(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、一般的な差動入力・差動出力構成での電流量を説明する図である。一例としてCMLドライバでVCSELを駆動する場合を考える。CMLドライバは、電源電圧V
DD(またはVcc)とV
SS(またはVee)の間に2つのパスが並列に接続され、各パスで終端抵抗素子TREとトランジスタが直列接続されている。互いに逆相のデータ信号V
PとV
Nが、それぞれ対応するトランジスタQ1とQ2のベースに入力される。それぞれのトランジスタのコレクタと終端抵抗素子TREの間のノードから出力が取り出される。一方の出力はVCSELの入力に接続され、他方の出力はダミーVCSELの入力に接続される。
【0013】
図1(A)はV
Pが高電位(High)のときの電流状態、
図1(B)はV
Pが低電位(Low)のときの電流状態を示している。
図1(A)で、トランジスタQ1がON、トランジスタQ2がOFFである。V
DD側の電流源を流れる電流をI
DD、V
SS側の電流源を流れる電流をI
SSとする。トランジスタQ1とQ2の間には、ON/OFF動作により電流差I
Aが生じていると仮定する。
【0014】
ON状態のトランジスタQ1に接続される終端抵抗素子TREにはI
DD/2+I
Aの電流が流れる。OFF状態のトランジスタQ2に接続される終端抵抗素子TREにはI
DD/2−I
Aの電流が流れる。トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間は電流が流れないので、このパスに接続されているVCSELにはI
DD/2−I
Aの電流量が流れる。ON状態のトランジスタQ1には、コレクタ電流としてV
SS側電流源のI
SSが流れるため、ダミーVCSELにはI
DD/2+I
A−I
SSの電流量が流れる。
【0015】
図1(B)ではトランジスタQ1がOFF、トランジスタQ2がONである。OFF状態のQ1に接続される終端抵抗素子TREにはI
DD/2−I
Aの電流が流れ、ON状態のQ2に接続される終端抵抗素子TREにはI
DD/2+I
Aの電流が流れる。OFF状態のトランジスタQ1のコレクタ−エミッタ間は電流が流れないので、このパスに接続されるダミーVCSELにはI
DD/2−I
Aの電流量が流れる。ON状態のトランジスタQ2のコレクタ電流としてV
SS側電流源のI
SSが流れるため、VCSELにはI
DD/2+I
A−I
SSの電流量が流れる。
【0016】
図2は、
図1のVCSELのモデルを定義する図である。
図2(A)において、VCSEL等の半導体レーザの簡易モデルは、抵抗Rと閾値電圧Vvで定義される。閾値電圧Vvは、VCSELに電流が流れ始める閾値電圧である。抵抗Rは、VCSELに電流が流れる状態において、差動ドライバから見たVCSELの微分抵抗である。
図2(B)は半導体レーザの電流−電圧特性である。横軸を電圧V、縦軸を電流Iとすると、電流−電圧特性の傾きは1/Rで表される。
【0017】
ここで、VCSELに印加される閾値電圧Vvと微分抵抗Rが、VCSELに流れる電流量に依存せず一定であるとし、また、終端抵抗素子TREの抵抗値は、VCSELの微分抵抗値と等しく、式(1)が成り立つと仮定する。
【0018】
R(I
DD/2+I
A)+R(I
DD/2+I
A−I
SS)
≒R(I
DD/2−I
A)+R(I
DD/2−I
A) (1)
式(1)の左辺の第1項は
図1(A)でON状態のトランジスタQ1に接続される終端抵抗素子TREでの電圧降下分、第2項はダミーVCSELにかかる電圧である。右辺の第1項は、
図1(B)でOFF状態のトランジスタQ1に接続される終端抵抗素子TREでの電圧降下分、第2項はダミーVCSELにかかる電圧である。式(1)から、I
A≒I
SS/4となる。
【0019】
V
Pが高電位(High)のときにVCSELに流れる電流量は、
I
DD/2−I
A=I
DD/2−I
SS/4 (2)
である。V
Pが低電位(Low)のときにVCSELに流れる電流量は、
I
DD/2+I
A−I
SS=I
DD/2−I
SS×3/4 (3)
である。一例として、差動ドライバの入力データV
Pが高電位(High)のときにVCSELに10mAを流し、V
Pが低電位(Low)のときにVCSELに1mAを流す設計の場合、式(2)と式(3)に電流量を当てはめると、
I
DD/2−I
SS/4=10mA (4)
I
DD/2−I
SS×3/4=1mA (5)
式(4)と式(5)から、I
DD=29mA、I
SS=18mAであり、差動ドライバの消費電流は29mAとなる。ダミー回路を必要としない差動入力かつ単相出力のドライバを作ることができたら、ドライバの消費電流量をもっと減らせるはずである。
【0020】
図3は、差動入力・単相出力のドライバを実現するために考慮すべき技術課題を説明する図である。E/Oコンバータ1は、差動入力・単相出力のドライバ回路10と、ドライバ回路10によって駆動される光デバイス11を有する。E/Oコンバータ1は、送信フロントエンドとして光送信モジュールに適用可能である。光デバイス11は、ファブリペロー型レーザ、量子井戸半導体レーザ、分布帰還形(DFB:Distributed Feedback)レーザ、VCSEL等の発光デバイスであり、
図2と同じ簡易モデルで表されている。
【0021】
ドライバ回路10は、電源電圧V
DDに接続される終端回路30と、終端回路30に直列接続される可変電流源20を有する。差動入力・単相出力のドライバを実現するために、実施形態では以下の2点を実現する。
(a)可変電流源20は、差動データ入力に応じて高速動作が可能であること。
(b)終端回路30は、光デバイス(及び伝送路)とのインピーダンス不整合に対して終端できること。
【0022】
課題(a)は、数十Gbpsの伝送レートを実現できるように、差動データV
PとV
Nの論理値に応じて高速切り替えが可能な回路の実現を意味する。課題(b)は、ドライバ回路10の出力を単相としたことで、光デバイス11の抵抗Rと、終端回路30の抵抗Rを整合させることを意味する。ドライバ回路10を単相出力にすると、光デバイス11まで一方通行の電流パスが形成され、光デバイス11からはV
DDのインピーダンスが支配的に見える。そこで終端回路30の構成を工夫して、V
DD側のインピーダンスを光デバイス11及び伝送線路の特性インピーダンスに整合させる。
【実施例1】
【0023】
図4は、実施例1のE/Oコンバータ1Aの構成例を示す。実施例1では、差動データ入力に応じて高速動作が可能な可変電流源を実現する。
図4(A)は入力V
Pが高電位(High)のときの電流状態、
図4(B)は入力V
Pが低電位(Low)のときの電流状態を示す。
【0024】
E/Oコンバータ1Aは、光デバイス11と、終端回路30と、可変電流源20Aを有する。終端回路30と可変電流源20Aで差動入力・単相出力のドライバ回路10−1が形成される。終端回路30と可変電流源20Aの間のノードn1から光デバイス11を駆動する駆動信号が出力される。ノードn1は光デバイス11を駆動する駆動信号が出力される単一の出力ノードである。
【0025】
可変電流源20Aは、第1電流源123、第2電流源124、第1電流源123に直列接続されるスイッチSW1、第2電流源124に直列接続されるスイッチSW2、第1バイパス回路121、及び第2バイパス回路122を有する。
【0026】
第1バイパス回路121はスイッチSW1と第1電流源123の間に挿入され、V
DD2に接続されるスイッチSW3を有する。
【0027】
第2バイパス回路122はスイッチSW2と第2電流源124の間に挿入され、V
DD2に接続されるスイッチSW4を有する。
【0028】
スイッチSW1に正相の入力信号V
Pが入力され、スイッチSW2に逆相の入力信号V
Nが入力される。第1バイパス回路121のスイッチSW3は、スイッチSW1がONのときにOFFになり、スイッチSW1がOFFのときにONになる。第2バイパス回路122のスイッチSW4は、スイッチSW2がOFFのときにONになり、スイッチSW2がONのときにOFFになる。
【0029】
可変電流源20Aは、第1電流源123に常に一定の直流(DC)電流が流れ、かつ第2電流源124に常に一定の直流(DC)電流が流れるように構成されている。第1電流源123と第2電流源124に、常に所定の電流を流しておくことで、スイッチSW3とSW4のON動作の際にこれらのスイッチの寄生容量の充電にかかる時間を省略できる。したがって、スイッチSW1〜SW4は、差動データの入力に応じて高速の切り替え動作をすることができる(課題(a)の実現)。
【0030】
図1の差動入力・差動出力の回路と同様に、ドライバ回路10−1への入力データV
PがHighのときに光デバイス11に10mAの電流を流し、V
PがLowのときに光デバイス11に1mAの電流を流す設計を考える。V
DD側の電流源には、光デバイス11を駆動するのに必要な11mA(10mA+1mA)の電流量が流れる。
【0031】
図4(A)でV
PがHighのとき、スイッチSW1はONになり、第1バイパス回路121のスイッチSW3はOFFとなる。V
NはLowでありスイッチSW2がOFF、第2バイパス回路122のスイッチSW4がONになる。これにより、終端回路30と可変電流源20Aの間のノードn1から光デバイス11に10mAの電流が流れ、スイッチSW1を介して第1電流源123に1mAの電流が流れる。このとき、第1バイパス回路121のスイッチSW3はOFFなので、第1バイパス回路121から第1電流源123への電流の供給はない。他方、V
Nが入力されるスイッチSW2はOFFになっており、第2バイパス回路122からスイッチSW4を介して第2電流源124に10mAの電流が流れる。
【0032】
図4(A)でV
PがLowのとき、スイッチSW1はOFFになり、第1バイパス回路121のスイッチSW3はONとなる。V
NはHighでありスイッチSW2がOFF、第2バイパス回路122のスイッチSW4がOFFになる。これにより、終端回路30と可変電流源20Aの間のノードn1から光デバイス11に1mAの電流が流れ、スイッチSW2を介して第2電流源124に10mAの電流が流れる。このとき、第1バイパス回路121のスイッチSW3はONであり、第1バイパス回路121から第1電流源123に1mAの電流が流れる。他方、第2バイパス回路122のスイッチSW4はOFFなので第2バイパス回路122から第2電流源124への電流の供給はない。
【0033】
この構成により、第1電流源123には常に1mAの電流が流れ、第2電流源124には常に10mAの電流が流れる。スイッチSW1〜SW4は入力データに応じた高速切り替えが可能になる。
【0034】
ドライバ回路10−1の消費電流は以下のようになる。
・V
P=Highのときの消費電流:11mA+10mA=21mA
・V
P=Lowのときの消費電流:11mA+1mA=12mA
ここで、11mAはV
DD側電流源に供給される電流量、10mAはV
P=Highのときに第2バイパス回路122に流す電流量、1mAはV
P=Lowのときに第1バイパス回路121に流す電流量である。
【0035】
入力データパターンのHighとLowの発生確率を50%ずつとすると、ドライバ回路10−1の平均消費電流は、
21mA×0.5+12mA×0.5=16.75mA
となる。これは、
図1の差動入力・差動出力ドライバの消費電流29mAの約58%である。実施例1の差動入力・単相出力の構成により、消費電流を40%以上も低減することができる。
【実施例2】
【0036】
図5は、単相出力ドライバにおける終端の課題(b)を説明する図である。光デバイス11から見えるV
DD側電流源のインピーダンスを無限大とする。
図5(A)のように、電流源と直流に終端抵抗素子TREを挿入すると、インピーダンスが無限大となり終端できない。
図5(B)のように、V
DD側電流源と並列に抵抗値がRの終端抵抗素子TREを挿入すると、(1/∞+1/R)
-1=Rとなって終端することができる。ただし、終端抵抗素子TREに電位差(V
DD−Vout)による電流(V
DD−Vout)/Rが流れるので、可変電流源20と連携して制御する必要がある。
【0037】
図6は、実施例2のE/Oコンバータ2の構成例を示す。E/Oコンバータ2は、光デバイス11と、可変電流源20と、終端回路30Aを有し、可変電流源20と終端回路30Aで、差動入力・単相出力のドライバ回路10−2が形成される。
【0038】
終端回路30は、V
DDに対して電流源31と並列に接続される抵抗素子32と、V
DDと抵抗素子32の間で抵抗素子32と直列に接続される低インピーダンスの電圧レベルシフタ131を有する。抵抗素子32の両端の電位差をゼロにできれば、抵抗素子32に電流は流れなくなる。
【0039】
ドライバ回路10−2の抵抗素子32からみたときに、抵抗値Rよりも低いインピーダンスの電圧レベルシフタ131があれば、ドライバ回路10−2の出力Voutからみた終端抵抗値は、抵抗素子32の抵抗値Rのみで決まる。
【0040】
図7は、電圧レベルシフタ131の具体的な構成を含むE/Oコンバータ2Aを示す。E/Oコンバータ2Aは、光デバイス11と、可変電流源20Aと、終端回路30Aを含む。可変電流源20Aと終端回路30Aで、ドライバ回路10−2Aが形成される。
【0041】
可変電流源20Aは実施例1で説明した電流源であり、第1バイパス回路121と第2バイパス回路122を有する。終端回路30Aと可変電流源20Aの間のノードn1から単相の出力Voutが取り出され、光デバイス11に入力される。
【0042】
終端回路30Aは、電流源31と、抵抗素子32と、電圧レベルシフタ131Aと容量Cを有する。抵抗素子32は電流源31に対して並列に接続されている。抵抗素子32とV
DDの間に、電圧レベルシフタ131Aが接続されている。
【0043】
電圧レベルシフタ131Aは、抵抗素子32と直列に接続されるトランジスタ135、電圧生成回路132、電圧平均化回路133、及び積分器134を有する。トランジスタ135のコレクタはV
DDに接続され、エミッタは抵抗素子32に接続されている。トランジスタ135は、コレクタ接地回路またはエミッタフォロワとして機能する。
【0044】
電圧生成回路132は、トランジスタ135をONさせる電圧V
BEを生成する。電圧平均化回路133はたとえばローパスフィルタ(LPF)であり、ドライバ回路10−2Aの出力電圧Voutを平滑化する。積分器134は、平滑化された出力電圧Voutと、電圧生成回路132から出力されるオン電圧V
BEを累積加算する。トランジスタ135のベースには、ドライバ出力の平均値とオン電圧V
BEを足し合わせた電圧が印加される。
【0045】
トランジスタ135のエミッタと抵抗素子32の間のノードn2の電圧は、ドライバ回路10−2Aの出力電圧Voutの平均電圧となる。ノードn2の電圧を平均出力電圧Voutバーにすることで、抵抗素子32の両端、すなわちノードn2とノードn1の間の電圧差が解消され、抵抗素子32にDC電流が流れなくなる。
【0046】
コレクタ接地回路としてのトランジスタ135と並列に容量Cが接続されている。AC的な電流は容量Cを介して流れ、ドライバ回路10−2Aから入力データに応じた高周波の信号が出力される。この構成により、光デバイス11(及び伝送路)の特性インピーダンスとV
DD側のインピーダンスを整合させ、かつ抵抗素子32に直流電流が流れるのを防止できる。電圧レベルシフタ131Aは数mA程度で設計可能であり、ドライバ回路10−2Aの消費電流への影響は少ない。
【実施例3】
【0047】
図8は、実施例3のE/Oコンバータ3の概略図である。E/Oコンバータ3は、光デバイス11と、終端回路30Aと、可変電流源20Bを有する。終端回路30Aと可変電流源20Bで、差動入力・単相出力のドライバ回路10−3が形成される。終端回路30Aは実施例2の終端回路30Aと同じであり、電圧レベルシフタ構成を有する。可変電流源20Bは、実施例1の可変電流源20Aのスイッチ構成をトランジスタで実現したものである。
【0048】
可変電流源20Bは、トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q7を有する。トランジスタQ1のベースはV
P信号線に接続され、トランジスタQ2のベースはV
N信号線に接続されている。
【0049】
第1バイパス回路121AのトランジスタQ3のベースはV
N信号線に接続され、第2バイパス回路122AのトランジスタQ4のベースはV
P信号線に接続されている。これにより、トランジスタQ1がONするときはトランジスタQ3がOFFになり、トランジスタQ1がOFFのときはトランジスタQ3がONになる。同様に、トランジスタQ2がONするときはトランジスタQ4がOFFになり、トランジスタQ2がOFFのときはトランジスタQ4がONになる。
【0050】
トランジスタQ5とトランジスタQ7は、たとえばMOSFETであり、それぞれのゲートが電圧V
Tに接続されている。トランジスタQ5のドレインは、トランジスタQ1のコレクタとトランジスタQ3のコレクタに接続され、ソースはV
SSに接続されている。トランジスタQ7のドレインは、トランジスタQ2のコレクタとトランジスタQ4のコレクタに接続され、ソースはV
SSに接続されている。
【0051】
この構成で、トランジスタQ5には常に一定の電流I
1が流れ、トランジスタQ7には常に一定の電流I
2が流れる。したがって、トランジスタQ1〜Q4は高速でON/OFF動作をすることができる。実施例3では、トランジスタQ5とトランジスタQ7のゲートを電圧V
Tに接続する構成となっており、所望の電流I
1と電流I
2を得るために、トランジスタQ5の並列度m
5とトランジスタQ7の並列度m
7を調整する。例えば、トランジスタQ5に流れる電流I
1を得るトランジスタQ5の並列度m
5がaだった場合、トランジスタQ7の並列度m
7は、m
7=(I
2/I
1)×aとすれば所望の電流I
2となる。
【実施例4】
【0052】
図9は、実施例4のE/Oコンバータ4の概略図である。実施例4では、終端回路の電圧レベルシフタに自動調整機能を持たせる。具体的には、負帰還のオペアンプを用いて、終端回路の抵抗Rの両端の電位差をゼロにする。
【0053】
E/Oコンバータ4は、光デバイス11と、可変電流源20Aと、終端回路30Bを有する。可変電流源20Aと終端回路30Bでドライバ回路10−4が形成される。可変電流源20Aは、実施例1と同じ可変電流源である。第1バイパス回路121により電流源123には常に一定の電流が流れ、第2バイパス回路122により電流源124に常に一定の電流が流れる構成となっている。
【0054】
終端回路30Bは、電流源31と、抵抗素子32と、自動調整機能付の電圧レベルシフタ131Bと、容量Cを有する。抵抗素子32は電流源31に対して並列に接続されている。抵抗素子32とV
DDの間に、電圧レベルシフタ131Bが接続されている。
【0055】
電圧レベルシフタ131Bは、抵抗素子32と直列に接続されるトランジスタ135、電圧平均化回路133、オペアンプ136、及び電圧平均化回路137を有する。トランジスタ135のコレクタはV
DDに接続され、エミッタは抵抗素子32に接続されており、コレクタ接地回路またはエミッタフォロワが形成されている。
【0056】
電圧平均化回路133はたとえばローパスフィルタ(LPF)であり、ドライバ回路10−4の出力電圧Voutを平滑化する。もうひとつの電圧平均化回路137は、たとえばローパスフィルタ(LPF)であり、トランジスタ135のエミッタと抵抗素子32の間のノードn2から取り出される電圧を平滑化する。電圧平均化回路133の出力は、オペアンプ136の一方の入力端子(非反転入力端子)に接続される。電圧平均化回路137の出力は、オペアンプ136の他方の入力端子(反転入力端子)に接続される。オペアンプの出力、すなわち平滑化された2つの電圧の差分は、トランジスタ135のベースに入力される。差分がゼロに近づくように制御することで、抵抗素子Rの両端の電位差をゼロに近づけて、直流電流が流れるのを防止する。
【0057】
AC的な電流は、トランジスタ135と並列に接続された容量Cを介して供給される。この構成により、光デバイス11(及び伝送路)とV
DD側のインピーダンスを整合させ、かつ抵抗素子32に直流電流が流れるのを防止できる。電圧レベルシフタ131Bは低速動作のため消費電流は少なく、数mA程度で設計可能であり、ドライバ回路10−4の消費電流への影響は少ない。
【実施例5】
【0058】
図10は、単相出力ドライバにおける終端の課題(b)を解決する別の手法を説明する図である。実施例2と実施例4では、V
DD側電流源と並列に抵抗素子32を挿入し、低インピーダンスの電圧レベルシフタを用いて抵抗素子32に流れる直流電流を防止した。
【0059】
実施例5では、抵抗素子32をドライバの出力電圧Voutの振幅と同レベルの別の電源電圧V
DD3に接続して、低インピーダンス接続を実現する。出力電圧Voutは入力データに応じて変化する高周波の駆動信号であるため、出力電圧Voutと電源電圧V
DD3の差に相当する分の電流が抵抗素子32に流れる。そこで、抵抗素子32に流れる電流量をV
DD側電流源を流れる電流から差し引く。
【0060】
実施例5のE/Oコンバータ5は、光デバイス11と、可変電流源20と、終端回路30Cを有する。可変電流源20と終端回路30Cで、差動入力・単相出力のドライバ回路10−5が形成される。
【0061】
終端回路30Cは、V
DD側の電流源34と、抵抗素子32を有する。抵抗素子32は電源電圧V
DD3に接続されている。抵抗素子32は電流源34に対して並列に接続されており、光デバイス11からみたときに抵抗素子32の抵抗値はRに近似する。したがって電流源34側のインピーダンスを光デバイス11と伝送線路の特性インピーダンスに整合させることができる。
【0062】
抵抗素子32には、V
DD3とVoutの差に相当する分の電流I
Rが流れる。電流I
Rの時間平均をI
Rバーとする。V
DD側の電流源34の本来の電流量をI
0とすると、抵抗素子32に流れる可変電流I
Rを補償するために、あらかじめI
0からI
Rバーを差し引いた電流I
0’を流す。これにより、可変電流源20には設計どおりの電流量I
0が供給される。
【実施例6】
【0063】
図11は、実施例6のE/Oコンバータ6の概略図である。実施例6では、実施例5の構成の終端回路に自動調整機能を持たせる。E/Oコンバータ6は、光デバイス11と、可変電流源20Aと、終端回路30Dを有する。可変電流源20Aと終端回路30Dでドライバ回路10−6が形成される。終端回路30Dは、電流源34と、抵抗素子32と、電流源34の電流量を制御する電流制御回路36を有する。実施例5と同様に、抵抗素子32は電流源34に対して並列に挿入され、かつドライバの出力電圧Voutとほぼ等しい電源電圧V
DD3に接続されている。
【0064】
電流制御回路36は、電圧平均化回路138と、差動入力ADC139を有する。電圧平均化回路138は、ドライバから単相の出力Voutを出力するノードn1に接続され、ノードn1の電圧、すなわちVoutを平滑化する。電圧平均化回路138の出力は、差動入力ADC139の入力端子Nに接続される。差動入力ADC139の他方の入力端子Pは電源電圧V
DD3に接続されている。差動入力ADC139は、VoutとV
DD3の差分をデジタル出力する。差分デジタル値は、電流制御信号として差分ADC139の出力端子Uから電流源34に供給される。電流源34は、入力される電流制御信号に応じて電流量を調整する。具体的には、本来の電流量I
0から抵抗素子32を流れる平均電流量I
Rバーを差し引いた量の電流を流す。可変電流源20Aに流れる電流は、抵抗素子32を流れる電流I
Rと足し合されて、設計された電流量I
0となる。これにより電流量が自動調整される。
【0065】
電流制御回路36は低速動作であり、数mA程度で設計可能である。したがって、ドライバ回路10−6の消費電流量への影響は少ない。電圧V
DD3は、V
DD3≒V
DD2≒Voutとなるように設定されてもよい。
【実施例7】
【0066】
図12は、実施例7のE/Oコンバータ7の概略図である。実施例7では、終端回路の電流を自動調整する電流制御回路の別の構成例を示す。
【0067】
E/Oコンバータ6は、光デバイス11と、可変電流源20Aと、終端回路30Eを有する。可変電流源20Aと終端回路30Eでドライバ回路10−7が形成される。終端回路30Eは、電流源31と、抵抗素子32と、電流源34の電流量を制御する電流制御回路37を有する。抵抗素子32は電流源31に対して並列に挿入され、かつドライバの出力電圧Voutとほぼ等しい電源電圧V
DD3に接続されている。
【0068】
電流制御回路37は、電圧平均化回路138と、トランスコンダクタンス・アンプ141を有する。電圧平均化回路138は、出力Voutが取り出されるノードn1に接続され、Voutを平滑化する。電圧平均化回路138の出力は、トランスコンダクタンス・アンプ141の入力端子Nに接続される。トランスコンダクタンス・アンプ141の他方の入力端子Pは電源電圧V
DD3に接続されている。トランスコンダクタンス・アンプ141は、電源電圧V
DD3と出力電圧Voutの平均電圧の電位差ΔVを相互コンダクタンス(gm)=1/Rで電圧電流変換する。トランスコンダクタンス・アンプ141の一方の出力端子はノードn1に接続され、他方の出力端子Uは電源電圧V
SSに接続されており、ノードn1からV
SSに差電流が流れる。
【0069】
電流源31は一定の電流I
0を流すが、抵抗素子32を流れる電流I
Rに追従して、平均電流I
Rバーがノードn1からV
SSに分岐する。したがって、ノードn1から可変電流源20Aに向かって流れる電流量は、I
0−I
Rバー=I
0’となる。他方、抵抗素子32を流れる電流I
RがI
0’に合流するので、可変電流源20Aと光デバイス11に供給される電流量は、設計された電流量I
0となる。これにより電流量が自動調整される。
【0070】
電流制御回路37は数mA程度で設計可能であり、ドライバ回路10−7の消費電流量への影響は少ない。
【0071】
<光伝送装置への適用>
図13は、実施形態のE/Oコンバータが適用される一例である光伝送装置100の概略図である。光伝送装置100は、光送信モジュール101と、光受信モジュール103と、これらの間を接続する光ファイバ102を有する。光伝送装置100は、たとえば計算機間を接続する光伝送ケーブルとして用いられる。
【0072】
光送信モジュール101は、E/Oコンバータ110と、光学系120と、コネクタ130を有する。コネクタ130は電気コネクタであり、計算機、LSI等からの入力データ(電気信号)を送信回路115へ接続する。
【0073】
E/Oコンバータ110は、発光素子111と、送信回路115を有する。送信回路115は、発光素子111を駆動する差動入力かつ単相出力のドライバ回路10を含む。コネクタ130を介して、ドライバ回路10をもつ送信回路115にデータが入力される。ドライバ回路10として実施形態1〜7のドライバ回路10−1〜10−7のいずれを用いてもよい。ドライバ回路10からの出力信号により発光素子111が駆動される。発光素子111は温度調整機能付のマウントに搭載されていてもよい。発光素子111と送信回路115は、ワイヤボンディング等で接続されていてもよい。
【0074】
光学系120はレンズ113を含み、発光素子111から出力される光を光ファイバ102に結合する。光学系120は、レンズ125の他にプリズム、ミラー等を含んでいてもよい。
【0075】
光ファイバ102を伝送する光信号は、光受信モジュール103で受光される。光受信モジュール103は、光学系120と、O/Eコンバータ140と、コネクタ130を有する。O/Eコンバータ140は、受光素子112と受信回路116を有する。
【0076】
光学系120はレンズ114を含み、光ファイバ102を伝搬してきた光を受光素子112に結合する。受光素子112は受光量に応じた光電流を出力する。受信回路116は光電流を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプを含む。電圧信号はコネクタ130から別の計算機、LSI等に出力される。
【0077】
光送信モジュール101では、差動入力・単相出力のドライバ回路を用いて発光素子111が駆動されるので、低消費電流での高速駆動が可能である。単相出力構成で、信号源と発光素子111及び伝送線路のインピーダンス不整合が終端されており、送信回路115から発光素子111まで効率のよい電気伝送が行われる。
【0078】
図14は、光伝送装置の別の例として、光ケーブルコネクタ240付きの光トランシーバモジュール200を示す。光トランシーバモジュール200は、光送信サブアセンブリ(TOSA:Transmission Optical Sub-Assembly)201、光受信サブアセンブリ(ROSA(Receiver Optical Sub-Assembly)202、及び電気IC203を有する。
【0079】
光送信サブアセンブリ201には、レーザ、光変調器、モニタ用フォトダイオード等が含まれる。光受信サブアセンブリ202には、受光素子、TIAなどが含まれる。電気ICは、実施形態のドライバ回路10と、後置増幅回路、マイクロコントローラ等を含む。電気IC203に含まれるドライバ回路を、TOSA201のパッケージ内部に配置してドライバ内蔵型の光送信モジュールを形成してもよい。
【0080】
電気IC203の側に電気コネクタ230が設けられ、TOSA及びROSAの側に光ケーブルコネクタ240が接続されている。光ケーブルコネクタ240は、複数の光ファイバ242が被覆テープでまとめられたファイバリボン241を有し、複数チャネルでの光伝送を行う。
【0081】
光ケーブルコネクタ240の反対側の端部に、別の光トランシーバモジュール200が接続されている。コネクタ230をサーバ、計算機等の機器の電気コネクタと嵌合させことで、機器間で低消費電流かつ高速の光通信が行われる。
【0082】
以上、特定の実施例に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は実施例のみに限定されず多様な変更例を含む。たとえば、
図8の可変電流源20BのトランジスタQ1〜Q7のすべてを電界効果型のトランジスタで形成してもよい。
図8及び
図9のトランジスタ135として電界効果トランジスタを用い、ドレイン接地回路またはソースフォロワとして機能させてもよい。
図11の電流制御回路36でデジタル出力の差動入力A/Dコンバータに替えて、アナログ出力の差動入力アンプを用いてもよい。各実施例の終端回路30A〜30Eと、可変電流源20A及び20Bはどのように組み合わせてもよい。駆動対象の光デバイスとして、VCSEl等の発光素子に限定されず、単相駆動型の外部光変調器であってもよい。この場合も、実施形態のドライバ回路を用いることで、低消費電流の高速駆動が実現する。
【0083】
以上の説明につき、以下の付記を呈示する。
(付記1)
可変電流源と、
終端回路と、
光デバイスを駆動する駆動信号が出力される単一の出力ノードと、
を有する差動入力・単相出力の駆動回路であって、
前記可変電流源は、
外部から第1信号が入力される第1入力ノード(SW1)に接続される第1電流源と、
外部から前記第1信号の反転信号である第2信号が入力される第2入力ノード(SW2)に接続される第2電流源と、
前記第1電流源と前記第1入力ノードの間に接続され、前記第2信号の値に応じて切り替わる第1バイパス回路と、
前記第2電流源と前記第2入力ノードの間に接続され、前記第1信号の値に応じて切り替わる第2バイパス回路と、
を有し、
前記単一の出力ノードから、前記第1信号の値に応じた駆動信号が出力される
ことを特徴とする駆動回路。
(付記2)
前記第1バイパス回路は、前記第1入力ノードが導通するときにオフになり、
前記第2バイパス回路は、前記第2入力ノードが導通するときにオフになり、
前記第1電流源には、前記第1信号の電位にかかわらず一定量の第1電流が流れ、
前記第2電流源には、前記第2信号の電位にかかわらず、前記第1電流と異なる一定量の第2電流が流れる、
ことを特徴とする付記1に記載の駆動回路。
(付記3)
前記第1入力ノードが導通するときに、前記単一の出力ノードから前記第2電流の駆動信号が出力され、
前記第2入力ノードが導通するときに、前記単一の出力ノードから前記第1電流の駆動信号が出力されることを特徴とする付記1または2に記載の駆動回路。
(付記4)
前記終端回路は、
第1電源電圧(V
DD)に接続される第3電流源と、
前記第3電流源と並列に接続され、前記出力ノードから取り出される前記駆動信号の平均電圧値に略等しい第2電源電圧(V
DD3)に接続される抵抗素子と、
前記抵抗素子を流れる電流に応じて前記第3電流源を流れる電流値を可変に制御する電流制御回路と、
を有することを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載の駆動回路。
(付記5)
前記電流制御回路は、
前記第2電源電圧(V
DD3)に接続される第1の入力端子と、前記平均電圧値に接続される第2の入力端子と、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子の間の電圧差を表わす制御信号を前記第3電流源に出力する出力端子とを有する差動回路、
を有することを特徴とする付記4に記載の駆動回路。
(付記6)
前記終端回路は、
第1電源電圧(V
DD)に接続される定電流源と、
前記定電流源と並列に接続され、前記出力ノードから取り出される前記駆動信号の平均電圧値に略等しい第2電源電圧(V
DD3)に接続される抵抗素子と、
前記抵抗素子を流れる電流に応じて、前記定電流源から流れる定電流の一部を分岐して別経路に流す電流制御回路と、
を有することを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載の駆動回路。
(付記7)
前記電流制御回路は、前記第2電源電圧(V
DD3)に接続される第1の入力端子と、前記平均電圧値に接続される第2の入力端子とを有し、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子の間の電圧差に応じた電流値を分岐して接地回路に流すトランスコンダクタンス・アンプを有することを特徴とする付記6に記載の駆動回路。
(付記8)
前記終端回路は、
第1電源電圧(V
DD)に接続される第3電流源と、
前記第1電源電圧と前記出力ノードの間で、前記第3電流源と並列に接続される抵抗素子と、
前記抵抗素子の前記第1電源電圧の側で前記抵抗素子に直列接続され、前記抵抗素子のインピーダンスよりも低いインピーダンスを有し、前記抵抗素子の両端の電圧を均等にする電圧レベルシフタと、
を有することを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載の駆動回路。
(付記9)
前記電圧レベルシフタは、
前記抵抗素子の前記第1電源電圧の側で前記抵抗素子に直列接続されるトランジスタ、
を有し、前記トランジスタのベースまたはゲートに前記出力ノードに現れる電圧値と前記トランジスタの閾値電圧の総和が印加されることを特徴とする付記8に記載の駆動回路。(付記10)
前記電圧レベルシフタは、
前記抵抗素子の前記第1電源電圧の側で前記抵抗素子に直列接続されるトランジスタ、
を有し、前記トランジスタのベースまたはゲートに、前記出力ノードに現れる電圧と、前記トランジスタと前記抵抗素子の間のノードの電圧の差分電圧が負帰還されることを特徴とする付記8に記載の駆動回路。
(付記11)
付記1〜10のいずれかに記載の駆動回路と、
前記駆動回路によって駆動される光デバイスと、
を有することを特徴とする光送信モジュール。
(付記12)
付記11に記載の光送信モジュールと、
光受信モジュールと、
前記光送信モジュールと前記光受信モジュールの間を接続する光ファイバと、
を有することを特徴とする光伝送装置。