(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の一実施形態に係る二次電池の製造方法をより詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図面における各種の要素は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
【0015】
本明細書で直接的または間接的に説明される「平面視(または平面図)」は、二次電池を構成する電極材層の積層方向(電池、電極組立体または電極材層の厚み方向)に沿って対象物を外側からとらえた場合の形態に基づいている。また、本明細書で直接的または間接的に説明される「断面視(または断面図)」は、二次電池を構成する電極材層の積層方向(電池または電極材層の厚み方向)に沿って対象物を切り取った仮想的な断面に基づいている。
【0016】
更に、本明細書で直接的または間接的に用いる上下方向および左右方向は、それぞれ図中における上下方向および左右方向に相当する。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材または同じ意味内容を示すものとする。
【0017】
[本発明で製造される二次電池の構成]
本発明の製造方法では二次電池が得られる。本明細書でいう「二次電池」とは、充電・放電の繰り返しが可能な電池のことを指している。従って、本発明の製造方法で得られる二次電池は、その名称に過度に拘泥されるものでなく、例えば蓄電デバイスなども対象に含まれ得る。
【0018】
本発明に係る二次電池は、正極、負極及びセパレータを含む電極構成層が積層した電極積層構造を有する電極組立体を備えている。
図1には電極組立体を模式的に例示している。図示されるように、正極1と負極2とはセパレータ3を介して積み重なって電極構成層10を成しており、かかる電極構成層10が少なくとも1つ以上積層して電極組立体が構成されている。二次電池ではこのような電極組立体が電解質(例えば非水電解質)と共に外装体に封入されている。
【0019】
正極は、少なくとも正極材層および正極集電体から構成されている。正極では正極集電体の少なくとも片面に正極材層が設けられており、正極材層には電極活物質として正極活物質が含まれている。例えば、電極組立体における複数の正極は、それぞれ、正極集電体の両面に正極材層が設けられていてよいし、あるいは、正極集電体の片面にのみ正極材層が設けられていてよい。二次電池のさらなる高容量化の観点でいえば正極は正極集電体の両面に正極材層が設けられていてよい。
【0020】
負極は、少なくとも負極材層および負極集電体から構成されている。負極では負極集電体の少なくとも片面に負極材層が設けられており、負極材層には電極活物質として負極活物質が含まれている。例えば、電極組立体における複数の負極は、それぞれ、負極集電体の両面に負極材層が設けられていてよいし、あるいは、負極集電体の片面にのみ負極材層が設けられていてよい。二次電池のさらなる高容量化の観点でいえば負極は負極集電体の両面に負極材層が設けられていてよい。
【0021】
正極および負極に含まれる電極活物質、即ち、正極活物質および負極活物質は、二次電池において電子の受け渡しに直接関与する物質であり、充放電、すなわち電池反応を担う正負極の主物質である。より具体的には、「正極材層に含まれる正極活物質」および「負極材層に含まれる負極活物質」に起因して電解質にイオンがもたらされ、かかるイオンが正極と負極との間で移動して電子の受け渡しが行われて充放電がなされる。正極材層および負極材層は特にリチウムイオンを吸蔵放出可能な層であることが好ましい。つまり、非水電解質を介してリチウムイオンが正極と負極との間で移動して電池の充放電が行われる非水電解質二次電池となっていることが好ましい。充放電にリチウムイオンが関与する場合、本発明の製造方法で得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン電池に相当し、正極および負極がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有している。
【0022】
正極材層の正極活物質は例えば粒状体から成るところ、粒子同士の十分な接触と形状保持のためにバインダー(結着材とも称される)が正極材層に含まれていることが好ましい。更には、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が正極材層に含まれていてもよい。同様にして、負極材層の負極活物質は例えば粒状体から成るところ、粒子同士の十分な接触と形状保持のためにバインダーが含まれることが好ましく、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が負極材層に含まれていてもよい。このように、複数の成分が含有されて成る形態ゆえ、正極材層および負極材層はそれぞれ正極合材層および負極合材層などと称すこともできる。
【0023】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であることが好ましい。かかる観点でいえば、正極活物質は例えばリチウム含有複合酸化物であることが好ましい。より具体的には、正極活物質は、リチウムと、コバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄から成る群から選択される少なくとも1種の遷移金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物であることが好ましい。つまり、本発明の製造方法で得られる二次電池の正極材層においては、そのようなリチウム遷移金属複合酸化物が正極活物質として好ましくは含まれている。例えば、正極活物質はコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、または、それらの遷移金属の一部を別の金属で置き換えたものであってよい。このような正極活物質は、単独種として含まれてよいものの、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。あくまでも例示にすぎないが、本発明の製造方法で得られる二次電池では、正極材層に含まれる正極活物質がコバルト酸リチウムとなっていてよい。
【0024】
正極材層に含まれる得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、ポリフッ化ビ
ニリデン、ビ
ニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビ
ニリデンフルオライド−テトラフルオロチレン共重合体およびポリテトラフルオロチレンなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。正極材層に含まれる得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブおよび気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。例えば、正極材層のバインダーはポリフッ化ビニリデンであってよく、また、正極材層の導電助剤はカーボンブラックであってよい。あくまでも例示にすぎないが、正極材層のバインダーおよび導電助剤は、ポリフッ化ビニリデンとカーボンブラックとの組合せとなっていてよい。
【0025】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であることが好ましい。かかる観点でいえば、負極活物質は例えば各種の炭素材料、酸化物、または、リチウム合金などであることが好ましい。
【0026】
負極活物質の各種の炭素材料としては、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、ハードカーボン、ソフトカーボン、ダイヤモンド状炭素などを挙げることができる。特に、黒鉛は電子伝導性が高く、負極集電体との接着性が優れる点などで好ましい。負極活物質の酸化物としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛および酸化リチウムなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。負極活物質のリチウム合金は、リチウムと合金形成され得る金属であればよく、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、Laなどの金属とリチウムとの2元、3元またはそれ以上の合金であってよい。このような酸化物は、その構造形態としてアモルファスとなっていることが好ましい。結晶粒界または欠陥といった不均一性に起因する劣化が引き起こされにくくなるからである。あくまでも例示にすぎないが、本発明の製造方法で得られる二次電池では、負極材層の負極活物質が人造黒鉛となっていてよい。
【0027】
負極材層に含まれる得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。例えば、負極材層に含まれるバインダーはスチレンブタジエンゴムとなっていてよい。負極材層に含まれる得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブおよび気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。なお、負極材層には、電池製造時に使用された増粘剤成分(例えばカルボキシルメチルセルロース)に起因する成分が含まれていてもよい。
【0028】
あくまでも例示にすぎないが、負極材層における負極活物質およびバインダーは人造黒鉛とスチレンブタジエンゴムとの組合せになっていてよい。
【0029】
正極および負極に用いられる正極集電体および負極集電体は電池反応に起因して活物質で発生した電子を集めたり供給したりするのに資する部材である。このような集電体は、シート状の金属部材であってよく、多孔または穿孔の形態を有していてよい。例えば、集電体は金属箔、パンチングメタル、網またはエキスパンドメタル等であってよい。正極に用いられる正極集電体は、アルミニウム、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものが好ましく、例えばアルミニウム箔であってよい。一方、負極に用いられる負極集電体は、銅、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものが好ましく、例えば銅箔であってよい。
【0030】
正極および負極に用いられるセパレータは、正負極の接触による短絡防止および電解質保持などの観点から設けられる部材である。換言すれば、セパレータは、正極と負極と間の電子的接触を防止しつつイオンを通過させる部材であるといえる。好ましくは、セパレータは多孔性または微多孔性の絶縁性部材であり、その小さい厚みに起因して膜形態を有している。あくまでも例示にすぎないが、ポリオレフィン製の微多孔膜がセパレータとして用いられてよい。この点、セパレータとして用いられる微多孔膜は、例えば、ポリオレフィンとしてポリエチレン(PE)のみ又はポリプロピレン(PP)のみを含んだものであってよい。更にいえば、セパレータは、“PE製の微多孔膜”と“PP製の微多孔膜”とから構成される積層体であってもよい。セパレータの表面が無機粒子コート層や接着層等により覆われていてもよい。セパレータの表面が接着性を有していてもよい。なお、本発明において、セパレータは、その名称によって特に拘泥されるべきでなく、同様の機能を有する固体電解質、ゲル状電解質、絶縁性の無機粒子などであってもよい。
【0031】
本発明の製造方法で得られる二次電池では、正極、負極およびセパレータを含む電極構成層から成る電極組立体が電解質と共に外装に封入されている。正極および負極がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有する場合、電解質は有機電解質・有機溶媒などの“非水系”の電解質であることが好ましい(すなわち、電解質が非水電解質となっていることが好ましい)。電解質では電極(正極・負極)から放出された金属イオンが存在することになり、それゆえ、電解質は電池反応における金属イオンの移動を助力することになる。
【0032】
非水電解質は、溶媒と溶質とを含む電解質である。具体的な非水電解質の溶媒としては、少なくともカーボネートを含んで成るものが好ましい。かかるカーボネートは、環状カーボネート類および/または鎖状カーボネート類であってもよい。特に制限されるわけではないが、環状カーボネート類としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)およびビニレンカーボネート(VC)から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。鎖状カーボネート類としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジプロピルカーボネート(DPC)から成る群から選択される少なくも1種を挙げることができる。あくまでも例示にすぎないが、非水電解質として環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組合せが用いられてよく、例えばエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物が用いられる。また、具体的な非水電解質の溶質としては、例えば、LiPF
6および/またはLiBF
4などのLi塩が好ましく用いられる。
【0033】
二次電池の電極組立体には、ショート時の発熱抑制のために金属シートが用いられる場合がある。例えば、電極組立体の最外金属層を成すように金属シートが用いられ得る。金属シートとしては、アルミニウム、銅、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔であってよい。
【0034】
二次電池の外装体は、正極、負極及びセパレータを含む電極構成層が積層した電極組立体を包み込むものであるが、ハードケースの形態であってよく、あるいは、ソフトケースの形態であってもよい。具体的には、外装体は、いわゆる金属缶に相当するハードケース型であってもよく、あるいは、いわゆるラミネートフィルムから成るパウチに相当するソフトケース型であってもよい。
【0035】
[本発明の製造方法の特徴]
本発明の製造方法は、電極組立体の製作過程に特徴を有している。特に、本発明は、電極組立体の最外層の積層プロセスに特徴を有する。具体的には、電極組立体の構成として少なくとも最外層を依然含んでいない電極組立前駆体に金属層を積層配置させるに際して金属層の撮像を行い、その撮像を通じて最外層の位置検出を行う。
【0036】
図2に示すように、電極組立体100の最外層として用いる金属層50は撮像手段60で撮像される。つまり、かかる金属層50の積層のために、外側から金属層50を撮像して位置検出を行い、その位置検出の情報に基づいて金属層50を電極組立前駆体100’に対して配置させる。最外層として用いられる金属層50(以下では「最外金属層」とも称する)の撮像は照明下で行うことが好ましい。つまり、図示するように、照射光源70を少なくとも1つ用いて最外金属層50に光を当てながら、最外金属層50の撮像を行うことが好ましい。
【0037】
本明細書でいう「撮像」とは、広義には、電極組立体の積層において、被写体となる金属層を外部から撮影して、得られる金属層の位置情報に基づき最外層の積層プロセスを視覚化することを意味している。狭義には、「撮像」は、特に電極組立体の最外層を成す金属層を積層させるに際して、その最外層を上方から撮影して、得られる画像・映像を通じて最外層の積層プロセスを視覚化することを意味している。
【0038】
撮像手段60は、最外層の積層プロセスを視覚化できるものであれば、特に制限はない。例えば、撮像手段60はビデオカメラ、デジタルカメラまたはそれに類するものであってよい。具体的な撮像手段を例示すれば、CCDカメラ、CMOSカメラ、赤外線カメラ、近赤外カメラ、中赤外カメラおよびX線カメラなどを挙げることができ、更には、レーザマイクロスコープ(レーザ顕微鏡)およびレーザ干渉計なども挙げることができる。
【0039】
本発明における撮像では、最外層の積層プロセスを視覚化するところ、特にその最外層となる金属層の位置検出を行う。電極組立体の最外層には、それ以外の電極組立体の構成要素と異なる要素が用いられることがある。例えば、電極組立体の主たる構成電極として、いわゆる両面電極(電極集電体の両主面に電極材層が設けられた電極)が用いられる一方、電極組立体の最外電極には、いわゆる片面電極(電極集電体の片側の主面にのみ電極材層が設けられた電極)がエネルギー密度向上のため用いられることがある。かかる場合、片面電極における電極集電体が電極組立体の最外層に相当する。また、電極組立体の最外部には、電極積層構造を成さない非電極要素が用いられることもある。例えば、不都合なショート時の発熱抑制のために金属シートが電極組立体の最外金属層として用いられることがある。
【0040】
このような金属層が電極組立体の最外層として用いられる場合、被写体として撮像される金属層は、電極材層(正極材層・負極材層)と異なる撮像画となり得、高レベルで積層ズレを減じるには、その金属層のエッジをより正確に把握することが求められることを本願発明者は見出した。例えば、最外層として用いる金属層は、照射光の光反射の程度および/または映り込みなどに起因して最外層エッジがぼやけてしまうことがある。よって、本発明は、その観点から最外層をより正確に位置検出して最外層の積層化を好適に行う。
【0041】
特に照明下で最外金属層の撮像を行うと、照射光源からの光に起因してハレーションが生じ、撮像画において最外金属層のより正確な位置検出が困難となる場合がある(
図7)。よって、ハレーションが生じないように、照射光源の光強度を調整したり、および/または、最外金属層に対する光の入射方向を調整したりしてよい。
【0042】
本発明のある好適な態様では、電極組立体で最外露出面となる金属層の主面に対して表面粗さを変更する処理を施す。ハレーションが特に効果的に減じられ、撮像画において最外金属層のより正確な位置検出を行うことができるからである。最外露出面となる最外金属層の主面は、照射光源からの光が直接的に当たる面であるところ、かかる面の表面粗さを変更することでハレーションをより効率的に減じることができる。より具体的には、最外露出面となる金属層の主面における表面粗さの程度をより上げることによって(すなわち、最外露出面となる金属層の主面を当初よりも粗くすることによって)、ハレーションをより効果的に減じてよい。このようにハレーションが減じられると、最外金属層50の積層化のための撮像画80において最外金属層エッジ51がより明確となり(
図3参照)、より正確な最外金属層50の位置検出がもたらされ得る。
【0043】
あくまでも例示にすぎないが、最外露出面となる金属層の主面に対しては、エッチング処理、ブラスト処理、レーザ処理および表面コート処理から成る群から選択される少なくとも1つを施してよい。最外露出面となる金属の主面をより粗くできるからである。
【0044】
エッチング処理は、最外露出面となる金属層の主面にエッチング液を接触させて表面粗さを変更する処理である。エッチング液としては酸またはアルカリなどを含んで成る溶液を用いてよい。かかる酸は無機酸が好ましく、例えば、塩酸、硫酸および硝酸から成る群から選択される少なくとも1種であってよい。一方、アルカリは、エッチング処理に常套的なものを用いてよく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびアンモニア等から成る群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0045】
ブラスト処理は、最外露出面となる金属層の主面に研磨剤を吹き付けて表面粗さを変更する処理である。ブラスト処理としては、例えばサンドブラスト処理/エアブラスト処理を行ってよい。つまり、研削粒子等を用いたエアブラスト処理を行ってよい。ウェットブラスト処理などを行ってもよい。
【0046】
レーザ処理は、最外露出面となる金属層の主面に対してレーザを照射することによって表面粗さを変更する処理である。例えば、レーザとしては、エキシマレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、CO
2レーザ、フェムト秒レーザなどを利用してよい。特に、熱によるダメージがより少ない点でいえばエキシマレーザまたはUV−YAGレーザが好ましい。
【0047】
表面コート処理は、最外露出面となる金属層の主面に対して表面コート材を供すことによって、表面粗さを変更する処理である。具体的な表面コート材としては、被覆層または被膜を形成することで金属層の表面粗さの変更に資するものであれば、いずれの適当な材料が用いられてよい。
【0048】
このように最外露出面の表面をより粗くすると、ハレーションがより効果的に減じられるので、最外金属層のエッジをより正確に把握し易くなる。つまり、撮像で得られる画像・映像において、最外金属層のエッジ輪郭が不都合にぼやけることなくより正確に最外金属層のエッジを把握でき、最外金属層の積層のための位置決めをより的確に実施できる。したがって、電極組立体の積層プロセスにおいて、ミクロン(μm)オーダーの高レベルで積層ズレを減じることができ、積層精度の向上を図ることができる。このような積層精度の向上は、高エネルギー密度化などの点で特に好ましい。
【0049】
最外層となる金属層の積層について詳述しておく。本発明では、撮像で得られる情報に基づいて、最外層を積層するための手段を好適に制御し、最外層の積層配置のための位置決めをより正確に実施できる。つまり、撮像を介して最外層のエッジ輪郭をより正確に把握できるところ、その情報に基づいて積層化手段(例えば、吸引パッド具)をより好適に制御して積層ズレを減じた状態で最外層を電極組立前駆体に配置することができる。換言すれば、本発明において撮像で得られた情報は、積層化手段(例えば、吸引パッド具)へとフィードバックされ、最外層の積層配置に好適に利用される。このような観点ゆえ、積層装置は、撮像手段で得られた最外層のエッジ輪郭の情報に基づき、吸引パッド具などの積層化手段を制御する手段を好ましくは有して成る。例えば、最外層の積層配置の実施に際して、撮像を介して最外層のエッジ輪郭をリアルタイムに測定し、その測定されたデータを積層化手段において利用する。積層装置には、かかる測定されたデータに基づいて最外層の積層配置のための制御データなどを構築する演算手段が好ましくは設けられている。演算手段に代表される制御手段自体は、コンピュータにより構成されたものであってよく、例えば少なくともCPUおよび一次記憶装置部や二次記憶装置部などを備えたコンピュータにより構成されていてよい。
【0050】
本発明では、最外露出面の表面をより粗く処理することによってハレーションがより効果的に減じられるので、そのような表面処理では撮像画の最外層のエッジ輪郭につきより正確な情報を得ることができる。ハレーション低減のための最外露出面の表面処理(すなわち、最外露出面となる金属層の主面に施す粗さ調整のための表面処理)に関して具体的にいえば、例えば電極材層(正極材層・負極材層)の表面粗さよりも粗くしてよい。つまり、電極組立前駆体あるいは最外電極で用いられる正極材層および/または負極材層の表面粗さよりも粗さ程度が大きくなるように、最外露出面となる金属層の主面を処理してよい。ハレーションは電極材層に対して引き起こされにくいので、そのような電極材層の表面よりも粗くすることで最外露出面のハレーション低減をより確実に図ることができる。また、別の切り口でいえば、最外露出面となる金属層の主面の光沢度が200以下となるように当該主面をより粗く処理してよい。あるいは、主面において200以下の光沢度を元々有する金属層を用いてよく、かかる200以下の光沢度の主面が最外露出面となるように金属層を積層配置してよい。200以下の光沢度を有する最外露出面の場合、同様に最外露出面のハレーション低減を効果的に図ることができるからである。なお、ここでいう「光沢度」とは、JIS Z 8741に準じて測定されるものを指している。より具体的には、上記でいう光沢度“200”は、HORIBA製の測定機IG−331で測定される値を実質的に指している。
【0051】
ある好適な態様では、最外層となる金属層が、電極積層構造を成す金属箔となっている。より具体的には、最外金属層が、電極組立体において電池容量形成に寄与する金属箔となっている。例えば、正極または負極の電極集電箔が、電極積層構造を成す金属箔となっている。このような金属箔が最外金属層として用いられる場合、ハレーションが生じて最外金属層エッジが撮像画としてぼやけてしまうことがある。したがって、上述したように、ハレーションが生じないように、照射光源の光強度を調整したり、および/または、最外金属層に対する光の入射方向を調整したりしてよい。また、ハレーションが生じないように、最外金属層となる金属箔の表面粗さ(特に金属箔における最外露出面の表面粗さ)を変更する処理を施してもよい。
【0052】
本発明のある好適な態様では、最外層となる金属層が、いわゆる片面電極の金属箔となっている。かかる態様では、金属箔が電極集電体52として用いられるところ、電極集電体52の一方の主面にのみ電極材層54が設けられた片面電極55が電極積層構造に含まれる。かかる片面電極55における電極集電箔52が、電極組立体100の最外層50となる(
図4参照)。最外金属層が片面電極の金属箔であることは、電極組立体の最外層電極が片面電極であることを意味しているが、最外層電極が片面電極となる場合、最外層電極が両面電極の場合よりも電池の単位体積当たりのエネルギー密度が向上し得る。なぜなら、最外層電極が両面電極の場合では最も外側になる電極材層(内側の電極と直接対向していない側の電極材層)が電池容量形成に実質的に有効に寄与し得ないからである。つまり、最外層電極を片面電極とすることでその有効に寄与し得ない部分の体積を減じることができる。本発明では、そのような片面電極を最外層電極として用いつつも、かかる片面電極の金属箔に対して好適な撮像を行って片面電極の積層ズレの低減を図ることができる。よって、本発明に従った製造方法では、最外電極に片面電極を用いることでもたらされるエネルギー密度の向上効果がより好適に奏され得る。
【0053】
最外層電極としては特に片面負極を用いることが好ましい。つまり、電極組立体の最外層電極として用いる片面電極が負極となっていることが好ましい。これにより、いわゆるデンドライト発生がより抑制されるので、過電流などに起因した発熱・発火の発生などが抑えられ、安全性の点でも望ましい二次電池がもたらされることになる。具体的には、負極集電体の一方の主面に負極極材原料(負極活物質を含む原料)を塗布および乾燥した後でプレス処理して得られる片面電極の積層においては、その負極集電体の好適な撮像が行われ、片面電極の積層ズレが極力減じられることになる。
【0054】
電極組立体の最外層電極として片面電極を用いる場合、その片面電極の電極集電体としては、対向する両主面の表面形態が互いに異なった金属箔を用いてよい。例えば、本発明の製造方法では、片面電極55の金属箔52が、その対向する両主面としてシャイン面とマット面とを有し、シャイン面が電極組立体100にて外側向きとなるように片面電極55を電極組立前駆体100’に積層配置させてよい(
図5)。かかる場合、片面電極の金属箔のシャイン面側を撮像して位置検出を行いながら、片面電極を電極組立前駆体に配置させる。シャイン面が最外露出面となる場合、撮像で得られる画像・映像では片面電極の金属箔のエッジ輪郭が不都合にぼやけ得る。よって、本発明では、その観点に鑑みながら片面電極の金属箔をより正確に位置検出して片面電極の積層化を行うことが好ましい。つまり、上述したように、ハレーションが生じないように、照射光源の光強度を調整したり、および/または、片面電極の金属箔に対する光の入射方向を調整したりしてよいし、更には、かかる最外層となる片面電極の金属箔に対して表面粗さ(すなわち、シャイン面の表面粗さ)を変更する表面処理を施してもよい。
【0055】
二次電池の負極の電極集電体としては例えば銅箔を用いてよい。かかる場合、片面負極の銅箔は、その対向する両主面としてシャイン面とマット面とを有し、シャイン面が電極組立体にて外側向きとなるように片面負極を電極組立前駆体に積層配置させてよい。つまり、片面負極における銅箔のシャイン面を撮像して位置検出を行い、その片面負極を電極組立前駆体に対して配置させる。なお、電極集電箔のマット面には電極材層が形成されている。つまり、電極組立体の最外層電極として用いる片面電極では、そのマット面を介して電極集電箔と電極材層とが互いに接合されている。
【0056】
本明細書でいう「シャイン面」および「マット面」は、金属箔分野で用いられる箔面のことを指している。例えば、片面負極の銅箔が電解銅箔であって、それを電解ドラム表面に銅を電解析出させることで得る場合には、析出形成された電解銅箔において、銅が析出し始める面、すなわち電解ドラムと接触している面をシャイン面と称し、銅の析出が終了する面をマット面と称する。典型的には、「シャイン面」は、電解ドラムの表面が有する筋状凹凸が転写されるので、銅微粒子が略一定方向に沿った列状配列形態を有し得る一方、「マット面」は、銅微粒子がランダムに分布した列状配列形態を有し得る。
【0057】
本発明の別のある好適な態様では、最外金属層が、電極組立体の非電極要素であってよい。例えば不都合なショート時の発熱抑制のために用いられる、電極組立体の電極積層構造を成さない金属シート90が、最外金属層となっていてよい(
図6(A)および6(B)参照)。つまり、電極積層構造を成さない非電極要素として金属シート90を用い、その金属シート90を電極組立体の最外金属層として用いてよい。かかる金属シートとしては、銅シートまたはアルミニウムシートなどが用いられてよい。例えば、金属シートは、集電箔と同様の金属箔(例示すれば、銅箔またはアルミ箔)などであってよい。
【0058】
このような金属シートが電極組立体の最外金属層として用いられる場合、金属シートを撮像して位置検出を行い、電極組立前駆体に対して金属シートを配置させる。金属シートは、撮像で得られる画像・映像としてシートのエッジ輪郭が不都合にぼやける現象を引き起こし得るので、その観点に鑑みて金属シートをより正確に位置検出して金属シートの積層化を行うことが好ましい。つまり、上述したように、例えばハレーションが生じないように、照射光源の光強度を調整したり、および/または、金属シートに対する光の入射方向を調整したりしてよい。また、かかる最外層となる金属シートの表面粗さ(すなわち、電極組立体において最外側となる金属シートの主面の表面粗さ)を変更する処理を施すことも好ましい。
【0059】
金属シート90を電極組立体の最外金属層として用いる場合、
図6(A)に示すように銅箔またはアルミ箔などの金属箔をそのまま金属シート90として用いてよく、あるいは、
図6(B)に示すように金属箔92の下側面に付加的なサブ層94が設けられた金属シート90を用いてもよい。具体的には、例えば、アルミナおよびバインダ樹脂を含んで成るサブ層94が下側主面に設けられた金属箔92をショート時の発熱抑制用の金属シート90として用いてよい。さらには、そのような金属シート90の積層に際しては、図示するようにセパレータ96を介在させてもよい。
【0060】
本発明は、種々の態様で具現化することができる。例えば、電極組立体の積層プロセスに用いる治具としては白色治具を用いることが好ましい。電極組立体の主たる構成要素の電極には両面電極(電極集電体の両主面に電極材層が設けられた電極)が用いられるところ、かかる両面電極の積層をより好適に図ることができるからである。具体的には、両面電極は正極および負極が黒色を呈し得るので、白色治具を用いることで撮像で得られる画像・映像において両面電極のエッジ輪郭がより明確となり把握し易くなる。
【0061】
例えば、電極組立体の積層のための架台として、その電極組立体に含まれる電極材層とは異なる色を呈する架台を用いてよい。特に、積層のための土台となる架台が白色を呈すると、両面電極は正極および負極ともに黒色であり、それとのコントラストがより強まることになるので、両面電極のエッジ輪郭がより把握し易くなる。結果として、電極組立体の積層プロセスにおいて、ミクロンオーダーの高レベルで積層ズレを減じることにつながる。かかる説明から分かるように、本明細書でいう「電極組立体に含まれる電極材層とは異なる色を呈する」とは、二次電池の当業者(特に電極組立体の積層プロセスを行う当業者)の認識として、電極材層(正極および/または負極)とは色が異なると通常判断し得る態様を指しており、特に撮像手段で得られる画像・映像において電極材層とコントラスが比較的高く、電極材層の輪郭把握に資する色を有することになる態様を指している。また、本明細書でいう「白色治具」とは、二次電池の当業者(特に電極組立体の積層プロセスを行う当業者)の認識として、“白色”であると通常判断し得る治具のことを指しており、必ずしも厳密な白色でなくてよい。例えば、電極組立体の積層のための架台がアルマイト(特に白色アルマイト)を含んで成るものであってよい。これにより、積層プロセスに用いる架台が、電極組立体に含まれる電極材層とは異なる色を呈し得、結果として、撮像で得られる画像・映像で両面電極のエッジ輪郭がより把握し易くなる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。従って、本発明はこれに限定されず、種々の態様が考えられることを当業者は容易に理解されよう。