(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981039
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ソース及びそれを含む食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20211202BHJP
【FI】
A23L23/00
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-97808(P2017-97808)
(22)【出願日】2017年5月17日
(65)【公開番号】特開2017-209105(P2017-209105A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2020年4月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-102311(P2016-102311)
(32)【優先日】2016年5月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100169041
【弁理士】
【氏名又は名称】堺 繁嗣
(72)【発明者】
【氏名】▲瀧▼田 香織
(72)【発明者】
【氏名】山本 達也
【審査官】
茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−258501(JP,A)
【文献】
特表2014−531211(JP,A)
【文献】
特開2001−197873(JP,A)
【文献】
特開2002−058461(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/074359(WO,A1)
【文献】
特開2000−253847(JP,A)
【文献】
特公昭57−021969(JP,B1)
【文献】
米国特許第05145707(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0297322(US,A1)
【文献】
七訂 食品成分表 2016 本表編,2016年04月01日,pp. 6-7, 184-187, 190-191
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 23/00−25/10;35/00
A23L 27/00−27/40;27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソースの製造方法であって、
塩基性アミノ酸を0.05〜1.5重量%配合することを含み、
前記ソースが、油分およびタンパク質を含有し、
前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質であり、
ただし、以下の(1)〜(4)の場合は除く、方法:
(1)前記塩基性アミノ酸がアルギニンであり、且つ、前記ソースがベシャメルソースである場合であって、前記方法がさらにアラニンを配合することを含み、且つアルギニンの配合量:アラニンの配合量が重量比で1:1である場合;
(2)前記塩基性アミノ酸がL−リジンであり、且つ、前記ソースがアルフレッドソースである場合であって、前記方法がさらにL−グルタミン酸を配合することを含む場合;
(3)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがカレーである場合;(4)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがミートソースである場合。
【請求項2】
前記塩基性アミノ酸が、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンから選択される1種またはそれ以上の塩基性アミノ酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ソースが、前記タンパク質を0.1〜20重量%含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ソースが、前記油分を1〜60重量%含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ソースが、ホワイトソース、ブラウンソース、カスタードソース、またはチーズソースである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ソースを含有する食品の製造方法であって、
ソースを加工することを含み、
前記ソースが、油分およびタンパク質を含有し、
前記ソースが、塩基性アミノ酸を0.05〜1.5重量%含有し、
前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質であり、
ただし、以下の(1)〜(4)の場合は除く、方法:
(1)前記塩基性アミノ酸がアルギニンであり、且つ、前記ソースがベシャメルソースである場合であって、前記ソースがさらにアラニンを含有し、且つ前記ソースにおけるアルギニンの含有量:アラニンの含有量が重量比で1:1である場合;
(2)前記塩基性アミノ酸がL−リジンであり、且つ、前記ソースがアルフレッドソースである場合であって、前記ソースがさらにL−グルタミン酸を含有する場合;
(3)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがカレーである場合;(4)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがミートソースである場合。
【請求項7】
ソース又は該ソースを含有する食品の食感を向上させるための組成物であって、
塩基性アミノ酸を含有し、
前記ソースが、油分およびタンパク質を含有し、
前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質である、組成物。
【請求項8】
ソース又は該ソースを含有する食品の食感を向上させる方法であって、
ソースに塩基性アミノ酸を0.05〜1.5重量%配合することを含み、
前記ソースが、油分およびタンパク質を含有し、
前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質であり、
ただし、以下の(1)〜(4)の場合は除く、方法:
(1)前記塩基性アミノ酸がアルギニンであり、且つ、前記ソースがベシャメルソースである場合であって、前記方法がさらにアラニンを配合することを含み、且つアルギニンの配合量:アラニンの配合量が重量比で1:1である場合;
(2)前記塩基性アミノ酸がL−リジンであり、且つ、前記ソースがアルフレッドソースである場合であって、前記方法がさらにL−グルタミン酸を配合することを含む場合;
(3)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがカレーである場合;(4)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがミートソースである場合。
【請求項9】
ソースであって、
油分およびタンパク質を含有し、
塩基性アミノ酸を0.05〜1.5重量%含有し、
前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質であり、
ただし、以下の(1)〜(4)の場合は除く、ソース:
(1)前記塩基性アミノ酸がアルギニンであり、且つ、前記ソースがベシャメルソースである場合であって、前記ソースがさらにアラニンを含有し、且つ前記ソースにおけるアルギニンの含有量:アラニンの含有量が重量比で1:1である場合;
(2)前記塩基性アミノ酸がL−リジンであり、且つ、前記ソースがアルフレッドソースである場合であって、前記ソースがさらにL−グルタミン酸を含有する場合;
(3)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがカレーである場合;(4)前記塩基性アミノ酸がヒスチジンであり、且つ、前記ソースがミートソースである場合。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソース及びそれを含む食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油分および/またはタンパク質を含有するソース、例えばホワイトソースは、一般的には、小麦粉をバターで炒めたルーに牛乳を加えて混合し、必要に応じてスープを加えて煮ることによって製造されることが多い。しかしながら、混合の条件によっては、製造されたソースは滑らかさに欠けたり、ボテつきが生じたりすることがあった。
【0003】
上記のようなソースの食感を改善する技術として、ホワイトソースにアジピン酸架橋でん粉を配合する方法(特許文献1)、カゼイン分解物をルーに配合する方法(特許文献2)、間歇高速攪拌下でルーと牛乳との混合加熱を行う方法(特許文献3)、ホワイトソースにヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシメチルセルロース、又はさらに乳清蛋白質を入れる方法(特許文献4)、及び、フラワーペースト状食品に加工でん粉を含有させる方法(特許文献5)が提案されている。
【0004】
また、牛乳又は濃縮乳にアミノ酸類又はアミノ酸類と有機酸もしくは糖類もしくは糖アルコールとを添加して冷凍貯蔵することにより、冷凍による乳蛋白質の変性を防止する方法が知られている(特許文献6)
【0005】
しかしながら、上記のようなソースに塩基性アミノ酸を含有させることにより、ソースの滑らかさやボテつき等の食感が改善できることは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−262077
【特許文献2】特開2012−223133
【特許文献3】特開平11−196827
【特許文献4】特開2008−154578
【特許文献5】特開2004−173541
【特許文献6】特開昭47−29553
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、滑らかさやボテつき等の食感が改善されたソース、及びそれを含む食品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、油分および/またはタンパク質を含有するソースに塩基性アミノ酸を配合することにより、ソースの滑らかさやボテつき等の食感を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下のとおり例示できる。
[1]
ソースの製造方法であって、
塩基性アミノ酸を配合することを含み、
前記ソースが、油分および/またはタンパク質を含有し、
前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質である、方法。
[2]
前記塩基性アミノ酸が、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンから選択される1種またはそれ以上の塩基性アミノ酸である、前記方法。
[3]
前記塩基性アミノ酸が、0.05〜1.5重量%配合される、前記方法。
[4]
前記ソースが、前記タンパク質を0.1〜20重量%含有する、前記方法。
[5]
前記ソースが、前記油分を1〜60重量%含有する、前記方法。
[6]
前記ソースが、ホワイトソース、ブラウンソース、カスタードソース、またはチーズソースである、前記方法。
[7]
ソースを含有する食品の製造方法であって、
ソースを加工することを含み、
前記ソースが、油分および/またはタンパク質を含有し、
前記ソースが、塩基性アミノ酸を0.05〜1.5重量%含有し、
前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質である、方法。
[8]
ソース又は該ソースを含有する食品の食感を向上させるための組成物であって、
塩基性アミノ酸を含有し、
前記ソースが、油分および/またはタンパク質を含有し、
前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質である、組成物。
[9]
ソース又は該ソースを含有する食品の食感を向上させる方法であって、
ソースに塩基性アミノ酸を0.05〜1.5重量%配合することを含み、
前記ソースが、油分および/またはタンパク質を含有し、
前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質である、方法。
[10]
ソースであって、
油分および/またはタンパク質を含有し、
塩基性アミノ酸を0.05〜1.5重量%含有し、
前記タンパク質が、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質である、ソース。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により、滑らかさやボテつき等の食感が改善されたソース又はそれを含有する食品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
<1>本発明の方法
本発明の方法は、油分および/またはタンパク質を含有するソースに関連して塩基性アミノ酸を利用する方法である。
【0013】
本発明の方法の一態様は、油分および/またはタンパク質を含有するソースの製造方法であって、塩基性アミノ酸を配合すること(塩基性アミノ酸を配合する工程)を含む方法である。同態様を、「本発明のソースの製造方法」ともいう。油分および/またはタンパク質を含有するソースを、単に「ソース」ともいう。また、「塩基性アミノ酸を配合する」ことを、「塩基性アミノ酸をソースに配合する」ともいう。塩基性アミノ酸を配合する工程は、具体的には、塩基性アミノ酸を配合してソースを製造する工程であってよい。
【0014】
本発明においては、塩基性アミノ酸を配合することにより、塩基性アミノ酸を配合しない場合と比較して、ソースの食感を改善する(向上させる)ことができる、すなわち、ソースの食感を改善する効果が得られる。本発明において、同効果を「食感改善効果」ともいう。食感改善効果が得られるメカニズムは特に制限されるものではないが、例えば、タンパク質を含有するソースの場合、塩基性アミノ酸がタンパク質に作用し、乳化状態等の構造の安定化に寄与していると推測される。また、ソースの食感を改善することにより、同ソースを含む食品の食感を改善することができる。よって、「ソースの食感の改善」には、「ソースを含む食品の食感の改善」も包含されてよい。食感としては、滑らかさやボテつきが挙げられる。滑らかさとしては、ソース中の固形分の粒子が細かく舌の上でザラつきを感じにくい食感が挙げられる。ボテつきとしては、ソースが舌の上又は口の中に半固形状に残る食感が挙げられる。好ましい滑らかさやボテつきの程度は、ソース又はソース含有食品の種類等の諸条件に応じて異なり得る。例えば、ホワイトソースでは、一般的に、滑らかさは強いほうが好ましく、ボテつきは弱い(少ない)方が好ましい。食感の評価は、例えば、専門パネルによる官能評価により行うことができる。官能評価の基準は、一例を後記実施例に示すが、それに制限されず、適宜設定することができる。
【0015】
ソースは、油分およびタンパク質のいずれか一方または両方を含有する。ソースにおける油分およびタンパク質の含有量は、食感改善効果が得られる限り、特に制限されない。油分およびタンパク質の含有量は、例えば、ソース又はソース含有食品の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。
【0016】
ソースが油分を含有する場合、ソースにおける油分の含有量は、例えば、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、または30重量%以上であってもよく、60重量%以下、56重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、または10重量%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。ソースにおける油分の含有量は、具体的には、例えば、1〜60重量%、好ましくは3〜56重量%であってもよい。
【0017】
ソースがタンパク質を含有する場合、ソースにおけるタンパク質の含有量は、例えば、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.7重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、または10重量%以上であってもよく、20重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、または5重量%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。ソースにおけるタンパク質の含有量は、具体的には、例えば、0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜15重量%であってもよい。
【0018】
油分の種類は、食感改善効果が得られる限り、特に制限されない。ソースは、1種の油分を含有していてもよく、2種またはそれ以上の油分を含有していてもよい。油分としては、動物由来の油脂(動物油脂)や植物由来の油脂(植物油脂)が挙げられる。動物油脂としては、例えば、鶏脂、豚脂、牛脂、羊油、鯨油、魚油、その他各種動物の油脂が挙げ
られる。植物油脂としては、例えば、菜種油、米油、紅花油、ヒマワリ油、オリーブ油、落花生油、パーム油、やし油、大豆油、コーン油、綿実油、ごま油、ぶどう種子油、えごま油、その他各種植物の油脂が挙げられる。油分を含有するソースは、油分を配合してソースを製造することにより得られる。よって、本発明のソースの製造方法は、油分を配合すること(油分を配合する工程)を含んでいてもよい。配合される油分は、精製品であってもよく、そうでなくてもよい。油分としては、当該油分を含有する素材を用いてもよい。言い換えると、油分は、当該油分を含有する素材を配合することによりソースに配合されて(すなわちソースに含有されて)もよい。すなわち、「油分を配合すること」には、当該油分そのものを配合することに限られず、当該油分を含有する素材を配合することも包含される。油分を含有する素材における油分の含有量は、ソースにおいて所望の油分含有量を達成できる限り特に制限されない。油分を含有する素材としては、上記例示した油分が由来する農水畜産物やそれらの加工品が挙げられる。油分を含有する素材として、具体的には、例えば、乳、卵、それらの加工品が挙げられる。乳としては、例えば、牛乳、山羊乳、羊乳、水牛乳、トナカイ乳、ロバ乳、ラクダ乳等の動物の乳が挙げられる。卵としては、例えば、鶏卵等の動物の卵が挙げられる。油分を含有する素材として、より具体的には、例えば、全乳、バター、クリーム、カード、チーズ、ヨーグルト、全卵、卵黄、それらの加工品が挙げられる。油分を含有する素材は、1種の油分を含有していてもよく、2種またはそれ以上の油分を含有していてもよい。
【0019】
タンパク質の種類は、食感改善効果が得られる限り、特に制限されない。ソースは、1種のタンパク質を含有していてもよく、2種またはそれ以上のタンパク質を含有していてもよい。タンパク質としては、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、小麦由来タンパク質が挙げられる。乳としては、上記例示した動物の乳が挙げられる。卵としては、上記例示した動物の卵が挙げられる。乳由来タンパク質としては、例えば、カゼインや乳清タンパク質(ホエイタンパク質)が挙げられる。卵由来タンパク質としては、例えば、オボアルブミン、オボムコイド、オボトランスフェリン、リゾチームが挙げられる。小麦由来タンパク質としては、例えば、グルテン、グルテニン、グリアジンが挙げられる。タンパク質を含有するソースは、タンパク質を配合してソースを製造することにより得られる。よって、本発明のソースの製造方法は、タンパク質を配合すること(タンパク質を配合する工程)を含んでいてもよい。配合されるタンパク質は、精製品であってもよく、そうでなくてもよい。タンパク質としては、当該タンパク質を含有する素材を用いてもよい。言い換えると、タンパク質は、当該タンパク質を含有する素材を配合することによりソースに配合されて(すなわちソースに含有されて)もよい。すなわち、「タンパク質を配合すること」には、当該タンパク質そのものを配合することに限られず、当該タンパク質を含有する素材を配合することも包含される。タンパク質を含有する素材におけるタンパク質の含有量は、ソースにおいて所望のタンパク質含有量を達成できる限り特に制限されない。タンパク質を含有する素材としては、上記例示したタンパク質が由来する農水畜産物やそれらの加工品が挙げられる。タンパク質を含有する素材として、具体的には、例えば、乳、卵、小麦、それらの加工品が挙げられる。タンパク質を含有する素材として、より具体的には、例えば、全乳、脱脂乳、クリーム、カード、乳清(ホエイ)、チーズ、ヨーグルト、全卵、卵黄、卵白、小麦粉、それらの加工品が挙げられる。タンパク質を含有する素材は、1種のタンパク質を含有していてもよく、2種またはそれ以上のタンパク質を含有していてもよい。
【0020】
なお、油分およびタンパク質の両方を含有する素材は、油分およびタンパク質の両方をソースに含有させるために利用することができる。
【0021】
ソースは、油分および/またはタンパク質を含有する限り、その外観や用途は特に制限されない。ソースは、例えば、惣菜用であってもよく、製菓用であってもよい。なお、ソースは、「クリーム」等とも呼ばれる場合がある。ソースとして、具体的には、例えば、
ホワイトソース(ベシャメルソースともいう)、ブラウンソース、ヴルーテソース、クリームソース、シチューソース、デミグラスソース、グラタンソース、カルボナーラソース、カレーソース、マヨネーズソース、卵ソース、カスタードソース、チーズソースが挙げられる。ソースとしては、特に、ホワイトソース、ブラウンソース、カスタードソース、チーズソースが挙げられる。
【0022】
ソースにおける塩基性アミノ酸の配合量は、食感改善効果が得られる限り、特に制限されない。塩基性アミノ酸の配合量は、例えば、ソース又はソース含有食品の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。塩基性アミノ酸の配合量は、例えば、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、または0.7重量%以上であってもよく、1.5重量%以下、1.2重量%以下、1重量%以下、0.8重量%以下、0.6重量%以下、または0.5重量%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。塩基性アミノ酸の配合量は、具体的には、例えば、0.05〜1.5重量%、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.2〜0.8重量%であってもよい。本発明において、ソースにおける塩基性アミノ酸等の各成分の「配合量」と「含有量」は同義に用いることができる。なお、塩基性アミノ酸は高濃度(例えば2重量%)では強い苦味を呈するため、例えば呈味の観点から、塩基性アミノ酸の配合量の上限は上記例示したような値が好ましい。
【0023】
塩基性アミノ酸としては、アルギニン、リジン、及びヒスチジンが、好ましくはアルギニン及びヒスチジンが、より好ましくはアルギニンが挙げられる。塩基性アミノ酸としては、1種の塩基性アミノ酸を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩基性アミノ酸を組み合わせて用いてもよい。塩基性アミノ酸が複数種の組み合わせである場合は、上述したアミノ酸の配合量(含有量)は、複数種の塩基性アミノ酸の合計量である。
【0024】
塩基性アミノ酸は、D−体、L−体、またはそれらの混合物であってよい。D−体とL−体の混合物を「DL−体」ともいう。塩基性アミノ酸は、L−体であることが好ましい。
【0025】
塩基性アミノ酸は、塩の形態で利用されてもよい。すなわち、「塩基性アミノ酸」という用語は、特記しない限り、遊離体の塩基性アミノ酸、もしくはその塩、またはそれらの混合物を意味する。塩は、経口摂取可能なものであれば特に制限されない。塩として、具体的には、例えば、塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩が挙げられる。また、これら塩基性アミノ酸(例えば、遊離体や塩)は、いずれも、特記しない限り、無水物および水和物を包含してよい。
【0026】
塩基性アミノ酸としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
【0027】
ソースは、油分、タンパク質、及び塩基性アミノ酸以外の成分又は具材を含んでいてもよい。そのような成分又は具材の種類は、食感改善効果が得られる限り、特に制限されない。そのような成分又は具材としては、例えば、水分、調味料、香料、着色料、肉、野菜、魚介類が挙げられる。本発明のソースの製造方法は、そのような成分又は具材を配合すること(そのような成分又は具材を配合する工程)を含んでいてもよい。油分やタンパク質の場合と同様、「或る成分又は具材を配合すること」には、当該成分又は具材そのものを配合することに限られず、当該成分又は具材を含有する素材を配合することも包含される。例えば、水分を含有する素材として、乳等の油分またはタンパク質を含有する素材を用いてもよい。ソースにおけるそのような成分又は具材の含有量は、食感改善効果が得られる限り、特に制限されない。そのような成分又は具材の含有量は、例えば、ソース又は
ソース含有食品の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。ソースは、通常、水分を含有していてよい。ソースが水分を含有する場合、ソースにおける水分の含有量は、例えば、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、または70重量%以上であってもよく、98重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、または50重量%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。ソースにおける水分の含有量は、具体的には、例えば、30〜98重量%、好ましくは50〜90重量%であってもよい。水分の含有量は、ソースを加熱して水分を蒸発させ、加熱前後の重量を測定することにより、測定することができる。加熱条件としては、例えば、105℃、16
時間が挙げられる。
【0028】
各成分の含有量(配合量)は、いずれも、ソース全量に対する各成分の含有量(配合量)を示す。「ソース全量」とは、ソースの完成品の全量(すなわち本発明のソースの製造方法により製造されたソースの全量)をいう。すなわち、例えば、「ソース全量に対する塩基性アミノ酸の含有量(配合量)」とは、配合された塩基性アミノ酸の量も含むソース全量に対する塩基性アミノ酸の含有量(配合量)をいう。油分、タンパク質、水分の含有量についても同様である。また、「ソース全量」とは、ソースがソースから分離可能な固形状の具材を含む場合にあっては、ソースからそのような具材を除いた残りの部分の全量をいう。ソースから分離可能な固形状の具材としては、2mm角以上の具材が挙げられる。また、「ソース全量」とは、ソースが濃縮物や乾燥物等の使用前または使用時に使用に適するように調製(例えば希釈)される態様で提供される場合は、当該調製(例えば希釈)後のソース全量をいう。
【0029】
各成分の含有量(配合量)は、当該成分を含有する素材を用いる場合にあっては、当該素材中の当該成分そのものの量に基づいて算出されるものとする。また、各成分の含有量(配合量)は、当該成分が塩を形成している場合にあっては、塩の質量を等モルの遊離体の質量に換算した値に基づいて算出されるものとする。また、各成分の含有量(配合量)は、当該成分が水和物を形成している場合にあっては、水和物の質量を等モルの無水物の質量に換算した値に基づいて算出されるものとする。
【0030】
ソースは、塩基性アミノ酸を配合すること以外は、例えば、ソースの種類に応じて、ソースに通常用いられる原料を用いて、通常の方法で製造することができる。例えば、ホワイトソース等の小麦粉を用いたソースは、一般的には、小麦粉をバターで炒めたルー、又は小麦粉とバターを練り合わせたブールマニエを、牛乳、水、又はブイヨンでのばすことにより、製造することができる。
【0031】
「塩基性アミノ酸を配合する(塩基性アミノ酸をソースに配合する)」とは、ソースが塩基性アミノ酸を含有する状態に置かれることを意味する。塩基性アミノ酸は、ソースの製造プロセスの任意のタイミングで配合することができる。例えば、ソースの原料又はそれらの混合物に塩基性アミノ酸を添加してもよい。また、例えば、塩基性アミノ酸以外の原料を用いて製造されたソースに塩基性アミノ酸を添加してもよい。塩基性アミノ酸が複数種の場合は、各塩基性アミノ酸は同時に添加されてもよく、任意の順序で別個に添加されてもよい。塩基性アミノ酸以外の原料を配合する場合についても同様である。なお、塩基性アミノ酸と他の原料を配合する場合、それらは同時に添加されてもよく、任意の順序で別個に添加されてもよい。例えば、塩基性アミノ酸、油分、タンパク質、および水分は、同時に添加されてもよく、任意の順序で別個に添加されてもよい。
【0032】
本発明のソースの製造方法は、ソースを冷凍する工程を含んでいてもよい。
【0033】
このようにして本発明のソースの製造方法を実施することにより、ソースが製造される
。同方法により製造されるソースは、具体的には、食感が改善されたソースである。また、同方法により製造されるソースは、具体的には、油分および/またはタンパク質を含有し、且つ、塩基性アミノ酸を含有するソースである。ソースは、そのまま使用できる態様で提供されてもよく、そうでなくてもよい。ソースは、例えば、使用前または使用時に使用に適するように調製される態様で提供されてもよい。ソースは、具体的には、例えば、水分の一部又は大部分が除去された濃縮物又は乾燥物として提供されてもよい。したがって、同方法は、ソースから水分を除去する工程を含んでいてもよい。濃縮物又は乾燥物の形態は特に制限されず、ペースト状、固形状、粉末状、顆粒状等のいずれであってもよい。ソースが濃縮物又は乾燥物の場合は、例えば、使用時に水、牛乳、ブイヨン等で希釈、分散、又は溶解等して調理することができる。
【0034】
また、本発明の方法の別の態様は、上記のようなソースを含有する食品(「ソース含有食品」ともいう)の製造方法である。同態様を、「本発明のソース含有食品の製造方法」ともいう。ソース含有食品は、上記のようなソースを加工することによって製造することができる。すなわち、同方法は、具体的には、ソースを含有する食品の製造方法であって、ソースを加工すること(ソースを加工する工程)を含み、前記ソースが、油分および/またはタンパク質を含有し、且つ、塩基性アミノ酸を含有する方法であってよい。ソースを加工する工程は、具体的には、ソースを加工して該ソースを含有する食品を製造する工程であってよい。「ソースの加工」としては、ソースを他の構成要素(例えば食品やその原料)に塗る、かける、まぶす、詰める、混ぜる等の手段によりソースと他の構成要素とを組み合わせることや、ソース自体またはソースと他の構成要素との組み合わせを調理することが挙げられる。ソースと組み合わせる構成要素としては、例えば、パン、米飯、ハンバーグ、オムレツ、麺類等の食品が挙げられる。また、ソース含有食品としては、クリームコロッケ、グラタン、ドリア、ラザニア、ラビオリ、シチュー、カレー、シュークリーム、エクレア等が挙げられる。本発明のソース含有食品の製造方法に用いられるソースは、例えば、本発明のソースの製造方法により製造できる。本発明のソース含有食品の製造方法に用いられるソースおよびそれに関連する事項(例えば、その組成や製造方法)については、本発明のソースの製造方法におけるソースおよびそれに関連する事項についての記載を準用できる。例えば、本発明のソース含有食品の製造方法に用いられるソースは、塩基性アミノ酸を、0.05〜1.5重量%、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.2〜0.8重量%含有して(配合されて)いてよい。また、例えば、ソースが含有するタンパク質は、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質であってよい。また、本発明のソース含有食品の製造方法は、ソース含有食品を冷凍する工程を含んでいてもよい。
【0035】
また、本発明の方法の別の態様は、上記のようなソース又は該ソースを含有する食品の食感を向上させる(改善する)方法である。同態様を、「本発明の食感向上方法」ともいう。同方法は、具体的には、ソース又は該ソースを含有する食品の食感を向上させる方法であって、ソースに塩基性アミノ酸を配合することを含み、前記ソースが、油分および/またはタンパク質を含有する方法であってよい。本発明の食感向上方法におけるソースやソース含有食品およびそれらに関連する事項については、本発明のソースやソース含有食品の製造方法におけるソースやソース含有食品およびそれらに関連する事項についての記載を準用できる。例えば、本発明の食感向上方法においては、ソースに、塩基性アミノ酸を0.05〜1.5重量%、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.2〜0.8重量%配合してよい。また、例えば、ソースが含有するタンパク質は、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質であってよい。
【0036】
<2>本発明の組成物
本発明の組成物は、塩基性アミノ酸を含有する、上記のようなソース又は該ソースを含
有する食品の食感を向上させるための組成物である。本発明の組成物は、具体的には、ソース又は該ソースを含有する食品の食感を向上させるための組成物であって、塩基性アミノ酸を含有し、前記ソースが、油分および/またはタンパク質を含有する組成物であってよい。本発明の組成物は、塩基性アミノ酸を有効成分として含有していてよい。本発明の組成物におけるソースやソース含有食品およびそれらに関連する事項については、本発明の方法におけるソースやソース含有食品およびそれらに関連する事項についての記載を準用できる。また、本発明の組成物は、本発明の方法を実施するために用いられてよい。例えば、本発明の組成物は、ソースに、塩基性アミノ酸を0.05〜1.5重量%、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.2〜0.8重量%配合する(含有させる)ために用いられてよい。また、例えば、ソースが含有するタンパク質は、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質であってよい。本発明の組成物における塩基性アミノ酸の含有量は、例えば、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、30重量%以上、または50重量%以上であってもよく、99.9重量%以下、70重量%以下、50重量%以下、または30重量%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。
【0037】
<3>本発明のソースおよびソース含有食品
本発明のソースおよびソース含有食品は、上記のようなソース又は該ソースを含有する食品である。本発明のソースは、具体的には、油分および/またはタンパク質を含有し、且つ、塩基性アミノ酸を含有するソースであってよい。本発明のソース含有食品は、具体的には、本発明のソースを含有する食品であってよい。本発明のソースおよびソース含有食品およびそれらに関連する事項については、本発明の方法におけるソースやソース含有食品およびそれらに関連する事項についての記載を準用できる。例えば、本発明のソースは、塩基性アミノ酸を、0.05〜1.5重量%、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.2〜0.8重量%含有していてよい。また、例えば、ソースが含有するタンパク質は、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、および小麦由来タンパク質から選択される1種またはそれ以上のタンパク質であってよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例で用いたアミノ酸は、いずれも、特記しない限り、L−体であり、遊離体であり、無水物である。
【0039】
〔実施例1〕
本実施例では、グルテンフリーホワイトソースにアルギニンを添加して、食感に与える効果を評価した。
【0040】
表1に示す配合で、グルテンフリーホワイトソースを製造した。すなわち、原料を配合し、混合しながら加熱し、温度が90℃に到達した時点で加熱を終了し、以てグルテンフリーホワイトソースを得た。なお、加熱および混合の間、歩留りが100%に維持されるように温水を適宜添加した。
【0041】
【表1】
【0042】
得られたグルテンフリーホワイトソースについて、粗熱をとった後、滑らかさとボテつきを官能評価した。官能評価は、十分に訓練された6名の専門パネルにより実施した。評点は、無添加区を3点とし、表2に示す基準に従って算出した。
【0043】
【表2】
【0044】
結果を表3に示す。アルギニンを配合することにより、グルテンフリーホワイトソースの滑らかさおよびボテつきが改善された。
【0045】
【表3】
【0046】
〔実施例2〕
本実施例では、卵ソースにアルギニンを添加して、食感に与える効果を評価した。
【0047】
表4に示す配合で、卵ソースを製造した。すなわち、水に澱粉、砂糖、およびアルギニン(1%添加区の場合)を加え、混合した。次いで、溶いた全卵を加え、混合した。次いで、混合物をボイリングパックに充填し、加熱(100℃10分)し、以て卵ソースを得た。
【0048】
【表4】
【0049】
得られた卵ソースについて、粗熱をとった後、官能評価を実施した。官能評価は、無添加区の評点を3点とし、実施例1と同様に実施した。
【0050】
結果を表5に示す。アルギニンを配合することにより、卵ソースの滑らかさおよびボテつきが改善された。
【0051】
【表5】
【0052】
〔実施例3〕
本実施例では、ブラウンソースにアルギニンを添加して、食感に与える効果を評価した。
【0053】
表6に示す配合で、ブラウンソースを製造した。すなわち、小麦粉とバターを茶色になるまで炒めた。次いで、残りの原料を加え、混合しながら加熱し、以てブラウンソースを得た。なお、加熱および混合の間、歩留りが100%に維持されるように水を適宜添加した。
【0054】
【表6】
【0055】
得られたブラウンソースについて、粗熱をとった後、官能評価を実施した。官能評価は、無添加区の評点を3点とし、実施例1と同様に実施した。
【0056】
結果を表7に示す。アルギニンを配合することにより、ブラウンソースの滑らかさおよびボテつきが改善された。
【0057】
【表7】
【0058】
〔実施例4〕
本実施例では、ベシャメルソースにアルギニンを添加して、食感に与える効果を評価した。
【0059】
表8に示す配合で、ベシャメルソースを製造した。すなわち、原料を配合し、混合しながら加熱し、温度が90℃に到達した時点で加熱を終了し、以て試験区AおよびBのベシャメルソースを得た。なお、加熱および混合の間、歩留りが100%に維持されるように温水を適宜添加した。ベシャメルソースベースは、小麦粉(70重量部)をバターオイル(30重量部)で炒めたものである。さらに、試験区AおよびBのベシャメルソースの一部を、それぞれ、加熱終了後直ちにボイリングパックに充填し、粗熱をとった後、急速凍結させ、以て試験区CおよびDのベシャメルソースを得た。
【0060】
【表8】
【0061】
試験区AおよびBについては製造直後の試料の粗熱をとったものを用いて、試験区CおよびDについては凍結処理後の試料をオーブンで蒸し加熱(100℃、湿度100%、10分)し
たものを用いて、官能評価を実施した。官能評価は、試験区Aの評点を3点とし、実施例1と同様に実施した。
【0062】
結果を表9に示す。アルギニンを配合することにより、製造後の凍結の有無にかかわらず、ベシャメルソースの滑らかさおよびボテつきが改善された。
【0063】
【表9】
【0064】
〔実施例5〕
本実施例では、ベシャメルソースにアルギニンを種々の濃度で添加して、食感に与える効果を評価した。
【0065】
表10に示す配合で、実施例4と同様にしてベシャメルソースを製造し、加熱終了後直ちにボイリングパックに充填し、粗熱をとった後、急速凍結させた。表中、乳化剤はグリセリン脂肪酸エステル、加工澱粉はアセチル架橋澱粉、増粘剤・ゲル化剤はゼラチンを示す。
【0066】
【表10】
【0067】
各々の試料を、以下の3つの方法により処理した。
処理1:凍結させた試料を、スチームコンベクションオーブンを用いて蒸し加熱(100℃
、湿度100%、10分)し、解凍調理した。
処理2:処理1を施した試料を、4時間常温(25℃)で保存した。
処理3:処理2を施した試料を、スチームコンベクションオーブンを用い、再加熱(100
℃、湿度100%、5分)した。
【0068】
上記のようにして処理した試料について、官能評価を実施した。官能評価は、処理1のコントロール試料の評点を3点とし、実施例1と同様に実施した。
【0069】
結果を表11に示す。いずれのアルギニン濃度でも、製造後の処理にかかわらず、滑らかさおよびボテつきが改善された。
【0070】
【表11】
【0071】
〔実施例6〕
本実施例では、タンパク質含有量の異なるソースにアルギニンを添加して、食感に与える効果を評価した。
【0072】
表12(A)に示す配合で、ブラウンソース(タンパク質含有量:0.17重量%)を製造した。すなわち、小麦粉と澱粉とバターを茶色になるまで炒めた。次いで、残りの原料を加え、混合しながら加熱し、以てブラウンソースを得た。なお、加熱および混合の間、歩留りが100%に維持されるように水を適宜添加した。
【0073】
表12(B)に示す配合で、カルボナーラソース(タンパク質含有量:15.8重量%)を製造した。すなわち、卵黄を溶き、0.3%添加区の場合はアルギニンを添加した。次いで、残りの原料を加えて混合し、以てカルボナーラソースを得た。
【0074】
【表12】
【0075】
得られた試料(ブラウンソースは粗熱をとった後)について、官能評価を実施した。官能評価は、それぞれ無添加区の評点を3点とし、実施例1と同様に実施した。
【0076】
結果を表13に示す。いずれのタンパク質含有量のソースでも、アルギニンを配合することにより、滑らかさおよびボテつきが改善された。
【0077】
【表13】
〔実施例7〕
本実施例では、油分含有量の異なるソースにアルギニンを添加して、食感に与える効果を評価した。
【0078】
実施例4と同様にして、アルギニン無添加およびアルギニン添加のベシャメルソース(冷凍処理なし、油分含有量:3.1重量%)を製造した。ベシャメルソースを80℃に調温後
、表14の配合で油脂を添加して混合し、試料を得た。
【0079】
【表14】
【0080】
得られた試料について、粗熱をとった後、官能評価を実施した。官能評価は、各試験区について、アルギニン無添加品の評点を3点とし、実施例1と同様に実施した。
【0081】
結果(アルギニン添加品のデータ)を表15に示す。いずれの油分含有量のソースでも、アルギニンを配合することにより、滑らかさおよびボテつきが改善された。なお、アルギニン無添加品の場合、油分含有量が40重量%を超えると転相が認められ、滑らかさ等の食感が著しく損なわれ、ソースとして成立しなかった。一方、アルギニン添加品の場合、油分含有量が50重量%を超えると部分的に転相が認められたが、油脂添加区5でもソースとして成立していた。
【0082】
【表15】
【0083】
〔実施例8〕
本実施例では、カスタードソースにアルギニンを添加して、食感に与える効果を評価した。
【0084】
表16に示す配合で、カスタードソースを製造した。すなわち、小麦粉、砂糖、牛乳、およびアルギニン(試験区Bの場合)を混合した。次いで、卵黄を加え、混合した。混合物を混合しながら加熱し、温度が90℃に到達した時点で加熱を終了し、以て試験区AおよびBのカスタードソースを得た。なお、加熱および混合の間、歩留りが100%に維持されるように水を適宜添加した。さらに、試験区AおよびBのカスタードソースの一部を、それぞれ、加熱終了後直ちにボイリングパックに充填し、粗熱をとった後、急速凍結させ、以て試験区CおよびDのカスタードソースを得た。
【0085】
【表16】
【0086】
試験区AおよびBについては製造直後に自然冷却し試験区CおよびDの自然解凍品と品温を併せたものを用いて、試験区CおよびDについては凍結品を自然解凍(5℃、2時間)したものを用いて、官能評価を実施した。官能評価は、試験区Aの評点を3点とし、実施例1と同様に実施した。
【0087】
結果を表17に示す。アルギニンを配合することにより、製造後の凍結の有無にかかわらず、カスタードソースの滑らかさおよびボテつきが改善された。特に、アルギニン無添加品は凍結処理により食感が顕著に損なわれたのに対し、アルギニン添加品は凍結処理しても食感が良好に維持された。
【0088】
【表17】
【0089】
〔実施例9〕
本実施例では、シチューにアルギニンを添加して、食感に与える効果を評価した。
【0090】
表18に示す配合で、シチューを製造した。すなわち、ベシャメルソースベース、脱脂粉乳、水(40℃)を混合してベシャメルソースを調製し、それに牛乳を加えて混合し、重量が60%になるまで加熱し、以てシチュー(アルギニン無添加)を得た。シチュー(アル
ギニン無添加)に、アルギニンを0.3重量%添加し、シチュー(アルギニン添加)を得た。
【0091】
【表18】
【0092】
得られたシチューについて、製造直後の食感を官能評価した。官能評価は、アルギニン無添加品の評点を3点とし、実施例1と同様に実施した。
【0093】
結果を表19に示す。アルギニンを配合することにより、シチューの滑らかさおよびボテつきが改善された。
【0094】
【表19】
【0095】
〔実施例10〕
本実施例では、クリームコロッケのベシャメルソースにアルギニンを添加して、食感に与える効果を評価した。
表20に示す配合で、ベシャメルソースを製造した。すなわち、バター、小麦粉を混合してルーを調製し、それに牛乳を加えて混合し、重量が90%になるまで加熱し、以てベシ
ャメルソース(アルギニン無添加)を得た。ベシャメルソース(アルギニン無添加)にアルギニンを0.5重量%添加し、ベシャメルソース(アルギニン添加)を得た。各ベシャメルソースを冷却後、衣を付けて冷凍した。その後、冷凍品を175℃で6分間油調し、クリームコロッケを得た。
【0096】
【表20】
【0097】
得られたクリームコロッケについて、製造直後の食感を官能評価した。官能評価は、アルギニン無添加品の評点を3点とし、実施例1と同様に実施した。
【0098】
結果を表21に示す。クリームコロッケ等のソースを含む食品においても、ソースにアルギニンを添加することで、滑らかさおよびボテつきが改善された。
【0099】
【表21】
【0100】
〔実施例11〕
本実施例では、ベシャメルソースに種々のアミノ酸を添加して、食感に与える効果を評価した。
【0101】
表22に示す配合で、実施例4と同様にしてベシャメルソースを製造し、加熱終了後直ちにボイリングパックに充填し、粗熱をとった後、急速凍結させた。各々の試料を、実施例5の処理1〜3と同様にして処理した。
【0102】
【表22】
【0103】
上記のようにして処理した試料について、官能評価を実施した。官能評価は、処理1のコントロール試料の評点を3点とし、実施例1と同様に実施した。
【0104】
結果を表23に示す。ベシャメルソースに塩基性アミノ酸を添加することにより、製造後の処理にかかわらず、滑らかさおよびボテつきが改善された。
【0105】
【表23】
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、食品製造業や外食産業で有用である。