特許第6981067号(P6981067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981067
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】分離層の層厚測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/02 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   G01B21/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-137581(P2017-137581)
(22)【出願日】2017年7月14日
(65)【公開番号】特開2019-20201(P2019-20201A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】織田 和優
(72)【発明者】
【氏名】宮本 昌彦
【審査官】 山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3039074(JP,U)
【文献】 実開昭49−014462(JP,U)
【文献】 実公昭50−044761(JP,Y1)
【文献】 特開平09−264772(JP,A)
【文献】 特開平05−005646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00−21/32
G01F 23/02−23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合液に形成された分離層の層厚測定方法であって、前記混合液は液体とこの液体よりも比重が小さい微粉末を混合したものであり、前記分離層は前記微粉末が凝集して形成されていて前記混合液の上方に浮かんだ状態になっていて、少なくとも筒軸方向に延在する透明部を有する筒状体を前記混合液に差し込んで前記分離層を貫通させることにより、前記筒状体の内部に前記分離層を前記混合液中に存在している層状のままの状態で収容し、この層状のままの状態の前記分離層を維持しながら、前記筒状体を前記混合液に対して相対的に上方移動させて前記混合液の液面上の所定の測定位置に配置し、前記測定位置で、前記透明部を通じて前記筒状体に収容されている前記分離層の層厚を把握して測定することを特徴とする分離層の層厚測定方法。
【請求項2】
前記筒状体の内部に前記分離層を収容した後、収容した前記分離層の上方から前記筒状体の内部を吸引することにより、前記分離層を前記混合液中に存在している層状のままの状態に維持する請求項1に記載の分離層の層厚測定方法。
【請求項3】
前記筒状体の内部に前記分離層を収容した後、前記筒状体の下端開口を封鎖することにより、前記分離層を前記混合液中に存在している層状のままの状態に維持する請求項1に記載の分離層の層厚測定方法。
【請求項4】
前記筒状体を前記混合液の液面に対して垂直に相対移動させて前記混合液に差込み、前記筒状体を前記混合液の液面に対して垂直に相対移動させて前記測定位置に配置する請求項1〜3のいずれかに記載の分離層の層厚測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離層の層厚測定方法に関し、さらに詳しくは、混合液に形成された分離層の層厚を、簡便に精度よく把握することができる分離層の層厚測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体を混合させた混合液や、異なる種類の液体どうしを混合させた混合液では、混合させたものどうしの物性等に起因して互いが分離して、分離層が形成されることがある。このような分離層は、混合液中に存在しているので、その層厚を把握することが難しい。混合液を透明な容器に収容して、容器の側面から分離層の層厚を測定することは可能であるが、適切な透明な容器の作成には、余分な時間とコストを要するだけでなく、容器の側面に接触することで分離層の層厚が変化しているので、測定精度が低くなる。また、容器の側面近傍以外での分離層の層厚を測定することができないため、層厚の全体分布は把握できない。
【0003】
対象物に塗布した塗料等の層厚を測定する方法は種々提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。しかしながら、これら提案されている方法は、固体の表面上で層厚を測定することを前提としている。そのため、混合液に形成された不安定な分離層の層厚を精度よく測定することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−127401号公報
【特許文献2】特開昭61−100601号公報
【特許文献3】特開2000−180102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、混合液に形成された分離層の層厚を、簡便に精度よく把握することができる分離層の層厚測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の分離層の層厚測定方法は、混合液に形成された分離層の層厚測定方法であって、前記混合液は液体とこの液体よりも比重が小さい微粉末を混合したものであり、前記分離層は前記微粉末が凝集して形成されていて前記混合液の上方に浮かんだ状態になっていて、少なくとも筒軸方向に延在する透明部を有する筒状体を前記混合液に差し込んで前記分離層を貫通させることにより、前記筒状体の内部に前記分離層を前記混合液中に存在している層状のままの状態で収容し、この層状のままの状態の前記分離層を維持しながら、前記筒状体を前記混合液に対して相対的に上方移動させて前記混合液の液面上の所定の測定位置に配置し、前記測定位置で、前記透明部を通じて前記筒状体に収容されている前記分離層の層厚を把握して測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、混合液に差し込んだ筒状体の内部に、分離層を混合液中に存在している層状のままの状態で収容して、この状態の分離層を維持するので、筒状体に収容されている分離層の層厚を測定することで、混合液における分離層の層厚を精度よく把握できる。しかも、筒状体に収容されている分離層の層厚は、筒状体の透明部を通じて目視できるので、容易に把握することができる。筒状体は混合液の所望の位置に差し込むことができるので、分離層全体の層厚の分布を把握することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に用いる測定装置を正面視で例示する説明図である。
図2図1の筒状体、上下移動機構および位置決め機構を平面視で例示する説明図である。
図3図1の筒状体を混合液に差し込んだ状態を正面視で例示する説明図である。
図4図3の筒状体を所定の測定位置に配置して筒状体に収容した離層の膜厚を測定している状態を正面視で例示する説明図である。
図5】本発明に用いる測定装置の別の形態を正面視で例示する説明図である。
図6図5の筒状体を混合液に差し込んだ状態を正面視で例示する説明図である。
図7図6の筒状体を所定に測定位置に配置して筒状体に収容した分離層の膜厚を測定している状態を正面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の分離層の層厚測定方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1図2に例示する本発明に用いる分離層の層厚測定装置1(以下、測定装置1という)は、混合液10に形成された分離層10bの層厚Tを把握する際に使用する。例えば、液体に粉体を混合させた混合液10や、異なる種類の液体どうしを混合させた混合液10で形成される分離層10bが測定対象になる。詳述すると、液体10aとこの液体10aよりも比重が小さい微粉末(比重0.05〜0.35で平均粒径20μm〜100μmのマイクロバルーンなど)を混合した混合液10では、微粉末が凝集して分離層10bが形成され、分離層10bは液体10aの上方に浮かんだ状態になる。或いは、比重の異なる液体10a、10bどうし(水と油など)を混合させた混合液10では、一方の液体10bが他方の液体10aに浮かんだ状態になって分離層10bになる。
【0012】
測定装置1は、少なくとも筒軸方向に延在する透明部2aを有する筒状体2と、混合液10が収容された容器9に対して筒状体2を相対的に上下移動させる上下移動機構3と、分離層保持機構として機能する吸引手段4と、厚さ測定手段7とを備えている。この形態では、測定装置1はさらに位置決め機構6を有している。容器9の上端は開口した状態になっている。
【0013】
筒状体2は筒軸方向に上下方向にして使用される。筒状体2は少なくとも下端が開口されて横断面積が一定の仕様になっている。具体的には上下端が開口している樹脂製やガラス製の円筒体や四角状などの多角状筒体を筒状体2として用いることができる。
【0014】
透明部2aは筒状体2の全長に渡って連続して延在している必要はなく、分離層10bが収容される範囲で筒軸方向に延在していればよい。筒状体2の全体が透明であってもよい。尚、本発明の透明とは、無色透明に限らず、筒状体2の内部の状態をある程度、目視できれば着色された透明でもよい。
【0015】
この形態の上下移動機構3は、所定の測定位置に固定された筒状体2に対して容器9を上下移動させる。この上下移動機構3は、容器9が載置されるベース3aと、ベース3aを上下移動させる流体シリンダ3bとを有している。流体シリンダ3bのロッドが上方に突出することでベース3aが上方移動し、ロッドが下方に後退することでベース3aが下方移動する。ロッドの作動は制御部8により制御される。上下移動機構3はこの形態に例示した構成に限らず、例えば、不動状態で置かれた容器9に対して筒状体2を上下移動させる仕様にすることもできる。
【0016】
吸引手段4は、吸引器4aと、吸引器4aと筒状体2とを連結する連通管4bとを有している。吸引器4aは、筒状体2の内部の空気aを吸引して負圧にできるものであればよく、例えばポンプ等を用いることができる。或いは、ゴムや樹脂等で形成されたスポイトを、吸引手段4として用いることもできる。
【0017】
厚さ測定手段7は、筒状体2に収容された分離層10bの層厚を測定できるものであればよく、例えば、ノギスや各種メジャー等を用いることができる。或いは、透明部2aに付した目盛を厚さ測定手段7として用いることもできる。
【0018】
位置決め機構6は、容器9に収容された混合液10の液面上で、筒状体2を容器9に対して相対移動させて平面視の所定位置に位置決めする。この形態の位置決め機構6には、容器9を前後方向Fに移動させる前後方向移動部6aと、容器9を幅方向Wに移動させる幅方向移動部6bとを有している。位置決め機構6は、上下移動機構3の下に配置されている。
【0019】
前後方向移動部6aおよび幅方向移動部6bの作動は制御部8により制御される。前後方向移動部6aおよび幅方向移動部6bの作動を制御することで、容器9を所望の平面位置に移動させることができるので、筒状体2を容器9に対して平面視の所定位置に位置決めできる。位置決め機構6はこれに限らず、例えば、不動状態で置かれた容器9に対して筒状体2を平面視の所定位置に移動させる仕様にすることもできる。筒状体2あるいは容器9を任意の所望の位置(3次元の位置)に移動させるロボットアーム等を用いると、このロボットアームを、上下移動機構3および位置決め機構6として機能させることができる。
【0020】
次いで、この測定装置1を用いた本発明の層厚測定方法の手順を説明する。
【0021】
まず、図1に例示するように、筒状体2を所定の測定位置に固定した状態にする。次いで容器9に収容された混合液10の液面上で、位置決め機構6を作動させて、筒状体2を容器9に対して平面視の所定位置に位置決めする。
【0022】
次いで、図3に例示するように、上下移動機構3を作動させて、筒状体2を容器9に収容された混合液10に差し込んで分離層10bを貫通させる。これにより、筒状体2の内部に分離層10bをある程度の量の液体10aとともに、混合液10中に存在している層状のままの状態で収容する。分離層10bの層厚Tの測定精度を向上させるため、筒状体2は混合液10の液面に対して垂直に相対移動させて混合液10に差込むとよい。
【0023】
次いで、吸引手段4を作動させて、この層状のままの状態の分離層10bを維持する。即ち、筒状体2に収容した分離層10bの上方から吸引手段4によって筒状体2の内部の空気aを吸引して負圧にする。吸引手段4による吸引は、分離層10bの層厚測定が完了するまで継続する。
【0024】
次いで、図4に例示するように、層状の分離層10bの状態を維持しつつ、上下移動機構3を作動させて、筒状体2を混合液10の液面上の所定の測定位置に配置する。分離層10bの層厚Tの測定精度を向上させるため、筒状体2は、混合液10の液面に対して垂直に相対移動させるとよい。
【0025】
この筒状体2を単純に上方に相対移動させると、筒状体2に収容された分離層10bには自重が作用するので筒状体2の下端開口から流出しようとする。これに伴い、収容された分離層10bの層厚tに変化が生じる。微粉末が凝集して形成された分離層10bの場合は、この自重によって分離層10bが崩壊することもある。層厚tに変化が生じると、容器9に収容されている混合液10中に形成されている分離層10の層厚Tとの同一性が損なわれる。
【0026】
そこで、本発明では、筒状体2に収容された分離層10bに作用する自重を相殺させる程度の大きさの吸引力をこの分離層10bに作用させることで分離層10bの状態を維持する。分離層10bに作用させる吸引力(負圧)の適切な大きさは事前実験等によって予め把握しておくとよい。
【0027】
測定位置では、透明部2aを通じて筒状体2に収容されている分離層10bの層厚tが目視により把握できる。そこで、透明部2aを通じて、厚さ測定手段7を用いて分離層10bの層厚tを測定する。透明部2aに筒状体2の筒軸方向に所定間隔をあけて配置された目盛を付しておくと、この目盛を厚さ測定手段7として、或いは、厚さ測定手段7の補助として用いることができる。
【0028】
このように本発明によれば、分離層10bを混合液10中に存在している層状のままの状態で筒状体2に収容して、この層状のままの状態の分離層10bを維持するので、筒状体10に収容されている分離層10bの層厚tと容器9に収容されている混合液10中に存在している分離層10の層厚Tとの同一性を確保できる。そのため、この層厚tを測定することで、混合液10中の分離層10bの層厚Tを精度よく把握できる。
【0029】
しかも、筒状体2に収容されている分離層10bの層厚tは、筒状体2の透明部2aを通じて目視できるので、容易に把握することができる。また、筒状体2は混合液10の所望の位置に差し込むことができるので、混合液10の上方で浮いた状態になっている分離層10b全体の層厚Tの分布を把握することも可能になる。また、容器9を透明な仕様にする必要がなく、汎用の容器9のままで測定を行えるメリットもある。
【0030】
図5に例示する測定装置1の別の形態は、先の形態とは、分離層保持機構が異なっていて、その他の構成は先の形態と同様である。この形態では、筒状体2に収容された分離層10bの下方位置で筒状体2の開口を封鎖する封鎖手段5が分離層保持機構になっている。
【0031】
具体的には封鎖手段5は、筒状体2の下端開口を開閉する開閉蓋5aと、開閉蓋5aに接続された作動紐5bとを有している。開閉蓋5aはヒンジ等によって筒状体2に回動可能に接続されている。作動紐5bは筒状体2に沿って上方に延在している。作動紐5bを上方に引っ張ることで開閉蓋5aは筒状体2の下端開口を閉じて封鎖する。作動紐5bを上方に引っ張らずにフリーにすることで、開閉蓋5aは筒状体2の下端開口を開いた状態にする。この状態では、図5に例示するように、開閉蓋5aは筒状体2の筒軸方向に平行になるように設定される。
【0032】
封鎖手段5は、例示した構成に限らず種々の構成を採用することができる。例えば、作動紐5bを上方に引っ張ることで開閉蓋5aが筒状体2の下端開口を開いた状態にして、作動紐5bを上方に引っ張らずにフリーにすることで、開閉蓋5aが筒状体2の下端開口を閉じて封鎖する構成にすることもできる。或いは、作動紐5bを上方に引っ張ることで開閉蓋5aが筒状体2の下端開口を開いた状態にして、別の作動紐5bを上方に引っ張ることで、開閉蓋5aが筒状体2の下端開口を閉じて封鎖する構成にすることもできる。
【0033】
この測定装置1では、図6に例示するように下端開口を開いた状態で、筒状体2を容器9に収容された混合液10に差し込んで分離層10bを貫通させる。これにより、筒状体2の内部に分離層10bをある程度の量の液体10aとともに、混合液10中に存在している層状のままの状態で収容する。
【0034】
次いで、開閉蓋5aを作動させて筒状体2の下端開口と閉じて封鎖する。これにより、層状のままの状態の分離層10bを維持する。開閉蓋5aによる筒状体2の下端開口の封鎖は、分離層10bの層厚測定が完了するまで継続する。
【0035】
次いで、図7に例示するように、分離層10bの状態を維持しつつ、筒状体2を所定の測定位置に配置する。測定位置では、透明部2aを通じて筒状体2に収容されている分離層10bの層厚tを厚さ測定手段7を用いて測定する。この形態でも先の形態のように、層厚tを測定することで、混合液10中の分離層10bの層厚Tを精度よく把握できる。
【0036】
上述したそれぞれの形態の測定装置1では、分離層10bを筒状体2に収容する過程は、機械制御になっている。そのため、測定のたびに生じる測定結果のバラつきや測定者のスキルの差異に起因する測定結果のバラつきを抑制するには有利になる。
【符号の説明】
【0037】
1 測定装置
2 筒状体
2a 透明部
3 上下移動機構
3a ベース
3b 流体シリンダ
4 吸引手段(分離層保持機構)
4a 吸引器
4b 連通管
5 封鎖手段(分離層保持機構)
5a 開閉蓋
5b 作動紐
6 位置決め機構
6a 前後方向移動部
6b 幅方向移動部
7 厚さ測定手段
8 制御部
9 容器
10 混合液
10a 液体
10b 分離層
T 混合液中の分離層の層厚
t 筒状体に収容された分離層の層厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7