく、難燃効果と電気特性の観点から特にトリフェノキシトリス(4−シアノフェノキシ)シクロトリホスファゼンが好ましい。
【0046】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じ架橋型硬化剤を添加することも可能である。樹脂組成物の流動性を高め、銅箔引き剥がし強度を向上する効果があり、架橋型硬化剤としては、特にポリフェニレンエーテル樹脂(A)との相溶性が良好なものが用いられる。
具体的には、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンやジビニルビフェニルなどの多官能ビニル化合物、フェノールとビニルベンジルクロライドの反応から合成されるビニルベンジルエーテル系化合物、スチレンモノマー,フェノールとアリルクロライドの反応から合成されるアリルエーテル系化合物などが挙げられる。さらにトリアルケニルイソシアヌレートなどが良好である。特に相溶性が良好なトリアルケニルイソシアヌレートが良く、なかでも具体的にはトリアリルイソシアヌレート(TAIC)やトリアリルシアヌレート(TAC)が好ましい。これらは、成形性に優れ、銅箔引き剥がし強度に優れたプリント配線板を得ることができるからである。
【0047】
本発明の樹脂組成物には、保存安定性を増すために、重合禁止剤を添加することもできる。重合禁止剤は一般に広知のものが使用でき、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p‐ベンゾキノン、クロラニル、トリメチルキノン等のキノン類及び芳香族ジオール類、ジ‐t‐ブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
【0048】
本発明の樹脂組成物には、所期の特性が損なわれない範囲において、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマーなどの種々の高分子化合物、他の難燃性化合物、添加剤などの併用も可能である。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性の化合物としては、4,4‐ジブロモビフェニルなどの臭素化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素化合物、オキサジン環含有化合物、シリコン系化合物等が挙げられる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤等、所望に応じて適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0049】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じ上記の熱硬化性樹脂の硬化速度を適宜調節するために硬化促進剤を含んでいてもよい。これらはポリフェニレンエーテル樹脂(A)、エポキシ樹脂、シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物の硬化促進剤として一般に使用されるものであれば、特に限定されるものではない。これらの具体例としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の有機金属塩類、イミダゾール類及びその誘導体、第3級アミン類等、またラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0050】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて有機溶剤を含んでいてもよい。この有機溶剤としては、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)、エラストマー(B)、エラストマー(C)等の混合物を溶解するものであれば、特に限定されるものではない。具体的に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の極性溶剤類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤類等が例示され、単独或いは2種以上混合して用いられる。
有機溶剤を用いた樹脂組成物を調製する際の各成分の溶解手順は特に限定されるものではない。各成分を上記溶剤に溶解した後混合して用いる、あるいは各成分すべてを混合した後に溶剤に溶解して用いることもできる。樹脂固形分濃度としては、ワニスの化合時や基材への塗工時の粘性の観点から、50〜80質量%が好ましく、60〜70質量%が特に好ましい。
【0051】
本発明の樹脂シートは、上記のワニスを基材に塗布し乾燥した後、基材を剥離又はエッチングすることで得られる。基材としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、ならびにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルム、ポリイミドフィルム等の有機系のフィルム基材、銅箔、アルミ箔等の導体箔、ガラス板、SUS板、FRP等の板状の基材が挙げられる。塗布する方法としては、例えば、樹脂組成物の溶液をバーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等で基材上に塗布し、溶剤を乾燥させて半硬化状態とする方法が挙げられる。
【0052】
溶剤を乾燥する際の条件に特に制限はないが、低温であると樹脂組成物中に溶剤が残り易く、高温であると樹脂組成物の硬化が進行することから、70℃〜150℃の温度で1〜10分間乾燥するのが好ましい。樹脂層の厚みは樹脂組成物溶液の濃度と塗布厚みにより調整することができるが、塗布厚みが厚くなると乾燥時に溶剤が残り易くなることから、1〜150μmが好ましい。
【0053】
本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層、半導体パッケージ用材料として用いることができる。例えば、基材として銅箔を用いて本発明の硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を塗布し乾燥することで樹脂付き銅箔としたり、基材として剥離可能なプラスチックフィルムを用いて樹脂付きフィルムとすることでビルドアップ用フィルム、ドライフィルムソルダーレジスト、ダイアタッチフィルムとして使用することができる。
【0054】
本発明のプリント配線板は、上述の樹脂シートを用いて他の金属箔張り積層板や樹脂組成物をガラス織布に含浸させて半硬化状態にして得られたプリプレグを積層成形したものである。具体的には、本発明の樹脂付き銅箔と銅張積層版やプリプレグを所定枚数重ねるか、樹脂付きフィルムと銅張積層版やプリプレグを所定枚数重ねて基材を剥離し、その片面もしくは両面に銅箔を配置して、例えば温度180〜220℃、加熱時間100〜300分、面圧20〜40kg/cmで積層成形し、銅箔張り積層板とする。使用する銅箔の厚みは、特に限定はないが、好適には1〜35μmの電解銅箔を使用する。電解銅箔は一般に積層板用途に使用されるものであれば特に限定されないが、高周波領域での導体損失を考慮し、マット面の粗さが小さい電解銅箔が好適である。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
合成例1
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr 3.88g(17.4mmol)、N,N’‐ジ‐t‐ブチルエチレンジアミン0.75g(4.4mmol)、n‐ブチルジメチルアミン28.04g(277.6mmol)、トルエン2,600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2,300gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’‐ヘキサメチル‐(1,1’‐ビフェノール)‐4,4’‐ジオール129.3g(0.48mol)、2,6‐ジメチルフェノール233.7g(1.92mol)、2,3,6‐トリメチルフェノール64.9g(0.48mol)、N,N’−ジ−t‐ブチルエチレンジアミン0.51g(2.9mmol)、n‐ブチルジメチルアミン10.90g(108.0mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2L/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム19.89g(52.3mmol)を溶解した水1,500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50wt%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体のトルエン溶液を836.5g得た。このオリゴマー体の数平均分子量は986、重量平均分子量は1,530、水酸基当量が471であった。
(ポリフェニレンエーテル樹脂の合成)
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に前記オリゴマー体のトルエン溶液836.5g、ビニルベンジルクロライド(商品名CMS‐P;セイミケミカル(株)製)162.6g、塩化メチレン1600g、ベンジルジメチルアミン12.95g、純水420g、30.5wt%NaOH水溶液178.0gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥してポリフェニレンエーテル樹脂(A)503.5gを得た。ポリフェニレンエーテル樹脂(A)は一般式(1)において−(O−X−O)−が一般式(6)、−(Y−O)−が一般式(9)
で定義される構造であり、数平均分子量は1187、重量平均分子量は1675、ビニル基当量は590g/ビニル基であった。
【0057】
(実施例1)
合成例1で得たポリフェニレンエーテル樹脂(A)(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)70質量部、エラストマー(B)としてスチレンブタジエンスチレン(TR2003、JSR(株)製、SP値8.6、重量平均分子量100000)5質量部、エラストマー(C)としてブタジエンゴム(LBR‐307、SP値8.3、重量平均分子量8000、(株)クラレ製)5質量部、α‐ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂(SN495CN、三菱ガス化学(株)製、シアネート当量:244g/eq.)3質量部、ビスマレイミド(BMI‐70、ケイ・アイ化成(株)製)1質量部、ナフタレン骨格変性したノボラック型のエポキシ樹脂(HP‐9900、DIC(株)製)3質量部、シアノ基を有するシクロホスファゼン(FP‐300B、(株)伏見製薬所製)13質量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)60質量部、オクチル酸亜鉛0.01質量部、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール0.05部(2E4MZ、四国化成工業(株)製)を混合してワニスを得た。このワニスを厚さ12μmの電解銅箔(3EC‐VLP:三井金属鉱業(株)製)のマット面上に塗布し、110℃で3分間加熱乾燥して、樹脂付き銅箔を得た。次に、この銅箔付き樹脂シート2枚を樹脂層が向かい合うように配置し、圧力30kg/cm、温度210℃で105分間真空プレスを行い、銅張積層板を得た。得られた銅張り積層板の物性値を表1に示す。また、このワニスを厚さ23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー25S10、東レ(株)製)に塗布し、110℃で3分間加熱乾燥して、樹脂層の厚み約20μmの樹脂付きフィルムを得た。
【0058】
(実施例2)
エラストマー(C)としてブタジエンゴム(LBR−307)の代わりにイソプレンゴム(LIR‐30、SP値8.1、重量平均分子量30000、(株)クラレ製)5質量部を使用した以外は実施例1と同様にして、銅張積層版及び樹脂付きフィルムを得た。
【0059】
(実施例3)
エラストマー(C)としてブタジエンゴム(LBR‐307)の代わりにブタジエンゴム(LBR‐305、SP値8.3、重量平均分子量28000、(株)クラレ製)5質量部を使用した以外は実施例1と同様にして、銅張積層版及び樹脂付きフィルムを得た。
【0060】
(実施例4)
エラストマー(C)としてブタジエンゴム(LBR‐307)の代わりにスチレンブタジエンゴム(L‐SBR‐820、SP値8.6、重量平均分子量8000、(株)クラレ製)5質量部を使用した以外は実施例1と同様にして、銅張積層版及び樹脂付きフィルムを得た。
【0061】
(実施例5)
合成例1で得たポリフェニレンエーテル樹脂(A)(数平均分子量1187、ビニル基当量は590g/ビニル基)72質量部、エラストマー(B)としてスチレンブタジエンスチレン(TR2003、JSR(株)製、SP値8.6、重量平均分子量100000)3質量部、エラストマー(C)としてブタジエンゴム(LBR‐305、SP値8.3、重量平均分子量8000、(株)クラレ製)3質量部、α‐ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂(SN495CN、三菱ガス化学(株)製、シアネート当量:244g/eq.)3質量部、ビスマレイミド(BMI‐70、ケイ・アイ化成(株)製)1質量部、ナフタレン骨格変性したノボラック型のエポキシ樹脂(HP‐9900、DIC(株)製)3質量部、シアノ基を有するシクロホスファゼン(FP‐300B、(株)伏見製薬所製)15質量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製)60質量部、オクチル酸亜鉛0.01質量部、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール0.05部(2E4MZ、四国化成工業(株)製)を混合してワニスを得た。それ以外は実施例1と同様にして、銅張積層版及び樹脂付きフィルムを得た。
【0062】
(比較例1)
合成例1で得たポリフェニレンエーテル樹脂(A)76質量部、α‐ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂(SN495CN、シアネート当量:244g/eq.)3質量部、ビスマレイミド(BMI‐70)1質量部、ナフタレン骨格変性したノボラック型のエポキシ樹脂(HP‐9900)3質量部、シアノ基を有するシクロホスファゼン(FP‐300B)17質量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm)70質量部、オクチル酸亜鉛0.01質量部、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール0.05部(2E4MZ)を混合してワニスを得た。それ以外は実施例1と同様にして、銅張積層版及び樹脂付きフィルムを得た。
【0063】
(比較例2)
合成例1で得たポリフェニレンエーテル樹脂(A)70質量部、エラストマー(B)としてアクリロニトリルブタジエンゴム(N220S、SP値10.4、重量平均分子量300000、JSR(株)製)10質量部、α‐ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂(SN495CN)3質量部、ビスマレイミド(BMI‐70)1質量部、ナフタレン骨格変性したノボラック型のエポキシ樹脂(HP‐9900)3質量部、シアノ基を有するシクロホスファゼン(FP‐300B)13質量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm)60質量部、オクチル酸亜鉛0.01質量部、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール0.05部(2E4MZ)を混合してワニスを得た。それ以外は実施例1と同様にして、銅張積層版及び樹脂付きフィルムを得た。
【0064】
(比較例3)
合成例1で得たポリフェニレンエーテル樹脂(A)70質量部、エラストマー(B)としてスチレンブタジエンスチレン(TR2003)10質量部、α‐ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂(SN495CN)3質量部、ビスマレイミド(BMI‐70)1質量部、ナフタレン骨格変性したノボラック型のエポキシ樹脂(HP‐9900)3質量部、シアノ基を有するシクロホスファゼン(FP‐300B)13質量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm)60質量部、オクチル酸亜鉛0.01質量部、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール0.05部(2E4MZ)を混合してワニスを得た。それ以外は実施例1と同様にして、銅張積層版及び樹脂付きフィルムを得た。
【0065】
(比較例4)
合成例1で得たポリフェニレンエーテル樹脂(A)70質量部、エラストマー(C)としてブタジエンゴム(LBR‐307)10質量部、α‐ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂(SN495CN、シアネート当量:244g/eq.)3質量部、ビスマレイミド(BMI‐70)1質量部、ナフタレン骨格変性したノボラック型のエポキシ樹脂(HP‐9900)3質量部、シアノ基を有するシクロホスファゼン(FP‐300B)13質量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm)60質量部、オクチル酸亜鉛0.01質量部、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール0.05部(2E4MZ)を混合してワニスを得た。それ以外は実施例1と同様にして、銅張積層版及び樹脂付きフィルムを得た。
【0066】
(比較例5)
合成例1で得たポリフェニレンエーテル樹脂(A)70質量部、エラストマー(C)としてブタジエンゴム(LBR‐305)10質量部、α‐ナフトールアラルキル型のシアン酸エステル樹脂(SN495CN、シアネート当量:244g/eq.)3質量部、ビスマレイミド(BMI‐70)1質量部、ナフタレン骨格変性したノボラック型のエポキシ樹脂(HP‐9900)3質量部、シアノ基を有するシクロホスファゼン(FP‐300B)13質量部、球状シリカ(SC2050、平均粒径0.5μm)60質量部、オクチル酸亜鉛0.01質量部、2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール0.05部(2E4MZ)を混合してワニスを得た。それ以外は実施例1と同様にして、銅張積層版及び樹脂付きフィルムを得た。
【0067】
(測定方法)
1)数平均分子量及び重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。試料のGPC曲線と分子量校正曲線よりデータ処理を行った。分子量校正曲線は、標準ポリスチレンの分子量と溶出時間の関係を次の式に近似して得た。LogM=A+A+AX+A+A/X(ここでM:分子量、X:溶出時間−19(分)、A:係数である。)
2)ビニル基当量は、1‐オクテンを標準物質とし、溶剤に二硫化炭素を使用してIR分析(液セル法:セル長=1mm)を行い、910cm−1の吸収強度より求めた。
3)シアネート当量は、赤外吸収スペクトルにおいて、2264cm−1付近のシアン酸エステル基の吸収を確認後、13C‐NMR及び1H−NMRにより、構造を同定し、OH基からOCN基への転化率を測定。その転化率をもとに評価に使用したナフトールアラルキル樹脂のOH当量から算出。
4)銅箔ピール強度
JIS C6481に準じて、得られた銅張積層版を用い、銅箔の引き剥がし強度を測定した。
5)誘電率、誘電正接
得られた銅張積層板の銅箔を除去した試験片を使用し、空洞共振器摂動法(Agilent8722ES、アジレントテクノロジー製)にて2GHzの誘電率、誘電正接を測定した。
6)耐クラック性
得られた樹脂付きフィルムを345mm×260mm×厚さ0.1mmの銅箔を除去した銅張積層版(CCL‐HL832NS、三菱ガス化学(株)製)に真空ラミネーター(ニチゴー・モートン製)を用いて、30秒間真空引きを行った後、圧力10kgf/cm2、温度90℃で30秒間、さらに圧力20kgf/cm2、温度90℃で60秒間ラミネートした。その後、基材を剥離して特定の径を持った円管に巻き付け、光学顕微鏡で樹脂に入るクラックの有無を観察した。クラックの入った円管の径の大きさを表1に記載した。40mm未満を○、40mm以上を×とした。
7)反り量
得られた樹脂付きフィルムを上記と同様にラミネートし、直後に試験片の4隅の浮き上がり量の平均値を測定し、表1に記載した。10mm未満を○、10mm以上を×とした。
【0068】
【表1】