(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案されたシステムでは、火炎がバーナから水素供給ラインに逆流した場合に、フレームアレスタが火炎を消化する。これにより、フレームアレスタの配置位置よりも一次側の水素供給ラインに火炎が到達することを防止できる。
【0006】
ところで、水素燃焼ボイラにおいて、水素ガスがメインバーナ及びパイロットバーナの双方に供給される場合、メインバーナに水素ガスを供給するライン及びパイロットバーナに水素ガスを供給するラインのいずれにおいても逆火の発生が考えられる。そこで、メインバーナに水素ガスを供給するライン及びパイロットバーナに水素ガスを供給するラインのそれぞれに個別に対応するフレームアレスタを配置することで、いずれの逆火も防止できる。一方で、フレームアレスタは非常に高価であるため、配置されるフレームアレスタが増加することは、水素燃焼ボイラの製造コストを高める要因になる。
【0007】
従って、本発明は、メインバーナ及びパイロットバーナの両方に水素ガスを供給する場合に、安全性を確保しつつ製造コストを抑えられる水素燃焼ボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水素ガスを燃料として供給するメイン燃料ラインと、前記メイン燃料ラインに取り付けられるフレームアレスタと、前記メイン燃料ラインにおける前記フレームアレスタよりも下流側から分岐する第1パイロットラインと、前記メイン燃料ラインの下流側に接続されるメインバーナと、前記第1パイロットラインの下流側に接続されるパイロットバーナと、を備える水素燃焼ボイラに関する。
【0009】
また、水素燃焼ボイラは、前記フレームアレスタよりも上流側で前記メイン燃料ラインに合流する第2パイロットラインと、前記メイン燃料ラインにおける前記第1パイロットラインの分岐位置よりも下流側に配置される第1遮断弁と、前記メイン燃料ラインにおける前記第2パイロットラインの合流位置よりも上流側に配置される第2遮断弁と、前記第2パイロットラインに配置される第3遮断弁と、を更に備えることが好ましい。
【0010】
また、水素燃焼ボイラは、前記第2パイロットラインにおける前記第3遮断弁よりも下流側に配置される絞り部材と、前記第2パイロットラインにおける前記第3遮断弁と前記絞り部材との間に接続され不活性ガスを供給するパージラインと、を更に備えることが好ましい。
【0011】
また、前記第2遮断弁は、前記メイン燃料ラインにおける前記第2パイロットラインの合流位置の直近の上流側に配置されることが好ましい。
【0012】
また、前記メインバーナは、水素ガスが噴出されるメインノズルを備え、前記パイロットバーナは、前記メインノズルよりも小径のパイロットノズルを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メインバーナ及びパイロットバーナの両方に水素ガスを供給する場合に、安全性を確保しつつ製造コストを抑えられる水素燃焼ボイラを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る水素燃焼ボイラ1について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の水素燃焼ボイラ1は、水素ガスG1を燃料として用いるボイラである。水素燃焼ボイラ1は、例えば貫流ボイラであり、この水素燃焼ボイラ1には、メインバーナ10及びパイロットバーナ20の双方に燃料として水素ガスG1が供給される。メインバーナ10及びパイロットバーナ20に水素ガスG1を供給するラインには、フレームアレスタ30が配置され、メインバーナ10及びパイロットバーナ20から水素ガスG1を供給するラインに火炎が伝播することを防止する。
【0016】
水素燃焼ボイラ1は、
図1〜
図3に示すように、缶体Tと、メインバーナ10と、パイロットバーナ20と、制御部50と、を備える。また、この水素燃焼ボイラ1は、
図1に示すように、メイン燃料ラインL100と、このメイン燃料ラインL100に配置されるフレームアレスタ30と、第1パイロットラインL110と、第2パイロットラインL120と、パージラインL130と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の総称である。
【0017】
缶体Tは、下部ヘッダ、複数の水管、上部ヘッダ(いずれも図示せず)、及び燃焼室B等を含んで構成され、この缶体Tに供給される水を加熱して蒸気を生成する。
メインバーナ10は、缶体Tに配置される。メインバーナ10は、缶体Tの燃焼室Bで水素ガスG1を燃焼させる。メインバーナ10は、
図2及び
図3に示すように、メインノズル11と、バーナヘッド12と、を備える。
【0018】
メインノズル11は、管状に形成され、先端部が缶体Tの内部の燃焼室Bに向けて配置される。メインノズル11の基端部は、後述するメイン燃料ラインL100の下流側の端部に接続される。
【0019】
バーナヘッド12は、メインノズル11の先端に接続される。バーナヘッド12は、メインノズル11との先端から拡径した形状を有する。バーナヘッド12の側面には、複数の貫通穴13が形成される。
【0020】
パイロットバーナ20は、
図1に示すように、缶体Tに配置される。パイロットバーナ20は、メインバーナ10を着火する。パイロットバーナ20は、
図2及び
図3に示すように、パイロットノズル21と、電極棒22と、接続部材23と、を備える。
【0021】
パイロットノズル21は、メインノズル11よりも小径の管状に形成され、先端部がメインノズル11の先端部近傍に配置される。パイロットノズル21の先端部は、メインノズル11の内部に配置され、基端部がメインノズル11の側壁を貫通してメインノズル11の外周面から露出する。パイロットノズル21の基端部には、後述する第1パイロットラインL110に接続するための接続部材23が配置される。パイロットノズル21の基端部は、後述する第1パイロットラインL110の下流側に接続される。
【0022】
電極棒22は、パイロットバーナ20を着火する着火装置であり、パイロットノズル21の先端部近傍に配置される。
接続部材23は、パイロットノズル21と、後述する第1パイロットラインL110の下流側の端部とを接続するための部材である。
【0023】
メイン燃料ラインL100は、水素ガスG1を燃料としてメインバーナ10に供給する。メイン燃料ラインL100の上流側は、水素ガスG1の供給源(図示せず)に接続される。メイン燃料ラインL100の下流側は、メインバーナ10の基端部に接続される。このメイン燃料ラインL100は、上流側ラインL101と、下流側ラインL103と、を備える。
【0024】
上流側ラインL101は、メイン燃料ラインL100のうち上流側に位置するラインであり、上流側が水素ガスG1の供給源(図示せず)に接続される。上流側ラインL101の下流側には、後述するフレームアレスタ30が接続される。
【0025】
下流側ラインL103は、メイン燃料ラインL100のうち下流側に位置するラインであり、上流側が、フレームアレスタ30に接続される。下流側ラインL103の下流側は、メインバーナ10に接続される。
【0026】
フレームアレスタ30は、メイン燃料ラインL100に取り付けられる。フレームアレスタ30は上流側への火炎の伝播を防止する。
【0027】
以上のメイン燃料ラインL100には、第1遮断弁V11、第1ボール弁V61、第2遮断弁V21,V22、及び流量調整弁V51が配置される。
【0028】
第1遮断弁V11は、メイン燃料ラインL100におけるフレームアレスタ30よりも下流側(下流側ラインL103)に配置される。第1遮断弁V11は、電磁弁により構成され、下流側ラインL103を開放又は閉止する。第1遮断弁V11は、例えば、ノーマルオープン(NO)タイプの電磁弁により構成され、常時開放された状態から制御されることにより適宜閉止される。
【0029】
第1ボール弁V61は、下流側ラインL103における第1遮断弁V11よりも上流側に配置される。第1ボール弁V61は、手動で操作され下流側ラインL103を開放又は閉止する。
【0030】
第2遮断弁V21,V22は、上流側ラインL101に配置される。本実施形態では、第2遮断弁V21,V22は、メイン燃料ラインL100における後述する第2パイロットラインL120の接続位置(合流位置)の直近の上流側に配置される。第2遮断弁V21,V22は、電磁弁により構成され、上流側ラインL101を開放又は閉止する。
【0031】
流量調整弁V51は、上流側ラインL101における第2遮断弁V21,V22よりも上流側に配置される。流量調整弁V51は、メイン燃料ラインL100を流れる水素ガスG1の流量を調整する。
【0032】
第1パイロットラインL110は、メイン燃料ラインL100から分岐するラインであり、水素ガスG1を燃料としてパイロットバーナ20に供給する。第1パイロットラインL110は、メイン燃料ラインL100におけるフレームアレスタ30よりも下流側から分岐する。本実施形態では、第1パイロットラインL110は、メイン燃料ラインL100におけるフレームアレスタ30と第1ボール弁V61との間から分岐する。
第1パイロットラインL110の下流側は、パイロットバーナ20の基端部(接続部材23)に接続される。第1パイロットラインL110は、メイン燃料ラインL100よりも小径に構成される。
【0033】
第1パイロットラインL110には、第2ボール弁V71が配置される。第2ボール弁V71は、手動で操作され、第1パイロットラインL110を開放又は閉止する。
【0034】
第2パイロットラインL120は、フレームアレスタ30よりも上流側でメイン燃料ラインL100に合流する。本実施形態では、第2パイロットラインL120は、上流側ラインL101をバイパスするラインとして構成され、上流側ラインL101における流量調整弁V51と第2遮断弁V21との間から分岐して、第2遮断弁V22とフレームアレスタ30との間における第2遮断弁V22の直近でメイン燃料ラインL100(上流側ラインL101)に合流する。第2パイロットラインL120は、メイン燃料ラインL100よりも小径に構成される。
【0035】
第2パイロットラインL120には、第3遮断弁V31,V32及び絞り部材40が配置される。
第3遮断弁V31,V32は、第2パイロットラインL120に配置される。第3遮断弁V31,V32は、電磁弁により構成され、第2パイロットラインL120を開放又は閉止する。
絞り部材40は、第2パイロットラインL120における第3遮断弁V32よりも下流側に配置される。絞り部材40は、第2パイロットラインL120を流通するガスの流量を絞る。
【0036】
パージラインL130は、第2パイロットラインL120における第3遮断弁V32と絞り部材40との間に接続される。パージラインL130の上流側は、不活性ガスG2の供給源(図示せず)に接続され、下流側が第2パイロットラインL120に接続される。パージラインL130は、第2パイロットラインL120に不活性ガスG2を供給する。
【0037】
パージラインL130には、第4遮断弁V41が配置される。第4遮断弁V41は、電磁弁によって構成され、パージラインL130を開放又は閉止する。
【0038】
制御部50は、流量調整弁V51の開閉、パイロットバーナ20の着火、第1遮断弁V11、第2遮断弁V21,V22、第3遮断弁V31,V32、及び第4遮断弁V41の開閉等を電気的に制御する制御装置である。
【0039】
次に、水素燃焼ボイラ1の動作について説明する。
パイロットバーナ20の燃焼を開始する場合、制御部50は、第1遮断弁V11、第2遮断弁V21,V22及び第4遮断弁V41を閉止した状態で第3遮断弁V31,V32を開放する。すると、水素ガスG1は、水素ガスG1の供給源(図示せず)から第2パイロットラインL120を流れた後フレームアレスタ30を通り、その後第1パイロットラインL110を通ってパイロットノズル21から噴出する。また、制御部50は、電極棒22を制御して、パイロットノズル21から噴出する水素ガスG1に着火する。これにより、パイロットバーナ20の燃焼が開始される。
【0040】
パイロットバーナ20の燃焼が開始された後、メインバーナ10の燃焼を開始する場合、制御部50は、まず、第2遮断弁V21,V22を開放する。これにより、第2パイロットラインL120よりも径の大きい上流側ラインL101にも水素ガスG1が流通し、第1パイロットラインL110に流れる水素ガスG1の流量が増加する。第1パイロットラインL110に流れる水素ガスG1の流量が増加することにより、パイロットバーナ20の火炎が大きくなる。
【0041】
次いで、制御部50は、第1遮断弁V11を開放する。第1遮断弁V11の開放により、下流側ラインL103を通ってメインバーナ10に水素ガスG1が供給され、メインノズル11から水素ガスG1が噴出する。メインノズル11から噴出した水素ガスG1は、パイロットバーナ20の火炎により着火される。これにより、メインバーナ10の燃焼が開始される。その後、制御部50は、第3遮断弁V31,V32を閉止する。
このように、メインバーナ10を着火する前に第1パイロットラインL110を流通する水素ガスG1の流量を増加させてパイロットバーナ20の火炎を大きくすることで、バーナ付近の酸素濃度が低下する。この状態で、第1遮断弁V11を開放してメインバーナ10に水素ガスG1を供給することで、メインバーナ10の着火時に逆火を発生しにくくできる。
【0042】
次に、メインバーナ10の燃焼を停止する場合、制御部50は、第2遮断弁V21,V22を閉止する。第3遮断弁V31,V32が閉止された状態で第2遮断弁V21,V22が閉止されることにより、下流側ラインL103及び第1パイロットラインL110への水素ガスG1の供給が停止され、メインバーナ10(及びパイロットバーナ20)の燃焼が停止される。
【0043】
メインバーナ10の燃焼が停止された後、不活性ガスG2を用いて第2遮断弁V22及び第3遮断弁V32よりも下流側に残留する水素ガスG1がパージされる。この場合、制御部50は、第2遮断弁V21,V22及び第3遮断弁V31,V32を閉止し、第1遮断弁V11を開放した状態で第4遮断弁V41を開放する。第4遮断弁V41の開放によって、パージラインL130から第2パイロットラインL120に不活性ガスG2が供給される。第2パイロットラインL120を流れる不活性ガスG2は、絞り部材40によって流量が絞られる。絞り部材40によって流量が絞られた不活性ガスG2は、第2パイロットラインL120よりも径の大きいメイン燃料ラインL100(上流側ラインL101)に流れ、メインバーナ10から噴出する。また、不活性ガスG2の一部は、第1パイロットラインL110を通り、パイロットバーナ20から噴出する。これにより、第2遮断弁V22及び第3遮断弁V32よりも下流側が不活性ガスG2によりパージされる。
【0044】
以上説明した本実施形態の水素燃焼ボイラ1によれば、以下のような効果を奏する。
(1)水素燃焼ボイラ1を、メイン燃料ラインL100と、メイン燃料ラインL100に取り付けられるフレームアレスタ30と、このフレームアレスタ30よりも下流側(メイン燃料下流側ラインL103)から分岐する第1パイロットラインL110と、メイン燃料ラインL100に接続されるメインバーナ10と、第1パイロットラインL110に接続されるパイロットバーナ20と、を含んで構成した。これにより、メインバーナ10からメイン燃料ラインL100の下流側(メイン燃料下流側ラインL103)への逆火が起こった場合、及び/またはパイロットバーナ20から第1パイロットラインL110への逆火が起こった場合でも、1つのフレームアレスタ30により消火し、上流側の火炎の伝播を防止することができる。よって、メインバーナ10及びパイロットバーナ20の両方に水素ガスG1を供給する水素燃焼ボイラ1の製造コストを、安全性を確保しつつ抑えられる。
【0045】
(2)水素燃焼ボイラ1を、フレームアレスタ30よりも上流側でメイン燃料ラインL100に合流する第2パイロットラインL120と、メイン燃料ラインL100における第1パイロットラインL110の分岐位置(接続位置)よりも下流側に配置される第1遮断弁V11と、メイン燃料ラインL100における第2パイロットラインL120の合流位置(接続位置)よりも上流側に配置される第2遮断弁V21,V22と、第2パイロットラインL120に配置される第3遮断弁V31,V32と、を含んで構成した。これにより、第1遮断弁V11及び第2遮断弁V21,V22を閉止した状態で第3遮断弁V31,V32を開放することで、パイロットバーナ20を燃焼させられ、また、その後、第1遮断弁V11及び第2遮断弁V21,V22を更に開放することで、メインバーナ10及びパイロットバーナ20を燃焼させられる。また、フレームアレスタ30よりも上流側に第2遮断弁V21,V22及び第3遮断弁V31,V32を配置することで、逆火が生じた場合であっても、第2遮断弁V21,V22及び第3遮断弁V31,V32の逆火による損傷を防げる。
【0046】
(3)水素燃焼ボイラ1を、第3遮断弁V31,V32の下流側に配置される絞り部材40と、第2パイロットラインL120における第3遮断弁V31,V32と絞り部材40との間に接続されるパージラインL130と、を含んで構成した。これにより、絞り部材40よりも上流側から不活性ガスG2を供給することで、パージに用いる不活性ガスG2の流量を絞ることができ、不活性ガスG2の流量を好適化できる。
【0047】
(4)第2遮断弁V21,V22をメイン燃料ラインL100における第2パイロットラインL120の合流位置の直近の上流側に配置した。これにより、パージラインL130から供給される不活性ガスG2によりメイン燃料ラインL100の第2遮断弁V21,V22よりも下流側を好適にパージできる。
【0048】
(5)パイロットノズル21の径を、メインノズル11の径よりも小さく設定した。これにより、パイロットノズル21における水素ガスG1の流速を速めることができるので、メインバーナの着火時や燃焼時に、第1パイロットラインL110に逆火現象が発生することを防止できる。
【0049】
以上、本発明の水素燃焼ボイラの好ましい一実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態において、第2パイロットラインL120を設け、第2遮断弁V21,V22及び第3遮断弁V31,V32を開閉することにより、メインバーナ10及びパイロットバーナ20への水素ガスG1の供給を制御したが、これに制限されない。例えば、第2パイロットラインL120及び第3遮断弁V31,V32を設けずに、第1パイロットラインL110に第3遮断弁V31,V32に代わる第4遮断弁(電磁弁、図示せず)を配置し、パージラインL130は、メイン燃料ラインL100における第2遮断弁V22とフレームアレスタ30との間に接続してもよい。そして、第4遮断弁(図示せず)を開閉することにより、第1パイロットラインL110を開閉してもよい。