(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記温度制御部は、前記温度監視部が測定した前記温度が所定の温度よりも、高いときには前記造形面の温度を下げ、低いときには前記造形面の温度を上げる、請求項1記載の積層造形装置。
前記造形面に供給された前記材料を平坦化する平坦化部を有し、前記平坦化部は、前記温度監視部の前記突出部の表面と前記材料の表面を揃えて、前記材料を平坦化する、請求項1から3の内の1項記載の積層造形装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の積層造形装置の構成を示す図である。本実施形態の積層造形装置1は、硬化層を積層して3次元造形物を造形する造形面11aを有する造形部11と、前記造形面11aに所定の材料を供給する供給部12と、供給された前記材料の所定の領域を硬化して前記硬化層とする硬化部14と、を有する。さらに、前記造形面11aから突出する突出部15aを有し、前記突出部15aで前記硬化層の温度を測定する温度監視部15と、前記温度監視部15が測定した前記温度に基づいて、前記造形面11aの温度を制御する温度制御部11bと、を有する。
【0015】
積層造形装置1によれば、温度監視部15の突出部15aで硬化層の温度を精度よく測定することができる。これにより、3次元造形物を形成する硬化層の積層数が増して上層の熱が放熱されにくくなっても、突出部15aで測定した温度に基づいて、温度制御部11bが造形部11の造形面11aの温度を制御することで、造形部11への放熱が促進される。このため、3次元造形物は効率よく冷却され、熱による反りや変形が抑制される。
【0016】
以上のように本実施形態によれば、硬化層を積層して形成される3次元造形物を効率よく冷却することで、反りや変形の生じにくい造形を可能とする積層造形装置を提供することができる。
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態の積層造形装置の構成を示す図である。本実施形態の積層造形装置2は、造形ステージ21と、材料供給機構22と、スキージ23と、レーザ照射機構24と、温度監視柱25と、回収ボックス26と、コントローラ27と、を有する。
【0017】
造形ステージ21は、材料供給機構22から供給された材料を積層して3次元造形物を造形する造形面21aを備えている。さらに、造形ステージ21は油圧や空圧による昇降機構を有し、材料の積層に合わせて造形面21aを昇降することができる。造形面21aには、材料供給機構22により所定の材料が供給され、供給された材料がスキージ23により平坦化された材料層となり、平坦化された材料の所定の領域がレーザ照射機構24により硬化され硬化層となる。この硬化層が積層されて3次元造形物が形成される。
【0018】
造形ステージ21はまた、後述する温度監視柱25が測定した硬化層の温度に基づいて、造形面21aの温度を制御することのできる温度制御機構21bを備えている。温度制御機構21bの冷却機構としては、例えば、造形ステージ21内に温度制御された水などの冷媒を流す流路を設けることができる。また、温度制御機構21bの加熱機構としては、例えば、造形ステージ21内に温度制御された油などの熱媒を流す流路やヒータを設けることができる。
【0019】
材料供給機構22は、チャンバ22aと供給筒22bとを有する。チャンバ22aは、材料を保管する。供給筒22bは、チャンバ22aに保管された材料を、造形ステージ21の造形面21aの所定の位置に所定の量を供給する。ここで所定の量とは、造形面21a上に材料を所定の厚さの材料層として敷き詰めるために必要な量である。
【0020】
材料は粉体(粉末材料)とすることができ、粉体の形状は球形とすることができる。球形状の生成方法としてはアトマイズ法を用いることができるが、これには限定されない。粉体の粒径は5μm〜50μmなどとすることができるが、これには限定されない。粉体の形状は、また、鱗片状の平板形状(円板形状)とすることができる。平板形状は、アトマイズ法等で製造した球形の粉体を、さらにスタンピング等の方法で鱗片状に平板化することで得られるが、これには限定されない。さらに、材料の形状は球形や平板には限定されず、任意の多面体や楕円体などでもよい。
【0021】
材料の材質は、プラスチック材料とすることができ、例えば、ナイロン、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエーテルエーテルケトンとすることができる。また、これらの材料にガラスやカーボン等を所定量添加していても良い。また、金属材料とすることもでき、例えば、銅、ステンレス、アルミ、チタンとすることができる。また、セラミックやカーボンとすることもできる。
【0022】
スキージ23は、造形面21a上に供給された材料を、造形面21a上に平坦に引き延ばして均一の厚さに敷き詰めた材料層とする。スキージ23は、平スキージ、角スキージ、剣スキージ等、目的に合わせた形状とすることができる。また、スキージ23をローラとし、ローラを転がすことによって材料を平坦化し均一な厚さに敷き詰めても良い。スキージ23の材質は、ゴム、プラスチック、金属等から、目的に合わせて選択することができる。
【0023】
レーザ照射機構24は、スキージ23により平坦化され均一な厚さに敷き詰められた材料層の所定の領域、すなわち造形物を形成する領域に、レーザ光を照射して加熱し、材料を焼結または溶融硬化して硬化層を形成する。硬化層の形成方法としては、ASTM(American Society for Testing and Materials)がAdditive Manufacturingの方式として分類している粉末床溶融結合方式(Powder bed fusion)を用いることができる。レーザとしては、Additive Manufacturingで使用されるファイバーレーザ等を用いることができる。
【0024】
なお、材料層を加熱して焼結または溶融硬化して硬化層を形成する方法は、レーザ照射には限定されない。材料層を加熱して焼結または溶融硬化して硬化層を形成する方法としては、材料層に電子線を照射してもよい。
【0025】
温度監視柱25は、造形ステージ21の造形面21aから突出する突出部を有する。この突出部は、材料層(硬化層)に合わせて造形面21a内で上下し、側面で材料層(硬化層)の側面に接して材料層(硬化層)の温度を測定することができる。例えば、突出部は最上層の硬化層に合わせて上下し、最上層の硬化層の温度を測定することができる。突出部はまた、その上面に形成される硬化層に接して、上面で硬化層の温度を測定することができる。
【0026】
スキージ23は、温度監視柱25の突出部の上面と材料層の表面とを揃えて、材料を平坦化することができる。温度監視柱25は、平坦化された材料層を突出部の側面で温度測定することができる。さらに、温度監視柱25は、レーザ照射されて硬化した硬化層を、突出部の側面で温度測定することができる。突出部はまた、その上面に形成される硬化層に接して、上面で硬化層の温度を測定することができる。
【0027】
図3は、温度監視柱25の構成を示す図である。温度監視柱25は、温度測定部25aと昇降部25cを有する。
【0028】
温度測定部25aは、上面と側面とを有する。温度測定部25aは、造形ステージ21の造形面21aから突出することができ、造形面21aから突出する部分の側面や上面で材料層や硬化層に接して、材料層や硬化層の温度を測定することができる。このために温度測定部25aは、温度センサ25bを内蔵している。温度センサ25bには、熱電対や赤外線センサを用いることができる。温度センサ25bは、最上層の硬化層の温度を測定することができる。温度測定部25aは、銅やアルミニウムやステンレスなどの熱伝導性の良い金属などの材質とすることができる。
【0029】
昇降部25cは、油圧や空圧などにより、温度測定部25aを材料の積層に合わせて昇降することができる。また、昇降部25cは、温度測定部25aを回転させることができる。昇降部25cにより、温度測定部25aの位置を温度測定したい硬化層の位置に合わせることができる。これにより、硬化層の温度を精度よく測定することができる。また、温度測定部25aの位置を最上層の硬化層の位置に合わせることができる。これにより、最上層の硬化層の温度を精度よく測定することができる。また、温度測定部25aの位置を最上層より下の硬化層の位置に合わせることができる。これにより、最上層より下の硬化層の温度を精度よく測定することができる。
【0030】
図4は、本実施形態の積層造形装置2の造形ステージ21と温度監視柱25の温度測定部25aの構成を示す(a)上面図および(b)断面図である。温度測定部25aは、造形ステージ21の造形面21a内の任意の位置に任意の数を配置することができる。例えば、造形物の形状に合わせて、造形物の温度を効果的に測定できるように、造形物に近い位置に配置することができる。また、温度測定部25aは、造形物の形状に合わせて、造形物の温度を効果的に測定できるように、回転させることができる。
【0031】
なお、造形ステージ21上で予め設けられた温度測定部25aの一部が、造形物の形状などの都合により不要となる場合、温度測定部25aを取り外すことができる。そして、温度測定部25aを取り外したことで造形ステージ21上に生じた穴を、穴を埋めるキャップなどで塞ぐことができる。穴を埋めるキャップには磁性体を用いて、磁力により固定してもよい。
【0032】
なお、温度測定部25aの上面の形状は、円形には限定されない。温度測定部25aの上面の形状は、多角形や、また、曲線や直線を任意に組み合わせた形状とすることができる。
【0033】
回収ボックス26は、材料層の硬化層を除いた未硬化な材料を回収する。回収された材料は、再利用することができる。回収ボックス26は、造形ステージ21の外周を取り囲むようにして設けることができる。未硬化な材料の回収には、例えば、造形ステージ21の造形面21a上の未硬化な材料を回収ボックス26の中へ、ハケやブラシなどで掃き出したり、空気で吹き飛ばしたりして回収することができる。
【0034】
コントローラ27は、造形ステージ21や材料供給機構22やスキージ23やレーザ照射機構24や温度監視柱25や温度制御機構21bや回収ボックス26に接続する。そして、これらの動作を制御して連携させることによって、造形物の積層造形に関わる制御を行なう。すなわち、造形ステージ21の昇降の量、材料の供給量や供給位置や供給タイミング、スキージ23の動作、レーザ光の照射の出力や位置や時間の制御を行う。さらに、温度監視柱25の造形面21aからの突出量、温度監視柱25で測定された温度に基づいた温度制御機構21bの制御、未硬化材料の回収などの制御を行なう。
【0035】
コントローラ27は、サーバなどの情報処理装置をプログラムにより動作させて実現することができる。このプログラムによる動作の内で、積層造形に関わる動作は、造形物の3次元CADデータに基づいて設定される。すなわち、コントローラ27は、3次元CADデータに基づいて3次元造形物の造形を制御することができる。
【0036】
図5は、本実施形態の積層造形装置2による造形方法を説明するための図である。
【0037】
図5の(a)では、造形ステージ21の造形面21aに対して、温度監視柱25の温度測定部25aを材料層1層分だけ突出させる。(b)では、材料供給機構22が造形面21a上に供給した材料を、スキージ23が引き延ばして材料層とする。このとき、スキージ23は、温度測定部25aが造形面21aから突出する部分の上面と材料層の表面とを揃えて、材料を平坦化する。材料層1層の厚さは、例えば50μmとすることができるが、これには限定されない。材料層1層の厚さは、3次元CADデータに基づいて造形物ごとに任意に設定することができる。
【0038】
(c)では、レーザ照射機構24が、材料層の所定の位置に所定の時間、所定の出力のレーザ光を照射して材料層を硬化層とする。このときレーザ光照射により硬化層に生じた熱は、造形ステージ21に放熱され、硬化層は冷却される。
【0039】
このときに温度測定部25aによって測定された硬化層の温度に基づいて、造形ステージ21に内蔵されている温度制御機構21bにより、造形面21aの温度が制御され、硬化層が適切に冷却される。例えば、温度制御機構21bは、温度測定部25aが測定した硬化層の温度が所定の温度よりも、高いときには造形面21aの温度を下げ、低いときには造形面21aの温度を上げることができる。また、温度制御機構21bは、温度測定部25aが測定した硬化層の温度が所定の時間経過後に所定の温度よりも高いときには、造形面21aの温度を下げることができる。
【0040】
温度測定部25aによって測定された温度に基づいた温度制御機構21bの温度制御は、以上には限定されない。温度制御機構21bの温度制御は、硬化層を効果的に冷却するために、また、硬化層の温度を適切化するために、任意に行うことができる。
【0041】
なお、(c)では、硬化層は温度測定部25aに直接接していても、未硬化の材料層を介して間接的に接していてもよい。硬化層が温度測定部25aに直接接することで、硬化層の温度を直接的に測定することができる。また、硬化層が未硬化の材料層を介して間接的に接することで、硬化層の温度を間接的に測定し、硬化層の温度に換算することができる。硬化層の温度に換算する場合、予め用意された、未硬化の材料を介した際の硬化層の温度に換算する実験データや計算データを用いることができる。
【0042】
(d)では、温度測定部25aを、次の材料層1層分だけさらに突出させる。(e)では、供給された材料を平坦化することによって、次の材料層を形成する。このとき、次の材料層の表面と温度測定部25aの上面が揃うようにする。
【0043】
(f)では、次の材料層の所定の位置に所定の時間、所定の出力のレーザ光を照射して次の硬化層を形成する。このとき、温度測定部25aによって測定された硬化層の温度に基づいて、造形ステージ21に内蔵されている温度制御機構21bにより、造形面21aの温度が制御され、硬化層が適切に冷却される。温度測定部25aによって測定された硬化層の温度は、最上層の硬化層の温度としてもよい。
【0044】
以上を繰り返すことによって、(g)では、所定の数の層を積層した造形物が完成する。(h)では、未硬化の材料を回収し、完成した造形物を取り出す。
【0045】
図6は、
図5に示す造形方法の変形例を説明するための図である。例えば、
図6の中央の温度測定部25aに示すように、温度測定部25aの上面を硬化層に接触させて、温度測定部25aの上面で、上面に接する硬化層の温度を測定するようにしてもよい。
【0046】
図7は、本実施形態の積層造形装置2による別の造形方法を説明するための図である。
【0047】
図7の(a)では、造形ステージ21の造形面21aに、温度監視柱25の温度測定部25aの上面を揃えて配置する。(b)では、材料供給機構22が造形面21a上に供給した材料を、スキージ23が引き延ばして材料層とする。(c)では、レーザ照射機構24が、材料層の所定の位置に所定の時間、レーザ光を照射して材料層を硬化層とする。
【0048】
(d)では、温度測定部25aを、材料層1層分だけ突出させる。このとき、温度測定部25aによって測定された硬化層の温度に基づいて、造形ステージ21に内蔵されている温度制御機構21bにより、造形面21aの温度が制御され、硬化層が適切に冷却される。
【0049】
(e)では、温度測定部25aの上面に残っている未硬化の材料と材料供給機構22が造形面21a上に供給した材料を、スキージ23が引き延ばして次の材料層とする。
【0050】
(f)では、レーザ照射機構24が、次の材料層の所定の位置に所定の時間、レーザ光を照射して次の硬化層とする。さらに、温度測定部25aを材料層1層分だけ突出させ、このとき、温度測定部25aによって測定された硬化層の温度に基づいて、造形ステージ21に内蔵されている温度制御機構21bにより、造形面21aの温度が制御され、硬化層が適切に冷却される。
【0051】
以上を繰り返すことによって、(g)では、所定の数の層を積層した造形物が完成する。(h)では、未硬化の材料を回収し、完成した造形物を取り出す。
【0052】
図8は、本実施形態の積層造形装置2によるさらに別の造形方法を説明するための図である。
【0053】
図8の(a)では、造形ステージ21の造形面21aに対して、温度監視柱25の温度測定部25aの上面を揃えて配置する。(b)では、材料供給機構22が造形面21a上に供給した材料を、スキージ23が引き延ばして最初の材料層とする。(c)では、温度測定部25aを最初の材料層と次の材料層の厚さ分だけ造形面21aから突出させ、温度測定部25aの上面の材料と材料供給機構22が造形面21a上に供給した材料を、スキージ23が引き延ばして次の材料層とする。このとき、次の材料層の表面と温度測定部25aの上面が揃うようにする。
【0054】
(d)では、レーザ照射機構24が、材料層の所定の位置に所定の時間、レーザ光を照射して、次の材料層を硬化層とする。レーザ光照射の時間や照射パワーを制御することによって、最初の材料層は硬化させずに次の硬化層を硬化させることができる。また、最初の材料層を、硬化のためにより多くの熱量を必要とする材料とすることによって、最初の材料層を硬化させずに次の硬化層を硬化させることができる。
【0055】
このとき、温度測定部25aによって測定された硬化層の温度に基づいて、造形ステージ21に内蔵されている温度制御機構21bにより、造形面21aの温度が制御され、硬化層が適切に冷却される。
【0056】
(e)では、温度測定部25aを、さらに次の材料層1層分だけさらに突出させる。さらに、供給された材料を平坦化することによって、さらに次の材料層を形成する。このときスキージ23は、温度測定部25aが造形面21aから突出する部分の上面と材料層の表面とを揃えて、材料を平坦化することができる。
【0057】
(f)では、さらに次の材料層の所定の位置に所定の時間、レーザ光を照射して次の硬化層を形成する。このとき、温度測定部25aによって測定された硬化層の温度に基づいて、造形ステージ21に内蔵されている温度制御機構21bにより、造形面21aの温度が制御され、硬化層が適切に冷却される。
【0058】
以上を繰り返すことによって、(g)では、所定の数の層を積層した造形物が完成する。このとき、造形面21aには未硬化の材料が接している。このため、造形物の取り出しは、より容易となる。(h)では、未硬化の材料を回収し、完成した造形物を取り出す。
【0059】
図8のように、造形面21a上に未硬化の材料層を1層設けた上に造形物を形成することが可能なのは、レーザ光照射により硬化層に生じた熱が、温度制御された造形ステージ21に効率よく放熱され、硬化層が効率よく冷却されることによる。これにより、前述の
図8の(d)のようにして、未硬化の材料層の上の材料層を硬化し積層して造形物を形成することができる。
【0060】
図9は、本実施形態の積層造形装置2の動作を示すフローチャートである。
【0061】
ステップS1では、造形ステージ21の造形面21aに対して、温度監視柱25の温度測定部25aを材料層1層分だけ突出させる。なお、別の動作として、造形ステージ21の造形面21aに温度監視柱25の温度測定部25aの上面を揃えて配置することができる。
【0062】
ステップS2では、材料供給機構22が造形面21a上に所定の材料を供給する。
【0063】
ステップS3では、材料供給機構22が供給した材料を、スキージ23が引き延ばして平坦化し材料層とする。このとき、スキージ23は、温度測定部25aが造形面21aから突出する部分の上面と材料層の表面とを揃えて、材料を平坦化する。なお、別の動作として、ステップS1で造形面21aに温度監視柱25の温度測定部25aの上面を揃えて配置する場合は、単に材料を平坦化する。
【0064】
ステップS4では、レーザ照射機構24が、材料層の所定の位置に所定の時間、レーザ光を照射して材料層を硬化層とする。なお、別の動作として、ステップS1で造形面21aに温度監視柱25の温度測定部25aの上面を揃えて配置する場合は、ステップS4ではさらに、造形面21aに対して、温度監視柱25の温度測定部25aを材料層1層分だけ突出させる。
【0065】
さらに、ステップS4では、温度測定部25aによって測定された硬化層の温度に基づいて、造形ステージ21に内蔵されている温度制御機構21bにより、造形面21aの温度が制御され、硬化層が適切に冷却される。
【0066】
ステップS5では、造形ステージ21上に所定の数の層が積層されたか否かを確認する。すなわち、造形を完了したか否かを確認する。ステップS5がNOの場合、次の層を積層させるために造形ステージ21を所定量、例えば次の材料層の厚さの分だけ下降させて位置を設定する(ステップS6)。
【0067】
造形ステージ21の位置を設定した後、ステップS1以降を繰り返す。このとき、ステップS1を繰り返す場合、材料層の最上面に対して温度測定部25aを材料層1層分だけ突出させる。また、別の動作として、材料層の最上面に温度測定部25aの上面を揃えて配置する。また、ステップS2を繰り返す場合、材料層の最上面上に所定の材料を供給する。
【0068】
一方、所定の数の層が積層されて造形物が完成すると(ステップS5のYES)、終了する。
【0069】
以上のように、本実施形態の積層造形装置2によれば、温度監視柱25の温度測定部25aで硬化層の温度を精度よく測定することができる。これにより、3次元造形物を形成する硬化層の積層数が増して上層の熱が放熱されにくくなっても、温度測定部25aで測定した温度に基づいて、温度制御機構21bが造形面21aの温度を制御することで、造形ステージ21への放熱が促進される。このため、3次元造形物は効率よく冷却され、熱による反りや変形が抑制される。
【0070】
以上のように本実施形態によれば、硬化層を積層して形成される3次元造形物を効率よく冷却することで、反りや変形の生じにくい造形を可能とする積層造形装置を提供することができる。
(第3の実施形態)
図10は、本発明の第3の実施形態の積層造形装置の構成を示す図である。本実施形態の積層造形装置3は、小領域に分割された複数の個別造形ステージ31を有する造形ステージ30と、チャンバ32aと供給筒32bを有する材料供給機構32と、スキージ33と、レーザ照射機構34とを有する。さらに、造形ステージ30内に配置された温度監視柱35と、回収ボックス36と、コントローラ37とを有する。
【0071】
積層造形装置3の材料供給機構32とスキージ33とレーザ照射機構34と回収ボックス36は、各々、第2の実施形態の積層造形装置2の材料供給機構22とスキージ23とレーザ照射機構24と回収ボックス26と同様とすることができる。
【0072】
造形ステージ30は、小領域に分割された複数の個別造形ステージ31を有する。個別造形ステージ31は、材料供給機構32から供給された材料を積層して3次元造形物を造形する個別造形面31aを備えている。さらに、個別造形ステージ31は油圧や空圧による昇降機構を有し、各々独立して、材料の積層に合わせて個別造形面31aを昇降することができる。
【0073】
複数の個別造形面31aを有する造形面30aには、材料供給機構32により所定の材料が供給され、供給された材料がスキージ33により平坦化された材料層となり、平坦化された材料の所定の領域がレーザ照射機構34により硬化され硬化層となる。この硬化層が積層されて3次元造形物が形成される。
【0074】
個別造形ステージ31はまた、後述する温度監視柱35が測定した硬化層の温度に基づいて、個別造形ステージ31ごとに、個別造形面31aの温度を制御することのできる温度制御機構31bを備えている。温度制御機構31bの冷却機構としては、例えば、個別造形ステージ31内に水などの冷媒を流す流路を設けることができる。また、温度制御機構31bの加熱機構としては、例えば、個別造形ステージ31内に油などの熱媒を流す流路やヒータを設けることができる。
【0075】
温度監視柱35は、造形ステージ30の造形面30a内に、上面が造形面30aの一部を構成するようにして設けられている。さらに、温度監視柱35は、造形面30aから突出して上下することができる。温度監視柱35は、材料層(硬化層)に合わせて造形面30a内で上下し、上面や側面で材料層(硬化層)の底面や側面に接して材料層(硬化層)の温度を測定することができる。
【0076】
図11は、温度監視柱35の構成を示す図である。温度監視柱35は、温度測定部35aと昇降部35cを有する。
【0077】
温度測定部35aは、上面と側面とを有する。上面は、造形ステージ30の造形面30aの一部を構成することができる。また、温度測定部35aは、造形ステージ30の造形面30aから突出することができる。さらに、温度測定部35aは、上面や側面で材料層(硬化層)の底面や側面に接して材料層(硬化層)の温度を測定することができる。このために温度測定部35aは、温度センサ35bを内蔵している。温度センサ35bには、熱電対や赤外線センサを用いることができる。温度センサ35bは、最上層の硬化層の温度を測定することができる。温度測定部35aは、銅やアルミニウムやステンレスなどの熱伝導性の良い金属などの材質とすることができる。
【0078】
昇降部35cは、油圧や空圧などにより、温度測定部35aを材料の積層に合わせて昇降することができる。昇降部35cにより、温度測定部35aの位置を温度測定したい硬化層の位置に合わせることができる。これにより、硬化層の温度を精度よく測定することができる。
【0079】
図12は、本実施形態の積層造形装置3の造形ステージ30と温度監視柱35の温度測定部35aの構成を示す(a)上面図および(b)断面図である。造形ステージ30の造形面30aは、複数の個別造形ステージ31の個別造形面31aと、温度測定部35aの上面とを有する。温度測定部35aは、造形面30a内の任意の位置に任意の数を配置することができる。例えば、造形物の形状に合わせて、造形物の温度を効果的に測定できるように、造形物に近い位置に配置することができる。
【0080】
なお、温度測定部35aの上面の形状は、四角形には限定されない。温度測定部35aの上面の形状は、多角形や、また、曲線や直線を任意に組み合わせた形状とすることができる。なお、温度測定部35aの上面の形状に合わせて、個別造形ステージ31の個別造形面31aの形状を変えることができる。
【0081】
コントローラ37は、第2の実施形態のコントローラ27と同様に、個別造形ステージ31や材料供給機構32やスキージ33やレーザ照射機構34や温度監視柱35や温度制御機構31bや回収ボックス36に接続する。そして、これらの動作を制御して連携させることによって、造形物の積層造形に関わる制御を行なう。
【0082】
また、コントローラ37が、コントローラ27と異なるのは、個別造形ステージ31や温度監視柱35の個々の昇降の量の制御や、温度監視柱35で測定された温度に基づいた、個々の個別造形ステージ31の温度制御機構21bの温度の制御を行う点である。
【0083】
図13は、本実施形態の積層造形装置3による造形方法を説明するための図である。
【0084】
図13の(a)では、ひとつの平面を成す造形ステージ30の造形面30aに対して、少なくともひとつの個別造形ステージ31の個別造形面31aを、材料層1層分だけ下げる。このとき、温度測定部35aの少なくともひとつは、材料層1層分だけ下げられた個別造形ステージ31に隣接している。
【0085】
(b)では、材料層1層分だけ下げられた個別造形ステージ31の個別造形面31aに、材料供給機構32が供給した材料を、スキージ33が引き延ばして材料層とする。このとき、スキージ33は、材料層1層分だけ下げられた個別造形ステージ31を除いた造形面30aと材料層の表面とを揃えて、材料を平坦化する。
【0086】
(c)では、レーザ照射機構34が、材料層の所定の位置に所定の時間、所定の出力のレーザ光を照射して材料層を硬化層とする。このときレーザ光照射により硬化層に生じた熱は、材料層1層分だけ下げられた個別造形ステージ31に放熱され、硬化層は冷却される。
【0087】
このとき、温度測定部35aによって測定された硬化層の温度に基づいて、硬化層に接している個別造形ステージ31に内蔵されている温度制御機構31bにより、個別造形面31aの温度が制御され、硬化層が適切に冷却される。例えば、温度制御機構31bは、温度測定部35aが測定した硬化層の温度が所定の温度よりも、高いときには個別造形面31aの温度を下げ、低いときには個別造形面31aの温度を上げることができる。また、温度制御機構31bは、温度測定部35aが測定した硬化層の温度が所定の時間経過後に所定の温度よりも高いときには、個別造形面31aの温度を下げることができる。
【0088】
温度測定部35aによって測定された温度に基づいた温度制御機構31bの温度制御は、以上には限定されない。温度制御機構31bの温度制御は、硬化層を効果的に冷却するために、また、硬化層の温度を適切化するために、任意に行うことができる。
【0089】
なお、(c)では、硬化層は温度測定部35aに直接接していても、未硬化の材料層を介して間接的に接していてもよい。硬化層が温度測定部35aに直接接することで、硬化層の温度を直接的に測定することができる。また、硬化層が未硬化の材料層を介して間接的に接することで、硬化層の温度を間接的に測定し、硬化層の温度に換算することができる。硬化層の温度に換算する場合、予め用意された、未硬化の材料を介した際の硬化層の温度に換算する実験データや計算データを用いることができる。
【0090】
(d)では、次の材料層を形成するために、次の材料層を形成する造形面30aを構成する個別造形ステージ31の個別造形面31aと温度測定部35aを、さらに材料層1層分だけ下げる。
【0091】
(e)では、(d)で材料層1層分だけ下げられた個別造形ステージ31の個別造形面31aや温度測定部35aの上面に、材料供給機構32が供給した材料を、スキージ33が引き延ばして材料層とする。このとき、スキージ33は、材料層1層分だけ下げられた個別造形面31aや温度測定部35aの上面を除いた造形面30aと材料層の表面とを揃えて、材料を平坦化する。
【0092】
(f)では、(e)で形成された材料層の所定の位置に所定の時間、所定の出力のレーザ光を照射して次の硬化層を形成する。このとき、硬化層に接する温度測定部35aによって測定された硬化層の温度に基づいて、硬化層に接する個別造形ステージ31に内蔵されている温度制御機構31bにより、硬化層に接する個別造形面31aの温度が制御され、硬化層が適切に冷却される。
【0093】
以上を繰り返すことによって、(g)では、所定の数の層を積層した造形物が完成する。(h)では、未硬化の材料がある場合はこれを回収し、完成した造形物を取り出す。
【0094】
以上のように、本実施形態の積層造形装置3によれば、温度監視柱35の温度測定部35aで硬化層の温度を精度よく測定することができる。これにより、3次元造形物を形成する硬化層の積層数が増して上層の熱が放熱されにくくなっても、温度測定部35aで測定した温度に基づいて、温度制御機構31bが個別造形面31aの温度を制御することで、個別造形ステージ31への放熱が促進される。このため、3次元造形物は効率よく冷却され、熱による反りや変形が抑制される。
【0095】
以上のように本実施形態によれば、硬化層を積層して形成される3次元造形物を効率よく冷却することで、反りや変形の生じにくい造形を可能とする積層造形装置を提供することができる。
【0096】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものである。
【0097】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
硬化層を積層して3次元造形物を造形する造形面を有する造形部と、
前記造形面に所定の材料を供給する供給部と、
供給された前記材料の所定の領域を硬化して前記硬化層とする硬化部と、
前記造形面から突出する突出部を有し、前記突出部で前記硬化層の温度を測定する温度監視部と、
前記温度監視部が測定した前記温度に基づいて、前記造形面の温度を制御する温度制御部を有する、積層造形装置。
(付記2)
前記温度制御部は、前記温度監視部が測定した前記温度が所定の温度よりも、高いときには前記造形面の温度を下げ、低いときには前記造形面の温度を上げる、付記1記載の積層造形装置。
(付記3)
前記温度監視部は、前記突出部の側面もしくは上面で前記温度を測定する、付記1または2記載の積層造形装置。
(付記4)
前記造形面に供給された前記材料を平坦化する平坦化部を有し、前記平坦化部は、前記温度監視部の前記突出部の表面と前記材料の表面を揃えて、前記材料を平坦化する、付記1から3の内の1項記載の積層造形装置。
(付記5)
前記供給部は、粉末材料を供給する、付記1から4の内の1項記載の積層造形装置。
(付記6)
前記硬化部は、前記材料を加熱硬化する、付記1から5の内の1項記載の積層造形装置。
(付記7)
前記硬化部は、レーザもしくは電子線を前記材料に照射する、付記1から6の内の1項記載の積層造形装置。
(付記8)
前記造形部は、前記造形面上に未硬化の前記材料を介して前記3次元造形物を造形する、付記1から7の内の1項記載の積層造形装置。
(付記9)
硬化層を積層して3次元造形物を造形する造形面に所定の材料を供給し、
供給された前記材料の所定の領域を硬化して前記硬化層とし、
前記造形面から突出させた突出部で前記硬化層の温度を測定し、
測定した前記温度に基づいて、前記造形面の温度を制御する、積層造形方法。
(付記10)
測定した前記温度が所定の温度よりも、高いときには前記造形面の温度を下げ、低いときには前記造形面の温度を上げる、付記9記載の積層造形方法。
(付記11)
前記突出部の側面もしくは上面で前記温度を測定する、付記9または10記載の積層造形方法。
(付記12)
前記突出部の表面と前記材料の表面を揃えて、前記材料を平坦化する、付記9から11の内の1項記載の積層造形方法。
(付記13)
前記材料は、粉末材料を有する、付記9から12の内の1項記載の積層造形方法。
(付記14)
前記材料を加熱して前記硬化層とする、付記9から13の内の1項記載の積層造形方法。
(付記15)
レーザもしくは電子線を前記材料に照射して加熱硬化する、付記9から14の内の1項記載の積層造形方法。
(付記16)
前記造形面上に未硬化の前記材料を介して前記3次元造形物を造形する、付記9から15の内の1項記載の積層造形方法。