(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、
図1〜
図4を用いて説明する。
本実施形態のプリント回路板は、8層の金属層を含む多層プリント配線板を備えている。
【0023】
図1は、本実施形態のプリント回路板の平面図である。
図2は、プリント回路板に放熱部材を接続した状態を示す平面図である。
図3は、
図2のIII−III線に沿う断面図である。
図4は、
図2のIV−IV線に沿う断面図である。
以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0024】
なお、本明細書において、電子素子を実装する前の基板をプリント配線板と称し、実装した後の電子素子等の部材とプリント配線板とを含む全体をプリント回路板と称する。
【0025】
(プリント回路板の構成)
図1〜
図4に示すように、プリント回路板10は、プリント配線板11と、電子素子12と、放熱部材13と、固定部材14A,14Bと、を備える。電子素子12は、後述するプリント配線板11の第1金属層上に実装されている。電子素子12は、例えばSoC(System on Chip)と称されるシステムLSIであり、高負荷、高消費電流の半導体デバイスである。なお、電子素子12としては、システムLSIに限らず、種々のデバイスが使用可能である。
【0026】
図3および
図4に示すように、プリント配線板11は、複数の金属層20と複数の絶縁層30とを備えている。これら金属層20および絶縁層30は、プリント配線板11において最も外側の2層が金属層20となるように1層ずつ交互に積層されている。すなわち、プリント回路板10は、複数の金属層20と、複数の金属層20のうちの各金属層20の間に設けられた複数の絶縁層30と、複数の金属層20のうちの1層の金属層20に設けられた電子素子12と、を備える。具体的に、本実施形態の場合、プリント配線板11は、8層の金属層20と7層の絶縁層30とを備えている。
【0027】
本明細書では、説明の便宜上、電子素子12が実装されたプリント配線板11の第1面11a側から第2面11b側に向けて、各層をそれぞれ第1金属層21、第1絶縁層31、第2金属層22、第2絶縁層32、第3金属層23、第3絶縁層33、第4金属層24、第4絶縁層34、第5金属層25、第5絶縁層35、第6金属層26、第6絶縁層36、第7金属層27、第7絶縁層37、第8金属層28と称する。
【0028】
複数の金属層20は、複数の金属層20の中でプリント配線板11の積層方向において最も外側に位置する表側金属層(第1外金属層)および裏側金属層(第2外金属層)と、表側金属層と裏側金属層との間に位置する中間金属層と、を含んでいる。本実施形態の場合、第1金属層21が表側金属層であり、第8金属層28が裏側金属層であり、第2金属層22から第7金属層27までの6層の金属層20が中間金属層である。なお、本明細書において、表側金属層と裏側金属層とは、説明の便宜上、電子素子12が実装された側の金属層20を表側金属層と称し、電子素子12が実装された側と反対側の金属層20を裏側金属層と称しただけであって、この名称によりプリント回路板10の設置形態等が特に限定されるわけではない。
【0029】
中間金属層のうち少なくとも1層の金属層は、表側金属層である第1金属層21および裏側金属層である第8金属層28よりも厚い厚型金属層である。本実施形態において、第2金属層22、第4金属層24、第5金属層25、および第7金属層27が厚型金属層である。さらに、本実施形態において、厚型金属層である第2金属層22、第4金属層24、第5金属層25、および第7金属層27は、他の中間金属層の第3金属層23および第6金属層26よりも厚い。厚さの一例として、第1金属層21、第3金属層23、第6金属層26、および第8金属層28の厚さは35μmである。これに対し、厚型金属層である第2金属層22、第4金属層24、第5金属層25、および第7金属層27の厚さは70μmである。複数の金属層20は、例えば銅等の金属材料により構成されている。金属材料として、電気伝導性および熱伝導性に優れたものを用いることが好ましい。
【0030】
図3および
図4の断面図には表れていないが、第1金属層21、第3金属層23、第6金属層26、および第8金属層28の各々は、電子素子12の信号端子に接続されている。そのため、第1金属層21、第3金属層23、第6金属層26、および第8金属層28の各々は、配線パターンとして形成されている。
【0031】
図1において、これら配線パターンのうち、第1金属層21により形成された配線パターン16の一部を示す。
図1に示すように、プリント配線板11は、配線パターン16として、電子素子12が設けられた第1金属層21の一部として構成される差動伝送線路17を備えている。差動伝送線路17は、互いに略平行に延在する第1配線18Aと第2配線18Bとを有する。
【0032】
図3および
図4に示されるように、第2金属層22、第4金属層24、第5金属層25、および第7金属層27の各厚型金属層は、電子素子12のグラウンド端子12gおよび電源端子12dのうちいずれか一方に接続されている。本実施形態において、第2金属層22および第7金属層27の各厚型金属層(第1厚型金属層)は、電子素子12のグラウンド端子12gに接続されている。
【0033】
一方で、第4金属層24および第5金属層25の各厚型金属層(第2厚型金属層)は、電子素子12の電源端子12dに接続されている。すなわち、本実施形態において厚型金属層は、電子素子12のグラウンド端子12gに接続された第1厚型金属層と、電子素子12の電源端子12dに接続された第2厚型金属層と、を含む。そのため、第2金属層22、第4金属層24、第5金属層25、および第7金属層27の各々は、ベタパターンとして形成されている。すなわち、プリント配線板11を第1面11aの法線方向から平面視したとき、第2金属層22、第4金属層24、第5金属層25、および第7金属層27の各々は、当該平面視におけるプリント配線板11の外形と略同じサイズで設けられている。
【0034】
複数の絶縁層30については、材料や厚さは特に限定されない。絶縁層30の材料としては、例えばエポキシ、ポリイミド、ガラスエポキシ等の樹脂材料を用いることができる。絶縁層30の厚さは、例えば20μm〜2mm程度である。複数の絶縁層30は、全て同一の絶縁材料で構成されていてもよいし、一般のプリント配線板で用いられるコア材とプリプレグとの組合せで構成されていてもよい。
【0035】
図1に示すように、プリント配線板11において、厚型金属層である第2金属層22および第4金属層24は、一部がそれぞれ外部に露出した第1露出領域11eと第2露出領域11fとを有する。第1露出領域11eは、厚型金属層の一つである第2金属層22が外部に露出した領域である。第2露出領域11fは、厚型金属層の一つである第4金属層24が外部に露出した領域である。本実施形態において、第1露出領域11eと第2露出領域11fとは、第1面11aの法線方向からのプリント配線板11の平面視においてそれぞれ矩形状であり、隣り合う位置に設けられている。ただし、第1露出領域11eおよび第2露出領域11fの形状、配置等については特に限定されない。
【0036】
プリント配線板11は、第1貫通孔39と第2貫通孔40とを備えている。第1貫通孔39の開口部39hは、厚型金属層である第2金属層22の第1露出領域11eに設けられている。また、第2貫通孔40の開口部40hは、厚型金属層である第4金属層24の第2露出領域11fに設けられている。本実施形態において、各露出領域11e,11fに1個の貫通孔39,40が設けられているが、各露出領域11e,11fに2個以上の貫通孔が設けられていてもよく、貫通孔の数は特に限定されない。
【0037】
図3に示すように、第1露出領域11eにおいて、第2金属層22は、表側金属層である第1金属層21(第1外金属層)側から、裏側金属層である第8金属層28(第2外金属層)側に向けて、第1金属層21の一部と第1絶縁層31の一部とが切り欠かれることによって外部に露出している。また、第1貫通孔39は、第2金属層22、第2絶縁層32、第3金属層23、第3絶縁層33、第4金属層24、第4絶縁層34、第5金属層25、第5絶縁層35、第6金属層26、第6絶縁層36、第7金属層27、第7絶縁層37、および第8金属層28を貫通して設けられている。
【0038】
図4に示すように、第2露出領域11fにおいて、第4金属層24は、表側金属層である第1金属層21側から裏側金属層である第8金属層28側に向けて、第1金属層21の一部、第1絶縁層31の一部、第2金属層22の一部、第2絶縁層32の一部、第3金属層23の一部、および第3絶縁層33の一部が切り欠かれることによって外部に露出している。また、第2貫通孔40は、第4金属層24、第4絶縁層34、第5金属層25、第5絶縁層35、第6金属層26、第6絶縁層36、第7金属層27、第7絶縁層37、および第8金属層28を貫通して設けられている。
【0039】
すなわち、第2金属層22の第1露出領域11eおよび第4金属層24の第2露出領域11fは、第1外金属層側から第2外金属層側に向けて、少なくとも1層の金属層20の一部と少なくとも1層の絶縁層30の一部とが切り欠かれることによって外部に露出している。また、第1貫通孔39および第2貫通孔40は、複数の金属層20の一部および複数の絶縁層の一部を貫通している。
【0040】
なお、本実施形態において、第1露出領域11eおよび第2露出領域11fは、第1外金属層側から第2外金属層側に向けて、少なくとも1層の金属層20の一部と少なくとも1層の絶縁層30の一部とが切り欠かれることによって設けられているが、これに限定されない。第1露出領域11eおよび第2露出領域11fは、第2外金属層側から第1外金属層側に向けて、少なくとも1層の金属層20の一部と少なくとも1層の絶縁層30の一部とが切り欠かれることによって設けられてもよい。すなわち、第1露出領域11eおよび第2露出領域11fは、第1外金属層および第2外金属層のうちの一方の金属層側から他方の金属層側に向けて、金属層20の一部と絶縁層30一部とが切り欠かれることで設けられる。
【0041】
図2に示されるように、放熱部材13は、第1放熱部材13Aと、第2放熱部材13Bと、を含む。第1放熱部材13Aは、例えば板金等により構成され、プリント回路板10が搭載される電子機器の筐体等に接続されていてもよい。同様に、第2放熱部材13Bは、例えば板金等により構成され、プリント回路板10が搭載される電子機器の一部に接続されていてもよい。このように、放熱部材13がさらに他の部材に接続されている場合、他の部材を介して放熱することができる。第1放熱部材13Aはグラウンド端子12gに接続され、第2放熱部材13Bは電源端子12dに接続されているため、第1放熱部材13Aと第2放熱部材13Bとは、電気的に絶縁されている必要がある。
【0042】
図3に示すように、第1放熱部材13Aは、第1露出領域11eにおいて、第1貫通孔39の開口部39hが設けられた第2金属層22に接続されている。固定部材14Aは、第1貫通孔39の内部に挿通され、プリント配線板11に対して第1放熱部材13Aを固定する。固定部材14Aとしては、金属製のネジが用いられている。
【0043】
図4に示すように、第2放熱部材13Bは、第2露出領域11fにおいて、第2貫通孔40の開口部40hが設けられた第4金属層24に接続されている。すなわち、第1放熱部材13Aおよび第2放熱部材13Bは、第1露出領域11eおよび第2露出領域11fにおいて、厚型金属層である第2金属層22および第4金属層24にそれぞれ接続されている。固定部材14Bは、第2貫通孔40の内部に挿通され、プリント配線板11に対して第2放熱部材13Bを固定する。固定部材14Bとしては、固定部材14Aと同様に、金属製のネジが用いられている。
【0044】
また、
図3および
図4に示されるように、プリント配線板11は、第1貫通孔39および第2貫通孔40の内部にそれぞれ金属被覆層41を備える。金属被覆層41は、第1貫通孔39および第2貫通孔40の内壁に沿ってそれぞれ設けられている。
図3に示すように、金属被覆層41は、第1露出領域11eにおいて第2金属層22に接続されており、第1貫通孔39の内部において第7金属層27に接続されている。さらに、金属被覆層41は、第1露出領域11eにおいて第1放熱部材13Aに接続されている。すなわち、第2金属層22および第7金属層27の厚型金属層と第1放熱部材13Aとは、金属被覆層41を介して接続されている。
【0045】
また、
図4に示すように、金属被覆層41は、第2露出領域11fにおいて第4金属層24に接続されており、第2貫通孔40の内部において第5金属層25に接続されている。さらに、金属被覆層41は、第2露出領域11fにおいて第2放熱部材13Bに接続されている。すなわち、第4金属層24および第5金属層25の厚型金属層と第2放熱部材13Bとは、金属被覆層41を介して接続されている。
【0046】
金属被覆層41は、例えば銅などの金属材料により構成されている。金属材料として、熱伝導性に優れたものを用いることが好ましい。金属被覆層41の厚さは、固定部材14が第1貫通孔39もしくは第2貫通孔40に挿通されたときに固定部材14と金属被覆層41とが接触する程度の厚さであることが好ましい。例えばメッキ法などを用いて金属被覆層41を形成することにより、金属被覆層41の厚さを調整することができる。
【0047】
なお、本実施形態において、金属被覆層41は、
図3および
図4に示されるように、第1貫通孔39および第2貫通孔40にそれぞれ挿通された固定部材14A,14Bに接触して設けられているが、実際には、金属被覆層41を含めた第1貫通孔39および第2貫通孔40の各内径を固定部材14A,14Bのネジ部の外径よりも大きくする公差設計により、固定部材14A,14Bと金属被覆層41との間には図示しない空間が存在する。
【0048】
電子素子12のグラウンド端子12gは、第1ビア43を介して厚型金属層である第2金属層22および第7金属層27に接続されている。そのため、第1ビア43は、第3金属層23、第4金属層24、第5金属層25および第6金属層26とは絶縁されている。電子素子12の電源端子12dは、第2ビア44を介して厚型金属層である第4金属層24および第5金属層25に接続されている。そのため、第2ビア44は、第2金属層22、第3金属層23、第6金属層26および第7金属層27とは絶縁されている。
【0049】
上記構成のプリント回路板10は、例えば切削工法や張り合わせ工法(内層レジスト工法)により製造が可能である。切削工法を用いる場合、第1露出領域11eおよび第2露出領域11fを有していない多層プリント配線板を一旦製造した後、第2金属層22や第4金属層24が露出するまで第2金属層22または第4金属層24から外側の絶縁層および金属層を切削すればよい。また、張り合わせ工法を用いる場合、多層プリント配線板の第1面の法線方向からの平面視における面積が第2金属層22や第4金属層24よりも小さい絶縁層および金属層を予め形成しておき、それを第2金属層22や第4金属層24の上に順次張り合わせればよい。製造工程の数や製造コストの観点から、切削工法を用いることが望ましい。
【0050】
(熱伝導経路)
図3において矢印H1は、電子素子12で発生した熱のグラウンド端子12gを経由した伝導経路を示す。電子素子12で発生した熱は、グラウンド端子12gおよび第1ビア43を経て、グラウンド端子12gが接続される第2金属層22および第7金属層27に伝えられる。第2金属層22および第7金属層27に伝えられた熱は、金属被覆層41および固定部材14Aを経て、第1露出領域11eにおいて第2金属層22に固定されている第1放熱部材13Aに伝えられる。
【0051】
また、
図4において矢印H2は、電子素子12で発生した熱の電源端子12dを経由した伝導経路を示す。電子素子12で発生した熱は、電源端子12dおよび第2ビア44を介して、電源端子12dが接続される第4金属層24および第5金属層25に伝えられる。第4金属層24および第5金属層25に伝えられた熱は、金属被覆層41および固定部材14Bを経て、第2露出領域11fにおいて第4金属層24に固定されている第2放熱部材13Bに伝えられる。放熱部材13に伝えられた熱は、放熱部材13から直接外部に放熱されるか、もしくは、放熱部材13が他の部材に接続されている場合には他の部材を介して外部に放熱される。
【0052】
本実施形態のプリント配線板11において、第1金属層21は外表面に位置し、元々外部に露出しているため、例えば第1金属層21の厚さを厚くできれば、放熱効果を高めることができる。ところが、プリント配線板11に、
図2に示される差動伝送線路17のような高速データ転送用配線などが設けられる場合、第1金属層21の厚さによって差動伝送線路17のインピーダンス値を調整する必要があるため、第1金属層21の厚さ調整の自由度が低く、第1金属層21をむやみに厚くすることができない。
【0053】
そこで、本実施形態においては、電子素子12で発生した熱を伝える第2金属層22、第4金属層24、第5金属層25および第7金属層27の厚型金属層は、表側金属層(第1金属層22)および裏側金属層(第8金属層28)よりも厚くなっている。また、これらの厚型金属層は、他の中間金属層よりも厚くなっている。さらに、これらの厚型金属層は電子素子12のグラウンド端子12gまたは電源端子12dに接続されるため、表側金属層、裏側金属層および他の中間金属層に比べて面積を広く取ることができる。そのため、これらの厚型金属層は、表側金属層、裏側金属層および他の中間金属層に比べて熱抵抗が十分低くなり、内部で熱が拡散されやすくなる。したがって、本実施形態によれば、大型化を招くことなく、放熱効果に優れたプリント回路板10を提供することができる。
【0054】
本実施形態において、第2金属層22および第4金属層24は、プリント配線板11の中間金属層であるが、これらの層よりも外側にある層が一部切り欠かれたことによる第1露出領域11eおよび第2露出領域11fをそれぞれ備えている。さらに、第1露出領域11eにおいて第2金属層22に第1放熱部材13Aが接続され、第2露出領域11fにおいて第4金属層24に第2放熱部材13Bが接続されている。これらの構成により、放熱効果をさらに高めることができる。
【0055】
また、本実施形態のプリント回路板10は、第1貫通孔39および第2貫通孔40の内壁に沿って設けられた金属被覆層41をさらに備え、厚型金属層の各層と放熱部材13とは金属被覆層41を介して接続されている。この場合、熱は金属被覆層41を介して厚型金属層から放熱部材13に伝えられるため、上記の貫通孔に挿通された固定部材14の熱伝導率や接触状態によらず、放熱効果を安定して得ることができる。
【0056】
また、本実施形態のプリント回路板10において、厚型金属層は、グラウンド端子12gに接続された厚型金属層と、電源端子12dに接続された厚型金属層とを含んでいる。この構成によれば、電子素子12で発生した熱が双方の厚型金属層に伝わるため、放熱効果を大きく高めることができる。
【0057】
また、本実施形態のプリント回路板10は差動伝送線路17を備えており、放熱性向上のために差動伝送線路17が形成されている第1金属層21を厚くすることがないため、特性インピーダンスの変動を抑制することができ、信号品質の低下を抑制することができる。また、電子素子12の熱が効率良く放出されるため、信号伝送の安定性を確保することができる。例えばプリント回路板10を情報通信装置に適用した場合、差動伝送はシングルエンド伝送に比べて信号の振幅を小さくできるため、データの伝送速度を高速化することができる。
【0058】
なお、本実施形態において、電子素子12のグラウンド端子12gが接続された第2金属層22に第1露出領域11eが設けられ、電子素子12の電源端子12dが接続された第4金属層24に第2露出領域11fが設けられたが、これに限られない。第1露出領域11eは、第7金属層27から外側の金属層20の一部および絶縁層30の一部が切り欠かれることによって、第7金属層27に設けられてもよいし、第2露出領域11fは、第5金属層25から外側の金属層20の一部および絶縁層30の一部が切り欠かれることによって、第5金属層25に設けられてもよい。
【0059】
また、本実施形態において、電子素子12のグラウンド端子12gは、第2金属層22および第7金属層27の2層の厚型金属層に接続され、電子素子12の電源端子12dは、第4金属層24および第5金属層25の2層の厚型金属層に接続されたが、これに限られない。電子素子12のグラウンド端子12gおよび電源端子12dは、少なくとも1つの厚型金属層にそれぞれ接続されていればよい。グラウンド端子12gおよび電源端子12dがそれぞれ2層以上の金属層20に接続されている場合、少なくとも電子素子12に近い側の金属層20を厚型金属層にすることで、厚型金属層において電子素子12からの熱伝導量をより大きくすることができ、より放熱効果を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態において、第2金属層22、第4金属層24、第5金属層25および第7金属層27の4つの厚型金属層の厚さは同じとしたが、これに限られず、それぞれの厚さが異なっていてもよいし、一部の厚型金属層の厚さが同じであってもよい。
【0061】
また、本実施形態において、金属被覆層41は、第1貫通孔39および第2貫通孔40の内壁に沿ってそれぞれ設けられたが、これに限られない。例えば、金属被覆層41は、第1貫通孔39および第2貫通孔40の内壁に加え、第1放熱部材13Aおよび第2放熱部材13Bにおいて各固定部材14A,14Bが挿通される孔部の内壁にも設けられてもよい。
【0062】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、
図5を用いて説明する。
第2実施形態のプリント回路板の基本構成は第1実施形態と略同様であり、層構成と放熱部材の接続構造が第1実施形態と異なる。そのため、プリント回路板の全体の説明は省略する。
図5は、第2実施形態のプリント回路板の断面図である。
図5は、第1実施形態における
図3に対応している。
図5において、
図3と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0063】
図5に示すように、本実施形態のプリント回路板50において、プリント配線板51は、複数の金属層60と複数の絶縁層52とを備えている。第1実施形態のプリント配線板11は、8層の金属層20と7層の絶縁層30とを備えていた。これに対し、本実施形態のプリント配線板51は、6層の金属層60と5層の絶縁層52とを備えている。これら金属層60および絶縁層52は、プリント配線板51において最も外側の2層が金属層60となるように1層ずつ交互に積層されている。
【0064】
複数の金属層60は、複数の金属層60の中でプリント配線板51の積層方向において最も外側に位置する表側金属層(第1外金属層)および裏側金属層(第2外金属層)と、表側金属層と裏側金属層との間に位置する中間金属層と、を含んでいる。本実施形態において、第1金属層61が表側金属層であり、第6金属層66が裏側金属層であり、第2金属層62から第5金属層65までの4層の金属層60が中間金属層である。
【0065】
中間金属層のうち少なくとも1層の金属層は、表側金属層である第1金属層61および裏側金属層である第6金属層66よりも厚い厚型金属層である。本実施形態において、第2金属層62および第5金属層65は、厚型金属層である。さらに、本実施形態において、厚型金属層である第2金属層62および第5金属層65は、他の中間金属層の第3金属層63および第4金属層64よりも厚い。第2金属層62および第5金属層65の厚さは、例えば70μmであり、その他の第1金属層61、第3金属層63、第4金属層64、および第6金属層66の厚さは、例えば35μmである。
【0066】
厚型金属層である第2金属層62および第5金属層65は、第1ビア43を介して電子素子12のグラウンド端子12gに接続されている。また、
図5には表されないが、第3金属層63と第4金属層64の各々は、電子素子12の電源端子12dもしくは信号端子に接続されている。第1金属層61と第6金属層66の各々は、電子素子12の信号端子に接続されている。そのため、第2金属層62および第5金属層65の各々は、ベタパターンとして形成されている。また、第3金属層63と第4金属層64の各々は、電源端子12dに接続されている場合にはベタパターンとして形成され、信号端子に接続されている場合には配線パターンとして形成されている。第1金属層61と第6金属層66の各々は、配線パターンとして形成されている。
【0067】
第1実施形態のプリント回路板10は、厚型金属層の一部が外部に露出した露出領域(第1露出領域11eおよび第2露出領域11f)を備えていた。これに対し、本実施形態のプリント回路板50は、上記の露出領域を備えていない。第1金属層61の一部として、電子素子12の信号端子に接続された配線パターンとは電気的に絶縁されたグラウンドパターン54が形成されている。第1貫通孔39は、6層の金属層60と5層の絶縁層52との全てを貫通して設けられている。第1放熱部材13Aは、第1貫通孔39の開口部39hが設けられた第1金属層61のグラウンドパターン54に接続されている。固定部材14Aは、第1貫通孔39の内部に挿通され、プリント配線板51に第1放熱部材13Aを固定する。
【0068】
(熱伝導経路)
図5において矢印H3は、
図3の矢印H1と同様に、電子素子12で発生した熱のグラウンド端子12gを経由した伝導経路を示す。電子素子12で発生した熱は、グラウンド端子12gおよび第1ビア43を経て第2金属層62および第5金属層65に伝えられる。第2金属層62および第5金属層65に伝えられた熱は、金属被覆層41および固定部材14Aを経て、第1金属層61に固定されている第1放熱部材13Aに伝えられる。第1放熱部材13Aに伝えられた熱は、第1放熱部材13Aから直接外部に放熱されるか、もしくは、第1放熱部材13Aが電子機器の筐体等の他の部材に接続されている場合には他の部材を介して外部に放熱される。
【0069】
本実施形態においても、大型化を招くことなく、放熱効果に優れたプリント回路板50を提供することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
なお、本実施形態においても上記の第1実施形態と同様に、電子素子12のグラウンド端子12gは、少なくとも1つの厚型金属層に接続されていればよく、グラウンド端子12gが接続される厚型金属層が電子素子12に近いほど、放熱効果をより高めることができる。また、厚型金属層である第2金属層62および第5金属層65の厚さは、互いに異なっていてもよい。さらに、金属被覆層41は、第1放熱部材13Aにおいて固定部材14Aが挿通される孔部の内壁にも設けられてもよい。
【0071】
[第3実施形態]
第3実施形態は、上述の実施形態のプリント回路板10,50を備えるプロジェクターである。第1、第2実施形態のプリント回路板10,50は、映像情報や各種信号を送受信するプロジェクター等の情報通信装置を含む電子機器に適用することができる。
【0072】
図6は、本実施形態のプロジェクター101を示す概略構成図である。
図6に示すように、本実施形態のプロジェクター101は、スクリーン700上にカラー画像を表示する投射型画像表示装置である。プロジェクター101は、光源装置170と、均一照明光学系140と、色分離光学系103と、赤色光用の光変調装置104Rと、緑色光用の光変調装置104Gと、青色光用の光変調装置104Bと、合成光学系105と、投射光学系160と、を備えている。
【0073】
光源装置170は、白色の照明光WLを均一照明光学系140に向けて射出する。光源装置170は、所定の波長の光を射出する図示しない光源を含む。光源は、高圧放電灯等を含む放電灯、半導体レーザー、もしくはLED(発光ダイオード)等、種々の光源が考えられる。
【0074】
均一照明光学系140は、ホモジナイザー光学系131と、偏光変換素子132と、重畳光学系133と、を備えている。ホモジナイザー光学系131は、第1のマルチレンズアレイ131aと、第2のマルチレンズアレイ131bと、から構成されている。均一照明光学系140は、光源装置170から射出された照明光WLの強度分布を被照明領域である光変調装置104R、光変調装置104G、および光変調装置104Bにおいて均一化する。均一照明光学系140から射出された照明光WLは、色分離光学系103に入射する。
【0075】
色分離光学系103は、光源装置170から射出された照明光WLを赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとに分離する。色分離光学系103は、第1のダイクロイックミラー107aと、第2のダイクロイックミラー107bと、第1の反射ミラー108aと、第2の反射ミラー108bと、第3の反射ミラー108cと、第1のリレーレンズ109aと、第2のリレーレンズ109bと、を備えている。
【0076】
第1のダイクロイックミラー107aは、光源装置170から射出された照明光WLを赤色光LRと、緑色光LGおよび青色光LBを含む光と、に分離する。第1のダイクロイックミラー107aは、赤色光LRを透過させ、緑色光LGおよび青色光LBを反射する。第2のダイクロイックミラー107bは、第1のダイクロイックミラー107aで反射した光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。第2のダイクロイックミラー107bは、緑色光LGを反射し、青色光LBを透過させる。
【0077】
第1の反射ミラー108aは、赤色光LRの光路中に配置されている。第1の反射ミラー108aは、第1のダイクロイックミラー107aを透過した赤色光LRを光変調装置104Rに向けて反射する。第2の反射ミラー108bと第3の反射ミラー108cとは、青色光LBの光路中に配置されている。第2の反射ミラー108bと第3の反射ミラー108cとは、第2のダイクロイックミラー107bを透過した青色光LBを光変調装置104Bに導く。緑色光LGは、第2のダイクロイックミラー107bで反射され、光変調装置104Gに向けて進む。
【0078】
第1のリレーレンズ109aと第2のリレーレンズ109bとは、青色光LBの光路中における第2のダイクロイックミラー107bの光射出側に配置されている。第1のリレーレンズ109aおよび第2のリレーレンズ109bは、青色光LBの光路長が赤色光LRの光路長および緑色光LGの光路長よりも長いことに起因した青色光LBの光損失を補償する。
【0079】
各光変調装置104R,104G,104Bは、光源装置170から射出される光を画像信号に応じて変調する。光変調装置104Rは、赤色光LRを画像信号に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。光変調装置104Gは、緑色光LGを画像信号に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。光変調装置104Bは、青色光LBを画像信号に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。光変調装置104R、光変調装置104G、および光変調装置104Bには、例えば透過型の液晶パネルが用いられる。また、液晶パネルの光入射側および光射出側には、図示しない偏光板がそれぞれ配置されている。偏光板は、特定の偏光方向を有する直線偏光光を透過させる。
【0080】
光変調装置104Rの光入射側には、フィールドレンズ110Rが配置されている。光変調装置104Gの光入射側には、フィールドレンズ110Gが配置されている。光変調装置104Bの光入射側には、フィールドレンズ110Bが配置されている。フィールドレンズ110Rは、光変調装置104Rに入射する赤色光LRを平行化する。フィールドレンズ110Gは、光変調装置104Gに入射する緑色光LGを平行化する。フィールドレンズ110Bは、光変調装置104Bに入射する青色光LBを平行化する。
【0081】
合成光学系105は、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBのそれぞれに対応した画像光を合成し、合成された画像光を投射光学系160に向けて射出する。合成光学系105には、例えばクロスダイクロイックプリズムが用いられる。
【0082】
投射光学系160は、複数の投射レンズを含む投射レンズ群から構成されている。投射光学系160は、合成光学系105により合成された画像光をスクリーン700に向けて拡大投射する。すなわち、投射光学系160は、各光変調装置104R,104G,104Bにより変調された光を投射する。これにより、スクリーン700上には、拡大されたカラー画像が表示される。
【0083】
図7は、本実施形態のプロジェクターの構成を示す。
プロジェクター101は、
図6に示された構成の他に、
図7に示されるように、通信部503、映像信号変換部510と、直流電源装置575と、映像処理装置570と、CPU(Central Processing Unit)580と、光源駆動装置577と、を備える。
【0084】
映像信号変換部510は、外部から入力された映像信号(輝度−色差信号またはアナログRGB信号など)を所定のワード長のデジタルRGB信号に変換して画像信号512R,512G,512Bを生成し、映像処理装置570に供給する。
【0085】
映像処理装置570は、3つの画像信号512R,512G,512Bに対してそれぞれ映像処理を行う。映像処理装置570は、各光変調装置104R,104G,104Bをそれぞれ駆動するための映像信号572R,572G,572Bを各光変調装置104R,104G,104Bに供給する。
【0086】
直流電源装置575は、外部の交流電源600から供給される交流電圧を一定の直流電圧に変換する。直流電源装置575は、映像信号変換部510、映像処理装置570および光源駆動装置577に直流電圧を供給する。
【0087】
光源駆動装置577は、起動時に光源装置170に駆動電流を供給し、光源装置170を点灯させる。
【0088】
光変調装置104R,104G,104Bは、それぞれ映像信号572R,572G,572Bに基づいて、各光変調装置104R,104G,104Bに入射される色光の透過率を変調する。なお、各光変調装置104R,104G,104Bは、映像信号572R,572G,572Bに基づいて各光変調装置104R,104G,104Bを駆動させる、図示しない表示駆動装置を含んでいる。
【0089】
CPU580は、プロジェクター101の点灯開始から消灯に至るまでの各種の動作を制御する。例えば、通信信号582を介して点灯命令や消灯命令を光源駆動装置577に出力する。CPU580は、光源駆動装置577から通信信号584を介して光源装置170の点灯情報を受け取る。
【0090】
通信部503は、CPU580により制御され、図示しない情報転送装置との間で、無線通信または有線通信によって映像情報等の送受信を行う。通信部503は、情報転送装置との通信により情報転送装置から映像情報を受信した場合、CPU580の制御に従って、受信した映像情報を映像信号変換部510に出力する。なお、本実施形態において、通信部503は、CPU580と制御信号線で接続されているが、
図7では制御信号線の図示を省略している。
【0091】
上述の第1実施形態のプリント回路板10および第2実施形態のプリント回路板50は、例えば、本実施形態のプロジェクター1において、通信部503、CPU580および図示しない表示駆動装置の回路に用いられる。
【0092】
以上のように、本実施形態のプロジェクター101において、上記実施形態のプリント回路板を使用することにより、映像情報や信号の劣化を抑制できるため、映像品質に優れたプロジェクターを実現することができる。また、本発明のプリント回路板は、プロジェクターに限らず、例えば、情報を送受信する携帯電話や液晶表示装置等の種々の情報通信装置に適用が可能である。
【0093】
また、本実施形態において、透過型のプロジェクターに本発明を適用した場合の例について説明したが、本発明は、反射型のプロジェクターにも適用することも可能である。ここで、「透過型」とは、液晶パネル等を含む光変調装置(液晶ライトバルブ)が光を透過するタイプであることを意味する。「反射型」とは、光変調装置(液晶ライトバルブ)が光を反射するタイプであることを意味する。なお、光変調装置は、液晶パネル等に限られず、例えばマイクロミラーを用いた光変調装置であってもよい。
【0094】
また、本実施形態において、3つの光変調装置104R,104G,104Bを用いたプロジェクター101の例を挙げたが、本発明は、1つの光変調装置のみを用いたプロジェクター、4つ以上の光変調装置を用いたプロジェクターにも適用可能である。
【0095】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記実施形態では、中間金属層を4層以上備えるプリント回路板の例を挙げたが、例えば2層の厚型金属層からなる中間金属層を備え、一方の中間金属層がグラウンド端子に接続され、他方の中間金属層が電源端子に接続されたプリント回路板であってもよい。また、複数の中間金属層のうち、いずれの金属層を厚型金属層にするかは適宜選択が可能である。
【0096】
また、プリント回路板を構成する各構成要素の形状、寸法、配置、数等の具体的な構成については、適宜変更が可能である。上記実施形態では、リジッドタイプのプリント回路板を想定して記載したが、フレキシブルタイプのプリント回路板にも適用が可能である。