(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
使用現場に設置されているベルトコンベヤ装置の状態を示す指標およびこの使用現場でのコンベヤベルトの使用環境を示す指標を入力する入力部に加えて、前記コンベヤベルトの上カバーゴムの摩耗量、前記コンベヤベルトに作用している衝撃力、張力、心体の状態を示す指標、エンドレス部の状態を示す指標の5つの入力項目の少なくとも1つを入力項目とする入力部と、それぞれの前記入力項目のデータが入力されるサーバーとを備えたコンベヤベルトの管理システムであって、
前記サーバーは、演算部と記憶部とを有し、前記記憶部には、前記コンベヤベルトの仕様が予め入力されているベルト仕様データベースと、コンベヤベルトの仕様毎に前記サーバーに入力されたそれぞれの前記入力項目についての許容範囲が予め入力されている許容範囲データベースとが記憶されていて、
前記サーバーに入力されたそれぞれの前記入力項目のデータと、前記ベルト仕様データベースに入力されている前記コンベヤベルトの仕様と、前記許容範囲データベースに入力されている前記許容範囲とに基づいて、前記演算部により前記コンベヤベルトの状態が監視され、かつ、
前記使用現場の前記ベルトコンベヤ装置での使用条件と、前記ベルト仕様データベースに入力されている前記コンベヤベルトの仕様と、コンベヤベルトの使用条件およびコンベヤベルトの仕様とコンベヤベルトの実際の寿命との予め把握されている相関関係とに基づいて、前記コンベヤベルトの予定寿命が、前記コンベヤベルトが前記ベルトコンベヤ装置に装着される前に前記演算部により算出される構成にしたことを特徴とするコンベヤベルトの管理システム。
前記ベルトコンベヤ装置の状態を示す指標として、搬送物の搬送速度または単位時間当たりの搬送重量が含まれていて、前記使用現場でのコンベヤベルトの使用環境を示す指標として、使用環境温度および搬送物の仕様を特定する数値が含まれていて、前記心体の状態を示す指標として、並列された心体どうしのベルト幅方向すき間が含まれていて、前記エンドレス部の状態を示す指標として、エンドレス部の接合長さが含まれている構成にした請求項1に記載のコンベヤベルトの管理システム。
前記サーバーに入力された前記摩耗量のデータと、前記ベルト仕様データベースに入力されている前記コンベヤベルトの仕様と、前記許容範囲データベースに入力されている前記許容範囲とに基づいて、前記演算部により前記コンベヤベルトの残存寿命が算出され、この残存寿命の長さが前記コンベヤベルトの状態の1つとして監視される構成にした請求項1または2に記載のコンベヤベルトの管理システム。
前記コンベヤベルトの使用現場またはその周辺のストックヤードでの前記コンベヤベルトの交換用コンベヤベルトの在庫量が入力されている在庫データベースが前記記憶部に記憶され、前記サーバーが発注者端末機器と通信可能に接続されていて、
前記在庫データベースに入力されている前記在庫量と算出された前記残存寿命とに基づいて、前記サーバーから前記発注者端末機器に対して、前記交換用コンベヤベルトの発注時期の連絡または発注を促す連絡が送信される構成にした請求項3に記載のコンベヤベルトの管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のコンベヤベルトの管理システムを、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0014】
図1に例示する本発明のコンベヤベルトの管理システム1(以下、管理システム1という)は、
図6、7に例示する使用現場のベルトコンベヤ装置9に装着されているコンベヤベルト12の使用状態を監視する。また、この管理システム1は、コンベヤベルト12を使用する前にその予定寿命Jfを算出する。この実施形態では、さらにコンベヤベルト12の使用期間中にその残存寿命Jaを算出する。
【0015】
このベルトコンベヤ装置9では、コンベヤベルト12は、駆動プーリ10aと従動プーリ10bとの間に架け渡されていて所定のテンションで張設されている。駆動プーリ10aと従動プーリ10bとの間ではコンベヤベルト12は、ベルト長手方向に適宜の間隔で配置された支持ローラ10cによって支持される。
【0016】
コンベヤベルト12は、スチールコードまたは帆布からなる心体15で構成される心体層14と、心体層14を挟む上カバーゴム13aと下カバーゴム13bとにより構成されている。心体層14は、コンベヤベルト12を張設するためのテンションを負担する部材である。コンベヤベルト12はその他、幅方向端部ゴム13cや補強層などの適宜、必要な部材を付加して構成される。
【0017】
コンベヤベルト12のキャリア側では下カバーゴム13bが支持ローラ10cにより支持され、リターン側では上カバーゴム13aが支持ローラ10cにより支持されている。コンベヤベルト12のキャリア側では、3つの支持ローラ10cがベルト幅方向に並列して配置されていて、これらの支持ローラ10cによってコンベヤベルト12は所定のトラフ角度で凹状に支持されている。
【0018】
駆動プーリ10aは駆動モータにより回転駆動される。テークアップ機構11は従動プーリ10bを移動させて、駆動プーリ10aと従動プーリ10bとの間隔を変化させてコンベヤベルト12(心体層14)に所望の張力を作用させる。
【0019】
コンベヤベルト12は適宜の長さの複数本を、それぞれの心体層14の長手方向端部どうしを継ぎ合わせて環状に形成されている。コンベヤベルト12の周長が短い場合は、1本のコンベヤベルト1の長手方向両端部の心体層14どうしを継ぎ合わせて環状に形成される。したがって、
図8に例示するようにコンベヤベルト12には、長手方向に心体層14を継ぎ合せている部分(エンドレス部16B)と、非エンドレス部16Aとが長手方向に隣り合って存在している。このコンベヤベルト12では、心体層14がベルト幅方向に並列された複数のスチールコード15により形成されている。エンドレス部16Bでは、ベルト長手方向に対向するそれぞれの非エンドレス部16Aから延在するスチールコード15が、互いにベルト幅方向に1本おきに相手側のスチールコード15の間に入り込んでいる。
【0020】
心体層14が帆布により形成されている場合、エンドレス部16Bでは、ベルト長手方向に対向するそれぞれの非エンドレス部16Aから延在する帆布が、ステップ状に接合される等の公知の構造になる。非エンドレス部16Aでは心体層14は継ぎ目無く連続しているが、エンドレス部16Bではこのように心体層14は継ぎ目になっている。それ故、エンドレス部16Bと非エンドレス部16Aとでは、伸び、作用する張力、屈曲性(曲げ剛性)に相違が生じる。
【0021】
このコンベヤベルト12の上カバーゴム13aには、別のコンベヤベルトによって搬送された搬送物Cが投入され、投入された搬送物Cはコンベヤベルト12によって搬送先に搬送される。コンベヤベルト12にはホッパ等を通じて搬送物Cが投入されることもある。
【0022】
上カバーゴム13aは投入された搬送物Cによって衝撃を受ける。また、上カバーゴム13aでは、投入されて載置された直後の搬送物Cが所定の面圧で上カバーゴム13aを押圧しつつ、コンベヤベルト12に対してその走行方向と反対方向に移動する。その際に、上カバーゴム13aには摩擦力が作用する。上カバーゴム13aは、主に搬送物Cのこの挙動によって摩耗する。幅方向端部ゴム13cがベルトコンベヤ装置9のガイド等に対して摺動して摩耗することもある。下カバーゴム13bは、回転不能、或いは円滑な回転が不能になった支持ローラ10cに対して摺動して摩耗することもある。コンベヤベルト12に作用する張力不足等によってプーリ10a、10bとの間でスリップが生じて下カバーゴム13bが摩耗することもある。下カバーゴム13bの上に落下した搬送物Cを除去するために設けられたスクレーパに対して下カバーゴム13bが摺動して摩耗することもある。
【0023】
この管理システム1は、入力部5(5a〜5g)と、入力部5によりデータが入力されるサーバー2とを備えている。サーバー2は、演算部3(マイクロプロセッサ)と記憶部4(メモリー)とを有している。
【0024】
入力部5とサーバー2とは通信可能に接続されている。この実施形態では、管理システム1は7種類の入力部5a〜5gを備えていて、これら入力部5は送信部6に接続されている。入力部5により入力されたデータは、送信部6からサーバー2に送信される。さらに、サーバー2は発注者端末機器7および製造者端末機器8と通信可能に接続されている。発注者端末機器7および製造者端末機器8には例えば、パーソナルコンピュータなどを用いる。サーバー2、入力部5、発注者端末機器7および製造者端末機器8はそれぞれ、例えばインターネット網を通じて接続可能になっている。
【0025】
サーバー2は例えば、コンベヤベルト12を販売する販売業者の会社に設置される。入力部5は例えば、コンベヤベルト12の使用現場に配置される。発注者端末機器6は例えば、コンベヤベルト12の使用業者の会社に設置される。製造者端末機器7は例えば、コンベヤベルト12を製造する製造業者の会社(工場)に設置される。コンベヤベルト12の販売業者と製造業者が同じ場合(コンベヤベルト12の製造販売業者の場合)は例えば、その製造販売業者の会社にサーバー2および製造者端末機器7が配置される。
【0026】
それぞれの入力部5によりデータがサーバー2に入力される頻度は、1週間や1月間に適宜の回数などの不定期にすることもできるが、できるだけ定期的な一定期間毎にするとよい。この入力頻度は例えば、1回/日、1回/週、1回/月などにする。
【0027】
摩耗量入力部5aは、コンベヤベルト12の上カバーゴム13aの摩耗量P1を入力項目にしているが、下カバーゴム13bと幅方向端部ゴム13cのいずれか一方または両方の摩耗量を入力項目に加えることもできる。摩耗量入力部5aには例えば、上カバーゴム13aの摩耗量P1を検知する様々なタイプの摩耗量センサを用いることができる。或いは、摩耗量P1のデータを作業者がサーバー2に入力するための入力端末機器(パーソナルコンピュータなど)を摩耗量入力部5aとして用いることもできる。
【0028】
衝撃力入力部5bはコンベヤベルト12に作用する衝撃力P2、張力入力部5cはコンベヤベルト12に作用する張力P3、心体状態入力部5dは心体15の状態を示す指標P4、エンドレス部状態入力部5eはエンドレス部16Bの状態を示す指標P5、装置状態入力部5fはベルトコンベヤ装置9の状態を示す指標P6、使用環境入力部5gはコンベヤベルト12の使用環境を示す指標P7を入力項目にしている。
【0029】
本発明では、入力部5はベルトコンベヤ装置9の状態を示す指標P6および使用環境入力部5gはコンベヤベルト12の使用環境を示す指標P7に加えて、上述の5つの入力項目(P1〜P5)のうちの少なくとも1つを入力項目とする入力部5を備えていればよい。したがって、コンベヤベルト12の使用期間中に、指標P6および指標P7のデータに加えて、5つの入力項目(P1〜P5)から選択された1つの入力項目、2つの入力項目、3つの入力項目、4つの入力項目を入力する入力部5を備えた構成にすることができる。或いは、この実施形態のように7つの入力項目(P1〜P7)を入力する入力部5を有する構成にすることもできる。
【0030】
衝撃力入力部5bには例えば、コンベヤベルト12(上カバーゴム13a)に作用する衝撃力P2を検知する様々なタイプの衝撃力センサを用いることができる。或いは、衝撃力P2のデータを作業者がサーバー2に入力するための入力端末機器(パーソナルコンピュータなど)を衝撃力入力部5bとして用いることもできる。
【0031】
張力入力部5cには例えば、コンベヤベルト12(心体層14)に作用する張力P3を検知する様々なタイプの張力センサを用いることができる。或いは、張力P3のデータを作業者がサーバー2に入力するための入力端末機器(パーソナルコンピュータなど)を張力入力部5cとして用いることもできる。
【0032】
心体15の状態を示す指標P4としては例えば、並列された心体15どうしのベルト幅方向すき間を挙げることができる。心体状態入力部5dには例えば、この幅方向すき間をX線照射して検知するX線装置等を用いることができる。或いは、指標P4のデータを作業者がサーバー2に入力するための入力端末機器(パーソナルコンピュータなど)を心体状態入力部5dとして用いることもできる。
【0033】
エンドレス部16Bの状態を示す指標P5としては例えば、エンドレス部16Bの接合長さ、エンドレス部16Bの表面状態(凹凸具合)を挙げることができる。エンドレス部状態入力部5eには例えば、エンドレス部16Bの長手方向両端位置に埋設されたマーク(色ゴムや刻印など)どうしの間隔を検知する長さセンサ、エンドレス部16Bの表面状態を認識するデジタルカメラ等を用いることができる。或いは、指標P5のデータを作業者がサーバー2に入力するための入力端末機器(パーソナルコンピュータなど)をエンドレス部状態入力部5eとして用いることもできる。
【0034】
ベルトコンベヤ装置9の状態を示す指標P6としては例えば、搬送物Cの搬送速度や単位時間当たりの搬送重量、プーリ10a、10b、支持ローラ10cの外径、ベルトコンベヤ装置9の稼動させるために要する電力量等を挙げることができる。装置状態入力部5fには例えば、搬送物Cの搬送速度を検知する速度センサ、単位時間当たりの搬送重量を検知する重量センサ、電力計等を用いることができる。或いは、指標P6のデータを作業者がサーバー2に入力するための入力端末機器(パーソナルコンピュータなど)を装置状態入力部5fとして用いることもできる。
【0035】
ベルトコンベヤ装置9の状態を示す指標P6としては例えば、搬送物Cの搬送速度や単位時間当たりの搬送重量、プーリ10a、10b、支持ローラ10cの外径等を挙げることができる。装置状態入力部5fには例えば、搬送物Cの搬送速度を検知する速度センサ、単位時間当たりの搬送重量を検知する重量センサ等を用いることができる。或いは、指標P6のデータを作業者がサーバー2に入力するための入力端末機器(パーソナルコンピュータなど)を装置状態入力部5fとして用いることもできる。
【0036】
コンベヤベルト12の使用環境を示す指標P7としては例えば、使用環境温度や湿度、搬送物Cの仕様(材質(硬さ、含油分)、形状、温度など)を挙げることができる。使用環境入力部5gには例えば、温度センサ、湿度センサ、硬度センサ、搬送物Cの形状を認識するデジタルカメラ等を用いることができる。或いは、指標P7のデータを作業者がサーバー2に入力するための入力端末機器(パーソナルコンピュータなど)を使用環境入力部5gとして用いることもできる。
【0037】
記憶部4には、コンベヤベルト12の仕様が予め入力されているベルト仕様データベース4aと、コンベヤベルト12の仕様毎にそれぞれの入力項目(P1〜P7)についての許容範囲が予め入力されている許容範囲データベース4bと、使用条件データベース4cと、相関関係データベース4dとが記憶されている。
【0038】
この実施形態では、さらに、在庫データベース4eが記憶部4に記憶されている。在庫データベース4eには、コンベヤベルト12の使用現場またはその周辺のストックヤードでのコンベヤベルト12の交換用コンベヤベルト12aの在庫量(在庫長さ)が入力されている。尚、現在使用しているコンベヤベルト12と交換用コンベヤベルト12aとは同一仕様にすることもあるが、異なる仕様にすることもある。例えば、現在使用しているコンベヤベルト12と交換用コンベヤベルト12aとは、上カバーゴム13aの材質を異ならせることもある。
【0039】
図2に例示するようにベルト仕様データベース4aには、コンベヤベルトの仕様(仕様A、B、C、・・・)毎に、構成部材の材質や大きさ等が入力されている。例えば、上カバーゴム13aおよび下カバーゴム13bのゴム種(ゴム物性)や層厚、心体15の材質(物性)や外径、心体層14を構成する心体15の数、並列する心体15どうしの幅方向すき間、エンドレス部16Bの接合長さなどが入力されている。
【0040】
図3に例示するように許容範囲データベース4bには、コンベヤベルト12の仕様(仕様A、B、C、・・・)毎に、それぞれの入力項目(P1〜P7)についての許容範囲が入力されている。この実施形態では7つの入力項目(P1〜P7)がサーバー2に入力されるので7つの入力項目の許容範囲が入力されているが、サーバー2に入力される入力項目が指標P6、指標P7およびもう1つの入力項目の3つであれば、その3つの入力項目の許容範囲のみが許容範囲データベース4bに入力されていればよい。
【0041】
上カバーゴム13aの摩耗量P1が経時的に過大になると故障が発生し易くなる。そこで例えば、摩耗量P1には所定の上限値が定められた許容範囲が設定される。
【0042】
衝撃力P2が過大になると故障が発生し易くなる。そこで例えば、衝撃力P2には所定の上限値が定められた許容範囲が設定される。
【0043】
張力P3が過大になると故障が発生し易く、過小になると蛇行が生じて故障が発生し易くなる。そこで例えば、張力P3には所定の上限値および下限値が定められた許容範囲が設定される。
【0044】
指標P4の心体15どうしの幅方向すき間が経時的に過大になっても過小になっても故障が生じ易くなる。そこで例えば、この幅方向すき間P4には所定の上限値および下限値が定められた許容範囲が設定される。
【0045】
指標P5のエンドレス部16Bの接合長さが経時的に増大すると、接合の剥がれが生じ易くなる。そこで例えば、この接合長さP5には所定の上限値が定められた許容範囲が設定される。
【0046】
指標P6の搬送速度が過大になると上カバーゴム13aの摩耗量P1が増大し、過小になると単位面積当たりの搬送物Cの積載重量が増大してコンベヤベルト12に対する負荷が大きくなる。そこで例えば、この搬送速度P6
1には所定の上限値および下限値が定められた許容範囲が設定される。指標P6の単位時間当たりの搬送重量が過大になると、コンベヤベルト12に対する負荷が大きくなる。そこで例えば、この単位時間当たりの搬送重量P6
2には所定の上限値が定められた許容範囲が設定される。
【0047】
指標P7の使用環境温度や湿度が過大でも過小でもコンベヤベルト12の故障が生じ易くなる。そこで例えば、この温度P7
1や湿度P7
2には所定の上限値および下限値が定められた許容範囲が設定される。指標P7の搬送物Cの硬さが過大であると上カバーゴム13aに傷が生じ易くなる。そこで例えば、この硬さP7
3には所定の上限値が定められた許容範囲が設定される。指標P7の搬送物Cの形状が外表面に鋭角な部分を有していると上カバーゴム13aに傷が生じ易くなる。そこで例えば、この搬送物Cの形状P7
4には投入される搬送物Cのうち、表面に鋭角な部分を有する搬送物Cの数の割合の所定の上限値が定められた許容範囲が設定される。
【0048】
図4に例示するように使用条件データベース4cには、この使用現場のベルトコンベヤ装置9での使用条件が入力されている。この使用条件は例えば、搬送物Cの搬送速度や単位時間当たりの搬送重量、プーリ10a、10b、支持ローラ10cの外径等である。また、コンベヤベルト12の使用環境温度や湿度、搬送物Cの仕様(材質(硬さ、含油分)、形状、温度など)も使用条件となる。
【0049】
即ち、この使用条件は、上述した入力項目P6、P7と重複している。そのため、装置状態入力部5fおよび使用環境入力部5gを用いて、使用条件のデータをサーバー2に入力することも可能である。この使用条件は、搬送物Cの種類が変わる等、使用条件が変化する度に新たに更新される。
【0050】
相関関係データベース4dには、今までに使用された多数のコンベヤベルトについての使用条件およびコンベヤベルトの仕様と、コンベヤベルトの実際の寿命Jrとの相関関係を示すデータが入力されている。即ち、今までに蓄積された使用条件(上述した入力項目P6、P7)、ベルト仕様、コンベヤベルト12の実際の寿命Jrのそれぞれのデータを解析することで、使用条件およびベルト仕様と実際の寿命Jrとの相関関係が予め把握されている。
【0051】
例えば、搬送速度P6
1が早くなるに連れて実際の寿命Jrが短くなる、単位時間当たりの搬送重量P6
2が大きくなるに連れて際の寿命Jrが短くなるという定量的な相関関係が相関関係データベース4dに入力されている。また、使用環境温度P7
1や湿度P7
2が高くなるに連れて実際の寿命Jrが短くなる、搬送物Cの硬度P7
3が大きくなるに連れて実際の寿命Jrが短くなる、搬送物Cの形状P7
4については、外表面に鋭角な部分を有する搬送物Cの割合が多くなるに連れて実際の寿命Jrが短くなるという定量的な相関関係が相関関係データベース4dに入力されている。
【0052】
図5に例示するように在庫データベース4eには、コンベヤベルトの仕様(仕様A、B、C、・・・)毎に在庫量(在庫長さ)が入力されている。在庫データベース4eは、交換用コンベヤベルト12aの入庫および出庫の度に更新される。したがって、直近の在庫量が入力された状態になっている。
【0053】
演算部3は、それぞれの入力部5により入力された入力項目(P1〜P7)のデータと、ベルト仕様データベース4aに入力されているコンベヤベルト12の仕様と、許容範囲データベース4bに入力されているそれぞれの入力項目(P1〜P7)の許容範囲とに基づいて、使用されているコンベヤベルト12の状態を監視する構成になっている。
【0054】
この実施形態では、摩耗量入力部5aにより入力された摩耗量P1のデータと、ベルト仕様データベース4aに入力されているコンベヤベルト12の仕様と、許容範囲データベース4bに入力されている摩耗量P1の許容範囲とに基づいて、演算部3がコンベヤベルト12の残存寿命Jaを算出する構成になっている。そして、算出した残存寿命Jaの長さを、コンベヤベルト12の状態の1つとして監視対象にする構成になっている。
【0055】
詳述すると、サーバー2に入力されたそれぞれの入力項目のデータと、対応する許容範囲とを経時的に比較する。そして、入力されたデータが許容範囲内にあるか、許容範囲外にあるかを監視する。データが許容範囲外にある場合は、そのデータの入力項目に関しては異常状態であると判断し、その入力項目に関する部位や設備等を点検する。
【0056】
入力項目P6、P7のデータに加えて摩耗量P1のデータを入力する構成にすれば、使用条件と摩耗量P1との相関関係が明確になる。入力項目P6、P7のデータに加えて衝撃力P2のデータを入力する構成にすれば、使用条件と衝撃力P2との相関関係が明確になる。入力項目P6、P7のデータに加えて張力P3のデータを入力する構成にすれば、使用条件と張力P3との相関関係が明確になる。入力項目P6、P7のデータに加えて心体状態を示す指標P4のデータを入力する構成にすれば、使用条件と指標P4との相関関係が明確になる。入力項目P6、P7のデータに加えてエンドレス部16Bの状態を示す指標P5のデータを入力する構成にすれば、使用条件と指標P5との相関関係が明確になる。
【0057】
本発明では、入力項目P6、P7のデータに加えて2つ以上の入力項目のデータを入力する構成にすれば、使用条件とそれぞれの入力項目との組み合わせとの相関関係が明確になる。例えば、入力項目P6、P7のデータに加えて摩耗量P1および衝撃力P2を入力する構成、入力項目P6、P7のデータに加えて張力P3およびエンドレス部16Bの状態を示す指標P5のデータを入力する構成、入力項目P6、P7のデータに加えて張力P3、心体の状態を示す指標P4およびエンドレス部16Bの状態を示す指標P5のデータを入力する構成にすることもできる。
【0058】
残存寿命Jaの算出に関しては、摩耗量P1の変化は、他の入力項目に比して、残存寿命Jaに対する影響度が最も大きい。そこで、例えば、摩耗量P1のデータの許容範囲に対する変動具合(変動率)を算出する。算出した変動具合に基づいて、入力される摩耗量P1のデータが許容範囲外になるまでに要する時間を算出し、この算出した時間を残存寿命Jaとする。
【0059】
エンドレス部16Bの接合長さP5の変化も、他の入力項目に比して、残存寿命Jaに対する影響度が比較的大きいので、接合長さP5のデータの許容範囲に対する変動具合(変動率)に基づいて、入力される接合長さP5のデータが許容範囲外になるまでに要する時間を算出し、この算出した時間を仮残存寿命Jb
2とする。そして、上述した摩耗量P1のデータが許容範囲外になるまでに要する時間を仮残存寿命Jb
1として、それぞれの仮残存寿命Jb
1、Jb
2のうち、最も短いものを残存寿命Jaとすることもできる。
【0060】
その他の入力項目(P2〜P4、P6、P7)については、例えば、サーバー2に入力されるデータが許容範囲内であれば、これらのデータを考慮せずに残存寿命Jaを算出する。一方、これらのデータが許容範囲外であれば、これらのデータを考慮して以下に例示するように残存寿命Jaを算出する。
【0061】
これら入力項目(P2〜P4、P6、P7)のデータが許容範囲外である場合は許容範囲内の場合に比して、コンベヤベルト12に対する負荷が大きいと考えられる。そこで、これらそれぞれの入力項目に対して、残存寿命Jaを短く算出させる係数K(0<K<1)を設定する。この係数Kの大きさは一律ではなく、今までに蓄積された実績データに基づいて、それぞれの入力項目の重要度によって重み付けをして、入力項目によって異ならせるとよい。
【0062】
そしてまず、入力項目(P2〜P4、P6、P7)のデータを考慮することなく、上述したように仮残存寿命Jbを算出する。次いで、これらデータが許容範囲外である場合には、それぞれの入力項目に設定されている係数K(K1、K2、K3・・・)を、算出した仮残存寿命Jbに乗じて残存寿命Jaを算出する(Ja=Jb×K1×K2・・・)。
【0063】
本発明では、算出された残存寿命Jaに基づいて、コンベヤベルト12の実際の寿命Jrが特定される。即ち、コンベヤベルト12の使用開始時点および残存寿命Jaを算出した時点は既知なので、使用開始時点から残存寿命Jaを算出した時点までの期間が判明する。この判明した期間に、算出した残存寿命Jaを加えた期間を実際の寿命Jrとして特定できる。本発明における実際の寿命Jrとは原則として、算出された残存寿命Jaに基づいてこのように特定された寿命を意味する。
【0064】
演算部3は、所定の周期(例えば、2週間或いは1ケ月)で残存寿命Jaを算出する。この実施形態では、算出した残存寿命Jaを知らせる電子メールが、サーバー2から発注者端末機器7に対して送信される。
【0065】
このように本発明の管理システム1では、コンベヤベルト12の状態を監視するために、ベルトコンベヤ装置9の状態を示す指標P6およびこの使用現場でのコンベヤベルト12の使用環境を示す指標P7に加えて、その他の5つの入力項目のうちの少なくとも1つの入力項目を用いるので、従来に比してコンベヤベルト12の状態をより詳細に把握することが可能になる。したがって、コンベヤベルト12が使用不可能になることをより確実に防止するには有利になる。
【0066】
この管理システム1ではさらに、コンベヤベルト12の予定寿命Jfが、コンベヤベルト12がベルトコンベヤ装置9に装着される前に演算部3により算出される。上述したとおり、相関関係データベース4dが記憶部4に入力されているので、このコンベヤベルト12の使用条件(上述した入力項目P6、P7)のデータおよびこのコンベヤベルトの仕様のデータと、相関関係データベース4dを用いて予定寿命Jfが算出できる構成になっている。算出された予定寿命Jfは、サーバー2から発注者端末機器7に対して発信されている。
【0067】
コンベヤベルト12の予定寿命Jfが使用前に算出されるので、コンベヤベルト12の適切な交換時期を早期に把握できることになる。それ故、交換用のコンベヤベルト12aを準備するための時間的、資金的な余裕が確保し易くなる。これに伴い、コンベヤベルトの余分な在庫を減らす、または在庫期間を短縮することが容易になり、コンベヤベルト12のランニングコストを低減するには有利になる。
【0068】
算出された予定寿命Jfは、多少の誤差を有している。そこで、この実施形態では上述したように残存寿命Jaを算出して、コンベヤベルト12のより適切な交換時期を判定し易くしている。予定寿命Jfと残存寿命Jaと2つの寿命が把握できると、一方の寿命だけに依存することなく、コンベヤベルト12の適切な交換時期を把握し易くなる。
【0069】
この実施形態では、残存寿命Jaを算出する根拠として、上カバーゴム13aの摩耗量P1に加えて、その他の入力項目P2〜P7のうちの少なくとも1つの入力項目を用いるので、コンベヤベルト12の使用現場の実情により適合した残存寿命Jaを算出することが可能になる。即ち、残存寿命Jaをより高精度で把握することができるので、コンベヤベルト12の適切な交換時期を判定し易くなる。そのため、交換用のコンベヤベルト12aを必要以上に在庫する必要がなく、その在庫管理も不要になるため、ランニングコストを低減するには有利になる。
【0070】
この実施形態ではさらに、在庫データベース4eに入力されているコンベヤベルト12の在庫量とコンベヤベルト12の算出された残存寿命Jaとに基づいて、サーバー2から発注者端末機器7に対して、交換用コンベヤベルト12aの発注時期の連絡または発注を促す連絡が送信される。
【0071】
詳述すると、演算部3が残存寿命Jaを算出する度に、その時点での在庫データベース4eに入力されているコンベヤベルト12の在庫量を確認する。そして、必要となる交換用コンベヤベルト12aの長さが、確認した在庫量よりも長い場合は、在庫量が不足していることになる。この場合、算出した残存寿命Jaに対して納品に必要な所定期間を考慮して交換用コンベヤベルト12aの発注時期を指定し、この発注時期を知らせる電子メールが、サーバー2から発注者端末機器7に対して発信される。この発注時期が近づいた際には、交換用コンベヤベルト12aの発注を促す電子メールが、サーバー2から発注者端末機器7に対して発信される。そのため、コンベヤベルト12の交換に対して十分な準備をすることができる。
【0072】
発注者端末機器7から交換用コンベヤベルト12aの発注の連絡があると、その連絡はサーバー2を経由して製造者端末機器8に、或いは、直接的に製造者端末機器8に送信される。この発注に基づいて、製造者は発注された仕様および長さのコンベヤベルト12aを発注者のストックヤードに納品する。
【0073】
尚、コンベヤベルト12は周長が短ければすべて(全長)を交換することもあるが、周長が長い場合は必要な部分(必要長さ)のみを交換することになる。したがって、例えば入力項目(P1、P4、P5)については、入力するデータとともに、そのデータに対してコンベヤベルト12の周方向位置を特定できるデータも一緒にサーバー2に入力する。これにより、交換が必要なコンベヤベルト12の位置と長さを把握できる。
【0074】
サーバー2の記憶部4には、コンベヤベルト12の交換に要する費用が入力されたデータベース、交換に要する時間が入力されたデータベース等を記憶させることもできる。このような構成にした場合は、コンベヤベルト12の交換に要する費用情報を、サーバー2から発注者端末機器7に対して送信することができる。また、コンベヤベルト12の交換に要するスケジュール管理を、サーバー2を用いて一元的に行うことができる。
【0075】
下カバーゴム13bの摩耗量P1を入力項目に加えた場合は、この摩耗量P1に対する許容範囲(上限値)が許容範囲データベース4bに予め入力されることになる。そして、サーバー2に入力された下カバーゴム13bの摩耗量P1が許容範囲外になった場合に、発注者端末機器7または製造者端末機器8の少なくとも一方に、この摩耗量P1が許容範囲外になったことを知らせる電子メールが発信される構成にすることもできる。このメールを受信した発注者や製造者は、ベルトコンベヤ装置9の支持ローラ10cの回転状態(回転不能か否か)、コンベヤベルト12とプーリ10a、10bとの間でのスリップの発生有無、下カバーゴム13bに対するスクレーパの接触の有無等を点検する対処を行う。これにより、ベルトコンベヤ装置9の不具合を早期に解消することが可能になる。