(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記着色剤がカーボンブラックを含み、当該封止用樹脂組成物中の前記カーボンブラックの含有量が、当該封止用樹脂組成物全体に対して0.2質量%以上1.0質量%以下である、請求項1乃至4いずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。また、数値範囲の「A〜B」は断りがなければ、「A以上B以下」を表す。
【0014】
本実施形態において、封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂および無機充填材を含む。
そして、以下の条件(A)および(B)によって得られる、封止用樹脂組成物を用いた構造体の色差ΔE
*が、0.00以上1.50以下である。
(A)サンプル作成条件
(A1)240mm*70mmの基板の上に10mm*10mm*厚さ700μmのシリコンウェハをマウントする。
(A2)(A1)で得られた基板上に、シリコンウェハ上の樹脂厚みが100μm±10μmとなるように封止用樹脂組成物にて封止する。
(A3)(A2)で得られた封止樹脂層の表面を研磨してシリコンウェハ上の封止樹脂層の厚みを50μmとし、構造体を得る。
(B)評価条件
(B1)色差計を用いて、構造体のシリコンウェハが配置されている箇所の真上のCIE1976L
*a
*b
*表色系で規定される色度座標(L
*1,a
*1,b
*1)を測定する。
(B2)色差計を用いて、構造体のシリコンウェハが配置されていない箇所の真上のCIE1976L
*a
*b
*表色系で規定される色度座標(L
*0,a
*0,b
*0)を測定する。
(B3)下記式(I)により構造体の色差ΔE
*を算出する。
ΔE
*=〔(L
*1−L
*0)
2+(a
*1−a
*0)
2+(b
*1−b
*0)
2〕
1/2 (I)
【0015】
本発明者は、エポキシ樹脂および無機充填材を含む封止用樹脂組成物を用いて条件(A)にて得られる構造体について、条件(B)によって得られ、式(I)で表される色差ΔE
*を特定の範囲とすることにより、封止樹脂層の外観に優れる封止樹脂層を備える半導体装置が得られることを新たに見出した。
【0016】
すなわち、本実施形態における封止用樹脂組成物により形成される封止材は、半導体チップが透けにくい好ましい外観を有するものである。具体的には、本実施形態においては、上記条件(A)および(B)によって得られる、封止用樹脂組成物を用いた構造体の色差ΔE
*が、0.00以上1.50以下である。
【0017】
以下、条件(A)および(B)について、
図1(a)〜
図1(c)を参照して説明する。
図1(a)〜
図1(c)は、本実施形態における構造体の製造工程および色差ΔE
*の測定方法を示す断面図である。
【0018】
(条件(A))
条件(A)は、色差ΔE
*を測定するための構造体すなわちサンプルの作成条件であり、工程(A1)〜(A3)を含む。
図1(a)を参照して、まず、広さ240mm*70mmの基板101の上に、広さ10mm*10mm、厚さ700μmのシリコンウェハ103をマウントする(工程(A1))。
基板101の材料は、具体的には銅である。たとえば基板101を銅フレームとしてもよい。
【0019】
そして、シリコンウェハ103がマウントされた基板101を、シリコンウェハ103上の樹脂厚みが100μm±10μmとなるように封止用樹脂組成物にて封止することにより、封止樹脂層105を形成する(工程(A2))。
ここで、封止樹脂層105の形成は、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力10MPa、硬化時間120秒の条件で、封止用樹脂組成物を圧縮成形することによりおこなう。
【0020】
次に、
図1(b)に示すように、封止樹脂層105の表面を研磨してシリコンウェハ103上の封止樹脂層105の厚みを50μmとし、構造体110を得る(工程(A3))。
【0021】
(条件(B))
条件(B)は、条件(A)により得られた構造体110の色差ΔE
*の測定条件であり、工程(B1)〜(B3)を含む。
図1(c)に示すように、色差計(日本電色工業社製 ハンディ型分光色差計 NF333)を用いて、構造体110のシリコンウェハ103が配置されている箇所の真上のCIE1976L
*a
*b
*表色系で規定される色度座標(L
*1,a
*1,b
*1)を測定する(工程(B1))。
また、色差計(日本電色工業社製 ハンディ型分光色差計 NF333)を用いて、構造体110のシリコンウェハ103が配置されていない箇所の真上のCIE1976L
*a
*b
*表色系で規定される色度座標(L
*0,a
*0,b
*0)を測定する(工程(B2))。
そして、上記工程(B1)および(B2)で得られた色度座標から、下記式(I)により構造体110の色差ΔE
*を算出する(工程(B3))。
ΔE
*=〔(L
*1−L
*0)
2+(a
*1−a
*0)
2+(b
*1−b
*0)
2〕
1/2 (I)
【0022】
本実施形態においては、以上により得られる色差ΔE
*が0.00以上1.50以下である。これにより、封止樹脂層105の外観に優れた半導体装置を得ることができる。
色差ΔE
*は、封止樹脂層105の上面の外観の均一性を向上させる観点から、0.00以上であればよいが、たとえば0.01以上であってもよい。
また、色差ΔE
*は、封止樹脂層105の外観を向上させる観点から、1.50以下であり、好ましくは1.30以下、より好ましくは1.00以下、さらに好ましくは0.50以下である。
本実施形態において、色差ΔE
*は、封止樹脂層105中に含まれる成分および配合によって調整することができる。
【0023】
以下、本実施形態における封止用樹脂組成物および半導体装置について詳細に説明する。
【0024】
(封止用樹脂組成物)
本実施形態において、封止用樹脂組成物は、基材上に搭載された半導体素子を封止する封止材を形成するために用いられる。封止用樹脂組成物を用いた封止成形は、限定されないが、たとえば、トランスファー成形法、または圧縮成形法によりおこなうことができる。
封止用樹脂組成物は、たとえば粒子状またはシート状である。
粒子状の封止用樹脂組成物として、具体的には、タブレット状または粉粒体のものが挙げられる。このうち、封止用樹脂組成物がタブレット状である場合、たとえば、トランスファー成形法を用いて封止用樹脂組成物を成形することができる。また、封止用樹脂組成物が粉粒体である場合には、たとえば、圧縮成形法を用いて封止用樹脂組成物を成形することができる。ここで、封止用樹脂組成物が粉粒体であるとは、粉末状または顆粒状のいずれかである場合を指す。
基材は、たとえば、インターポーザ等の配線基板、またはリードフレームである。また、半導体素子は、ワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基材に電気的に接続される。
【0025】
封止用樹脂組成物を用いた封止成形により半導体素子を封止して得られる半導体装置としては、限定されないが、たとえば、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、LF−BGA(Lead Flame BGA)等が挙げられる。
本実施形態において、封止用樹脂組成物は、近年これらのパッケージの成形に多く適用されるMAP(Mold Array Package)成形により形成される構造体にも適用できる。この場合、基材上に搭載される複数の半導体素子を、封止用樹脂組成物を用いて一括して封止することによりパッケージが得られる。
【0026】
また、上記半導体素子としては、たとえば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、本実施形態において、封止用樹脂組成物の封止対象となる半導体素子は、受光素子および発光素子(発光ダイオード等)等の光半導体素子を除く、いわゆる、光の入出を伴わない素子をいう。
【0027】
本実施形態において、封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂および無機充填材を含む。以下、封止用樹脂組成物の構成成分について説明する。
【0028】
(エポキシ樹脂)
本実施形態において、エポキシ樹脂としては、たとえば、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格およびビフェニレン骨格からなる群から選択される1または2の骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格およびビフェニレン骨格からなる群から選択される1または2の骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0029】
エポキシ樹脂は、封止材の外観を一様で好ましいものとする観点から、好ましくはフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含み、より好ましくは下記一般式(1)で表されるフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、下記一般式(2)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂および下記一般式(3)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0031】
(上記一般式(1)中、Ar
1はフェニレン基またはナフチレン基を表し、Ar
1がナフチレン基の場合、グリシジルエーテル基はα位、β位のいずれに結合していてもよい。Ar
2はフェニレン基、ビフェニレン基またはナフチレン基のうちのいずれか1つの基を表す。R
aおよびR
bは、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を表す。gは0〜5の整数であり、hは0〜8の整数である。n
3は重合度を表し、その平均値は1〜3である。)
【0033】
(上記一般式(2)中、複数存在するR
cは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基を表す。n
5は重合度を表し、その平均値は0〜4である。)
【0034】
【化3】
(上記一般式(3)中、複数存在するR
dおよびR
eは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基を表す。n
6は重合度を表し、その平均値は0〜4である。)
【0035】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、成形時において十分な流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物を用いて形成される封止材を備える半導体装置について、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させる観点から、封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0036】
(無機充填材)
本実施形態において、無機充填材としては、一般的に半導体封止用樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。無機充填材の具体例として、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ;アルミナ;タルク;酸化チタン;窒化珪素;窒化アルミニウムが挙げられる。これらの無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、汎用性に優れている観点から、シリカを用いることが好ましく、溶融シリカを用いることがより好ましい。
【0037】
また、構造体110の色差ΔE
*を小さくして封止樹脂層105の外観を向上させる観点から、無機充填材は、好ましくはシリカおよびアルミナを含む。
このとき、封止用樹脂組成物中のアルミナの含有量は、色差ΔE
*を小さくする観点からは、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは4.5質量%以上であり、より好ましくは6.0質量%以上である。また、好ましい熱膨張性を得る観点、および、封止樹脂層105の製造コストを低減する観点から、封止用樹脂組成物中のアルミナの含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは12質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下である。
【0038】
また、本実施形態において、封止用樹脂組成物中の無機充填材全体の含有量は、封止用樹脂組成物を用いて形成される封止材の低吸湿性および低熱膨張性を向上させ、得られる半導体装置の耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の無機充填材全体の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0039】
また、無機充填材の形状は球状であることが好ましく、さらには無機充填材が球状シリカおよび球状アルミナからなる群から選択される1種または2種を含むことがより好ましい。これにより、成形時における封止用樹脂組成物の流動性を向上させ、成形安定性の向上に寄与することができる。
【0040】
無機充填材の平均粒径D50は、構造体110の色差ΔEを小さくする観点から、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上である。また、封止材の表面における光反射率を高めて半導体チップの透けを抑制し、半導体装置の外観を向上させる観点から、無機充填材の平均粒径D50は、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは12μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
ここで、なお、無機充填材の平均粒径D50は、市販のレーザー式粒度分布計(たとえば、島津製作所社製 SALD−7000)で測定したときの平均粒径(個数平均径)である。
【0041】
また、無機充填材は、封止材の表面における光反射率を高めて半導体チップの透けを抑制し、半導体装置の外観を向上させる観点から、好ましくはフィラーカットポイントが35μm以下であるもの、すなわち、好ましくは粒径が35μm以下であるものにより構成され、より好ましくはフィラーカットポイントが32μm以下であるもの、すなわち、好ましくは粒径が32μm以下であるものにより構成され、より好ましくはフィラーカットポイントが25μm以下であるもの、すなわち、より好ましくは粒径が25μm以下であるものにより構成される。
なお、無機充填材の粒径の下限値に制限はなく、たとえば、粒径が0.05μm以上であるものにより無機充填材が構成されてもよい。
【0042】
本実施形態において、封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂および無機充填材以外の成分を含んでもよい。
たとえば、封止用樹脂組成物は、硬化剤および着色剤から選ばれる1種または2種をさらに含んでもよい。
【0043】
(硬化剤)
硬化剤は、たとえば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、および縮合型の硬化剤の3タイプに大別することができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0044】
重付加型の硬化剤としては、たとえばジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノールなどのフェノール樹脂系硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0045】
触媒型の硬化剤としては、たとえばベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0046】
縮合型の硬化剤としては、たとえばフェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0047】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、および保存安定性等についてのバランスを向上させる観点から、フェノール樹脂系硬化剤が好ましい。フェノール樹脂系硬化剤としては、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量、分子構造は限定されない。
【0048】
硬化剤に用いられるフェノール樹脂系硬化剤としては、たとえばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂;ポリビニルフェノール;フェノール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性および充填性を向上させる観点からは、フェノール・ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂等の多官能型フェノール樹脂を用いることがより好ましい。
【0049】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、成形時において、優れた流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物の硬化物を封止材とする半導体装置について、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0050】
(着色剤)
本実施形態において、封止用樹脂組成物は着色剤を含んでもよい。着色剤の具体例として、カーボンブラック、黒色酸化チタン(チタンブラック)、ピッチ等の黒色系着色剤が挙げられる。封止用樹脂組成物が黒色系着色剤を含む構成とすることにより、半導体装置において、封止材によって封止される半導体素子の透けを好適に抑制できるため、たとえば透過光による半導体素子の劣化または誤作動を抑制することが可能となる。
【0051】
たとえば、封止材の表面における光反射率を高めて半導体チップの透けを抑制し、半導体装置の外観を向上させる観点から、着色剤がカーボンブラックを含むことが好ましい。
封止用樹脂組成物中のカーボンブラックの含有量は、封止材によって封止される半導体素子の透けを抑制する観点、および、封止材の外観を一様で好ましいものとする観点から、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上である。また、絶縁信頼性を高める観点から、封止用樹脂組成物中のカーボンブラックの含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.9質量%以下である。また、カーボンブラックと後述する黒色酸化チタンとを封止用樹脂組成物中に併用するとき、レーザー捺印深さを小さくする観点から、封止用樹脂組成物中のカーボンブラックの含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0052】
また、着色剤が黒色酸化チタンを含むことが好ましい。黒色酸化チタンは、Ti
nO
(2n-1)(nは正の整数)として存在する。本実施形態において用いられる黒色酸化チタンTi
nO
(2n-1)としては、nが4以上6以下であるものを用いることが好ましい。nを4以上とすることにより、封止用樹脂組成物中での黒色酸化チタンの分散性を向上させることができる。一方、nを6以下とすることにより、YAGレーザー等のレーザーの捺印性を向上させることができる。ここでは、黒色酸化チタンとしてTi
4O
7、Ti
5O
9、およびTi
6O
11のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0053】
封止用樹脂組成物中の黒色酸化チタンの含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。また、流動性の向上とコスト増加の抑制とのバランスの観点から、封止用樹脂組成物中の黒色酸化チタンの含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
【0054】
また、本実施形態において、レーザーマークの捺印深さを小さくする効果、レーザーマークの視認性を向上させる効果、および、封止材表面の光透過性を低くする効果のバランスを高める観点から、封止用樹脂組成物は、好ましくはカーボンブラックおよび黒色酸化チタンを含み、より好ましくは、カーボンブラックおよび黒色酸化チタンを含むとともに、封止用樹脂組成物中のカーボンブラックの含有量が封止用樹脂組成物全体に対してたとえば0.5質量%以下であり、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0055】
ピッチは、石油、石炭、木材等の有機物質の乾留によって得られるタールを蒸留したときの残留物である。黒色系着色剤としてのピッチは、限定されないが、たとえば、石油ピッチまたは石炭ピッチである。また、ピッチとしては、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ、またはメソフェーズピッチを冷却することにより生成され、キノリンの不溶分として分離されるメソフェーズ小球体を用いることができる。これらの中でも、YAGレーザー等のレーザーの捺印性や、封止用樹脂組成物中での分散性を向上させる観点からは、メソフェーズ小球体を用いることがより好ましい。
【0056】
封止用樹脂組成物中の黒色系着色剤全体の含有量は、得られる封止材における色差ΔE
*を小さくする観点から、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。
また、本実施形態において、レーザーマークの捺印深さを小さくする観点から、封止用樹脂組成物中の黒色系着色剤全体の含有量は、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたとき、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以下である。
【0057】
また、封止用樹脂組成物には、上述した成分以外の成分を含んでもよく、たとえば硬化促進剤、カップリング剤、離型剤、イオン捕捉剤(イオンキャッチャー)、低応力成分、難燃剤、および酸化防止剤等の各種添加剤のうち1種以上を適宜配合することができる。
硬化促進剤は、たとえば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、上記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。
カップリング剤は、たとえば、エポキシシラン、メルカプトシラン、フェニルアミノシラン等のアミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、本発明の効果をより効果的に発現するものとして、エポキシシランまたはアミノシランを含むことがより好ましく、2級アミノシランを含むことが流動性等の観点からさらに好ましい。
離型剤は、たとえばカルナバワックス等の天然ワックス、モンタン酸エステルワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類、ならびにパラフィンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
イオン捕捉剤は、たとえば、ハイドロタルサイトを含む。
低応力成分は、たとえば、シリコーンオイル、シリコーンゴムを含む。
難燃剤は、たとえば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼンから選択される1種または2種以上を含むことができる。
酸化防止剤は、たとえば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物およびチオエーテル系化合物から選択される1種または2種以上を含む。
【0058】
(封止用樹脂組成物の製造方法)
次に、封止用樹脂組成物の製造方法を説明する。
本実施形態において、封止用樹脂組成物は、たとえば、上述した各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕する方法により得ることができる。また、必要に応じて、上記方法における粉砕後にタブレット状に打錠成型して粒子状封止用樹脂組成物を得てもよい。また、上記方法における粉砕後にたとえば真空ラミネート成形または圧縮成形によりシート状封止用樹脂組成物を得てもよい。また得られた封止用樹脂組成物について、適宜分散度や流動性等を調整してもよい。
そして、本実施形態においては、封止用樹脂組成物に含まれる成分および配合を調整することにより、条件(A)および(B)によって得られる構造体の色差ΔE
*が上述した特定の範囲にある封止用樹脂組成物を得ることができる。
【0059】
本実施形態において得られる封止用樹脂組成物は、色差ΔE
*について式(I)の条件を満たすため、これを用いることにより、封止材の外観に優れる半導体装置を得ることができる。たとえば、本実施形態により、半導体素子の透け等による封止材上面の外観のばらつきを抑制し、好ましい一様な外観を有する封止材を得ることができる。
また、封止用樹脂組成物を硬化してなる封止樹脂層を薄型化すると、レーザーマークの視認性を維持しつつ、半導体素子へのダメージや封止樹脂層へのクラックが生じることを抑制するためにレーザーマークの浅掘りが求められる。本実施形態においては、たとえば、色差ΔE
*について式(I)の条件を満たすとともに、封止用樹脂組成物がカーボンブラックおよび黒色酸化チタンを含み、封止用樹脂組成物全体を100質量%としたときのカーボンブラックの添加量をたとえば0.5質量%以下、好ましくは0.4質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下とすることにより、上述したレーザーマークの視認性と浅掘りとを両立させることも可能となる。
【0060】
(半導体装置)
本実施形態における半導体装置は、上述した本実施形態における封止用樹脂組成物で半導体素子を封止してなる。
図2は、本実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。半導体装置100は、基材10と、基材10上に搭載された半導体素子20と、半導体素子20を封止する封止材30と、を備えた半導体パッケージである。
図2においては、半導体装置100がBGAパッケージである場合が例示されている。この場合、基材10のうち半導体素子20を搭載する表面とは反対側の裏面には、複数の半田ボール50が設けられる。
半導体素子20は、ボンディングワイヤ40を介して基材10へ電気的に接続される。一方で、半導体素子20は、基材10上にフリップチップ実装されていてもよい。
【0061】
本実施形態において、封止材30は、上述の封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。封止樹脂層の外観に優れる半導体装置を得ることができる。また、本実施形態により、たとえば、色差ΔE
*を小さくしつつ光透過性を充分に低下させることも可能となり、これにより、たとえば封止材によって封止された半導体素子に光が透過することによる誤作動を抑制することも可能となる。また、本実施形態によれば、たとえば、YAGレーザー等のレーザーの捺印性に優れる半導体装置を得ることも可能となる。封止材30は、たとえば、封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成される。
【0062】
また、封止材30の上面には、たとえば、YAGレーザー等のレーザーによりマークが捺印される。このマークは、たとえば、直線または曲線からなる文字、数字、または記号の少なくとも1種類以上により構成される。また、上記マークは、たとえば、半導体パッケージの製品名、製品番号、ロット番号、またはメーカー名等を示すものである。また、上記マークは、たとえば、YVO
4レーザー、炭酸レーザー等により捺印されてもよい。
【0063】
次に、構造体102について説明する。
図3は、本実施形態に係る構造体102の一例を示す断面図である。構造体102は、MAP成形により形成された成形品である。このため、構造体102を半導体素子20毎に個片化することにより、複数の半導体パッケージが得られることとなる。
構造体102は、基材10と、複数の半導体素子20と、封止材30と、を備えている。複数の半導体素子20は、基材10上に配列されている。
図3においては、各半導体素子20が、ボンディングワイヤ40を介して基材10に電気的に接続される場合が例示されている。しかしながら、これに限られず、各半導体素子20は、基材10に対してフリップチップ実装されていてもよい。なお、基材10および半導体素子20は、半導体装置100において例示したものと同様のものを用いることができる。
【0064】
封止材30は、複数の半導体素子20を封止している。封止材30は、上述した封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。封止樹脂層の外観に優れる構造体102およびこれを個片化して得られる半導体装置を実現することが可能となる。封止材30は、たとえば、封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成される。
【0065】
また、封止材30の上面には、たとえば、YAGレーザー等のレーザーによりマークが捺印される。このマークは、たとえば、直線または曲線からなる文字、数字、または記号の少なくとも1種類以上により構成される。また、上記マークは、たとえば、半導体パッケージの製品名、製品番号、ロット番号、またはメーカー名等を示すものである。また、上記マークは、たとえば、YVO
4レーザー、炭酸レーザー等により捺印されてもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. エポキシ樹脂および無機充填材を含む、封止用樹脂組成物であって、
以下の条件(A)および(B)によって得られる、当該封止用樹脂組成物を用いた構造体の色差ΔE*が、0.00以上1.50以下である、封止用樹脂組成物。
(A)サンプル作成条件
(A1)240mm*70mmの基板の上に10mm*10mm*厚さ700μmのシリコンウェハをマウントする。
(A2)前記(A1)で得られた基板上に、前記シリコンウェハ上の樹脂厚みが100μm±10μmとなるように当該封止用樹脂組成物にて封止する。
(A3)前記(A2)で得られた封止樹脂層の表面を研磨して前記シリコンウェハ上の前記封止樹脂層の厚みを50μmとし、前記構造体を得る。
(B)評価条件
(B1)色差計を用いて、前記構造体の前記シリコンウェハが配置されている箇所の真上のCIE1976L*a*b*表色系で規定される色度座標(L*1,a*1,b*1)を測定する。
(B2)色差計を用いて、前記構造体の前記シリコンウェハが配置されていない箇所の真上のCIE1976L*a*b*表色系で規定される色度座標(L*0,a*0,b*0)を測定する。
(B3)下記式(I)により前記構造体の前記色差ΔE*を算出する。
ΔE*=〔(L*1−L*0)2+(a*1−a*0)2+(b*1−b*0)2〕1/2 (I)
2. 前記無機充填材の平均粒径D50が、0.1μm以上15μm以下である、1.に記載の封止用樹脂組成物。
3. 前記無機充填材の粒径が32μm以下である、1.または2.に記載の封止用樹脂組成物。
4. 前記無機充填材がシリカおよびアルミナを含む、1.乃至3.いずれか1つに記載の封止用樹脂組成物。
5. 着色剤をさらに含む、1.乃至4.いずれか1つに記載の封止用樹脂組成物。
6. 前記着色剤がカーボンブラックを含み、当該封止用樹脂組成物中の前記カーボンブラックの含有量が、当該封止用樹脂組成物全体に対して0.2質量%以上1.0質量%以下である、5.に記載の封止用樹脂組成物。
7. 前記着色剤が黒色酸化チタンを含む、5.または6.に記載の封止用樹脂組成物。
8. 当該封止用樹脂組成物が粒子状またはシート状である、1.乃至7.いずれか1つに記載の封止用樹脂組成物。
9. 1.乃至8.いずれか1つに記載の封止用樹脂組成物で半導体素子を封止してなる、半導体装置。
【実施例】
【0067】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0068】
(封止用樹脂組成物)
各実施例および各比較例について、以下のように封止用樹脂組成物を調製した。まず、表1に示す配合に従い、各成分を、ミキサーを用いて粉砕混合した後、80℃で5分間ロール混練した。次いで、これを冷却し、粉砕して封止用樹脂組成物を得た。
表1中に各成分の詳細をあわせて示す。なお、表1に示す各成分の配合割合は、すべて封止用樹脂組成物全体に対する配合割合(質量%)を指す。
また、本発明によれば、表1中、硬化促進剤の構造を下記式(11)に示す。
【0069】
【化4】
【0070】
<封止材の外観の均一性の評価>
実施例および比較例で得られた封止用樹脂組成物について、色差ΔE
*、レーザー捺印深さ、レーザー捺印視認性およびフィラー脱落を評価した。評価方法および評価基準を以下に示す。また、評価結果を表1にあわせて示す。
【0071】
(色差ΔE
*)
広さ240mm*70mmの基板101(銅フレーム)の上に、広さ10mm*10mm、厚さ700μmのシリコンウェハ103をマウントした。そして、シリコンウェハ103がマウントされた基板101を、シリコンウェハ103上の樹脂厚みが100μm±10μmとなるように、各例の封止用樹脂組成物にて封止して、封止樹脂層105を形成した。
ここで、封止樹脂層105の形成は、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力10MPa、硬化時間120秒の条件で、封止用樹脂組成物を圧縮成形することによりおこなった。
そして、封止樹脂層105の表面を研磨してシリコンウェハ103上の封止樹脂層105の厚みを50μmとし、構造体110を得た。
【0072】
各例で得られた構造体110について、色差計(日本電色工業社製 ハンディ型分光色差計 NF333)を用いて、シリコンウェハ103が配置されている箇所の真上のCIE1976L
*a
*b
*表色系で規定される色度座標(L
*1,a
*1,b
*1)、および、構造体110のシリコンウェハ103が配置されていない箇所の真上のCIE1976L
*a
*b
*表色系で規定される色度座標(L
*0,a
*0,b
*0)を測定した。
得られた色度座標から、上記式(I)により構造体110の色差ΔE
*を算出するとともに、以下の基準で評価した。
Good:ΔE
*が1未満
pass:ΔE
*が1.0以上1.5未満(実用上問題なし)
NG:ΔE
*が1.5以上
【0073】
(レーザー捺印深さ)
各例について、色差ΔE
*の測定に用いた構造体中の封止材におけるレーザー捺印深さの評価を以下の手順で行った。
【0074】
EO TECHNICS社製SFL263を用いて周波数20kHz、電流値1.75A、捺印速度400mm/secの条件で実施例および比較例で得られた封止用樹脂組成物を用いて得られた構造体中の封止材に「abc」の文字を捺印した。
そして、レーザー顕微鏡(キーエンス社製カラー3Dレーザー顕微鏡VK−9700)を用いて、レーザーマークの文字「b」の深さを5箇所測定し、これらの算術平均値をレーザー捺印深さとした。
【0075】
(レーザー捺印視認性)
各例について、色差ΔE
*の測定に用いた構造体中の封止材におけるレーザーの捺印性の評価を以下の手順で行った。
【0076】
レーザー捺印深さの評価に用いたサンプルのレーザー捺印面を以下の方法でスキャンし、得られた画像を以下の条件で2値化した。
(スキャン方法)
コピー機を用いてスキャン機能で画像を取り込んだ。装置および条件を以下に示す。
装置:MX−5140(シャープ社製、コピー・スキャナー・ファックス複合機)
機能:スキャン(SMB)
濃度:自動
解像度:600×600dpi
フォーマット:JPEG
カラーモード:フルカラー
原稿:読み込みサイズ:写真、出力サイズ:自動
(2値化方法)
(1)ImageJ(NIH Image社製)を起動し、スキャンしたファイルを開いた。
(2)レーザーマークが捺印された範囲を、1200*500のピクセルサイズの長方形となるように選択し、選択した範囲の画像を切り抜いた。
(3)切り抜いた領域を以下の条件で帯域フィルタ処理し、ノイズを除去した。
Filter_large structures down to 30 pixels
Filter_small structures up to 3 pixels
Suppress stripes: None
Tolerance of direction; 5%
Autoscale after filtering:有効
Saturate image when autoscaling:有効
Display filter:無効
(4)上記(3)で得られた画像を2値化処理した。閾値色を「B&W」(白黒)とし、256階調の66を閾値として、それ以下を黒とした。
(5)捺印部分を135*75のピクセルサイズに切り取った。
そして、切り取った領域のレーザーマークの視認性を5名の評価者が目視により以下の基準で評価した。
Good:視認性が良好である。
NG:使用不可能である。
【0077】
(フィラー脱落)
構造体110の上面(封止樹脂層105が配されている側)を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)にて観察し、以下の基準で評価した。
Good:フィラー脱落がない。
pass:実用上問題なし。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示したように、実施例1〜5では、いずれも、色差ΔE
*が充分に小さく、半導体チップの透けが充分に抑制された好ましい外観が得られるとともに、レーザーマークの視認性にも優れていた。また、各実施例における封止樹脂組成物を用いることにより、フィラー脱落が好適に抑制された封止材が得られた。
これらの中でも、実施例1、2、および5では、レーザー捺印深さが小さく、レーザーマークの浅掘りの実現という点でさらに好ましいものが得られた。
また、実施例4および5では、色差ΔE
*が充分に小さく、封止樹脂層の外観においてさらに好ましいものが得られた。