(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記印刷部よりも搬送方向上流側において、前記搬送部で搬送される前記基材に対して樹脂をコーティングするコーティング部を備えることを特徴とする請求項1記載の壁紙製造装置。
前記エンボス部よりも搬送方向上流側において、前記搬送部で搬送される前記基材に対して発泡加工を行う発泡部を備えることを特徴とする請求項4記載の壁紙製造装置。
前記印刷部よりも搬送方向下流側において、前記搬送部で搬送される前記基材に対して接着剤を塗布する接着剤塗布部を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の壁紙製造装置。
前記印刷部は、前記搬送部で搬送される前記基材の印刷画像を検査するためのインラインセンサーを備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の壁紙製造装置。
前記印刷部は、前記搬送部で搬送される前記基材に対して温度制御を行う温度制御部を備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の壁紙製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[壁紙製造装置の概略構成]
以下、本発明に係る実施の形態である壁紙製造装置1を図面に基づいて説明する。
図1は壁紙製造装置1の概略構成図である。
【0023】
壁紙製造装置1は、壁紙の材料となる基材Sを繰り出す繰り出し部101と、基材Sを平面状に広げた状態で搬送する搬送部10と、搬送部10で搬送される基材Sに対して樹脂をコーティングするコーティング部40と、搬送部10で搬送される基材Sに対して印刷を行う印刷部20と、搬送部10で搬送される基材Sに対して発泡加工を行う発泡部50と、搬送部10で搬送される基材Sに対してエンボス加工を行うエンボス部60と、印刷部20よりも搬送方向下流側において、搬送部10で搬送される基材Sに対して接着剤を塗布する接着剤塗布部70と、搬送部10の搬送方向終端部で基材Sを巻き取る巻き取り部102と、印刷と基材Sの搬送の動作制御を行う制御装置90とを備えている。
【0024】
上記搬送部10は、繰り出し部101から巻き取り部102の間で基材Sの搬送を行う。
そして、搬送部10による繰り出し部101から巻き取り部102までの搬送経路において、搬送方向上流側から搬送方向下流側に向かって、コーティング部40、印刷部20、発泡部50、エンボス部60、接着剤塗布部70が順番に並んで配置されている。
従って、搬送部10により繰り出し部101から巻き取り部102に搬送されるまでの間で、基材Sに対して上記各部によるコーティング工程、印刷工程、発泡工程、エンボス加工工程、接着剤塗布工程の各工程が順番に実施される。
【0025】
[基材]
壁紙の基材Sは長尺帯状のシート体であり、製造開始前は芯に巻かれたロールR1の状態を呈している。かかる基材Sは、紙、フリース、ビニール、不織布等からなる。
ロールR1は、基材Sの長手方向に直交する方向に沿った中心軸回りに基材Sを巻いた状態となっている。ロールR1の外周面側となる面に対して印刷が行われる。
【0026】
[繰り出し部]
繰り出し部101は、前述した基材SのロールR1をその中心軸を水平に向けた状態で回転可能に保持している。この繰り出し部101は、ロールR1を回転させて基材Sを繰り出す駆動源となる図示しないモーターと、ロールR1から引き出された基材Sが受ける張力を検出する図示しないセンサーとを備えている。
そして、繰り出し部101は、搬送方向下流側の搬送部10の搬送により基材Sが張力を受けると、当該張力に応じてロールR1から基材Sが繰り出されるようにモーターの駆動制御を実行する。
【0027】
繰り出し部101から繰り出された基材Sは、搬送部10によって、そのシート平面が水平面に沿って広げられた状態で次工程であるコーティング部40に向かって搬送される。
後述する第一の搬送速度は、コーティング部40における基材Sの適正な搬送速度と一致している。
なお、本実施形態の記載において、搬送部10によって搬送される基材Sの平面に平行であって基材Sの長手方向を搬送方向又はY方向、搬送される基材Sの平面に平行であって搬送方向に直交する方向を基材Sの幅方向又はX方向、搬送される基材Sの平面に垂直な方向をZ方向とする。
【0028】
[コーティング部]
コーティング部40は、搬送部10によって搬送される基材Sの印刷面側(搬送時における上面側)に対して、耐久性、耐候性、対刷性等の向上を図るために所定の下地層の形成を行う。
コーティング部40は、上記下地層を形成する下地形成装置41と、その搬送方向下流側に設けられた乾燥装置42とを備えている。
下地層の形成材料としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等が好適である。
また、下地形成装置41は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材Sの印刷面の全幅又は印刷可能範囲の全体に渡って下地層をコーティングする。
そして、下地形成装置41の搬送方向下流側に配置された乾燥装置42は、下地形成装置41により下地層がコーティングされた基材Sの印刷面側を加熱する熱源を備えており、加熱乾燥により、下地層のコーティングを基材Sに定着させる。
【0029】
[印刷部]
印刷部20は、基材Sに対して温度制御を行う温度制御部21と、基材Sの印刷面に対して画像(模様及び模様のない着色面を含む、以下、同じ)を形成する複数のヘッドユニット20Hと、インラインセンサー23と、定着部24とを備えており、これらは搬送方向上流側から下流側に向かって温度制御部21、各ヘッドユニット20H、インラインセンサー23、定着部24の順番で並んで配置されている。
【0030】
温度制御部21は、搬送部10によって搬送される基材Sに対して印刷面側に接する加熱ローラー211と、基材Sを加熱ローラー211側に圧接させる加圧ローラー212とを備えており、搬送される基材Sを加熱ローラー211と加圧ローラー212との間を通過させて基材Sの加熱を行う。
加熱ローラー211は内部に温度制御可能な熱源を備え、当該加熱ローラー211の搬送方向のすぐ下流側には基材Sの温度を検出する図示しない温度センサーが設けられている。
温度制御部21では、制御装置90により、温度センサーの検出に基づいて基材Sが目標とする温度を維持するように加熱制御が行われる。
なお、この場合の目標温度は、ヘッドユニット20Hから吐出されるインクのブリードやビーディング等の発生を抑えて良好な画像形成を行うための適正温度が選択される。
【0031】
ヘッドユニット20Hは、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクに個別に対応して四基設けられており、これらのヘッドユニット20Hは基材Sの印刷面に対向し、基材Sの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。なお、ヘッドユニット20Hの数は3つ以下又は5つ以上であってもよく、また、インクの色彩も上記に限らず、任意に変更可能である。
【0032】
図2(A)は、ヘッドユニット20Hを正面から見た場合の内部構成の概略図、
図2(B)は、ヘッドユニット20Hを搬送部10によって搬送される基材Sの印刷面側から見た場合の内部構成の概略図である。
なお、ヘッドユニット20Hを正面から見た場合とは、搬送部10によって搬送される基材Sの搬送方向と平行な方向からヘッドユニット20Hを見た場合をいう。
【0033】
ヘッドユニット20Hは、インクを吐出する複数の記録素子が各々設けられた複数の記録ヘッド22を有する。記録素子は、それぞれ、インクを貯留する圧力室(チャネル)と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、圧電素子に電圧を印加して電界を生じさせるための電極と、圧力室に連通し圧力室内のインクを吐出するノズル221とを有する。記録素子の電極に、圧電素子を変形動作させる駆動波形の電圧信号が印加されると、この電圧信号に応じて圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、当該圧力の変化に応じて圧力室に連通するノズル221からインクが吐出される。記録ヘッド22では、複数のノズル221がX方向(基材Sの幅方向に一致)に沿って2列に配列されて2つのノズル列を構成しており、これら2つのノズル列は、X方向についてノズル221の配置間隔の2分の1だけ互いにずれた状態で配置されている。
【0034】
ヘッドユニット20Hでは、記録ヘッド22が2つずつ組み合わされてヘッドモジュール22M(インク吐出部)が構成され、このヘッドモジュール22Mが千鳥格子状に配列されている。各ヘッドモジュール22Mでは、2つの記録ヘッド22のノズル221がX方向について交互に配置されるような位置関係で記録ヘッド22が配置されている。ヘッドユニット20Hに設けられるヘッドモジュール22Mの数は、特には限られないが、本実施形態では24個とされている(
図2ではヘッドモジュール22Mの数は少なく図示されている)。このような記録ヘッド22の配置により、ヘッドユニット20Hに含まれるノズル221のX方向についての配置範囲が、搬送部10により搬送される基材Sのうち印刷可能な領域のX方向の全幅(基材SのX方向の全幅又はこれより幾分狭い範囲である印刷可能幅)をカバーするようになっている。ヘッドユニット20Hは、画像の記録時には位置が固定されて用いられ、基材Sの搬送に応じて搬送方向の異なる位置に所定の間隔(搬送方向間隔)で順次インクを吐出していくことで、シングルパス方式で画像を記録する。
即ち、ヘッドユニット20Hは、ライン式の記録ヘッドユニットであり、シャトル型インクジェット印刷方式のように、画像の記録時に、基材の搬送方向を副走査方向とした場合にこれと直交する主走査方向にヘッドを移動させる動作は行われない。
【0035】
図2(A)に示されるように、記録ヘッド22は、記録ヘッド22内に供給されるインクが流入するインレット223と、記録ヘッド22から排出されるインクが流出するアウトレット224などを有する。
図3は、記録ヘッド22内のインク流路を正面から見た断面図である。
記録ヘッド22内のインク流路は、インレット223及びアウトレット224が接続される共通インク室222と、各ノズル221からインクを吐出するヘッドチップ225とを有する。
インレット223から流入したインクは、共通インク室222に送られる。共通インク室222には、インク内の夾雑物の通過を防ぐフィルター226が設けられており、インレット223は、フィルター226の一方側(上流インク室2221)に連通する。アウトレット224は、フィルター226に対してインレット223と同一の側(上流インク室2221)に設けられた第1アウトレット2241と、フィルター226を挟んでインレット223とは反対側(下流インク室2222)に設けられた第2アウトレット2242とからなる。
【0036】
ヘッドチップ225は、複数の記録素子に各々対応して設けられた複数の素子対応流路2251(圧力室)と、当該複数の素子対応流路2251に連通するノズル221などを備え、これらのノズル221の開口部からインクを吐出させる。素子対応流路2251の位置は、下流インク室2222の貫通孔2222aの位置と一致するように取り付けられることで、共通インク室222のインクが各ノズル221に分配される。
【0037】
なお、各ヘッドユニット20Hは、個別にインク供給機構が接続されており、ヘッドユニット20Hごとに個別に対応する色彩のインクが供給される。
各ヘッドユニット20Hで吐出されるインクは、温度によってゲル状又は固体状と、液状とに相変化し、40℃以上、100℃未満に相転移点を有するインクである。
【0038】
インラインセンサー23は、複数のヘッドユニット20Hにおける搬送部10によって搬送される基材Sの搬送方向Yの直下流に配置されており、搬送される基材Sの印刷面における印刷可能幅の範囲を一度に読み取ることが可能なラインセンサーである。
インラインセンサー23による読み取りデータは、制御装置90に入力され、基材Sの印刷画像の画質や印刷位置の検査、画欠検査等の印刷画像の検査、あるいは基材Sの異常検出などに用いられる。
【0039】
前述した定着部24は、インラインセンサー23に対して、基材Sの搬送方向Yの直下流に配置されており、搬送される基材Sの印刷面を照射する。定着部24は、例えば、紫外線等のエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段としてのUV(紫外線)光源を備えている。定着部24のUV光源は、搬送部10によって搬送される基材Sの全幅にわたってエネルギー線を照射するようにX方向に並んで複数設けられている。
この定着部24により、各ヘッドユニット20Hにより基材Sの印刷面に形成された画像のインクの硬化を促進し、画像の定着を図ることができる。
【0040】
[発泡部]
発泡部50は、印刷部20に対して基材Sの搬送方向下流側に配置されている。そして、発泡部50は、アゾ系化合物熱分解型化学発泡剤や熱膨張型マイクロカプセル発泡剤等からなる発泡剤を含んだポリ塩化ビニル樹脂またはアクリル系樹脂等からなる樹脂材料をダイコート法、コンマコート法或いはその他のコート法により基材Sの印刷面側に層状に形成する塗布装置と、形成された樹脂層を所定の目標温度(例えば、およそ200°)で加熱する発泡炉とを備えている。
塗布装置は、基材Sに対してX方向の全幅又は少なくとも印刷可能幅の全幅に渡って上述の樹脂を塗布する。
これらの構成により、基材Sの印刷面に形成された発泡剤を含む樹脂層を加熱することで発泡層を形成することができる。
【0041】
[エンボス部]
エンボス部60は、発泡部50に対して基材Sの搬送方向下流側に配置されている。そして、エンボス部60は、搬送部10によって搬送される基材Sに対して印刷面側に接するエンボスローラー61と、基材Sをエンボスローラー61側に圧接させる加圧ローラー62とを備えている。
エンボスローラー61は、基材Sの印刷面上に形成すべき凹凸形状に対応して凹凸が反転して形成された凹凸形状がその外周面上に形成されている。
エンボスローラー61と加圧ローラー62は、いずれも、X方向について基材Sの全幅を挟んで通過させることが可能な幅を有している。
そして、加圧ローラー62によりエンボスローラー61側に押圧された基材Sが、エンボスローラー61と加圧ローラー62の隙間を通過することにより、発泡部50により形成された基材Sの印刷面上の樹脂層にエンボスローラー61の外周面上の凹凸形状が押し込まれて、形成すべき凹凸形状が転写形成される。
【0042】
また、エンボス部60に対して基材Sの搬送方向下流側には、搬送部10により搬送される基材Sの発泡部50により形成された樹脂層を冷却する冷却部65が設けられている。
冷却部65は、搬送部10によって搬送される基材Sに対して印刷面側に接する冷却ローラー66と、基材Sを冷却ローラー66側に圧接させる加圧ローラー67とを備えている。
冷却ローラー66と加圧ローラー67は、いずれも、X方向について基材Sの全幅を挟んで通過させることが可能な幅を有している。
冷却ローラー66は、空冷、水冷或いは冷却素子により冷却可能であって熱伝導率の高い材料から形成されており、加圧ローラー67により基材Sの印刷面側の樹脂層が冷却ローラー66に圧着することにより当該樹脂層を冷却する。
これにより、エンボス部60により形成された凹凸形状を維持して樹脂層を硬化させることができる。
なお、上述した発泡部50とエンボス部60と冷却部65とからなる構成をエンボス加工部6を総称する場合がある(
図4参照)。
【0043】
[接着剤塗布部]
接着剤塗布部70は、基材Sの印刷面と逆側の裏面(以下、「基材Sの裏面」という)に、壁紙として壁面に貼り付ける際に、壁面に接着するための接着剤層を形成するためのものであり、発泡部50に対して基材Sの搬送方向下流側に配置されている。
そして、この接着剤塗布部70は、アクリル系、ゴム系又はシリコーン系の粘着性の接着剤をダイコート法、その他のコート法により基材Sの裏面側に層状に形成する塗布装置71と、形成された接着剤層を加熱する加熱部72とを備えている。
これらの構成により、基材Sの裏面に接着剤層を形成し、加熱することにより軟化させて、層圧の均一化を図りやすい状態にすることができる。
なお、接着剤塗布部70には、基材Sの接着剤層の接着面に基材Sと同一幅の剥離シートを貼着する剥離シート貼着装置を付加しても良い。この接着剤塗布部70の次工程において、基材Sの巻き取りが行われるが、その際に、基材Sの接着剤層の接着面に剥離シートを介在させることで、基材Sの印刷面に直接的に接着剤層が付着することを回避することができる。
【0044】
[巻き取り部]
巻き取り部102は、接着剤塗布部70に対して基材Sの搬送方向下流側に配置されている。
巻き取り部102は、コーティング工程、印刷工程、発泡工程、エンボス加工工程、接着剤塗布工程を経た基材Sを巻き取り、基材SのロールR2を形成する。基材SのロールR2は、その中心軸がX方向に水平となる状態で回転可能な状態で巻き取り部102に保持される。
この巻き取り部102は、ロールR2を回転させて基材Sを繰り出す駆動源となる図示しないモーターと、ロールR2の手前の基材Sの弛みを検出する図示しないセンサーとを備えている。
そして、巻き取り部102は、ロールR2の手前で基材Sに弛みが検出されると、弛みがなくなるようモーターを速度制御を行いつつ基材Sの巻き取りを実行する。
【0045】
[搬送部]
搬送部10は、繰り出し部101から巻き取り部102に到るまでの搬送経路において基材Sの印刷面が水平状態を維持して当該基材Sが搬送されるように、その搬送経路に沿って並んで設けられた四つの中継ローラー111〜114及び四つの搬送ローラー対121〜124と、各搬送ローラー対121〜124を個別に駆動する図示しない搬送モーター及びその回転量を検出する図示しないエンコーダーとを備えている。
【0046】
中継ローラー111,112は、基材Sの裏面に下から接して搬送方向下流側に向かって搬送を行い、中継ローラー113,114は、基材Sに対して印刷面に上から接して搬送方向下流側に向かって搬送を行う。
搬送ローラー対121〜124は、いずれも、搬送される基材Sの印刷面に当接する上ローラーと基材Sの裏面に当接する下ローラーとからなり、上ローラーと下ローラーで基材Sを挟んで搬送するので、基材Sの剛性によって撓みを生じた場合でも当該基材Sが上ローラー又は下ローラーから離間することを防止することができ、安定的に目標とする搬送速度で基材Sを搬送することができる。
なお、搬送ローラー対121〜124の上ローラーと下ローラーは、いずれか一方が搬送モーターによりトルクが付与されており、他方は従動回転を行う。
【0047】
また、繰り出し部101から巻き取り部102に到るまでの搬送経路は、繰り出し部101から印刷部20の手前まで基材Sを搬送する第一の搬送区間F1と、印刷部20の全体に対して基材Sを搬送する第二の搬送区間F2と、印刷部20を通過した位置から巻き取り部102まで基材Sを搬送する第三の搬送区間F3の三つの区間からなる。
そして、中継ローラー111と搬送ローラー対121とが第一の搬送区間F1内に配置され、これらは「第一の搬送部」を構成する。また、搬送ローラー対121は第一の搬送区間F1の搬送方向下流側の端部に配置されている。
また、中継ローラー112と搬送ローラー対122,123とが第二の搬送区間F2内に配置され、これらは「第二の搬送部」を構成する。また、搬送ローラー対122は第二の搬送区間F2の搬送方向上流側の端部に配置され、搬送ローラー対123は第二の搬送区間F2の搬送方向下流側の端部に配置されている。
また、中継ローラー113,114と搬送ローラー対124とが第三の搬送区間F3内に配置され、これらは「第三の搬送部」を構成する。また、搬送ローラー対124は第三の搬送区間F3の搬送方向上流側の端部に配置されている。
【0048】
そして、第一の搬送区間F1内に配置された搬送ローラー対121は規定の搬送速度(第一の搬送速度とする)で基材Sを搬送させる。
また、第二の搬送区間F2内に配置された搬送ローラー対122,123は、制御装置90により制御され、規定の搬送速度(第二の搬送速度とする)で基材Sを連動搬送させる。
また、第三の搬送区間F1内に配置された搬送ローラー対124は、規定の搬送速度(第三の搬送速度とする)で基材Sを搬送させる。
【0049】
また、第一の搬送速度と第二の搬送速度とが異なる速度に設定された場合には、第一の搬送区間F1と第二の搬送区間F2の境界に配置された搬送ローラー対121と搬送ローラー対122との間で基材Sは弛みを生じる場合がある。
同様に、第二の搬送速度と第三の搬送速度とが異なる速度に設定された場合には、第二の搬送区間F2と第三の搬送区間F3の境界に配置された搬送ローラー対123と搬送ローラー対124との間で基材Sは弛みを生じる場合がある。
【0050】
そして、搬送ローラー対121と搬送ローラー対122の間には、上記第一の搬送速度と第二の搬送速度の差によって基材Sに弛みが生じた場合に当該弛みの長さを検出する弛み検出部としての弛みセンサー125が装備されている。
この弛みセンサー125は、下方に弛んだ基材の長さを光学的に検出するセンサーである。
【0051】
[壁紙製造装置の制御系]
図4は壁紙製造装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
制御装置90は、CPU91(Central Processing Unit)、RAM92(Random AccessMemory)、ROM93(Read Only Memory)及び記憶部94を有する。
CPU91は、ROM93に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM92に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。また、CPU91は、壁紙製造装置1の全体動作を統括制御する。
RAM92は、CPU91に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM92は、不揮発性メモリーを含んでいても良い。
ROM93は、CPU91により実行される各種制御用のプログラムや設定データなどを格納する。なお、ROM93に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
記憶部94には、基材Sに対して印刷部20が印刷を行う画像に係る画像データ、及び各種設定データなどが記憶される。記憶部94としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されても良い。
【0052】
壁紙製造装置1は、前述したように、繰り出し部101と、コーティング部40の下地形成装置41及び乾燥装置42と、印刷部20の温度制御部21、四つのヘッドユニット20H(一つのみ図示)、インラインセンサー23及び定着部24と、エンボス加工部6と、接着剤塗布部70の塗布装置71及び加熱部72と、巻き取り部102と、搬送部10の各搬送ローラー対121〜124及び弛みセンサー125とを備えている。
そして、これらの内で、印刷部20の各構成及び搬送部10の搬送ローラー対122,123及び弛みセンサー125は、制御装置90とバス95を介して接続され、相互に信号の送受信を行うことができる。なお、上記各構成は図示しないインターフェイスを介して制御装置90に接続されている。
【0053】
また、制御装置90には、バス95及び図示しないインターフェイスを介して、操作表示部96及び通信部97が接続されている。
操作表示部96は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネルといった入力装置とを備える。操作表示部96は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御装置90に出力する。
【0054】
通信部97は、通信ネットワークNを介して外部の装置(例えば、サーバ装置98)と制御装置90との間の通信を確立する。
例えば、制御装置90は、通信ネットワークNを通じて外部のサーバ装置98と通信を行い、サーバ装置98から印刷の画像データを取得して記憶部94に格納し、当該画像データに基づいて基材Sに対する印刷を行うことができる。
【0055】
[基材の搬送制御]
制御装置90が行う基材Sの搬送制御について説明する。ここで第一の搬送区間F1に配置された第一の工程部としてのコーティング部40における基材Sの搬送速度を第一の搬送速度とし、第二の搬送区間F2に配置された第二の工程部としての印刷部20における基材Sの搬送速度を第二の搬送速度とし、第三の搬送区間F3に配置された第三の工程部としての発泡部50、エンボス部60、接着剤塗布部70における基材Sの搬送速度を第三の搬送速度とする。
【0056】
壁紙製造装置1は、印刷部20の各ヘッドユニット20Hがシングルパス方式で画像を記録するライン式の記録ヘッドユニットであることから、基材Sの印刷面に対して従来よりも高速で印刷を行うことができ、これに伴い、基材Sの搬送速度も高速化を図ることができる。
しかし、印刷部20は、圧電素子を利用したヘッドユニット20Hにより印刷を行うことから、ヘッドユニット20Hの構造に起因した共鳴時間(AL)に応じた吐出時間間隔に制限される。例えば共鳴時間ALが2[μsec]のヘッドユニット20Hの場合、インクを適切に射出させる為の最小吐出時間間隔は5ALであり、その次に速く吐出させるには7ALであり、と非連続的に決定される。つまり、印刷部20における印刷中の第二の搬送速度は、上記吐出時間間隔と記録密度(ドット間隔)とによって決定され、容易に変更することができず、第二の搬送速度を自在に低速にすることが困難である。
【0057】
一方、第一の工程部のコーティング部40と、第三の工程部の発泡部50、エンボス部60、接着剤塗布部70は、適正な搬送速度が決まっており、印刷部20における搬送速度のように高速で搬送することはできない。
このため、搬送部10は、次式のように、第二の搬送速度が最も速く、第一の搬送速度と第三の搬送速度とは速度が等しくかつ第二の搬送速度よりも遅い速度に設定されている。
(第二の搬送速度)>(第一の搬送速度)=(第三の搬送速度)
従って、連続する基材Sの搬送速度が搬送区間F1〜F3ごとに異なることにより、基材Sに引っ張り等が生じないように、制御装置90は、第二の搬送区間F2において間欠搬送を行い、第二の搬送区間F2の搬送停止中に基材Sに弛みを形成し、第二の搬送区間F2の搬送中に基材Sの弛みを消費する間欠搬送制御を実施する。
【0058】
また、ここで、基材Sに印刷する画像の例を
図5に示し、その部分拡大図を
図6に示す。
壁紙の材料となる基材Sの印刷面には、その搬送方向に沿って一定のパターン画像Pが繰り返し長さL単位で搬送方向に沿って繰り返し印刷される。
さらに、
図6に示すように、連続するパターン画像Pはその終了端部Peの手前に基準マークMが形成され、隙間Bを空けて次のパターン画像Pの開始端部Psの印刷が開始される場合を例示している。
この基準マークMは印刷後のエンボス加工やカット位置の基準となるべきものであり、搬送方向について、パターン画像Pが繰り返し印刷される繰り返し長さLと同じ間隔で基材Sの印刷面上に形成される。
なお、
図6の例では、パターン画像Pの終了端部Peの搬送方向上流側近傍に形成される場合を例示しているが、これに限られず、隙間B内やパターン画像Pの開始端部Psの搬送方向下流側近傍に形成しても良い。さらに、隙間Bを基準マークMとしても良い。
また、隙間Bを設けることなく、次のパターン画像Pの印刷を開始しても良い。
【0059】
前述したように、壁紙製造装置1では、基材Sに対して、第一の搬送区間F1と第三の搬送区間F3とで連続的に同じ速度で搬送を行い、かつ、これらの区間F1,F3では連続的にコーティング工程、発泡工程、エンボス工程、接着剤塗布工程が実行される。
そして、第二の搬送区間F2では、制御装置90の制御により、第一の搬送区間F1と第三の搬送区間F3より高速で基材Sの搬送を間欠的に行うと共に、搬送中に印刷工程を行い、停止中に第一の搬送区間F1と第二の搬送区間F2の間で基材Sに弛みを形成し、第一の搬送区間F1と第二の搬送区間F2の搬送速度の差によって基材Sに不要な張力が生じないように、バッファとなる余長を確保する。
【0060】
基材Sの間欠搬送における搬送の一時停止が、印刷部20による印刷パターン画像Pの途中で生じると、画質を完全に一致させて印刷を再開することは難しいので、パターン画像Pと次のパターン画像Pとの境界、例えば、隙間Bにおいて搬送の一時停止を実施することが重要である。
さらに、基材Sの搬送の一時停止の際には、終端画像処理と搬送速度を漸減させる減速動作が必要となり、基材Sの搬送の再開時には、搬送速度を漸増させる加速動作が必要となる。前述したように、印刷工程の際には、搬送速度は適正値に維持する必要があるので、搬送の減速動作中と加速動作中は印刷を実行することはできない。
【0061】
図7は、第二の搬送区間F2における搬送の一時停止から再開にかけて行われる画像の終端画像処理と搬送速度の減速動作及び加速動作における基材Sの速度変化を上段に、位置変化を下段に記載した線図である。上段において横軸は時間、縦軸は搬送速度を示し、下段において横軸は時間、縦軸は搬送動作量を示している。また、上段において0より上は正方向の搬送、0より下は逆方向の搬送を示す。
【0062】
第二の搬送区間F2において、印刷中は規定の搬送速度で基材Sが搬送され、印刷部20における四つのヘッドユニット20Hはそれぞれが駆動を行っている。
そして、搬送の一時停止が近くなると、パターン画像Pの終了端部Peまで印刷を適切に行う終端画像処理が行われる。
前述したように、ヘッドユニット20Hは搬送方向に沿って四基が並んで並列に配置されている。
図7では、上下に四つ並んで図示されたヘッドユニット20Hの内で、最も下に図示されているヘッドユニット20Hが搬送方向最上流に位置しており、最も上に図示されているヘッドユニット20Hが搬送方向最下流に位置している。
【0063】
基材S上のパターン画像Pの終了端部Peの位置が最上流のヘッドユニット20Hに到達した時点(
図7の位置p1)で基材Sの搬送を停止すると、それより下流のヘッドユニット20Hは終了端部Peの位置にインクを吐出することができず、画像の形成不良が発生する。従って、終端画像処理では、パターン画像Pの終了端部Peの位置が最下流のヘッドユニット20Hを通過する位置(
図7の位置p2)まで規定の搬送速度を維持しつつ、四つのヘッドユニット20Hが順番にインク吐出を停止する動作が行われる。
【0064】
そして、パターン画像Pの終了端部Peの位置が最下流のヘッドユニット20Hを通過すると、基材Sの搬送の減速動作を開始する。これにより、基材Sは搬送速度が漸減し、停止する。
終端画像処理により基材Sは距離l1だけ搬送され、搬送の減速動作により基材Sは距離l2だけ搬送されているので、基材Sが一時停止した時点で、パターン画像Pの終了端部Peの位置は、最上流のヘッドユニット20Hに対して既に距離l1+l2だけ搬送方向下流側に移動している。
さらに、基材Sの搬送の再開の際には、基材Sが規定の搬送速度となるまで加速動作が行われ、規定の搬送速度となるまでに距離l3だけ必要となる。
従って、パターン画像Pの終了端部Peの位置から印刷を再開するために、基材Sの搬送の減速動作による停止後に、基材Sの逆転搬送が行われる。この場合の逆転搬送距離をl4とすると、l4≧l1+l2+l3とする。
【0065】
なお、前述したように、基材Sに対してパターン画像Pの終了端部Peと次のパターン画像Pの開始端部Psとの間に隙間Bが形成される場合には、基材Sの搬送再開による加速動作完了までに、最上流のヘッドユニット20Hに対して、パターン画像Pの開始端部Psが位置すれば良いので、隙間Bの幅をbとした場合、逆転搬送距離l4は、l4≧l1+l2+l3−bを満たすようにすることも可能だが、隙間Bを設けない場合もあるので、逆転搬送距離l4は、l4≧l1+l2+l3を満たすようにすることが望ましい。
【0066】
[基材の搬送制御に基づく基材搬送動作]
制御装置90のCPU91が実行する基材の搬送制御に基づく基材搬送動作時の制御について前述した
図7及び
図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0067】
壁紙の製造が開始されると、第一〜第三の搬送区間F1〜F3において、それぞれの搬送速度で搬送が開始される。搬送される基材Sに対して、コーティング工程、印刷工程、発泡工程、エンボス加工工程、接着剤塗布工程の各工程が実行される。
また、第一の搬送区間F1と第二の搬送区間F2の間では基材Sについて予め所定長さの弛みが形成されている。
【0068】
そして、CPU91は、第二の搬送区間F2において基材Sを所定の搬送距離単位ごとに間欠的に搬送するために、所定の搬送距離分の搬送が行われたか否かを判定する(ステップS1)。この「所定の搬送距離」は、例えば、間欠搬送における一回の搬送開始から一つのパターン画像P(複数でも良い)の終了端部Peが最上流のヘッドユニット20Hに到達するまでの距離又はそれより若干短い距離である。
また、基材Sの搬送距離は、第二の搬送区間F2の搬送ローラー対122又は123を駆動するモーターに設けられたエンコーダーから検出することができる。或いは、別途、基材Sの搬送距離を光学的に検出するセンサーを第二の搬送区間F2に設けても良い。
【0069】
そして、第二の搬送区間F2において基材Sの搬送が所定の搬送距離に達していない場合には(ステップS1:NO)、そのまま搬送を継続する(ステップS3)。
一方、第二の搬送区間F2において基材Sの搬送が所定の搬送距離に達した場合には(ステップS1:YES)、基材Sの弛み長さを弛みセンサー125によって検出し、その長さが十分であるか否かを判定する。具体的には、例えば、基材Sがもう一回、「所定の搬送距離」だけ搬送されるまでに必要となる長さ以上の弛み長さが残っているかを判定する。
【0070】
その結果、基材Sの弛み長さが十分である場合には(ステップS5:YES)、そのまま搬送を継続する(ステップS3)。
また、基材Sの弛み長さが十分ではない場合には(ステップS5:NO)、パターン画像Pの終了端部Peが最上流のヘッドユニット20Hに到達した時点(
図7の位置p1)で終端画像処理を実行する(ステップS7)。
そして、減速動作に移行して(ステップS9:
図7の位置p2)、第二の搬送区間F2における搬送が停止すると、CPU91は、基材Sの逆転搬送を前述した逆転搬送距離l4だけ逆転搬送させて(ステップS11)、搬送を停止させる(
図7の位置p3)。
【0071】
第二の搬送区間F2において搬送停止中は第一の搬送区間F1の搬送によりこれらの区間の間の基材Sの弛みが増加する。
そして、この停止期間中に、CPU91は、再び、基材Sの弛み長さを弛みセンサー125によって検出し、その長さが十分であるか否かを判定する。具体的には、例えば、基材Sが、「所定の搬送距離」だけ搬送されるまでに必要となる長さ以上の弛み長さが形成されたか否かを判定する(ステップS13)。この弛み長さは前述したステップS5の判定における弛み長さと同一である。
【0072】
そして、CPU91は、基材Sの弛み長さが十分ではない場合には(ステップS13:NO)、弛み長さの判定を繰り返し、その間に第一の搬送区間F1の搬送により基材Sの弛みが増加する。
そして、基材Sの弛み長さが十分になると(ステップS13:YES)、第二の搬送区間F2における基材Sの搬送を再開し、CPU91は、加速動作を実行させる(ステップS15)。
【0073】
そして、加速動作が終わり(
図7の位置p4)、基材Sのパターン画像Pの終了端部Peが最上流のヘッドユニット20Hに到達し(
図7の位置p5)、さらに、次のパターン画像Pの開始端部Psが最上流のヘッドユニット20Hに到達すると、上流側のヘッドユニット20Hから順番にインクの吐出を開始する先端画像処理を実行し(ステップS19)、その後は、ステップS3に処理を進めて、第二の搬送区間F2において規定の搬送速度で基材Sを搬送し、新たに、ステップS1〜S19の処理を繰り返し実行する。
なお、ステップS19における先端画像処理の開始の際に、第二の搬送区間F2において検出された基材Sの搬送距離の値はリセットされ、新たに搬送距離の検出が開始される。
【0074】
なお、第二の搬送区間F2と第三の搬送区間F3との間での基材Sの搬送については特に言及していないが、基材Sは、第二の搬送区間F2で第三の搬送区間F3よりも高速で搬送され、第三の搬送区間F3では第一の搬送区間F1と同じ速度で搬送されるので、壁紙製造の開始段階での第二の搬送区間F2と第三の搬送区間F3の間の基材Sの弛みは0又は第一の搬送区間F1と第二の搬送区間F2の間の基材Sの弛み長さよりも十分に短くすることができる。これにより、第二の搬送区間F2と第三の搬送区間F3の間で弛みが完全に消費され、基材Sが第三の搬送区間F3の搬送により張力を受けることを回避することができる。
【0075】
[発明の実施形態の技術的効果]
壁紙製造装置1では、搬送部10が搬送経路の全体に渡って基材Sを幅方向に広げた状態で搬送し、印刷部20が搬送部10により搬送される基材Sに対してシングルパス方式の吐出構造により印刷を行うことから、印刷部20において、従来よりも高速で搬送することが可能となる。
従って、搬送経路に設けられた第一の工程部としての他の工程を実行する工程部における基材Sの搬送速度を印刷部20に合わせて低速で行う必要がなくなり、壁紙製造装置1における壁紙の製造の高速化を図ることが可能となる。
【0076】
また、壁紙製造装置1では、印刷部20よりも搬送方向上流側に、基材Sに対して樹脂をコーティングするコーティング部40を備えているので、基材Sの印刷面に対する印刷を良好に行うことができ、画質の向上を図ることが可能となる。
また、基材Sは、フリース、紙、ビニール、不織布等を材料とするが、いずれの材料を選択した場合でも、基材Sの印刷面に対する印刷を良好に行うことができ、画質の安定化を図ることが可能となる。
【0077】
また、壁紙製造装置1では、印刷部20が搬送部10で搬送される基材Sに対して印刷画像の定着を行う定着部24を備えているので、印刷部20よりも搬送方向下流側に別の工程を行う工程部や巻き取り部102を備えている場合でも、印刷画像が定着状態となっているので画質の安定的に維持することが可能となる。
【0078】
また、壁紙製造装置1では、搬送部10で搬送される基材Sに対してエンボス加工を行うエンボス部60を備えているので、より装飾性の高い壁紙を製造することが可能となる。
さらに、エンボス部60よりも搬送方向上流側において、搬送部10で搬送される基材Sに対して発泡加工を行う発泡部50を備えているので、凹凸がより際立ったエンボス加工を行うことができ、さらに装飾性の高い壁紙を製造することが可能となる。
【0079】
また、壁紙製造装置1では、搬送部10の搬送方向終端部で基材Sを巻き取る巻き取り部102を備えているので、製造完了後の壁紙の基材Sを自動的に巻き取ることができ、製造完了後の壁紙の基材Sの後処理等の人為的な作業を不要とし、壁紙の生産性の向上を図ることが可能となる。
【0080】
また、壁紙製造装置1では、印刷部20よりも搬送方向下流側において、搬送部10で搬送される基材Sに対して接着剤を塗布する接着剤塗布部70を備えているので、基材Sの裏面に対する接着剤の塗布を自動的に行うことができ、壁紙の生産性の向上を図ることが可能となる。
【0081】
また、壁紙製造装置1では、通信ネットワークNを通じて外部機器との間で印刷画像データの通信を行う通信部97を備えているので、より多種多彩な壁紙のパターン画像を容易かつ高速に取り込むことができ、多様な壁紙を容易に製造することが可能となる。
【0082】
また、壁紙製造装置1では、印刷部20が、搬送部10で搬送される基材Sの印刷画像を検査するためのインラインセンサー23を備えているので、基材Sの印刷画像の不良を検出することができ、印刷画像について高い画質を維持することが可能となる。
【0083】
また、壁紙製造装置1では、印刷部20が、搬送部10で搬送される基材Sに対して温度制御を行う温度制御部21を備えているので、印刷における温度変化の影響を低減することができ、高い画質を安定的に維持することが可能となる。
【0084】
[その他]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【0085】
例えば、上記実施形態では、制御装置90は、搬送部10の第二の搬送区間及び印刷部20のみを制御対象として、繰り出し部101、搬送部10の第一及び第三の搬送区間、コーティング部40、エンボス加工部6、接着剤塗布部70、巻き取り部102は独立的に駆動して印刷動作を行っている例を示したが、これに限定されない。
例えば、
図9に示すように、制御装置90は、搬送部10の全ての搬送ローラー対121〜124、印刷部20、繰り出し部101、コーティング部40、エンボス加工部6の発泡部50、エンボス部60冷却部65、接着剤塗布部70、巻き取り部102について図示しないインターフェイスを介してバス接続を行い、これらに対して制御信号等の送受を可能に構成しても良い。
その場合、制御装置90は、繰り出し部101、コーティング部40、エンボス加工部6、接着剤塗布部70、巻き取り部102の各動作も連係するよう動作制御を行い、これらを一括的に制御しながら、壁紙の製造の各工程を実行することができる。また、搬送部10の第一及び第三の搬送区間の搬送速度も制御装置90により制御することができる。
また、制御装置90が一括的に全構成を制御する場合に限らず、繰り出し部101、搬送部10、コーティング部40、エンボス加工部6、接着剤塗布部70、巻き取り部102のそれぞれが制御部を個々に有しており、これらの制御部が制御装置90と通信して連携的に動作制御を行い壁紙の製造の各工程を実行する構成としても良い。
【0086】
また、上記実施形態では、紫外線により硬化するインクを例示しているが、紫外線以外の活性光線硬化型インクを使用しても良いし、加熱によりその粘度が変化する特性を有する他のインクを使用しても良い。
【0087】
また、コーティング部40とは別に印刷後の基材Sの印刷面を保護するためのコーティングを行うためのコーティング部を印刷部20よりも搬送方向下流側に設けてもよい。
【0088】
また、発泡部50、エンボス部60、冷却部65、接着剤塗布部70のそれぞれは必須ではなく、これらのいずれか一つ又は複数を省略して壁紙製造装置を構成しても良い。
また、発泡部50、エンボス部60のいずれか一つ又は両方を第一の搬送区間F1に配置しても良い。その場合、コーティング部40を省略して壁紙製造装置を構成しても良い。
【0089】
また、巻き取り部102に替えて、基材Sを所定の長さ(例えば、前述した繰り返し長さLの整数倍)で切断し積層する積層部を設けてもよい。その場合、積層部の搬送方向上流側に、基材Sの接着剤層の接着面に剥離シートを貼着する剥離シート貼着装置を設けることが望ましい。