特許第6981065号(P6981065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社明電舎の特許一覧

<>
  • 特許6981065-ネットワーク機器 図000002
  • 特許6981065-ネットワーク機器 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981065
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ネットワーク機器
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   H04L12/28 200Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-135845(P2017-135845)
(22)【出願日】2017年7月12日
(65)【公開番号】特開2019-21974(P2019-21974A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】川岸 正幸
【審査官】 羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−232121(JP,A)
【文献】 特開2015−117941(JP,A)
【文献】 特開2011−176768(JP,A)
【文献】 特開2016−005214(JP,A)
【文献】 特開2017−005378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00−12/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークの時刻同期及び冗長化を実行するネットワーク機器であって、
このネットワーク機器と同一のネットワークに属する当該ネットワーク機器と隣接する他のネットワーク機器との時刻同期に基づき当該ネットワークの時刻同期の品質を監視する監視部と、
前記品質に基づき前記ネットワークのスパニングツリーの再構成を実行させる経路制御部と、
前記ネットワークにおいて、IEEE1588に準じた時刻同期プロトコルが適用されると、当該ネットワークに属するネットワーク機器のクロックが当該ネットワークのマスタークロックとして機能する優先順位に基づく優先度を前記経路制御部による前記スパニングツリーのトポロジー設定に供する第一選択回路と、
前記ネットワークにおいて、前記時刻同期プロトコルが適用されると、前記監視部から出力された時刻同期の品質を前記経路制御部による前記スパニングツリーのトポロジー変更に供する第二選択回路と、
を備えたことを特徴とするネットワーク機器。
【請求項2】
前記品質の指標は、前記ネットワーク機器のポートのパスコストに反映されることを特徴とする請求項に記載のネットワーク機器。
【請求項3】
前記監視部から出力される前記品質の変動を緩衝するラッチ部をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のネットワーク機器。
【請求項4】
前記品質の指標は、前記時刻同期に基づく時刻補正量であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のネットワーク機器。
【請求項5】
前記ネットワーク機器のクロックが前記マスタークロックとして機能する場合、当該ネットワーク機器は当該ネットワークのルートブリッジとして機能することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のネットワーク機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レイヤ2ネットワークのネットワーク機器に関する。
【背景技術】
【0002】
伝送品質の監視のための要素技術の一つとして、時刻同期プロトコル(IEEE1588 以下、PTP)が利用されている。また、冗長性を確保して耐障害性を提供しながらループの発生を防ぐ方法として、スパニングツリープロトコル(IEEE802.1D 以下、STP)が利用されている(特許文献1,2)。特に、特許文献1のネットワークにおいては、PTPとSTPを併用することにより、ネットワークのトポロジー変更に伴う伝送経路の変更による伝送遅延の変動の影響が抑えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−247506号公報
【特許文献2】特開2011−211454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PTPとSTPを併用したネットワークは、STPのルートブリッジ(以下、ルート)とPTPのマスタークロック(以下、マスター)が同一のノードとなる保証がない。STPが適用されたネットワークはSTPのルートへの到達コストが最小化されるように伝送経路が構築される。PTPのマスターがSTPのルートと同一のノードである場合、マスターとPTPの各スレーブとの距離が最適となる。
【0005】
しかしながら、PTPのマスターがスパニングツリーの末端ノードである場合には、当該マスターとPTPの各スレーブの距離のワースト値が大きくなり、時刻同期の品質低下につながることがある。
【0006】
また、STPの経路選択は帯域の太さに基づいて評価され、時刻同期の品質は一切反映されない。STPが適用されるネットワークはルートへの到達コストが最小化となるように経路が構成される。前記コストは、ノード間リンクの選好性を制御するためのパラメータであり、ユーザーが事前に設定することもできるが、一般にはSTPの自動判定により決定する。
【0007】
STPの自動判定では、コストは回線の帯域に対する関数となっており、リンクスピードで決定される。一方、PTPにおいては、往復の伝送時間が同じであること、また、その伝送時間の変動がないことが重要である。このように経路選好性の違いがあるので、STPが時刻同期に適した経路を構成する保証がない。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、時刻同期及び冗長化が可能なネットワークの同期品質の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の一態様は、ネットワークの時刻同期及び冗長化を実行するネットワーク機器であって、このネットワーク機器と同一のネットワークに属する当該ネットワーク機器と隣接する他のネットワーク機器との時刻同期に基づき当該ネットワークの時刻同期の品質を監視する監視部と、前記品質に基づき前記ネットワークの通信経路の再構成を実行させる経路制御部を備える。
【0010】
本発明の一態様は、前記ネットワーク機器において、前記経路制御部は、前記品質に基づき前記ネットワークのスパニングツリーの再構成を実行させる。
【0011】
本発明の一態様は、前記ネットワーク機器において、前記品質の指標は、前記ネットワーク機器のポートのパスコストに反映される。
【0012】
本発明の一態様は、前記ネットワーク機器において、前記監視部から出力される前記品質の変動を緩衝するラッチ部をさらに備える。
【0013】
本発明の一態様は、前記ネットワーク機器において、前記品質の指標は、前記時刻同期に基づく時刻補正量である。
【0014】
本発明の一態様は、前記ネットワーク機器のクロックが前記ネットワークのマスタークロックとして機能する場合、当該ネットワーク機器は当該ネットワークのルートブリッジとして機能する。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明によれば、時刻同期及び冗長化が可能なネットワークの同期品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態のネットワークに属するノードのブロック構成図。
図2】本発明の実施形態のネットワークを例示したネットワーク構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1に例示された本実施形態のネットワーク機器1は、ネットワーク(レイヤ2ネットワーク)2に属するノードの一態様であり、ネットワーク2をPTP並びにSTPに基づき時刻同期及び冗長化させるスイッチングハブの態様を成す。ネットワーク機器1は図2に例示されたように同一のネットワーク2において複数配置されている。また、このネットワーク2のネットワーク機器1a,1bには端末3a,3bが各々接続されている。
【0019】
ネットワーク機器1は、OAM部(監視部)11,STP制御部(経路制御部)12,ブリッジ優先度格納部13,PTP優先度格納部14,ポートパスコスト格納部15及びラッチ部16を備える。
【0020】
OAM部11は、ネットワーク2の運用(Operations),管理(Administration)及び保守(Maintenance)を実行する。例えば、図2に示されたネットワーク機器1aのOAM部11は、ネットワーク2においてネットワーク機器1aと隣接する他のネットワーク機器1bとの時刻同期に基づきネットワーク2の時刻同期の品質を監視する。
【0021】
ブリッジ優先度格納部13は、ネットワーク2のルートブリッジを決定するためのパラメータが予め設定されている。例えば、ネットワーク2のスパニングツリーのトポロジー変更の際にルートブリッジにしたい任意のノード(例えば、図2のネットワーク機器1a)に対して最も高い優先度が設定される。
【0022】
PTP優先度格納部14は、ネットワーク2のマスタークロックを決定するためのパラメータが予め設定されている。例えば、ネットワーク機器1a〜1dのクロックがマスタークロックとして機能する優先順位がパラメータとして設定されている。
【0023】
ポートパスコスト格納部15は、ネットワーク2の通信経路を決定するパラメータが予め設定されている。例えば、ネットワーク2のスパニングツリーのトポロジー設計において、前記ブリッジ優先度に基づき決定されるルートブリッジに対する個々のネットワーク機器1のパスコストが設定されている。
【0024】
ラッチ部16は、OAM部11から出力される前記時刻同期の品質の変動を緩衝する。
【0025】
STP制御部12は、ブリッジ優先度格納部13、PTP優先度格納部14、ポートパスコスト格納部15から受けたパラメータ情報に基づきネットワーク2のスパニングツリーのトポロジー設定を行う。また、OAM部11で監視された時刻同期の品質に基づきネットワーク2のスパニングツリーの再構成を実行させる。前記品質の指標としては、例えば、前記時刻同期に基づく時刻補正量の変動が挙げられる。
【0026】
STP制御部12には、第一選択回路17,第二選択回路18が付加されている。
【0027】
第一選択回路17は、ブリッジ優先度とPTP優先度のいずれかを選択する。例えば、ネットワーク2においてSTP及びPTPが適用されると、第一選択回路17により選択されたPTP優先度がSTP制御部12に出力されて前記スパニングツリーのトポロジー設定に供される。
【0028】
第二選択回路18は、「ポートパスコスト格納部15から引き出されたパラメータ情報」「ポート10を介して他のネットワーク機器1と連絡する通信経路の回線速度」「OAM部11から出力される時刻同期の品質」のいずれかを選択する。例えば、ネットワーク2においてPTPが適用されると、第二選択回路18により選択された「OAM部11から出力された時刻同期の品質」がSTP制御部12に出力されてネットワーク2のスパニングツリーのトポロジー変更に供される。
【0029】
図1,2を参照しながら本実施形態のネットワーク機器1の動作例について説明する。
【0030】
先ず、ブリッジ優先度格納部13,PTP優先度格納部14,ポートパスコスト格納部15に各々格納されたブリッジ優先度,PTP優先度,ポートパスコストに基づきネットワーク2のスパニングツリーが構築される。尚、図2に例示されたネットワーク2においては、ネットワーク2のマスタークロックとして設定されネットワーク機器1aがネットワーク2のルートブリッジとして選択される。
【0031】
前記スパニングツリーが構築されたネットワーク2において、ネットワーク機器1aのOAM部11は、ネイバー(ネットワーク2に属する隣接する他のネットワーク機器1b)との間で試験的な同期を行う。この同期の結果は、時刻同期の品質を評価するためのものであるので、ネットワーク機器1のクロックには反映されない。
【0032】
OAM部11は、前記試験的な同期の毎に時刻補正量の変位を計測する。この時刻補正量の変動が安定しない場合、ネットワーク機器1の同期品質として低いスコアが付けられる。そして、このスコアが最終的にネットワーク機器1におけるスパニングツリーのポートのパスコストとして反映される。
【0033】
また、同期品質の指標自体も変動することが想定されるが、ポートのパスコストが頻繁に変化すると、スパニングツリーの経路変更が頻繁に生じることになり、ネットワーク2の運用面から好ましくない。
【0034】
そこで、ラッチ部16は、前記変位の測定をある程度終えた時点で当該変位の測定値をラッチ(保持)することによりの前記時刻補正量の細かい変動をフィルターする。そして、前記時刻補正量の現在値と前記ラッチした値との偏差が閾値を超えた状態で所定時間が継続した場合、前記ラッチが再度行われて、ポートパスコスト格納部15に格納されたポートのパスコストが変更される。次いで、OAM部11は第二選択回路18を介してSTP制御部12に対してネットワーク2の通信経路の再構成させるトリガー信号を出力する。STP制御部12は前記トリガー信号を受けると前記変更されたポートのパスコストに基づくBPDU(ブリッジ プロトコル データユニット)を作成する。ネットワーク機器1aは前記BPDUをネットワーク機器1b〜1dに通知して前記スパニングツリーの経路変更を実行させる。
【0035】
以上のネットワーク2によれば、このネットワーク2に属するネットワーク機器(例えば、ネットワーク機器1a)と隣接する他のネットワーク機器(例えば、ネットワーク機器1b)との時刻同期に基づきネットワーク2の時刻同期の品質が監視される。そして、前記品質に基づきネットワーク2の通信経路の再構成が実行される。したがって、時刻同期及び冗長化が可能なネットワークの同期品質の向上とその維持が図られる。
【0036】
特に、前記監視された品質に基づきネットワーク2のスパニングツリーの再構成が実行されるので、ネットワーク2の冗長性が安定維持される。
【0037】
また、前記監視された品質の指標は、ネットワーク機器1のポートのパスコストに反映されるので、ネットワーク2の運用状況に応じた時刻同期と冗長性の保守管理が行える。特に、隣接のネットワーク機器1での時刻同期の品質が監視されることにより、当該品質がスパニングツリーの再構成の選好性に反映される。したがって、帯域の大小よりも同期品質の高いパスがより選好されてスパニングツリーの経路が再構成されるので、ネットワーク2の同期品質に貢献する。
【0038】
さらに、ネットワーク機器1においてOAM部11からSTP制御部12に供される時刻同期の品質の変動がラッチ部16により緩衝されるので、ネットワーク2の同期品質及び冗長性の維持にあたり、ネットワーク機器1の負担が軽減される。
【0039】
尚、ネットワーク機器1はそのクロックがネットワーク2のマスタークロックとして機能する場合、ネットワーク2のルートブリッジとして選択されることにより、PTPマスターとPTPスレーブのネットワーク的な距離のワースト値が最小化する。したがって、ネットワーク2の同期品質の向上がさらに図られる。
【0040】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲内で様々な態様で実施が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1,1a〜1d…ネットワーク機器
2…ネットワーク
3a,3b…端末
10…ポート
11…OAM部(監視部)
12…STP制御部(経路制御部)
13…ブリッジ優先度格納部
14…PTP優先度格納部
15…ポートパスコスト格納部
16…ラッチ部
17…第一選択回路
18…第二選択回路
図1
図2