特許第6981089号(P6981089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6981089燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6981089
(24)【登録日】2021年11月22日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0606 20160101AFI20211202BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20211202BHJP
   C01B 3/32 20060101ALI20211202BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20211202BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20211202BHJP
【FI】
   H01M8/0606
   H01M8/04225
   C01B3/32 Z
   H01M8/10
   !H01M8/12
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-154107(P2017-154107)
(22)【出願日】2017年8月9日
(65)【公開番号】特開2019-33023(P2019-33023A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間野 忠樹
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 政成
(72)【発明者】
【氏名】山根 友和
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−018363(JP,A)
【文献】 特開2008−004370(JP,A)
【文献】 特開2015−191692(JP,A)
【文献】 特開2007−115523(JP,A)
【文献】 特開2002−134151(JP,A)
【文献】 特開2012−160361(JP,A)
【文献】 特開2002−362902(JP,A)
【文献】 特開2000−344502(JP,A)
【文献】 特開2013−004467(JP,A)
【文献】 特開2002−201002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/02−6/34
H01M 8/04−8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原燃料を改質する改質器を備え、前記改質器により生成される燃料ガスを燃料電池に供給する燃料電池システムであって、
前記改質器に原燃料を供給する燃料供給装置と、
前記燃料供給装置と前記改質器との間の燃料通路に配置される加熱器と、
前記加熱器よりも上流の前記燃料通路又は前記燃料供給装置に酸化剤ガスを供給するアクチュエータと、
前記燃料電池から排出される燃料ガスを燃焼させる燃焼器と
前記燃料供給装置と前記加熱器との間の前記燃料通路に配置された蒸発器と、
前記燃焼器で生じた排ガスを外部に排出する燃焼器排気通路と、を含み、
前記改質器前記加熱器、及び前記蒸発器は、前記燃焼器で生じた排ガスの熱により加熱され、
前記燃焼器排気通路は、前記燃焼器から前記改質器、前記加熱器、前記蒸発器の順に経由して外部に連通する燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
記アクチュエータは、前記蒸発器に前記酸化剤ガスを供給する、
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料供給装置は、前記原燃料を噴射する噴射装置を含み、
前記アクチュエータは、前記噴射装置の噴射先に前記酸化剤ガスを供給する、
燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池に酸化剤ガスを供給する酸化剤供給装置をさらに含み、
前記酸化剤供給装置は、前記アクチュエータとして、前記加熱器よりも上流の前記燃料通路又は前記燃料供給装置に酸化剤ガスを供給する、
燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記アクチュエータは、前記燃料電池から排出される酸化剤ガスを前記加熱器よりも上流の前記燃料通路又は前記燃料供給装置に供給する、
燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料通路又は前記燃料供給装置での原燃料に対する酸化剤ガスの比率λが1以上となるように前記燃料供給装置及びアクチュエータのうち少なくも一方の動作を制御するコントローラをさらに含む、
燃料電池システム。
【請求項7】
請求項に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池の温度を推定又は検出する電池検出部をさらに含み、
前記コントローラは、前記電池検出部から出力される前記燃料電池の温度が所定の閾値よりも低い場合に、前記比率λが1以上となるように前記アクチュエータの動作を制御する、
燃料電池システム。
【請求項8】
請求項に記載の燃料電池システムであって、
前記所定の閾値は、前記酸化剤ガスに起因する前記燃料電池のアノードの酸化が発生する温度範囲の下限値に設定される、
燃料電池システム。
【請求項9】
請求項から請求項までのいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記改質器の温度を推定又は検出する改質器検出部をさらに含み、
前記コントローラは、前記改質器検出部から出力される前記改質器の温度が特定の閾値に達した場合に、前記比率λが1以上となるように前記アクチュエータの動作を制御する、
燃料電池システム。
【請求項10】
請求項に記載の燃料電池システムであって、
前記特定の閾値は、前記改質器が原燃料を改質できる温度に設定される、
燃料電池システム。
【請求項11】
請求項から請求項10までのいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記燃焼器に原燃料を供給する他の燃料供給装置、を備え、
前記アクチュエータは、前記燃焼器に酸化剤ガスを供給し、
前記コントローラは、前記燃焼器での原燃料に対する酸化剤ガスの比率λが1以上となるように前記他の燃料供給装置及び前記アクチュエータのうち少なくとも一方の動作を制御する、
燃料電池システム。
【請求項12】
請求項11に記載の燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記燃料電池又は前記改質器の温度が所定の閾値を上回った場合には、前記比率λを1よりも小さくする、
燃料電池システム。
【請求項13】
請求項から請求項12までのいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記燃料電池を起動する場合に、前記燃料通路又は前記燃料供給装置における前記比率λが1以上となるように前記アクチュエータの動作を制御する、
燃料電池システム。
【請求項14】
改質器に原燃料を供給する燃料供給装置と前記改質器との間の燃料通路に配置される加熱器と、前記燃料供給装置と前記加熱器との間の前記燃料通路に配置された蒸発器と、を備え、前記改質器により生成される燃料ガスを燃料電池に供給するとともに前記燃料電池から排出された燃料ガスを燃焼器で燃焼する燃料電池システムの制御方法であって、
前記改質器に原燃料を供給する燃料供給ステップと、
前記改質器前記加熱器、及び蒸発器を前記燃焼器で生じた排ガスの熱により加熱する際に前記加熱器よりも上流の前記燃料通路又は前記燃料供給装置に酸化剤ガスを供給する酸化剤供給ステップと、
を含み、
前記排ガスを、前記燃焼器から前記改質器、前記加熱器、前記蒸発器の順に経由して外部に放出させる燃料電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原燃料を改質して燃料電池に燃料ガスを供給する燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムとして、水蒸気改質反応と部分酸化反応とを併用する改質器への原燃料の温度が上昇するよう原燃料を気化する気化器と改質器との間に加熱器を配置した燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように、気化器と改質器との間に加熱器を配置することで、改質器での部分酸化反応に必要となる空気の供給流量を減らすことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−201297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような燃料電池システムにおいては、改質器に供給される原燃料の温度は上昇するものの、気化器からの原燃料を加熱する加熱器よりも上流の燃料通路において炭素析出が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、その目的は、燃料通路での炭素析出を抑制する燃料電池システム及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、原燃料を改質する改質器を備え、前記改質器により生成される燃料ガスを燃料電池に供給する燃料電池システムであって、前記改質器に原燃料を供給する燃料供給装置と、前記燃料供給装置と前記改質器との間の燃料通路に配置される加熱器と、前記加熱器よりも上流の前記燃料通路又は前記燃料供給装置に酸化剤ガスを供給するアクチュエータと、前記燃料電池から排出される燃料ガスを燃焼させる燃焼器と、前記燃料供給装置と前記加熱器との間の前記燃料通路に配置された蒸発器と、前記燃焼器で生じた排ガスを外部に排出する燃焼器排気通路と、を含み、前記改質器前記加熱器、及び前記蒸発器は、前記燃焼器で生じた排ガスの熱により加熱され、前記燃焼器排気通路は、前記燃焼器から前記改質器、前記加熱器、前記蒸発器の順に経由して外部に連通する
【発明の効果】
【0007】
この態様によれば、原燃料が通過する燃料通路で生じる炭素析出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態における燃料電池システムの構成例を示す図である。
図2図2は、蒸発器に酸化剤ガスを供給する期間の一例を説明する図である。
図3図3は、本実施形態における燃料電池システムの制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における燃料電池システム100の構成の一例を示す構成図である。
【0010】
燃料電池システム100は、燃料電池10に燃料ガス及び酸化剤ガスを供給して燃料電池10を発電させる。燃料電池システム100は、例えば、車両、飛行機、又は船舶などの移動体に搭載される。本実施形態の燃料電池システム100は、ハイブリッド車又は電気自動車などの車両に搭載される。
【0011】
燃料電池システム100は、燃料電池10と、酸化剤供給装置20と、燃料供給装置30と、加熱装置40と、燃料改善装置50と、コントローラ60と、を含む。
【0012】
燃料電池10は、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を受けて発電する。燃料電池10は、例えば、固体酸化物形燃料電池又は固体高分子形燃料電池などにより実現される。本実施形態の燃料電池10は、単一の固体酸化物形燃料電池を複数積層した積層電池である。燃料電池10は、例えば、自己の温度が600℃から700℃に達した状態において、燃料ガスと酸化剤ガスとの化学反応により発電する。
【0013】
酸化剤供給装置20は、燃料電池10の発電に必要となる酸化剤ガスを燃料電池10に供給する。酸化剤供給装置20は、酸化剤供給通路21と、コンプレッサ22と、酸化剤熱交換器23と、を備える。
【0014】
酸化剤供給通路21は、燃料電池10に酸化剤ガスを供給するための通路である。本実施形態の酸化剤供給通路21の一端は外気に連通され、他端は燃料電池10の酸化剤入口孔に接続される。
【0015】
コンプレッサ22は、酸化剤供給通路21に設けられるアクチュエータである。コンプレッサ22は、燃料電池10に酸化剤ガスを供給する酸化剤供給装置を構成する。本実施形態のコンプレッサ22は、外気から酸化剤ガスを含有する空気を吸引するとともにその空気を圧縮して燃料電池10に供給する。なお、本実施形態ではアクチュエータとしてコンプレッサ22が用いられているが、コンプレッサ22の代りにブロアが用いられてもよい。
【0016】
酸化剤熱交換器23は、燃料電池10を暖機するために燃料電池10に供給される酸化剤ガスを加熱する熱交換器である。本実施形態の酸化剤熱交換器23は、加熱装置40によって供給される高温の排ガスとコンプレッサ22からの空気との間で熱交換を行う。酸化剤熱交換器23は、熱交換により加熱された空気を燃料電池10に出力する。
【0017】
燃料供給装置30は、燃料電池10の発電に必要となる燃料ガスを燃料電池10に供給する。燃料供給装置30は、燃料供給通路31と、原燃料タンク32と、燃料ポンプ33と、インジェクタ34と、蒸発器35と、加熱器36と、改質器37と、を備える。
【0018】
燃料供給通路31は、燃料電池10に燃料ガスを供給するための通路である。本実施形態の燃料供給通路31の一端は原燃料タンク32に接続され、他端は燃料電池10の燃料入口孔に接続される。
【0019】
原燃料タンク32は、燃料ガスの生成に必要となる原燃料を蓄える。原燃料としては、含酸素燃料及び水を含む水溶液が用いられる。含酸素燃料とは、アルコール又はメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)などの含酸素化合物を含有する燃料のことである。本実施形態の原燃料タンク32には、原燃料として、例えばエタノール約40%wtのエタノール水溶液が蓄えられる。
【0020】
燃料ポンプ33は、原燃料タンク32の内部に備えられ、原燃料タンク32に蓄えられた原燃料をインジェクタ34に供給する。なお、燃料ポンプ33は、原燃料タンク32とインジェクタ34との間であればどの場所に配置してもよい。
【0021】
インジェクタ34は、蒸発器35に原燃料を供給する燃料供給装置を構成する。本実施形態のインジェクタ34は、原燃料を噴射する噴射装置である。インジェクタ34は、燃料ポンプ33から供給される原燃料を所定の周期により蒸発器35に噴射する。
【0022】
蒸発器35は、インジェクタ34によって噴射された噴射燃料を気化する。本実施形態の蒸発器35は、インジェクタ34から供給される水溶液を気化することにより、改質用の燃料ガスとして水蒸気及び含酸素燃料ガスの混合ガスを生成する。蒸発器35は、例えば、加熱装置40により加熱される。
【0023】
加熱器36は、蒸発器35から排出される混合ガスを混合ガスの改質に必要となる所定の温度まで上昇させる熱交換器である。本実施形態の加熱器36は、熱源である加熱装置40に接触しており、熱源から生じる熱を利用して蒸発器35からの混合ガスを加熱する。
【0024】
改質器37は、加熱器36から排出される混合ガスを改質して燃料ガスを生成する。本実施形態の改質器37は、含酸素燃料ガス及び水蒸気の混合ガスを改質して水素ガスを生成する。本実施形態の改質器37は、上述の水蒸気改質反応に加えて、含酸素燃料ガス及び酸化剤ガスの混合ガスを改質して水素ガスを生成する部分改質反応を利用する。改質器37で生成された水素ガスは燃料ガスとして燃料電池10に供給される。改質器37は、加熱装置40により加熱される。
【0025】
加熱装置40は、燃料電池10、酸化剤熱交換器23、蒸発器35、加熱器36及び改質器37を加熱する。例えば、加熱装置40は、燃料電池10に供給される酸化剤ガス、インジェクタ34から噴射された原燃料、及び、改質器37に供給される混合ガスの各々を加熱する。加熱装置40は、原燃料通路41と、インジェクタ42と、燃料電池排気通路43及び44と、燃焼器45と、燃焼器排気通路46と、を備える。
【0026】
原燃料通路41は、燃焼器45に原燃料を通す通路である。本実施形態の原燃料通路41の一端は、インジェクタ34よりも上流の燃料供給通路31から分岐した通路に接続され、他端はインジェクタ42に接続される。
【0027】
インジェクタ42は、インジェクタ34と同一の構成であり、燃料ポンプ33により供給される原燃料を燃焼器45に噴射する。
【0028】
燃料電池排気通路43及び44は、燃料電池10から排出される酸化剤ガス及び燃料ガスを燃焼器45に通す通路である。燃料電池排気通路43の一端は、燃料電池10の酸化剤排出孔に接続され、他端は燃焼器45に接続される。燃料電池排気通路44の一端は、燃料電池10の燃料排出孔に接続され、他端は燃焼器45に接続される。
【0029】
燃焼器45は、燃料電池10から排出される酸化剤ガス及び燃料ガスの混合ガスを燃焼させる。また、燃料電池10の起動直後は燃料電池10で発電が行われないため、燃焼器45は、インジェクタ42から噴射される原燃料を燃焼させる。燃焼器45は、燃料電池10からの燃料ガス又は原燃料が燃焼した後の燃焼ガスを燃焼器排気通路46に排ガスとして出力する。
【0030】
燃焼器排気通路46は、燃焼器45からの排ガスを燃料電池システム100の外部に排出する通路である。燃焼器排気通路46は、燃焼器45から酸化剤熱交換器23を経由して外部に連通するとともに、燃焼器45から酸化剤熱交換器23までの経路の途中から分岐して、改質器37、加熱器36及び蒸発器35を順番に経由して外部に連通する。
【0031】
これにより、燃焼器45で生じた排ガスの熱によって、酸化剤熱交換器23の空気と、改質器37、加熱器36及び蒸発器35の各混合ガスとが加熱される。例えば、改質器37から加熱器36には約600℃の排ガスが供給され、加熱器36から蒸発器35には約200℃から400℃の排ガスが供給される。
【0032】
燃料改善装置50は、インジェクタ34から噴射した噴射燃料の微粒化又は炭素析出などのガス状態を改善する。燃料改善装置50は、酸化剤分岐通路51と、流量制御弁52と、を備える。
【0033】
酸化剤分岐通路51は、コンプレッサ22よりも下流の酸化剤供給通路21から分岐して、インジェクタ34から加熱器36までの原燃料が通過する経路に合流する。本実施形態の酸化剤分岐通路51は、コンプレッサ22と酸化剤熱交換器23との間の酸化剤供給通路21から分岐して蒸発器35に接続される。これにより、コンプレッサ22から吐出される酸化剤ガスを蒸発器35に供給することが可能になる。
【0034】
流量制御弁52は、蒸発器35に酸化剤ガスを供給するアクチュエータを構成する。本実施形態の流量制御弁52は、コンプレッサ22から蒸発器35への酸化剤ガスの供給流量を制御する。流量制御弁52は、コントローラ60により制御される。
【0035】
本実施形態では、インジェクタ34の噴射燃料が蒸発器35で加熱されるため、インジェクタ34よりも下流において原燃料を構成する炭素が析出する現象、いわゆるコーキングが発生しやすくなる。
【0036】
これに対して、コンプレッサ22から蒸発器35に酸化剤ガスを供給することにより、析出した炭素を酸化剤ガスで酸化するとともに、炭素が析出しやすいコーキング発生部位での炭素の析出を抑制することができる。すなわち、炭素の析出によるインジェクタ34の噴霧性能の低下や原燃料の配管抵抗の増加などを抑制することができる。
【0037】
特に、インジェクタ34の噴射先及び噴霧点に酸化剤ガスを供給することにより、インジェクタ34の噴射燃料の微粒化を向上させるとともに、酸化剤ガスと噴霧燃料との混合度合いが向上するので炭素の析出をさらに低減することができる。さらにインジェクタ34の噴射方向に対して垂直又はほぼ垂直となるように酸化剤ガスを供給することにより、噴射燃料の微粒化及び混合度合いをより一層向上させることができる。
【0038】
コントローラ60は、燃料電池システム100の動作を制御する制御装置である。コントローラ60は、あらかじめ定められた処理がプログラムされた中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)及び記憶装置を備える1つ又は複数のマイクロコンピュータによって構成される。
【0039】
コントローラ60には、温度センサ61乃至63などの種々のセンサの検出値が入力される。例えば、温度センサ61は、改質器37と燃料電池10との間の燃料供給通路31の間に配置されて燃料電池10のアノード極の温度を検出する。温度センサ62は蒸発器35の温度を検出し、温度センサ63は改質器37の温度を検出する。
【0040】
コントローラ60は、例えばドライバの起動操作又は負荷からの電力要求などにより、燃料電池システム100が起動されると、コンプレッサ22及びインジェクタ42を作動させる。これにより、コンプレッサ22から燃料電池10を介して酸化剤ガスが燃焼器45に供給されるとともに、インジェクタ42から原燃料が燃焼器45に供給されるので、燃焼器45において原燃料が燃焼する。
【0041】
燃焼器45での原燃料の燃焼に伴う燃焼器45自体の熱によって加熱器36及び改質器37が加熱されるとともに、燃焼器45での燃焼後の排ガスが酸化剤熱交換器23、蒸発器35、加熱器36及び改質器37の各々を通過する。これにより、燃料電池10に供給される酸化剤ガス、及び、改質器37に供給される混合ガスの各々に熱が加えられるので、燃料電池10の自己の温度が徐々に上昇するとともに、改質器37で混合ガスが改質されて燃料ガスが燃料電池10に供給される。
【0042】
そしてコントローラ60は、燃料電池10への燃料ガス及び酸化剤ガスの各々の供給流量が所定の目標値となるように、コンプレッサ22及びインジェクタ34の動作を制御する。所定の目標値は、例えば、燃料電池10の負荷の大きさに応じて設定される。
【0043】
さらに蒸発器35において炭素が析出しやすい状況、すなわちコーキングが発生しやすい状況では、コントローラ60は、蒸発器35に酸化剤ガスを供給するように流量制御弁52を開く。例えば、燃料電池10の起動開始から起動完了までの期間は、原燃料の昇温中に炭素が析出しやすくなる。
【0044】
このため、コントローラ60は、燃料電池10を起動する場合には、流量制御弁52から蒸発器35に酸化剤ガスを供給するようにしてもよい。これにより、インジェクタ34よりも下流において原燃料の加熱により炭素が析出するのを抑制することができ、効率よく燃料ガスを生成することができる。
【0045】
また、コントローラ60は、燃焼器45での空燃比λが1以上となるようにインジェクタ42及びコンプレッサ22のうち少なくとも一方の動作を制御する。例えば、コントローラ60は、燃焼器45での空燃比λが1以上となるようにインジェクタ42の噴射量を減少させたり、コンプレッサ22の吐出量を増加させたりする。これにより、燃焼器45よりも下流で発生するコーキングを抑制することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、燃料電池システム100に蒸発器35が備えられているが、蒸発器35を省略して加熱器36で代用してもよい。また、インジェクタ34を用いて原燃料を供給したが、インジェクタ34を省略して燃料ポンプ33で代用してもよい。これにより、燃料電池システム100のコスト及びサイズを削減することができる。
【0047】
さらに、酸化剤分岐通路51に流量制御弁52が設けられているが、流量制御弁52を省略してもよい。この場合であっても、酸化剤ガスを含有する空気が蒸発器35に供給されるので、炭素の析出を抑制することができる。
【0048】
図2は、蒸発器35に酸化剤ガスを供給する過剰供給期間の一例を説明する図である。
【0049】
図2には、コーキング発生部位を有する蒸発器35の温度が実線により示され、燃料電池10のアノード極の温度が破線により示されている。横軸は時間を示し、縦軸は蒸発器35の温度と燃料電池10のアノード極の温度とを示す。
【0050】
時刻t1よりも以前において、燃料電池システム100が起動され、燃料電池10、蒸発器35、加熱器36及び改質器37の各温度が徐々に上昇する。蒸発器35及び加熱器36での原燃料の温度上昇に伴い、インジェクタ34の先端、蒸発器35及び加熱器36の各部位において原燃料の炭素が析出するコーキングが発生しやすくなる。
【0051】
時刻t1では、蒸発器35の温度が第1の閾値T1まで上昇する。閾値T1は、炭素が析出した析出部位を酸化剤ガスに晒すことで炭素を除去可能な温度、すなわちコーキングを解消可能な温度に設定される。本実施形態の閾値T1は、析出部位の炭素を除去可能な温度の下限値に設定され、例えば300℃程度に設定される。蒸発器35の温度は、例えば温度センサ62により検出される。
【0052】
蒸発器35の温度が閾値T1に達すると、コンプレッサ22から蒸発器35の析出部位に対して酸化剤である空気が供給されるようにコントローラ60は、流量制御弁52を開く。このとき、インジェクタ34から蒸発器35への原燃料の噴射量に対する空気の供給量の比率を示す空燃比λが1以上となるようにコントローラ60は、流量制御弁52の開度を所定の値に設定する。
【0053】
すなわち、コントローラ60は、蒸発器35に供給される原燃料及び酸化剤ガスが過不足なく反応する酸化剤ガスの供給量の理論値に対して実際値が大きくなるように流量制御弁52の開度を制御する。
【0054】
時刻t1から時刻t2までの期間である過剰供給期間P1では、空燃比λが1以上となるようにコンプレッサ22から蒸発器35に空気が供給され続ける。なお、コントローラ60は、コンプレッサ22から蒸発器35に供給される空気の供給流量をあらかじめ定められた値に固定するようにしてもよい。
【0055】
時刻t2では、蒸発器35の温度が第2の閾値T2まで上昇する。閾値T2は、改質器37で原燃料が改質可能となるように定められた蒸発器35の温度、すなわち改質可能温度に設定される。改質器37で原燃料が改質可能となる改質器37の下限温度は、例えば400℃程度であり、本実施形態の閾値T2は、その改質器37の下限温度よりも低い温度に設定される。
【0056】
蒸発器35の温度が閾値T2に達すると、コントローラ60は、流量制御弁52の開度を減少させる。例えば、改質器37で空気を消費させるためにコントローラ60は、空燃比λが1未満となるように流量制御弁52の開度を小さくする。これにより、燃料電池10のアノード極まで空気が到達しにくくなるので、空気によってアノード極が酸化して燃料電池10の発電性能が低下するのを抑制することができる。
【0057】
あるいは、蒸発器35及び改質器37の各々の温度が最適な温度まで早期に上昇するようにコントローラ60は、流量制御弁52の開度を小さくしたり、流量制御弁52を閉じたりしてもよい。これにより、蒸発器35への空気の供給量が減少するので、空気によって蒸発器35及び改質器37の冷却を抑制することができ、早期に燃料電池10の起動を完了させることができる。
【0058】
なお、時刻t2で流量制御弁52の開度を小さくする例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、コントローラ60は、時刻t2を経過しても空燃比λが1以上となるように流量制御弁52の開度を維持してもよい。この例について以下に説明する。
【0059】
時刻t3において、燃料電池10のアノード極の温度が第3の閾値T3まで上昇する。閾値T3は、酸化剤ガスによる燃料電池10のアノード極が酸化するのを許容できる温度、すなわち酸化許容温度に設定される。本実施形態の閾値T3は、閾値T2よりも大きな値であり、例えば450℃程度に設定される。
【0060】
アノード極の温度が閾値T3に達すると、コントローラ60は、燃料電池10のアノード極に空気が流入しないように流量制御弁52の開度を小さくする。または、コントローラ60は、流量制御弁52を閉じる。
【0061】
このように、時刻t1から時刻t3までの期間である過剰供給期間P2において空燃比λが1以上となるようにコントローラ60が蒸発器35に空気を過剰供給する。これにより、過剰供給期間P1だけ空気の過剰供給を行う場合に比べて、コーキングを減少させることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、蒸発器35、加熱器36及び改質器37を効果的に加熱するために蒸発器35への酸化剤ガスの供給を時刻t1から開始する例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、燃料電池システム100の起動直後に、蒸発器35に酸化剤ガスを供給するように流量制御弁52を閉状態から開状態に切り替えてもよい。
【0063】
また、本実施形態では過剰供給期間P1にインジェクタ34から蒸発器35に原燃料を供給する例について説明したが、燃料電池システム100の設計によっては、原燃料の供給を停止して酸化剤ガスのみ供給するようにしてもよい。
【0064】
図3は、本実施形態における燃料電池システム100の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0065】
ステップS1においてコントローラ60は、システム起動指令を受ける。例えば、車両の始動キーをOFFからONに切り替えるON操作が行われた場合、又は、燃料電池システム100に対して燃料電池10の発電が要求された場合に、システム起動指令がコントローラ60に対して発行される。
【0066】
ステップS2においてコントローラ60は、システム起動指令を受けると、燃焼器45を作動させて燃料電池システム100を加熱する。本実施形態ではコントローラ60は、燃焼器45に原燃料を噴射するようインジェクタ42を駆動するとともに、燃料電池10を介して燃焼器45に空気を供給するようコンプレッサ22を駆動する。
【0067】
これにより、燃焼器45で原燃料が燃焼するので、燃焼によって燃焼器45から発生する熱で加熱器36及び改質器37を加熱することができる。さらに燃焼器45から排出される高熱の排ガスが改質器37、加熱器36及び蒸発器35と酸化剤熱交換器23とに供給されるので、燃料電池10、蒸発器35及び改質器37の各々の温度は作動温度まで上昇する。
【0068】
ステップS3においてコントローラ60は、蒸発器35に原燃料を噴射するようにインジェクタ34を駆動する。
【0069】
ステップS4においてコントローラ60は、蒸発器35に空気を供給するように流量制御弁52を開く。
【0070】
ステップS5においてコントローラ60は、蒸発器35での空燃比λが1以上となるように流量制御弁52の開度を所定の値に設定する。すなわち、コントローラ60は、蒸発器35に対して過剰に空気を供給させる。
【0071】
ステップS6においてコントローラ60は、燃料電池10のアノード極温度が上述の閾値T3以上であるか否かを判断する。例えば、コントローラ60は、温度センサ61の検出値に基づいて、アノード極の温度が閾値T3以上であるか判断する。
【0072】
または、燃料電池排気通路44に温度センサを設け、その温度センサの検出値を用いてもよいし、同様に燃料電池10のカソード極の温度を検出して代用してもよい。あるいは、コントローラ60は、システム起動指令を受けた後、所定の時間が経過したときに、アノード極温度が閾値T3以上であると判断するようにしてもよい。このように、燃料電池10のアノード極の温度を直接的又は間接的に検出してもよいし、アノード極の温度に相関のあるパラメータを用いてもよい。
【0073】
ステップS6でアノード極温度が閾値T3未満であると判断された場合には、ステップS5の処理に戻り、蒸発器35に過剰な空気が継続して供給される。
【0074】
ステップS7においてコントローラ60は、燃料電池10のアノード極温度が閾値T3以上であると判断した場合には、流量制御弁52の開度をアノード極への空気混入が無くなる所定の値まで小さくする。なお、コントローラ60は、アノード酸化を防ぐために流量制御弁52を閉じてもよい。
【0075】
ステップS8においてコントローラ60は、システム停止指令を受けか否かを判断する。例えば、車両のOFF操作が行われた場合、又は、燃料電池10の発電停止が要求された場合に、システム起動指令がコントローラ60に対して発行される。
【0076】
そしてコントローラ60は、システム停止指令を受けるまでステップS7の処理を継続して実行し、システム停止指令を受けると、本実施形態における燃料電池システム100の制御方法についての一連の処理手順を終了する。
【0077】
なお、本実施形態では燃料電池システム100の起動中にアノード極温度が閾値T3未満のときに蒸発器35に空気を過剰に供給したが、改質器37への混合ガスの温度が改質可能温度未満のときに蒸発器35への空気の過剰供給を行うようにしてもよい。また、燃料電池システム100の停止中にアノード極の温度が閾値T3まで低下したときに蒸発器35へ空気を過剰に供給してもよい。
【0078】
また、本実施形態では空燃比λが1以上となるように流量制御弁52の開度を制御する例について説明したが、コントローラ60は、インジェクタ34の噴射量及びコンプレッサ22の吐出量のうち少なくとも一つを制御するようにしてもよい。
【0079】
本発明の第1実施形態によれば、燃料電池システム100は、燃料電池10の発電に利用される原燃料を改質する改質器37を備え、改質器37で生成される燃料ガスを燃料電池10に供給する。燃料電池システム100は、改質器37に原燃料を供給する燃料供給装置を構成する燃料ポンプ33又はインジェクタ34と、燃料供給装置と改質器37との間の燃料供給通路31に配置される加熱器36とを含む。
【0080】
そして燃料電池システム100は、加熱器36よりも上流の燃料供給通路31又はインジェクタ34に酸化剤ガスを含有する空気を供給するアクチュエータとしてコンプレッサ22及び流量制御弁52をさらに含む。これにより、インジェクタ34の先端などの原燃料が通過する燃料供給通路31に生じる炭素析出を抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、燃料電池システム100は、燃料供給装置と加熱器36との間の燃料供給通路31に配置される蒸発器35をさらに含み、アクチュエータを構成するコンプレッサ22は、図1に示したように、蒸発器35に酸化剤ガスを供給する。これにより、コーキングが発生しやすい部位のうち上流から下流に酸化剤ガスが流れるので、燃料供給装置30で発生するコーキングを全体的に抑制することができる。
【0082】
また、燃料供給装置として原燃料を噴射する噴射装置であるインジェクタ34が用いられ、コンプレッサ22は、特に、インジェクタ34の噴射先に酸化剤ガスを供給することが好ましい。このようにインジェクタ34を用いることにより、原燃料が微細化されるので、改質器37において効率よく原燃料を改質することができる。さらに、インジェクタ34の噴射先にインジェクタ34の噴射先に酸化剤ガスを供給することにより、原燃料の微粒化を向上させるとともに炭素の析出をさらに低減することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、コンプレッサ22は、燃料電池10に酸化剤ガスを供給するとともに、加熱器36よりも上流の燃料供給通路31又はインジェクタ34に酸化剤ガスを供給する。このようにコンプレッサ22を兼用することにより、燃料電池システム100のコスト及びサイズを抑制しつつ、コーキングを抑制することができる。
【0084】
なお、燃料電池10から排出される酸化剤ガスを、加熱器36よりも上流の燃料供給通路31又はインジェクタ34に供給するように燃料電池システム100を構成してもよい。この場合には、コンプレッサ22から酸化剤ガスを直接供給する場合に比べて、原燃料の温度が低下するのを抑制することができる。すなわち、燃料電池10で生じる熱エネルギーを有効に利用することができる。
【0085】
また、本実施形態によれば、燃料電池システム100は、原燃料に対する酸化剤ガスの比率を示す空燃比λが1以上となるようにインジェクタ34及び流量制御弁52のうち少なくも一方の動作を制御するコントローラ60をさらに含む。これにより、加熱器36よりも上流の燃料供給通路31又はインジェクタ34に空気が多量に供給されるので、通常の運転状態に比べてコーキングを解消することができる。
【0086】
本実施形態のコントローラ60は、燃料電池10の温度を推定又は検出する電池検出部を構成する。例えば、コントローラ60は、図1に示した温度センサ61の検出値を用いて燃料電池10の温度を推定する。そしてコントローラ60は、図3に示したように、燃料電池10の温度が所定の閾値T2又はT3よりも低い場合に、空燃比λが1以上となるように流量制御弁52の動作を制御する。これにより、コーキングをより確実に除去することができるとともに、燃料電池10の発電効率が低下するのを抑制することが可能になる。
【0087】
本実施形態では、上述の閾値T3は、図3で述べたとおり、酸化剤ガスに起因する燃料電池10のアノード極の酸化を許容できる温度に設定される。これにより、アノード極の酸化による劣化を抑制することが可能になる。
【0088】
あるいは、コントローラ60は、改質器37の温度が特定の閾値T2よりも低い場合に、空燃比λが1以上となるように流量制御弁52の動作を制御するようにしてもよい。
コントローラ60は、例えば、図1に示した温度センサ62又は63の検出値を用いて改質器37の温度を推定する。このように、改質器37の温度に基づいて空燃比λを変更することにより、コーキングを効果的に除去することができるとともに、燃料電池10に燃料ガスを適切に供給することが可能になる。
【0089】
例えば、特定の閾値T2は、改質器37が原燃料を改質できる温度に設定される。これにより、改質器37の温度が閾値T2に達した場合には原燃料の温度低下が抑制されるので、早期に改質器37の温度を最適値に到達させることができる。したがって、改質性能を早期に回復させることができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、図1に示したように、燃料電池システム100は、燃料電池10から排出される燃料ガスを燃焼させる燃焼器45と、燃焼器45に原燃料を供給する他の燃料供給装置を構成するインジェクタ42とを備える。
【0091】
そしてコンプレッサ22は、燃料電池10を介して燃焼器45に酸化剤ガスを供給し、コントローラ60は、燃焼器45での空燃比λが1以上となるようにインジェクタ42及びコンプレッサ22のうち少なくとも一方の動作を制御する。これにより、燃焼器45の下流で発生するコーキングを抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、コントローラ60は、燃料電池10の温度が上述の閾値T3を上回った場合、又は、改質器37の温度が上述の閾値T2を上回った場合には、蒸発器35での空燃比λを1よりも小さくする。これにより、燃料電池10の発電性能を確保しつつ、コーキングの発生を抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態によれば、コントローラ60は、図2に示したように、燃料電池10を起動する場合に、蒸発器35での空燃比λが1以上となるように流量制御弁52の開度を制御する。これにより、燃料供給装置30の温度が適切な温度に到達するまでの間に発生しやすいコーキングを解消することができる。すなわち、的確にコーキングを除去することができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述の実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上述の実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0095】
なお、上述の実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0096】
100 燃料電池システム
22 コンプレッサ(アクチュエータ、酸化剤供給装置)
31 燃料供給通路(供給通路)
34 インジェクタ(燃料供給装置)
35 蒸発器
36 加熱器
37 改質器
42 インジェクタ(他の噴射装置)
45 燃焼器
52 流量制御弁(アクチュエータ)
図1
図2
図3