特許第6981034号(P6981034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981034
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】表示制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20211202BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20211202BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20211202BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   G08G1/00 D
   B60R16/02 640K
   F02D29/02 L
   F02D45/00 364Z
   F02D45/00 376
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-82903(P2017-82903)
(22)【出願日】2017年4月19日
(65)【公開番号】特開2018-181147(P2018-181147A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 正幸
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−251786(JP,A)
【文献】 特開2017−009460(JP,A)
【文献】 特開2012−158269(JP,A)
【文献】 特開2012−027548(JP,A)
【文献】 特開2002−319087(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/153733(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
B60R 16/02
F02D 29/02
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が運転される機会毎に、前記車両が発揮した特定の性能を示す性能値を、前記車両の運転者の運転能力を示す運転能力値として算出するように構成された第1の算出部(11,S170,S260,S270)と、
前記第1の算出部により算出された運転能力値が、前記運転者の平均的な運転能力値を示す基準値に対して、どれだけ良好な値となったかを示す運転能力改善量を算出するように構成された第2の算出部(11,S290,S320)と、
前記第2の算出部により算出された運転能力改善量を、表示装置(3)に表示するように構成された表示実施部(11,S310,S340)と、
前記運転能力値を、複数であるN個記憶可能であると共に、前記第1の算出部により算出された運転能力値が初めて記憶される前に、N個の初期値としての運転能力値が記憶される、少なくとも1つの記憶部(17,17a,17b)と、
前記第1の算出部により算出された新たな運転能力値を、前記記憶部に記憶された運転能力値のうち、最も先に記憶された運転能力値と入れ替えて、前記記憶部に記憶するように構成された更新部(11,S300,S330)と、を備え、
前記第2の算出部は、前記記憶部に記憶された前記N個の運転能力値の平均値を算出し、該平均値を前記基準値として、前記運転能力改善量を算出するように構成され
前記特定の性能は、前記車両の燃費であり、
前記N個の初期値は、2種類以上の初期値を含み、
前記2種類以上の各初期値は、前記車両の複数の各販売地で配布される前記車両の各カタログに記載される燃費の値である、
表示制御装置(1)。
【請求項2】
車両が運転される機会毎に、前記車両が発揮した特定の性能を示す性能値を、前記車両の運転者の運転能力を示す運転能力値として算出するように構成された第1の算出部(11,S170,S260,S270)と、
前記第1の算出部により算出された運転能力値が、前記運転者の平均的な運転能力値を示す基準値に対して、どれだけ良好な値となったかを示す運転能力改善量を算出するように構成された第2の算出部(11,S290,S320)と、
前記第2の算出部により算出された運転能力改善量を、表示装置(3)に表示するように構成された表示実施部(11,S310,S340)と、
前記運転能力値を、複数であるN個記憶可能であると共に、前記第1の算出部により算出された運転能力値が初めて記憶される前に、N個の初期値としての運転能力値が記憶される、少なくとも1つの記憶部(17,17a,17b)と、
前記第1の算出部により算出された新たな運転能力値を、前記記憶部に記憶された運転能力値のうち、最も先に記憶された運転能力値と入れ替えて、前記記憶部に記憶するように構成された更新部(11,S300,S330)と、を備え、
前記第2の算出部は、前記記憶部に記憶された前記N個の運転能力値の平均値を算出し、該平均値を前記基準値として、前記運転能力改善量を算出するように構成され
前記N個の初期値は、2種類以上の初期値を含み、
前記2種類以上の各初期値は、前記車両の販売地において実施された複数回の各テスト走行によって測定された前記性能値である、
表示制御装置(1)。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載の表示制御装置であって、
前記2種類以上の各初期値は、同じ初期値が連続しない特定の順序で、且つ、当該特定の順序が繰り返されるように、前記記憶部に記憶される、
表示制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の表示制御装置であって、
前記記憶部に記憶される前記N個の初期値は、
前記車両において達成可能な最良の前記性能値を良い方に超えない値である、
表示制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の表示制御装置であって、
前記第1の算出部は、前記運転能力値に影響がある特定条件が成立した場合の前記運転能力値は、算出する対象から除外するように構成されている、
表示制御装置。
【請求項6】
請求項に記載の表示制御装置であって、
前記特定条件としては、夜間であるという条件と、雨天であるという条件との、少なくとも一方が含まれる、
表示制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の表示制御装置であって、
前記車両が運転される機会毎に、前記車両を運転するために前記運転者により操作される少なくとも1つの操作部に対する操作回数を数値化し、当該数値化した値が所定値以上になったと判定した場合に、前記第1の算出部により前記運転能力値が算出されることを許可するように構成された操作判定部(11,S180〜S230,S250)、を更に備える、
表示制御装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の表示制御装置であって、
前記車両を運転した運転者が、少なくとも特定の運転者であるか否かを判別する判別部(S280)、を更に備え、
前記少なくとも1つの記憶部(17)は、複数の記憶部(17a,17b)であり、
前記第2の算出部は、前記判別部による判別結果に応じて、前記基準値としての前記平均値を算出するのに使用する前記記憶部を変更するように構成されており、
前記更新部も、前記判別部による判別結果に応じて、前記新たな運転能力値を記憶する前記記憶部を変更するように構成されている、
表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転能力改善量を表示するための表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が発揮する性能の中には運転者の運転能力によって変わるものがある。このため、車両が発揮した特定の性能を運転者の運転能力として計測し、その計測結果を表示装置に表示することが考えられる。運転者は、表示された測定結果を見ることで、自分の運転能力を把握することができると考えられる。運転者の運転能力と見なすことができる車両の性能としては、例えば燃費がある。例えば特許文献1には、車両の燃費を表示部に表示させる装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−117838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の発明者は、車両の付加価値を向上させるために、以下のような表示制御装置を考えた。
表示制御装置は、車両が運転される機会毎に、車両が発揮した特定の性能を示す性能値を、運転者の運転能力を示す運転能力値として算出する。更に、表示制御装置は、算出された運転能力値が、運転者の平均的な運転能力値を示す基準値に対して、どれだけ良好な値となったかを示す運転能力改善量を算出する。そして、表示制御装置は、算出された運転能力改善量を、表示装置に表示する。
【0005】
運転者は、表示装置に表示される運転能力改善量を見ることによって、自分の運転能力が向上した程度を把握することができる。このため、運転者は、自分の運転能力を向上させたいという楽しみ、具体的には、表示装置に表示される運転能力改善量を良い内容にしたいという楽しみを持つことができる。よって、上記表示制御装置によれば、運転者に対して、車両の運転に関する楽しみを与えることができる。
【0006】
ここで、上記基準値としては、車両が運転された機会毎に算出された複数の運転能力値の、平均値を用いることが考えられる。
この場合、多くの運転能力値が集まってから平均値(即ち、基準値)が算出されるようになっていると、基準値が算出されるまで、即ち、表示装置に運転能力改善量を表示させることができるようになるまでに、多くの運転機会(即ち、運転回数)が必要となる。このため、例えば車両の所有者は、車両を購入してから長い期間が経っても表示装置に運転能力改善量が表示されない、と思う可能性がある。よって、車両の所有者に故障と誤認識される可能性がある。
【0007】
一方、車両の使用開始から早期に運転能力改善量が表示できるようにする手法としては、例えば、新たな運転能力値が算出される毎に、そのとき以前に算出された運転能力値の平均値を、基準値として、運転能力改善量を算出する、という手法が考えられる。
【0008】
しかし、この手法では、運転能力値のサンプル数が未だ少ない初期段階において、基準値に対する運転能力値の重みが非常に大きくなる。このため、算出される運転能力値の変動が、基準値の変動として顕著に現れる。そして、基準値の変動が大きくなると、例えば、今回と過去とで、算出された運転能力値が同じであっても、表示装置に表示される運転能力改善量が大きく異なる、という現象が生じる可能性がある。すると、表示装置に表示される運転能力改善量と運転者の感覚とが大きく乖離する可能性があり、運転者に違和感を与えてしまう可能性がある。
【0009】
そこで、本開示は、表示装置に運転能力改善量を表示する表示制御装置において、運転能力改善量の表示を早期にすることができると共に、運転能力改善量を算出するための基準値の変動を抑制できるようにする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の表示制御装置は、第1の算出部(11,S170,S260,S270)と、第2の算出部(11,S290,S320)と、表示実施部(11,S310,S340)と、少なくとも1つの記憶部(17,17a,17b)と、更新部(11,S300,S330)と、を備える。
【0011】
第1の算出部は、車両が運転される機会毎に、車両が発揮した特定の性能を示す性能値を、車両の運転者の運転能力を示す運転能力値として算出する。第2の算出部は、第1の算出部により算出された運転能力値が、運転者の平均的な運転能力値を示す基準値に対して、どれだけ良好な値となったかを示す運転能力改善量を算出する。表示実施部は、第2の算出部により算出された運転能力改善量を、表示装置(3)に表示する。
【0012】
記憶部は、運転能力値を、複数であるN個記憶可能である。そして、記憶部には、第1の算出部により算出された運転能力値が初めて記憶される前に、N個の初期値としての運転能力値が記憶される。更新部は、第1の算出部により算出された新たな運転能力値を、記憶部に記憶された運転能力値のうち、最も先に記憶された運転能力値と入れ替えて、当該記憶部に記憶する。そして、第2の算出部は、記憶部に記憶されたN個の運転能力値の平均値を算出し、該平均値を基準値として、運転能力改善量を算出する。
【0013】
このような表示制御装置において、記憶部には、第1の算出部により算出される運転能力値が初めて記憶される前に、N個の初期値としての運転能力値が記憶される。
このため、第2の算出部は、第1の算出部により1つ目の運転能力値が算出された場合から、基準値を算出することができ、その基準値を用いて、運転能力改善量を算出することができる。よって、運転能力改善量の表示を早期に行うことができる。つまり、第1の算出部によりN個の運転能力値が算出されるまで運転能力改善量を表示することができない、ということが回避される。
【0014】
また、基準値は常にN個の運転能力値の平均値となる。つまり、第1の算出部により算出された新たな運転能力値の、基準値に対する重みは、常に「1/N」となる。よって、基準値の変動を抑制することができる。基準値の変動が抑制されれば、表示装置に表示される運転能力改善量と運転者の感覚とが大きく乖離してしまう可能性を、抑制することができる。
【0015】
尚、この欄及び特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施態様の表示制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】バッファを説明する説明図である。
図3】第1実施形態のドライバ画面とデフォルト画面を説明する説明図である。
図4】メイン処理を表すフローチャートである。
図5】初期値設定処理を表すフローチャートである。
図6】改善量算出処理を表すフローチャートである。
図7】基準値更新処理を表すフローチャートである。
図8】比較例を説明する説明図である。
図9】初期値の設定例を説明する説明図である。
図10】車両のカタログに記載された燃費値を、初期値にした場合を説明する説明図である。
図11】第2実施形態のドライバ画面とデフォルト画面を説明する説明図である。
図12】他の実施形態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1に示す実施形態の表示制御装置としての電子制御装置(以下、ECU1)は、自動車(以下、車両)に搭載される。ECUは、「Electronic Control Unit」の略である。車両には、走行のための動力源として、エンジンが搭載されている。走行のための動力源という言葉には、走行用の電力を発生させるための動力源という意味も含まれる。
【0018】
ECU1には、画像を表示するための表示装置3が接続されている。表示装置3は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等である。
更に、ECU1には、他の制御装置5と、車速センサ6と、アクセルセンサ7と、ブレーキセンサ8と、ステアリングセンサ9と、が接続されている。
【0019】
制御装置5は、車両のエンジンへの燃料噴射を制御する。そして、制御装置5は、エンジンに供給した燃料の量を示す情報を、ECU1に出力する。ECU1では、制御装置5からの情報に基づいて、エンジンが消費した燃料の量(即ち、消費燃料量)が算出される。車速センサ6は、車両が所定の単位距離だけ走行する毎にパルスを出力する。ECU1では、車速センサ6からのパルスに基づいて、車両の走行距離が算出される。走行距離は、移動距離でもある。アクセルセンサ7は、車両のアクセルペダルが運転者により操作されたことを示す信号を、ECU1に出力する。ブレーキセンサ8は、車両のブレーキペダルが運転者により操作されたことを示す信号を、ECU1に出力する。ステアリングセンサ9は、車両のステアリングホール(以下、ステアリング)が運転者により操作されたことを示す信号を、ECU1に出力する。
【0020】
ECU1は、当該ECU1の動作を司る制御部として、マイクロコンピュータ(以下、マイコン)11を備える。マイコン11は、プログラムを実行するCPU13と、ROM14と、RAM15と、を備える。
【0021】
マイコン11が行う各種処理は、CPU13が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM14が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。尚、ECU1を構成するマイコンの数は1つでも複数でも良い。また、マイコン11の機能の一部又は全部について、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現しても良い。例えば、マイコン11の機能の一部又は全部がハードウェアである電子回路によって実現される場合、その電子回路は多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路、あるいはこれらの組合せによって実現しても良い。
【0022】
更に、マイコン11は、少なくとも2つのバッファ17a,17bを備える。バッファ17aは、車両の主な運転者(以下、主運転者)の運転能力値を記憶するために備えられている。主運転者は、例えば車両の所有者である。バッファ17bは、主運転者以外の運転者(以下、副運転者)の運転能力値を記憶するために備えられている。
【0023】
運転能力値は、運転者の運転能力を示す指標である。本実施形態において、運転能力値としては、車両の燃費の値(以下、燃費値)が算出される。燃費は、車両が発揮する性能の一つであるが、運転者の運転能力によって変わる。このため、燃費値が運転能力値として算出される。よって、バッファ17a,17bには、運転能力値として、燃費値が記憶される。尚、バッファ17a,17bの各々を区別しない場合、バッファの符号としては「17」を用いる。
【0024】
[1−2.バッファの説明]
バッファ17は、FIFOタイプのバッファである。FIFOは、「First In First Out」の略である。バッファ17は、複数であるN個の記憶領域を備える。Nは、後述する運転能力改善量を算出するために用いる燃費値の一定数(以下、規定サンプル数)である。本実施形態では、一例として「N=50」である。このため、図2に示すように、バッファ17は、50個の記憶領域B(1)〜B(50)を備える。mが1〜Nの何れかであるとすると、B(m)は、m番目の記憶領域のことである。mの番号が小さい記憶領域ほど、先にデータが記憶される。尚、記憶領域B(1)〜B(50)の各々を区別しない場合、記憶領域の符号としては「B」を用いる。
【0025】
図2において右側である〈Ph0〉の部分に示すように、バッファ17の各記憶領域Bには、車両組み立て工場で完成した当該車両がユーザに渡される前に、初期値としての燃費値が記憶される。当該車両とは、当該ECU1が搭載される車両のことである。以下では、初期値としての燃費値のことを、単に、初期値という。
【0026】
本実施形態において、燃費は、燃料の単位容積(例えば1リットル)あたりの走行距離を示す指標である。このため、燃費の単位は「km/l」である。「l」はリットルである。尚、燃費は、例えば一定の距離をどれだけの燃料で走れるかを示す指標であっても良い。この場合、燃費の単位は例えば「l/100km」であっても良い。
【0027】
バッファ17に記憶される初期値は、当該車両において達成可能な最良の燃費値を良い方に超えない値である。また、初期値としては、1種類の値であっても良いが、2種類以上の値が含まれても良い。本実施形態では、3種類の初期値V1,V2,V3が、バッファ17に合計で50個記憶される。初期値V1,V2,V3がどのような値かについては後で説明する。
【0028】
図2において〈Ph0〉の部分に示すように、各初期値V1〜V3は、同じ初期値が連続しない特定の順序で、且つ、当該特定の順序が繰り返されるように、バッファ17に記憶される。図2の例において、特定の順序は「V1→V2→V3」の順序であるが、「V1→V3→V2」等、他の順序であっても良い。
【0029】
バッファ17に50個の初期値が記憶されていて、バッファ17に記憶されるべき最初の燃費値D1が算出されると、バッファ17は、図2における〈Ph0〉の部分に示す状態から、図2において中央である〈Ph1〉の部分に示す状態へと遷移させられる。つまり、それまで記憶領域B(2)〜B(50)に記憶されていたデータが、記憶領域B(1)〜B(49)に移動される。そして、最後尾の記憶領域B(50)に最新の燃費値D1が記憶される。
【0030】
記憶領域B(50)に燃費値D1が記憶された後、バッファ17に記憶されるべき次の燃費値D2が算出されると、バッファ17は、図2における〈Ph1〉の部分に示す状態から、図2において左側である〈Ph2〉の部分に示す状態へと遷移させられる。つまり、それまで記憶領域B(2)〜B(50)に記憶されていたデータが、記憶領域B(1)〜B(49)に移動される。そして、最後尾の記憶領域B(50)に最新の燃費値D2が記憶される。
【0031】
[1−3.表示装置に表示される画像の説明]
図3に示すように、表示装置3には、車速やエンジン回転数等を表示するための画面として、少なくとも、ドライバ画面20aとデフォルト画面20bとが、切り替えて表示される。ドライバ画面20aは、主運転者のための画面である。デフォルト画面20bは、副運転者のための画面である。
【0032】
ドライバ画面20aとデフォルト画面20bは、例えば、車速が表示される第1領域21と、エンジン回転数が表示される第2領域22と、燃費値が表示される第3領域23と、運転能力改善量が表示される第4領域24と、を備える。ドライバ画面20aとデフォルト画面20bとでは、第1領域21及び第2領域22の形状が、互いに異なる。尚、図3において、ドライバ画面20aの右下方に表示される「ドライバA」は、例えば、主運転者の氏名やニックネーム等、主運転者を識別するための名称である。
【0033】
第4領域24に表示される運転能力改善量は、運転者の運転能力値が、運転者の平均的な運転能力値を示す基準値に対してどれだけ良好な値となったか、を示す指標である。
本実施形態において、運転能力改善量は、下記の式1で表される。運転能力改善量の単位は「%」である。
【0034】
運転能力改善量={(運転能力値−基準値)/基準値}×100 …式1
つまり、運転能力改善量は、算出された運転能力値から基準値を引いた値(以下、改善値)の、基準値に対する割合を、百分率で表したものである。本実施形態では、前述したように、運転能力値として、燃費値が算出される。
【0035】
また、表示される運転能力改善量の最小分解能をMRとすると、前述のNは、下記の式2を満たすように設定されている。
N=(1/MR)×(1/2) …式2
本実施形態において、MRは1%であり、即ち「MR=0.01」であるため、「N=50」に設定している。
【0036】
[1−4.処理]
次に、マイコン11が行う処理について、図4図7のフローチャートを用いて説明する。
【0037】
マイコン11は、車両がイグニッションオフの状態からイグニッションオンの状態になると、図4に示すメイン処理を開始する。
図4に示すように、マイコン11は、メイン処理を開始すると、S110にて、車両の出荷時であるか否かを判定する。
【0038】
例えば、車両組み立て工場では、車両の組み立てが完成すると、出荷のための最終検査が実施される。このため、マイコン11は、S110では、例えば、最終検査を実施するための検査装置がECU1に接続されたか否かを判定し、検査装置がECU1に接続されたと判定したならば、車両の出荷時であると判定する。
【0039】
マイコン11は、S110にて、車両の出荷時であると判定した場合には、S120に進み、図5に示す初期値設定処理を行う。図5の初期値設定処理は、バッファ17a,17bの各々に前述の初期値V1〜V3を記憶するための処理である。そして、図5の初期値設定処理は、バッファ17a,17bの各々について実行される。ここでは、初期値設定処理について、バッファ17a,17bを区別せずに説明する。
【0040】
図5に示すように、マイコン11は、初期値設定処理を開始すると、S410にて、バッファ17における記憶領域Bを特定するための変数であるmを1にする。そして更に、マイコン11は、S410では、バッファ17における記憶領域B(m)に、1種類目の初期値V1を記憶する。このS410の処理により、記憶領域B(1)に初期値V1が記憶される。
【0041】
マイコン11は、次のS420にて、mが50以上であるか否かを判定し、mが50以上ではないと判定した場合には、S430に進む。マイコン11は、S430では、mをインクリメントした後、バッファ17における記憶領域B(m)に、2種類目の初期値V2を記憶する。
【0042】
マイコン11は、次のS440にて、mが50以上であるか否かを判定し、mが50以上ではないと判定した場合には、S450に進む。マイコン11は、S450では、mをインクリメントした後、バッファ17における記憶領域B(m)に、3種類目の初期値V3を記憶する。
【0043】
マイコン11は、次のS460にて、mが50以上であるか否かを判定し、mが50以上ではないと判定した場合には、S470に進む。マイコン11は、S470では、mをインクリメントした後、バッファ17における記憶領域B(m)に、1種類目の初期値V1を記憶する。その後、マイコン11は、S420に戻る。
【0044】
また、マイコン11は、上記S420,S440,S460の何れかにて、mが50以上であると判定した場合には、当該初期値設定処理を終了する。
このような図5の初期値設定処理が行われることにより、バッファ17には、図2において〈Ph0〉の部分に示したように、50個の初期値が記憶される。50個の初期値は、3種類の初期値V1〜V3を含む。そして、3種類の初期値V1〜V3は、「V1→V2→V3」の順序で、且つ、その順序が繰り返されるように記憶される。
【0045】
図4の説明に戻る。マイコン11は、上記S120にて、初期値設定処理を終了すると、S130に進む。また、マイコン11は、上記S110にて、車両の出荷時でないと判定した場合にも、S130に進む。
【0046】
マイコン11は、S130では、図3に示したデフォルト画面20bを、表示装置3に表示させる。
マイコン11は、次のS140にて、画面選択処理を行う。画面選択処理は、表示装置3に表示させる画面を、運転者による入力部への操作に応じて、デフォルト画面20bとドライバ画面20aとに切り替える処理である。例えば、表示装置3の表示面がタッチパネル(即ち、タッチ式入力装置)になっている場合には、そのタッチパネルが入力部であっても良い。また例えば、タッチ式のスイッチなどが入力部として備えられていても良い。
【0047】
マイコン11は、次のS150にて、車速が0より大きくなったか否かを判定し、車速が0より大きくない(即ち0)と判定した場合には、S140に戻る。
また、マイコン11は、S150にて、車速が0より大きくなったと判定した場合には、S160に進む。車速が0より大きくなったことは、車両が走行し始めたことに相当する。
【0048】
マイコン11は、S160では、計測対象としての消費燃料量及び車両の走行距離を、0にリセットする。
マイコン11は、次のS170にて、上記S160の処理を実施してからの消費燃料量と走行距離を計測するための計測処理を行う。マイコン11は、計測処理では、制御装置5からの情報に基づいて、消費燃料量を積算すると共に、車速センサ6からのパルスに基づいて、走行距離を積算する。
【0049】
マイコン11は、次のS180にて、アクセルセンサ7からの信号に基づいて、アクセルペダルが操作されたか否かを判定し、アクセルペダルが操作されたと判定した場合には、S190にて、操作評価値Pに2を加算する。
【0050】
操作評価値Pは、車両を運転するために運転者により操作される少なくとも1つの操作部に対する操作回数が、燃費を精度良く算出するのに必要な回数に達したか否かを判定するための値である。本実施形態では、アクセルペダル、ブレーキペダル及びステアリングが、少なくとも1つの操作部に相当する。また、操作評価値Pは、当該メイン処理が開始される前に、図示しない初期化処理によって0に初期化されている。アクセルペダルが1回操作される毎に、S190の処理により、操作評価値P1は2だけ増加する。つまり、アクセルペダルが1回操作されたことの、操作評価値P1に対する重みは、2である。
【0051】
マイコン11は、S190の処理を行った後、あるいは、上記S180にて、アクセルペダルが操作されていないと判定した場合には、S200に進む。
マイコン11は、S200では、ブレーキセンサ8からの信号に基づいて、ブレーキペダルが操作されたか否かを判定し、ブレーキペダルが操作されたと判定した場合には、S210にて、操作評価値Pに4を加算する。ブレーキペダルが1回操作される毎に、S210の処理により、操作評価値P1は4だけ増加する。つまり、ブレーキペダルが1回操作されたことの、操作評価値P1に対する重みは、4である。
【0052】
マイコン11は、S210の処理を行った後、あるいは、上記S200にて、ブレーキペダルが操作されていないと判定した場合には、S220に進む。
マイコン11は、S220では、ステアリングセンサ9からの信号に基づいて、ステアリングが操作されたか否かを判定し、ステアリングが操作されたと判定した場合には、S230にて、操作評価値Pに1を加算する。ステアリングが1回操作される毎に、S230の処理により、操作評価値P1は1だけ増加する。つまり、ステアリングが1回操作されたことの、操作評価値P1に対する重みは、1である。尚、S220で判定されるステアリングの操作は、例えばステアリングの中立位置からの操作である。
【0053】
マイコン11は、S230の処理を行った後、あるいは、上記S220にて、ステアリングが操作されていないと判定した場合には、S240に進む。
マイコン11は、S240では、車両がイグニッションオフの状態になったか否かを判定し、車両がイグニッションオフの状態になっていない、即ちイグニッションオンの状態である、と判定した場合には、S170に戻る。尚、図4のS240に記載されている「IG」は、「イグニッション」の略である。
【0054】
また、マイコン11は、S240にて、車両がイグニッションオフの状態になったと判定した場合には、S250に進み、操作評価値Pが所定値以上か否かを判定する。このS250で判定される操作評価値Pは、車両がイグニッションオンの状態になって走行し始めてから、車両がイグニッションオフの状態になるまでの間(以下、1トリップ期間)において、S180〜S230の処理により計数された値である。また、所定値は、例えば100であるが、他の値であっても良い。
【0055】
マイコン11は、S250にて、操作評価値Pが所定値以上であると判定した場合には、S260に進む。マイコン11は、S260では、S170の計測処理を繰り返し実施している期間(即ち、1トリップ期間)中において、運転能力値としての燃費値に影響がある特定条件が成立したか否かを判定する。
【0056】
特定条件は、例えば、夜間であるか雨天であるという条件である。夜間か否かは、例えばヘッドライトが点灯したか否かによって判定される。雨天か否かは、例えばワイパーが動作したか否かによって判定される。尚、特定条件は、例えば、夜間であるという条件と、雨天であるという条件との、一方であっても良い。
【0057】
マイコン11は、S260にて、特定条件が成立しなかったと判定した場合には、S270に進み、今回の車両走行における燃費値を算出する。マイコン11は、具体的には、S170の計測処理によって計測された走行距離を、S170の計測処理によって計測された消費燃料量で割った値を、今回の燃費値として算出する。このS270で算出される燃費値は、運転者の今回の運転能力値に相当する。
【0058】
マイコン11は、次のS280にて、表示装置3に表示させている画面(以下、表示中画面)がドライバ画面20aであるか否かを判定し、表示中画面がドライバ画面20aであれば、車両の今回の運転者が主運転者であったと判別して、S290に進む。また、マイコン11は、S280にて、表示中画面がドライバ画面20aではない、即ちデフォルト画面20bである、と判定した場合には、車両の今回の運転者が副運転者であったと判別して、S320に進む。つまり、マイコン11は、表示中画面に基づいて、今回の運転者を判別する。
【0059】
マイコン11は、S290では、バッファ17a,17bのうち、主運転者に対応する方のバッファ17aをアクセス対象として、図6に示す改善量算出処理を行う。また、マイコン11は、S320では、バッファ17a,17bのうち、副運転者に対応する方のバッファ17bをアクセス対象として、図6に示す改善量算出処理を行う。
【0060】
図6の改善量算出処理は、S280で判別された運転者についての運転能力改善量を算出するための処理である。ここでは、改善量算出処理について、バッファ17a,17bを区別せずに説明する。
【0061】
図6に示すように、マイコン11は、改善量算出処理を開始すると、S510にて、バッファ17における記憶領域Bを特定するための変数であるmを1にする。そして更に、マイコン11は、S510では、バッファ17に記憶されている50個の燃費値を合計するための変数であるADを0にする。バッファ17に記憶されている燃費値とは、前述した初期値のことも含む。
【0062】
マイコン11は、次のS520では、アクセス対象のバッファ17における50個の記憶領域Bのうち、記憶領域B(m)から燃費値を読み出し、その読み出した燃費値をADに加算する。
【0063】
マイコン11は、次のS530にて、mが50以上であるか否かを判定し、mが50以上ではないと判定した場合には、S540にて、mをインクリメントした後、S520に戻る。
【0064】
また、マイコン11は、上記S530にて、mが50以上であると判定した場合には、S550に進む。この時点において、ADの値は、アクセス対象のバッファ17に記憶されている50個の燃費値の合計値になっている。
【0065】
マイコン11は、S550では、ADの値を50で割った値を、基準値として算出する。つまり、マイコン11は、アクセス対象のバッファ17に記憶されている50個の燃費値の平均値を、基準値として算出する。このS550で算出される基準値は、S280で判別された運転者についての燃費の基準値である。
【0066】
マイコン11は、次のS560にて、今回のS270で算出された燃費値から、S550で算出された基準値を引いた値を、燃費の改善値として算出する。燃費の改善値は、運転能力の改善値に相当する。
【0067】
マイコン11は、次のS570にて、S560で算出された改善値と、S550で算出された基準値とを、前述の式1と同じ内容を示す下記の式3に代入することにより、S280で判別された運転者についての運転能力改善量を算出する。その後、マイコン11は、当該改善量算出処理を終了する。
【0068】
運転能力改善量=(改善値/基準値)×100 …式3
図4の説明に戻る。マイコン11は、S290で改善量算出処理を行った後、S300に進み、バッファ17a,17bのうち、主運転者に対応する方のバッファ17aをアクセス対象として、図7に示す更新処理を行う。また、マイコン11は、S320で改善量算出処理を行った後、S330に進み、バッファ17a,17bのうち、副運転者に対応する方のバッファ17bをアクセス対象として、図7に示す更新処理を行う。
【0069】
図7の更新処理は、アクセス対象のバッファ17に記憶される燃費値を更新するための処理である。ここでは、更新処理について、バッファ17a,17bを区別せずに説明する。
【0070】
図7に示すように、マイコン11は、更新処理を開始すると、S610にて、バッファ17における記憶領域Bを特定するための変数であるmを1にする。
マイコン11は、次のS620では、アクセス対象のバッファ17における50個の記憶領域Bのうち、記憶領域B(m+1)から燃費値を読み出し、その読み出した燃費値を、記憶領域B(m)に記憶する。
【0071】
マイコン11は、次のS630にて、mが49以上であるか否かを判定し、mが49以上ではないと判定した場合には、S640にて、mをインクリメントした後、S620に戻る。
【0072】
また、マイコン11は、上記S630にて、mが49以上であると判定した場合には、S650に進む。この時点において、アクセス対象のバッファ17における記憶領域B(1)〜B(49)には、記憶領域B(2)〜B(50)に記憶されていた燃費値が、記憶されている。つまり、記憶領域B(2)〜B(50)に記憶されていた燃費値は、S610〜S640の処理により、記憶領域B(1)〜B(49)に移動される。
【0073】
そして、マイコン11は、S650では、アクセス対象のバッファ17における記憶領域B(50)に、今回のS270で算出された燃費値を記憶し、その後、当該更新処理を終了する。
【0074】
図4の説明に戻る。マイコン11は、S300で更新処理を行った後、S310に進み、ドライバ画面20aに情報を表示するための表示処理を行う。マイコン11は、S310の表示処理では、ドライバ画面20aの第4領域24に、S290の改善量算出処理で算出された運転能力改善量を表示し、ドライバ画面20aの第3領域23に、S270で算出された燃費値を表示する。そして、その後、当該メイン処理を終了する。
【0075】
また、マイコン11は、S330で更新処理を行った後、S340に進み、デフォルト画面20bに情報を表示するための表示処理を行う。マイコン11は、S340の表示処理では、デフォルト画面20bの第4領域24に、S320の改善量算出処理で算出された運転能力改善量を表示し、デフォルト画面20bの第3領域23に、S270で算出された燃費値を表示する。そして、その後、当該メイン処理を終了する。
【0076】
一方、マイコン11は、上記S250にて、操作評価値Pが所定値以上でないと判定した場合、あるいは、上記S260にて、特定条件が成立したと判定した場合には、そのまま当該メイン処理を終了する。
【0077】
[1−5.比較例の説明]
[1−5−1.第1比較例]
本実施形態のECU1とは異なる第1比較例の表示制御装置として、下記のようなものが考えられる。
【0078】
第1比較例の表示制御装置では、予め定められた規定サンプル数(例えば50個)の燃費値が図4のS270で算出されるまでは、基準値の算出が行われず、改善値及び運転能力改善量の算出も行われない。そして、50個の燃費値が算出された後は、新たな燃費値が算出される毎に、過去の最新50個の燃費値を平均した値を基準値として、改善値及び運転能力改善量が算出される。
【0079】
このような第1比較例の表示制御装置では、表示装置3に運転能力改善量が表示されるようになる前に、少なくとも50回の運転機会が必要となる。このため、車両の所有者は、車両を購入してから長い期間が経っても表示装置3に運転能力改善量が表示されない、と思う可能性がある。よって、車両の所有者に故障と誤認識される可能性がある。
【0080】
[1−5−2.第2比較例]
本実施形態のECU1とは異なる第2比較例の表示制御装置として、下記のようなものが考えられる。
【0081】
第2比較例の表示制御装置では、図8の右側に示すように、最初の(即ち、1回目の)燃費値D1が図4のS270で算出された場合には、0を基準値として、改善値及び運転能力改善量が算出される。そして、2〜50回目までの燃費値D2〜D50が図4のS270で算出された各場合には、前回までに算出された燃費値を平均した値、即ち、前回までに算出された燃費値の合計値を前回までに算出された燃費値の総数で割った値を、基準値として、改善値及び運転能力改善量が算出される。その後は、新たな燃費値が図4のS270で算出される毎に、過去の最新50個の燃費値を平均した値を基準値として、改善値及び運転能力改善量が算出される。
【0082】
このような第2比較例の表示制御装置では、最初の運転機会から表示装置3に運転能力改善量を表示させることができる。
しかし、燃費値のサンプル数が未だ少ない初期においては、基準値に対する燃費値の重みが非常に大きくなる。
【0083】
このため、図8の右側に示すように、一点鎖線で示される基準値は、算出される燃費値Dnの変動に応じて大きく変動する。尚、燃費値の符号としての「Dn」における「n」は、1以上の整数である。そして、基準値の変動が大きいと、例えば、今回と過去とで、算出された燃費値が同じであっても、算出される改善値が大きく異なり、表示装置3に表示される運転能力改善量も大きく異なる、という現象が生じる可能性がある。すると、表示装置3に表示される運転能力改善量と運転者の感覚とが大きく乖離する可能性があり、運転者に違和感を与えてしまう可能性がある。
【0084】
尚、図8において、上下方向の点線矢印の長さは、算出される改善値を表している。また、図8において、点線で示された基準値RSは、多くの燃費値が算出されてから、その多くの燃費値の平均値として算出された基準値であり、言い換えると、算出される各燃費値の重みが十分に小さくなった基準値(以下、安定基準値)である。この例において、安定基準値RSは、規定サンプル数(即ち50個)の燃費値から算出された基準値である。そして、図8では、安定基準値RSからみて大小の各方向に同じ値だけ離れた各燃費値が、交互に算出された場合を例示している。また、図8の右側において、斜線が付された部分は、基準値が一点鎖線のように変動した場合に算出される改善値と、基準値が安定基準値RSであると仮定した場合に算出される改善値との、差分を示している。
【0085】
図8の右側に示されるように、例えば、2回目の運転機会と4回目の運転機会とで、算出された燃費値D2,D4が同じ値であっても、算出される改善値は大きく異なり、表示装置3に表示される運転能力改善量も異なるようになる。このため、2回目の運転機会と4回目の運転機会とで、同じように運転したという運転者の感覚と、表示装置3に表示される内容との、乖離が大きくなる可能性がある。
【0086】
[1−6.第1実施形態の効果]
(1−6a):本実施形態のECU1において、バッファ17には、図4のS270で算出される燃費値が初めて記憶される前に、初期値設定処理により、N個(即ち規定サンプル数)の初期値が記憶される。
【0087】
このため、図4のS290,S320における改善量算出処理では、図4のS270で1つ目の燃費値が算出された場合から、基準値を算出することができ、その基準値を用いて、運転能力改善量を算出することができる。よって、運転能力改善量の表示装置3への表示を早期に、即ち1回目の運転機会から、行うことができる。つまり、N個の燃費値が算出されるまで運転能力改善量を表示することができない、ということが回避される。
【0088】
また、本実施形態において、基準値は、図6のS510〜S550の処理によって算出されて、常にN個の燃費値の平均値となる。ここで言うN個の燃費値とは、初期値のことも含む。このため、図4のS270で算出された新たな燃費値の、基準値に対する重みは、常に「1/N」となる。よって、基準値の変動を抑制することができる。基準値の変動が抑制されれば、表示装置3に表示される運転能力改善量と運転者の感覚とが大きく乖離してしまう可能性を、抑制することができる。
【0089】
(1−6b):バッファ17に記憶されるN個の初期値は、当該車両において達成可能な最良の燃費値を良い方に超えない値である。尚、達成可能な最良の燃費値としては、例えば、当該車両のカタログに記載される燃費値が考えられる。
【0090】
このため、バッファ17内の全ての初期値が、図4のS270で算出された燃費値に入れ替わるまでの期間において、表示装置3に表示される運転能力改善量が、極端に悪い結果になってしまうことを回避することができる。
【0091】
ところで、前述したように、バッファ17に記憶される初期値は、1種類の値であっても良い。例えば、1種類の初期値は、当該車両の販売地で配布される当該車両のカタログに記載される燃費値であって良い。また、1種類の初期値は、当該車両の販売地において実施されたテスト走行によって測定された燃費値であっても良い。
【0092】
一方、バッファ17に記憶される初期値が、2種類以上の値である場合、2種類以上の各初期値は、当該車両の複数の各販売地で配布される当該車両の各カタログ(即ち、販売地毎のカタログ)に記載される各燃費値であって良い。また、2種類以上の各初期値は、当該車両の販売地において実施された複数回の各テスト走行によって測定された各燃費値であっても良い。
【0093】
ここで、図9の左側は、バッファ17に記憶される3種類の初期値V1〜V3の平均値が、前述の安定基準値RSよりも小さい値(即ち悪い値)である場合を示している。安定基準値RSは、燃費に関する運転者の実力値に相当する。つまり、図9の左側は、初期値V1〜V3が運転者の実力値よりも悪い値である場合を示している。このため、図9の左側においては、星印で示される運転1回目の基準値、即ち、1回目の運転機会における基準値が、安定基準値RSよりも小さい値になっている。そして、基準値は、一点鎖線のように、運転回数が増えるにつれて、つまり、算出された燃費値が増えるにつれて、安定基準値RSに近づいていく。
【0094】
また、図9の右側は、3種類の初期値V1〜V3の平均値が、安定基準値RSよりも大きい値(即ち良い値)である場合を示している。つまり、図9の右側は、初期値V1〜V3が運転者の実力値よりも良い値である場合を示している。このため、図9の右側においては、星印で示される運転1回目の基準値が、安定基準値RSよりも大きい値になっている。そして、基準値は、一点鎖線のように、運転回数が増えるにつれて、安定基準値RSに近づいていく。
【0095】
尚、図9における各初期値V1〜V3は、例えば、当該車両の販売地において実施された3回の各テスト走行によって測定された各燃費値である。また、図8と同様に、図9においても、安定基準値RSからみて大小の各方向に同じ値だけ離れた各燃費値が、交互に算出された場合を例示している。そして、図9においても、斜線が付された部分は、基準値が一点鎖線のように変動した場合に算出される改善値と、基準値が安定基準値RSであると仮定した場合に算出される改善値との、差分を示している。
【0096】
図9の左側の例では、運転回数(即ち運転機会)が少ない最初の頃は、図6のS550で算出される基準値が安定基準値RSよりも小さく、且つ、算出される基準値と安定基準値RSとの差が大きい。このため、最初の頃は、燃費値が同じであっても、算出される改善値は大きくなる。そして、運転回数が増えて、基準値が安定基準値RSに近づいていくに伴い、燃費値が同じであっても、算出される改善値は小さくなっていく。よって、表示装置3に表示される運転能力改善量も小さくなっていく。例えば、5回目の運転機会と7回目の運転機会とで、算出された燃費値D5,D7が同じ値であったとしても、7回目の運転機会で算出される改善値i7は、5回目の運転機会で算出された改善値i5よりも小さくなる。すると、運転者は、表示される運転能力改善量が良くなっていかないと感じてしまう可能性がある。
【0097】
一方、図9の右側の例では、運転回数が少ない最初の頃は、図6のS550で算出される基準値が安定基準値RSよりも大きく、且つ、算出される基準値と安定基準値RSとの差も大きい。このため、最初の頃は、燃費値が同じであっても、算出される改善値は小さくなる。そして、運転回数が増えて、基準値が安定基準値RSに近づいていくに伴い、燃費値が同じであっても、算出される改善値は大きくなっていく。よって、表示装置3に表示される運転能力改善量も大きくなっていく。例えば、5回目の運転機会と7回目の運転機会とで、算出された燃費値D5,D7が同じ値であったとしても、7回目の運転機会で算出される改善値i7は、5回目の運転機会で算出された改善値i5よりも大きくなる。すると、運転者は、表示される運転能力改善量が良くなっていくと感じやすくなる可能性がある。よって、運転者に対して車両運転の楽しみを与えるという当該ECU1の効果を、大きくすることができる可能性がある。
【0098】
そして、図9を例にして説明したことを勘案すると、バッファ17に記憶される初期値は、当該車両において達成可能な最良の燃費値を良い方に超えない範囲で、できるだけ良い値にしても良い。具体的には、初期値を、当該車両のカタログに記載される燃費値にすると、図9の右側の例で説明した効果を大きくさせ易い。
【0099】
図10の例では、バッファ17に記憶される3種類の各初期値V1〜V3が、当該車両の3つの各販売地で配布される当該車両の各カタログに記載される各燃費値である。例えば、初期値V1は、日本で配布されるカタログに記載される燃費値であり、初期値V2は、アメリカで配布されるカタログに記載される燃費値であり、初期値V3は、カナダで配布されるカタログに記載される燃費値である。
【0100】
このため、図10の例では、図9の右側と比較すると、各初期値V1〜V3が大きい値になっている。そして、図10の例では、図9の右側と比較すると、例えば、改善量i5に対する改善量i7の増加分が僅かながら大きくなっている。
【0101】
(1−6c):図2における〈Ph0〉の部分に示したように、各初期値V1〜V3は、同じ初期値が連続しない特定の順序で、且つ、当該特定の順序が繰り返されるように、バッファ17に記憶される。このため、バッファ17内の50個全ての初期値V1〜V3が、図4のS270で算出された燃費値に入れ替わるまでの期間において、各初期値V1〜V3の基準値に対する影響の偏りを抑制することができる。
【0102】
比較例として、例えば、バッファ17には、10個の初期値V1が連続して格納され、次に、20個の初期値V2が連続して格納され、次に、20個の初期値V3が連続して格納されるようになっていても良い。但し、この場合、算出された10個の燃費値がバッファ17に格納された時点で、バッファ17内には初期値V1が存在しなくなる。すると、基準値の算出に関して初期値V1の影響がなくなってしまう、という事象が生じる。このような事象を抑制するためには、図2における〈Ph0〉の部分に示したようにすると良い。
【0103】
(1−6d):マイコン11は、図4のメイン処理では、S260で燃費値に影響がある特定条件が成立したと判定した場合には、燃費値を算出することなく、メイン処理を終了する。このため、特定条件が成立した場合の燃費値は、算出対象から除外される。よって、算出される燃費値、基準値及び運転能力改善量の精度が低下することを抑制することができる。
【0104】
(1−6e):マイコン11は、車両が運転される機会毎に、図4のメイン処理におけるS180〜S230により、車両を運転するために運転者により操作される少なくとも1つの操作部に対する操作回数を、操作評価値Pとして数値化する。尚、操作の有無が監視される操作部は、アクセルペダルと、ブレーキペダルと、ステアリングとの、3つであったが、それらのうちの少なくとも1であっても良いし、例えばウインカーレバー等、他の操作部が含まれていても良い。
【0105】
そして、マイコン11は、図4のメイン処理におけるS250にて、操作評価値Pが所定値(例えば100)以上であると判定した場合に、S270で燃費値が算出されることを許可するようになっている。
【0106】
このため、車両が実質的に運転された場合に、燃費値を算出することとなる。よって、算出される燃費値、基準値及び運転能力改善量の精度が低下することを抑制することができる。
【0107】
(1−6f):マイコン11は、図4のメイン処理におけるS280により、車両を運転した運転者が、少なくとも主運転者であるか否かを判別する。そして、マイコン11は、車両を運転した運転者が主運転者であると判別した場合には、S290にて、バッファ17a,17bのうち、主運転者に対応する方のバッファ17aをアクセス対象として図6の改善量算出処理を行う。また、マイコン11は、車両を運転した運転者が副運転者であると判別した場合には、S320にて、バッファ17a,17bのうち、副運転者に対応する方のバッファ17bをアクセス対象として図6の改善量算出処理を行う。このため、マイコン11は、図6の改善量算出処理におけるS510〜S550で基準値を算出するのに使用するバッファ17を、S280による判別結果に応じて変更することとなる。
【0108】
更に、マイコン11は、車両を運転した運転者が主運転者であると判別した場合には、S300にて、主運転者に対応する方のバッファ17aをアクセス対象として図7の更新処理を行う。また、マイコン11は、車両を運転した運転者が副運転者であると判別した場合には、S330にて、副運転者に対応する方のバッファ17bをアクセス対象として図7に示す更新処理を行う。このため、マイコン11は、新たに算出された燃費値の記憶先であるバッファ17も、S280による判別結果に応じて変更することとなる。
【0109】
よって、少なくとも主運転者と副運転者とを区別して、燃費値、基準値及び運転能力改善量を算出することができる。
尚、主運転者は、特定の運転者に相当する。また、バッファ17の数を3つ以上にすれば、副運転者が複数人であっても、その複数人を区別して、燃費値、基準値及び運転能力改善量を算出するよう構成することができる。運転者の判別は、例えば、運転者によるスイッチへの入力情報や、運転者をカメラで撮影した画像等に基づいて実施されても良い。
【0110】
一方、本実施形態では、バッファ17a,17bが記憶部に相当する。また、マイコン11が、第1の算出部、第2の算出部、表示実施部、更新部、操作判定部及び判別部の各々として機能する。そして、図4のS170,S260,S270が、第1の算出部としての処理に相当する。図4のS290,S320が、第2の算出部としての処理に相当する。図4のS310,S340が、表示実施部としての処理に相当する。図4のS300,S330が、更新部としての処理に相当する。図4のS180〜S230,S250が、操作判定部としての処理に相当する。図4のS280が、判別部としての処理に相当する。
【0111】
[2.第2実施形態]
[2−1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。尚、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0112】
(2−1a):図11に示すように、ドライバ画面20aとデフォルト画面20bは、第3領域23を備えず、その代わりに、第5領域25、第6領域26及び第7領域27を備える。
【0113】
(2−1b):マイコン11は、図4のS170では、計測処理として、下記の処理を行う。
マイコン11は、S170では、燃費値に影響がある前述の特定条件が成立しているか否かを判定する。そして、マイコン11は、S160の処理を実施してからの消費燃料量及び走行距離として、特定条件の成立の有無に拘わらないトータルの消費燃料量Ft及び走行距離Ltと、特定条件が成立している場合の消費燃料量Fr及び走行距離Lrとを、別々に計測する。
【0114】
また、マイコン11は、図4のS160では、S170での計測対象を全てリセットする。
(2−1c):図4のS260は削除されている。マイコン11は、S250でYESと判定した場合に、そのままS270に進む。
【0115】
そして、マイコン11は、図4のS270では、S170で計測された消費燃料量Ft,Fr及び走行距離Lt,Lrを用いて、下記の式4により、運転能力値としての燃費値を算出する。
【0116】
燃費値=(Lt−Lr)/(Ft−Fr) …式4
式4における「Lt−Lr」は、特定条件が成立していない場合の走行距離であり、式4における「Ft−Fr」は、特定条件が成立していない場合の消費燃料量である。つまり、S270で算出される運転能力値としての燃費値は、今回の車両走行において、特定条件が成立していない場合の燃費値である。
【0117】
尚、本第2実施形態においても、図6のS560では、S270で算出された燃費値から、改善値が算出される。そして、図7のS650では、S270で算出された燃費値がバッファ17の記憶領域B(50)に記憶される。
【0118】
一方、図4のS170では、消費燃料量Fr及び走行距離Lrに代えて、特定条件が成立していない場合の消費燃料量Fs及び走行距離Lsが計測されても良い。この場合、図4のS270では、式4における「Lt−Lr」と「Ft−Fr」との各々に代えて、計測された走行距離Lsと消費燃料量Fsとの各々が用いられれば良い。
【0119】
(2−1d):マイコン11は、図4のS310では、S170で計測されたトータルの消費燃料量Ft及び走行距離Ltを用いて、下記の式5により、今回の車両走行におけるトータルの燃費値(以下、車両燃費値)を算出する。
【0120】
車両燃費値=Lt/Ft …式5
そして更に、マイコン11は、S310では、ドライバ画面20aの第4領域24〜第7領域27に、下記の情報を表示する。
【0121】
第4領域24には、図4のS290で実行される改善量算出処理で算出された運転能力改善量が表示される。
第5領域25には、上記式5により算出された車両燃費値が表示される。
【0122】
第6領域26には、図4のS270で算出された運転能力値としての燃費値が表示される。
第7領域27には、図4のS290で実行される改善量算出処理で算出された基準値が表示される。
【0123】
また、マイコン11は、図4のS340においては、デフォルト画面20bを表示の対象として、上記S310と同様の処理を行う。但し、デフォルト画面20bの第4領域24には、図4のS320で実行される改善量算出処理で算出された運転能力改善量が表示される。また、デフォルト画面20bの第7領域27には、図4のS320で実行される改善量算出処理で算出された基準値が表示される。
【0124】
尚、車両燃費値は、図4のS270で算出されても良い。
[2−2.第2実施形態の効果]
以上のような第2実施形態においても、運転能力改善量を算出するのに用いられる燃費値として、特定条件が成立した場合の燃費値は、算出対象から除外される。よって、第1実施形態と同様に、算出される燃費値、基準値及び運転能力改善量の精度が低下することを抑制することができる。
【0125】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0126】
例えば、図12に示すように、第4領域24には、図6のS560で算出される改善値が、運転能力改善量として表示されても良い。
また、算出される運転能力値、即ち、運転能力値として算出される車両の性能値としては、燃費値以外でも良い。例えば、ECU1が搭載される車両が、競技走行を前提とした車両であれば、所定区間の走行時間や、車両の最高速度や、前後の加速度や、横方向の加速度や、ヨーレート等の値が、運転能力値として算出されても良い。
【0127】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしても良い。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしても良い。また、上記実施形態の構成の一部を省略しても良い。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換しても良い。尚、特許請求の範囲に記載した文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0128】
また、上述したECUの他、当該ECUを構成要素とするシステム、当該ECUとしてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、運転能力改善量の表示方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0129】
1…ECU、3…表示装置、11…マイコン、17,17a,17b…バッファ
図1
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図12